説明

クロスコイルを作製する繊維機械

本発明によれば、クロスコイルを作製する繊維機械の作業個所(20)の作業計算器(22)は、それぞれ作業個所フィールドバス(23)によってそれぞれの作業個所(20)の別個の機能群(26a〜26e)と接続されていることが提案される。このことによって高いフレキシビリティが達成され、作業個所(20)に僅かなコストで後から適合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の同形式の作業個所を有する、クロスコイルを作製する繊維機械に関するものである。前記複数の作業個所はそれぞれ複数の機能群と作業個所計算器を有し、該作業個所計算器は機械フィールドバスによって中央計算器と接続されている。
【0002】
多数の特許明細書により公知のこの種の繊維機械は、コップのヤーンをクロスコイルに巻き替えるために(例えばDE19905860A1)、またはヤーンを紡ぎ、クロスコイルに巻き付けるために(例えばDE4404503A1またはDE10139075A1)使用される。この繊維機械の作業個所は、所定の範囲で自立的に動作するユニットである。
【0003】
糸巻き機械ではこのユニットはそれぞれ、カップから発生したヤーンを接続し、監視し、張力調整し、クリーニングし、ワクシングし、クロスコイルに巻き付けるために、並びにカップを交換するために構成されている。
【0004】
紡績機械ではこのユニットはそれぞれ、繊維を紡績機構に供給するため、繊維を紡糸するため、ワクシングのため、紡績したヤーンを監視し、巻き付けるため、並びに場合により結糸のために構成されている。
【0005】
この目的のために作業個所は多数の機能群を有する。機能群は例えば種々の形式のセンサまたはアクチュエータとすることができ、繊維の供給、コップ、ヤーン、およびクロスコイルの取り扱いに用いられる。
【0006】
ここで機能群は作業個所固有の計算器と接続されている。アクチュエータではこのような機能群が付加的にいわゆるパワーカードを有しており、これによりアクチュエータを駆動する。パワーカードは作業個所計算器とも、電流供給部とも接続されている。繊維機械の中央計算機を多数の作業個所計算器と接続するために、DE3928831A1から公知のようにフィールドバスシステムが使用される。
【0007】
作業個所計算器を作業個所の機能群、例えばカップを備えるマガジンを制御するためのステップモータ、繊維バンド供給のために搬送手段、クロスコイルへのヤーンの巻付け位置を制御するための装置、結糸装置、並びにこれに所属する撚糸コンベヤと接続するために、それぞれケーブル接続が作業個所計算器とそれぞれの機能群、並びにそれぞれの電圧供給部、およびアクチュエータの駆動に必要なパワーカードとの間に設けられている。
【0008】
このような繊維機械での欠点は、作業個所計算器がすでに作業個所の設計の際に、機能群を有する具体的構造に適合しなければならないことである。
【0009】
個々の機能群の後での変更またはさらなる機能群の組み込みを可能にするためには、作業個所計算器を例えば接続手段に関して、将来的必要性の観点で構成しなければならない。このことはコストの上昇につながる。さらに多数の作業個所からなる繊維機械の配線は、機能群の数の増大と共に非常に複雑になる。
【0010】
本発明の課題は、多数の作業個所を有する繊維機械において、その作業個所が接続すべき機能群に関してフレキシブルであり、僅かな内部内線コストしか必要としないように構成することである。
【0011】
この課題は本発明により、上位概念記載の繊維機械の作業個所がそれぞれ作業個所フィールドバスによって、作業個所の所属の機能群と接続されていることによって解決される。
【0012】
作業個所フィールドバスには、基板カードを備える任意の機能群を接続することができ、この基板カードが作業個所計算器の設計時点ではまだ計画されていなくても良い。
【0013】
データは作業個所フィールドバスを介して伝送されるから、作業個所計算器に設けるべき端子の数は、この作業個所で使用される機能群の数には依存せず、使用されるフィールドバスに依存するだけである。
【0014】
新たな機能群が作業個所に挿入されるか、または既存の機能群が技術的に変更されたものと交換される場合、このことは機能群をフィールドバスに単純に接続することによって達成される。その際に作業個所計算器への付加的配線を行う必要もない。このことによりフレキシビリティが高まると共に、配線コストが低減される。
【0015】
特に有利にはコスト低減の理由から、シングルワイヤフィールドバスを使用する。ここで電圧レベルは、十分なS/N比を補償するように十分に高くなければならない。
【0016】
本発明の改善形態では、作業個所フィールドバスはCANバスとして構成されている。CANバスはその仕様に関し、応答時間および作業個所で使用するためのバス長の点で非常に適する。標準的フィールドバスシステムを使用することにより、コンポーネントの調達が容易なのでさらにコストが低減される。
【0017】
本発明の改善形態では、作業個所フィールドバス並びに電流供給線路とアース線路が作業個所内でケーブル索として統合され、共通に敷設される。これにより敷設が容易になる。ここでは新たな機能群の接続のためのコストも低減される。加えて任意の個所のケーブル索に、すなわち機能群の取り付け個所の近傍で、有利にはセルフカット形締付けプラグを備えるプラグ接点を接続することができる。このプラグ接点は機能群の相応するプラグ接点と、すなわちそれぞれの機能群の基板カードと脱着容易に接続することができる。
【0018】
