説明

クロストーク減衰量が改善された通信ケーブル

通信ケーブルは、ケーブルが互いに接近して延伸する場合に、エイリアンクロストークを減衰させるマトリックステープを備える。マトリックステープは、導電部を備える。導電部は、マトリックステープの2つの層の上に配置されることが好ましい。一実施形態では、導電部は、粘着剤でフィルムに取り付けられる。バリアテープは、ケーブル芯線と、マトリックステープとの間に配置されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して電気通信ケーブルに関し、より具体的には、隣接するケーブル間におけるクロストークを低減するように構成された電気通信ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークがより複雑になり、より高い帯域幅のケーブルが必要になるのに伴い、強固かつ信頼性の高い通信システムを提供するために、ケーブル間のクロストーク(すなわち、「エイリアンクロストーク」)の減衰がますます重要となっている。エイリアンクロストークは、妨害ケーブルに接近して延伸する信号送信ケーブルに起因した妨害ケーブルにおいて生じ得る電磁気ノイズに主として関連し、通常、エイリアン近端クロストーク(ANEXT)、またはエイリアン遠端クロストーク(AFEXT)として特性付けられる。さらに、特定ケーブル内のより対線間にクロストークが生じ得る。これは、さらに通信システムの信頼性を低下し得、通常、近端クロストーク(NEXT)または遠端クロストーク(FEXT)として特性付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通信チャネル内のエイリアンクロストークを低減する一つの方法は、シールドされた連結器内に末端が位置するシールドケーブル(例えば、フォイルより対線(F/UTP))を提供することである。しかしながら、この解決方法は、非シールドより対線(U/UTP)システムと比較してより高価である。なぜなら、ケーブルおよび連結器のコストがより高くなり、かつシールドされた連結器を用いたシールドケーブルを末端とするのに必要となる人件費および他の取り付け要素がより高価となるからである。さらに、この種類のケーブルは、ケーブル内の対線間のNEXTおよびFEXTを増大する可能性がある。遮蔽および覆われた、より対線(S/FTP)のケーブル(対線の全ての周囲をシールドにより遮蔽し、そして次に、各個々の対線の周囲を個々の覆いがシールドする)は、ANEXTおよびAFEXTを低減し、さらにF/UTPと比較してNEXTおよびFEXTを低減する。しかしながら、F/UTPと比較して同等の高価な材料および人件費が必要となる。
【0004】
隣接するケーブルにおける導体間の平均距離を増大するように、導体とケーブルジャケットとの間にスペーサを追加することによってエイリアンクロストークは低減され得る。しかしながら、この解決方法は、実用上の不都合が生じるようにケーブルの全径を増大する。なぜなら、このようなケーブルは、通常、より大きな最小曲げ半径を有し、さらに比較的大きな径により、所定の導管またはケーブルトレイ内により少数のケーブルしか配置され得ないからである。
【0005】
エイリアンクロストークを低減する他の選択は、STPケーブルが、末端の無いシールドと共に用いられ得ることである。不運にも、このようなケーブルは、放射性と感受性との両方において電磁両立性(EMC)の必要性に関する問題を有し得る。これは、特にケーブル内に不均衡が存在する場合に、エイリアンクロストークを導き得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態に従った通信システムを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に従ったケーブルを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に従った対線セパレータを示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に従ったケーブル内のバリアテープの用途を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に従ったマトリックステープを示す平面図である。
【図6】図5の細部「A」を示す詳細図である。
【図7】本発明の一実施形態に従ったマトリックステープを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、クロストーク減衰量を改善するようにマトリックステープを用いたU/UTPケーブルに主に関する。
【0008】
ここで図面、特に図1を参照すると、機器24に接続された少なくとも1つの通信ケーブル22を含む通信システム20が示される。機器24は、図1においてパッチ盤として示されるが、受動機器または能動機器でもよい。受動機器の例としては、モジュールパッチ盤、パンチダウンパッチ盤、カプラパッチ盤、ウォールジャッキ等が挙げられるが、これらに限定されない。能動機器の例としては、データセンターまたは電気通信室で適用され得るイーサネット(登録商標)スイッチ、ルータ、サーバ、物理層管理システム、およびパワーオーバーイーサネット(登録商標)機器、セキュリティデバイス(カメラおよび他のセンサ)およびドアアクセス機器、並びにワークステーションエリアで適用され得る電話、コンピュータ、ファクス、プリンタ、および他の周辺機器が挙げられるが、これらに限定されない。通信システム20は、キャビネット、ラック、ケーブル管理システム、オーバーヘッドルーティングシステム、および他の類似した機器をさらに含み得る。
【0009】
