説明

クレーン用重量ランク判定装置

【課題】クレーンの掛止部に装着されて吊下げ保持された選別対象物の重量ランクを判定できるクレーン用重量ランク判定装置を提供する。
【解決手段】被吊り上げ物体14と,クレーン15の掛止部18との間に介設されて,個々の選別対象物13の重量ランクを判定するクレーン用重量ランク判定装置であって、このクレーン用重量ランク判定装置は、吊下げ部22と、被吊り上げ物体14の総重量を計量する計量部2と、重量ランク判定基準データ8を格納するメモリ部3と、収容器12内の選別対象物13を1つ取り出した際の計量部2における計測値の変化量,及び,メモリ部3に格納される重量ランク判定基準データ8に基づいて, 収容器12から取り出された1つの選別対象物13の重量ランクを判定する演算処理部4と、演算処理部4において得られた重量ランク判定結果を表示する出力表示部5とを有することを特徴とするクレーン用重量ランク判定装置1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等の吊下げ式運搬装置のフックに吊下げて使用することができ、個々の又は一塊の選別対象物の重量ランクを自動で判定することができるクレーン用重量ランク判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、収穫された農産物は、重量に基づいて選別され、各等級毎にまとめて梱包するなどして市場に出荷されている。
この場合、生産者は農産物を出荷するにあたり、あらかじめ個々の農産物をその重量に基づいて選別しておく必要があった。
従来公知の重量ランク選別装置は、例えば、複数の選別対象物を,容器ごと計量機能を有する選別装置に載せ、作業者が容器から選別対象物を1つずつ取り上げる毎に、その選別対象物の重量ランクが文字表示や音声出力などの手段により作業者に通知されるよう構成されており、選別すべき選別対象物が比較的小さく、複数の選別対象物が収容された収容器を使用者が持ち上げることができる場合は、支障なく選別対象物の選別作業を行うことができる。
しかしながら、個々の選別対象物が、例えば、大根やかぼちゃ、白菜のように大型で重量がある場合は、複数の選別対象物を収容した容器を作業者が持ち上げることは容易ではないので、上述のような従来公知の重量ランク選別装置を用いて選別作業を行うことはできなかった。
【0003】
この場合、選別対象を1つずつ作業者が取り上げて秤で計量して選別作業を行うか、あるいは、選別対象物を自動搬送する設備を備えた大型の選別装置を用いて、人の手に因らず選別作業をするなどの方法が採られていた。
前者の場合は、選別作業の作業効率を向上し難いという課題があり、後者の場合は、選別装置が大型であるため設置場所の確保が難しい上、選別装置自体が高価であるため中・小規模の農家は選別装置の導入が難しいという課題があった。
このため、個々の選別対象物が大型で重量があり、それを複数個まとめて人手で持ち上げることが難しい場合に、効率よく選別対象物の選別作業を行うことができ、かつ、装置自体が小型である選別手段(選別装置)の開発が望まれていた。
本願発明と同一の課題を有する先行技術文献は現時点では発見されていないが、関連する分野の先行技術文献としては以下に示すようなものが知られている。
【0004】
特許文献1には「重量ランク選別機」という名称で、1個当たりの重量にバラツキのある被計量物を多数容器に入れて計量機に載せ、1個ずつ取り出して重量ランク毎に選別する重量ランク選別機に関する考案が開示されている。
特許文献1に開示される重量ランク選別機は、量検出器と、ランク指定キーやランク確認キー等を有するキー入力部と、被計量物の重量や選別された重量ランクを表示する表示装置と、そのランクを音声出力する音声出力装置と、上記重量検出された重量信号と予め設定された重量ランク範囲とを比較演算して出力する演算装置と、設定された重量ランク範囲及び検出された被計量物の重量ランクを記憶する記憶装置とを有する減算式計量機において、被計量物の重量検出によりランク表示及び又はランク音声が出力され、その表示等が一旦終了したあと、そのランクの再確認を必要とするとき、ランク確認キーを押すことにより一時的に記憶されたランクを呼び出して上記ランク表示及び又はランク音声が確認できるようにしたことを特徴とするものである。
上述のような特許文献1に開示される考案によれば、バラツキのある被計量物を容器から取り出す際に、作業者は、その被計量物のランクを文字表示又は音声出力により知ることができる。
また、作業者が表示を見て重量選別ランクを確認するとき、ランク確定の瞬間に載台に手が触れる等で重量変化が起こり、確定ランク表示を見逃してしまうか又はランクの音声出力を聞き漏らしてしまったときでも、その被計量物を再びコンテナに入れて取り出し直す必要がなく、ランク確認キーを押すことで一時記憶された確定ランクを再表示及び又は音声の再出力ができるので、作業効率を低下させず確実な重量ランク選別ができる。
【0005】
特許文献2には「携帯計量器」という名称で、携帯可能な計量器に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明である携帯計量器は、文献中に記載される符号をそのまま用いて説明すると、ハンガハンドル1を有した計量器2に、被計量物Aに巻付け可能のハンガベルト3を設けたことを特徴とするものである。
特許文献2に開示される発明は本願発明に直接的に関連するものではないが、デジタル出力表示機能を有する小型の計量器に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明によれば、クレーン等で荷物を吊下げる際に、その荷物を保持固定することができるとともにその荷重を知ることができる。
また、ここでは具体的な文献等は提示しないが、本願発明の出願人は、特許文献2に開示される携帯計量器におけるハンガベルト3を備えないタイプの計量器を製造販売しており、ハンガベルト3を備えないタイプの計量器に関する技術は公知の技術として知られている。
【0006】
特許文献3には「果実の選別方法とその設備」という名称で、果実の選別方法とその設備に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示される発明は、本願発明と同一出願人によるものであり、その構成は、減算表示可能な計算台と、農園から来た果実入コンテナを載せて上記計量台上またはそのそばまで送込むコンテナ用コンベアと、上記計算台上から空コンテナを運び出す排出コンベアと、上記計算台付近の作業者が見易い位置に設けた上記計量台の表示盤と、上記作業者の手近に配置した全重量区分それぞれの箱の受台と、上記受台上で果実を満たされた箱を載せて次工程へ送る満箱コンベアとを備え、上記表示盤は、計量台上のコンテナから作業者が果実を一個取出すごとに、その一個の重量区分符号を表示することを特徴とするものである。
