説明

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridiumdifficile)毒素に対する抗体

本発明は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)(C.ディフィシル)感染の予防または処置において使用するための、ヒツジ抗体を含む抗体組成物を提供し、前記抗体はC.ディフィシル毒素に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒツジ抗体、およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)(C.ディフィシル)感染(CDI)の予防または処置におけるその使用に関する。
【0002】
クロストリジウム・ディフィシル感染(CDI)は、現在、世界中の病院において大きな問題である。前記細菌は、院内の抗生物質関連疾病を引き起こし、これは軽度の自己限定的な下痢から生命を危うくする可能性のある重度の大腸炎までいくつかの形態で現れる。高齢の患者は、これらの生命を危うくする可能性のある疾病のリスクが最も高く、そしてCDIの事件は過去10年間において劇的に増加した。2007年に英国においてCDIの症例は50,000を超え、関連死は8,000を超えた。CDIにかかる国民健康保険の費用は1年につき5億ポンドを超える。
【0003】
C.ディフィシルの種々の株は、多くの方法によって分類され得る。最も一般的に使用されるものの1つはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)リボタイピングであり、PCRを使用してC.ディフィシルの16S〜23S rRNA遺伝子の遺伝子間スペーサー領域を増幅する。これに由来する反応産物は、単離株の細菌リボタイプを同定する特徴的なバンドパターンを与える。毒素タイピングは別のタイピング法であり、C.ディフィシル毒素をコードするDNAに由来する制限酵素パターンを使用して株の毒素タイプを同定する。異なる株の毒素遺伝子間で観察される制限酵素パターンの差異もまた、C.ディフィシル毒素ファミリー内の配列変異を示す。毒素Bはいくつかの領域において配列変異を示す。例えば、毒素タイプ0の毒素BのC末端60kDa領域には、毒素タイプIIIの同じ領域と比較して、約13%の配列差異が存在する。このような配列差異は比較的小さいが、それらは分子の抗原性特性に関しては極めて重要であり得、そして抗体の結合に対して、従って、抗体による毒素中和特性に対して顕著な影響を及ぼし得る。
【0004】
C.ディフィシル株は、多種多様な病原性因子を産生し、その中でも顕著なのは、いくつかのタンパク質毒素、すなわち、毒素A、毒素B、およびいくつかの株においては、Clostridium perfringensイオタ毒素に類似している二元毒素である。毒素Aは、感染の病態において役割を果たす巨大タンパク質の細胞毒/エンテロトキシンであり、そして腸内コロニー形成過程において影響を及ぼし得る。CDIの大流行は、毒素A陰性/毒素B陽性株によると報告されており、このことは、毒素Bもまた疾病の病態において重要な役割を果たし得ることを示唆する。毒素AおよびBの両方が、多段階の機序を介してその作用機序を発揮し、これは、細胞表面上のレセプターへの結合、内部移行、その後の転位そして細胞のサイトゾルへのエフェクタードメインの放出、並びに最後には細胞内作用を含む。毒素AおよびBの両方について、これはRhoファミリーの低分子量GTPaseファミリーの不活性化を含む。この不活性化のために、各々の毒素は、Rhoタンパク質のアミノ残基上へのグルコース部分(UDP−グルコースからの)の転移を触媒する。毒素AおよびBの両方がまた、システインプロテアーゼの形態で第2の酵素活性を含み、これは転位後のサイトゾルへのエフェクタードメインの放出において役割を果たすようである。C.ディフィシル二元毒素は、異なる様式で作用し、そのターゲットタンパク質上へのNADからのADP−リボース部分の転移を含む機序によって細胞のアクチンを修飾する。
【0005】
C.ディフィシル感染の処置は、現在、抗生物質に依拠し、その中でメトロニダゾールおよびバンコマイシンが第1選択の処置である。しかしながら、これらの抗生物質は全ての場合において有効ではなく、患者の20〜30%は疾病の再発に苦しむ。大きな関心を寄せられているものの中に英国におけるより病原性の高い株の出現があり、これは2002年にカナダで初めて同定された。これらの株は、PCRリボタイプ027、毒素タイプIIIに属するが、これは以前に観察されたよりも3倍高い直接的に起因し得る死亡率でCDIを引き起こす。
【0006】
それ故、新たな治療薬が特に緊急に必要とされる。なぜなら現在の抗生物質の効力が低下しているようであるからである。
【0007】
従って、C.ディフィシル感染(CDI)に特異的に対処することのできる新たな治療/治療薬が当技術分野において必要である。この必要性は本発明によって対処され、これは前記の問題の1つ以上を解決する。
【0008】
より詳細には、本発明の第1の局面は、CDIの予防または処置において使用するためのヒツジ抗体を提供する。別の局面において、本発明は、CDIの予防または処置において使用するための、ヒツジ抗体を含む抗体組成物を提供する。1つの態様において、ヒツジ抗体はポリクローナル抗体である。
【0009】
使用時に、本発明の抗体はC.ディフィシル毒素またはそのフラグメントに結合し、好ましくは前記毒素またはそのフラグメントの生物学的活性を中和する。従って、本発明の抗体は、CDIを予防または処置することができ、好ましくは患者における再発を予防することもできる。
【0010】
本発明の抗体は、患者に対する低い免疫原性効果を有しつつ、C.ディフィシルの1つ以上の毒素の生物学的作用を阻害することができる点で、他の治療薬を上回る明瞭な利点を提供する。さらに、本発明の抗体を、高い力価で産生することができる。従って、ヒツジ抗体を容易に得ることができ、そして最小限の副作用でもってC.ディフィシルによって生じる病的作用に対して患者を保護および/またはすることができる。本発明の抗体はまた、CDIに対する受動免疫化のためのワクチンの開発にも使用され得る。
【0011】
本発明の主要なターゲットは、C.ディフィシル毒素またはそのフラグメントである。本発明の抗体が結合および/または中和し得る適切なC.ディフィシル毒素は、CDIまたはその症状を引き起こすかまたはそれに関連した任意のC.ディフィシル毒素を含む。さらなる態様において、本発明の抗体は、以下:C.ディフィシル毒素Aまたはそのフラグメント、C.ディフィシル毒素Bまたはそのフラグメント、およびC.ディフィシル二元毒素またはそのフラグメントから選択されたC.ディフィシル毒素の少なくとも1つのタイプに結合および/または中和する。
【0012】
従って、1つの態様において、本発明の抗体組成物は、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)に結合および/または中和するヒツジ抗体を含む。別の態様において、本発明の抗体組成物は、C.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)に結合および/または中和するヒツジ抗体を含む。さらに別の態様において、本発明の抗体組成物は、C.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和するヒツジ抗体を含む。
【0013】
別の態様において、本発明の抗体組成物は、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)およびC.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)に結合および/または中和するヒツジ抗体を含む。別の態様において、本発明の抗体組成物は、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)およびC.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和するヒツジ抗体を含む。さらに別の態様において、本発明の抗体組成物は、C.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)およびC.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和するヒツジ抗体を含む。
【0014】
本発明の抗体組成物はまた、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)、C.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)およびC.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和するヒツジ抗体も含み得る。
【0015】
1つの態様において、抗体組成物は、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する第1抗体、並びにC.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する抗体あるいはC.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する抗体から選択された第2抗体を含む。この態様において、第2抗体はC.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)に結合および/または中和し得、そして前記組成物は場合により、C.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する第3抗体を含む。
【0016】
別の態様において、抗体組成物は、C.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する第1抗体、並びにC.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する抗体あるいはC.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する抗体から選択された第2抗体を含む。この態様において、第2抗体は、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)に結合および/または中和し得、そして前記組成物は場合により、C.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する第3抗体を含む。
