説明

クロフェレマーなどのプロアントシアニジンオリゴマーを用いて疾患を治療する方法

プロアントシアニジンオリゴマーであるクロフェレマーを用いて分泌性下痢などの胃腸障害をはじめとする疾患を治療する方法が開示されている。カルシウム活性化クロライドチャネル(CaCC)および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)に対するクロフェレマーの抗分泌効果も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2009年10月6日に出願された米国特許仮出願第61/249,236号に対する優先権を主張するものであり、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本実施形態は、クロフェレマーなどのプロアントシアニジンオリゴマーの投与を含む疾患の治療方法に関する。いくつかの実施形態は、胃腸障害および他のClチャネル関連疾患の治療に関する。いくつかの実施形態は、炎症性疾患の治療に関する。他の実施形態は、癌の治療に関する。いくつかの実施形態は、Clチャネルの阻害を通じて分泌性下痢を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炎症性疾患、癌および細菌関連疾患は、効果的に治療することが依然として極めて困難である。例えば、分泌性下痢は、発展途上国および先進国における世界的規模の健康課題であり続けている。分泌性下痢は、重篤で、生命を脅かすこともある脱水症をもたらす腸管からの体液と電解質の両方の喪失を特徴とする。分泌性下痢は、種々の細菌性、ウイルス性、および原生動物性病原体と関連があり、また、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、ならびに胃腸管の癌および新生物形成などの、他の非感染性の原因に起因することもある。
【0004】
南米の薬用植物、サングレ・デ・グラード(Croton lechleri)(ドラゴンブラッド)の樹液は、赤痢およびコレラを含む下痢、ならびに様々な肺の病気、胃の病気および他の病気を治療するためにエクアドルやペルーで長年用いられている(Ulillas et al.,1994;Jones,2003;Risco et al,2003;Rossie et al.,2003)。クロフェレマーは、サングレ・デ・グラードの血のように赤い樹液から精製される。クロフェレマーは、平均分子量2100ダルトンの様々な鎖長のオリゴマー性プロアントシアニジンからなる暗赤褐色の非晶質粉末である。クロフェレマーは、H−NMR、13C−NMR、および質量分析法によって特徴付けられ、図2Aに示す構造が得られている(Ubillas et al.,1994)。クロフェレマーのポリマー鎖は、3〜30単位の範囲であり、モノマー成分は、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、および(−)−エピガロカテキンである。薬理学的研究により、クロフェレマーは、細胞培養物およびマウスモデルで体液分泌を減少させることが示されている(Gabriel et al.,1999)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態は、Cl分泌を調節する方法であって、カルシウム活性化クロライドチャネル(CaCC)を発現する細胞を有効量のクロフェレマーと接触させることを含む、方法に関する。
【0006】
いくつかの実施形態では、CaCCはTMEM16Aである。
【0007】
いくつかの実施形態は、Cl分泌を調節する方法であって、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)を発現する細胞を有効量のクロフェレマーと接触させることを含む、方法に関する。
【0008】
いくつかの実施形態は、Na分泌を調節する方法であって、Naチャネルを発現する細胞を有効量のクロフェレマーと接触させることを含む、方法に関する。
【0009】
いくつかの実施形態では、Naチャネルは上皮ナトリウムチャネル(ENaC)である。
【0010】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの胃腸障害を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてCaCC活性を阻害することを含む、方法に関する。
【0011】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群、および過敏性腸症候群、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、または交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群と関連する腹部不快感であることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は分泌性下痢である。
【0013】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は過敏性腸症候群である。
【0014】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの胃腸障害を治療するための方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてCFTR活性を阻害することを含む、方法に関する。
【0015】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群、および過敏性腸症候群、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、または交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群と関連する腹部不快感であることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は分泌性下痢である。
【0017】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は過敏性腸症候群である。
【0018】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つのチャネル病を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてCaCC活性を阻害することを含む、方法に関する。
【0019】
いくつかの実施形態では、チャネル病は、嚢胞性線維症、肢端紅痛症、高カリウム血性周期性四肢麻痺、低カリウム血性周期性四肢麻痺、QT延長症候群、QT短縮症候群、悪性高体温症、先天性筋緊張症、および神経性筋強直症であることができる。
【0020】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つのチャネル病を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてCFTR活性を阻害することを含む、方法に関する。
【0021】
いくつかの実施形態では、チャネル病は、嚢胞性線維症、肢端紅痛症、高カリウム血性周期性四肢麻痺、低カリウム血性周期性四肢麻痺、QT延長症候群、QT短縮症候群、悪性高体温症、先天性筋緊張症、および神経性筋強直症からなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態は、患者の少なくとも1つの胃腸障害を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを患者に投与することを含む、方法に関する。
【0023】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群、および過敏性腸症候群、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、または交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群と関連する腹部不快感であることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は分泌性下痢である。
【0025】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は過敏性腸症候群である。
【0026】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの癌を治療するための方法であって、有効量のクロフェレマーを患者に投与することを含む、方法に関する。
【0027】
いくつかの実施形態では、癌は、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌または腹部癌(胃腸癌を含む)、膵癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌および様々なタイプの頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症と関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍と関連する浮腫)、およびメーグス症候群であることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、癌は結腸癌である。
【0029】
いくつかの実施形態では、癌は結腸直腸癌である。
【0030】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの炎症性疾患を治療するための方法であって、有効量のクロフェレマーを患者に投与することを含む、方法に関する。
【0031】
いくつかの実施形態では、炎症性疾患は、クローン病または過敏性腸症候群であることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、炎症性疾患は過敏性腸症候群である。
【0033】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの胃腸障害を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてENaC活性を阻害することを含む、方法に関する。
【0034】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群、および過敏性腸症候群、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、または交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群と関連する腹部不快感であることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は分泌性下痢である。
【0036】
いくつかの実施形態では、胃腸障害は過敏性腸症候群である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】腸細胞の頂端膜クロライドチャネルを通したクロライドと腸液の分泌を示す。
