説明

クレーンのローピング構造

【課題】コンテナの傾動を抑制すると共に、巻上げ横行ドラムを操作することにより、トリム、リスト及びスキューを調整する。
【解決手段】吊り具5の四隅にワイヤロープ11A〜11D及び12A〜12DをそれぞれV字状に配置し、吊り具5の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部と吊り具後端部との二つの部位において、それぞれ、陸側に傾斜した2本のワイヤロープ11A(11D),11B(11C)の傾斜部を互いに平行にすると共に、海側に傾斜した2本のワイヤロープ12A(12D)及び12B(12C)の傾斜部を互いに平行にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンのローピング構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンのローピング方法としては、図10に示すように、4本のワイヤーロープR11,R12,R21,R22を用いて吊り具8’の四隅を保持することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ドラム13’から引き出したワイヤーロープR11は、トロリー6’上のガイドシーブ31’を経て吊り具8’の陸側前端部に取り付けられ、また、ドラム13’から引き出したワイヤーロープR12は、トロリー6’上のガイドシーブ32’を経て吊り具8’の陸側後端部に取り付けられている。
【0004】
他方、ドラム14’から引き出したワイヤーロープR21は、トロリー6’上のガイドシーブ33’を経て吊り具8’の海側前端部に取り付けられ、また、ドラム14’から引き出したワイヤーロープR22は、トロリー6’上のガイドシーブ34’を経て吊り具8’の海側後端部に取り付けられている。
【0005】
上記ドラム13’は、電動モーターM1により駆動され、ドラム14’は、電動モーターM2により駆動されるようになっている。今、ドラム13’とドラム14’とを同期させて互いに反対方向に回転させると、吊り具8’が上下する。他方、ドラム13’とドラム14’とを同期させて互いに同じ方向に回転させると、吊り具8’が海又は陸側に移動する。
【0006】
しかしながら、ドラム13’とドラム14’の同期が乱れると、吊り具8’に把持されているコンテナCがコンテナ長手方向の軸Yを中心に矢印a’,b’のように傾動するという問題があった。
【0007】
また、図11に示すように、2個の傾動調整ドラム49,50と、2本の傾動調整ロープ51,52を用いてコンテナ4”の傾動を防止することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
この発明は、ガーダ6a上の機械室(図示せず)内に4本のドラム45A,45B,45C,45Dを配置し、ガーダ6aの基端部に2個のガイドシーブ46A,46Bを配置し、ブーム6bの先端側に2個のガイドシーブ46C,46Dを配置している。
【0009】
更に、トロリー7”の四隅に横行・巻き上げシーブ47A,47B,47C,47Dを配置し、2個のドラム45A,45Bから繰り出した2本のロープ48A,48Bをガーダ6a上のガイドシーブ46A,46Bと、トロリー7”の陸側に配置した横行・巻き上げシーブ47A,47Bとを経て吊り具8”のヘッドブロック9”に取り付ける一方、残りの2個のドラム45C,45Dから繰り出した2本のロープ48C,48Dをブーム6b上のガイドシーブ46C,46Dと、トロリー7”の海側に配置した横行・巻き上げシーブ47C,47Dとを経て吊り具8”のヘッドブロック9”に取り付けている。
【0010】
更に、トロリー7”の陸側に設けた傾動調整ドラム49の傾動調整ロープ51を吊り具8”のヘッドブロック9”の陸側中央に取り付け、トロリー7”の海側に設けた傾動調整ドラム50の傾動調整ロープ52を吊り具8”のヘッドブロック9”の海側中央に取り付けている。
【0011】
しかしながら、この発明は、傾動調整ドラム49,50及び傾動調整ロープ51,52が必要になり、前者に比べて構造が複雑になる。また、ドラム45A〜45Dを操作して吊り具8”に把持されているコンテナ4”を上下させる場合、傾動調整ドラム49,50をドラム45A,45B,45C,45Dと同期させる必要があるため、ドラム45A,45B,45C,45Dと傾動調整ドラム49,50とを同期させる制御系が複雑になるという問題がある。
