説明

クレーン装置およびクレーン制御方法

【課題】蓄電装置の蓄電電力を補機設備で利用する。
【解決手段】蓄電装置6により、エンジン発電装置1またはインバータ41,42から共通母線9に出力された余剰電力を蓄電電力として蓄電して、直流電力の不足時に当該蓄電電力を共通母線9へ出力し、インバータ44により、共通母線上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備5へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン装置に関し、特に直流電力をエンジン駆動で発電するエンジン駆動発電方式のクレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾のコンテナヤード等において、船舶やトレーラに対してコンテナなどの荷物の積み降ろしを行うクレーン装置では、複数の電動機を用いて、荷物の昇降、さらには架台の走行や横行などの動作を行う。これら電動機へ動作電力を供給するため、エンジン駆動発電方式では、ディーゼルエンジンを用いて発電機を駆動するエンジン発電装置を用いて必要な電力を各電動機へ供給する構成となっている。
【0003】
このようなクレーン装置では、荷物の巻き上げ時などは最大負荷となるが、荷物の巻き下げ時など電力をほとんど必要としない場合もあり、負荷変動が大きい。したがって、最大負荷時に見合った電力を発電機から供給するためにはディーゼルエンジンや発電機として大型のものが必要となるものの、平均負荷を上回る設備規模となるため、設備コストや運転コストの面で非効率であった。
【0004】
従来、このようなクレーン装置に蓄電装置を設けて、常時、エンジン発電装置で発電するとともに、最大負荷時などに蓄電装置から並列的に電力を供給し、回生時に発生した余剰電力を蓄電装置へ蓄電するものが提案されている(例えば、特許文献1など参照)。これにより、蓄電装置から電動機に対して電力が一時的に供給されるため、ディーゼルエンジンや発電機の規模を縮小でき、設備コストや運転コストの面で効率を改善することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−163574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、エンジン発電装置で発電した交流電力を、直流電力に変換して電動機や蓄電装置へ供給するので、回生時に得られた電動機からの余剰電力を蓄積装置で蓄電できるものの、エンジン発電装置で発電した交流電力を直接補機設備に供給しているため、低負荷時にエンジン発電装置の回転速度を低減することができないという問題点があった。
【0007】
クレーン装置には、照明装置、空調装置、あるいはコントローラなど、クレーン装置の付帯設備として各種補機設備が設けられている。これら補機設備は、交流電力で動作するため、一般的には、従来技術のようにエンジン発電装置で発電した交流電力で補機設備を動作させている。
したがって、例えばエンジン発電装置の燃費を改善することを目的として、低負荷時にエンジン発電装置の回転速度を低減して、規定の電圧や周波数の交流電力を得ることができなくなった場合、この交流電力を利用している補機設備の動作が不可能となる。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、エンジン発電機の燃費改善のため、負荷に応じてエンジンの回転速度を変化させることができ、蓄電装置の蓄電電力を補機設備で利用できるクレーン装置およびクレーン制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかるクレーン装置は、エンジンにより直流発電機を駆動して得られた直流電力を、電圧昇圧装置で昇圧した後に共通母線へ出力するエンジン発電装置と、共通母線上の直流電力を変換して荷物の積み降ろしを行う電動機へ電力を供給するとともに、回生時に当該電動機で発生した電力を直流電力に変換して共通母線へ出力するインバータと、共通母線上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備へ供給する補機インバータと、当該クレーン装置の動作状況に応じて発電装置のエンジン回転速度を制御するコントローラとを備えている。
【0010】
この際、エンジン発電装置またはインバータから共通母線に出力された余剰電力を蓄電電力として蓄電し、直流電力の不足時に当該蓄電電力を共通母線へ出力する蓄電装置をさらに備えてもよい。