【図2】図2Aは、プロアントシアニジンオリゴマーの混合物からなるクロフェレマーの化学構造を示す。図2Bは、クロフェレマーが、cAMPおよびカルシウム上昇作動薬に応答したT84ヒト腸細胞でCl分泌を低下させることを示すグラフを示す。図2Bはまた、フォルスコリン(10μM)、ATP(100μM)またはタプシガルギン(1μM)によるCl分泌の活性化後のT84細胞の短絡回路電流を示す。表示した濃度のクロフェレマーを管腔浴溶液に添加した。表示した点で、細胞を20μMのCFTRinh−172で前処理し、CFTR Cl電流を阻害した。
【図3】CFTR Clコンダクタンスのクロフェレマー阻害を示すグラフを示す。図3Aは、アンフォテリシンBによる透過処理の後、経上皮Cl勾配(頂端[Cl]75mM、側底[Cl]150mM)の存在下でのCFTR発現FRT細胞の頂端膜電流を示す。CFTR Clコンダクタンスは、100μMのCPT−cAMPと、それに次ぐ管腔溶液への表示した濃度のクロフェレマーの添加によって活性化された。図3Bは、クロフェレマー適用の20分後に測定されたクロフェレマー濃度−CFTR Cl電流の阻害を示す(S.E.n=3〜5)。Aと同様の実験(白丸)およびCl勾配を逆転させた実験(頂端[Cl]150mM、側底[Cl]75mM)(黒丸)についてのデータを示す。
【図4】クロフェレマーによるCFTR Clコンダクタンスの阻害を特徴付けるグラフを示す。図4Aは、ゲニステイン(50μM)、フォルスコリン(20μM)およびIBMX(100μM)を含む様々な作動薬の後のCFTRのクロフェレマー阻害を示す。図4Bは、CFTRのクロフェレマー阻害の緩徐な可逆性を示す。表示した点で、クロフェレマーを添加し、頂端溶液を徹底的に洗浄し、CPT−cAMPを再び添加した。図4Cは、クロフェレマー前処理の非存在下または存在下での、小分子CFTR阻害剤CFTRinh−172またはGlyH−101によるCFTRの阻害を示す。(左)CPT−cAMPによるCFTR活性化およびCFTRinh−172またはGlyH−101による阻害後の頂端膜電流。(右)クロフェレマー(50μM)を添加して、CFTR Cl電流を約50〜60%阻害し、その後、表示した濃度のCFTRinh−172またはGlyH−101を添加した。
【図5】CFTRのクロフェレマー阻害のパッチクランプ解析の結果を示すグラフを示す。(左)0mVの保持電位で、および50μMのクロフェレマーの非存在下および存在下、±100mVの電圧まで20mVずつパルスをかけたときに記録した全細胞CFTR電流。CFTRはフォルスコリンによって刺激された。(右)Aと同様の実験からの各電圧パルスの中間での平均電流の電流/電圧(I/V)プロット(S.E.、n=3)。フィッティングされたIC50は6.5μMである。
【図6】カルシウム活性化Clチャネルのクロフェレマー阻害を示すグラフを示す。図6Aは、経上皮Cl勾配(頂端[Cl]70mM、側底[Cl]140mM)の存在下におけるTMEM16A発現FRT細胞の頂端膜電流を示す。図6Bは、TMEM16A Cl電流阻害のクロフェレマー濃度依存性を示す。図6Cは、0mVの保持電位で、および10μMのクロフェレマーの非存在下および存在下、±100mVの電圧まで20mVずつパルスをかけたときに記録した全細胞TMEM16A電流を示す。TMEM16Aは100μMのATPによって刺激された。図6Dは、(各電圧パルスの中間での)平均電流の電流/電圧(I/V)プロットを示す。
【図7】クロフェレマーが、頂端膜カチオンチャネルならびに細胞内cAMPおよびカルシウムシグナリングに対してほとんどまたは全く効果がないことを示すグラフを示す。図7A(左)は、管腔溶液中、50μMのクロフェレマーで前処理していないCFTR欠損ヒト気管支上皮細胞の初代培養物と50μMのクロフェレマーで前処理したCFTR欠損ヒト気管支上皮細胞の初代培養物の短絡回路電流を示す。表示した点で、アミロリド(10μM)およびUTP(100μM)を添加した。図7A(右)は、アミロリドおよびUTP添加後の短絡回路電流の差をまとめたものである(S.E.、n=3、P<0.05)。図7Bは、20μMのアンフォテリシンBによる側底膜透過処理後、K勾配(頂端[K]5mM、側底[K]150mM)の存在下でのヒト気管支上皮細胞の頂端膜K電流を示す。図7Cは、基礎条件下、20μMのフォルスコリンによる処理の10分後のT84細胞ホモジネート中の環状AMPレベルを示す。クロフェレマーありとクロフェレマーなしで有意差はない。図7Dは、基礎条件下、ATP(100μM)の後にT84細胞でfura−2蛍光によって測定されたカルシウムシグナリングを示す。表示した点で、細胞を50μMのクロフェレマーで前処理した。差し込み図は、ピークATPによるfura−2蛍光比の増加をまとめたものである(S.E.、n=4)。対照とクロフェレマーの間に有意差はない。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本実施形態は、例えば、炎症性疾患、腫瘍性疾患、細菌関連疾患、ウイルス関連疾患、チャネル病、胃腸障害および不妊症をはじめとする、多種多様な疾患、医学的状態および障害の治療に関する。チャネル病の例としては、嚢胞性線維症、肢端紅痛症、高カリウム血性周期性四肢麻痺、低カリウム血性周期性四肢麻痺、QT延長症候群、QT短縮症候群、悪性高体温症、先天性筋緊張症、および神経性筋強直症が挙げられるが、これらに限定されない。癌の例としては、骨癌、肺癌、皮膚癌、結腸直腸癌、家族性腺腫性ポリポーシスおよび網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。胃腸障害の例としては、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群および上記の胃腸障害のいずれかと関連する腹部不快感が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本実施形態はまた、限定するものではないが、悪液質、心血管疾患、免疫疾患、結核性胸膜炎、リウマチ性胸膜炎、癌またはその治療と関連する疲労、心血管疾患、皮膚の発赤、糖尿病、移植片拒絶、中耳炎(内耳感染)、副鼻腔炎およびウイルス感染、敗血性ショック、移植、移植片対宿主疾患、虚血/再灌流傷害、グレーブス眼症、橋本甲状腺炎、甲状腺関連眼症、結節性甲状腺腫、疱疹性間質角膜炎、細菌性角膜炎、周辺潰瘍性角膜炎、ベーチェット病、ブドウ膜炎、増殖性硝子体網膜症、狂犬病ウイルス性眼疾患、フォークト・コヤナギ・ハラダ病、網膜症、網膜レーザー光凝固、急性網膜壊死症候群、全身性脈管炎、再発性アフタ性口内炎、血管新生緑内障、眼感染症、眼アレルギー性疾患、網膜剥離、視神経炎、多発性硬化症、全身性硬化症、遺伝性網膜変性、トラコーマ、自己免疫疾患、化学療法関連粘膜損傷、抑鬱障害(大鬱病性障害、気分変調、小児期の鬱病、非定型鬱病、双極性障害、躁病および軽躁病)および不安障害(全般性不安障害、社会不安障害、恐怖症、強迫障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害)をはじめとする情動障害;月経前不快気分障害(月経前症候群としても知られる);精神病性障害、例えば、短期精神病性障害、統合失調症、精神性感情障害(鬱病および/または躁病);注意力欠如障害(多動を伴うものおよび伴わないもの);肥満、摂食障害、例えば、神経性無食欲症および神経性大食症;血管運動性フラッシング;コカインおよびアルコール中毒、性的不全および関連疾患;線維筋痛、関節炎、慢性腰痛、三叉神経痛などの急性および慢性疼痛症候群;内臓痛症候群、例えば、過敏性腸症候群、非心臓性胸痛、機能性消化不良、間質性膀胱炎、本態性外陰痛、尿道症候群、睾丸痛、顎関節症、非定型顔面痛、偏頭痛、および緊張性頭痛;機能性身体障害、例えば、慢性疲労症候群;発作性障害、トゥレット・シンドローム、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、アルツハイマー病、皮質下認知症および他の認知症、遅発性ジスキネジア、多発性硬化症、レット症候群または筋萎縮性側索硬化症をはじめとする神経障害、再狭窄、喘息、慢性閉塞性肺疾患、異常な血管形成、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性疾患を含む、疾患の治療に関する。癌の他の例としては、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌または腹部癌(胃腸癌を含む)、膵癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌および様々なタイプの頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症と関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍と関連する浮腫)、およびメーグス症候群が挙げられる。いくつかの実施形態は、分泌性下痢、過敏性腸症候群および結腸癌の治療に関する。
【0040】
分泌性下痢は、重篤で、生命を脅かすこともある脱水症をもたらす腸管からの体液と電解質の両方の喪失によって特徴付けることができる。分泌性下痢は、種々の細菌性、ウイルス性、および原生動物性病原体と関連があり、また、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、ならびに胃腸管の癌および新生物形成などの、他の非感染性の原因に起因することもある。
【0041】
分泌性下痢の2つの主な細菌源は、コレラ菌と大腸菌である。腸管毒素原性大腸菌は、発展途上国における分泌性下痢の重要な発生源であり、分泌性下痢と関連がある。下痢を引き起こす他の大腸菌株としては、腸管出血性株、腸管侵入性株、および腸管病原性株ならびに他の株が挙げられる。分泌性下痢と関連がある他の細菌性病原体としては、他のビブリオ属の種、カンピロバクター属の種、サルモネラ属の種、アエロモナス属の種、プレシモナス属の種、赤痢菌属の種、クレブシエラ属の種、シトロバクター属の種、エルシニア属の種、クロストリジウム属の種、バクテロイデス属の種、ブドウ球菌属の種、およびバチルス属の種、ならびに他の腸内細菌が挙げられる。
【0042】
分泌性下痢は、クリプトスポリジウム属の種、例えば、クリプトスポリジウム・パルバムなどの原生動物性病原体と関連があることもある。一般に、Holland,1990,Clin.Microbiol.Rev.3:345;Harris,1988,Ann.Clin.Lab.Sci.18:102;Gracey,1986,Clin,in Gastroent.,15:21;Ooms and Degryse,1986,Veterinary Res.Comm.10:355;Black,1982,Med.Clin.Nor.Am.,66:611を参照されたい。
【0043】
分泌性下痢は、ウイルス感染と関連があることもあり、これには、特に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染および後天性免疫不全症候群(AIDS)、ならびにロタウイルス感染に付随して起こる下痢などがある。ほとんど全てのAIDS患者は、疾患の経過中のどこかの時点で下痢に罹患し、AIDS患者の30%は、慢性の下痢に罹患する。AIDSに付随して起こる下痢は、「HIV関連慢性下痢」と命名されている。HIV疾患のこの下痢成分は、原生動物性病原体、例えば、クリプトスポリジウム属の種の二次感染と関連があり、少なくとも一部の患者では、これによるものと考えられている。さらに、ロタウイルス感染は、例えば、発展途上国における幼児および小児の下痢と関連がある。