【0012】
更に、この発明は、コンテナ4”のスキューを調整する方法として、トロリー右端側の横行・巻き上げシーブ47A,47Cを可動枠53に搭載する一方、トロリー左端側の横行・巻き上げシーブ47B,47Dを可動枠54に搭載し、これらの可動枠53,54を互いに相反する方向に可動させるために、更に部品数が多くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−48473号公報
【特許文献2】特開2003−40575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、コンテナの傾動を抑制することができると共に、巻上げ横行ドラムを操作するだけでトリム、及びスキューを調整することができるクレーンのローピング構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の請求項1に係る発明は、ガーダ及びブームに沿って横行するトロリーと、ガーダ上方に設けた前後左右の4基の巻上げ・横行ドラムと、これらの巻上げ・横行ドラムから繰り出したワイヤロープによってトロリーの下方に吊り具を吊り下げたクレーンにおいて、前記吊り具の四隅に前記ワイヤロープをそれぞれV字状に配置し、前記吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部と吊り具後端部との二つの部位において、それぞれ、陸側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすると共に、海側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすることを特徴とするものである。
【0016】
本願の請求項2に係る発明は、ガーダ及びブームに沿って横行するトロリーと、ガーダ上方に設けた前後左右の4基の巻上げ・横行ドラムと、これらの巻上げ・横行ドラムから繰り出したワイヤロープによってトロリーの下方に吊り具を吊り下げたクレーンにおいて、前記吊り具の四隅に前記ワイヤロープをそれぞれV字状に配置し、前記吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部と吊り具後端部との二つの部位において、それぞれ、陸側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすると共に、海側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にし、更に、陸側に傾斜した2本のワイヤロープをガーダ側のシーブを介して陸側の巻上げ横行ドラムに巻き取る一方、海側に傾斜した2本のワイヤロープをブーム側のシーブを介して海側の巻上げ横行ドラムに巻き取ることを特徴とするものである。
【0017】
本願の請求項3に係る発明は、ガーダ及びブームに沿って横行するトロリーと、ガーダ上方に設けた前後左右の4基の巻上げ・横行ドラムと、これらの巻上げ・横行ドラムから繰り出したワイヤロープによってトロリーの下方に吊り具を吊り下げたクレーンにおいて、前記吊り具の四隅に前記ワイヤロープをそれぞれV字状に配置し、前記吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部と吊り具後端部との二つの部位において、それぞれ、陸側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすると共に、海側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にし、更に、陸側に傾斜した2本のワイヤロープのうちの1本をブーム側のシーブを介して海側の巻上げ・横行ドラムに巻き取ると共に他の1本をトロリーに固定し、海側に傾斜した2本のワイヤロープのうちの1本をブーム側のシーブを介して陸側の巻上げ・横行ドラムに巻き取ると共に他の1本をトロリーに固定することを特徴とするものである。
【0018】
本願の請求項4に係る発明は、吊り具の四隅にロープ支持体を設けると共に、該ロープ支持体を通る鉛直線に対してトロリーの陸側と海側とにそれぞれシーブを設け、陸側と海側に設けた二つの鉛直線間の間隔と、トロリーの陸側に設けた二つのロープ支持体間の間隔と、トロリーの海側に設けた二つのロープ支持体間の間隔とを同じ間隔に設定することを特徴とするものである。