【0011】
また、本発明にかかるクレーン制御方法は、エンジン発電装置により、エンジンで直流発電機を駆動して得られた直流電力を、電圧昇圧装置で昇圧した後に共通母線へ出力するステップと、インバータにより、共通母線上の直流電力を変換して荷物の積み降ろしを行う電動機へ電力を供給するともとに、回生時に当該電動機で発生した電力を直流電力に変換して共通母線へ出力するステップと、補機インバータにより、共通母線上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備へ供給するステップと、コントローラにより、当該クレーン装置の動作状況に応じて発電装置のエンジン回転速度を制御するステップとを備えている。
【0012】
この際、蓄電装置により、エンジン発電装置またはインバータから共通母線に出力された余剰電力を蓄電電力として蓄電し、直流電力の不足時に当該蓄電電力を共通母線へ出力するステップをさらに備え、コントローラにより、当該クレーン装置の運転状況と蓄電装置の蓄電量によりエンジン回転速度を制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンジン発電装置から出力された共通母線上の直流電力がインバータにより変換されて荷物の積み降ろしを行う電動機へ電力を供給されるともとに、回生時に当該電動機で発生した電力が直流電力に変換されて共通母線へ出力され、共通母線上の直流電力が補機インバータにより交流電力に変換されて当該クレーン装置の補機設備へ供給され、当該クレーン装置の動作状況に応じてコントローラにより発電装置のエンジン回転速度が制御されるため、例えば負荷に応じてエンジン発電装置の回転速度が変化した場合でも、補機インバータによって変換された定電圧定周波数の交流電力で、補機設備の安定動作を維持することが可能となる。
【0014】
これにより、エンジンの回転速度を上昇させても、共通母線9の直流電力を利用している補機設備の安定動作を維持することが可能となる。
したがって、クレーン装置全体の動作を正常に維持しつつ、エンジン発電装置の燃費を改善するため、負荷変動に従ってエンジン回転速度を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[本実施の形態の構成]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置について説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置の構成を示す機能ブロック図である。
このクレーン装置は、エンジン駆動で発電した電力を共通母線に供給することにより、共通母線に接続された電動機を駆動して荷物の積み降ろしを行う装置であり、主な構成として、エンジン発電装置1、主巻電動機30、走行電動機31,32、横行電動機33、インバータ(INV)41〜44、補機設備5、蓄電装置6、コントローラ7、および共通母線9が設けられている。
【0016】
本実施の形態は、エンジン発電装置1により、エンジンで直流発電機を駆動して得られた直流電力を、電圧昇圧装置で昇圧した後に共通母線へ出力し、インバータ41,42により、共通母線9上の直流電力を変換して荷物の積み降ろしを行う電動機30へ電力を供給するとともに、回生時に電動機30で発生した電力を直流電力に変換して共通母線9へ出力し、インバータ44により、共通母線9上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備5へ供給するようにしたものである。
【0017】
以下、本実施の形態にかかるクレーン装置の構成について詳細に説明する。
エンジン発電装置1は、ディーゼルエンジン(DE)11、発電機(G)12、および電圧昇圧装置13を有し、ディーセルエンジン11で発電機12を駆動することにより直流電力を発電し、その直流電力を電圧昇圧装置13により昇圧して出力する装置であり、エンジン回転速度を示すコントローラ7からの運転指示10Aに基づいて、ディーゼルエンジン11のエンジン回転速度を制御する機能を有している。
【0018】
主巻電動機30は、荷物の昇降を行うための交流電動機である。走行電動機31,42は、架台の走行を行うための交流電動機である。横行電動機33は、架台の横行を行うための交流電動機である。
インバータ41は、共通母線9上の直流電力を交流電力に変換して主巻電動機30および走行電動機31へ供給するとともに、回生時に発生した主巻電動機30からの交流電力を直流電力に変換して共通母線9へ出力するDC/AC変換器である。
