説明

クロコニウム色素化合物、静電荷像現像用トナー

【課題】不可視性、光安定性に優れた新規な構造のクロコニウム色素化合物、それを利用した静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】式(1)で示されるクロコニウム色素化合物、これを含む静電荷像現像用トナー。


(R11〜R14はアルキル基等を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、赤外線吸収色素として利用される新規なクロコニウム色素に関する。また、本発明は、それを利用した静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロコニウム色素は、一般的に、赤外線吸収色素として利用されている。この赤外線吸収色素を含む工業製品としては、例えば、複写機、プリンタ、印刷機などで広く普及している電子写真方式に利用されるトナーがある。
【0003】
赤外線吸収色素を含むトナーは、加圧や加熱による弊害のない光を利用した光定着法(フラッシュ定着法とも呼ばれる)に適用されたり、不可視画像(不可視情報)の形成に利用されたりしている(例えば、特許文献1〜16)。
【0004】
不可視画像は、その存在を目視で認識が容易ではなく、主に赤外線吸収パターンを記録媒体表面に形成したものであり、個人情報等の何らかの特定の情報を有する情報パターンや、検知マークのような非情報パターンを記録媒体に付与することができる。情報パターンとしては、コードパターンを挙げることができる。コードパターンとしては、バーコードを例示でき、バーコードは1次元のバーコード以外に2次元コード等がある。また、検知マークは、光学的検知方法を用いた複写機にて画像を形成する際に、光学的に検知されない透明シートの紙送りタイミング等の設定のために設けられるマークである。
【0005】
現在、このように利用され得るクロコニウム色素は、光安定性が十分でなく、実用化が困難であるのが現状である。また、クロコニウム色素は、不可視画像の形成に利用する場合、その存在を目視で認識されにくいことも強く要求されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−210987号公報
【特許文献2】特開2000−207512公報
【特許文献3】特開2000−221637公報
【特許文献4】特開2000−227950公報
【特許文献5】特開2001−10266公報
【特許文献6】特開2001−10267公報
【特許文献7】特開2001−294785公報
【特許文献8】特開2002−132103公報
【特許文献9】特開2002−146254公報
【特許文献10】特開2004−213253公報
【特許文献11】特開2004−213259公報
【特許文献12】特開2005−221891公報
【特許文献13】特開2005−221892公報
【特許文献14】特開2005−227370公報
【特許文献15】特開2005−233990公報
【特許文献16】特開2005−249968公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の諸問題に鑑み、不可視性、光安定性に優れた新規な構造のクロコニウム色素化合物を提供することを目的とする。また、それを利用した静電荷像現像用トナーを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
第1の本発明は、下記一般式(1)で示されるクロコニウム色素化合物である。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)中、R11〜R14は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換のアミド基を示す。)
【0011】
一方、第2の本発明は、下記一般式(2)で示されるクロコニウム色素化合物である。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(2)中、R21〜R22は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換のアミド基を示す。)
【0014】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、上記一般式(1)及び(2)で示されるクロコニウム色素化合物の少なくも1種を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、不可視性、光安定性に優れた新規な構造のクロコニウム色素化合物を提供することができる。また、それを利用した静電荷像現像用トナーを提供することも目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
まず、下記一般式(1)で示されるクロコニウム色素化合物について説明する。
【0018】
【化3】

【0019】
一般式(1)中、R11〜R14は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換のアミド基を示す。
【0020】
前記アルキル基の炭素数としては、1〜18が好ましく、より好ましくは、1〜6であり、さらに好ましくは1〜3である。前記アルキル基は、直鎖状、分鎖状のいずれでもよい。
【0021】
前記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が好ましい。
また、前記アルキル基の置換基としては、ハロゲン基、アミド基などが挙げられる。具体的には、例えば、フルオロ原子、クロロ原子、ブロモ原子、アセトアミド基、ベンズアミド基等が挙げられる。
【0022】
前記シクロアルキル基の炭素数としては、4〜20が好ましく、より好ましくは、5〜12である。具体的には、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