【0019】
本願の請求項5に係る発明は、吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部側と吊り具後端部側との二つの部位において、吊り具の海側と陸側に設けた二つのロープ支持体又はシーブの吊り具長手方向に対する間隔と、トロリーの海側と陸側に設けた二対のシーブの吊り具長手方向に対する間隔とを同じ間隔に設定することを特徴とするものである。
【0020】
本願の請求項6に係る発明は、陸側に傾斜したワイヤロープの傾斜角と、海側に傾斜したワイヤロープの傾斜角とを同じ角度に設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ガーダ及びブームに沿って横行するトロリーと、ガーダ上方に設けた前後左右の4基の巻上げ・横行ドラムと、これらの巻上げ・横行ドラムから繰り出したワイヤロープによってトロリーの下方に吊り具を吊り下げたクレーンにおいて、前記吊り具の四隅に前記ワイヤロープをそれぞれV字状に配置し、前記吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部と吊り具後端部との二つの部位において、それぞれ、陸側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすると共に、海側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にするので、吊り具の横行時において、吊り具、或いは、吊り具に保持されたコンテナの横手方向及び長手方向の傾動を抑制することができる。また、ブームの海側端に対して前後左右に配置した4基の巻上げ横行ドラムを操作するだけで、吊り具、或いは、吊り具に保持されたコンテナのトリム、リスト及びスキューを調整することができる。
【0022】
また、本発明によれば、ワイヤーロープがシーブ上を移動する距離が短く、屈曲の回数が少ないので、ワイヤーロープの寿命が長くなる。更に、本発明では、ロープの本数が従来に比べて倍になるが、その分、ワイヤーロープを細くできるので、掛け回しが容易になる。また、細いワイヤーロープが方がワイヤーロープの柔軟性が高く、寿命も更に長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る第1のクレーンのローピング構造を示す斜視図である。
【図2】図1の要部拡大側面図である。
【図3】図1の要部拡大平面図である。
【図4】本発明に係る第2のクレーンのローピング構造を示す斜視図である。
【図5】図4の要部拡大側面図である。
【図6】図4の要部拡大平面図である。
【図7】本発明に係る第3のクレーンのローピング構造を示す斜視図である。
【図8】図7の要部拡大側面図である。
【図9】図7の要部拡大正面図である。
【図10】従来のクレーンのローピング構造を示す側面図である。
【図11】従来のクレーンのローピング構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(a)第1実施形態
本発明に適用するクレーン1は、図1に示すように、ガーダ2と、ガーダ2の海側端に設けたブーム3に沿ってトロリー4が横行するようになっている。また、ガーダ2上の機械室(図示せず)内にて前後左右に配した、すなわち、陸側に配置した2基の巻上げ・横行ドラム6A,6Bと、海側に配置した2基の巻上げ・横行ドラム(以下、ドラムと称する。)6C,6Dからそれぞれ2本ずつ繰り出した合計8本のワイヤロープ11A〜11D及び12A〜12Dによってトロリー4の下方に吊り具5を昇降可能に吊り下げている。符号Cは吊り具5によって保持されたコンテナである。
【0025】
上記トロリー4は、陸側に第1〜第4の4個のシーブ7A,7B,7C,7Dを備え、海側に第5〜第8の4個のシーブ8A,8B,8C,8Dを備えている。他方、吊り具5は、吊り具本体5Aとヘッドブロック5Bより構成され、ヘッドブロック5Bは、その四隅にブラケット等から成るロープ支持体9A,9B,9C,9Dを設けている。
【0026】
具体的に説明すると、第1のロープ支持体9Aはヘッドブロック5Bの陸側前端部に設けられ、第2のロープ支持体9Bはヘッドブロック5Bの陸側後端部に設けられ、第3のロープ支持体9Cはヘッドブロック5Bの海側前端部に設けられ、第4のロープ支持体9Dはヘッドブロック5Bの海側後端部に設けている。