【0017】
別の態様において、抗体組成物は、C.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する第1抗体、並びにC.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する抗体あるいはC.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する抗体から選択された第2抗体を含む。この態様において、第2抗体は、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)に結合および/または中和し得、そして前記組成物は場合により、C.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する第3抗体を含む。あるいは、第2抗体は、C.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)に結合および/または中和し得、そして前記組成物は場合により、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)に結合および/または中和する第3抗体を含む。
【0018】
本発明の抗体は、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)またはC.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)またはC.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)の1つに(特異的に)結合および/または中和し得る。あるいは、本発明の抗体は、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)またはC.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)またはC.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)の2つ以上に結合し得る。抗体が2つ以上の毒素タイプに結合および/または中和する場合、前記抗体は、好ましくは、C.ディフィシル毒素B(またはそのフラグメント)と、C.ディフィシル毒素A(またはそのフラグメント)および/またはC.ディフィシル二元毒素(またはそのフラグメント)の一方もしくは両方に結合および/または中和する。
【0019】
本発明の抗体は、毒素の特異的なエピトープと相互作用する。例えば、抗体は、C.ディフィシル毒素AのN末端ドメイン(例えばアミノ酸1〜957)または中間領域ドメイン(例えばアミノ酸958〜1831)またはC末端反復ドメイン(例えばアミノ酸1832〜2710)におけるエピトープと結合することができる。例えば、抗体は、C.ディフィシル毒素Aのアミノ酸1832〜2710内のエピトープに結合し得る。同様に、抗体は、毒素BのN末端ドメイン(例えばアミノ酸1〜955)または中間領域ドメイン(例えばアミノ酸956〜1831)またはC末端反復ドメイン(例えばアミノ酸1832〜2366)におけるエピトープと結合することができる。例えば、抗体は、毒素Bのアミノ酸1832〜2366内のエピトープに結合し得る。二元毒素の場合、抗体は、触媒ドメイン(フラグメントA)、またはフラグメントBのC末端部分に存在するレセプター結合ドメイン;および/またはフラグメントAとの結合およびフラグメントAの細胞中への転位に関与するフラグメントBのN末端半分(およそ残基1〜400)に結合し得る。
【0020】
1つの態様において、C.ディフィシル毒素は、毒素タイプ0からXVまでの1つから選択される。好ましい毒素タイプ(それに加えてリボタイプおよび株)を、すぐ下の表1に列挙する。列挙された毒素タイプは純粋に例示的なものであり、そして本発明を限定するものではない。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明の種々の抗体が、C.ディフィシル毒素の同じまたは異なる株に結合および/または中和し得る。例えば、抗体は、以下:C.ディフィシル毒素A−毒素タイプ0;C.ディフィシル毒素B−毒素タイプ0;C.ディフィシル毒素A−毒素タイプIII;C.ディフィシル毒素B−毒素タイプIII;C.ディフィシル毒素A−毒素タイプV;および/またはC.ディフィシル毒素B−毒素タイプVの1つ以上に結合および/または中和し得る。好ましくは、これらの全ての毒素タイプの毒素AおよびBに結合および/または中和する、抗体の混合物が使用される。本発明の抗体は、前記のC.ディフィシル毒素Aおよび/またはC.ディフィシル毒素Bの株のN末端ドメイン、中間領域ドメインおよび/またはC末端反復ドメインにおけるエピトープと結合し得る。
【0023】
特定の態様において、本発明の抗体は、配列番号1〜6またはそのフラグメントに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上同一なアミノ酸配列を含む、少なくとも1つのC.ディフィシル毒素に結合および/または中和し得る。
【0024】
本発明はまた、CDIの予防または処置のための対応する方法を包含し、前記方法は、本発明の抗体組成物を患者に投与することを含む。患者は、C.ディフィシルに感染し得るか、あるいはC.ディフィシルの症状(例えば、軽度の自己限定的な下痢、腹痛、発熱および食欲不振から、偽膜性大腸炎および細胞中毒性巨大結腸症などの生命を危うくする容態まで)を有し得るか、あるいはC.ディフィシル感染への素因を有し得る(例えば抗生物質の処置を受けている、C.ディフィシルに罹患したことがあり再発のリスクがある、またはC.ディフィシル感染に関連した臨床症状を示す第2の個体にさらされたことがある)。本発明は、そのため、CDIを予防または処置するための効果的な手段を提供する。
【0025】
1つの態様において、前記のCDI処置法は、C.ディフィシルに感染するかまたはCDIの症状を患う患者に、本発明の抗体組成物を投与することを含む。これは、治療有効量の抗体を使用して達成することができる。このような投与は、長期間におよぶ、本発明の抗体組成物の反復投与によって行ない得る。前記組成物の抗体成分は同じでもまたは異なっていてもよく(その毒素タイプ特異性および/またはC.ディフィシル毒素上のターゲティングする結合領域もしくはエピトープに関して)、そして投与は同時でもまたは連続的でもよく、そして任意の順序で行なうことができる。
【0026】
別の態様において、前記のCDI予防法は、患者に本発明の抗体組成物を投与して、CDIに対する受動免疫を与えることを含む。これは、CDIの発症前またはCDIの非常に早期の段階で予防有効量の抗体を使用して達成することができる。このような投与は、長期間におよぶ、本発明の抗体組成物の反復投与によって行ない得る。前記組成物の抗体成分は同じでもまたは異なっていてもよく(その毒素タイプ特異性および/またはC.ディフィシル毒素上のターゲティングする結合領域もしくはエピトープに関して)、そして投与は同時でもまたは連続的でもよく、そして任意の順序で行なうことができる。
【0027】
抗体調製
ヒツジ抗体は、ヒツジにおいて生じた抗体である。従って、本発明は、本発明の抗体組成物において使用するためのヒツジ抗体の産生法を含み、前記方法は、一般に、(i)C.ディフィシル毒素またはそのフラグメントを含む免疫原をヒツジに投与する工程、(ii)ヒツジにおける抗体の生成のために十分な時間をかける工程、そして(iii)ヒツジから抗体を得る工程を含む。本明細書において使用したヒツジは、Ovis属(例えば、Ovis ammon, Ovis orientalis aries, Ovis orientalis orientalis, Ovis orientalis vignei, Ovis Canadensis, Ovis dalli, Ovis nivicola)内に該当する任意の種を含む。
【0028】
本発明はまた、本発明の抗体組成物において使用するためのヒツジ抗体の産生法を含み、ヒツジ抗体は、C.ディフィシル毒素またはそのフラグメント(好ましくは、完全長の天然毒素と抗原性の交差反応性を有するおよび/または完全長の天然毒素の毒素活性または毒素様活性を保持するフラグメント)を含む免疫原に応答してヒツジによって誘起される。
【0029】
抗体は、ヒツジの血清から得ることができる。従って、手順は、C.ディフィシル毒素に結合および中和することのできる抗体を含むヒツジ抗血清を生じさせる。さらなる態様において、抗体は単離および/または精製される。従って、本発明の別の局面は、ヒツジ抗血清からの抗体の精製を含む。
【0030】
1つの態様において、本発明の抗体を生成するために使用される免疫原はC.ディフィシル毒素またはそのフラグメントであり、これは場合により精製されている。適切なC.ディフィシル毒素は、CDIまたはその症状を引き起こすかそれに関連した任意のC.ディフィシル毒素を含む。さらなる態様において、毒素は、以下の毒素:C.ディフィシル毒素Aまたはそのフラグメント、C.ディフィシル毒素Bまたはそのフラグメント、およびC.ディフィシル二元毒素またはそのフラグメント、の少なくとも1つから選択される。C.ディフィシル毒素はまた、本明細書において前記したような毒素タイプ0からXVの1つから選択された毒素であり得る。
【0031】
精製されたC.ディフィシル毒素の産生を実施例において例示する。特定の態様において、免疫原はC.ディフィシル毒素変異体である。別の態様において、免疫原は、配列番号1〜6またはそのフラグメントに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上同一なアミノ酸配列を含む。
【0032】