【0044】
分泌性下痢は、非ヒト動物、例えば、家畜、例えば、ウシ属の動物、イノシシ科の動物、ヒツジ(ヒツジ科の動物)、家禽(例えば、ニワトリ)、およびウマ科の動物、ならびに他の飼育動物、例えば、イヌ科の動物およびネコ科の動物でも問題である。下痢性疾患は、若い、離乳したばかりの家畜に見られる。家畜、例えば、ウシ、ヒツジおよびブタなどの食用動物の下痢性疾患は、腸管毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌および他の大腸菌、サルモネラ属の種、ウェルシュ菌、バクテロイデス・フラギリス、カンピロバクター属の種、およびエルシニア・エンテロコリチカなどの、細菌性病原体と関連があることが多い。さらに、原生動物性病原体(例えば、クリプトスポリジウム・パルバム)、ならびにウイルス性病原体(例えば、ロタウイルスおよびコロナウイルス)は、家畜の下痢と関連がある。家畜の下痢の原因とされている他のウイルス性病原体の例としては、トガウイルス、パルボウイルス、カリシウイルス、アデノウイルス、ブレダウイルス、およびアストロウイルスが挙げられる。一般には、Holland,1990,Clin.Microbiology Rev.3:345を参照されたく、Gutzwiller and Blum,1996,AJVR 57:560;Strombeck,1995,Veterinary Quarterly 17(Suppl.1):S12;Vermunt,1994,Austral.Veterinary J.71:33;Driesen et al.,1993,Austral.Veterinary J.70:259;Mouricout,1991,Eur.J.Epidemiol.7:588;Ooms and Degryse,1986,Veterinary Res.Comm.10:355も参照されたい。
【0045】
様々な原因の分泌性下痢障害は、過剰なCl分泌という共通の特徴を共有する。腸液分泌は、側底膜表面のNa/K/2Cl共輸送体から腸細胞へのCl流入、および頂端の(管腔に面する)ClチャネルからのCl流出を伴う(Barrett and Keely,2000;Field,2003;Thiagarajah and Verkman,2005)(図1)。特定の理論に束縛されることを望まないが、Kチャネルおよび3Na/2Kポンプは、Cl分泌のための電気化学的な駆動力を確立する。Naと水の分泌は、活発なCl分泌に応答して受動的に起こる。細菌腸毒素、例えば、コレラ菌や大腸菌によって産生される腸毒素は、腸細胞内の環状ヌクレオチド濃度を上昇させ、Clチャネル活性化や体液分泌を生じさせる。頂端膜Naチャネルおよび起電性Na共役共輸送体からのNa吸収は、正味の体液分泌に対抗する。正味の腸液分泌の速度、したがって、分泌性下痢の重症度は、これらの輸送システムのモジュレーターおよび上流の環状ヌクレオチドまたはカルシウムシグナリング経路と関連する。
【0046】
いくつかの実施形態は、クロフェレマーの細胞内抗分泌標的に関する。いくつかの実施形態は、例えば、イオンチャネルおよびシグナル伝達経路をはじめとする、腸液分泌の一次的な管腔膜決定因子に関する。いくつかの実施形態は、カチオンチャネルまたはcAMP/カルシウムシグナリングにほとんど影響を与えずに、頂端膜cAMP刺激性Clチャネル(CFTR)およびカルシウム刺激性Clチャネル(CaCC)を阻害するためのクロフェレマーの使用に関する。いくつかの実施形態では、クロフェレマーは、その配列および構造に関連性がない2つの異なるClチャネルを阻害する。特定の理論に束縛されることを望まないが、その排出の遅さに加えて、Clチャネルを阻害するクロフェレマーの能力は、細菌腸毒素、ウイルスおよび他のエフェクターと関連がある下痢においてその幅広い抗分泌活性をもたらすように思われる。いくつかの実施形態では、CFTRとCaCCの両方の阻害は、腸細胞内でcAMP/カルシウムのクロストークがあり、かつ一部の下痢では2種類のClチャネルが関与するため、有用である。
【0047】
いくつかの実施形態は、阻害率が濃度依存的で、数分間にわたる、CFTR Clコンダクタンスの部分的拮抗薬としてのクロフェレマーの使用に関する。クロフェレマーの排出は緩徐であり、数時間かけて起こる。チアゾリジノンおよびグリシンヒドラジド系CFTR阻害剤とは異なり、CFTR Clコンダクタンスのクロフェレマー阻害は、高濃度であっても部分的である。いくつかの実施形態は、クロフェレマー分子および/または部分阻害と関連する本質的に非効率的なアロステリック阻害機構による外からの部分的なCFTR孔遮断に関する。一実施形態では、パッチクランプ解析を用いて、直接的な孔閉鎖を伴わずに電位非依存性チャネル阻害を生じさせる、細胞外に面するCFTR表面に対するクロフェレマーの作用を明らかにした。対照的に、グリシンヒドラジド群のCFTR阻害剤は、残存するCFTR Cl電流の内向き整流、および膜電流の素速い揺らぎによる直接的な孔閉鎖を伴って、電位依存的な遮断を生じさせた(Muanprasat et al.,2004;Sonawane et al.,2006,2007,2008)。図4CおよびDに見られるクロフェレマーおよびGlyH−101作用の独立性は、GlyH−101の作用と異なる部位でのCFTR孔を閉鎖するクロフェレマー作用と合致する。GlyH−101と比べたクロフェレマーのより大きな分子サイズは、CFTR孔の外側の部位でのクロフェレマー作用と合致する。先の研究(Gabriel et al.,1999)では、大きいCl勾配の存在下でのT84細胞におけるクロフェレマーによるCFTR阻害の証拠が示されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、クロフェレマーは、CaCCを強く阻害する。腸上皮細胞内のCaCCは、いくつかの抗レトロウイルス薬および化学療法薬をはじめとする特定の薬物、ならびにいくつかのウイルスと関連がある分泌性下痢におけるClおよび体液分泌の重要な経路を提供する(Morris et al.1999,Barrett,2000;Kidd and Thorn,2000;Takahashi et al.2000;Gyomorey et al.2001;Rufo et al.2004;Thiagarajah and Verkman,2005;Schultheiss et al.2005,2006;Farthing,2006;Lorrot and Vasseur,2007)。
【0049】
腸上皮細胞でのその発現に加えて、CaCCは多くの細胞型で広く発現している。それらの細胞型において、CaCCは、限定するものではないが、経上皮体液分泌、嗅覚シグナルおよび感覚シグナルの伝達、平滑筋収縮、ならびに心臓興奮をはじめとする、様々な機能に関与している(Hartzell et al.,2005;Verkman and Galietta,2009)。CaCCの分子実体は、TMEM16A(アノクタミン−1)がCaCCであるという発見によって明白になった(Caputo et al.,2008;Schroeder et al.,2008;Yang et al.,2008)。いくつかの証拠から、TMEM16AがCaCCであるという結論が支持されている。例えば、TMEM16Aをトランスフェクトした細胞におけるCaCC Cl電流は、ネイティブなCaCCと電気生理学的な特徴が類似していることや、TMEM16AのRNAiノックダウン後に、CaCC Cl電流が低下することが示されている。TMEM16Aは、例えば、腸上皮をはじめとする、複数の器官の上皮および他の細胞型で広く発現されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、クロフェレマーを用いて、ヒトTMEM16Aを阻害する。特定の理論に束縛されることを望まないが、クロフェレマーによるTMEM16Aの阻害は、カルシウム上昇作動薬の添加後のT84細胞におけるCl電流の阻害と関連がある。いくつかの実施形態では、クロフェレマーは、>90%の最大阻害、6.5μMのIC50、および電位非依存的な阻害機序で、腸のカルシウム活性化ClチャネルであるTMEM16Aを強く阻害することが分かった。CaCCは、腸上皮細胞でのその発現に加えて、多くの細胞型で広く発現しており、いくつかの実施形態では、クロフェレマーのCaCCに対する阻害効果を利用して、多種多様な用途でClの流入および流出を調節することができ、その場合、CaCCは、限定するものではないが、経上皮体液分泌、嗅覚シグナルおよび感覚シグナルの伝達、平滑筋収縮、ならびに心臓興奮をはじめとする、様々な機能に関与する(Hartzell et al.,2005;Verkman and Galietta,2009)。
【0051】
いくつかの実施形態では、クロフェレマーの細胞内抗分泌作用は、腸の内側を覆う上皮細胞の管腔膜表面の2つの異なるClチャネル標的に影響を与え、CFTRとCaCC Clチャネルの二重阻害をもたらす。
【0052】
いくつかの実施形態は、膜Clチャネル、嚢胞性線維症膜貫通制御因子コンダクタンス(CFTR)、cAMP刺激性Clチャネル、およびカルシウム活性化Clチャネル(CaCC)の標的阻害剤に関する。いくつかの実施形態では、ハイスループットスクリーニングおよびフォローアップ化学実験により、これらのClチャネルの阻害剤、例えば、ナノモル効力のチアゾリジノン系CFTR阻害剤(Ma et al.,2002)およびグリシンヒドラジド系CFTR阻害剤(Muanprasat et al.,2004)、ならびに3−アシル−2−アミノチオフェン系CaCC阻害剤(de la Fuente et al.,2008)を同定することができる。環状ヌクレオチド濃度および毒素誘発性腸液分泌を低下させるホスホジエステラーゼのチオフェンカルボキシレートアクチベーターも同定されている(Tradtrantip et al.,2008)。
【0053】
クロフェレマーは、腸上皮細胞を横断するクロライド流量を低下させ、かつ分泌性下痢に伴う体液喪失および脱水症を引き起こす腸の管腔への体液移動を低下させる。したがって、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤は、分泌性下痢に対する予防的および治療的適用、例えば、分泌性下痢に付随して起こる脱水症および電解質喪失の予防において有用である。他の実施形態では、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤は、異常なCl流入および流出を伴う疾患に対する予防的および治療的適用において有用である。
【0054】
クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤は、ヒトまたは動物のいずれかにおける任意のタイプの分泌性下痢に対して治療的にまたは予防的に用いることができる。好ましい実施形態では、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤を用いて、腸内細菌と関連がある分泌性下痢を治療することができる。これらの腸内細菌としては、コレラ菌、腸管病原性、腸管毒素原性、腸管付着性、腸管出血性、または腸管侵入性タイプの大腸菌をはじめとする大腸菌、他のビブリオ属の種、カンピロバクター属の種、サルモネラ属の種、アエロモナス属の種、プレシモナス属の種、赤痢菌属の種、クレブシエラ属の種、シトロバクター属の種、エルシニア属の種、クロストリジウム属の種、バクテロイデス属の種、ブドウ球菌属の種、およびバチルス属が挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態には、旅行者下痢症の治療も含まれる。