上述のような特許文献3に開示される発明の場合、作業者はコンテナから果実を取り出した瞬間、その重量区分を表示盤で直読し、直ちに該当する箱に納めることができるので、選別作業にかかる労力や時間を大幅に節減することができる。
さらに、計量台、作業者のまわりにコンテナ用送込み、排出コンベア、満箱コンベアを集めたことで、人手により持ち上げることができないくらい果実が満載されてコンテナが重たい場合でも、支障なく果実の選別作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実登3027356号公報
【特許文献2】特開2005−62146号公報
【特許文献3】特公平3−33391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される発明は、複数の選別対象物を収容した容器を人手により持ち上げて軽量機上に載置できることを前提とした技術であり、複数の選別対象物を収容した容器が人手により持ち上げられない場合については何ら想定されていない。このため、特許文献1に開示される発明に、複数の選別対象物を人手に因らず持ち上げるための構成を付加する必要性については、開示はおろか示唆や言及までも全く無い。
【0009】
特許文献2に開示される発明はあくまでも計量器であり、被計量物の重量ランクを判定する機能は有していない。また、特許文献2には、被計量物の重量ランクを判定する必要性については、開示はおろか示唆や言及までも全くない。
【0010】
特許文献3に開示される発明によれば、複数の選別対象物を収容した容器が人手により持ち上げられない場合でも、作業者の周囲に搬送用のコンベアを配設することで選別対象物の搬送が容易になり選別作業を行うことが可能になるが、装置自体が大型であるため、装置を設置するための広いスペースを確保する必要があった。このため、中・小規模の農家では特許文献3に開示されるような果実の選別設備を導入することは困難であった。
【0011】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、人手により持ち上げることができないような,複数又は単数又は一塊の選別対象物をクレーンにより吊り上げて移動する際に、吊り上げた物品の重量を計測することができ、さらに、その計測値に基づいて個々の又は一塊の選別対象物の重量ランクを判定することができるクレーン用重量ランク判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明であるクレーン用重量ランク判定装置は、収容器とこの収容器に収容された複数の選別対象物からなる被吊り上げ物体と,クレーンの掛止部との間に介設されて,個々の選別対象物の重量ランクを判定するクレーン用重量ランク判定装置であって、このクレーン用重量ランク判定装置は,被吊り上げ物体を吊下げ保持する吊下げ部と、吊下げ部に吊下げられた被吊り上げ物体の総重量を計量する計量部と、重量ランクを判定するための重量ランク判定基準データを格納するメモリ部と、複数の選別対象物を収容器に収容したままクレーンで吊り上げた状態から,収容器内の選別対象物を1つ取り出した際の計量部における計測値の変化量,及び,メモリ部に格納される重量ランク判定基準データに基づいて, 収容器から取り出された1つの選別対象物の重量ランクを判定する演算処理部と、演算処理部において得られた重量ランク判定結果を表示する出力表示部とを有することを特徴とするものである。
上記構成の発明において、吊下げ部は、被吊下げ物体を吊下げ保持するという作用を有する。また、計量部は、吊下げ部に吊下げられた被吊下げ物体の重量を計量するという作用を有する。
メモリ部は、重量ランクを判定するための重量ランク判定基準データを格納するという作用を有する。演算処理部は、複数の選別対象物を収容器に収容したままクレーンで持ち上げた状態から,収容器内の選別対象物を1つ取り出した際の計量部における計測値の変化量,及び,メモリ部に格納される重量ランク判定基準データに基づいて, 収容器から取り出された1つの選別対象物の重量ランクを判定するという作用を有する。出力表示部は、演算処理部において得られた重量ランク判定結果を目視により確認可能に表示するという作用を有する。
さらに、請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置は、クレーンとは別体に構成されるものであるため、重量ランク判定装置をクレーンを含めた構成とする場合に比べて、装置の構造をシンプルにするとともに,その製造コストを廉価にするという作用を有する。
【0013】
請求項2記載の発明であるクレーン用重量ランク判定装置は、請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置であって、出力表示部の向きを変更するための表示部取付け角度変更構造を備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、出力表示部の向き,及び,表示部の鉛直方向における高さを変更可能とすることで、作業者の立位置から表示部を見え易くするという作用を有する。
【0014】
請求項3記載の発明であるクレーン用重量ランク判定装置は、請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置であって、出力表示部に代えて又は加えて、音声出力部を備え、メモリ部は、重量ランク判定基準データに加えて,重量ランク判定結果を音声出力するための音声出力データを格納することを特徴とするものである。
上記構成の発明において、出力表示部に加えて、音声出力部及び音声出力データを備えた場合は、作業者に対して重量ランク判定結果を音声でも伝えるという作用を有する。
また、上記構成の発明において出力表示部に代えて、音声出力部及び音声出力データを備えた場合は、作業者に対して重量ランク判定結果を音声により伝えるという作用を有する。
【0015】