本発明の抗体を生成するために使用される免疫原はまた、部分的または完全に不活性化され得、すなわち、低下した毒性を有する。改変の例は、化学的処理(例えばUDP−ジアルデヒド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、過酸化物または酸素を用いての処理)および組換え法(例えば毒素における欠失または突然変異)を含む。例えば、免疫原は、ホルムアルデヒドを用いての処理によって天然の毒素から誘導されたC.ディフィシルトキソイドまたはそのフラグメントであり得る。あるいは、組換えトキソイドは、部位特異的突然変異誘発によって活性部位モチーフを選択的に不活性化することによって生成され得る。毒素AおよびBの毒性作用を低下または除去する部位特異的突然変異誘発の一例は、毒素のN末端ドメインにおけるDXDモチーフの改変である。アスパラギン酸および/または他の残基を例えばアラニンに突然変異させて、毒素AおよびBのいずれかの生物学的活性を減少させることができる。例えば、毒素Aでは、以下のアミノ酸の1つ以上を突然変異させることができる:Asp269、Asp285、Asp287、Asn383、Trp519、Tyr283、Arg272。毒素Bでは、以下のアミノ酸の1つ以上を突然変異させることができる:Asp270、Asp286、Asp288、Asn384、Trp520、Tyr284、Arg273。
【0033】
抗原をアジュバントと共に製剤化し得る。適切なアジュバントは、ヒトにおいて広範に使用されるミョウバン(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、並びに他のアジュバント、例えばサポニンおよびその精製成分のQuil A、フロイント完全アジュバント、RIBBIアジュバント、並びに研究および獣医学的な適用に使用される他のアジュバントを含み得る。
【0034】
C.ディフィシル毒素またはトキソイドを免疫原として、別々にまたは組み合わせて、同時にまたは連続的にのいずれかで使用して、個々のC.ディフィシル毒素または組合せに特異的な抗体を産生し得る。例えば、2つ以上の毒素またはトキソイドを一緒に混合し、そして単一の免疫原として使用し得る。あるいは、C.ディフィシル毒素(例えばC.ディフィシル毒素A)を別々に第1の免疫原として第1のヒツジまたはヤギに使用し得、そして別のC.ディフィシル毒素(例えばC.ディフィシル毒素B)を別々に第2のヒツジまたはヤギに使用し得る。別々の免疫化によって産生された抗体を合わせて、C.ディフィシル毒素に対して向けられる抗体組成物を得ることができる。
【0035】
前記方法は、皮下、筋肉内、腹腔内および静脈内を含む、全ての免疫化形態を含む。本発明はまた、多種多様な免疫化計画を考える。1つの態様において、ヒツジまたはヤギは毒素(群)を0日目に投与され、そして続いてその後は間隔をおいて毒素(群)を受ける。必要とされる間隔の範囲および投与量の範囲は、免疫原の正にその性質、投与経路、製剤の性質、および担当者の判断に依存する。これらの投与量レベルの変更を、最適化のための標準的で経験的な慣行を使用して調整することができる。同様に、本発明は、抗体を回収するための任意の特定の計画に限定されるものではない。好ましい回収時間は、56日目以後のいつかである。特異的抗体のレベル、すなわち免疫原に結合する抗体のレベルは、血清1リットルあたり少なくとも3gを示す。
【0036】
本発明の抗体は、必要に応じて回収後に改変され得、よって特定の場合においては、本発明の抗体は、それらが投与された患者において、より免疫原性が低い。例えば、患者がヒトである場合、抗体は、当技術分野において周知の方法によって非種特異化され得る。抗体をどのようにより免疫原性を低くし得るかに関する一例は、(Fab)フラグメントの調製である。本発明の抗体を使用して、このような抗体フラグメントを産生し得、このために種々の技術が開発されている。例えば、フラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質分解的消化によって誘導され得る。その産生のための他の技術は当業者には明らかであろう。
【0037】
抗体送達
使用時に、本発明は、非経口投与に、通常は静脈内投与に適した形態で、本発明の抗体組成物を含む薬学的組成物を使用する。精製されたインタクトな抗体またはそのフラグメントは、このような送達のために製剤化される。例えば、抗体またはそのフラグメントは、5〜50または15〜50または25〜50g/リットルの濃度で、緩衝液中で製剤化され得る。適切な緩衝液の成分の例としては、生理的塩、例えばクエン酸ナトリウムおよび/またはクエン酸が挙げられる。好ましい緩衝液は、100〜200または125〜175または約150(例えば153)mMの生理的塩、例えば塩化ナトリウムを含む。好ましい緩衝液は、患者の生理的pHに近いpHで、例えば5.5〜6.4のpH、または5.6〜6.3のpH、または5.7〜6.2のpH、または5.8〜6.2のpHで薬学的組成物を維持する。本発明の抗体含有組成物は、好ましくは、アジュバント(群)を排除する。なぜなら、患者において前記抗体に対する免疫応答を刺激することは望ましくないからである。
【0038】
本発明の抗体は、筋肉内、皮下または静脈内送達のために製剤化され得るがそれらに限定されない。筋肉内、皮下または静脈内注入に適した組成物は、無菌水性液剤を含む。このような水性液剤は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤を、最初に、十分な食塩水またはグルコースを用いて等張とすべきである。本発明の抗体組成物は経口製剤ではなく、そしてこの投与形態は使用されない。これに関して、経口送達での重要な問題は、十分な抗体が、必要とされる場所である大腸に確実に到達することである。抗体が腸に到達することを妨害する因子としては、抗体分子を分解する、消化器分泌物中に存在するタンパク質分解酵素、並びにまた、いくつかの場合においては消化管の下方への液体の移動を妨げる麻痺性イレウスおよび他の合併症を引き起こし得るCDIそれ自体の作用が挙げられる。
【0039】
注入に適した組成物は、液剤、懸濁剤、または使用前に適切なビヒクル中に溶解もしくは懸濁する乾燥散剤の形態であり得る。
【0040】
調製時に抗体またはそのフラグメントの溶液をビヒクルに溶かすことができ、溶液は必要であれば塩化ナトリウムの添加によって等張性とし、そして無菌技術を使用して滅菌フィルターを通したろ過によって滅菌し、その後、適切な滅菌バイアルまたはアンプルに充填し、そして封をする。有利には、緩衝剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤または殺菌剤または懸濁化剤および/または局所麻酔剤などの添加剤をビヒクル中に溶解してもよい。
【0041】
使用前に適切なビヒクル中に溶解または懸濁した乾燥散剤は、滅菌区域で無菌技術を使用して滅菌容器中に予め滅菌した成分を充填することによって調製され得る。あるいは、成分を、滅菌区域で無菌技術を使用して適切な容器中に溶解し得る。その後、産物を凍結乾燥し、そして容器を無菌的に封をする。
【0042】
本発明の抗体の投与のための投与量範囲は、所望の治療効果をもたらすものである。必要とされる投与量の範囲は、抗体または組成物の正にその性質、投与経路、製剤の性質、患者の年齢、患者の容態の性質、程度または重度、禁忌(ある場合)、および担当医の判断に依存する。これらの投与量レベルの変更を、最適化のための標準的で経験的な慣行を使用して調整することができる。
【0043】
適切な1日投与量は、体重1kgあたり5〜20mgの範囲である。単位投与量は、100mg未満から変動し得るが、しかし典型的には1用量あたり250〜2000mgの領域にあり、これは1日1回またはより少ない頻度で(例えば1週間まで1日おきに)投与され得る。
【0044】
CDIの予防または処置のための治療法において本発明の抗体を、互いに組み合わせて、またはCDIの処置に通常使用される他の確立された療法の補助として、またはそれと併せて使用することも本発明の範囲内である。例えば、本発明の抗体は、適切な抗生物質(例えばメトロニダゾールおよび/またはバンコマイシン)と併せて投与され得る。
【0045】
組合せ処置は、当業者によって必要であるまたは簡便であると思われる任意の方法で行われ得、そして本明細書の目的においては、組合せて使用しようとする化合物の順序、量、反復または相対量に関しての制限は全く考えない。
【0046】
定義の章
クロストリジウム・ディフィシルは、クロストリジウム属のグラム陽性細菌の一種である。
【0047】
クロストリジウム・ディフィシル感染(CDI)はヒトおよび動物に罹患し、そして軽度の自己限定的な下痢から、偽膜性大腸炎および細胞中毒性巨大結腸症などの生命を危うくする容態までの範囲の症状をもたらす、細菌感染を意味する。この疾病においては、C.ディフィシルは正常な腸の細菌叢を交代させ、そして腸上皮を攻撃しそして傷害を及ぼす細胞毒を産生する。ヒトCDIに対する主要なリスク因子としては、広域スペクトルの抗生物質を受けていること、65歳を超えていること、および入院していることが挙げられる。
【0048】
クロストリジウム・ディフィシル毒素Aは、約300kDaのサイズのタンパク質細胞毒/エンテロトキシンのファミリーである。毒素Aは、N末端領域内に酵素活性を有し、これは哺乳動物細胞の細胞骨格を破壊して細胞死を引き起こすように作用する。クロストリジウム・ディフィシル株内には数多くの天然に存在する毒素Aの変異体が存在し、これは「毒素タイプ」と呼ばれる。毒素Aの種々の毒素タイプは、その一次配列内に、通常全体で10%未満の変異を有する。適切な毒素A配列の例としては配列番号1および3が挙げられる。
【0049】
クロストリジウム・ディフィシル毒素Bは、約270kDaのサイズのタンパク質細胞毒のファミリーであり、これは毒素Aと類似しているが、有意により細胞毒性が高い。毒素Aのように、毒素Bは、N末端領域内に酵素活性を有し、これが哺乳動物細胞の細胞骨格を破壊し、細胞死を引き起こすように作用する。C.ディフィシル株内には数多くの天然に存在する毒素Bの変異体が存在し、これは「毒素タイプ」と呼ばれる。毒素Bの種々の毒素タイプは、その一次配列内に、通常全体で15%未満の変異を有する。適切な毒素A配列の例としては、配列番号2および4が挙げられる。
【0050】
二元毒素は、いくつかのしかし全てではないC.ディフィシル株によって産生される2成分の細胞毒である。二元毒素は、Clostridium botulinum C2およびClostridium perfringensイオタ毒素に作用が類似しており、これはC.ディフィシル二元毒素のように、約100kDaの細胞結合フラグメントおよび約50kDaの酵素的に活性な「エフェクター」フラグメントからなる。適切な二元毒素配列の例としては配列番号5および6が挙げられる。
【0051】