【0055】
別の実施形態では、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤を用いて、限定するものではないが、ジアルジア属およびクリプトスポリジウム属の種、例えば、クリプトスポリジウム・パルバムをはじめとする原生動物と関連がある分泌性下痢を治療する。
【0056】
別の実施形態では、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤を用いて、限定するものではないが、非特異的下痢、炎症性腸症候群、潰瘍性大腸炎、ならびに胃腸管の癌および新生物形成などの、非感染性の原因と関連がある分泌性下痢を治療する。
【0057】
別の実施形態では、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤は、AIDS患者におけるHIV関連慢性下痢の治療に用いられる。また別の実施形態では、この医薬製剤を用いて、限定するものではないが、ロタウイルスと関連がある下痢をはじめとする、幼児または子供の下痢を治療する。
【0058】
別の実施形態では、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤は、ヒト男性および女性を含む温血動物における便秘優位型過敏性腸症候群(c−IBS)と関連がある1以上の症状を治療および/または予防するために用いられる。これらの症状としては、疼痛、腹部不快感および異常な排便回数が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法は、通常、c−IBS治療を必要とする対象に、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤を投与することを含む。
【0059】
別の実施形態では、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤は、c−IBSと関連がある疼痛を治療する方法であって、そのような治療を必要とする対象に、c−IBSと関連がある疼痛を治療するのに有効な量のクロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤を投与することを含む方法を提供するために用いられる。
【0060】
クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤を用いて、非ヒト動物、例えば、家畜、例えば、これに限定されないが、ウシ属の動物、イノシシ科の動物、ヒツジ科の動物、家禽(例えば、ニワトリ)、およびウマ科の動物、ならびに他の飼育動物、例えば、イヌ科の動物およびネコ科の動物の下痢を治療することもできる。特に、本発明の医薬製剤を用いて、細菌性病原体、例えば、腸管毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌および他の大腸菌、サルモネラ属の種、ウェルシュ菌、バクテロイデス・フラギリス、カンピロバクター属の種、およびエルシニア・エンテロコリチカ、原生動物性病原体、例えば、クリプトスポリジウム・パルバム、ならびにウイルス性病原体、例えば、ロタウイルスおよびコロナウイルスだけでなく、トガウイルス、パルボウイルス、カリシウイルス、アデノウイルス、ブレダウイルス、およびアストロウイルスとも関連がある、非ヒト動物、例えば、ウシ、ヒツジおよびブタなどの食用動物の下痢性疾患を治療することができる。
【0061】
さらに、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤をヒトおよび非ヒト動物に予防的に投与して、分泌性下痢の発症を予防することもできる。
【0062】
クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬組成物をAIDS患者に投与して、HIV関連慢性下痢の発症を予防することができる。また、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬組成物を、コレラの流行またはロタウイルスの流行の危険にさらされている地域の子供に投与して、疾患の拡大を予防することができる。同様に、クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬組成物を、家畜、例えば、若いまたは離乳したばかりの家畜に投与して、下痢性疾患の発症を予防することができる。
【0063】
本医薬製剤は、単独でまたは分泌性下痢症状の治療もしくは改善のための他の薬剤、例えば、再水和剤、抗生物質、腸運動抑制剤、および流体吸着体(例えば、アタパルジャイト)と組み合わせて投与することもできる。
【0064】
クロフェレマーまたはCFTRおよび/もしくはCaCC Clチャネルの他の阻害剤を含む医薬製剤は、動物、例えば、ウシ属の動物、イノシシ科の動物、ヒツジ科の動物、家禽、ウマ科の動物、イヌ科の動物、およびネコ科の動物の分泌性下痢の治療で用いるために動物の食餌に組み入れることもできる。
【0065】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は例示的でかつ説明のためのものであるに過ぎず、特許請求された本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。本出願では、単数形の使用は、別途特に記載しない限り、複数形を含む。
【0066】
本出願では、「または」の使用は、別途記載しない限り、「および/または」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は限定的なものではない。また、「要素(element)」または「構成要素(component)」などの用語は、別途特に記載しない限り、1つのユニットを含む要素および構成要素と2以上のサブユニットを含む要素および構成要素の両方を包含する。また、「部分(portion)」という用語の使用は、部分(a moiety)の一部または完全な部分(the entire moiety)を含むことができる。
【0067】
限定するものではないが、特許、特許出願、論文(article)、書籍、および論文(treatise)を含む、本出願で引用された全ての文書、または文書の部分は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0068】
当業者には容易に明らかとなるように、投与すべき有用なインビボ投薬量および特定の投与様式は、患者の年齢、体重、医学的状態、処置すべき状態の重症度、投与の経路、患者の腎機能および肝機能、ならびに処置される哺乳動物種、利用される特定の化合物、ならびにこれらの化合物が利用される特定の用途によって様々に変わる。所望の結果をもたらすのに必要な投薬レベルである有効投薬レベルの決定は、日常的な薬理学的方法を用いて当業者により実現され得る。通常、製品のヒトへの臨床的適用は、より低い投薬レベルで始め、投薬レベルを所望の効果が達成されるまで増加させる。有利なことに、本実施形態の化合物を、例えば、単回1日用量で投与してもよく、または1日の全投薬量を、1日2回、3回、もしくは4回の分割用量で投与してもよい。
【0069】
製品の1日投薬量は、例えば、1日に成人1人当たり約0.5〜約10,000mgのように、広範囲にわたって様々に異なり得る。経口投与については、製剤は、治療すべき患者に対する投薬量の対症的調整のために、約0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、200、300、400、500、600、700、800、900 1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000または10,000ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形態で提供されることが好ましい。本医薬製剤は、通常、10mg〜約2000mgの本化合物、好ましくは約50mg〜約1000mgの活性成分を含有する。本化合物の有効量は、通常、1日に体重1kg当たり約0.002mg〜約150mgの投薬レベルで供給される。範囲は、1日に体重1kg当たり約0.02〜約80mg、特に、1日に体重1kg当たり約0.2mg〜約40mgであることが好ましい。化合物は、1日当たり約1〜約10倍のレジメンで投与することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、クロフェレマーの経口用量は、100mg、125mg、250mg、300mg、500mg、または1,000mgである。いくつかの実施形態では、クロフェレマーの経口用量は、1日2回投与される。他の実施形態では、クロフェレマーの経口用量は1日1回投与される。いくつかの実施形態では、患者は、約1日、2日、7日、14日、28日、60日、または90日よりも長い期間、クロフェレマーの1日用量を投与される。
【0071】
本明細書で使用する場合、測定値の「増大」または「減少」は、別途規定しない限り、通常、ベースライン値との比較によるものである。例えば、治療を受けている対象の入院までの時間の増大は、そのような治療を受けていない対象の入院までの時間のベースライン値との比較によるものであることができる。場合によっては、測定値の増大または減少は、この用語を用いる文脈に基づいて評価することができる。
【0072】
本明細書で使用される「担体」は、利用される投薬量および濃度でそれに曝露されている細胞または哺乳動物に対して毒性がない、医薬として許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。生理的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理的に許容される担体の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸をはじめとする抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンをはじめとする他の糖質;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/またはTWEENなどの非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0073】
「有効量」という用語は、必要な投薬量および期間で、所望の結果を達成するのに有効な、例えば、患者または対象の胃腸障害を治療するのに十分な量を含む。クロフェレマーの有効量は、対象の疾患状態、年齢、および体重などの因子、ならびに対象において所望の応答を誘発するクロフェレマーの能力によって様々に異なり得る。投薬量レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整することができる。有効量はまた、治療的に有益な作用がクロフェレマーのどの毒性作用または有害作用(例えば、副作用)をも上回る量である。