請求項4記載の発明であるクレーン用重量ランク判定装置は、請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置であって、出力表示部に代えて又は加えて、演算処理部において得られた重量ランク判定結果を外部に無線又は有線により出力するためのデータ出力部を備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明において、データ出力部は、選別対象物の重量ランク判定結果に関する電子データを外部に出力するという作用を有する。
【0016】
請求項5記載の発明であるクレーン用重量ランク判定装置は、請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置であって、出力表示部に代えて又は加えて、演算処理部において得られた重量ランク判定結果を印刷出力するための印刷出力部を備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明において、印刷出力部は、選別対象物の重量ランク判定結果を印刷物として出力するという作用を有する。
【0017】
請求項6記載の発明であるクレーン用重量ランク判定装置は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のクレーン用重量ランク判定装置であって、クレーンは、被吊り上げ物体に代えて,単数又は一塊の選別対象物を吊り上げ、演算処理部は、単数又は一塊の選別対象物を持ち上げた際に計量部において計測される計測値,及び,メモリ部に格納される重量ランク判定基準データに基づいて, 単数又は一塊の選別対象物の重量ランクを判定することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1乃至請求項5のそれぞれに記載される発明において、クレーンにより吊り上げられる選別対象物が複数個でなく、単数の場合,又は,クレーンにより吊り上げられる1塊の物品の集合体を1つの選別対象物として取り扱う場合のクレーン用重量ランク判定装置を、上記請求項1乃至5に記載の発明と異なる発明として捉えたものである。
請求項6記載の発明においては、クレーン用重量ランク判定装置を介してクレーンにより吊り上げられる選別対象物が複数個でなく単数又は一塊である点、及び、演算処理部において単数又は一塊の選別対象物の重量ランクを判定する際の手順が異なる点以外は、請求項1乃至請求項5のそれぞれに記載される発明と同じ構成を有している。
このため、請求項6記載の発明の作用は、クレーンにより吊り上げられる選別対象物が単数,又は,一塊の物品の集合体である点、および、演算処理部において選別対象物の重量ランクが、計量部において計測される計測値の変化量ではなく,計量部において計測される計測値そのものに基づいて判定される点以外は、請求項1乃至請求項5記載のそれぞれに記載される発明の作用と同じである。
【発明の効果】
【0018】
上記構成の請求項1記載の発明によれば、人手では持ち上げることができないほど重い,複数の選別対象物が収容された容器体(被吊下げ物体)を、クレーンにより吊り上げた際に、被吊下げ物体の重量を計量することができる。そして、請求項1記載の発明では、演算処理部及びメモリ部を備えることで、クレーンにより吊り上げられた被吊り上げ物体から、選別対象物を1つ取り出した際の計量部における計測値の変化量に基づいて、取り出された選別対象物の重量ランクを判定することができる。また、出力表示部を備えることで、作業者は、その重量ランク判定結果をその場で目視により確認して知ることができる。
従って、請求項1記載の発明によれば、個々の選別対象物の重量が大きいために、複数の選別対象物が収容された収容器(被吊り上げ物体)を人手により持ち上げることができない場合でも、クレーンを利用して被吊り上げ物体を吊り上げた状態から、1つの選別対象物を取り上げて減算方式によりその選別対象物の重量ランクを判定して作業者に知らせることができる。
この場合、個々の選別対象物を一つずつ人手により,従来公知の計量器又は重量ランク選別装置まで運んで載置する作業を行いながら,個々の選別対象物の重量ランクを判定する場合に比べて、重量ランクの判定作業の作業効率を飛躍的に向上させることができる。
つまり、請求項1記載の発明によれば、個々の選別対象物を一つずつ人手により従来公知の計量器又は重量ランク選別装置まで運ぶ作業を省略することができるので、選別作業にかかる時間を短くすることができる。
また、この場合、作業者が選別対象物に触れる機会を確実に減らすことができるので、選別対象物が傷んだり、汚損したりするリスクを小さくすることができる。特に、選別対象物が農産物や水産物等のように,人手が触れることで傷みが生じやすいものである場合には、選別対象物の品質の低下を好適に抑えることができる。
さらに、請求項1記載の発明は、クレーンとは別体に構成される装置であるため、必要なときだけ既存のクレーンに、重量ランク判定機能を付加することができる。この場合、既存のクレーンに対して改造や部品の追加等を行う必要が一切ないので、重量ランク判定機能を選別作業の現場に導入するためのコストを極めて安価にできる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同じ効果に加えて、作業者の立位置に応じて、出力表示部を見易い向きに変えることができる。
これにより、選別対象物の重量ランク選別作業の作業性を向上することができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、作業者に、被吊り上げ物体から取り上げられた選別対象物の重量ランク判定結果を音声により知らせることができる。この場合、作業者は選別対象物の重量ランク判定結果を、出力表示部を見ることなしに知ることができる。この結果、重量ランクの選別作業時に、作業者が重量ランクの判定結果を知るために出力表示部を見る動作が必要なくなるので、選別作業を一層効率的に行うことができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、選別対象物の重量ランク判定結果を、クレーン用重量ランク判定装置から離れた位置において確認したり、電子データとしてその情報を記録することが容易になる。これにより、選別対象物の出荷状況の管理や在庫管理、あるいは流通状況の管理が容易になる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、選別対象物の重量ランク判定結果を印刷物として出力できるので、重量ランク判定結果の記録・保存作業を軽減することができる。また、例えば、個々の選別対象物の重量ランク判定結果を個別に印刷出力できるよう構成し、例えば,粘着貼付可能なラベル用紙に重量ランク判定結果を印刷することで、それぞれの選別対象物の重量ランク判定結果をそれぞれの選別対象物に貼付しておくことができる。この場合、選別作業が完了した選別対象物の重量ランクを明示しておくことができるので、判定結果が不明になるのを防止することができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、選別対象物が人手で持ち上げることができないほど重い単数の物品である場合、又は、選別対象物が人手で持ち上げることができないほど重い一塊の物品の集合体である場合に、その選別対象物をクレーンにより吊り上げてその重量を計測して、その選別対象物の重量ランクを判定することができる。