本発明の改善形態では、所定の機能群の基板カードは同じである。同じ基板カードは、それぞれ比較的に高い電流負荷または低い電流負荷に対しても使用することができる。このことにより、種々異なる機能群間の基板カードの交換が可能になり、部品の種類が低減する。それ以外にもちろん特別の機能のための特別のカードを使用することもできる。
【0019】
本発明の改善形態では、作業個所フィールドバスが、作業個所フィールドバスのバス線路とアースとの接触が、フィールドバス上に送信する機能群の短絡損傷に至らないように構成されている。
【0020】
このことは有利には、バスがバス電圧のための供給電圧源と抵抗を介して接続されており、機能群が送信の際にバス線路とアースとの接続を行うように構成して達成される。バス線路とアースとの不所望の接続は、作業個所フィールドバスの故障を引き起こすが、送信する機能群の損傷は引き起こさない。なぜなら電流が抵抗によって制限されるからである。
【0021】
本発明の利点はとりわけ、10から60の同形式の糸巻き個所を有する糸巻き機械、または300以上の同形式の紡績個所を備えるロータ式紡績機械のような紡績機械での適用で得られる。
【0022】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面に示された実施例の以下の説明から明らかとなる。
【0023】
図1は、本発明の作業個所を複数備える本発明の繊維機械の一部を示す概略図である。
【0024】
図示の繊維機械10は中央計算器12を有し、この中央計算器は機械フィールドバス14に接続されている。さらに繊維機械10は直流電圧源16を有する。繊維機械10には多数の作業個所モジュール20が使用される。この作業個所モジュールは機械フィールドバス14および直流電圧源16と接続されている。ここで作業個所モジュールは概略的に示されており、詳細は例えば糸巻き機械に対してはDE19905860A1に、紡績機械に対してはDE4404503A1およびDE10139075A1に記載されている。
【0025】
作業個所モジュール20内にはそれぞれ1つの作業個所計算器22と変圧器24が設けられている。各作業個所計算器22は機械フィールドバス14に接続されており、各変圧器24は直流電圧源16と接続されている。変圧器24は、直流電圧源16から送出された275Vの電圧を、作業個所モジュール20の制御に必要な24Vの電圧に変圧する。
【0026】
さらに各作業個所モジュール20は概略的に示した機能群26aから26eを有する。これらの数はほぼ任意に拡張することができる。これらの機能群は、糸巻き機械の場合、糸端部を切断および固定するための装置を含む結糸装置のための駆動部、コップから供給された糸に対するくわえパイプ、クロスコイルから戻された糸に対する吸い込みノズルのような糸コンベヤ、糸テンショナ、コップ交換装置またはヤーンをワクシングするためのワクシング装置、または糸をクロスコイルに沿って敷設するのを制御するための駆動部とすることができる。他の機能群も作業個所計算器と接続することができる。これは例えば、吸い込み管または接合チャネルの圧力を制御する弁、および種々の形式のセンサ、例えば糸を監視するためのクリーナ、または糸張力センサである。
【0027】
紡績機械の場合、繊維バンド供給のためのドラフトドラムの駆動部、紡績されたヤーンに対する排出ドラム、紡績手段に対する駆動部、クロスコイルから戻された糸に対する吸い込みノズル、ワクシング装置、並びにクロスコイルに沿って糸を敷設するための駆動部とすることができる。糸端部を紡績するために準備する圧縮空気供給弁またはセンサも機能群とすることができる。
【0028】
機能群26aから26eはそれぞれ差し込み接続27を介して作業個所フィールドバス23に接続されており、このバスには作業個所計算器22も接続されている。さらに機能群26aから26eはそれぞれ変圧器24と電流線路25を介して接続されており、アースとアース線路29を介して接続されている。
【0029】
電流線路25、アース線路29、並びにシングルワイヤ作業個所フィールドバス23はケーブル索30として構成されている。変圧器24が作業個所計算器22のケーシング内に収容されるなら、ケーブル索30はケーシングまで案内される。従って別個の線路接続は不要である。
【0030】
繊維機械は相応にして、機械フィールドバス14、並びに各作業個所ごとに1つの作業個所フィールドバス23を有する。作業個所計算器22が各作業個所モジュールで機能群26aから26eに対するインテリジェント変換器および制御装置として用いられるというこの階層構造によって、作業個所モジュール20にとりわけフレキシブルに適合することができる。作業個所モジュール20で機能群26aから26eの1つが、構造的に同じでない別の機能群の1つと交換される場合、または完全に新たな機能群が作業個所モジュールに追加される場合、適合のためには新たな機能群を任意の個所でケーブル索30と接続し、場合により作業個所計算器22の制御プログラムを適合するだけで良い。ハードウエアに関しては、作業個所計算器22は新たに追加された、または変更された機能群に適合する必要はない。
【0031】
プラグ接続部27はケーブル索30の任意の個所にセルフカット形締付けプラグによって取り付けることができ、それぞれの機能群26aから26eないしは機能群の基板カードとプラグ接続するために使用される。このことにより故障した機能群または故障した基板カードを非常に迅速に交換することができ、別の機能群により置換することができる。このフレキシビリティにより、機能性に格段の変更があっても作業個所を迅速に取り替えることができる。さらに別のプラグ接続部27をケーブル索30に補充することができ、これにより付加的な機能群が可能となる。
【0032】