また、前記シクロアルキル基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン基、アミド基などが挙げられる。具体例は前記の通りである。
【0023】
前記アリール基の炭素数としては、6〜20が好ましく、より好ましくは、6〜12である。具体的には、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン基、アミド基などが挙げられる。具体例は前記の通りである。
【0024】
前記アミド基としては、N−水素基があるものが好ましい。
また、前記アミド基の置換基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられる。具体例は前記の通りである。
【0025】
以下、一般式(1)で示されるクロコニウム色素化合物の具体例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0026】
【表1】

【0027】
以下、一般式(1)で示されるクロコニウム色素化合物の製造方法について説明する。当該一般式(1)で示されるクロコニウム色素化合物は、例えば、下記一般式(3)で示されるユーロリジン誘導体(化合物(a)、(b))と、下記構造式(4)で示される4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオンとを反応させる工程を有することを特徴とする製造方法により得ることができる。
【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
前記一般式(3)中、R11〜R14は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換のアミド基を示す。
なお、上記各結合基の好ましい具体例等は、前記一般式(1)で示される色素化合物において説明したものと同様である。
【0031】
一般式(3)のユーロリジン誘導体と、構造式(4)で示される4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオンとは、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることが好ましく、脱水剤と一緒に溶媒中で共沸還流の条件で反応させることがより好ましい。得られた化合物は、洗浄後さらに高速カラムクロマトグラフィー及び再結晶により精製することができる。
【0032】
本発明の製造方法において、前記4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオンに対する前記ユーロリジン誘導体のモル比(ユーロリジン誘導体のモル数/4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオンのモル数)は、100〜300%の範囲であるこが好ましく、150〜250%の範囲であることがより好ましい。ユーロリジン誘導体のモル比が100%未満では、前記の新規な化合物が形成しにくく、300%を超えると、副産物が多くなり、目標化合物が分離精製しにくくなる。
【0033】
前記反応に用いられる一般式(3)で示されるユーロリジン誘導体としては、化合物(a)と化合物(b)とを等モルとして反応させることが好ましい。この場合、化合物(a)及び化合物(b)を、構造式(4)で示される化合物と一緒に混合し反応させてもよいし、構造式(4)で示される化合物の1つの水酸基に化合物(a)または化合物(b)のどちらかを反応させた後、残りのどちらかを、もう一方の水酸基と反応させてもよい。
【0034】
なお、前記一般式(3)で示される化合物としては、化合物(a)及び化合物(b)として常に異なる構造のものを用いる必要はなく、R11、R12とR13、R14とが各々同一であるときは、化合物(a)で示されるユーロリジン誘導体が全ユーロリジン誘導体として用いられる。
【0035】
前記製造方法の反応溶媒としては、特に限定されないが、1−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ペンタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;などを用いることができる。
【0036】
前記アルコール類溶媒は単独で使用してもよいが、芳香族炭化水素、エーテル類、ハロゲン化炭化水素またはアミド類などの溶媒は、1容量%以上のアルコール類溶媒と混合して使用したほうがよい。これらの中でも、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、2−ブタノール、及び1−プロパノ−ルとベンゼンとの混合溶媒、1−プロパノ−ルとトルエンとの混合溶媒、1−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒、2−プロパノ−ルとベンゼンとの混合溶媒、2−プロパノ−ルとトルエンとの混合溶媒、2−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒、1−ブタノールとベンゼンとの混合溶媒、1−ブタノールとトルエンとの混合溶媒、1−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒、2−ブタノールとベンゼンとの混合溶媒、2−ブタノールとトルエンとの混合溶媒、2−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒などが好ましい。混合溶媒を使う場合、アルコール類溶媒の濃度は、1容量%以上とすることが好ましく、5〜75容量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0037】
前記製造方法には、脱水剤を利用しなくてもいいが、利用する場合には反応時間の短縮や収率の向上などのメリットが得られる。脱水剤としては、一般式(3)で示される化合物及び構造式(4)で示される化合物と反応しない限り、特に限定されないが、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチルなどのオルト蟻酸エステル、モレキュラーシーブ等を用いることができる。