本明細書において使用する「毒素」という用語は、前記の毒素フラグメントも包含する。前記フラグメントは、参照毒素の10〜2700(例えば、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、500、750、1000、1500、2000または2500)の任意の数のアミノ酸の範囲であり得る。前記フラグメントは、好ましくは、問題の遺伝子産物の少なくとも1つのエピトープを含む。前記「フラグメント」はまた、それが由来する毒素と共通の抗原性交差反応性および/または実質的に同じin vivoにおける生物学的活性を有し得る。例えば、フラグメントに結合することのできる抗体は、それが由来する毒素にも結合することができるだろう。あるいは、前記フラグメントは、C.ディフィシル毒素の抗原性成分に以前にさらされたことがあるTリンパ球の「想起応答」を誘導する共通した能力を共有し得る。
【0052】
毒素という用語への言及は、その「変異体」、例えば、C.ディフィシル毒素に対して少なくとも80または85または90または95または96または97または98または99%のアミノ酸配列相同性を有するペプチドまたはペプチドフラグメントを包含する。さらなる態様において、「変異体」は、前記ペプチドまたはペプチドフラグメントの模倣体であり得、この模倣体は、ペプチドまたはペプチドフラグメントの少なくとも1つのエピトープを再現する。
【0053】
毒素への言及は、毒素「トキソイド」を包含し、これは以下においてより詳細に考察する。
【0054】
毒素タイプは、C.ディフィシル株を分類するために使用されることが多い。毒素タイプは、毒素遺伝子を用いて得られた制限酵素パターンを特徴付ける方法に基づく。前記したように、毒素AおよびBの毒素タイプは、一次アミノ酸配列による、これらのタンパク質毒素の変異体を示す。
【0055】
クロストリジウム・ディフィシルトキソイドは、部分的にまたは完全に不活性化されたC.ディフィシル毒素(毒素A、毒素Bまたは二元毒素)またはC.ディフィシル毒素の混合物を説明するために使用される。毒素は、in vitroにおける細胞毒性アッセイによってまたは動物毒性によって測定したところ、非処理毒素よりも低い毒性(例えば100%、99%、95%または90%低い毒性)を有する場合に不活性化されていると考える。
【0056】
対象の毒素に結合する抗体は、前記抗体が治療剤として有用であるような十分な親和性でその毒素に結合することのできるものである。対象の毒素に結合する抗体は、C.ディフィシルの毒素に少なくとも10Mの親和性(K)で結合するものである。
【0057】
毒素中和は、C.ディフィシルの1つ以上の細胞毒(毒素Aおよび/または毒素Bおよび/または二元毒素)の生物学的作用を遮断する物質(例えば抗体)の作用を意味する。細胞毒の生物学的作用は、哺乳動物の腸上皮の特定の細胞において哺乳動物細胞を殺滅またはその機能を損なうその能力として定義される。物質の毒素中和活性は、培養液中で増殖した哺乳動物細胞の死滅を防ぐその能力によって測定され得る。
【0058】
治療有効量は、CDI、またはCDIの臨床症状の少なくとも1つを処置するために患者に単独でまたは組み合わせて投与された場合に、疾病または症状のこのような処置を行なうに十分である、抗体の量を指す。治療有効量は、例えば、抗体、感染、および/または感染の症状、感染の重度、および/または感染の症状、処置しようとする患者の年齢、体重および/または健康、並びに処方医の判断に依存して変更され得る。任意の所与の場合における適切な治療有効量は、当業者によって確認され得るか、または慣用的な実験によって決定することができる。また、治療有効量は、抗体の任意の毒性作用または有害な作用よりも有益な作用がまさるものである。
【0059】
「予防有効量」は、単独でまたは組み合わせて患者に投与した場合に、CDIの発症もしくは再発またはCDIの臨床症状の少なくとも1つを阻害または遅延させる、抗体の任意の量である。いくつかの態様において、予防有効量は、クロストリジウム・ディフィシル感染の発症または再発を完全に予防する。発症を「阻害する」とは、感染の発症の可能性を低下させるか、または発症を完全に予防することのいずれかを意味する。
【0060】
ヒツジは、Ovis属(例えばOvis ammon, Ovis orientalis aries, Ovis orientalis orientalis, Ovis orientalis vignei, Ovis Canadensis, Ovis dalli, Ovis nivicola)内に該当する任意の種を意味する。
【0061】
ヤギは、Capra属(例えばCapra pyrenaicais, Capra ibex, Capra nubiana, Capra sibirica, Capra walie, Capra caucasica, Capra cylindricornis Capra aegagrus, Capra falconeri)内に該当する任意の種を意味する。
【0062】
ヒツジ抗体は、ヒツジにおいて生じた抗体に対して少なくとも100%、99%、95%、90%、80%、75%、60%、50%、25%または10%のアミノ酸配列同一性を有する抗体である。
【0063】
配列の比較のために、典型的には1つの配列が参照配列として作用し、これと試験配列を比較し得る。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピューターに入力し、必要であればその後の座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。その後、配列比較アルゴリズムは、指定したプログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較した試験配列(群)についての配列同一率を計算する。
【0064】
比較のための配列の最適なアラインメントを、例えば、Smith and Waterman [Adv. Appl. Math. 2: 484 (1981)]の局所相同性アラインメントアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch [J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)]のアルゴリズムによって、Pearson & Lipman [Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)]の類似性の方法についての探索によって、これらのアルゴリズムのコンピューター実行によって(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、Genetics Computer Groupの配列解析ソフトウェアパッケージ、University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)、または目視検査によって[Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausbel et al, eds, Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, In. And John Wiley & Sons, Inc. (1995 Supplement) Ausbubelを参照]、実施し得る。
【0065】
配列類似率を決定するのに適したアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムである[Altschul (1990) J. Mol. Biol. 215: pp. 403-410;および"http://www.ncbi.nlm.nih.gov/" of the National Center for Biotechnology Informationを参照]。
【0066】
好ましい相同性比較において、少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸、より好ましくは30アミノ酸残基長である配列領域にわたって同一性が存在する。
【0067】
「抗体」は最も広い意味で使用され、そしてそれらが所望の生物学的活性を示す限りポリクローナル抗体および抗体フラグメントも特に網羅する。特に、抗体は、少なくとも1つまたは2つの重鎖(H)可変領域(本明細書においてはVHCと略称する)、および少なくとも1つまたは2つの軽鎖(L)可変領域(本明細書においてはVLCと略称する)を含むタンパク質である。VHCおよびVLC領域はさらに、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存された領域の散在した、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変領域にさらに分類され得る。フレームワーク領域およびCDRの程度は正確に定義されている(Kabat, E.A., et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242, 1991, およびChothia, C. et al, J. MoI. Biol. 196:901-917, 1987を参照、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0068】
好ましくは、各々のVHCおよびVLCは3つのCDRおよび4つのFRから構成され、これはアミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で整列している:FRI、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0069】
抗体のVHC鎖またはVLC鎖はさらに、重鎖または軽鎖の定常領域の全部または一部をさらに含むことができる。1つの態様において、抗体は2つの重鎖免疫グロブリンと2つの軽鎖免疫グロブリンとの四量体であり、重鎖および軽鎖の免疫グロブリン鎖は、例えばジスルフィド結合によって内部接続されている。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわちCH1、CH2およびCH3を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、すなわちCLからなる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、典型的には、宿主組織または因子(免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第一成分(C1q)を含む)への抗体の結合を媒介する。「抗体」という用語は、IgA型、IgG型、IgE型、IgD型、IgM型(ならびにそのサブタイプ)のインタクトな免疫グロブリンを含み、免疫グロブリンの軽鎖は、κ型またはλ型であり得る。