インバータ42は、共通母線9上の直流電力を交流電力に変換して主巻電動機30および走行電動機32へ供給するとともに、回生時に発生した主巻電動機30からの交流電力を直流電力に変換して共通母線9へ出力するDC/AC変換器である。
【0019】
インバータ43は、共通母線9上の直流電力を交流電力に変換して横行電動機33へ供給するDC/AC変換器である。
インバータ(補機インバータ)44は、共通母線9上の直流電力を交流電力に変換して照明装置、空調装置、あるいはコントローラ7などの制御装置を含む各種の補機設備5の電源として供給するDC/AC変換器である。
【0020】
蓄電装置6は、電池やコンデンサなどの蓄電池を内蔵する回路装置であり、共通母線9へ供給された余剰電力を蓄電電力として蓄電池に蓄電する機能と、蓄電池に蓄電した蓄電電力を共通母線9へ出力する機能とを有している。余剰電力としては、例えばクレーン電動機の1つである主巻電動機30から荷物の巻き下げ時に発生した回生電力があり、インバータ41,42を介して共通母線9へ供給される。また、負荷が低下した場合、エンジン発電装置1から共通母線9へ供給される直流電力が余剰電力となる。
【0021】
コントローラ7は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、マイクロプロセッサまたは周辺回路に設けられたメモリからプログラムを読み込んで実行することにより、プログラムと上記ハードウェアとを協働させて、クレーン装置全体を制御するための各種機能を有している。
【0022】
コントローラ7の主な機能としては、操作レバーや操作スイッチを介して検出した操作者の指令入力70に基づいて、各種コマンド4Aをやり取りすることによりインバータ41〜44を制御して、荷物の昇降、架台の走行や横行などの運転を制御するクレーン運転機能、共通母線9に対するエンジン発電装置1からの電力供給状況を確認する電力供給状況確認機能、および入力された各種指令や電力供給状況などから得られる当該クレーン装置の動作状況に基づいて新たなエンジン回転速度を算出し、そのエンジン回転速度を運転指示10Aによりエンジン発電装置1へ指示する回転速度制御機能がある。
【0023】
共通母線9に対するエンジン発電装置1からの電力供給状況は、例えば共通母線9の供給電圧を監視すれば把握できる。指令入力に基づき荷物の巻き上げや、架台の走行や横行を行う場合、対応する電動機30〜33を駆動した時点で、共通母線9上の直流電力が使用されるため供給電圧が低下する。
したがって、電力供給状況確認機能により、例えばエンジン発電装置1から共通母線9への配線上に設けた検出器からの検出値15Aに基づいて共通母線9の供給電圧を検出し、予めメモリに保存しておいた当該クレーン動作に対応する下限しきい値や上限しきい値を読み出して比較することにより、電力供給状況の過不足を確認できる。
【0024】
[本実施の形態の動作]
次に、図2および図3を参照して、本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置の動作としてコントローラ7におけるエンジン回転速度制御について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置のエンジン回転速度制御処理を示すフローチャートである。図3は、エンジン発電装置の発電電力とエンジン回転速度の関係を示す動作特性である。
【0025】
コントローラ7は、操作者による運転開始操作の検出に応じて、図2のエンジン回転速度制御処理を開始する。
コントローラ7は、まず、エンジン回転速度制御機能により、操作者から指令入力70の有無を確認し(ステップ100)、指令入力70があった場合(ステップ100:YES)、その指令入力70で入力された荷重および指令速度に応じたエンジン回転速度Nを示す運転指示10Aをエンジン発電装置1へ出力し(ステップ101)、ステップ100へ戻る。
【0026】
エンジン発電装置1は、発電電力Pとエンジン回転速度Nについて、図3に示すような動作特性を有している。この種の動作特性は、一般的に、エンジン回転速度Nの増加に応じて発電電力Pが単調増加し、所定の最大電力値に達した後に減衰する傾向がある。したがって、コントローラ7のメモリにこのような動作特性を関数や表形式で予め保存しておけば、所望の発電電力Pすなわち指令供給電力を供給するのに必要なエンジン回転速度Nを算出できる。