【0038】
前記製造方法の反応液の温度は、60℃より高くすることが好ましく、75℃より高くすることが特に好ましい。具体的には、1−ブタノールとトルエンとの混合溶媒を反応溶媒とする場合は、反応液の温度が75〜110℃の範囲であることが好ましく、95〜105℃の範囲であることが特に好ましい。
【0039】
前記製造方法の反応時間は、前記製造方法の反応液の温度によって異なり、反応液の温度が高くなると反応時間が短くなり、反応液の温度が低くなると反応時間が長くなる。具体的には、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を反応溶媒として、反応温度を90〜105℃の範囲として反応させる場合、反応時間が30〜150分間の範囲であることが好ましい。
なお、前記の反応は、窒素ガスの雰囲気で行うことが好ましい。
【0040】
次に、下記一般式(2)で示されるクロコニウム色素化合物について説明する。
【0041】
【化6】

【0042】
一般式(2)中、R21〜R22は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換のアミド基を示す。
【0043】
前記アルキル基の炭素数としては、1〜18が好ましく、より好ましくは、1〜6であり、さらに好ましくは1〜3である。前記アルキル基は、直鎖状、分鎖状のいずれでもよい。
【0044】
前記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が好ましい。
また、前記アルキル基の置換基としては、ハロゲン基、アミド基などが挙げられる。具体的には、例えば、フルオロ原子、クロロ原子、ブロモ原子、アセトアミド基、ベンズアミド基等が挙げられる。
【0045】
前記シクロアルキル基の炭素数としては、4〜20が好ましく、より好ましくは、5〜12である。具体的には、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
また、前記シクロアルキル基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン基、アミド基などが挙げられる。具体例は前記の通りである。
【0046】
前記アリール基の炭素数としては、6〜20が好ましく、より好ましくは、6〜12である。具体的には、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン基、アミド基などが挙げられる。具体例は前記の通りである。
【0047】
前記アミド基としては、N−水素基があるものが好ましい。
また、前記アミド基の置換基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられる。具体例は前記の通りである。
【0048】
以下、一般式(2)で示されるクロコニウム色素化合物の具体例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0049】
【表2】

【0050】
以下、一般式(2)で示されるクロコニウム色素化合物の製造方法について説明する。当該一般式(2)で示されるクロコニウム色素化合物は、例えば、下記一般式(5)で示されるアニリン誘導体(化合物(a)、(b))と、下記構造式(4)で示される4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオンとを反応させる工程を有することを特徴とする製造方法により得ることができる。
【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
前記一般式(5)中、R21およびR22は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換のアミド基を示す。
なお、上記各結合基の好ましい具体例等は、前記一般式(1)で示される色素化合物において説明したものと同様である。
【0054】
一般式(5)のアニリン誘導体と、構造式(4)で示される4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオンとは、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることが好ましく、脱水剤と一緒に溶媒中で共沸還流の条件で反応させることがより好ましい。得られた化合物は、洗浄後さらに高速カラムクロマトグラフィー及び再結晶により精製することができる。
【0055】
本発明の製造方法において、前記4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオンに対する前記アニリン誘導体のモル比(アニリン誘導体のモル数/4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオンのモル数)は、100〜300%の範囲であるこが好ましく、150〜250%の範囲であることがより好ましい。アニリン誘導体のモル比が100%未満では、前記の新規な化合物が形成しにくく、300%を超えると、副産物が多くなり、目標化合物が分離精製しにくくなる。
【0056】
前記反応に用いられる一般式(5)で示されるアニリン誘導体としては、化合物(a)と化合物(b)とを等モルとして反応させることが好ましい。この場合、化合物(a)及び化合物(b)を、構造式(4)で示される化合物と一緒に混合し反応させてもよいし、構造式(4)で示される化合物の1つの水酸基に化合物(a)または化合物(b)のどちらかを反応させた後、残りのどちらかを、もう一方の水酸基と反応させてもよい。
【0057】
なお、前記一般式(5)で示される化合物としては、化合物(a)及び化合物(b)として常に異なる構造のものを用いる必要はなく、R21とR22とが各々同一であるときは、化合物(a)で示されるアニリン誘導体が全アニリン誘導体として用いられる。
