説明

クロマトグラフィーシステムおよびそれを用いた方法

本明細書に記載のいくつかの実施形態は、マイクロ流体素子を含むクロマトグラフィーシステムに向けられる。マイクロ流体素子は切換弁に流体連結されて、クロマトグラフィーシステム内の流体の流れを選択的に制御し得る。いくつかの実施例では、マイクロ流体素子は、システム内の流体の流れをさらに制御し得る充填チャンバ、バイパス制限器または他の特徴を含み得る。当該素子を用いた方法、および所望の流量を提供するための長さおよび径の計算方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願
本願は、2008年5月27日に出願された米国仮特許出願番号61/056,225、2009年1月6日に出願された米国仮特許出願番号61/142,702、2009年1月6日に出願された米国仮特許出願番号61/142,705、2009年3月6日に出願された米国仮特許出願番号61/158,001、および2009年5月18日に出願された米国仮特許出願番号61/179,028の各々の優先権を主張し、各出願の全開示内容は、全文が引用によって本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
いくつかの特徴、局面および実施形態はガスクロマトグラフィーシステムに向けられる。特に、いくつかの実施形態は、クロマトグラフィーシステム内の1つ以上の他の構成要素への流体の流れを制御するためのマイクロ流体素子を含むクロマトグラフィーシステムに向けられる。
【背景技術】
【0003】
背景
既存のクロマトグラフィーシステムでは、複合試料の分離が困難であり得る。特に、接近して溶出するピークを有する試料は、分離するのが困難であり得る。また、バックフラッシュ、ハートカット、カラム交換および検出器交換が必要とされる場合もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要約
1つの局面では、第1のカラムに流体連結された第1のインジェクタと、第2のカラムに流体連結された第2のインジェクタと、第1のカラムおよび第2のカラムに流体連結されたマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、マイクロ流体素子は切換弁に流体連結された内部マイクロチャネルを含み、マイクロ流体素子に流体連結され、切換弁が第1の位置に作動されると第1のカラムからの流出物を受取り、切換弁が第2の位置に作動されると第2のカラムからの流出物を受取るように構成された検出器をさらに含むクロマトグラフィーシステムが提供される。
【0005】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体素子は、第1のカラムに流体連結された第1のポート、および第2のカラムに流体連結された第2のポートを含み得る。いくつかの実施例では、検出器は質量分析計である。いくつかの実施例では、システムは、マイクロ流体素子に流体連結された第2の検出器を含み得る。いくつかの実施形態では、システムは、マイクロ流体素子に流体連結された調節ガス源も含み得る。いくつかの実施例では、内部マイクロチャネルは第1の充填チャンバを含む。いくつかの実施形態では、切換弁は、第1の位置にあるときに調節ガス源から第1の充填チャンバへの流体の流れを可能にし、第2の位置にあるときに調節ガス源から第1の充填チャンバへの流体の流れを制限する。いくつかの実施例では、システムはさらに、マイクロチャネル内の第2の充填チャンバを含み得る。いくつかの実施形態では、切換弁は、第1の位置にあるときに調節ガス源から第1の充填チャンバへの流体の流れを可能にし、第2の位置にあるときに調節ガス源から第1の充填チャンバへの流体の流れを制限し、第2の位置にあるときに調節ガス源から第2の充填チャンバへの流体の流れを可能にする。いくつかの実施形態では、システムは、システム内の流体の流れを平衡化するために検出器とマイクロ流体素子との間に制限器を含み得る。
【0006】
別の局面では、第1のカラムに流体連結されたインジェクタと、第1のカラムに流体連結されたマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、マイクロ流体素子は、マイクロ流体素子上のポートを通じて切換弁に流体連結され、マイクロ流体素子に流体連結された第2のカラムと、第2のカラムに流体連結された第1の検出器とをさらに含むクロマトグラフィーシステムが開示される。
【0007】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、マイクロ流体素子と第2の検出器との間の制限器を通じてマイクロ流体素子に流体連結された第2の検出器を含み得る。いくつかの実施例では、システムはさらに、マイクロ流体素子と第2の検出器との間の第3のカラムを通じてマイクロ流体素子に流体連結された第2の検出器を含み得る。いくつかの実施例では、システムはさらに、第2のカラムと第1の検出器との間の制限器を含み得る。他の実施例では、マイクロ流体素子は、マイクロチャネル内の内部バイパス制限器を含む。いくつかの実施例では、システムは、切換弁が第1の位置にあるときに第2のカラムが第1のカラムからの流出物を受取り、切換弁が第2の位置にあるときに第3のカラムが第1のカラムからの流出物を受取るように構成され得る。いくつかの実施例では、システムは、マイクロ流体素子と第3の検出器との間の第4のカラムを通じてマイクロ流体素子に流体連結された第3の検出器を含み得る。いくつかの実施形態では、システムは、通気孔とマイクロ流体素子との間の制限器を通じてマイクロ流体素子に流体連結された通気孔を含み得る。いくつかの実施形態では、システムはさらに、通気孔とマイクロ流体素子との間の制限器を通じてマイクロ流体素子に流体連結された通気孔を含む。いくつかの実施例では、システムは、マイクロ流体素子のマイクロチャネル内の充填チャンバを含む。
【0008】
さらなる局面では、インジェクタと、インジェクタに流体連結されたカラムと、カラムに流体連結され、切換弁に流体連結されたマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、マイクロ流体素子はカラムからの流出物を受取るための入口ポートを含み、調節ガスを受取るための調節ガスポートと、少なくとも1つの出口ポートとをさらに含み、ポートの各々はマイクロ流体素子内の内部マイクロチャネルを通じて流体連結しており、マイクロ流体素子の第1の出口ポートに流体連結された制限器と、制限器に流体連結された第1の検出器とをさらに含むクロマトグラフィーシステムが提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、システムは内部マイクロチャネル内のバイパス制限器を含み、バイパス制限器は、マイクロ流体素子を流れる流体の流れを減少させるように構成される。いくつかの実施例では、システムはマイクロチャネル内の充填チャンバを含む。他の実施例では、システムは、マイクロ流体素子の第2の出口ポートに流体連結された第2の制限器を含む。いくつかの実施形態では、システムは、第2の制限器に流体連結された第2の検出器を含み得る。他の実施形態では、システムは、マイクロ流体素子の第3の出口ポートに流体連結された第3の制限器を含み得る。いくつかの実施形態では、システムは、第3の制限器に流体連結された第3の検出器を含み得る。いくつかの実施例では、システムは、マイクロ流体素子の第4の出口ポートに流体連結された第4の制限器を含み得る。いくつかの実施形態では、システムはさらに、第4の制限器に流体連結された第4の検出器を含む。いくつかの実施例では、システムは、マイクロ流体素子の第2の出口ポートとスニッファポートとの間の制限器を通じてマイクロ流体素子の第2の出口ポートに流体連結されたスニッファポートを含み得る。
【0010】