【0074】
「改善する(ameliorate)」、「改善(amelioration)」、「改善(improvement)」または同様の用語は、例えば、対象または対象の少なくとも一部、例えば、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%またはこれらの値の約いずれか2つの間の範囲に生じる改善(improvement)と一致する検出可能な改善(improvement)または検出可能な変化を指す。そのような改善(improvement)または変化は、クロフェレマーで治療していない対象と比較したとき、治療した患者に認めることができる。その場合、治療していない対象は、同一または同様の疾患、状態、症状などを有しているか、またはそれらを発症しやすい。疾患、状態、症状またはアッセイパラメータの改善(amelioration)は、主観的にまたは客観的に、例えば、対象による自己評価によって、臨床医の評価によって、または例えば、生活の質の評価、疾患もしくは状態の進行の緩徐化、疾患もしくは状態の重症度の低下、もしくは生体分子、細胞のレベルもしくは活性についての好適なアッセイをはじめとする適当なアッセイもしくは測定を実施することによって、または対象の胃腸障害の検出によって決定することができる。改善(amelioration)は、一時的、持続的もしくは恒久的であってもよく、またはそれは、クロフェレマーを対象に投与している間または投与した後、もしくはクロフェレマーを本明細書もしくは引用した参考文献に記載されているアッセイもしくは他の方法で使用している間または使用した後の関連時間で、例えば、以下に記載する期間内で、すなわち、クロフェレマーの投与もしくは使用後約1時間から対象がそのような治療を受けた後約28日、もしくは1、3、6、9カ月もしくはそれより長い時間で変動してもよい。
【0075】
例えば、症状、分子のレベルもしくは生物学的活性などの「調節」は、例えば、症状または活性などを検出可能に増大または減少させることを指す。そのような増大または減少は、クロフェレマーで治療していない対象と比較したとき、治療した患者に認めることができる。その場合、治療していない対象は、同一または同様の疾患、状態、症状などを有しているか、またはそれらを発症しやすい。そのような増大または減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%もしくはそれより大きいか、またはこれらの値のいずれか2つの間の任意の範囲内であることができる。調節は、主観的にまたは客観的に、例えば、対象の自己評価によって、臨床医の評価によって、または例えば、生活の質の評価もしくは対象における分子、細胞もしくは細胞移動のレベルもしくは活性についての好適なアッセイをはじめとする適当なアッセイもしくは測定を実施することによって決定することができる。調節は、一時的、持続的もしくは恒久的であってもよく、またはそれは、クロフェレマーを対象に投与している間または投与した後、もしくはクロフェレマーを本明細書もしくは引用した参考文献に記載されているアッセイもしくは他の方法で使用している間または使用した後の関連時間で、例えば、以下に記載する時間内で、すなわち、クロフェレマーの投与もしくは使用後約1時間から対象がそのような治療を受けた後約3、6、9カ月もしくはそれより長い時間で変動してもよい。
【0076】
「調節する」という用語はまた、クロフェレマーへの曝露に応答した細胞の活性の増大または減少、例えば、所望の最終結果が達成されるような、動物の細胞の少なくとも部分集団の増殖の阻害および/または分化の誘導を指すことができ、例えば、治療に用いられるクロフェレマーの治療結果は、特定の治療の間に増大することもあるし、減少することもある。
【0077】
「クロフェレマーを得る」に見られる「得る」という用語は、クロフェレマーを購入するか、合成するか、または別の方法で獲得することを含むことが意図される。
【0078】
本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、例えば、通常、注射による、腸内投与および局所投与以外の投与様式を含み、かつ限定するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内への注射および注入を含む。
【0079】
化合物の「予防的有効量」という語は、対象に単回または複数回用量を投与したときに、胃腸障害の予防または治療に有効な、クロフェレマーの量を指す。
【0080】
本明細書で使用される「医薬品組成物」(または薬剤もしくは薬物)は、患者に適切に投与されたときに所望の治療効果を誘発することができる化学化合物、組成物、薬剤または薬物を指す。それは、必ずしも2種類以上の成分を必要とするものではない。
【0081】
組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下、口腔、局所または直腸投与用、または吸入器もしくは吸引器による投与用の、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、ロゼンジ、液体、ゲル調製物、滅菌非経口溶液または懸濁液、計量されたエアロゾルまたは液体スプレー、点滴剤、アンプル、自動注射装置または座剤の形態であることができる。経口投与用の錠剤およびカプセルは、単位投薬提示に好適な形態であることができ、かつ従来の賦形剤を含有することができる。これらの例には、結合剤(例えば、シロップ、アカシアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、およびポリビニルピロリドン);増量剤(例えば、ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン);錠剤化潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク、ポリエチレングリコールもしくはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン);または許容される湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)がある。錠剤は、通常の薬務において周知の方法によってコーティングすることができる。経口用液体製剤は、例えば、水性もしくは油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップもしくはエリキシルの形態であることができるか、または使用前に水もしくは他の好適なビヒクルで再構成される乾燥製品として提示することができる。そのような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、水素化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアカシアゴム);(食用油を含む)非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、分留ヤシ油、油性エステル(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、もしくはエチルアルコール))、;防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはソルビン酸)などの通常の添加剤、ならびに所望により、従来の香味剤または着色剤を含有することができる。
【0082】
経口投与のために、クロフェレマーを当技術分野で周知の医薬として許容される担体と組み合わせることによって、クロフェレマーを容易に処方することができる。そのような医薬として許容される担体のおかげで、本実施形態の化合物を、治療すべき患者によって経口摂取される錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することができる。経口使用される医薬製剤は、所望により、錠剤または糖衣錠コアを得るために、好適な補助剤を添加した後、クロフェレマーを固体賦形剤と組み合わせ、場合によって得られた混合物をすりつぶし、顆粒の混合物を加工することによって得ることができる。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸またはそれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を添加することができる。糖衣錠コアは、好適なコーティングを用いて提供される。この目的のために、濃縮寒天溶液を用いることができ、これは場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有することができる。
【0083】
本明細書で使用される「全身投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」、および「末梢に投与される」という語句は、それが対象のシステムに侵入し、それにより、代謝および他の同様のプロセスを受けるようなクロフェレマーの投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0084】
クロフェレマーの「治療的有効量」という語は、対象に単回または複数回用量を投与したときに、細菌の増殖および/もしくは侵入を阻害するか、または症状、例えば、下痢などの胃腸障害を軽減するのに有効な、クロフェレマーの量を指す。「治療有効量」はまた、対象の胃腸障害の重症度を低下させるのに十分な治療(例えば、クロフェレマーを含む組成物)の量を指す。
【0085】
本明細書で使用する場合、「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」、および「予防」という用語は、胃腸障害エピソードの再発、発病、または発症の予防を指す。予防する(preventing)には、胃腸障害エピソードの発生および重症度からの防御が含まれる。
【0086】
本明細書で使用する場合、「予防的有効量」という用語は、胃腸障害エピソードの発症、再発、もしくは発病の予防をもたらすかまたは別の治療の予防的効果を増強もしくは改善するのに十分な治療(例えば、クロフェレマーを含む組成物)の量を指す。
【0087】
本明細書で使用する場合、「対象」は、胃腸障害もしくはクロフェレマーで治療可能な他の障害に罹患することができるか、または本明細書に記載したようなクロフェレマーの投与によって別の形で恩恵を受ける生物、例えば、ヒトおよび非ヒト動物を含む。好ましいヒト動物は、ヒト対象を含む。本発明の「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、齧歯類、例えば、マウス、および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0088】
以下の実施例は、説明目的のために提示されるのであって、限定とみなされるべきではない。
【実施例】
【0089】
実施例1
クロフェレマーはT84ヒト腸上皮細胞によるCl分泌を阻害する