通信ケーブル22は、非シールドより対線(UTP)ケーブルの形状にて示される。より具体的には、図2に顕著に示すような部類6Aのケーブルは、10Gb/sにおいて動作し得、これは下により詳細に記述される。しかしながら、本発明は、他の種類のケーブルだけでなく、種々の通信ケーブルにおいて適用および/または実施され得る。ケーブル22は、機器24内に真っすぐに入りそこで末端となり得る。代替的には、RJタイプといった種々のプラグ25またはジャックモジュール27、ジャックモジュールカセット、および多くの他の連結形式、またはそれらの組み合わせにおいて末端となり得る。さらに、ケーブル22は、ケーブルルーム(loom)または束に加工され得、追加的には、前処理端子ルーム(loom)に加工され得る。
【0010】
本発明は以下の用途に限定されないが、通信ケーブル22は、パッチコード、骨格ケーブル、および水平ケーブルを含む種々の構造化されたケーブルに適用され得る。一般的に、本発明は、軍事、産業、電気通信、コンピュータ、データ通信、および他のケーブル用途に適用され得る。
【0011】
より詳しく図2を参照すると、図1の区分線2−2に沿った、ケーブル22の横断面が示される。ケーブル22は、対線セパレータ28で分離された4つのねじれた導線の対線26を有する内核23を含む。図3に、対線セパレータ28の断面をより詳細に示す。これにより、第1にインチで、第2にミリメートル(ブラケットにて)で対線セパレータの一実施形態における寸法が示される。好ましい実施形態では、対線セパレータ28は、ケーブルが垂直または水平配置であっても3.2インチの長さにおいて、時計回りに(Sよりに)形成される。対線セパレータ28は、例えば、固体耐火ポリエチレン(FRPE)等のプラスチックから形成され得る。
【0012】
バリアテープ32の巻き付きは、内核23を取り囲む。図4に示すように、バリアテープ32は、約15度±10度の接触角で、内核23の周囲をらせん状に巻き付き得る。好ましい実施形態では、バリアテープ32は、例えば1.5インチの幅および0.005インチの厚さを有するポリプロピレンフォームでもよい。図2に示すように、ツイストペア導体は、対線セパレータ28を超えて延伸する。これにより、0.679インチの外周を有する、約0.2164インチの内核23の外径を形成する。それ故、バリアテープ32は、内核23の周囲を2回よりもわずかに多い回数巻き付く。そして、バリアテープ32の全体のおおよその厚さを0.020インチ(しかしながら、0.005〜0.0030インチといった他の厚さも可能である)にする2つの適用(貼付け)がある(図4に示す)。
【0013】
導線は、通常、23AWG固体銅(通常、0.0226インチ径)であり、より具体的には、0.0238±0.0005インチ径を有する。対線間においてわずかに変動するインピーダンスを生成する対線間の絶縁体厚さはわずかに変動する。例示的な絶縁体厚さを下に記載する。対線1(青/白青)は、0.0455±0.0005インチの厚さであり、対線2(オレンジ/白オレンジ)は、0.0439±0.0005インチの厚さであり、対線3(緑/白緑)は、0.0452±0.0005インチの厚さであり、対線4(茶/白茶)は、0.0446±0.0005インチの厚さである。導線絶縁は、例えば耐火ポリエチレンでもよい。好ましい実施形態における対線の層を下に記載する。対線1(青/白青)は、0.328インチであり、対線2(オレンジ/白オレンジ)は、0.464インチであり、対線3(緑/白緑)は、0.353インチであり、対線4(茶/白茶)は、0.423インチである。
【0014】
図2および図4に示すように、マトリックステープ34(特に図5〜図7参照)は、例えば約15度の接触角そして約25%重なってバリアテープ32の周囲をらせん状に巻き付く。一実施形態に従って、マトリックステープ34は、テープ34の各側において導電部36を形成するように「キス」打抜きされる。図7は、各側における導電部36が存在する箇所におけるテープ部のマトリックステープ34の断面、すなわちキス打抜き前のマトリックステープ34の断面を示す。キス打抜き後に導電部36間に残存する物質は、中央ポリエステルフィルム基板およびことによると多少の粘着性残留物である。図7の上部の長方形は、積層板を構成するポリエステルおよびアルミニウム層の厚さと共に、ポリエステルーアルミニウム積層の全厚を示す。また、図面に示されないが、約0.0001"の厚さを有する粘着性の薄層が積層板に含まれる。図5、図6および図7は、第1にインチ、第2に(ブラケットにて)ミリメートルで、本発明に従ったマトリックステープの一実施形態のための寸法を示す。「T.S.C.Typ」と特定される寸法は、隅が丸みではなく鋭角であった場合に、理論上の寸法を反映する。図6は、図5の細部「A」の詳細図である。丸い角の「半径」(「R」)が図6に示される。
【0015】
ケーブル22は、外側の絶縁ジャケット38をさらに含み得る。外側の絶縁ジャケット33は、難燃剤ポリ塩化ビニル(FRPVC)から形成され得、0.015インチ厚を有し得る(しかしながら、他の厚さも可能である)。ケーブル22の全径は、通常、例えば、0.302インチでもよい。しかしながら、他の厚さも可能である。
【符号の説明】
【0016】
20 通信システム
22 通信ケーブル
23 内核
24 機器
25 プラグ
26 対線
27 ジャックモジュール
28 対線セパレータ
32 バリアテープ
34 マトリックステープ
36 導電部
38 絶縁ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ケーブルであって、
複数のツイストペア導体と、
前記複数のツイストペア導体を実質的に包囲するマトリックステープであって、第1の面および反対側の第2の面を有する絶縁層、前記第1の面において間隔を介して分離された導電部の第1の障壁層、並びに前記第2の面において間隔を介して分離された導電部の第2の障壁層を含むマトリックステープと、