別の局面では、インジェクタと、インジェクタに流体連結された第1のカラムと、カラムに流体連結され、切換弁に流体連結されたマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、マイクロ流体素子はカラムからの流出物を受取るための入口ポートを含み、調節ガスを受取るための調節ガスポートと、少なくとも1つの出口ポートとをさらに含み、ポートの各々はマイクロ流体素子内の内部マイクロチャネルを通じて流体連結しており、マイクロ流体素子の第1の出口ポートに流体連結された第2のカラムと、第2のカラムに流体連結された第1の検出器とをさらに含むクロマトグラフィーシステムが開示される。
【0011】
いくつかの実施形態では、システムは内部マイクロチャネル内のバイパス制限器を含み得、バイパス制限器は、マイクロ流体素子を流れる流体の流れを減少させるように構成される。他の実施形態では、システムは、マイクロチャネル内の充填チャンバを含み得る。いくつかの実施例では、システムは、マイクロ流体素子の第2の出口ポートに流体連結された制限器を含み得る。さらなる実施例では、システムは、制限器に流体連結された第2の検出器を含み得る。いくつかの実施形態では、システムは、マイクロ流体素子の第3の出口ポートに流体連結された第3のカラムを含み得る。いくつかの実施例では、システムは、第3のカラムに流体連結された第3の検出器を含み得る。他の実施例では、システムは、マイクロ流体素子の第4の出口ポートに流体連結された第4のカラムを含み得る。いくつかの実施例では、システムは第4のカラムに流体連結された第4の検出器を含み得る。さらなる実施形態では、システムは、マイクロ流体素子の第2の出口ポートとスニッファポートとの間の制限器を通じてマイクロ流体素子の第2の出口ポートに流体連結されたスニッファポートを含み得る。
【0012】
さらなる局面では、インジェクタと、インジェクタに流体連結され、切換弁に流体連結されたマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、マイクロ流体素子はインジェクタからの試料を受取るための入口ポートを含み、調節ガスを受取るための調節ガスポートと、少なくとも1つの出口ポートとをさらに含み、ポートの各々はマイクロ流体素子の内部マイクロチャネルを通じて流体連結しており、マイクロ流体素子の第1の出口ポートに流体連結された第1のカラムと、第1のカラムに流体連結された第1の検出器とをさらに含むクロマトグラフィーシステムが開示される。
【0013】
いくつかの実施形態では、システムは内部マイクロチャネル内のバイパス制限器を含み得、バイパス制限器は、マイクロ流体素子を流れる流体の流れを減少させるように構成される。他の実施形態では、システムはマイクロチャネル内の充填チャンバを含み得る。さらなる実施形態では、システムは、マイクロ流体素子の第2の出口ポートに流体連結された制限器を含み得る。いくつかの実施例では、システムは、制限器に流体連結された第2の検出器を含み得る。他の実施例では、システムは、マイクロ流体素子の第3の出口ポートに流体連結された第3のカラムを含み得る。さらなる実施例では、システムは、第3のカラムに流体連結された第3の検出器を含み得る。他の実施例では、システムは、マイクロ流体素子の第4の出口ポートに流体連結された第4のカラムを含み得る。いくつかの実施例では、システムは、第4のカラムに流体連結された第4の検出器を含み得る。他の実施例では、システムは、マイクロ流体素子の第2の出口ポートとスニッファポートとの間の制限器を通じてマイクロ流体素子の第2の出口ポートに流体連結されたスニッファポートを含み得る。
【0014】
別の局面では、第1のカラムに流体連結された第1のインジェクタと、第2のカラムに流体連結された第2のインジェクタと、第1のカラムおよび第2のカラムに流体連結されたマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、マイクロ流体素子は切換弁に流体連結された内部マイクロチャネルを含み、マイクロ流体素子に流体連結された第1の検出器と、マイクロ流体素子に流体連結された第2の検出器とをさらに含み、マイクロ流体素子は、第1の位置にあるときに、第1のカラムからの流出物を第1の検出器に与え、第2のカラムからの流出物を第2の検出器に与えるよう構成され、第2の位置にあるときに、第1のカラムからの流出物を第2の検出器に与え、第2のカラムからの流出物を第1の検出器に与えるように構成されるクロマトグラフィーシステムが提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、システムは、第1の検出器とマイクロ流体素子との間の第1の制限器、および第2の検出器とマイクロ流体素子との間の第2の制限器を含み得る。いくつかの実施形態では、システムは、マイクロ流体素子のマイクロチャネル内の内部交差チャネルを含み得、切換弁は、第2の位置にあるときに、交差チャネル内の流体の流れを可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、第1および第2の検出器の少なくとも一方が質量分析計である。他の実施例では、システムは、第2の検出器とマイクロ流体素子との間の第2の検出器に流体連結された第3のカラムを含み得る。いくつかの実施例では、システムはマイクロチャネル内の充填チャンバを含む。
【0016】
さらなる局面では、第1のカラムに流体連結された第1のインジェクタと、第2のカラムに流体連結された第2のインジェクタと、第1のカラムおよび第2のカラムに流体連結されたマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、マイクロ流体素子は切換弁に流体連結された内部マイクロチャネルを含み、マイクロ流体素子に流体連結された第1の検出器と、マイクロ流体素子に流体連結された通気孔とをさらに含み、マイクロ流体素子は、第1の位置にあるときに、第1のカラムからの流出物を第1の検出器に与え、第2のカラムからの流出物を通気孔に与え、第2の位置にあるときに、第1のカラムからの流出物を通気孔に与え、第2のカラムからの流出物を第1の検出器に与えるように構成されるクロマトグラフィーシステムが開示される。
【0017】
いくつかの実施形態では、システムは、第1の検出器とマイクロ流体素子との間の第1の制限器、および通気孔とマイクロ流体素子との間の第2の制限器を含み得る。他の実施形態では、システムは、マイクロ流体素子のマイクロチャネル内の内部交差チャネルを含み得、切換弁は、第2の位置にあるときに、交差チャネル内の流体の流れを可能にするように構成される。さらなる実施形態では、第1および第2の検出器の少なくとも一方が質量分析計である。いくつかの実施形態では、システムは、第1の検出器に流体連結され、第1の検出器とマイクロ流体素子との間にある第3のカラムを含み得る。いくつかの実施例では、システムはマイクロチャネル内の充填チャンバを含む。
【0018】
別の局面では、第1のカラムに流体連結された第1のインジェクタと、第1のカラムに流体連結され、切換弁に流体連結された内部マイクロチャネルを含む第1のマイクロ流体素子と、第1のマイクロ流体素子に流体連結された第2のマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、第2のマイクロ流体素子は、切換弁に流体連結された内部マイクロチャネルを含み、第2のマイクロ流体素子に流体連結された検出器をさらに含むクロマトグラフィーシステムが提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、システムは、第1のマイクロ流体素子と第2のマイクロ流体素子との間にあり、第1のマイクロ流体素子および第2のマイクロ流体素子の各々に流体連結された第2のカラムを含み得る。他の実施形態では、システムは、第1のマイクロ流体素子に流体連結された第2の検出器を含み得る。いくつかの実施例では、システムは、第2のマイクロ流体素子に流体連結された第2の検出器を含み得る。さらなる実施例では、システムは、第2のマイクロ流体素子と検出器との間にあり、第2のマイクロ流体素子および検出器の各々に流体連結された第2のカラムを含み得る。いくつかの実施例では、システムは、1つ以上の第1および第2のマイクロ流体素子のマイクロチャネル内の充填チャンバを含む。