さらに、請求項6記載の発明によれば、既存のクレーンの掛止部に装着するだけで、クレーンに重量ランク判定機能を付与することができる。このため、重量物の重量ランク判定装置を極めて廉価に提供することができる。
なお、請求項6記載の発明において、請求項2乃至請求項5記載の発明を引用する場合は、上述のような効果に加えて、請求項2乃至請求項5に記載される発明の効果を併せた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置の使用状態を示す概念図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置の概念図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置のシステム構成図である。
【図4】本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置により選別対象物の重量ランクを判定する手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置を使用可能なクレーンを備えた搬送装置の一例を示す側面図である。
【図6】本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置を用いて単一の又は一塊の選別対象物の重量ランクを選別する際の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態にクレーン用重量ランク判定装置について図1乃至図6を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
まず、図1乃至図3を参照しながら本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置の概要について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置の使用状態を示す概念図であり、図2は本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置の概念図である。また、図3は本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置のシステム構成図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、従来公知の吊下げ式搬送装置である,例えば,クレーン15に設けられる掛止部18に,例えば,着脱可能に取設されて、クレーン15により吊り上げた被吊り下げ物体14から選別対象物13を1つ取り上げる毎にその選別対象物13の重量ランクを判定して、作業者に又は外部にその判定結果を通知するよう構成されるものである。
このような本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、図2,3に示すように、例えば、合成樹脂製又は金属等からなる筐体状の本体部20の鉛直上下方向のそれぞれの側面に、上方掛止部21,下方掛止部22が設けられ、本体部20の中央には、選別対象物13の重量ランクの判定結果や,入力設定データ等を表示するための出力表示部5、及び、入力設定作業を行うための操作用ボタンからなる入力設定部7を備えるものである。
【0027】
また、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、本体部20内に、図3に示すように、下方掛止部22(図3中には図示せず)に吊下げ保持される被吊り下げ物体14の荷重を計測する計量部2に加え、演算処理部4およびメモリ部3を備えている。
なお、図3に示すメモリ部3内に格納される重量ランク判定基準データ8や,必要に応じて格納される音声出力データ9などのデータの入力設定作業を,本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1において直接行う必要がない場合には、入力設定部7を設ける必要は必ずしもない。より具体的には、演算処理部4に記憶媒体を接続可能に構成しておき、外部のパーソナルコンピュータ等により予め入力設定された重量ランク判定基準データ9を、着脱可能な記憶媒体を介してクレーン用重量ランク判定装置1に提供できるよう構成する場合は、入力設定部7は不要である。
【0028】
さらに、計量部2は、例えば、荷重(力)を電気信号に変換する荷重変換器である、例えば、ロードセル等を備えて、図1に示すように、クレーン15により本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1を介して吊下げ保持される被吊り下げ物体14の荷重を計測できるよう構成されている。
なお、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1においては、その下方掛止部22(図1,2を参照)に吊下げ保持される被吊り下げ物体14の荷重を計測するための構成を総称して計量部2と呼ぶことにする。また、この計量部2により得られた計測データは、本体部20内の演算処理部4に有線又は無線により送信される。
なお、図3に示されるように、被吊り下げ物体14を吊り上げるクレーン15は、駆動機構16を備え、この駆動機構16に接続される操作部17を操作することにより被吊り下げ物体14上げ下げを自在に操作できるよう構成されている。
【0029】
本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1において選別対象物13の重量ランクが判定される手順の一例について図1,3,4を参照しながら詳細に説明する。