【0070】
本明細書において使用する抗体という用語はまた、C.ディフィシルの毒素(例えば毒素B)に結合する抗体の部分、例えば、1つ以上の免疫グロブリン鎖が全長ではないが毒素に結合する分子を指す。抗体という用語に包含される結合部分の例としては、(i)VLCドメイン、VHCドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント、F(ab’)フラグメント;(iii)VHCドメインおよびCH1ドメインからなるFcフラグメント;(iv)抗体の単腕のVLCドメインおよびVHCドメインからなるFvフラグメント、(v)VHCドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al, Nature 341:544-546, 1989);および(vi)結合するために十分なフレームワークを有する単離された相補性決定領域(CDR)、例えば可変領域の抗原結合部分が挙げられる。軽鎖可変領域の抗原結合部分および重鎖可変領域の抗原結合部分、例えばFvフラグメントの2つのドメインである、VLCおよびVHCを、組換え法を使用して、1つのタンパク質鎖として作製することを可能とする合成リンカーによって接続することができ、VLC領域とVHC領域は対を形成して一価の分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science lAl-ATi-Alβ;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. ScL USA 85:5879-5883参照)。このような単鎖抗体もまた抗体という用語に包含される。これらは、当業者に公知の慣用的な技術を使用して得られ、そして前記部分を、インタクトな抗体と同じように有用性についてスクリーニングする。
【0071】
これから図面の簡単な説明を以下に示し、これは本発明の局面および/または態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】アフィニティクロマトグラフィーによる血清中における毒素Aに対する抗体の測定。その後に溶出された、セファロースゲルに固定された毒素Aに結合している抗体。図は、ローディングされた血清と溶出された毒素A特異的抗体との間の直線関係を示す。実験の詳細を実施例9において提供する。
【図2】アフィニティクロマトグラフィーによる血清中における毒素Aに対する抗体の測定。その後に溶出された、セファロースゲルに固定された毒素Aに結合している抗体。図は、毒素Aのトキソイドを用いて免疫化されたヒツジにおける特異的抗体を実証する。毒素Aに対する抗体は、ヒツジ血清中に3mg/ml(3g/リットル)超で存在していた。実験の詳細を実施例9において提供する。
【図3】ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの混合物を用いての受動免疫化による、CDIからの防御。シリアンハムスター(10匹の群)に、指定した時間に、10mg/用量(▼)、2mg/用量(■)の毒素AおよびBに対するヒツジ抗体、または非特異的対照抗体(●)のいずれかを用いて受動免疫化(腹腔内)した。−2日目および0日目にクリンダマイシンを受けた動物に、C.ディフィシル胞子(2×10コロニー形成単位)を用いてチャレンジした。生存率、チャレンジ後の日数をプロットによって示す。
【図4】ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AまたはBを用いての受動免疫化による、CDIからの防御。シリアンハムスター(10匹の群)に、指定した時間に、10mg/用量の毒素A+Bに対するヒツジ抗体(▼)、10mg/用量の毒素A抗体単独(△)、10mg/用量の毒素B抗体単独(○)、または非特異的対照抗体(□)のいずれかを用いて受動免疫化(腹腔内)した。−2日目および0日目にクリンダマイシンを受けた動物に、C.ディフィシル胞子(2×10コロニー形成単位)を用いてチャレンジした。生存率、チャレンジ後の日数をプロットによって示す。
【図5】ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの混合物を用いての受動免疫化による、「超病原性」クロストリジウム・ディフィシルのリボタイプ027(R20291株、Stoke Mandeville)によって誘発されたCDIからの防御。シリアンハムスター(10匹の群)に、指定した時間に、10mg/用量の毒素AおよびBに対するヒツジ抗体(▼)または非特異的対照抗体(■)のいずれかを用いて受動免疫化(腹腔内)した。−3日目および0日目にクリンダマイシンを受けた動物に、C.ディフィシル胞子(1×10コロニー形成単位)を用いてチャレンジした。チャレンジ後の日数における疾病状態をプロットによって示す。
【図6】ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの混合物を用いての受動免疫化による、「超病原性」クロストリジウム・ディフィシル(毒素タイプ5)のリボタイプ078によって誘発されたCDIからの防御。シリアンハムスター(10匹の群)に、指定した時間に、10mg/用量の毒素AおよびBに対するヒツジ抗体(▼)または非特異的対照抗体(●)のいずれかを用いて受動免疫化(腹腔内)した。−2日目および0日目にクリンダマイシンを受けた動物に、C.ディフィシル胞子(2×10コロニー形成単位)を用いてチャレンジした。チャレンジ後の日数における疾病状態をプロットによって示す。
【0073】
実施例の要約
実施例1 C.ディフィシルの毒素タイプ0の毒素AおよびBの精製。
実施例2 C.ディフィシルの他の毒素タイプの毒素AおよびBの精製。
実施例3 組換えC.ディフィシル毒素AおよびBの精製。
実施例4 C.ディフィシル二元毒素の精製。
実施例5 C.ディフィシル毒素AおよびBのトキソイドの調製。
実施例6 抗血清の調製。
実施例7 毒素タイプ0の毒素AおよびBに対する抗血清の調製。
実施例8 in vitro細胞アッセイを使用した、毒素に対する抗血清の中和効力の評価。
実施例9 イムノアフィニティカラムを使用した血清中のC.ディフィシル毒素に対する特異的抗体の量の定量。
実施例10 抗体混合物の調製。
実施例11 CDIを予防するためのヒツジ抗体のin vivoにおける効力の評価。
実施例12 CDIを処置するためのヒツジ抗血清のin vivoにおける効力の評価。
実施例13 抗体製剤の臨床的使用。
実施例14 ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの抗体混合物を用いての受動免疫化による、CDIからの防御。
実施例15 ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AもしくはB抗体を用いての、またはヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの抗体混合物を用いての受動免疫化による、CDIからの防御。
実施例16 ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの混合物を用いての受動免疫化による、「超病原性」クロストリジウム・ディフィシルのリボタイプ027(R20291株、Stoke Mandeville)によって誘発されたCDIからの防御。
実施例17 ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの混合物を用いての受動免疫化による、「超病原性」クロストリジウム・ディフィシル単離株のリボタイプ078によって誘発されたCDIからの防御。
【0074】
配列番号の要約
最初のMetアミノ酸残基または対応する開始コドンが、以下のいずれの配列番号において示されているが、前記残基/コドンは任意選択である。
1.クロストリジウム・ディフィシル毒素A−毒素タイプ0のタンパク質配列
2.クロストリジウム・ディフィシル毒素B−毒素タイプ0のタンパク質配列
3.クロストリジウム・ディフィシル毒素A−毒素タイプIIIのタンパク質配列
4.クロストリジウム・ディフィシル毒素B−毒素タイプIIIのタンパク質配列
5.クロストリジウム・ディフィシル二元毒素フラグメントAのタンパク質配列
6.クロストリジウム・ディフィシル二元毒素フラグメントBのタンパク質配列
【0075】
実施例
実施例1 クロストリジウム・ディフィシルの毒素タイプ0の毒素AおよびBの精製
毒素タイプ0の毒素AおよびBを産生するC.ディフィシル株(例えばVPI 10463)を、記載(Roberts and Shone (2001) Toxicon 39: 325-333)のように透析サック培養液中で増殖させた。増殖後、細胞スラリーを透析サックから回収し、そしてその後、10000×gで30分間遠心分離にかけ、そして得られた上清の液体のpHをpH7.5に調整し、そして硫酸アンモニウムに関して70%飽和とさせた。毒素を含む沈降物を遠心分離によって回収し、その後、50mMビストリスpH6.5緩衝液中に再懸濁し、そして4℃の同じ緩衝液に対して透析した。透析後、毒素AおよびBの粗溶液をQセファロースクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製し、そして毒素を含むタンパク質ピークをNaCl勾配で溶出した。毒素Aを含むピークを、0.5M NaClを含む50mM Hepes(pH7.4)緩衝液に対して透析し、Znキレートカラム(Znセファロース)で精製した。毒素をローディングし、そしてカラムから汚染タンパク質を洗浄した後、精製した毒素Aを、50mM Hepes(pH7.4)、20mM EDTAおよび0.1M NaClを含む緩衝液を用いて溶出した。精製した毒素Aを、0.15M NaClを含む50mM Hepes(pH7.4)緩衝液に対して透析し、そして使用するまで4℃で保存するかまたは凍結させた。最初のQセファロースカラムからの毒素Bを含むピークを、高分解能のMonoQ陰イオン交換樹脂のカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。毒素を、50mMビストリス(pH6.5)緩衝液中のカラムにローディングした後、精製した毒素Bを、NaCl勾配を用いて溶出し、そして毒素を含む画分をプールした。精製した毒素Bを、0.15M NaClを含む50mM Hepes(pH7.4)緩衝液に対して透析し、そして使用するまで4℃で保存するかまたは凍結させた。