【0058】
前記製造方法の反応溶媒としては、特に限定されないが、1−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ペンタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;などを用いることができる。
【0059】
前記アルコール類溶媒は単独で使用してもよいが、芳香族炭化水素、エーテル類、ハロゲン化炭化水素またはアミド類などの溶媒は、1容量%以上のアルコール類溶媒と混合して使用したほうがよい。これらの中でも、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、2−ブタノール、及び1−プロパノ−ルとベンゼンとの混合溶媒、1−プロパノ−ルとトルエンとの混合溶媒、1−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒、2−プロパノ−ルとベンゼンとの混合溶媒、2−プロパノ−ルとトルエンとの混合溶媒、2−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒、1−ブタノールとベンゼンとの混合溶媒、1−ブタノールとトルエンとの混合溶媒、1−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒、2−ブタノールとベンゼンとの混合溶媒、2−ブタノールとトルエンとの混合溶媒、2−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒などが好ましい。混合溶媒を使う場合、アルコール類溶媒の濃度は、1容量%以上とすることが好ましく、5〜75容量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0060】
前記製造方法には、脱水剤を利用しなくてもいいが、利用する場合には反応時間の短縮や収率の向上などのメリットが得られる。脱水剤としては、構造式(4)で示される化合物及び一般式(5)で示される化合物と反応しない限り、特に限定されないが、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチルなどのオルト蟻酸エステル、モレキュラーシーブ等を用いることができる。
【0061】
前記製造方法の反応液の温度は、60℃より高くすることが好ましく、75℃より高くすることが特に好ましい。具体的には、1−ブタノールとトルエンとの混合溶媒を反応溶媒とする場合は、反応液の温度が75〜110℃の範囲であることが好ましく、95〜105℃の範囲であることが特に好ましい。
【0062】
前記製造方法の反応時間は、前記製造方法の反応液の温度によって異なり、反応液の温度が高くなると反応時間が短くなり、反応液の温度が低くなると反応時間が長くなる。具体的には、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を反応溶媒として、反応温度を90〜105℃の範囲として反応させる場合、反応時間が30〜150分間の範囲であることが好ましい。
なお、前記の反応は、窒素ガスの雰囲気で行うことが好ましい。
【0063】
上記一般式(1)及び(2)で示されるクロコニウム色素化合物は、トナー、インク等の各種画像形成材料や、その他、工業製品に適宜利用することができる。
【0064】
次に、上記一般式(1)及び(2)で示されるクロコニウム色素化合物を利用した静電荷像現像用トナー(以下、本発明のトナーと称して説明する。)について説明する。
【0065】
本発明のトナーは、例えば、少なくとも結着樹脂及び赤外線吸収剤を含み、当該赤外線吸収剤として上記一般式(1)及び(2)で示されるクロコニウム色素化合物の少なくとも1種を含むものである。必要に応じて、着色剤や離型剤などのその他、添加剤を含むことができる。なお、本発明のトナーは、光定着トナーや不可視トナーに利用することができる。
【0066】
上記クロコニウム色素化合物を含むトナーは、光安定性に優れ、長期に渡り、赤外線吸収能を発揮することができる。また、着色剤を含めず不可視トナーとして利用する場合、その不可視性(目視で認識されない性質)も高くなる。
【0067】
以下、各組成成分について説明する。
【0068】
本発明のトナーには、公知の結着樹脂を使用することができる。結着樹脂の主成分としては、ポリエステル、ポリオレフィンが好ましいが、スチレンとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体、スチレンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等などを単独又は併用することができる。耐久性や透光性等の点から、ポリエステル系樹脂又はノルボルネンポリオレフィン樹脂を使用することが好ましい。
なお、トナーに使用される結着樹脂のTg(ガラス転移点)は、好ましくは50〜70℃の範囲である。
【0069】
本発明のトナーには、公知の着色剤を使用することができる。着色剤としては、トナーの色彩に対応させて適宜選択して用いることができる。
前記シアントナーにおいては、その着色剤として、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同23、同60、同65、同73、同83、同180、C.I.バットシアン1、同3、同20等や、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーの部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCのシアン顔料、C.I.ソルベントシアン79、162等のシアン染料などを用いることができる。これらの中では、C.I.ピグメントブルー15:3が有効である。
【0070】