クロフェレマーが腸細胞のCl分泌を低下させるかどうかを検討するために、短絡回路電流を(形質膜透過処理なしで)対称性生理的溶液中のT84細胞で測定した。図2Bは、cAMP作動薬のフォルスコリン(上)ならびにカルシウム作動薬のATP(中)およびタプシガルギン(下)によってもたらされる短絡回路電流の増加のクロフェレマー濃度依存的阻害を示す。カルシウム作動薬を用いた測定は、CFTRを阻害するCFTRinh−172の存在下で行なわれた。主にCFTR依存的であるフォルスコリン誘導性電流のクロフェレマー阻害が、緩徐で、弱く、部分的であったのに対し、ATPおよびタプシガルギン誘導性電流の阻害は、10μMのクロフェレマーで完全に近かった。特定の理論に束縛されることを望まないが、カルシウム作動薬によって誘導される電流のこの阻害は、クロフェレマーがCFTRチャネルとCaCCチャネルの両方を阻害し、明らかに後者の阻害の方がはるかに強いことを示唆する。さらなる測定は、分離したCFTRおよびCaCCに対するクロフェレマー効果を研究するために、トランスフェクトした細胞系を用いて行なわれた。
【0090】
実施例2
クロフェレマーはCFTR Clコンダクタンスの部分拮抗薬である
側底膜をアンフォテリシンBで透過処理し、経上皮Cl勾配をかけたCFTR発現FRT細胞で、CFTR Cl電流を測定した。これらの条件下では、測定された電流は、CFTR Clコンダクタンスの直接的な定量的尺度を提供する。図3Aは、CFTR ClコンダクタンスをCPT−cAMPによって刺激し、次いで、頂端浴溶液中で様々な濃度のクロフェレマーを添加した頂端膜電流測定を示す。増加濃度のクロフェレマーは、部分的ではあるが、顕著により速やかなCFTR Cl電流の阻害をもたらした。側底浴溶液へのクロフェレマーの添加は、電流を阻害しなかった(図示せず)。図3B(白丸)にまとめたように、(Cl電流の50%阻害を生じさせる)クロフェレマーの見かけのIC50は約7μMであり、最大阻害効力は約60%であった。同様の結果は、頂端浴溶液と側底浴溶液を取り替えたときに得られた(頂端溶液中の高いCl)(図3B、黒丸)。特定の理論に束縛されることを望まないが、これは、CFTRのクロフェレマー阻害が、Cl濃度に依存しないことを示唆する。クロフェレマーによる部分阻害とは対照的に、CFTRinh−172またはGlyH−101による最大CFTR阻害は、ほぼ100%である(下記参照)。
【0091】
クロフェレマー阻害効力がCFTR活性化機構に依存するかどうかを調べるために測定を行なった。図4Aは、CFTRを直接活性化する作動薬(ゲニステイン)を用いた、またはcAMP合成の増加(フォルスコリン)もしくはcAMP分解の低下(IBMX)によるcAMP依存的CFTRリン酸化を通じた、50および500μMのクロフェレマーに対する同様の応答を示す。分泌性下痢時の排出は非吸収性抗分泌剤の使用における懸念事項であるので、CFTRのクロフェレマー阻害の可逆性を調べた。図4Bは、CFTR Cl電流をCPT−cAMPによって刺激し、その後、様々な濃度のクロフェレマーによって阻害した頂端電流測定を示す。徹底的に洗浄した後、残存するCFTR阻害をCPT−cAMPによる再刺激後の電流から決定した。クロフェレマーの非存在下の対照研究では、(CPT−cAMPの)排出と、それに次ぐ再刺激により、最初の刺激で見られた電流と同様の電流が生じた。しかしながら、様々な濃度のクロフェレマーによる阻害の後、排出研究により、CFTR阻害が、30分にかけて部分的に(25〜35%)逆転することが示された。時間延長研究により、4時間でクロフェレマー阻害が50%弱逆転することが示された(図示せず)。
【0092】
予め添加されるクロフェレマーの非存在下および存在下でのCFTR阻害の比較によって、CFTRに対するクロフェレマーの作用部位が小分子チアゾリジノンおよびグリシンヒドラジド系CFTR阻害剤の作用部位と重複し得る可能性が検討された。図4C(左)は、CFTRinh−172およびGlyH−101によるCFTR阻害の濃度−阻害研究を示す。最大阻害は約100%であり、IC50値はそれぞれ、約1および約8μMである。図4C(右)は、50μMのクロフェレマーを最初に添加してCFTR Cl電流を約50%阻害した同様の濃度−阻害測定を示す。クロフェレマー拮抗機構が部分的であるにもかかわらず、CFTRinh−172およびGlyH−101は、CFTRをほぼ100%阻害した。特定の理論に束縛されることを望まないが、クロフェレマーの非存在下および存在下でのCFTRinh−172およびGlyH−101のよく似たIC50値は、クロフェレマーおよびCFTRinh−172またはGlyH−101のCFTR阻害部位が重複しないことを示唆する。
【0093】
クロフェレマーによるCFTR阻害の分子機構を調べるために、パッチクランプを行なった。全細胞膜電流をCFTR発現FRT細胞で測定した(図5、左)。10μMのフォルスコリンによる刺激によって、+100mVで179±18pA/pFの膜電流が生じた(全膜キャパシタンス15.8±4pF)(n=3)。50μMのクロフェレマーでは、CFTR Cl電流の約60%阻害が得られた。図5(右)は、CFTRについて予想されるような、CFTRのほぼ線形の電流−電圧関係を示す。特定の理論に束縛されることを望まないが、クロフェレマー添加後にCFTR電流−電圧関係が線形のままであったという事実は、電荷のない阻害剤について予想されるような、電位非依存的遮断機構を示唆する。
【0094】
実施例3
クロフェレマーはCaCC TMEM16Aの強力な阻害剤である
図2Bのデータから、クロフェレマーがT84細胞でCaCCを強く阻害することが示唆された。タンパク質TMEM16AがクロフェレマーのCaCC標的であるかどうかを検討するために、TMEM16Aを安定に発現するFRT上皮細胞を様々な濃度のクロフェレマーで前処理し、次いで、1μMのイオノマイシンを添加して、TMEM16A Cl電流を刺激した。電流がTMEM16A Clコンダクタンスの直接的な定量的尺度となるように、測定は、経上皮Cl勾配の存在下で行なわれた。図6Aは、高濃度のクロフェレマーで完全に近かった、TMEM16A Cl電流のクロフェレマー濃度依存的阻害を示す。図6Bは、約6.5μMというTMEM16Aのクロフェレマー阻害のIC50を示す。
【0095】
全細胞膜電流をTMEM16A発現FRT細胞で測定した(図6C)。100μMのATPによる刺激によって、+100mVで56±13pA/pFの膜電流が生じた(n=3)。10μMのクロフェレマーによる前処理によって、ATP誘導性のTMEM16A Cl電流が58%阻害された(24±6pA/pF、n=3)。図6Dは、TMEM16Aの外向き整流電流−電圧関係を示す。電荷のない阻害剤について予想されたように、TMEM16A電流−電圧関係は、クロフェレマー添加後も外向き整流性のままであった。これらの結果は、クロフェレマーの少なくとも第2の異なる管腔膜Clチャネル標的が存在することを示唆する。
【0096】
実施例4
クロフェレマーは頂端カチオンチャネルおよびCamp/カルシウムシグナリングにほとんど影響がない
腸細胞の頂端膜もNaチャネルとKチャネルを有しているが、これらもまた、クロフェレマーの潜在的な標的である。クロフェレマーが上皮細胞NaチャネルENaCの活性を変化させるかどうかを調べるために、ENaCを強く発現し、アミロリド後の短絡回路電流の変化がENaC活性の定量的尺度を提供するヒト気管上皮細胞の初代培養物で短絡回路電流を測定した(Yamaya et al.,1994)。図7Aは、50μMのクロフェレマーによる細胞培養物の前処理によって、約20%のわずかなENaC活性阻害が生じたことを示す。ヒト気管上皮細胞もTMEM16Aを発現し、強いCaCC活性を有する。クロフェレマー前処理によって、カルシウム上昇作動薬UTPの後に短絡回路電流の90%を上回る低下が生じ、上記のT84細胞およびTMEM16AをトランスフェクトしたFRT細胞での結果と一致した。
【0097】
側底膜を、経上皮K勾配の存在下、アンフォテリシンBで透過処理したヒト気管上皮細胞で、クロフェレマーによる頂端Kチャネル阻害の可能性を検討した。これらの条件下では、測定されるわずかな電流は頂端膜K電流である。Kチャネルの非特異的阻害剤であるBaClの添加後に頂端K電流を測定した。図7Bは、50μMのクロフェレマーによる前処理によって、約22%のわずかな頂端膜K電流阻害が生じたことを示す。
【0098】
頂端膜受容体に対するクロフェレマーの作用が主要な細胞内シグナル伝達経路に影響を及ぼし、それによって、側底膜輸送体の活性が二次的に調節されて、細胞外へのCl分泌が間接的に阻害される可能性を検討した。図7Cでは、50μMのクロフェレマーは、T84細胞内の基礎的なまたはフォルスコリン刺激性のcAMP濃度に顕著な影響を及ぼさなかった。図7Dでは、クロフェレマーは、基礎的な細胞質カルシウム濃度を変化させることなく、ATP処理後のT84細胞内のカルシウム濃度の上昇に影響を及ぼすこともなかった。
【0099】
上記実施例で使用することができるいくつかの試薬およびプロトコルの例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:フォルスコリン、アピゲニンおよび3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)はSigmaから購入した。8−(4−クロロフェニルチオ)−cAMP(CPT−cAMP)はCalbiochemから購入した。小分子CFTR阻害剤のCFTRinh−172およびGlyH−101、ならびにCaCC阻害剤のCaCCinh−01は、報告されている通りに合成した(Ma et al.,2002;Muanprasat et al.,2004;de la Fuente et al.,2008)。クロフェレマーは、Napo Pharmaceuticals Inc.(South San Francisco,CA)により提供された。クロフェレマーは、サングレ・デ・グラード(C.lechleri)の樹液からの抽出により調製した。この樹液を冷却して、相分離を誘導した後、固体残渣を廃棄し、上清をブタノールで抽出した。クロフェレマーを含有する水性相を接線流により濾過し、イオン交換カラム上の低圧液体クロマトグラフィーにかけた。クロフェレマー濃縮画分をSephadexカラム上で精製し、含水アセトンの移動相を用いてクロフェレマーを溶出させた。その後、クロフェレマーを真空下で乾燥させた。
【0100】
クロフェレマーは、平均分子量2100ダルトンのプロアントシアニジンオリゴマーの混合物からなっており、以前に報告された平均分子量2300ダルトンと一致する(Ubillas et al.,1994)。図2Aは、クロフェレマーの構造を示す。本研究のために使用された材料は、臨床試験で使用される材料と同じである。臨床試験では、材料は、経口投与用に放出調節錠として処方される(1錠当たり125または250mgのクロフェレマー)。
【0101】
ヒトCFTRを発現するFisherラット甲状腺(FRT)細胞は、記載されている通りに作製した(Ma et al,2002)。ヒトTMEM16A(cDNAは、Gaslini Institute,Genoa,ItalyのLuis Galietta博士によって提供された)を発現するFRT細胞を同様に作製した。FRT細胞を、10%の胎仔ウシ血清(Hyclone)、2mMのグルタミン、100ユニット/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、350μg/mlのハイグロマイシンおよび500μg/mlのジェネティシンを補充したF−12改変Coon培地(Sigma)中で培養した。ヒト気管上皮細胞の初代培養物を、記載されている通りに気液界面で維持した(Yamaya et al.,1992)。T84細胞を10%FBS、100ユニット/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを含むDMEM/Ham’s F−12(1:1)培地中で培養した。細胞を、5%CO/95%大気中、37℃にてSnapwell多孔質フィルター(Costar 3801)上で増殖させた。