【0027】
図2に示すように、シーブ7A(7D)からロープ支持体9A(9B)に至るワイヤロープ11A(11D)と、シーブ8A(8D)からロープ支持体9A(9B)に至るワイヤロープ12A(12D)とをV字状とし、陸側に傾斜したワイヤロープ11A(11D)の傾斜部13a(13d)の傾斜角θ1と、海側に傾斜したワイヤロープ12A(12D)の傾斜部14a(14d)の傾斜角θ2とを等しくする。
【0028】
同様に、シーブ7B(7C)からロープ支持体9C(9D)に至るワイヤロープ11B(11C)と、シーブ8B(8C)からロープ支持体9C(9D)に至るワイヤロープ12B(12C)とをV字状とし、陸側に傾斜したワイヤロープ11B(11C)の傾斜部13b(13c)の傾斜角θ1と、海側に傾斜したワイヤロープ12B(12C)の傾斜部14b(14c)の傾斜角θ2とを等しくする。
【0029】
図2において、y1はロープ支持体9A(9B)を通る鉛直線、y2はロープ支持体9C(9D)を通る鉛直線である。また、図2に示すように、ヘッドブロック5B上のロープ支持体9A(9B)及びロープ支持体9C(9D)間の距離、トロリー4上の陸側シーブ7A(7D)及び陸側シーブ7B(7C)間の距離、トロリー4上の海側シーブ8A(8D)及び海側シーブ8B(8C)間の距離をそれぞれbとする。
【0030】
図2では、シーブ7B(7C)が鉛直線y1よりも陸側に位置し、シーブ8A(8D)が鉛直線y2よりも海側に位置しているが、シーブ7B(7C)を鉛直線y1上、或いは鉛直線y1よりも海側に位置させる一方、シーブ8A(8D)を鉛直線y2上、或いは鉛直線y2よりも陸側に位置させることもできる。シーブの間隔を広げ過ぎると、荷役の際に、前後のコンテナにワイヤロープが接触する恐れがあるからである。
【0031】
更に、図3に示すように、吊り具5の陸側端では、第1ロープ支持体9A及び第3ロープ支持体9Cの吊り具長手方向の間隔dと、トロリー4上の第1(第5)シーブ7A(8A)及び第2(第6)シーブ7B(8B)の吊り具長手方向の間隔cとを同じ間隔に設定する。同様に、吊り具5の海側端では、第2ロープ支持部9B及び第4ロープ支持部9Dの吊り具長手方向の間隔dと、トロリー4上の第4(第8)シーブ7D(8D)及び第3(第7)シーブ7C(8C)の吊り具長手方向の間隔cとを同じ間隔に設定する。
【0032】
図1に戻って説明すると、ガーダ2の陸側前端部に方向転換用の第1,第2シーブ15A,15Bを設け、ガーダ2の陸側後端部に方向転換用の第3,第4シーブ15C,15Dを設ける。更に、ブーム3の海側前端部に方向転換用の第1,第2シーブ16A,16Bを設け、ブーム3の海側後端部に方向転換用の第3,第4シーブ16C,16Dを設ける。
【0033】
次に、ワイヤロープのローピングについて説明する。図1に示すように、第1ドラム6Aから引き出した第1ワイヤロープ11Aを、ガーダ2の陸側前端部の第1シーブ15A及びトロリー4上の第1シーブ7Aを経て吊り具5の陸側前端部の第1ロープ支持定体9Aに固定し、第1ドラム6Aから引き出した第2ワイヤロープ11Bを、ガーダ2の陸側前端部の第2シーブ15B及びトロリー4上の第2シーブ7Bを経て吊り具5の海側前端部の第3ロープ支持定体9Cに固定する。
【0034】
また、第3ドラム6Cから引き出した第5ワイヤロープ12Aを、ブーム3の海側前端部の第1シーブ16A及びトロリー4上の第5シーブ8Aを経て吊り具5の陸側前端部の第1ロープ支持体9Aに固定し、第3ドラム6Cから引き出した第6ワイヤロープ12Bを、ブーム3の海側前端部の第3シーブ16B及びトロリー4上の第6シーブ8Bを経て吊り具5の海側前端部の第3ロープ支持体9Cに固定する。
【0035】
第2ドラム6Bから引き出した第3ワイヤロープ11Cを、ガーダ2の陸側後端部の第3シーブ15C及びトロリー4上の第3シーブ7Cを経て吊り具5の海側後端部の第4ロープ固定部9Dに固定し、第2ドラム6Bから引き出した第4ワイヤロープ11Dを、ガーダ2の陸側後端部の第4シーブ15D及びトロリー4上の第4シーブ7Dを経て吊り具5の陸側後端部の第2ロープ固定部9Bに固定する。
【0036】