【0027】
したがって、荷重および指令速度から指令供給電力(=荷重×指令速度)を算出できることから、上記動作特性を参照して、指令供給電力に対応するエンジン回転速度を算出し、運転指示10Aによりエンジン発電装置1へ指示すればよい。
これにより、エンジン発電装置1のディーゼルエンジン11がエンジン回転速度Nで運転され、操作者から指令入力された荷重および指令速度に対応する指令供給電力が発電機12で発電される。
【0028】
一方、ステップ100において、操作者からの指令入力70がなかった場合(ステップ100:NO)、コントローラ7は、電力供給状況確認機能により、共通母線9の供給電圧Vを検出し(ステップ102)、当該クレーン動作に対応してメモリに保存されている下限しきい値VLと比較する(ステップ103)。
【0029】
ここで、供給電圧Vが下限しきい値VLより低い場合(ステップ103:YES)、エンジン発電装置1からの運転通知10Bにより取得したエンジン回転速度を所定分だけ増加して新たなエンジン回転速度Nを算出し(ステップ104)、新たなエンジン回転速度Nを示す運転指示10Aをエンジン発電装置1へ出力し(ステップ107)、ステップ100へ戻る。
これにより、共通母線9の直流電力が使用されて供給電圧が下限しきい値より低下している場合には、エンジン発電装置1のエンジン回転速度が増やされて、より多くの発電電力が共通母線9へ供給される。
【0030】
また、ステップ105において、供給電圧Vが下限しきい値VLより低くない場合(ステップ103:NO)、電力供給状況確認機能は、共通母線9の供給電圧Vを、当該クレーン動作に対応してメモリに保存されている上限しきい値VHと比較する(ステップ105)。
【0031】
ここで、供給電圧Vが上限しきい値VHより低い場合(ステップ105:YES)、エンジン発電装置1からの運転通知10Bにより取得したエンジン回転速度を所定分だけ低減して新たなエンジン回転速度Nを算出し(ステップ106)、新たなエンジン回転速度Nを示す運転指示10Aをエンジン発電装置1へ出力し(ステップ107)、ステップ100へ戻る。
これにより、共通母線9の直流電力が使用されず供給電圧が上限しきい値より上昇している場合には、エンジン発電装置1のエンジン回転速度が低減されて、共通母線9へ供給される直流電力が抑制される。
【0032】
一方、蓄電装置6は、共通母線9の直流電力を常時監視しており、直流電力の供給電圧Vが予め設定されている蓄電基準電圧を上回った場合、共通母線9に余剰電力が発生していると判断して、その余剰電力を蓄電池へ蓄電電力として蓄電する。また、直流電力の供給電圧Vが予め設定されている放電基準電圧を下回った場合、共通母線9で直流電力が不足していると判断して、蓄電池の蓄電電力を共通母線9へ出力する。
したがって、エンジン発電装置1のエンジン回転速度が低く設定された場合、共通母線9へ出力される直流電力の供給電圧Vが低下するため、蓄電装置6の蓄電電力が共通母線9へ出力され、インバータ44を介して補機設備5へ供給される。
【0033】
[本実施の形態の動作例]
次に、図4を参照して、本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置の動作例について説明する。図4は、本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置の動作例を示すタイミングチャートである。ここでは、クレーン動作の開始に応じてエンジン発電装置1のエンジン回転速度が増加した後、クレーン動作作の停止に応じてエンジン発電装置1のエンジン回転速度が低減する場合を例として説明する。
【0034】
時刻T0以前においては、クレーン運転が開始される前の準備状態にあり、エンジン発電装置1のディーゼルエンジンは、エンジン回転速度Naで運転されている。このとき、エンジン発電装置1からは規定直流電力PMaが出力されている。また、蓄電装置6の蓄電電力61は、蓄電容量と等しいPBaまで蓄電されているものとする。
【0035】
次に、時刻T0において、荷物の巻き上げ指令を示す指令入力70が行われた場合、コントローラ7は、その操作指令に応じたエンジン回転速度Nbを示す運転指示10Aをエンジン発電装置1へ出力する。これによりエンジン発電装置1のエンジン回転速度がNaからNbへ徐々に上昇し、エンジン発電装置1からの直流電力15が増加し、この直流電力15と蓄電装置6からの蓄電電力61がインバータ41,42を介して主巻電動機30へ供給される。
【0036】