【0020】
さらなる局面では、第1のカラムに流体連結された第1のインジェクタと、第2のカラムに流体連結された第2のインジェクタと、第1のポートを通じて第1のカラムに流体連結され、第2のポートを通じて第2のカラムに流体連結されたマイクロ流体素子とを含むクロマトグラフィーシステムであって、マイクロ流体素子は、第1のポートに流体連結された第1の充填チャンバおよび第2のポートに流体連結された第2の充填チャンバを含み、クロマトグラフィーシステムはさらに、マイクロ流体素子および調節ガス源に流体連結された切換弁を含み、切換弁は、第1の位置にあるときに、調節ガス源からの調節ガスの流れを可能にして、第1の充填チャンバからの流出物を、マイクロ流体素子に流体連結された検出器に流すように構成され、切換弁はさらに、第2の位置にあるときに、調節ガス源からの調節ガスが第2の充填チャンバに流れることを可能にして、第2の充填チャンバからの流出物を、マイクロ流体素子に流体連結された検出器に流すように構成されるクロマトグラフィーシステムが提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、システムは、第1の充填チャンバに流体連結された第1の検出器、および第2の充填チャンバに流体連結された第2の検出器を有するように構成され得る。他の実施例では、切換弁は第1または第2の位置に作動されて、第1の充填チャンバからパルス化された流れを検出器に与え、第2の充填チャンバからパルス化された流れを検出器に与えるように構成され得る。さらなる実施例では、切換弁は3方向電磁弁である。他の実施例では、検出器は質量分析計である。
【0022】
別の局面では、内部マイクロ流体チャネルを通じて互いに直列接続された複数のポートを有する積層基板を含むマイクロ流体素子が提供される。いくつかの実施例では、マイクロチャネルは、たとえば内部バイパス制限器を有するなど、所望の態様で構成され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体素子は、複数のポートの少なくとも1つに流体連結された切換弁を含む。さらなる実施例では、切換弁は電磁弁である。いくつかの実施例では、素子は、マイクロ流体素子の第1のポートに流体連結された少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムを含み得る。いくつかの実施例では、マイクロ流体素子の第2のポートに検出器が流体連結され得る。いくつかの実施例では、検出器は質量分析計である。他の実施例では、素子はさらに、マイクロ流体素子の第3のポートに流体連結された付加的なクロマトグラフィーカラムを含み得る。いくつかの実施例では、素子は、マイクロ流体素子に流体連結され、少なくとも1つの検出器とマイクロ流体素子との間に配置された制限器を含み得る。さらなる実施例では、素子は、マイクロ流体素子の第4のポートに流体連結された第2の検出器を含み得る。いくつかの実施形態では、素子は、マイクロ流体素子に流体連結され、第2の検出器とマイクロ流体素子との間に配置された付加的な制限器を含み得る。いくつかの実施形態では、素子は、第2、第3および第4のポートの上流にある第5のポートに流体連結され、マイクロチャネルからの流出物を流すために調節ガスを与えるように構成された調節ガス源を含み得る。いくつかの実施例では、マイクロチャネルは充填チャンバを含む。いくつかの実施例では、充填チャンバは、マイクロチャネルの他の部分と比べて直径が大きい部分を含む。いくつかの実施例では、調節ガス源は充填チャンバに流体連結され、調節ガスは、切換弁が第1の位置に作動されると調節ガス源から充填チャンバに流れ得る。他の実施例では、切換弁が第2の位置に作動されると、充填チャンバへの調節ガスの流れが制限される。
【0024】
さらなる局面では、マイクロ流体素子であって、少なくとも1つの入口ポート、および積層基板内のマイクロチャネルを通じて各々が入口ポートに流体連結された複数の出口ポートを有する積層基板と、積層基板内の内部バイパス制限器とを含み、内部バイパス制限器はマイクロチャネルに流体連結され、マイクロチャネル内の流体の流れを制限するように構成されたマイクロ流体素子が提供される。
【0025】
いくつかの実施形態では、素子は、ポートの少なくとも1つに流体連結された切替弁を含み得る。別の実施形態では、切替弁は電磁弁である。いくつかの実施例では、素子は、マイクロ流体素子の第1のポートに流体連結された少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムを含み得る。さらなる実施形態では、素子は、マイクロ流体素子の第2のポートに流体連結された検出器を含み得る。いくつかの実施例では、検出器は質量分析計である。他の実施例では、素子は、マイクロ流体素子の第3のポートに流体連結された付加的なクロマトグラフィーカラムを含み得る。さらなる実施例では、素子は、マイクロ流体素子に流体連結され、少なくとも1つの検出器とマイクロ流体素子との間に配置された制限器を含み得る。いくつかの実施例では、素子は、マイクロ流体素子の第4のポートに流体連結された第2の検出器を含み得る。いくつかの実施例では、素子は、マイクロ流体素子に流体連結され、第2の検出器とマイクロ流体素子との間に配置された付加的な制限器を含み得る。いくつかの実施例では、素子は、第2、第3および第4のポートの上流にある第5のポートに流体連結され、マイクロチャネルからの流出物を流すために調節ガスを与えるように構成された調節ガス源を含み得る。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルは充填チャンバを含む。いくつかの実施形態では、充填チャンバは、マイクロチャネルの他の部分と比べて直径が大きい部分を含む。さらなる実施形態では、調節ガス源は充填チャンバに流体連結され、切換弁が第1の位置に作動されると調節ガスが調節ガス源から充填チャンバに流れ得る。いくつかの実施例では、切換弁が第2の位置に作動されると、充填チャンバへの調節ガスの流れが制限される。
【0026】
別の局面では、クロマトグラフィーシステム内の流体の流れを調節する方法であって、切換弁を第1の位置または第2の位置に作動させるステップを含み、第1の位置によって、調節ガス源からマイクロ流体素子の第1の充填チャンバへの流体の流れが可能になり、第1の充填チャンバからのカラム流出物が、マイクロ流体素子に流体連結された検出器に与えられ、第2の位置によって、調節ガス源からマイクロ流体素子の第2の充填チャンバへの流体の流れが可能になり、第2の充填チャンバからのカラム流出物が、マイクロ流体素子に流体連結された検出器に与えられる方法が開示される。
【0027】
いくつかの実施形態では、切換弁は、約10Hzから約100Hzの周波数で作動される3方向電磁弁である。いくつかの実施形態では、本方法は、検出器とマイクロ流体素子との間に制限器を有するようにシステムを構成することによってシステム内の圧力を平衡化するステップを含み得る。他の実施例では、本方法は、第1の充填チャンバからのカラム流出物を、マイクロ流体素子に流体連結された第1の検出器に与えるステップと、第2の充填チャンバからのカラム流出物を、マイクロ流体素子に流体連結された第2の検出器に与えるステップとを含み得る。いくつかの実施例では、本方法は、第1の検出器とマイクロ流体素子との間に第1の制限器を有するように、かつ第2の検出器とマイクロ流体素子との間に第2の制限器を有するようにシステムを構成することによってシステム内の圧力を平衡化するステップを含み得る。いくつかの実施例では、本方法は、第1および第2の充填チャンバの各々をマイクロ流体素子内の内部チャンバとして構成するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、調節ガス源からの流体流量を、第1および第2の充填チャンバ内へのカラム流出物の流体流量よりも少なくとも5倍大きく、たとえば10倍大きくするように構成するステップを含み得る。