また、第4ドラム6Dから引き出した第7ワイヤロープ12Cを、ブーム3の海側後端部の第3シーブ16C及びトロリー4上の第7シーブ8Cを経て吊り具5の海側後端部の第4ロープ固定部9Dに固定し、第4ドラム6Dから引き出した第8ワイヤロープ12Dを、ブーム3の海側後端部の第4シーブ16D及びトロリー4上の第8シーブ8Dを経て吊り具5の陸側後端部の第2ロープ固定部9Bに固定する。
【0037】
従って、図2に示すように、トロリー4上のシーブ7A(7D)及び吊り具5上のロープ支持体9A(9B)間のワイヤロープ11A(11D)の傾斜部13a(13d)と、トロリー4上のシーブ7B(7C)及び吊り具5上のロープ支持体9C(9D)間のワイヤロープ11B(11C)の傾斜部13b(13c)とが平行になる。
【0038】
また、トロリー4上のシーブ8A(8D)及び吊り具5上のロープ支持体9A(9B)間のワイヤロープ12A(12D)の傾斜部14a(14d)と、トロリー4上のシーブ8B(8C)及び吊り具5のロープ支持体9C(9D)間のワイヤロープ12B(12C)の傾斜部14b(14c)とが平行になる。
【0039】
このため、トロリー4の横行時において、吊り具5に保持されたコンテナCの長手方向及び横手方向の傾動を抑制することができる。
【0040】
また、第1,第3ドラム6A,6Cを矢印a方向に回転させると同時に、第2,第4ドラム6B,6Dを矢印b方向に回転させたり、あるいは、これとは逆に、第1,第3ドラム6A,6Cを矢印b方向に回転させると同時に、第2,第4ドラム6B,6Dを矢印a方向に回転させることにより、吊り具5に保持されたコンテナCをスキューさせることができる。
【0041】
また、第1ドラム6Aを矢印a方向、第3ドラム6Cを矢印b方向に回転させると同時に、第2ドラム6Bを矢印b方向、第4ドラム6Dを矢印a方向に回転させたり、あるいは、これとは逆に、第1ドラム6Aを矢印b方向、第3ドラム6Cを矢印a方向に回転させると同時に、第2ドラム6Bを矢印a方向、第4ドラム6Dを矢印b方向に回転ると、吊り具5に保持されたコンテナCをトリムさせることができる。
【0042】
他方、第1,第2ドラム6A,6Bを矢印a方向、第3,第4ドラム6C,6Dを矢印b方向に回転させると、吊り具5に保持されたコンテナCが上昇し、これとは逆に、第1,第2ドラム6A,6Bを矢印b方向、第3,第4ドラム6C,6Dを矢印a方向に回転させると、吊り具5に保持されたコンテナCを降下させることができる。
【0043】
また、第1〜第4のドラム6A〜6Dを矢印a方向に回転させると、吊り具5に保持されたコンテナCを陸側に横行させることができる。また、これとは逆に、第1〜第4のドラム6A〜6Dを矢印b方向に回転させると、吊り具5に保持されたコンテナCを海側に横行させることができる。
【0044】
更に、図3に示すように、ロープ支持体9A(9C)とロープ支持体9B(9D)との間の間隔よりも、トロリー4上のシーブ7A,8A(7B,8B)とシーブ7D,8D(7C,8C)との間の間隔を広くすることにより、吊り具5の長手方向の振れを抑制することができる。
【0045】
また、吊り具5の長手方向に対して、吊り具前端部側のドラム6A,6C又は吊り具後端部側のドラム6B,6Dをワイヤロープが緩む方向に回転させると、吊り具5の前端部又は後端部側へのシフトを行うことができる。
【0046】
(b)第2実施形態
第2実施形態は、第1実施形態におけるロープ支持体9A,9B,9C,9Dの代わりに、ヘッドブロック5Bの四隅にシーブ18A,18B,18C,18Dを設けてローピングしたものである。尚、第1実施形態の部位と同じ部位に同じ符号を付けて詳しい説明を省略する。
【0047】
また、この例では、陸側の巻上げ・横行ドラム6A,6Bから海側の巻上げ・横行ドラム(以下、ドラムと称する。)6C,6Dに亙って連続した4本のワイヤロープ11A〜11Dを用いているが、第1実施形態との整合性を持たせる場合には、シーブ18A〜18Dからドラム6C,6Dに至るワイヤロープ11A〜11Dをワイヤロープ12A〜12Dと見做す必要がある。
【0048】
図4に示すように、第1ドラム6Aから引き出した第1ワイヤロープ11Aは、ガーダ2の陸側前端部の第1シーブ15A→トロリー4の陸側前端部の第1シーブ7A→吊り具5の陸側前端部の第1シーブ18A→トロリー4の海側前端部の第5シーブ8A→ブーム3の海側前端部の第1シーブ16Aを経て第3ドラム6Cに巻き掛ける。
【0049】