また、マゼンタトナーにおいては、その着色剤として、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同48、同49、同50、同51、同52、同53、同54、同55、同57、同58、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同163、同184、同202、同206、同207、同209等、ピグメントバイオレット19のマゼンタ顔料や、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40等のマゼンタ染料等、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ロータミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどを用いることができる。
【0071】
また、イエロートナーにおいては、その着色剤として、例えば、C.I.ピグメントイエロー2、同3、同15、同16、同17、同97、同180、同185、同139等のイエロー顔料などを用いることができる。
【0072】
また、ブラックトナーにおいては、その着色剤として、例えば、カーボンブラック、活性炭、チタンブラック、磁性粉、Mn含有の非磁性粉などを用いることができる。なお、本発明の光定着用トナーには、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー顔料を混合したブラックトナーを含める。
【0073】
各着色剤の添加量は、結着樹脂等との混合により作製されたトナー粒子100重量部中に1〜20重量部の範囲であることが好ましい。
【0074】
本発明のトナーには、上記クロコニウム色素化合物に他に、その他の赤外線吸収剤を用いてもよい。このようなその他の赤外線吸収剤としては、波長800〜2000nmの範囲の近赤外領域に少なくとも1つ以上の強い光吸収ピークを有する材料で、有機物であっても無機物であっても使用可能である。具体例としては、公知の赤外線吸収剤を用いることができ、例えば、シアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等を用いることができる。
【0075】
赤外線吸収剤の添加量は、総量でトナー100重量部に対し、前記溶解性のタイプで0.05〜2重量部の範囲が望ましい。
【0076】
また、本発明のトナーには、必要に応じて帯電制御剤やワックスを加えるようにしてもよい。
帯電制御剤としては、公知のカリックスアレン、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、アミノ基含有のポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸の錯体化合物、フェノール化合物、アゾクロム系、アゾ亜鉛系などが使用できる。 その他、トナーには鉄粉、マグネタイト、フェライト等の磁性材料を混合し磁性トナーでも使用できる。特に、カラートナーの場合には白色の磁性粉を用いることができる。
【0077】
ワックスとしては、エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンとポリプロピレンの共重合物が最も好ましいが、ポリグリセリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの、不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0078】
ワックスとしては50〜90℃にDSC測定(示差走査型熱量測定)による吸熱ピークを示すワックス材料が好ましい。吸熱ピークが50℃より低いとトナーがブロッキングし、90℃より高いと定着に寄与しない場合がある。 前記DSC測定では、測定原理から、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。
【0079】
本発明のトナーを製造するにあたっては、一般に使用されている混練粉砕法や湿式造粒法等を利用することができる。ここで、湿式造粒法としては、懸濁重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、ソープフリー乳化重合法、非水分散重合法、in−situ重合法、界面重合法、乳化分散造粒法等を用いることができる。
【0080】
混練粉砕法で本発明のトナーを作製するには、結着樹脂、赤外線吸収剤、必要に応じて、ワックス、帯電制御剤、着色剤としての顔料又は染料、及びその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分混合し、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、赤外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、染料、磁性体等を分散又は溶解せしめ、冷却固化後粉砕及び分級を行ってトナーを得ることができる。また、顔料や赤外線吸収剤の分散性を向上させるため、マスターバッチを行ってもよい。
【0081】
さらに、トナーに赤外線吸収剤を加えるにあたっては、前記のように赤外線吸収剤を光定着用カラートナーや不可視トナーの内部に分散させて添加させる以外に、赤外線吸収剤をトナー粒子の表面に付着又は固着させることができる。
【0082】
以上のようにして作製される本発明のトナーは、その体積平均粒径D50vが3〜10μmの範囲が好ましく、4〜8μmの範囲内であることがより好ましい。また、その個数平均粒径D50pに対する体積平均粒径Dvの比(D50v/D50p)が1.0〜1.25の範囲であることが好ましい。そして、このように小粒径で粒径の揃ったトナーを使用することにより、トナーの帯電性能のバラツキが抑制されて、形成される画像におけるカブリが低減されると共に、トナーの定着性を向上させることができる。また、形成される画像における細線再現性やドット再現性も向上させることができる。
【0083】
一方、前記湿式造粒法によりトナー粒子を作製した場合には、該トナー粒子の形状係数SF1は110〜135の範囲であることが好ましい。