【0028】
別の局面では、第1の充填チャンバおよび第2の充填チャンバを有する内部マイクロチャネルを含むマイクロ流体素子を含むシステムであって、第1の充填チャンバおよび第2の充填チャンバの各々は、マイクロ流体素子の入口ポートおよび出口ポートに流体連結され、システムはさらに、マイクロ流体素子の内部マイクロチャネルに流体連結された切換弁を含み、切換弁は、第1の位置にあるときに、調節ガスが入口ポートを通って第1の充填チャンバに流れることを可能にして、第1の充填チャンバからのカラム流出物をマイクロ流体素子の出口ポートに与えるように、かつ第2の位置にあるときに、調節ガスが入口ポートを通って第2の充填チャンバに流れることを可能にして、第2の充填チャンバからのカラム流出物をマイクロ流体素子の出口ポートに与えるように構成されるシステムが提供される。いくつかの実施例では、第1のチャンバへの調節ガスの流れが可能である場合、第2のチャンバへの調節ガスの流れは制限される(または第2のチャンバへの調節ガスの実質的な流れは発生しない)。いくつかの実施例では、第2のチャンバへの調節ガスの流れが可能である場合、第1のチャンバへの調節ガスの流れは制限される(または第1のチャンバへの調節ガスの実質的な流れは発生しない)。
【0029】
いくつかの実施形態では、本システムは、マイクロ流体素子の出口ポートに流体連結された検出器を含み得る。いくつかの実施形態では、検出器は質量分析計である。さらなる実施形態では、切換弁は3方向電磁弁である。いくつかの実施例では、本システムは、質量分析計および切換弁に電気的に結合され、質量分析計の検出器読取値を3方向電磁弁の調節と同期させるように構成された制御部を含み得る。他の実施形態では、本システムは、マイクロ流体素子に流体連結されたインジェクタを含み得る。いくつかの実施例では、マイクロ流体素子は積層ウェハとして構成され得る。
【0030】
さらなる局面では、クロマトグラフィーシステム内に用いられる流体流量を選択するステップと、選択された流体流量を提供するためのクロマトグラフィーシステム内のカラムの内径を求めるステップとを含む方法が提供される。いくつかの実施例では、カラムの内径は以下の式
【0031】
【数1】

【0032】
を用いて計算され、式中、dcはカラムの内径であり、Lはカラム長さであり、paは絶対圧力であり、ηはキャリアガスの粘度であり、bは定数である。
【0033】
別の局面では、クロマトグラフィーシステム内に用いられる流体流量を選択するステップと、選択された流体流量を提供するためのクロマトグラフィーシステム内の制限器の寸法を求めるステップとを含む方法が開示される。いくつかの実施例では、寸法は制限器の内径であり、内径は以下の式
【0034】
【数2】

【0035】
を用いて計算され、式中、drは制限器の内径であり、Lは制限器長さであり、paは絶対圧力であり、ηはキャリアガスの粘度であり、bは定数である。いくつかの実施例では、寸法は制限器長さであり、制限器長さは以下の式
【0036】
【数3】

【0037】
を用いて計算され、式中、Lr1はオーブンの内部の制限器の長さであり、Lr2は検出器の内部の制限器の長さであり、ηr1はオーブン温度におけるキャリアガスの粘度であり、ηr2は検出器温度おけるキャリアガスの粘度であり、Tr1はオーブンの絶対温度であり、Tr2は検出器の絶対温度であり、piは入口圧力であり、porは出口圧力であり、Faは流量である。
【0038】
別の局面では、クロマトグラフィーシステムの使用を容易にするための方法であって、内部マイクロ流体チャネルを通じて互いに直列接続された複数のポートを有する積層基板を含むマイクロ流体素子を提供するステップを含む方法が開示される。
【0039】
さらなる局面では、クロマトグラフィーシステムの使用を容易にするための方法であって、少なくとも1つの入口ポート、および積層基板内のマイクロチャネルを通じて各々が入口ポートに流体連結された複数の出口ポートを有する積層基板と、積層基板内の内部バイパス制限器と含むマイクロ流体素子を提供するステップを含み、内部バイパス制限器はマイクロチャネルに流体連結され、マイクロチャネル内の流体の流れを制限するように構成された方法が提供される。いくつかの実施形態では、複数の出口ポートが直列に配置され得る。
【0040】
さらなる特徴、局面、実施例および実施形態が以下により詳細に説明される。
いくつかの例示的な実施形態が、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。
【0041】
本開示内容から、図面に示されるさまざまな構成要素の厳密なサイズおよび配置は、所望の結果や所望の動作モードを提供するために、たとえば拡大、伸張、縮小、再配置、または他の方法で再構成されるなど変更可能であることが当業者に理解されるであろう。また、1つの構成要素に対する他の構成要素の「上流」または「下流」という特定の配置も、所望の結果や本明細書中に記載の技術を用いて実行される所望の方法に依存して変更可能である。特に断りのない限り、たとえばガス流などの流体の流れは概して図面の左側から右側に向かって発生するよう意図されているが、本明細書中により詳細に記載されるように、用いられる厳密な構成および圧力に依存して他の流れ方向も可能である。可能であれば、流体の流れの全体的な方向を示すために、場合によっては矢印が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子の一般的な動作原理を説明するために用いられる概略図である。
【図1B】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子の一般的な動作原理を説明するために用いられる概略図である。
【図2】いくつかの実施例に従った、中間点接合部を有するクロマトグラフィーシステムの図である。
【図3A】いくつかの実施例に従った、流れ制御を実行するためにクロマトグラフィーシステム内で用いられ得るユーザインターフェイスを示す図である。
【図3B】いくつかの実施例に従った、流れ制御を実行するためにクロマトグラフィーシステム内で用いられ得るユーザインターフェイスを示す図である。
【図3C】いくつかの実施例に従った、流れ制御を実行するためにクロマトグラフィーシステム内で用いられ得るユーザインターフェイスを示す図である。
【図4A】いくつかの実施例に従った、ある状況下のシステム内の流体の流れを示す図である。
【図4B】いくつかの実施例に従った、ある状況下のシステム内の流体の流れを示す図である。
【図4C】いくつかの実施例に従った、ある状況下のシステム内の流体の流れを示す図である。
【図4D】いくつかの実施例に従った、ある状況下のシステム内の流体の流れを示す図である。
【図4E】いくつかの実施例に従った、ある状況下のシステム内の流体の流れを示す図である。
【図5】いくつかの実施例に従った、空気圧制御部を含むクロマトグラフィーシステムの図である。
【図6】いくつかの実施例に従った、切換弁および2つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの図である。
【図7】いくつかの実施例に従った、2つの検出器およびスプリッタを含むクロマトグラフィーシステムの図である。
【図8A】いくつかの実施例に従った、流量の変化をカラム内径の誤差の関数として示すグラフの図である。
【図8B】いくつかの実施例に従った、流量の変化をカラム長さの誤差の関数として示すグラフの図である。