複数の機能群26aから26eが同程度の比較的小さな電流負荷しか受けない場合、所属の基板カードは同じように構成することができる。基板カードは、センサおよびアクチュエータに対する入出力端を備える通常の装備、例えばステップモータを制御するための端子、およびマイクロプロセッサを有する。機能群を新たに組み込む場合、または交換する場合、作業個所計算器22ではソフトウエアの変更が、中央計算器12により機械フィールドバス14を介して、または入力装置を作業個所計算器22に接続することによって行われる。その後、該当する機能群のアドレスに、そのために特別の命令を送信することができ、機能群の基板カードを介して変換することができる。基板カードの故障の場合に代替カードがなければ、別の機能群の同じカードを故障したカードの代わりに使用することができ、故障したカードの機能を同じように満たす。このカードは、紡績プロセスまたは巻取りプロセスの維持に対しては重要でなく、少なくとも一時的にプロセスの維持を諦めることができるようなカードである。さらに少数の異なるカード、例えば小電流用カード、大電流用カードまたは特殊カードを在庫すればよいだけであるので有利である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の作業個所を複数備える本発明の繊維機械の一部を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同形式の作業個所(20)を有する、クロスコイルを作製する繊維機械(10)であって、前記複数の作業個所はそれぞれ複数の機能群(26a〜26e)と作業個所計算器(22)とを有し、該作業個所計算器は機械フィールドバス(14)によって前記繊維機械の中央計算器(12)と接続されている形式の繊維機械において、
前記作業個所(20)の作業計算器(22)は、それぞれ作業個所フィールドバス(23)によってそれぞれの作業個所(20)の種々異なる機能群(26a〜26e)と接続されている、ことを特徴とするクロスコイルを作製する繊維機械。
【請求項2】
請求項1記載のクロスコイルを作製する繊維機械(10)において、
前記作業個所フィールドバスはシングルワイヤフィールドバスである、ことを特徴とする繊維機械。
【請求項3】
請求項1または2記載のクロスコイルを作製する繊維機械(10)において、
前記作業個所フィールドバス(23)はCANバスである、ことを特徴とする繊維機械。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項記載のクロスコイルを作製する繊維機械(10)において、
前記作業個所フィールドバス(23)並びにそれぞれ1つの電流供給線路(25)とそれぞれ1つのアース線路(29)とが前記作業個所(20)内に共通に敷設されている、ことを特徴とする繊維機械。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項記載のクロスコイルを作製する繊維機械(10)において、
前記作業個所フィールドバス(23)にはプラグ接続部(27)が接続可能であり、該プラグ接続部はそれぞれの機能群(26a〜26e)の相応するプラグ接続部と容易に脱着可能に接続される、ことを特徴とする繊維機械。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項記載のクロスコイルを作製する繊維機械(10)において、
前記機能群(26a〜26e)は同じ基板カードの群を有し、該基板カードは小電流用および大電流用である、ことを特徴とする繊維機械。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項記載のクロスコイルを作製する繊維機械(10)において、
前記作業個所フィールドバス(23)は、該作業個所フィールドバス(23)のバス線路がアース(28)と接触しても、作業個所フィールドバス(23)に送信する機能群(26a〜26e)が短絡損傷しないように構成されている、ことを特徴とする繊維機械。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項記載のクロスコイルを作製する繊維機械(10)において、
前記作業個所(20)は糸巻き装置の糸巻き個所であり、前記機能群(26a〜26e)は結糸装置、クリーナ、ワクシング装置、撚糸コンベヤ、テンショナまたはコップ交換装置を形成する、ことを特徴とする繊維機械。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項記載のクロスコイルを作製する繊維機械(10)において、
前記作業個所(20)は紡績装置の紡績個所であり、前記機能群(26a〜26e)は撚糸敷設装置、ワクシング装置、撚糸コンベヤ、圧縮空気を制御するための弁、および種々の形式のセンサからなる、ことを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【公表番号】特表2008−540284(P2008−540284A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509311(P2008−509311)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002315
【国際公開番号】WO2006/117040
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH&CO.KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str.45,D−41069 Moenchengladbach,Germany
【Fターム(参考)】