図4は本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置により選別対象物の重量ランクを判定する手順を示すフローチャートである。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1を用いて選別対象物13の重量ランクを選別するには、図1に示すように、まず、クレーン15の掛止部18を被吊り下げ物体14のある場所まで移動させるとともに、この掛止部18に本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1の上方掛止部21を掛着して取り付ける(ステップS0)。
この後、下方掛止部22に,被吊り下げ物体14を吊下げるための,例えば,吊下げ用ワイヤー24等を掛止してから、操作部17により駆動機構16を操作してクレーン15により被吊り下げ物体14を吊り上げる(ステップS1)。そして、計量部2において下方掛止部22に吊下げられる被吊り下げ物体14の総重量を計測し、より具体的には、下方掛止部22に吊下げられる吊下げ用ワイヤー24,収容器12,及び,複数の選別対象物13の総重量を計測して(ステップS2)、この計測データを演算処理部4に無線又は有線により送信する。ステップS2において計測された計測データは、演算処理部4において、減算方式により選別対象物13の重量を算出する際の基準値(ゼロ値)として設定される(ステップS3)。
【0030】
さらに、この状態から、図示しない作業者により、収容器12に収容される選別対象物13が1つ取り上げられると(ステップS4)、計量部2における計測データに基づいて,演算処理部4において基準値(ゼロ値)からの重量の減少量が算出され、この重量の減少分が,作業者により取り上げられた選別対象物13の重量として認識される(ステップS5)。
他方、演算処理部4に接続されるメモリ部3には、選別対象物13の重量ランクを判定するための重量ランク判定基準データ8が格納されているので、先のステップS5において得られた1つの選別対象物13の重量データと、重量ランク判定基準データ8とが演算処理部4において比較されて(ステップS6)、先のステップS3において作業者が取り上げた選別対象物13の重量ランクが判定さる(ステップS7)。
そして、ステップS7で得られた重量ランク判定結果は、出力表示部5に文字又は記号又は語句等を用いて表示され(ステップS8)、作業者は、出力表示部5の表示を目視することで、先のステップS3において自らが収容器12から取り上げた選別対象物13の重量ランクを知ることができる。
【0031】
なお、この時、出力表示部5に選別対象物13の重量ランク判定結果と併せて、その選別対象物13の重量を併せて表示してもよい。
そして、上述のステップS1からステップS8における工程のうちの、ステップS4からステップS8までの工程を繰り返すことにより、クレーン15により吊下げられている収容器12内に収容される複数の選別対象物13の重量ランクを順次1つずつ判定することができる。
図4では、ステップS2において計測される重量の計測データを基準値として設定し,減算方式により個々の選別対象物13の重量を算出する場合を例に挙げて説明しているが、これ以外にも、収容器12から選別対象物13を1つ取り上げる毎に計量部2によりクレーン用重量ランク判定装置1の下方掛止部22に吊下げられる被吊り下げ物体14の総重量を計測し、演算処理部3において、選別対象物13を1つ取り上げる前の重量から,選別対象物13を1つ取り上げた後の重量を減算処理して1つの選別対象物13の重量を求める方法を採用してもよい。
【0032】
なお、先の図1には本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1の使用状態を示す例として、収容器12であるかご車に、選別対象物13である大根を多数載置したものを,クレーン用重量ランク判定装置1の下方掛止部22に吊下げ用ワイヤー24を介して吊下げ保持した状態を示している。
従来、大根は畑から収穫した後、その表面に付着している土や汚れを水で洗い流し、大根の表面に付いた水分を乾かしてからそれぞれの重量に基づいて選別し、梱包して市場に出荷される。
市場に供給される大根のサイズは様々であるが、大きいものは1kgを超えるものもあり、このような重量のある野菜を多数収容した収容器12を人手で持ち上げて移動させることは困難である。
従って、大根の選別作業は、大型の自動選別装置を用いて人手に因らず完全に自動化して行うか、あるいは、図1に示すような収容器12であるかご車から1本ずつ作業者が取り上げて、従来公知の重量ランク選別装置までその大根を運んで重量ランクを選別してやる必要があった。
【0033】
前者の場合は、選別作業に人手を要しないので作業効率が高まるものの、高価な据置き型で大型の選別装置(例えば、特許文献3を参照)が必要であり、このような装置を設置するための広いスペースも確保する必要があることから、中・小規模の農家にとっては選別装置を導入すること自体が困難であった。
後者の場合、大掛かりな装置は必要ないものの、特許文献1に開示されるような装置を利用することもできないので、1本の大根を選別するために、収容器12であるかご車から従来公知の重量ランク選別装置まで大根を運んでその重量ランクを選別し、その後、従来公知の重量ランク選別装置から重量ランク選別済の大根を取り上げて、別の収容器12に移したり,あるいは,箱詰めする必要があった。
この場合、特許文献1に開示される装置を用いて選別作業を行う場合と比較して、収容器12であるかご車から選別対象物13である大根を取り上げて従来公知の重量ランク選別装置まで運ぶという作業がその都度余分に必要であり、選別対象物13の選別作業の作業効率を向上することが難しかった。
このような事情に鑑み、発明者らは鋭意研究の結果、既存のクレーン用の計量器に重量ランクを判定する機能を付加することで、従来、特許文献1に開示されるような装置を使用することができなかった選別対象物13に対しても、多数の選別対象物13を収容した収容器12から,選別対象物13を1つずつ取り上げるという作業を行うだけでその選別対象物13の重量ランクを判定可能にすることに成功した。
【0034】
また、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1によれば、上述のような作用,効果を有することにより、作業者が選別対象物13に触れる機会を確実に減らすことができるので、選別対象物13が傷んだり、汚損したりするリスクを小さくすることができる。特に、選別対象物13が、例えば、農産物や水産物等のように,人手が触れることで傷みが生じ易いものである場合には、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1を用いて選別作業を行うことにより、作業者が選別対象物13に触れる機会を確実に減らすことができるので、選別対象物13の品質の低下を好適に抑えることができる。