【図9A】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子および切換弁を含むクロマトグラフィーシステムの図である。
【図9B】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子および切換弁を含むクロマトグラフィーシステムの図である。
【図10】いくつかの実施例に従った、3つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの図である。
【図11】いくつかの実施例に従った、内部マイクロチャネルを示すマイクロ流体素子の断面図である。
【図12】いくつかの実施例に従った、4つの出口ポートを含むマイクロ流体素子の断面図である。
【図13】いくつかの実施例に従った、マイクロチャネル内の延長部を含むマイクロ流体素子の断面図である。
【図14A】いくつかの実施例に従った、互いに直列に配置された2つの出口ポートを含むマイクロ流体素子の断面図である。
【図14B】いくつかの実施例に従った、互いに直列に配置された3つの出口ポートを含むマイクロ流体素子の断面図である。
【図15A】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子の他の例を示す図である。
【図15B】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子の他の例を示す図である。
【図16】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子に流体連結された単一検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図17】いくつかの実施例に従った、各々がマイクロ流体素子に流体連結された2つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図18】いくつかの実施例に従った、各々がマイクロ流体素子に流体連結された3つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図19】いくつかの実施例に従った、各々がマイクロ流体素子に流体連結された4つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図20】いくつかの実施例に従った、各々がマイクロ流体素子に流体連結された単一検出器およびスニッファポートを含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図21】いくつかの実施例に従った、各々がマイクロ流体素子に流体連結された2つの検出器を含み、かつ第1のカラムのバックフラッシュが実行され得るクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図22】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子に流体連結された2つのカラムおよび単一検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図23】いくつかの実施例に従った、各々がマイクロ流体素子に流体連結された2つのカラムおよび2つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図24】いくつかの実施例に従った、各々がマイクロ流体素子に流体連結された3つのカラムおよび2つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図25】いくつかの実施例に従った、各々がカラムを通じてマイクロ流体素子に流体連結された2つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図26A】いくつかの実施例に従った、すべてのポートが直列に配置されたマイクロチャネルを含むマイクロ流体素子の図である。
【図26B】いくつかの実施例に従った、すべてのポートが直列に配置されたマイクロチャネルを含むマイクロ流体素子の図である
【図27】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子およびマイクロ流体素子を保持するための2枚のプレートを示す写真の図である。
【図28】いくつかの実施例に従った、内部バイパス制限器を示すマイクロ流体素子の断面図である。
【図29】いくつかの実施例に従った、各々が第1および第2のマイクロ流体素子に流体連結された2つのカラムおよび2つの検出器を含むクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図30A】いくつかの実施例に従った、交差流れを提供し得るマイクロ流体素子を有するクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図30B】いくつかの実施例に従った、交差流れを提供し得るマイクロ流体素子を有するクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図31】いくつかの実施例に従った、交差流れを提供し得るマイクロ流体素子を有する別のクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図32A】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子のさまざまな層を示す断面区分の図である。
【図32B】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子のさまざまな層を示す断面区分の図である。
【図32C】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子のさまざまな層を示す断面区分の図である。
【図32D】いくつかの実施例に従った、マイクロ流体素子のさまざまな層を示す断面区分の図である。
【図33A】いくつかの実施例に従った、切換弁を作動させるために用いられ得る制御部を示す図である。
【図33B】いくつかの実施例に従った、切換弁を作動させるために用いられ得る制御部を示す図である。
【図34】いくつかの実施例に従った、変調された単一ピークの結果を示すグラフの図である。
【図35A】いくつかの実施例に従った、2つの異なるカラムからの試料の記録を示す図である。
【図35B】いくつかの実施例に従った、2つの異なるカラムからの試料の記録を示す図である。
【図35C】いくつかの実施例に従った、2つの異なるカラムからの試料ピークの変調を示す図である。
【図36】いくつかの実施例に従った、2つのクロマトグラムの同時分析を実行するために用いられ得るシステムの概略図である。
【図37】いくつかの実施例に従った、2つのクロマトグラムの同時分析を実行するために用いられ得るシステムの概略図である。
【図38】いくつかの実施例に従った、多次元分離、多重化クロマトグラフィーまたは多重化検出用に構成されたシステムの概略図である。
【図39】いくつかの実施例に従った、多次元分離、多重化クロマトグラフィーまたは多重化検出用に構成されたシステムの概略図である。
【図40】いくつかの実施例に従った、第1の充填チャンバおよび第2の充填チャンバを含むマイクロ流体素子の断面図である。
【図41】いくつかの実施例に従った、従来のクロマトグラフを示す図である。
【図42】いくつかの実施例に従った、変調および充填チャンバを用いた予測結果を示す図である。
【図43A】いくつかの実施例に従った、2方向切換弁を用いた充填チャンバ内の流体の流れを示す図である。
【図43B】いくつかの実施例に従った、2方向切換弁を用いた充填チャンバ内の流体の流れを示す図である。
【図44A】いくつかの実施例に従った、3方向切換弁を用いた充填チャンバ内の流体の流れを示す図である。