前記複数のツイストペア導体を、他の前記複数のツイストペア導体から各々分離する対線セパレータであって、前記対線セパレータが、中央ウェブによって連結された複数の錐台形状のセパレータ脚部を含み、前記セパレータ脚部各々が、前記ツイストペア導体の1つと、他の前記ツイストペア導体との間にほぼ位置するような対線セパレータと、を備えた通信ケーブル。
【請求項2】
前記錐台形状のセパレータ脚部の少なくとも1つが丸い自由端を有する請求項1に記載の通信ケーブル。
【請求項3】
前記対線セパレータが時計回りで形成される請求項1に記載の通信ケーブル。
【請求項4】
前記複数のツイストペア導体と前記マトリックステープとの間に配置されたバリアテープをさらに含む請求項1に記載の通信ケーブル。
【請求項5】
前記バリアテープが前記複数のツイストペア導体の周囲をらせん状に巻き付いている請求項4に記載の通信ケーブル。
【請求項6】
前記マトリックステープが、前記バリアテープの周囲をらせん状に巻き付いている請求項5に記載の通信ケーブル。
【請求項7】
通信ケーブルに用いられるマトリックステープを製造する方法であって、
ポリマー基板を提供することと、
少なくとも1つの導電層を、対応する粘着性層を用いて、前記ポリマー基板の少なくとも1つの面に取り付けることと、
前記少なくとも1つの導電層をキス打抜きすることと、
前記ポリマー基板の少なくとも1つの前記面に導電部を形成するように、前記キス打抜き処置後に、前記少なくとも1つの導電層のいくつかを除去することと、を含む方法。
【請求項8】
ポリエステルフィルムを前記導電層に固定するステップをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
通信ケーブルを製造する方法であって、
ポリマー基板を提供することと、
少なくとも1つの導電層を、対応する粘着性層を用いて、前記ポリマー基板の少なくとも1つの面に取り付けることと、
前記少なくとも1つの導電層をキス打抜きすることと、
前記ポリマー基板の少なくとも1つの前記面に導電部を形成するように、前記キス打抜き処置後に、前記少なくとも1つの導電層のいくつかを除去することと、
少なくとも1つの導体の対線をねじることと、
前記少なくとも1つの導体の対線の周囲に前記マトリックステープを巻き付けることと、を含むサブステップを用いるマトリックステープを形成するステップを含む方法。
【請求項10】
絶縁バリアテープを用いた前記マトリックステープから前記少なくとも1つの導体の対線を分離するステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分離ステップが、前記少なくとも1つの導体の対線の周囲に前記絶縁バリアテープをらせん状に巻き付けるサブステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの導体の対線および前記マトリックステープを被覆するステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記巻き付きステップが、らせん状に巻き付けるステップである請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記巻き付きステップが約15度の接触角を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記巻き付きステップが前記マトリックステープのオーバーラップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ポリエステルフィルムを前記導電層に固定するステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項17】
通信ケーブルに用いられるマトリックステープを製造する方法であって、
ポリマー基板を提供することと、
少なくとも1つの導電層を、対応する粘着性層を用いて、前記ポリマー基板の少なくとも1つの面に取り付けることと、
前記ポリマー基板の少なくとも1つの前記面に導電部を形成するように、前記少なくとも1つの導電層のいくつかを除去することと、を含む方法。
【請求項18】
通信ケーブルを製造する方法であって、
ポリマー基板を提供することと、
少なくとも1つの導電層を、対応する粘着性層を用いて、前記ポリマー基板の少なくとも1つの面に取り付けることと、
前記少なくとも1つの導電層をキス打抜きすることと、
前記ポリマー基板の少なくとも1つの前記面に導電部を形成するように、前記少なくとも1つの導電層のいくつかを除去することと、
少なくとも1つの導体の対線をねじることと、
前記少なくとも1つの導体の対線の周囲に前記マトリックステープを巻き付けることと、を含むサブステップを用いるマトリックステープを形成するステップを含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−508447(P2012−508447A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535714(P2011−535714)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/063682
【国際公開番号】WO2010/054283
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(507202736)パンドウィット・コーポレーション (70)
【出願人】(507202725)ジェネラル・ケーブル・テクノロジーズ・コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】