また、第1ドラム6Aから引き出した第2ワイヤロープ11Bは、ガーダ2の陸側前端部の第2シーブ15B→トロリー4の陸側前端部の第2シーブ7B→吊り具5の海側前端部の第3シーブ18C→トロリー4の海側前端部の第6シーブ8B→ブーム3の海側前端部の第2シーブ16Bを経て第3ドラム6Cに巻き掛ける。
【0050】
また、第2ドラム6Bから引き出した第3ワイヤロープ11Cは、ガーダ2の陸側後端部の第3シーブ15C→トロリー4の陸側後端部の第3シーブ7C→吊り具5の海側後端部の第2シーブ18D→トロリー4の海側後端部の第7シーブ8C→ブーム3の海側後端部の第3シーブ16Cを経て第4ドラム6Dに巻き掛ける。
【0051】
また、第2ドラム6Bから引き出した第4ワイヤロープ11Dは、ガーダ2の陸側後端部の第4シーブ15D→トロリー4の陸側後端部の第2シーブ7D→吊り具5の陸側後端部の第2シーブ18B→トロリー4の海側後端部の第8シーブ8D→ブーム3の海側後端部の第4シーブ16Dを経て第4ドラム6Dに巻き掛ける。
【0052】
上記のローピングを行なうことによって第1実施形態のものと同等の操作を行うことが可能になる。
【0053】
図5では、シーブ7B(7C)が鉛直線y1よりも陸側に位置し、シーブ8A(8D)が鉛直線y2よりも海側に位置しているが、シーブ7B(7C)を鉛直線y1上、或いは鉛直線y1よりも海側に位置させる一方、シーブ8A(8D)を鉛直線y2上、或いは鉛直線y2よりも陸側に位置させることもできる。シーブの間隔を広げ過ぎると、荷役の際に、前後のコンテナにワイヤロープが接触する恐れがあるからである。
【0054】
(c)第3実施形態
第3実施形態は、第1実施形態におけるロープ支持体9A,9B,9C,9Dの代わりに、ヘッドブロック5Bの四隅にシーブ18A,18B,18C,18Dを設けると共に、第1〜第4巻上げ・横行ドラム(以下、ドラムと称する。)6A〜6Dのワイヤーロープをそれぞれ1本にしたものである。尚、第1実施形態の部位と同じ部位に同じ符号を付けて詳しい説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、第1ドラム6Aから引き出した第1ワイヤロープ11Aを、ガーダ2の陸側前端部の第1シーブ15A→トロリー4の海側前端部の第6シーブ8B→吊り具5の海側前端部の第3シーブ18C→トロリー4の陸側前端部の第2シーブ7Bに相当する固定部20Bに固定する。
【0056】
また、第2ドラム6Bから引き出した第4ワイヤロープ11Dを、ガーダ2の陸側後端部の第4シーブ15D→トロリー4の海側後端部の第7シーブ8C→吊り具5の海側後端部の第4シーブ18D→トロリー4の陸側後端部の第3シーブ7Cに相当する固定部20Cに固定する。
【0057】
また、第3ドラム6Cから引き出した第6ワイヤロープ12Bを、ブーム3の海側前端部の第2シーブ16B→トロリー4の陸側前端部の第1シーブ7A→吊り具5の陸側前端部の第1シーブ18A→トロリー4の海側後端部の第5シーブ8Aに相当する固定部20Aに固定する。
【0058】
更に、第4ドラム6Dから引き出した第7ワイヤロープ12Cを、ブーム3の海側後端部の第3シーブ16C→トロリー4の陸側後端部の第4シーブ7D→吊り具5の陸側後端部の第2シーブ18B→トロリー4の海側後端部の第8シーブ8Dに相当する固定部20Dに固定する。
【0059】
上記のローピングを行なうことによって第1実施形態のものと同等の操作を行うことが可能になる。
【0060】
図8では、シーブ7B(7C)に相当する固定部20B(20C)が鉛直線y1よりも陸側に位置し、シーブ8A(8D)に相当する固定部20A(20D)が鉛直線y2よりも海側に位置しているが、固定部20B(20C)を鉛直線y1上、或いは鉛直線y1よりも海側に位置させる一方、固定部20A(20D)を鉛直線y2上、或いは鉛直線y2よりも陸側に位置させることもできる。シーブと固定部の間隔を広げ過ぎると、荷役の際に、前後のコンテナにワイヤロープが接触する恐れがあるからである。
【符号の説明】
【0061】
5 吊り具
11A〜11D,12A〜12D ワイヤロープ
13a(13d),13b(13c) 陸側に傾斜した2本のワイヤロープ11A(11 D),11B(11C)の傾斜部