【0076】
実施例2 C.ディフィシルの他の毒素タイプの毒素AおよびBの精製
公知の任意の毒素タイプを示す毒素AおよびBを、実施例1に記載のように精製し得る。種々の毒素タイプの毒素AおよびBを産生する公知のC.ディフィシル株を表1に示し、そして精製のために必要な株を選択することによって、必要とされる毒素タイプの毒素AおよびBを精製し得る。あるいは、所望の毒素タイプの毒素を産生するC.ディフィシル株が得られるまで、C.ディフィシルを以前に記載(Rupnik et al. (1998) J. Clinical Microbiol. 36: 2240-2247; Rupnik et al. (2001) Microbiology 147: 439-447)のように毒素タイプ分類し得る。
【0077】
毒素タイプIIIの毒素AおよびBを産生するために、C.ディフィシルR20291株(またNCTC1 3366としても知られる)を、透析サック培養液中で記載(Roberts and Shone (2001) Toxicon 39: 325-333)のように増殖させ、そして毒素を実施例1に記載のように精製した。
【0078】
実施例3 組換えC.ディフィシル毒素AおよびBの精製
C.ディフィシル毒素AおよびBの例のアミノ酸配列を配列番号1〜4に示す。これらのペプチドをコードする遺伝子は、任意の所望の発現宿主(例えばE.coli、Pichia pastoris)のためのコドン偏位をもって商業的に作製され得る。ペプチドをこれらの遺伝子から標準的な分子生物学的方法(例えばSambrook et al. 1989, Molecular Cloning a Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)を使用して発現させ、そして得られた可溶性の発現されたポリペプチドを、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびセラミックヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーの組合せによって精製する。タンパク質精製技術分野においては周知である他のクロマトグラフィー技術、例えばサイズ排除クロマトグラフィーおよび/またはアフィニティクロマトグラフィーも使用し得る。後者のために、組換えフラグメントは、pET vector Expression System Manual, 11th Edition published by Merck KGaA, Darmstadt, Germanyにおいて記載のようにアフィニティ精製タグ(例えばヒスチジン−6、streptag)と共に発現され得る。
【0079】
配列が不明であるC.ディフィシルの毒素タイプから組換え毒素を産生するために、標準的な分子生物学的方法によってDNAを最初に抽出し、そして毒素配列(群)を誘導することが必要である。一旦、配列が誘導されたら、組換え毒素を、前記のように合成遺伝子から発現させることができる。
【0080】
実施例4 C.ディフィシル二元毒素の精製
C.ディフィシル二元毒素フラグメントAおよびBのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5および6に示す。これらのペプチドをコードする遺伝子は、任意の所望の発現宿主(例えばE.coli、Pichia pastoris)のためのコドン偏位をもって商業的に作製され得る。ペプチドをこれらの遺伝子から標準的な分子生物学的方法(例えばSambrook et al. 1989, Molecular Cloning a Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)を使用して発現させ、そして得られた可溶性の発現されたペプチドを、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびセラミックヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーの組合せによって精製する。タンパク質精製技術分野においては周知である他のクロマトグラフィー技術、例えばサイズ排除クロマトグラフィーおよび/またはアフィニティクロマトグラフィーも使用し得る。あるいは、組換えフラグメントは、pET vector Expression System Manual, 11th Edition published by Merck KGaA, Darmstadt, Germanyにおいて記載のようにアフィニティ精製タグ(例えばヒスチジン−6、streptag)と共に発現され得る。
【0081】
ペプチドが不溶性の形態で産生される場合、次いでそれらを市販されている発現ベクター(例えばpET52b)を使用してヒスチジン−6精製タグと共に発現させ得、そしてLia et al.の概説およびその中に含まれる参考文献(Lia M et al (2004) Protein Expression & Purification 33, 1-10、これは参照により本明細書に組み入れられる)によって記載のようなオンカラムリフォールディングによってリフォールディングし得る。
【0082】
実施例5 C.ディフィシル毒素AおよびBのトキソイドの調製
0.2〜2mg/mlの濃度の精製されたC.ディフィシル毒素を、適切な緩衝液(例えば、150mM NaClを含む10mM Hepes緩衝液、pH7.4)に対して透析し、そしてその後、0.05〜0.5%の最終濃度でホルムアルデヒドを加え、そして1〜25日間35℃でインキュベーションする。インキュベーション後、ホルムアルデヒドを透析によって除去する。ホルムアルデヒドを用いての処理のための条件は、ペプチドによって変動し得、そして最終条件は、防御効力の評価の結果に基づいて微調整し得る。
【0083】
実施例6 抗血清の調製
最適な体液性抗体応答を達成するために、抗血清の調製中には多くの因子を考慮する。これらは:
動物の繁殖、
アジュバントの選択、
免疫化部位の数および場所、
免疫原の量
投与の回数および投与間隔
を含む。
【0084】
これらのパラメーターの最適化の結果として、血清1リットルあたり6g超の特異的な抗体レベルを得ることが通例である。
【0085】
ヒツジのために、10〜500μgのC.ディフィシル抗原を含む2mlの緩衝溶液を、2.6mlのフロイントアジュバントと混合する。完全形のアジュバントを一次免疫化のために使用し、そして不完全フロイントアジュバントをその後の全てのブーストのために使用する。安定なエマルションが確実に得られるように、アジュバントの混合を数分間かけて行なう。約4.2mlの抗原/アジュバント混合物を使用して、筋肉内注入によって各ヒツジを免疫化し、そして首および全ての上肢を含む6つの部位に広げる。これを28日毎に繰り返す。血液試料を各免疫化の14日後に採取する。一旦、適切な抗体レベルが達成されると、より多くの容量を滅菌バッグに採取する(体重1kgあたり10ml)。バッグをゆっくりと回転させて凝血を加速させ、4500×gで30分間遠心分離にかけ、そして血清を無菌条件下で取り出し、そしてプールする。所望のC.ディフィシル抗原に対して低い力価を示したあらゆる動物を集団から除去する。
【0086】
実施例7 毒素タイプ0の毒素AおよびBに対する抗血清の調製
毒素タイプ0の株(例えばVPI 10463)からの毒素AおよびBを実施例1に記載のように調製した。あるいは、毒素AまたはBを、Yang et al.(Yang G, Zhou B, Wang J, He X, Sun X, Nie W, Tzipori S, Feng H (2008) Expression of recombinant Clostridium difficile toxin A and B in Bacillus megaterium. BMC Microbiol. 8: 192)によって記載のような組換え法によって作製し得る。精製した毒素を、実施例5に記載のようにトキソイド化し得る。
【0087】
トキソイドAまたはBを用いてのヒツジの免疫化のために、10〜500μgのC.ディフィシルトキソイドAまたはBのいずれかを含む2mlの緩衝溶液を、2.6mlのフロイントアジュバントと混合した。完全形のアジュバントを一次免疫化のために使用し、そして不完全フロイントアジュバントをその後の全てのブーストのために使用した。安定なエマルションが確実に得られるように、アジュバントの混合を数分間かけて行なう。混合後、約4.2mlの抗原/アジュバント混合物を使用して、筋肉内注入によって各ヒツジを免疫化し、そして首および全ての上肢を含む6つの部位に広げた。これを28日毎に繰り返し、そして血清試料を各免疫化の14日後に回収した。一旦、適切な抗体レベルが達成されると、より多くの産生試料を滅菌バッグに採取した(体重1kgあたり10ml)。バッグをゆっくりと回転させて凝血を加速させ、4500×gで30分間遠心分離にかけ、そして血清を無菌条件下で取り出し、そしてプールした。毒素AまたはBのいずれかに対して低い力価を示したあらゆる動物を集団から排除した。
【0088】
実施例8 in vitroにおける細胞アッセイを使用した、毒素に対する抗血清の中和効力の評価
C.ディフィシル毒素に対する抗血清の毒素中和活性を、Vero細胞を使用して細胞毒性アッセイによって測定する。一定量の精製されたC.ディフィシル毒素AまたはBのいずれかを、種々の希釈の抗体と混合し、37℃で1時間インキュベーションし、そしてその後、24ウェル組織培養プレート上で増殖しているVero細胞に適用する。毒素AおよびBの両方が細胞毒性活性を有し、その結果、24〜72時間の期間におよびVero細胞の特徴的な円形化が起こる。中和抗体の存在下においてはこの活性は阻害され、そして抗体調製物の中和強度は、指定された量の毒素AまたはBのいずれかの効果を中和するのに必要とされる希釈によって評価され得る。
【0089】
C.ディフィシル毒素Aに対するヒツジ抗体の中和活性を実証したデータを表2に示す。この実験においては、種々の希釈のヒツジ抗体を毒素Aと50ng/mlの最終濃度で混合し、そして37℃で1時間インキュベーションし、そしてその後、前記のようにVero細胞に適用し、そして37℃でインキュベーションし、そして24〜72時間の期間かけてモニタリングした。毒素Aの細胞毒性作用に対して細胞を防御する抗体希釈を計算した。表2は、14週間の期間かけて免疫化したヒツジが、16000の中和力価を有していたことを示す(すなわち1/16000の希釈の血清が、細胞を、毒素Aの細胞毒性作用から防御した)。