上記トナー形状係数SF1は、スライドグラス上に散布したトナー粒子、又はトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーの最大長と投影面積を求め、下記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られるものである。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ (1)
上記式(1)中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0084】
また、上記トナー粒子の体積粒度分布指標GSDvは1.25以下であることが好ましい。
本発明におけるトナー体積平均粒径、及び粒径分布指標等は、コールターカウンターTAII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定した。
【0085】
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積、数それぞれについて小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16v及び個数平均粒子径D16pと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50v(既述のトナーの体積平均粒径はこれを指す)及び個数平均粒子径D50pと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v及び数平均粒子径D84p定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、D84v/D16vとして算出される。
【0086】
本発明のトナーは、流動性向上剤等のためトナー粒子に白色の無機微粒子を混合して用いることもできる。トナー粒子に混合される割合はトナー粒子100重量部に対し0.01〜5重量部の範囲であり、好ましくは0.01〜2.0重量部の範囲である。このような無機微粉末としては例えば、シリカ微粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられるが、シリカ微粉末が特に好ましい。また、シリカ、チタン、樹脂微粉、アルミナ等の公知の材料を併用できる。さらにクリーニング活性剤として、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末を添加してもよい。
上記無機微粒子、さらに必要に応じ所望の添加剤を、ヘンシェルミキサー等の混合機により充分混合し、本発明におけるトナーを得ることができる。
【0087】
次に、本発明のトナーが用いられる画像形成方法、画像形成装置について説明する。
本発明のトナーが用いられる画像形成方法では、電子写真用現像剤(以下、「現像剤」と略す場合がある)は、前記トナーからなる1成分現像剤、あるいは、キャリアと前記トナーとからなる2成分現像剤のいずれであってもよい。
【0088】
2成分現像剤として用いる際のキャリアとしては、例えば芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアを挙げることができる。上記芯材としては、公知のマグネタイト、フェライト、鉄粉を用いることができる。キャリアのコート剤としては、特に制限されないが、シリコーン樹脂系が特に望ましい。
【0089】
本発明のトナーが用いられる画像形成方法を例示すれば、静電荷像担持体表面に静電荷像を形成する工程と、前記静電荷像担持体表面に形成された静電荷像を、トナーを含む現像剤により現像しトナー画像を形成する工程と、前記静電荷像担持体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被記録体表面に転写されたトナー画像を被記録体表面に定着し、画像を形成する定着工程と、を含むものである。この際、現像剤としては本発明のトナーを含む現像剤が用いられる。
【0090】
上述の各工程は、いずれも従来の画像形成方法で採用されている公知の方法により行なうことができる。また、前記被転写体は、中間転写体などを用いない場合には、被転写体がそのまま記録媒体となる。さらに、本発明の画像形成方法は、例えば、潜像担持体表面をクリーニングするクリーニング工程等、上記した工程以外の工程を含むものであってもよい。
【0091】
本発明の画像形成方法による画像の形成は、静電荷像担持体として電子写真感光体を利用した場合、例えば、以下のように行うことができる。まず、電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電荷像を形成する。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電荷像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー像を形成する。形成されたトナー像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される。さらに、記録媒体表面に転写されたトナー像は、定着器により定着され、記録媒体に画像が形成される。
【0092】
なお、前記電子写真感光体としては、一般に、アモルファスシリコン、セレンなど無機感光体、ポリシラン、フタロシアニンなどを電荷発生材料や電荷輸送材料として使用した有機感光体を用いることができるが、特に、長寿命であることからアモルファスシリコン感光体が好ましい。
また、前記定着器としては、光定着用トナーを用いる場合には、光定着器(フラッシュ定着器)が用いられるが、不可視トナーの場合には、光定着器、オーブン定着器、熱ロール定着器など限定されない。
【0093】
上記光定着に用いられる光源としては、通常のハロゲンランプ、水銀ランプ、フラッシュランプ、赤外線レーザ等があるが、フラッシュランプによって瞬時に定着させることでエネルギを節約することができ最適である。フラッシュランプの発光エネルギーが1.0〜7.0J/cmの範囲であることが好ましく、2〜5J/cmの範囲であることがより好ましい。