【0035】
ここで、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1の他の機能について説明する。
本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1においては、特に図示しないが、出力表示部5の向きを変更可能に構成してもよい。より具体的には、本体部20に対する出力表示部5の取付け角度を変更可能なように、例えば、支持アーム(図示せず)を介して本体部20に出力表示部5を取り付けてもよい。この場合、作業者の立位置から見易いように出力表示部5の向きを変更することができる。
このように、出力表示部5の向きを変更可能に構成しておくことで、選別対象物13の選別作業時に、作業者による出力表示部5の視認性が向上し、選別作業の作業効率を高めることができる。
なお、この出力表示部5を用いて作業者に選別対象物13の重量ランク判定結果を知らせる具体的な方法としては、例えば、出力表示部5に選別対象物13の重量ランクを示す、例えば、「S」、「M」、「L」、「LL」、「規格外」などの文字や記号や語句等を表示し、作業者はこの文字や記号や語句等を目視により確認することで、自らが取り上げた選別対象物18の重量ランクの判定結果を知ることができるよう構成するとよい。
【0036】
さらに、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、図3に示すように、出力表示部5に加えて、音声出力部6、及び、メモリ部3に音声出力部6から出力するための音声出力データ9を備えていてもよい。
なお、音声出力データ9とは、選別対象物13の重量ランクを示す、例えば、「S」、「M」、「L」、「LL」、「規格外」などの文字や記号や語句等が読み上げられてなる音声データである。この音声データは、パーソナルコンピュータ等により合成された音声でも良いし、人が発生したものを録音したものでもよい。
上述のような、音声出力部6や音声出力データ9を備えたクレーン用重量ランク判定装置1によれば、重量ランク判定結果を、音声出力部6から音声出力することができるので、作業者は出力表示部5を見なくとも、音声出力される音声を聴くだけで、出力表示部5を目視することなしに自らが取り上げた選別対象物13の重量ランク判定結果を知ることができる。
この場合、選別対象物13の選別作業時に、作業者が選別対象物13の重量ランク判定結果を知るために出力表示部5を目視する行為が必要なくなるので、その分、選別対象物13の選別作業を効率的に行うことができる。
【0037】
なお、図3においては、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1に、出力表示部5と音声出力部6とを併設した場合を例に挙げて説明しているが、メモリ部3に格納するデータの入力設定時に、入力データ等を目視により確認する必要がない場合や、メモリ部3へのデータの入力作業自体が必要ない場合、あるいは、選別対象物13の重量ランク判定結果を出力表示部5にて目視により確認する必要がない場合などには、クレーン用重量ランク判定装置1に出力表示部5を設けることなく音声出力部6のみを備える構成としてもよい。
この場合、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1の構成を一層シンプルにすることができるので、廉価な製品を提供することができる。
【0038】
加えて、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、図2に示すように、演算処理部4において得られた重量ランク判定結果を外部に無線又は有線により出力するためのデータ出力部10を備えてもよい。
この場合、演算処理部4において得られた重量ランク判定結果をリアルタイムで外部に出力できるよう構成してもよいし、演算処理部4において得られた重量ランク判定結果データを、一旦メモリ部3に格納しておき、後で、全ての又は所望の重量ランク判定結果データをまとめて外部に出力できるよう構成してもよい。
この場合、重量ランク判定結果と併せて、演算処理部4において求められた個々の選別対象物13の重量も外部に出力可能としてもよい。
この場合、外部に出力された重量ランク判定結果を用いることで、製品(選別対象物)の出荷状況や在庫管理、あるいは、判定結果の確認作業等を容易にすることができる。
【0039】
また、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、特に図示しないが、演算処理部4において得られた重量ランク判定結果を、その都度,又は,まとめて印刷出力するための印刷出力部11を備えてもよい。
この場合、重量ランク判定結果を、その都度,又は,まとめてクレーン用重量ランク判定装置1から印刷出力させることができるので、選別作業結果の記録作成にかかる手間を省くことができる。
また、例えば、それぞれの選別対象物13の重量ランク判定結果を、重量ランク判定結果が確定される度毎に印刷出力されるようにし、その際に印刷用紙として,例えば,粘着貼付可能なラベル用紙を用い、それぞれの選別対象物13に対して重量ランク判定結果が印刷されたシール状のラベルを貼付け可能に構成してもよい。この場合、選別作業が完了した選別対象物13に直接、重量ランク判定結果を表示しておくことができるので、後になって、その選別対象物13の重量ランクが不明になるのを防止することができる。
【0040】
ここで、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1を利用可能なクレーン15付き搬送装置の一例について図5を参照しながら説明する。
図5は本発明の実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置を使用する際に用いるクレーン付き搬送装置の一例を示す側面図である。
本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、例えば、図5に示すような、従来公知のトラック等の搬送装置23に備えられるクレーン15の掛止部18に装着して使用することができる。この場合、クレーン15の掛止部18の操作は、操作部17により行うことができる。