【図44B】いくつかの実施例に従った、3方向切換弁を用いた充填チャンバ内の流体の流れを示す図である。
【図45A】いくつかの実施例に従った、3方向切換弁を用いた第1および第2の充填チャンバ内の流体の流れを示す図である。
【図45B】いくつかの実施例に従った、3方向切換弁を用いた第1および第2の充填チャンバ内の流体の流れを示す図である。
【図46】いくつかの実施例に従った、拡大マイクロチャネル部を含むマイクロ流体素子を示す図である。
【図47】いくつかの実施例に従った、内部に狭窄部を有するマイクロチャネルを含むマイクロ流体素子を示す図である。
【図48】いくつかの実施例に従った、たとえばピーク分割に用いられ得るクロマトグラフィーシステムの例を示す図である。
【図49】いくつかの実施例に従った、たとえばピーク分割に用いられ得るクロマトグラフィーシステムの例を示す図である。
【図50】いくつかの実施例に従った、たとえばピーク分割に用いられ得るクロマトグラフィーシステムの例を示す図である。
【図51】いくつかの実施例に従った、たとえばピーク分割に用いられ得るクロマトグラフィーシステムの例を示す図である。
【図52A】いくつかの実施例に従った、たとえばピーク分割に用いられ得るクロマトグラフィーシステムの例を示す図である。
【図52B】いくつかの実施例に従った、たとえばピーク分割に用いられ得るクロマトグラフィーシステムの例を示す図である。
【図53】いくつかの実施例に従った、たとえばピーク分割に用いられ得るクロマトグラフィーシステムの例を示す図である。
【図54】いくつかの実施例に従った、たとえばピーク分割に用いられ得るクロマトグラフィーシステムの例を示す図である。
【図55】いくつかの実施例に従った、管類の直径を示す写真の図である。
【図56】いくつかの実施例に従った、本明細書中に記載の流れ制御アルゴリズムおよび圧力制御を用いた流量測定の結果を示すグラフの図である。
【図57】いくつかの実施例に従った、内部バイパス制限器を含むマイクロ流体素子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
以下の説明は、本明細書中に記載の技術によって提供される有用かつ新規かつ非自明な主題のうちのいくつかを示すよう意図されている。このような説明は限定的なものでなく、むしろ本明細書中に記載のクロマトグラフィーシステムの多くの構成、実施形態および使用法ならびにそれらの構成要素および使用法を例示するよう意図されている。図面に示される構成要素の厳密な形状、サイズおよび他の寸法は、本開示内容から、装置の意図される使用法、当業者によって選択される所望の形状因子および他の因子に依存して異なり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の装置、方法およびシステムは、流体クロマトグラフィーシステムで用いられ得る。流体クロマトグラフィーシステムは、ガスクロマトグラフィーシステム、液体クロマトグラフィー(LC)システム、超臨界流体(SCF)クロマトグラフィーシステム、およびこれらの例示的な流体クロマトグラフィーシステムの組合せを含むよう意図されているが、これらに限定されない。いくつかの特定的な実施例が特にガスクロマトグラフィー(GC)システムを参照して以下に説明されるが、同様の原理および構成はGCシステム以外の流体クロマトグラフィーシステムでも用いられ得る。
【0045】
本明細書中に開示され、かつ図面に示されるシステムでは、「検出器」という一般用語がしばしば用いられる。検出器は、フレームイオン化検出器(FID)、炎光光度検出器(FPD)、熱伝導度検出器(TCD)、熱イオン検出器(TID)、電子捕獲検出器(ECD)、原子発光検出器(AED)、光イオン化検出器(PI)、電気化学的検出器、蛍光検出器、UV/可視検出器、赤外検出器、核磁気共鳴検出器、またはGC、LCもしくはSCFとともに一般に用いられる他の検出器などの、一般に用いられるGC、LCまたはSCF検出器のいずれかであり得るが、これらに限定されない。また、検出器は、質量分析計、たとえば放電イオン化検出器(DID)もしくは硫黄化学発光検出器(SCD)などの外部検出器、または、たとえばキャピラリーカラムを用いるガスクロマトグラフィー素子もしくは他の流体クロマトグラフィー素子にハイフネーテッドされ得る他の好適な検出器および素子であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、「マイクロ流体素子」、「スイッチ」、または「マイクロ流体素子」は本明細書中で同じ意味で用いられる。マイクロ流体素子は多くの異なる状況で説明され、典型的に、少なくとも1つの入口ポートから1つ以上の出口ポートに流体の流れを与えるように構成される。マイクロ流体素子はまた、マイクロ流体素子の出口ポートに流体連結され得る2つ以上の素子に流体の流れを与えるように構成され得る。マイクロ流体素子は、たとえば、組み立てられると1つ以上の内部マイクロ流体チャネルを提供する複数の層を含む積層ウェハなどの、多くの異なる形態を採り得る。「流体連結」とは、本明細書中では、流体が2つ以上の構成要素同士の間を流れることができる状況を指すために用いられる。構成要素同士の間の流体の流れは、たとえば構成要素同士の間の弁を切換えるか開けることによって可能になり得るが、構成要素同士の間の流体の流れは、たとえば弁を切換えるか閉じることによって制限され得る。2つ以上の構成要素が流体連結されている場合、構成要素同士の間を流体が常に流れているとは限らない。むしろ、システムの他の構成要素およびそれらの動作状態に依存して、流体は、ある一定の構成および配置のもとで2つの流体連結された構成要素同士の間を流れ得る。たとえば、2つの構成要素同士の間に配置された切換弁の場合、2つの構成要素は、構成要素同士の間に流体が流れていなくても弁が閉鎖位置にあるときは流体連結され続け得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の流れ制御アルゴリズムおよび方法は、制限器、カラム、移送ライン、またはたとえばキャピラリ管類などの他の管類に適用可能である。たとえば、制限器、カラム、移送ラインなどの直径および長さはアルゴリズムを用いて決定され得、たとえば制限器などの特定の素子に向けられた本明細書中の説明は、たとえばカラムなどのシステムの他の素子にも適用可能である。
【0048】
いくつかの実施例では、本明細書中に記載の構成要素は、管類、取付具、フェルール、または実質的な流体密封を提供可能であり2つ以上の選択された構成要素同士の間に流体流路を提供可能な他の素子によって互いに接続され得る。そのような付加的な構成要素の長さ、直径および他のパラメータは実験に基づいて、または本明細書中に記載の長さおよび直径の計算を用いて求められ得る。
【0049】
いくつかの実施例では、本明細書中に記載の装置およびシステムは、多くの異なる種類のクロマトグラフィーシステムで用いられ得る。これらの装置はハートカットまたは溶剤ダンプシステムのいずれか一方で用いられるように構成されることが望ましい。ハートカットシステムでは、試料内の選択されたスピーシーズまたはピークが2つ以上の異なるカラムまたは検出器に送られ得る。ハートカットシステムは、2つのピークの低解像度が達成される場合に特に有利であり得る。それらのピークは、異なる分離媒体または機構を有する異なるカラムに送られ得る。たとえば、長さ30メートルで内径が0.25または0.32mmの第1の従来のカラムを用いて第1の分離段階が提供され得る。次に、カラム流出物の選択された部分が、第1のカラム流出物のその部分の中の成分を分離するために用いられ得る異なる固定相、長さ、内径または他の特徴を有する第2のカラムに送られ得る。溶剤ダンプシステムでは、検出器に送られる溶剤の量が減少し得る。たとえば、質量分析計などの検出器に送られる溶剤体積を減少させることが望ましいことがある。まず粗分離が、たとえば大内径/低解像度カラムである第1のカラムで実行され得る。対象成分のみが、より高解像度カラムであり得る第2のカラムに送られ得る。圧力差に対処するために、1つ以上の制限器がシステム内で用いられ得る。たとえば、大内径カラム全体にわたっては圧力差がほとんどなく、オリフィスを横切る逆流を導くのに必要な圧力によって、第1のカラム内の流れに大きな減少が生じ得る。この影響を減らすために、制限器を用いてシステム内の全体圧力を増大させることができる。制限器の使用およびそれらの圧力に対する影響は、本明細書中により詳細に説明される。