14a(14d),14b(14c) 海側に傾斜した2本のワイヤロープ12A(12 D),12B(12C)の傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダ及びブームに沿って横行するトロリーと、ガーダ上方に設けた前後左右の4基の巻上げ・横行ドラムと、これらの巻上げ・横行ドラムから繰り出したワイヤロープによってトロリーの下方に吊り具を吊り下げたクレーンにおいて、前記吊り具の四隅に前記ワイヤロープをそれぞれV字状に配置し、前記吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部と吊り具後端部との二つの部位において、それぞれ、陸側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすると共に、海側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすることを特徴とするクレーンのローピング構造。
【請求項2】
ガーダ及びブームに沿って横行するトロリーと、ガーダ上方に設けた前後左右の4基の巻上げ・横行ドラムと、これらの巻上げ・横行ドラムから繰り出したワイヤロープによってトロリーの下方に吊り具を吊り下げたクレーンにおいて、前記吊り具の四隅に前記ワイヤロープをそれぞれV字状に配置し、前記吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部と吊り具後端部との二つの部位において、それぞれ、陸側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすると共に、海側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にし、更に、陸側に傾斜した2本のワイヤロープをガーダ側のシーブを介して陸側の巻上げ横行ドラムに巻き取る一方、海側に傾斜した2本のワイヤロープをブーム側のシーブを介して海側の巻上げ横行ドラムに巻き取ることを特徴とする請求項1記載のクレーンのローピング構造。
【請求項3】
ガーダ及びブームに沿って横行するトロリーと、ガーダ上方に設けた前後左右の4基の巻上げ・横行ドラムと、これらの巻上げ・横行ドラムから繰り出したワイヤロープによってトロリーの下方に吊り具を吊り下げたクレーンにおいて、前記吊り具の四隅に前記ワイヤロープをそれぞれV字状に配置し、前記吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部と吊り具後端部との二つの部位において、それぞれ、陸側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にすると共に、海側に傾斜した2本のワイヤロープの傾斜部どうしを互いに平行にし、更に、陸側に傾斜した2本のワイヤロープのうちの1本をブーム側のシーブを介して海側の巻上げ・横行ドラムに巻き取ると共に他の1本をトロリーに固定し、海側に傾斜した2本のワイヤロープのうちの1本をブーム側のシーブを介して陸側の巻上げ・横行ドラムに巻き取ると共に他の1本をトロリーに固定することを特徴とする請求項1記載のクレーンのローピング構造。
【請求項4】
吊り具の四隅にロープ支持体を設けると共に、該ロープ支持体を通る鉛直線に対してトロリーの陸側と海側とにそれぞれシーブを設け、陸側と海側に設けた二つの鉛直線間の間隔と、トロリーの陸側に設けた二つのロープ支持体間の間隔と、トロリーの海側に設けた二つのロープ支持体間の間隔とを同じ間隔に設定することを特徴とする請求項1、2及び3記載のクレーンのローピング構造。
【請求項5】
吊り具の長手方向に対して前後の位置関係となる吊り具前端部側と吊り具後端部側との二つの部位において、吊り具の海側と陸側に設けた二つのロープ支持体又はシーブの吊り具長手方向に対する間隔と、トロリーの海側と陸側に設けた二対のシーブの吊り具長手方向に対する間隔とを同じ間隔に設定することを特徴とする請求項1、2及び3記載のクレーンのローピング構造。
【請求項6】
陸側に傾斜したワイヤロープの傾斜角と、海側に傾斜したワイヤロープの傾斜角とを同じ角度に設定することを特徴とする請求項1、2及び3記載のクレーンのローピング構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−213434(P2011−213434A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81612(P2010−81612)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】