なお、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、図5に示すようなクレーン15だけでなく、搬送装置23を備えない他の大型クレーンにおいても使用することができる。
本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、クレーン15やクレーン15を備えた搬送装置23とは別体に構成されるものである。また、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1は、従来公知の携帯型スケールに重量ランクの判定に必要な構成として、例えば、演算処理部4,メモリ部3などを付加するだけで製品とすることができる。
従って、使用者が,例えば,クレーン15を備えた従来公知の搬送装置23や、据付タイプのクレーン15を所有している場合は、クレーン用重量ランク判定装置1を準備するだけで、既存のクレーン15に重量ランク判定機能を付加することができる。
この結果、農業、水産業、製造業、運輸・流通、廃棄物処理などの様々な分野において、重量ランクを判定する設備を導入するためにかかるコストを廉価にできるというメリットを有する。
【0041】
さらに、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1の構成をそのまま用いて下記のような用途に使用することもできる。
これまでは、例えば、大根のように、個々の選別対象物13が外形も重量も大きく収容器12に複数の選別対象物13を収容した際に,その収容器12を人手で持ち上げることが難しい場合に、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1を用いながら選別作業を行うケースについて述べてきた。これに対して、本実施の形態に係る重量ランク判定機能付搬送装置1は、単一の又は一塊の選別対象物が人手で持ち上げられない場合に,その単一の又は一塊の選別対象物の重量ランクを選別するための装置としても用いることも可能である。
【0042】
図6は本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置を用いて単一の又は一塊の選別対象物の重量ランクを選別する際の手順を示すフローチャートである。なお、図1乃至図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図6に示すように、人手で持ち上げることが困難な単一の又は一塊の選別対象物の重量ランクを選別するには、まず、クレーン15のアームを選別しようとする単一の又は一塊の選別対象物があるところまで移動してから,クレーン15の掛止部18に本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1を装着する(ステップS11)。次いで、目的とする単一の又は一塊の選別対象物をクレーン用重量ランク判定装置1の下方掛止部22にワイヤーロープ等を介して掛止してから,操作部17により駆動機構16を操作して被吊り下げ物体14をクレーン15により吊下げ保持する(ステップS12)とともに、このとき、計量部2により目的とする単一の又は一塊の選別対象物の重量を計測して計測データを得る(ステップS13)。
次いで、演算処理部4において、この計測データとメモリ部3に格納される重量ランク判定基準データ8とを比較して(ステップS14)、その単一の又は一塊の選別対象物の重量ランクを判定する(ステップS15)。
最後に、先のステップS15で得られた重量ランク判定結果を作業者に対して出力すればよい(ステップS16)。
なお、重量ランク判定結果の出力方法としては、先に述べたように、出力表示部5に文字や記号や語句等により表示してもよいし、音声出力部6を用いて音声のみにより出力しても良いし、あるいは、出力表示部5における出力と,音声出力部6による音声出力を同時に行ってもよい。また、データ出力部10を備えて、有線又は無線通信にて、クレーン用重量ランク判定装置1の外にデータ出力を行ってもよいし、印刷出力部11を備えて重量ランク判定結果を印刷出力してもよい。
この場合、演算処理部4は、計量部2において測定された重量の減算処理を行う必要がないので、メモリ部3に格納される重量ランク判定基準データ8と、計量部2により測定された計測データとを比較して、目的とする単数又は一塊の選別対象物の重量ランクの判定のみを行うことになる。
また、重量ランクを選別すべき選別対象物が複数ある場合には、上記ステップS11からステップS16までの工程を繰り返せばよい。
なお、図1,3,4に示すような複数の選別対象物13の重量ランクを選別する場合と、図5に示すような単数又は一塊の選別対象物の重量ランクを選別する場合とを、1台のクレーン用重量ランク判定装置1で兼ねる場合には、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1に、モード切替スイッチを設けておくとよい。
【0043】
このように、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1によれば、人手による持ち上げが困難な単一の又は一塊の選別対象物の重量ランクを判定してその結果を出力することができる。
なお、本願明細書では選別対象物13が大根である場合を例に挙げて説明したが、選別対象物13が大根に限定される必要は特になく、南瓜、西瓜等のウリ類や、白菜等大型で重量の大きい農産物の選別作業に特に適している。また、本実施の形態に係る重量ランク判定機能付搬送装置1は、農産物のみならず、水産物や水産加工品、工業製品、小包や荷物、廃棄物や、採掘された鉱物などの重量ランクの選別にも支障なく使用することができる。
また、選別対象物は必ずしも単数である必要はなく、複数個の物品が組み合わされてなる一塊の物品でもよい。
【0044】
なお、特に図示しないが、図3に示す演算処理部4、メモリ部3、出力表示部5、音声出力部6、入力設定部7、データ出力部10及び印刷出力部11を作動させるための電力供給源である、例えば、電池やバッテリーは、クレーン用重量ランク判定装置1の内部に内蔵していてもよいし、必要に応じてクレーン用重量ランク判定装置1の外部から電力を取り込めるように、クレーン用重量ランク判定装置1にコンセントや電力取り込み部等を備えておいても良い。