【0090】
表2−ホルムアルデヒドで処理した毒素Aに対して生じたヒツジ抗体の中和力価:
【0091】
【表2】

【0092】
表3−ホルムアルデヒドで処理した毒素Bに対して生じたヒツジ抗体の中和力価
これらのデータ(以下)は、Vero細胞の細胞毒性アッセイによって測定したところ、より高い免疫化用量のトキソイドB抗原が、より良好なヒツジ毒素中和免疫応答をもたらすことを示す。使用したアッセイを、すぐ上の実施例8において記載する。
【0093】
【表3】

【0094】
表4−等価な濃度の毒素タイプ0および毒素タイプIIIの毒素Bに対する、ヒツジ抗毒素Bの中和力価
これらのデータ(以下)は、等価な量の毒素B(毒素タイプ0)および毒素B(毒素タイプIII)を中和する、毒素B(毒素タイプ0)から誘導されたトキソイドBに対して生じたヒツジ抗体の能力を比較する。毒素B(毒素タイプ0)および毒素B(毒素タイプIII)をそれぞれC.ディフィシルVPI 10463株およびR20291株から精製した。
【0095】
細胞アッセイをすぐ上に実施例8において記載したように、等価な細胞毒性量の毒素Bの各タイプを使用して実施した。滴定を、1つの実験においては4単位(細胞死を誘導するのに必要とされる量の4倍)および別の実験においては10単位で固定した毒素Bに対して行なった。
【0096】
データは、毒素タイプ0の株から誘導されたトキソイドBを使用して毒素Bに対して生じたヒツジ抗体が、毒素B(毒素タイプ0)および毒素B(毒素タイプIII)を同じ効力で中和したことを示す。
【0097】
【表4】

【0098】
表5.等価な濃度の毒素タイプ0および毒素タイプVの毒素Bに対するヒツジ抗毒素Bの中和力価
これらのデータは、等価な量の毒素B(毒素タイプ0)および毒素B(毒素タイプV)を中和する、毒素B(毒素タイプ0)から誘導されたトキソイドBに対して生じたヒツジ抗体の能力を比較する。毒素B(毒素タイプ0)および毒素B(毒素タイプV)を、C.ディフィシルVPI 10463株およびC.ディフィシルリボタイプ078単離株からそれぞれ精製した。
【0099】
細胞アッセイを、実施例8のように、等価な細胞毒性量の毒素Bの各タイプを使用して実施した。滴定を、1つの実験においては4単位(細胞死を誘導するのに必要とされる量の4倍)および別の実験においては10単位で固定した毒素Bに対して行なった。
【0100】
データは、毒素タイプ0の株から誘導されたトキソイドBを使用して、毒素Bに対して生じたヒツジ抗体が、毒素B(毒素タイプ0)およびまた毒素B(毒素タイプIII)を2倍低下した効力で中和したことを示す。
【0101】
【表5】

【0102】
実施例9 イムノアフィニティカラムを使用した、血清中のC.ディフィシル毒素に対する特異的抗体の量の定量
カラム調製
必要量のCNBr活性化セファロース4ファストフロー(0.5g乾燥重量)を適切な清潔な容器(ガラスまたはプラスチック)に評量する。約10mlの希塩酸(1mM)を加えてゲルを膨潤させ、そして20〜30分後、ゲルを10mLのガラスカラムに移し、そしてさらなる20mLのHCl(1mM)で洗浄し、その後、20mLのカップリング緩衝液(500mMの塩化ナトリウムを含む重炭酸ナトリウム、100mM、pH8.3)で洗浄する。1mg/mLの濃度の毒素(毒素A、毒素Bまたは二元毒素フラグメント溶液(1mL))をカップリング緩衝液を用いて5mLに希釈し、そして活性化ゲルを含むカラムに加え、そしてゲルが再懸濁されるまで内容物を穏やかに混合し、そして室温で一晩(16〜18時間)回転させる。その後、カラムを流し、そして5mlの遮断試薬(エタノールアミン溶液、1M)を加え、穏やかに混合し、そして室温で2時間回転させる。次に、カラムを20mLのカップリング緩衝液で洗浄し、その後、20mLの溶出緩衝液(グリシン溶液、100mM、pH2.5)で洗浄する。この工程を2回繰り返す。カラムを最後に20mLのアッセイ緩衝液(500mM塩化ナトリウムおよび最終濃度1g/Lのアジ化ナトリウムを含む、リン酸ナトリウム緩衝液、10mM、pH7.4)で洗浄し、そして使用するまで2〜8℃で3〜5mLのアッセイ緩衝液中に保存する。
【0103】
カラム評価
カラムの特異的結合容量および非特異的な容量を使用前に評価しなければならない。カラムを冷蔵庫から取り出し、そして室温で平衡化させ、そしてその後、25mLのアッセイ緩衝液で洗浄する。漸増容量の産物(全抗血清、精製IgG、FabまたはF(ab’))を個々にカラムにローディングし、そして室温で1時間穏やかに回転させて混合する。非結合画分を25mLのアッセイ緩衝液で洗浄除去し、そしてその後、結合した画分をカラムから20mlの溶出緩衝液(グリシン緩衝液100mM、pH2.5)を用いて溶出する。溶出画分のタンパク質含量を、産物に関連した吸光係数、すなわちヒツジIgGについては1.5(Curd et al., 1971)またはヒツジFabおよびF(ab’)については1.4(Allen, 1996)を使用して280nmにおける分光測定で決定する。ローディングされた容量に対して溶出タンパク質の量をプロットすることによって飽和曲線を得る。
【0104】
非特異的結合(NSB)を免疫化前の通常のヒツジ血清(NSS)を使用して評価する。従って、これと、正常の血清中のいくつかの特異的な抗体に起因する結合とを区別する必要がある(全ての動物がC.ディフィシルにさらされたことがあろうため)。図1は、抗血清ローディング容量の増加の結果としての、特異的な結合の増加を示す、典型的な結合能曲線を実証する。ローディング容量の増加により非特異的結合(NSB)に僅かな変化がある。1mgの毒素(カップリング比は2mg/g)を含む0.5g(1.5〜2.0mLの膨潤したゲル)は、ローディングする特異的な抗血清の容量(0.5〜4mL)に対して十分である。しかしながら、1mlが、容易かつ簡便な計算のために推奨されるローディング容量である。
【0105】
10個のレプリケートの変動係数(アッセイ間変動CV)は、約6%である。時間に伴う(80〜100回使用した場合と推定)カラム容量の減少は全くない。このことは、カラムからの毒素の浸出が全くないことを示す。
【0106】
産物の評価のためのアフィニティカラム
カラムを、製造工程および最終産物、すなわち全抗血清、精製IgG、FabおよびF(ab’)のGMP/GLPの評価のために使用する。それはまた、免疫化動物の免疫応答を評価およびモニタリングするため、並びにヒト試料中の抗毒素抗体を検出するために使用される。
【0107】
カラムを冷蔵庫から取り出し、そして室温で平衡化させ、25mLのアッセイ緩衝液で洗浄する。産物(1mL)をカラムに加え、そして室温で1時間穏やかに回転させて混合し、その後、非結合画分を25mLのアッセイ緩衝液(500mM塩化ナトリウムおよび最終濃度1g/Lのアジ化ナトリウムを含む、リン酸ナトリウム緩衝液、10mM、pH7.4)で洗浄除去する。その後、結合画分を20mlの溶出緩衝液(グリシン緩衝液100mM、pH2.5)で溶出し、そしてそのタンパク質含量を、産物に関連した吸光係数を使用して280nmにおける分光測定で決定する。図2は、毒素Aのトキソイドを用いて免疫化したヒツジに由来する血清の分析を示す。
【0108】
実施例10 抗体混合物の調製
毒素AおよびBおよびその種々のアイソフォーム(毒素タイプ)に対する必要とされる中和活性が最終混合物に存在するように、抗体をブレンドして最終産物を形成する。
【0109】
種々のC.ディフィシル毒素タイプに対して調製された抗体をブレンドして、実施例10において評価したように類似した交差防御的効力を与え得る。例えば、毒素タイプ0およびIIIから誘導されたC.ディフィシル毒素Bに対する類似した交差防御を与えるために、抗体を種々の比率(例えば1:1、2:1、1:2の比)で混合して、毒素Bの各毒素タイプに対する類似した特異的な中和活性を与え得る。
【0110】
実施例11 CDIを予防するためのヒツジ抗体のin vivoにおける効力の評価
in vivoにおけるCDIに対する抗体の予防的、防止的効力を実証するために、シリアンハムスターを、C.ディフィシルの1つ以上の毒素に対して中和活性を有するヒツジ抗体を用いて受動免疫化する。予防効力を評価するために、ハムスターに、静脈内または腹腔内経路のいずれかで、C.ディフィシルによるチャレンジの96時間前からチャレンジから240時間後までの種々の時点において抗体を投与する。
【0111】
受動免疫化されたハムスターに、広域スペクトル抗生物質(例えばクリンダマイシン)を投与し、そして12〜72時間後に経口によりC.ディフィシル胞子を用いてチャレンジする。その後、動物を15日間までC.ディフィシルに関連した疾病の症状についてモニタリングする。対照、すなわち非免疫化動物は疾病の兆候(例えば下痢、膨張した腹部、傾眠、毛を逆立たせる)を発症するが、一方、ヒツジ抗体を用いて受動免疫化された動物は正常のようである。
【0112】
実施例12 CDIを処置するためのヒツジ抗血清のin vivoにおける効力の評価
in vivoにおいてCDIを処置するための抗血清の効力を実証するために、シリアンハムスターを、C.ディフィシルの1つ以上の毒素に対して中和活性を有するヒツジ抗体を用いて受動免疫化する。処置製剤の効力を評価するために、ハムスターに、静脈内または腹腔内経路のいずれかで、C.ディフィシルによるチャレンジの6時間前からチャレンジから240時間後までの種々の時点において抗体を投与する。
【0113】
受動免疫化の前に、ハムスターに広域スペクトル抗生物質(例えばクリンダマイシン)を投与し、そして12〜72時間後に経口によりC.ディフィシル胞子を用いてチャレンジする。その後、動物を15日間までC.ディフィシルに関連した疾病の症状についてモニタリングする。対照、すなわち非免疫化動物は疾病の兆候(例えば下痢、膨張した腹部、傾眠、毛を逆立たせる)を発症するが、一方、ヒツジ抗体を用いて処置された動物は正常のようである。
【0114】
実施例13 抗体製剤の臨床使用
3つの実施例が、そのCDIの重度が種々である患者における、全身性のヒツジ産物の治療価を説明するのに役立つ。
【0115】
軽度のCDI
67歳の男性が、重度の心筋梗塞後に冠疾患集中治療室に入院した。無事に回復したが、回復時に、軽度の下痢を発症し、他の兆候または症状は全くなかった。病院において最近CDIのエピソードがあったので、糞便試料を直ちに試験のために送り、そして毒素Aおよび毒素Bの両方を含んでいることが判明した。専属のトイレを有する個室に隔離された後、静脈内に250mgのヒツジF(ab’)を受け、その後、2日後に2回目の注射を受けた。下痢は迅速に止まり、そしてメトロニダゾールまたはバンコマイシンのいずれの必要もなく完全に回復した。