【0094】
ここで、キセノンのランプ強度を示すフラッシュ光の単位面積当りの発光エネルギーは以下の式(2)で表される。
S=((1/2)×C×V)/(u×L) ×(n×f) ・・・ (2)
上記式(2)中、nは一度に発光するランプ本数(本)、fは点灯周波数(Hz)、Vは入力電圧(V)、Cはコンデンサ容量(F)、uはプロセス搬送速度(cm/s)、Lはフラッシュランプの有効発光幅(通常は最大用紙幅、cm)、Sはエネルギー密度(J/cm)を表す。
【0095】
本発明における光定着の方式は、複数のフラッシュランプを時間差を設けて発光させるディレイ方式である。このディレイ方式は、複数のフラッシュランプを並べ、各々のランプを0.01〜100ms程度ずつ遅らせて発光を行い、同じ箇所を複数回照らす方式である。これにより一度の発光でトナー像に光エネルギーを供給するのではなく分割して供給できるため、定着条件をマイルドにすることができ耐ボイド性と定着性とを両立することができるものである。
ここで、複数回トナーに対しフラッシュ発光を行う場合、前記フラッシュランプの発光エネルギーは、発光1回ごとの前記単位面積に与える発光エネルギーの総和量を指すこととする。
【0096】
本発明においては、フラッシュランプの本数は0〜20本の範囲であることが好ましく、2〜10本の範囲であることがより好ましい。また、複数のフラッシュランプ間の各々の時間差は0.1〜20msecの範囲であることが好ましく、1〜3msecの範囲であることがより好ましい。
さらに、フラッシュランプ1本の1回の発光による発光エネルギーは、0.1〜1J/cmの範囲であることが好ましく、0.4〜0.8J/cmの範囲であることより好ましい。
【実施例】
【0097】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0098】
[実施例1]
−合成−
以下のようにして、上記例示化合物1−1(一般式(1)中、R11〜R14がメチル基であるクロコニウム色素化合物)を合成した。
2,6−ジメチル−8−ヒドロキシ−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン(前記一般式(3)中R11〜R14がメチル基であるユーロリジン中間体)420mg(1.93mmol)と、4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオン137mg(0.964mmol)とを、1−ブタノ−ル8mlとトルエン24mlとの混合液中に加え、窒素ガスの雰囲気で室温にて20分間攪拌してから、反応液を147〜153℃にて加熱し、攪拌しながら2時間還流反応させた。反応から生成された水は共沸蒸留により除去した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、析出した黒茶色固体を濾過し、ヘキサン、ジエチルエーテルおよびエタノールで洗浄後、乾燥してから黒茶色結晶450mg(収率:86.4%)を得た。
【0099】
得られた色素を、IR、H−NMR、FD−MS、可視近赤外吸収スペクトルなどの分光法により同定した。データを以下に示す。当該データより、例示化合物1−1であることが確認できる。
・赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法):
νmax = 3450(OH);3068(=C−H);2952(CH);2927(CH);2870(CH);2835(CH);1664(C=O);1617、1584、1533、1502(C=C ring);1458、1419(CH、CH);1329(C−N);1257(OH);1167(C−O);1099、1033(C−O);995、924、876、843、746、715 cm−1
H−NMRスペクトル(CDCl):
δ= 8.67(s,2H,Harom);6.40(s,2H,OH);
3.31(m,4H,2×NCH);3.11(m,4H,2×NCH);
3.01、2.97、2.83、2.79(m,4H,4×CH);2.38、2.17、2.15、2.09(m,8H,4×CH−Aryl);1.09、1.07、1.05(m,12H,4×CH
・マススペクトル(FD):
m/z = 540(M,100%,required M540.65);541(M+1,49.5%)
・可視近赤外吸収スペクトル(図1参照):
λmax = 847nm(テトラヒドロフラン溶液中)
【0100】
−評価−
得られたクロコニウム色素化合物について耐光性評価を行った。
耐光性評価は、トナーの結着樹脂に相当する材料:ポリスチレンアクリル酸n−ブチルに対し、含有量0.2wt%で色素化合物を配合したものに対し、12時間、光照射(光源:キセノンランプ、放射照度:540W/m=100kルクス)を行った。その際のピーク吸光度を日立製作所製の分光光度計U−4100により測定した。図2に、光照射前のピーク吸光度100としたとき、ピーク吸光度の相対値(%)と照射時間との関係を示す。
【0101】
また、不可視性についても、以下のようにして評価したところ、色素含有量が0.2wt%のベタサンプルのL*値が91.20であった。対照として、何も塗布されていなかったJ紙のL*値が94.26であった。
【0102】
不可視性評価は、次のようにして行った。トナーの結着樹脂に相当する材料:ポリスチレンアクリル酸n−ブチルに対し、含有量0.2wt%で色素を配合したものをテトラヒドロフラン(溶媒に対してポリマーの濃度が5wt%)に溶解した。得られた溶液を3×3cmのJ紙上にマイクロピペットを用いて130μl滴下し、バーコート法にて製膜した。得られた色素のベタサンプルのL*値をX−Rite 939 JPを用いて測定した。ここではL*a*b*色空間で用いられている明度L*を用いることで、的確に不可視性を定量化することができる。
【0103】