この際、時刻T0〜T1の期間では、エンジン発電装置1からの直流電力15が徐々に増加するものの、主巻電動機30への電力供給量が大きく、直流電力15の供給電圧が低下する。蓄電装置6は、常時、共通母線9の供給電圧Vを監視しており、供給電圧Vが放電基準電圧を下回った場合、蓄電池の蓄電電力を共通母線9へ出力し、直流電力15の不足を補う。
その後、時刻T1に、エンジン回転速度NがNbに到達して一定となり、直流電力15として最大直流電力PMbが出力される。これ以降、直流電力15の供給電圧が正常範囲に維持され、蓄電装置6から共通母線9に対する蓄電電力の出力は停止する。
【0037】
また、時刻T2に、荷物の巻き下げ指令を示す指令入力70が行われた場合、コントローラ7は、その操作指令に応じたエンジン回転速度Naを示す運転指示10Aをエンジン発電装置1へ出力する。これによりエンジン発電装置1のエンジン回転速度がNbからNaへ徐々に低下し、エンジン発電装置1からの直流電力15が低減する。
その後、時刻T3に、エンジン回転速度NがNaに到達して一定となり、直流電力15として規定直流電力PMaが出力される。
【0038】
この際、時刻T2から時刻T3までの期間には、荷物の巻き下げに応じて主巻電動機30で回生電力が発生し、インバータ41,42から共通母線9へ余剰電力として供給される。蓄電装置6は、常時、共通母線9の供給電圧を監視しており、供給電圧が蓄電基準電圧を上回った場合、共通母線9上の余剰電力を蓄電池に蓄電する。
【0039】
コントローラ7は、時刻T3以降、次の指令入力70が入力されるか待機し、所定の待機期間経過しても新たな操作入力がない場合、時刻T3から待機期間経過後の時刻T4に、クレーン装置をアイドリンク状態とし、エンジン回転速度Niを示す運転指示10Aをエンジン発電装置1へ出力する。これにより、エンジン発電装置1では、ディーゼルエンジン11の回転速度が低下して、発電機12により十分な電力を発電できなくなり、直流電力15がPMiまで低下し、供給電圧も低下する。
【0040】
一方、蓄電装置6は、常時、共通母線9の供給電圧Vを監視しており、時刻T4以降、供給電圧Vが放電基準電圧を下回った場合、蓄電池の蓄電電力を共通母線9へ出力し、直流電力15の不足を補う。これにより、蓄電装置6から共通母線9へ出力された蓄電電力がインバータ44を介して補機設備5へ供給され、補機設備5の安定動作が維持される。
【0041】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、エンジン発電装置1により、エンジンで直流発電機を駆動して得られた直流電力を、電圧昇圧装置で昇圧した後に共通母線へ出力し、インバータ41,42により、共通母線9上の直流電力を変換して荷物の積み降ろしを行う電動機30へ電力を供給するとともに、回生時に電動機30で発生した電力を直流電力に変換して共通母線9へ出力し、インバータ44により、共通母線9上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備5へ供給するようにしたので、例えば高負荷時にエンジン発電装置の回転速度を上昇させても、共通母線9の直流電力を利用している補機設備の安定動作を維持することが可能となる。
したがって、クレーン装置全体の動作を正常に維持しつつ、低負荷時にエンジン回転速度を低減できる。
【0042】
また、蓄電装置6により、エンジン発電装置1またはインバータ41,42から共通母線9に出力された余剰電力を蓄電電力として蓄電して、直流電力の不足時に当該蓄電電力を共通母線9へ出力し、インバータ44により、共通母線上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備5へ供給するようにしたので、例えば低負荷時にエンジン発電装置の回転速度を低減して、規定の電圧や周波数の交流電力を得ることができなくなった場合でも、蓄電装置6の蓄電電力が共通母線9へ出力される。
【0043】
これにより、エンジンの回転速度を低下させても蓄電装置6の蓄電電力に基づいて、共通母線9の直流電力を利用している補機設備の安定動作を維持することが可能となる。
したがって、クレーン装置全体の動作を正常に維持しつつ、低負荷時にエンジン回転速度を低減できることから、エンジン発電装置1の燃費を効果的に削減でき、環境への影響も削減することが可能となる。
【0044】
[実施の形態の拡張]