【0116】
再発のリスクを伴う重度CDI
81歳の女性が自宅で転倒し、そして左股関節の骨折を被った。直ちに入院し、股関節は成功裏に固定された。虚弱な容態は早期の退院の妨げ、数日後、湿性咳を発症し、そのために広域スペクトル抗生物質を投与された。さらに8日後、腹痛および圧痛を伴う重篤な下痢を発症し、そして適切な糞便検査によってCDIと診断された。その時点で顕著に上昇した白血球数および脱水を伴うかなりの体液喪失という全身的な徴候のエビデンスもあった。患者は直ちに経口バンコマイシンを開始し、同時に、静脈内に250mgのヒツジF(ab’)に基づいた産物の1日1回の5回の注射の初回を受けた。CDIの兆候および症状、並びにCDIの検査的な徴候は急速に回復した。しかしながら、バンコマイシンを止めた後のCDIの再発のリスクを避けるために、さらに2週間、経口形の抗体療法の処置を続けた。全く再発しなかった。
【0117】
合併症を伴う重度CDI
87歳の女性が、長期滞在介護施設に住んでいる間に気管支肺炎を発症した。地元の一般開業医は、抗生物質療法のコースを開始し、直ちに利点が得られた。しかしながら、抗生物質を止めた8日後に、重度の下痢を発症した。容態は悪化し始め、病院への入院が必要となり、そこでELISA検査によって糞便中に毒素Aが検出された。この時までに、循環不全のエビデンスを伴い極めて病気が重く、そして下痢は止まった。後者は、麻痺性イレウスおよび中毒性巨大結腸症の併発に起因するものと判明し、そして緊急の全結腸切除術が必須と考えられた。このような手術は60%を超える死亡率を伴うので、2アンプル(500mg)の含量の産物と一緒に静脈内への補充療法を受けた。4時間後に手術室へと運ばれた時までに、全身容態はかなり改善し、そして手術を切り抜けて生き延びた。
【0118】
実施例14 抗C.ディフィシル毒素AおよびBの抗体混合物を用いての受動免疫化によるCDIからの防御
シリアンハムスター(10匹の群)に、指定した時間において、10mg/用量(▼)、2mg/用量(■)の毒素AおよびBに対するヒツジ抗体、または非特異的な対照抗体(●)のいずれかを用いて受動免疫化(腹腔内)した。−2日目および0日目にクリンダマイシンを受けた動物に、C.ディフィシル胞子(2×10コロニー形成単位)を用いてチャレンジした。生存率、チャレンジ後の日数をプロットによって示す。
【0119】
データ(図3参照)は明瞭に、毒素AおよびBに対するヒツジ抗体の混合物を用いての受動免疫化が、CDIからの防御を与えることを示す。この実験において、高い抗体用量を与えられた動物の90%がチャレンジから12日後において無症候性であった。
【0120】
実施例15 ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AまたはBの抗体を用いての、またはヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの抗体混合物を用いての受動免疫化によるCDIからの防御
シリアンハムスター(10匹の群)に、指定した時間において、10mg/用量の毒素A+Bに対するヒツジ抗体(▼)、10mg/用量の毒素A抗体のみ(△)、10mg/用量の毒素B抗体のみ(○)、または非特異的な対照抗体(□)のいずれかを用いて受動免疫化(腹腔内)した。−2日目および0日目においてクリンダマイシンを受けた動物に、C.ディフィシル胞子(2×10コロニー形成単位)を用いてチャレンジした。生存率、チャレンジ後の日数をプロットによって示す。
【0121】
データ(図4参照)は、CDIに対する防御に関して、毒素A+Bの抗体の混合物の効力は、単独で投与されたいずれの抗体よりも有意に良好であることを示す。
【0122】
実施例16 ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの混合物を用いての受動免疫化による、「超病原性」クロストリジウム・ディフィシルのリボタイプ027(R20291株、Stoke Mandeville)によって誘発されるCDIからの防御
シリアンハムスター(10匹の群)に、指定した時間において、10mg/用量の毒素AおよびBに対するヒツジ抗体(▼)または非特異的対照抗体(■)のいずれかを用いて受動免疫化(腹腔内)した。−3日目および0日目にクリンダマイシンを受けた動物にC.ディフィシル胞子(1×10コロニー形成単位)を用いてチャレンジした。チャレンジ後の日数における疾病状態をプロットによって示す。
【0123】
データ(図5参照)は明瞭に、毒素AおよびBに対するヒツジ抗体の混合物を用いての受動免疫化が、「超病原性」C.ディフィシルの027(R20291株、Stoke Mandeville)によって誘発されるCDIからの防御を与えることを示す。この実験において、毒素A/B抗体を投与された動物の90%が、チャレンジ後の18日目において無症候性であり、一方、非免疫化対照の80%が重度なCDIの症状を示した。
【0124】
実施例17 ヒツジ抗クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBの混合物を用いての受動免疫化による、「超病原性」C.ディフィシル単離株のリボタイプ078によって誘発されるCDIからの防御
シリアンハムスター(10匹の群)に、指定した時間において、10mg/用量の毒素AおよびBに対するヒツジ抗体(▼)または非特異的対照抗体(●)のいずれかを用いて受動免疫化(腹腔内)した。−2日目および0日目にクリンダマイシンを受けた動物にC.ディフィシル胞子(2×10コロニー形成単位)を用いてチャレンジした。チャレンジ後の日数における疾病状態をプロットによって示す。
【0125】
データ(図6参照)は明瞭に、毒素AおよびBに対するヒツジ抗体の混合物を用いての受動免疫化が、「超病原性」C.ディフィシルの078によって誘発されるCDIからの防御を与えることを示す。この実験において、毒素A/Bの抗体を投与された動物の100%が、チャレンジ後の18日目において無症候性であり、一方、非免疫化対照の80%が重度なCDIの症状を示した。
【0126】
配列番号
1.クロストリジウム・ディフィシル毒素A−毒素タイプ0
【化1】

【0127】
2.C.ディフィシル毒素B−毒素タイプ0のタンパク質配列
【化2】

【0128】
3.C.ディフィシル毒素A−毒素タイプIIIのタンパク質配列
【化3】

【0129】
4.C.ディフィシル毒素B−毒素タイプIIIのタンパク質配列
【化4】

【0130】
5.C.ディフィシル二元毒素フラグメントAのタンパク質配列
【化5】

【0131】
6.C.ディフィシル二元毒素フラグメントBのタンパク質配列
【化6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.ディフィシル(C. difficile)の予防または処置において使用するためのヒツジ抗体を含む抗体組成物であって、前記抗体はC.ディフィシル毒素に結合する、前記抗体組成物。
【請求項2】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項1記載の抗体組成物。
【請求項3】
抗体が、C.ディフィシル毒素A、C.ディフィシル毒素BおよびC.ディフィシル二元毒素からなる群より選択される少なくとも1つのC.ディフィシル毒素に結合する、請求項1〜2のいずれか記載の抗体組成物。
【請求項4】
抗体がC.ディフィシル毒素AおよびC.ディフィシル毒素Bに結合する、請求項3記載の抗体組成物。
【請求項5】
抗体がC.ディフィシル毒素AおよびC.ディフィシル二元毒素に結合する、請求項3記載の抗体組成物。
【請求項6】
抗体がC.ディフィシル毒素BおよびC.ディフィシル二元毒素に結合する、請求項3記載の抗体組成物。
【請求項7】
C.ディフィシル毒素が、以下の群:毒素タイプ0、毒素タイプIIIおよび毒素タイプVから選択される毒素Aである、請求項1〜5のいずれか記載の抗体組成物。
【請求項8】
C.ディフィシル毒素が、以下の群:毒素タイプ0、毒素タイプIIIおよび毒素タイプVから選択される毒素Bである、請求項1〜3、請求項4または請求項6のいずれか記載の抗体組成物。
【請求項9】
請求項1〜8記載の抗体組成物を、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または塩から選択された少なくとも1つの成分と一緒に含む、非経口投与のための、薬学的組成物。
【請求項10】
C.ディフィシル感染の予防または処置のための方法であって、前記方法は、請求項1〜8記載の抗体組成物または請求項9記載の薬学的組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
請求項1〜8記載の抗体組成物において使用するための、または請求項9記載の薬学的組成物において使用するための、ヒツジ抗体を生産する方法であって、前記ヒツジ抗体は、C.ディフィシル毒素またはそのフラグメントを含む免疫原に応答してヒツジによって誘発される、前記方法。
【請求項12】
請求項1〜7記載の抗体組成物において使用するための、または請求項8記載の薬学的組成物において使用するためのヒツジ抗体を生産する方法であって、前記方法は、(i)C.ディフィシル毒素またはそのフラグメントを含む免疫原をヒツジに投与する工程、(ii)ヒツジにおける抗体の生成のために十分な時間をかける工程、そして(iii)ヒツジから抗体を得る工程を含む、前記方法。
【請求項13】
免疫原がC.ディフィシルトキソイドである、請求項11または請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−518624(P2012−518624A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550652(P2011−550652)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050288
【国際公開番号】WO2010/094970
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(503191210)ヘルス プロテクション エージェンシー (19)
【出願人】(511203226)マイクロファーム・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MICROPHARM LIMITED
【Fターム(参考)】