なお、本実施の形態においては、収容器12の一例として、図3に示すような容器状のものや、図1に示すようなかご車状のものを用いる場合を例に挙げて説明しているが、収容器12は、図示したような形態に限定される必要はなく、単数又は複数の選別対象物12を収容して一時に吊下げ保持できるような構造を有するものであればどのような形態でもよい。より具体的には、収容器12,又は,収容器12及び吊下げ用ワイヤー24の組み合わせを、例えば、吊下げ用フックを備えたネットや布からなる袋状のもので代用することも可能である。
また、特に本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1により単数又は一塊の選別対象物の重量ランクを判別する場合、選別対象物を、例えば、ワイヤーロープのみで吊下げ保持可能な場合は、必ずしも収容器12を用いる必要はない。
【0045】
さらに、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1の使用が可能なクレーンの形態としては、例えば、天井クレーン、ジブクレーン、橋形クレーン、アンローダ、ケーブルクレーン、テルハ、移動式クレーン、デリックなどがある。
また、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1を使用する際に用いるクレーンが大型の場合や、特殊な形態の場合、作業者の立ち位置からクレーン用重量ランク判定装置1の出力表示部5が目視できなかったり、あるいは、音声出力部6から出力される音声が聞き取れないことも想定される。
このような場合には、本実施の形態に係るクレーン用重量ランク判定装置1の本体部20と別体に、出力表示部5や音声出力部6を単独で,あるいは,これらを組み合せたものを作製して受信機を設けておき、他方、本体部20には発信機を設け、本体部20から有線又は無線通信により、本体部20と別体に設けられた出力表示部5や音声出力部6,あるいは,これらの組み合わせを備える受信機に対して重量ランク判定結果を送信して、作業者の手元や身近な位置において文字表示,あるいは,音声により、重量ランク判定結果を出力できるよう構成してもよい(図示せず)。
この場合、被吊り下げ物体14の吊り上げに使用するクレーンが大型であっても、重量ランク判定作業の作業性が損なわれる恐れが少ない。従って、大型のクレーンを使用する際にも使い勝手の良いクレーン用重量ランク判定装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、クレーンに着脱可能に装着されて,吊下げ保持された選別対象物の重量ランクを判定することができるクレーン用重量ランク判定装置であり、農業、水産業、運輸・流通、廃棄物処理、製造業、鉱業などの分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…クレーン用重量ランク判定装置 2…計量部 3…メモリ部 4…演算処理部 5…出力表示部 6…音声出力部 7…入力設定部 8…重量ランク判定基準データ 9…音声出力データ 10…データ出力部 11…印刷出力部 12…収容器 13…選別対象物 14…被吊り下げ物体 15…クレーン 16…駆動機構 17…操作部 18…掛止部 19…地上 20…本体部 21…上方掛止部 22…下方掛止部 23…搬送装置 24…吊下げ用ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容器とこの収容器に収容された複数の選別対象物からなる被吊り上げ物体と,クレーンの掛止部との間に介設されて,個々の前記選別対象物の重量ランクを判定するクレーン用重量ランク判定装置であって、
このクレーン用重量ランク判定装置は,前記被吊り上げ物体を吊下げ保持する吊下げ部と、
前記吊下げ部に吊下げられた前記被吊り上げ物体の総重量を計量する計量部と、
重量ランクを判定するための重量ランク判定基準データを格納するメモリ部と、
複数の前記選別対象物を前記収容器に収容したまま前記クレーンで吊り上げた状態から,前記収容器内の前記選別対象物を1つ取り出した際の前記計量部における計測値の変化量,及び,前記メモリ部に格納される前記重量ランク判定基準データに基づいて, 前記収容器から取り出された1つの前記選別対象物の重量ランクを判定する演算処理部と、
前記演算処理部において得られた重量ランク判定結果を表示する出力表示部とを有することを特徴とするクレーン用重量ランク判定装置。
【請求項2】
前記出力表示部の向きを変更するための表示部取付け角度変更構造を備えることを特徴とする請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置。
【請求項3】
前記出力表示部に代えて又は加えて、音声出力部を備え、
前記メモリ部は、前記重量ランク判定基準データに加えて,前記重量ランク判定結果を音声出力するための音声出力データを格納することを特徴とする請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置。
【請求項4】
前記出力表示部に代えて又は加えて、前記演算処理部において得られた前記重量ランク判定結果を外部に無線又は有線により出力するためのデータ出力部を備えることを特徴とする請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置。
【請求項5】
前記出力表示部に代えて又は加えて、前記演算処理部において得られた前記重量ランク判定結果を印刷出力するための印刷出力部を備えることを特徴とする請求項1記載のクレーン用重量ランク判定装置。
【請求項6】
前記クレーンは、前記被吊り上げ物体に代えて,単数又は一塊の選別対象物を吊り上げ、
前記演算処理部は、単数又は一塊の前記選別対象物を持ち上げた際に前記計量部において計測される計測値,及び,前記メモリ部に格納される前記重量ランク判定基準データに基づいて, 単数又は一塊の前記選別対象物の重量ランクを判定することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のクレーン用重量ランク判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113705(P2013−113705A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259976(P2011−259976)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000154772)株式会社宝計機製作所 (10)
【Fターム(参考)】