【0050】
いくつかの実施例では、本明細書中に記載の装置、システムおよび方法はマイクロ流体素子を含み得る。マイクロ流体素子は、カラムからの流れを分割するよう、流れを2つ以上の出口ポート同士の間で切換えるよう、または流体の流れを他のポートにもしくは他の方向に与えるように構成され得る。マイクロ流体素子のいくつかの特定的な構成が以下に説明される。これらの構成は例示的なものに過ぎず、他の好適な構成も可能である。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のマイクロ流体素子は、外部ガス供給源または圧力調整器からの差圧を用いてガス流を導くように動作する。これらの差圧を用いて、2つ以上の出口ポート同士の間のクロマトグラフィーカラムから溶出するガス流の方向を変えることができる。このような動作は従来の機械ベースの弁機構に対する利点を有し得、たとえば、入力および出力流量が乱されないので保持時間が全くまたはほとんど変化せず、素子を低熱質量構成要素で製造できるので冷点が形成される可能性を回避するか減少させることができ、可動部がなく(または1つ以上の弁が存在する場合にはほとんど可動部がなく)、スイッチ内のチャンネルの内部体積を最小にできるのでピーク分散および吸着効果を減少させることができ、反応時間が非常に速いので狭い切欠部を出力同士の間で切り替えることによって最新のキャピラリーカラムとともに使用でき、内面が全体的に不活性であるため、および/または内面を全体に不活性化して不安定検体とともに用いることが可能であるなどの利点がある。システムの厳密な構成に依存して、他の利点も可能である。
【0051】
いくつかの実施例に従って、本明細書中に記載の流量制御は単独で、または1つ以上のマイクロ流体素子と組合せて用いられ得る。たとえば、マイクロ流体素子は、1つ以上のマイクロチャネルを含むハートカット付属品またはモジュールとして構成され得る。他の構成では、マイクロ流体素子は、複数の検出器同士の間のカラムからの流出物を分割するように構成され得る。マイクロ流体素子の他の構成が当業者によって認識されるであろう。いくつかの例示的な構成が本明細書中に説明される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の装置を用いて、クロマトグラフィー分離に用いられ得るか、たとえば気相反応速度論を研究するために用いられ得る、たとえばガスまたは液体混合物などの流体の混合物が提供され得る。たとえば、本明細書中に記載の流れ制御アルゴリズムを用いて、2つ以上の異なるガスが所望の量で提供され得る。ガスは、マイクロ流体素子(または他の素子)内で混合され得る。たとえば、第1のガスがマイクロ流体素子の第1のポートに導入され得、第2のガスがマイクロ流体素子の第2のポートに導入され得る。ガスは、たとえば内部バッファ、充填チャンバまたは他の所望の内部チャネルを用いて混合され得、反応チャンバ、検出器または他の好適な素子に出力され得る。本開示内容から、本明細書中に記載のマイクロ流体素子をこれらおよび他の使用法に用いることは当業者の能力の範囲内であろう。
【0053】
圧力平衡システムは、1950年代後半にICI Chemicals社のDavid Deans博士によって初めて開発され、いくつかの重要なGC用途における一般的な選択肢であり続けている。たとえば、パーキンエルマー社(マサチューセッツ州ウォルサム)から市販されているPreVent、Protect、MS VentおよびOzone Precursorシステムはすべて、この技術を利用している。これらの技術は十分効果的であるため、多くの場合、特定の分析を行なう他の方法はないか、またはこれらの使用によってスループットや結果が大きく向上する。
【0054】
既存の圧力平衡システムにはいくつかの欠点がある。カラムを流れるキャリアガスの流量を直接的または明確に制御することが不可能である。多くのユーザは、カラム内のキャリアガス制御のために、入口圧力よりも流量を特定することを好む。多くの場合、これによってより安定したクロマトグラフィー性能が与えられる。また、検出器内へのキャリアガスの流量を制御することも不可能である。多くのGC検出器の反応はガス流量に対して極めて敏感であるため、ユーザは、基線変動を最小化して安定した検体反応を提供するために流れ制御を用いることを望むであろう。印加されるキャリアガス圧は設定が非常に困難でもあり得、ユーザ側の多大な理解が必要とされる。本明細書中に記載のいくつかの実施形態では、カラムを流れるキャリアガス流量を制御または特定することによってカラムを流れる流量制御が可能になる。
【0055】
本明細書中に記載のマイクロ流体素子の理解を容易にするため、図1Aおよび図1Bを参照して、マイクロ流体素子の一般化動作原理が説明される。図1Aを参照して、カラムからの流出物は、位置または点52において矢印50の方向にT字型片に入る。たとえば電磁弁、MEMS素子または他の好適な素子である切換弁65が、第1の位置に切換えられるか、少なくともある程度開くように調節されることによって、ガス源67からのキャリアガスが点54でT字型片に流れ込むことができる。ガス源67によって与えられるガス圧は、点52のガス圧よりも若干高い圧力である。点54の圧力は点52および56の圧力よりも若干高いため、キャリアガスは点54から点52および56に向かって流れ、カラムからの流出物を点56に向けて押すか導く。流出物は点58において、図1Aの矢印57によって示されるような方向にT字型片から出る。さらに、カラムからの流出物を実質的に有しないキャリアガスは、ポート60においてT字型片から出る。素子の中心にあるニードル弁62は、ガスが流されていないガスラインを流れるキャリアガスの滴下流を維持することによって試料が点56からそれらの領域に拡散しないように動作する。
【0056】
いくつかの実施例では、T字型片内のガス流が変化または逆流するように切換弁65が第2の位置に切換えられ得る。図1Bを参照して、切換弁65は、ガスが圧力源67から点56に流れて点56の圧力が点52および54の圧力よりも高くなるように作動される。カラムからの流出物は点60において、図1Bの矢印59によって示されるような方向にT字型片から出る。さらに、カラムからの流出物を実質的に有しないキャリアガスは、ポート58においてT字型片から出る。図1Aおよび図1Bに示されるシステムは、点58および60の圧力が実質的に同一であるとき、たとえば圧力がこれらの点において平衡化されているときに動作するように設計される。以下に詳細に説明されるように、本明細書中に開示されるマイクロ流体素子はこのような圧力平衡システムにおいて用いられ、カラムから溶出するスピーシーズの流れを、検出器、通気孔、カラム、または他の構成要素に流体連結された所望のポートに導き得る。
【0057】