[実施例2]
−合成−
以下のようにして、上記例示化合物2−1(一般式(2)中、R21〜R22がメチル基であるクロコニウム色素化合物)を合成した。
3−メチル−5−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン(前記一般式(5)中R21およびR22がメチル基であるアニリン中間体)326mg(2.0mmol)と、4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオン142mg(1.0mmol)とを、1−ブタノ−ル8mlとトルエン24mlとの混合液中に加え、窒素ガスの雰囲気で室温にて25分間攪拌してから、反応液を147〜153℃にて加熱し、攪拌しながら2時間還流反応させた。反応から生成された水は共沸蒸留により除去した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、析出した黒茶色固体を濾過し、エタノール、ヘキサンおよびアセトンで洗浄後、乾燥してから黒茶色結晶280mg(収率:64.7%)を得た。
【0104】
得られた色素をIR、H−NMR、FD−MS、可視近赤外吸収スペクトルなどの分光法により同定した。データを以下に示す。当該データより、例示化合物2−1であることが確認できる。
・赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法):
νmax = 3392(OH);3240(NH);3066(=C−H);2956(CH);2927(CH);2871(CH);2839(CH);1676(C=O);1624、1583、1508(C=C ring);1458、1419(CH、CH);1362(CH);1323(C−N);1282(NH);1223(OH);1198(C−O);1099、1043(C−O);953、914、837、725 cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d):
δ= 14.37(br s,2H,OH);8.88(br s,2H,Harom);8.62(br s,2H,Harom);5.97(s,2H,NH);3.04、3.01、2.98(m,4H,2×NCH);2.71、2.67(m,2H,2×CH);2.36、2.33、2.32、2.30(m,4H,2×CH−Aryl);1.00(d,J=6.59Hz,6H,2×CH
・マススペクトル(FD):
m/z = 432(M,54.3%,required M432.47);433(M+1,30.3%);434(M+2,100%)
・可視近赤外吸収スペクトル(図3参照):
λmax = 811nm(テトラヒドロフラン溶液中)
【0105】
−評価−
得られたクロコニウム色素化合物について、実施例1と同様に耐光性評価を行った。結果を図2に示す。また、不可視性については、前記のようにして評価したところ、色素含有量が0.2wt%のベタサンプルのL*値が91.00であった。
【0106】
[比較例1]
クロコニウム色素化合物(一般式(1)中、R11〜R14が水素であるクロコニウム色素化合物)について、実施例1と同様に耐光性評価を行った。結果を図1に示す。また、不可視性については、前記のようにして評価したところ、色素含有量が0.2wt%のベタサンプルのL*値が91.10であった。
【0107】
[実施例3〜4、比較例2]
実施例1〜2、比較例1のクロコニウム色素化合物をそれぞれ用いて以下のようにしてトナーを得て、実施例1と同様にして評価したところ、同様の結果が得られた。
【0108】
−トナーの作製−
色素0.5重量部、結着樹脂(ポリエステル樹脂「FN119」:花王社製)94重量部、帯電制御剤(4級アンモニウム塩「P−51」:オリエント化学社製)1重量部、ワックス(ポリエチレン「Ceridust2051」クラリアント社製)4.5重量部となるトナー組成物を各々ヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、エクストルーダー(池貝社製、PCM−30)により100〜110℃、250rpmにて溶融混練し、次いでハンマーミルにて粗粉砕し、ジェットミルにて微粉砕した後、気流分級機にて分級を行い、トナーを得る。
【0109】
上記実施例、比較例の結果から、特定のクロコニウム色素化合物を用いた本実施例では、比較例に比べ耐光性(光安定性)が大幅に向上していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例1で製造した化合物1−1の吸収スペクトル(テトラヒドロフラン溶液中)を示すグラフである。
【図2】実施例及び比較例の耐光性評価の結果を示す図である。
【図3】実施例2で製造した化合物2−1の吸収スペクトル(テトラヒドロフラン溶液中)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるクロコニウム色素化合物。
【化1】

(一般式(1)中、R11〜R14は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換のアミド基を示す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示されるクロコニウム色素化合物。
【化2】

(一般式(2)中、R21〜R22は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換のアミド基を示す。)
【請求項3】
前記一般式(1)及び(2)で示されるクロコニウム色素化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−1754(P2008−1754A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170484(P2006−170484)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】