【0102】
(CFTRまたはTMEM16Aを安定に発現する)FRT細胞をSnapwellフィルター上でコンフルエンスまで培養した(経上皮抵抗 >500ohm.cm)。短絡回路電流を、側底表面を浸すリンガー溶液と頂端表面を浸す2分の1リンガー溶液とを含むUssingチャンバー(鉛直拡散チャンバー;Costar)中で測定した。リンガー溶液は以下を含んでいた:130mMのNaCl、2.7mMのKCl、1.5mMのKH2PO4、1mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2、10mMのNa−HEPES、10mMのグルコース、pH7.3。2分の1リンガー溶液は、65mMのNaClをグルコン酸Naに代え、CaCl2を2mMに増加させたことを除いて、同じものであった。側底膜を、記載されている通りに250μg/mlのアンフォテリシンBで透過処理した(Ma et al.,2002)。チャンバーを空気で絶えず泡立てた。T84細胞および気管上皮細胞については、以下のもの(単位mM):120 NaCl、5 KCl、1 MgCl2、1 CaCl2、10 D−グルコース、5 HEPES、および25 NaHCO3(pH7.4)を含む対称性HCO3緩衝溶液に細胞を浸し、37℃にて5%CO2で曝気した。T84細胞内の頂端K+コンダクタンスの測定のために、NaHCO3およびNaClをグルコン酸Naに代え、側底溶液中のグルコン酸Naをグルコン酸Kに代え、空気で泡立てた。側底膜を20μMのアンフォテリシンBで透過処理した。DVC−1000電圧固定装置(World Precision Instruments)を用いて、短絡回路電流を測定した。
【0103】
T84細胞を24ウェルプレート中で増殖させ、クロフェレマーで45分間処理し、その後、0または20μMのフォルスコリンで10分間処理し、超音波処理により溶解させ、遠心分離して、細胞破片を除去し、製造元の指示(Parameter(商標)cAMPイムノアッセイキット、R&D Systems)に従って、上清をcAMPについてアッセイした。
【0104】
CFTRまたはTMEM16Aを安定に発現するFRT細胞で全細胞記録を作成した。CFTR用のピペット溶液は、140mMのN−メチルD−グルカミンクロライド(NMDG−C1)、5mMのEGTA、1mMのMgCl2、1mMのTris−ATPおよび10mMのHEPES(pH7.2)を含んでいた。TMEM16A用のピペット溶液は、130mMのCsCl、0.5mMのEGTA、1mMのMgCl2、1mMのTris−ATPおよび10mMのHEPES(pH7.2)を含んでいた。浴溶液は、140mMのN−メチルD−グルカミンクロライド、1mMのCaCl2、1mMのMgCl2、10mMのグルコースおよび10mMのHEPES(pH7.4)を含んでいた。測定は全て室温(22〜25℃)で行なわれた。ピペットをホウケイ酸ガラスから引いた。先端熱加工(fire polishing)した後、ピペットは、3〜5Mohmの抵抗を有していた。シール抵抗は3〜10Gohmであった。全細胞コンフィグレーションを確立した後、CFTRをフォルスコリンおよびIBMXにより活性化し、TMEM16AをATPにより活性化した。0mVの保持電位から−100mV〜+100mVの電圧まで20mVずつ過分極電圧パルスおよび脱分極電圧パルスをかけることによって、全細胞電流を誘発した。電流出力に5kHzでフィルターをかけた。電流をデジタル化し、AxoScope 10.0システムおよびDigidata 1440A AC/DC変換器を用いて解析した。
【0105】
2μMのfura−2−AM(Molecular Probes)とともに37℃で30分間インキュベートして細胞にfura−2を取り込ませることによって、T84細胞のコンフルエントな単層における[Ca2+]iの測定を行なった。fura−2を取り込んだT84細胞を倒立蛍光顕微鏡のステージ上の灌流チャンバーに入れた。細胞に以下のもの(単位mM):140 NaCl、5 KCl、1 MgCl2、1 CaCl2、10 D−グルコースおよび10 HEPES(pH7.4)を表面灌流した。fura−2蛍光を励起波長340nmおよび380nmで記録し、結果を340/380蛍光比として表した。ベースライン測定結果を得た後、100μMのATPを灌流液中に添加した。50μMのクロフェレマーの非存在下および存在下で測定を行なった。
【0106】
実施例5
ヒト患者の下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、およびクローン病の症状を軽減する方法
下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、またはクローン病に罹患しているヒト患者を特定する。ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0107】
実施例6
ヒト患者のAIDS関連下痢の症状を軽減する方法
AIDS関連下痢に罹患しているヒト患者を特定する。ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0108】
実施例7
ヒト患者の過敏性腸症候群の症状を軽減する方法
過敏性腸症候群に罹患しているヒト患者を特定する。ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量、排泄頻度、および/または疼痛を低下させるのに有効である程度に調整することができる。無痛の日数が増えたら、治療は成功であると考えられる。
【0109】
実施例8
ヒト患者のコレラの症状を軽減する方法
コレラに罹患しているヒト患者を特定する。さらに、ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0110】
実施例9
抗生物質とクロフェレマーの組合せを用いてヒト患者のコレラの症状を軽減する方法
コレラに罹患しているヒト患者を特定する。有効用量のアジスロマイシンを患者に投与する。さらに、ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0111】
実施例10
補水療法とクロフェレマーの組合せを用いてヒト患者のコレラの症状を軽減する方法
コレラに罹患しているヒト患者を特定する。一定の比率の水、塩、および糖を含有する経口補水塩(ORS)溶液を患者に投与する。ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0112】
実施例11
クロフェレマーの静脈内投与によってヒト患者の下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、およびクローン病の症状を軽減する方法
下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、またはクローン病に罹患しているヒト患者を特定する。ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に静脈内投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0113】
実施例12
クロフェレマーおよびチアゾリジノンの投与によってヒト患者の下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、およびクローン病の症状を軽減する方法
下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、またはクローン病に罹患しているヒト患者を特定する。有効量のチアゾリジノンと組み合わせた、ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に静脈内投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0114】
実施例13
クロフェレマーおよびグリシンヒドラジドの投与によってヒト患者の下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、およびクローン病の症状を軽減する方法
下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、またはクローン病に罹患しているヒト患者を特定する。有効量のグリシンヒドラジドと組み合わせた、ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に静脈内投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0115】
実施例14
ヒト患者の下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、およびクローン病の症状を軽減する方法
下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、またはクローン病に罹患しているヒト患者を特定する。ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0116】
実施例15
ヒト患者のAIDS関連下痢の症状を軽減する方法
AIDS関連下痢に罹患しているヒト患者を特定する。ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0117】
実施例16
ヒト患者の過敏性腸症候群を軽減する方法
過敏性腸症候群に罹患しているヒト患者を特定する。ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量、排泄頻度、および/または疼痛を低下させるのに有効である程度に調整することができる。無痛の日数が増えたら、治療は成功であると考えられる。
【0118】
実施例17
ヒト患者のコレラの症状を軽減する方法
コレラに罹患しているヒト患者を特定する。さらに、ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0119】
実施例18
抗生物質とクロフェレマーの組合せを用いてヒト患者のコレラの症状を軽減する方法
コレラに罹患しているヒト患者を特定する。有効用量のアジスロマイシンを患者に投与する。さらに、ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0120】
実施例19
補水療法とクロフェレマーの組合せを用いてヒト患者のコレラの症状を軽減する方法
コレラに罹患しているヒト患者を特定する。一定の比率の水、塩、および糖を含有する経口補水塩(ORS)溶液を患者に投与する。ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0121】
実施例20
クロフェレマーの静脈内投与によってヒト患者の下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、およびクローン病の症状を軽減する方法