以上の実施の形態では、エンジン発電装置1から出力される直流電力15の供給電圧の低下が、クレーン動作の停止などに起因する負荷低減に応じたエンジン発電装置1のエンジン回転速度の低減により発生するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、負荷低減に応じて、エンジン発電装置1の運転停止や発電機12の励磁停止を行った場合でも、直流電力15の供給電圧が低下する。このような場合でも、上記実施の形態を適用でき、同様の作用効果が得られる。
【0045】
また、以上の実施の形態では、エンジン発電装置1において、ディーゼルエンジン11で直流の発電機12を駆動することにより、直流電力15を供給する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば発電機12に代えて交流発電機を用い、この交流発電機で発電した交流電力をAC/DCインバータで直流電力に変換して昇圧した後、共通母線9へ出力する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置のエンジン回転速度制御処理を示すフローチャートである。
【図3】エンジン発電装置の発電電力とエンジン回転速度の関係を示す動作特性である。
【図4】本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1…エンジン発電装置、10A…運転指示、11…ディーゼルエンジン、12…発電機、13…電圧昇圧装置、15…直流電力、30…主巻電動機、31,32…走行電動機、33…横行電動機、34…負荷電力、41〜44…インバータ、5…補機設備、6…蓄電装置、7…コントローラ、70…指令入力、9…共通母線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより直流発電機を駆動して得られた直流電力を、電圧昇圧装置で昇圧した後に共通母線へ出力するエンジン発電装置と、
前記共通母線上の直流電力を変換して荷物の積み降ろしを行う電動機へ電力を供給するとともに、回生時に当該電動機で発生した電力を直流電力に変換して前記共通母線へ出力するインバータと、
前記共通母線上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備へ供給する補機インバータと、
当該クレーン装置の動作状況に応じて前記発電装置のエンジン回転速度を制御するコントローラと
を備えることを特徴とするクレーン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーン装置において、
前記エンジン発電装置または前記インバータから前記共通母線に出力された余剰電力を蓄電電力として蓄電し、前記直流電力の不足時に当該蓄電電力を前記共通母線へ出力する蓄電装置をさらに備えることを特徴とするクレーン装置。
【請求項3】
エンジン発電装置により、エンジンで直流発電機を駆動して得られた直流電力を、電圧昇圧装置で昇圧した後に共通母線へ出力するステップと、
インバータにより、前記共通母線上の直流電力を変換して荷物の積み降ろしを行う電動機へ電力を供給するとともに、回生時に当該電動機で発生した電力を直流電力に変換して前記共通母線へ出力するステップと、
補機インバータにより、前記共通母線上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備へ供給するステップと、
コントローラにより、当該クレーン装置の動作状況に応じて前記発電装置のエンジン回転速度を制御するステップと
を備えることを特徴とするクレーン制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のクレーン制御方法において、
蓄電装置により、前記エンジン発電装置または前記インバータから前記共通母線に出力された余剰電力を蓄電電力として蓄電し、前記直流電力の不足時に当該蓄電電力を前記共通母線へ出力するステップをさらに備え、
前記コントローラにより、当該クレーン装置の運転状況と前記蓄電装置の蓄電量によりエンジン回転速度を制御する
ことを特徴とするクレーン制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−247591(P2008−247591A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93874(P2007−93874)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】