下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、またはクローン病に罹患しているヒト患者を特定する。ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に静脈内投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0122】
実施例21
クロフェレマーおよびチアゾリジノンの投与によってヒト患者の下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、およびクローン病の症状を軽減する方法
下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、またはクローン病に罹患しているヒト患者を特定する。有効量のチアゾリジノンと組み合わせた、ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に静脈内投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0123】
実施例22
クロフェレマーおよびグリシンヒドラジドの投与によってヒト患者の下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、およびクローン病の症状を軽減する方法
下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、またはクローン病に罹患しているヒト患者を特定する。有効量のグリシンヒドラジドと組み合わせた、ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に静脈内投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0124】
実施例23
ヒト患者のコレラの症状を軽減する方法
コレラに罹患しているヒト患者を特定する。さらに、ある投薬量、例えば、4mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回静脈内投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。
【0125】
実施例24
ヒト患者のコレラの症状を軽減する方法
コレラに罹患しているヒト患者を特定する。さらに、ある投薬量、例えば、7mg/kgのクロフェレマーを患者に1日に2回経口投与する。投薬量は、異常な便重量および排泄頻度を低下させるのに有効である程度に調整することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cl分泌を調節する方法であって、カルシウム活性化クロライドチャネル(CaCC)を発現する細胞を有効量のクロフェレマーと接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記CaCCがTMEM16Aである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Cl分泌を調節する方法であって、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)を発現する細胞を有効量のクロフェレマーと接触させることを含む、方法。
【請求項4】
Na分泌を調節する方法であって、Naチャネルを発現する細胞を有効量のクロフェレマーと接触させることを含む、方法。
【請求項5】
前記Naチャネルが上皮ナトリウムチャネル(ENaC)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの胃腸障害を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてCaCC活性を阻害することを含む、方法。
【請求項7】
前記胃腸障害が、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群、および過敏性腸症候群、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、または交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群と関連する腹部不快感からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記胃腸障害が分泌性下痢である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記胃腸障害が過敏性腸症候群である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの胃腸障害を治療するための方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてCFTR活性を阻害することを含む、方法。
【請求項11】
前記胃腸障害が、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群、および過敏性腸症候群、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、または交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群と関連する腹部不快感からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記胃腸障害が分泌性下痢である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記胃腸障害が過敏性腸症候群である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのチャネル病を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてCaCC活性を阻害することを含む、方法。
【請求項15】
前記チャネル病が、嚢胞性線維症、肢端紅痛症、高カリウム血性周期性四肢麻痺、低カリウム血性周期性四肢麻痺、QT延長症候群、QT短縮症候群、悪性高体温症、先天性筋緊張症、および神経性筋強直症からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのチャネル病を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてCFTR活性を阻害することを含む、方法。
【請求項17】
前記チャネル病が、嚢胞性線維症、肢端紅痛症、高カリウム血性周期性四肢麻痺、低カリウム血性周期性四肢麻痺、QT延長症候群、QT短縮症候群、悪性高体温症、先天性筋緊張症、および神経性筋強直症からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者の少なくとも1つの胃腸障害を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記胃腸障害が、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群、および過敏性腸症候群、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、または交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群と関連する腹部不快感からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記胃腸障害が分泌性下痢である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記胃腸障害が過敏性腸症候群である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの癌を治療するための方法であって、有効量のクロフェレマーを患者に投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記癌が、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌または腹部癌(胃腸癌を含む)、膵癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌および様々なタイプの頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症と関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍と関連する浮腫)、およびメーグス症候群からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が結腸癌である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が結腸直腸癌である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの炎症性疾患を治療するための方法であって、有効量のクロフェレマーを患者に投与することを含む、方法。
【請求項27】
前記炎症性疾患が、クローン病および過敏性腸症候群からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記炎症性疾患が過敏性腸症候群である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの胃腸障害を治療する方法であって、有効量のクロフェレマーを用いてENaC活性を阻害することを含む、方法。
【請求項30】
前記胃腸障害が、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群、および過敏性腸症候群、下痢、分泌性下痢、過敏性腸症候群、便秘、クローン病、潰瘍、裂肛、便秘優位型過敏性腸症候群、下痢優位型過敏性腸症候群、または交互に起こる便秘優位型/下痢優位型過敏性腸症候群と関連する腹部不快感からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記胃腸障害が分泌性下痢である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記胃腸障害が過敏性腸症候群である、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−506716(P2013−506716A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533251(P2012−533251)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/051530
【国際公開番号】WO2011/044167
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512088660)ザ レゲンツ オブ ジ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (1)
【出願人】(512088671)ナポ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】