マイクロ流体素子が切換弁を含むいくつかの実施例では、切換弁は、流路が接続されているときに流路同士の間を流体が流れることができ、流路が切断されているときに流体の流れが制限されるように、2つ以上の流体流路を接続(または切断)するように動作し得る。例示的な切換弁は、たとえば流れ制御弁、電磁弁またはPhotovac社の弁、MEMS素子、下方のチャネルを開閉するように動作する積層膜を有する金属積層構造物、電気機械弁、空気圧操作される膜弁、モータ操作されるニードル弁、および1つの状態で流れを制限し、別の状態で流れを可能にし得る他の好適な素子を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、切換弁は本明細書中に開示されるマイクロ流体素子に一体化され得るが、他の実施例では、切換弁はマイクロ流体素子とは別個であり得る。たとえば、マイクロ流体素子がオーブン内に配置される場合、切換弁はオーブンの外部に配置され、好適な供給ラインおよび/または管類を通じてマイクロ流体素子に結合され得る。このような外部配置は、高いオーブン温度が切換弁の性能に悪影響を及ぼし得る場合に特に望ましいことがある。いくつかの実施例では、切換弁は、切換弁とマイクロ流体素子との間に存在し得る管類の長さを短くできるように、オーブンの外面に表面実装され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のマイクロ流体素子は、ウェハ、積層物、または入口から2つ以上の可能性のある出口に1つ以上の流体流路を提供し得る他の好適に構成された素子を含み得るか、これらの素子として構成され得る。素子は、素子に流体連結されたカラム、検出器または他の部分内のスピーシーズの流れ制御を提供するように構成され得る。たとえば、マイクロ流体素子は、システム内のガスの切換えまたは選択的な流れを提供するための1つ以上のマイクロチャネルを有して構成され得る。例示的なこのようなシステムおよび素子が以下により詳細に説明される。このようなマイクロ流体素子は、別個のカラムを流れるキャリアガス流も制御できるので、全体的な装置およびエンドユーザによる機器の使用が簡略化され得る。これらおよび他の特徴および構成が、ガスクロマトグラフィーシステムを用いて、いくつかの特定的な実施形態を参照して例示的に説明される。
【0059】
典型的なキャピラリーカラム装置では、ガスは、インジェクタから単にカラム自身に流れ込む以外の方法でも流れる。これらの経路は、スプリッタ、セプタムパージおよび時折の軽微な漏れを含むが、これらに限定されない。これらの他の経路のため、インジェクタ内へのキャリアガスの流量を調整しても、通常は、カラム自体を流れる実際の流量を制御することにはならない。この困難を回避するため、大部分のGCは実際にはキャリアガス圧を制御し、流量を明確に制御しない。式1に示されるハーゲン・ポアズイユ関係に従って設定流量を供給するための圧力が加えられる。
【0060】
【数4】

【0061】
式中、Foは出口の流量であり、dcはカラムの内径であり、Lはカラム長さであり、ηは設定温度におけるキャリアガスの粘度であり、piは入口のガス圧であり、poは出口のガス圧である。上記式を用いて、ユーザはユーザインターフェイスにカラム形状の詳細(dおよびL)、キャリアガスの種類(粘度を正確に計算できるように)、ならびにカラム出口圧力(po−MSシステムについては、通常は周囲圧力または真空に設定される)を入力し得る。GCシステムはカラム温度(粘度を計算できるように)を分かっているため、必要流量を供給するのに必要な入口圧力(pi)を計算可能である。
【0062】
システムが設定されて実行されると、唯一の可変ポテンシャルは、オーブン温度プログラム時にカラム温度が上昇すると変化するガス粘度である。式1を用いて、システムは入口圧力piを調整して、設定キャリアガス流量を維持し得る。この方法は、多くの成功したGC設計におけるキャリアガス流量制御に幅広く採用されてきたが、圧力平衡システムで使用するには完全に正確ではないため、キャリアガス制御のための代替的な方法が望まれる。
【0063】
いくつかの実施例において、たとえば単一カラムバックフラッシュ構成またはハートカット構成として構成されたシステムである典型的な圧力平衡システムが図2に示される。システム100は、方向115に分流を与え得るインジェクタ110を含む。カラム120はインジェクタ110に流体連結されて、ガス源105からのキャリアガス、およびインジェクタ110を通じてシステムに導入されたいずれの試料も受取る。圧力平衡システムは、その中をガスが流れている少なくとも2つの能動構成要素、カラム120および制限器130を有する。
【0064】
カラム120を流れる流量は一般的に、インジェクタの入口圧力(p1)と、中間点接合部125における中間点圧力の出口圧力(p2)との関数であるが、制限器130を通って検出器135に入る流量は、中間点p2の入口圧力および検出器の出口圧力(po)の出口圧力によって制御される。これら2つの流量は同一であるとは限らず(実際多くの用途において異なることが望ましい)、独立したガス源105および122を用いて圧力p1およびp2の組合せを変えることによって独立して制御され得る。
【0065】
カラム120および制限器130を流れるキャリアガスの流量は、やはり式1を用いて計算され得る−カラム120および制限器130は、入口および出口圧力が異なるに過ぎない。カラム120のみの内部のキャリアガス流れ制御を提供するためには、中間点圧力が出口圧力として用いられ得る。
【0066】
いくつかの実施例では、図3Aを参照して、Clarus GCのグラフィカルユーザインターフェイススクリーン310が示される。現在、カラム出口圧は周囲(真空が選択されなければ暗黙に定義される)、または真空(たとえばMSに対して)にしか設定することができない。圧力平衡システムに適合されたカラムの流量制御を可能にするためには、たとえば図3Bのスクリーン320または図3Cのスクリーン330に示されるように、ユーザが出口圧力を入力できることが望ましい。このような変更によって、ユーザが圧力平衡システムにおけるGCカラムを流れる流量を明確に制御して、昇温クロマトグラフィー時にカラムを通る一定のガス流を供給することができる。
【0067】
いくつかの実施例では、カラムおよび制限器の両方の内部の流れ制御が、本明細書中に記載の装置および方法を用いて実行され得る。制限器内の流れを制御するためには、その寸法およびその出口圧力(周囲または真空)が既知であるか、測定可能でなければならない。残りの情報は、カラムについての情報と同一である。流量は、制限器入口圧力(たとえば中間点圧力)を式1に従って設定することによって制御され得る。いくつかの実施例では、たとえばパーキンエルマー社のPreVentシステムで用いられているようなPPC圧力モジュールは、単なる受動圧調整器としてではなく、キャリア供給源(流量制御アルゴリズムを用いる)として用いられ得る。中間点PPCモジュールが構成されると、たとえばカラム入口圧力などのインジェクタ圧力は、式1における出口圧力用のPPC中間点圧力設定を用いて設定流量を供給するように設定される。このプロセス全体は、図3Cに示されるようにカラム出口圧力が中間点圧力に動的連結されている場合、オーブン温度プログラムを自動的に追跡可能である。この方法によって、カラムおよび制限器の両方を流れるガス流を独立して制御して、昇温クロマトグラフィー時のカラムを流れる一定のガス流、および検出器への一定のガス流を供給することができる。2つのガス流を独立して明確に制御することによって、より使いやすい装置および圧力平衡システムの動作も提供される。
【0068】
いくつかの実施例に従って、流れ制御が提供し得る改良点のいくつかを考察するために、圧力平衡化のための構成が図4Aに示される。中間点圧力の調整は、カラムおよび制限器内のそれぞれの流量に反対に影響を及ぼす。中間点圧力を増大させるとカラムを流れる流量は減少するが、制限器を流れる流量は増大する。この圧力を減少させると、両方の流れに反対の影響を及ぼす。図4Aを参照して、点415において分流を有するインジェクタ410と、インジェクタ410に流体連結されたカラム420と、制限器430への流路にある中間点接合部425と、自身が検出器435に流体連結された制限器430とを含む圧力平衡システム400が示される。中間点圧力が非常に低く設定されてp2がp1よりも小さいため、カラムを流れる流量Fcは制限器を流れる流量Ftよりも高くなるので、図4Aに示すように中間点接合部425からガス流は発生しない。代わりに、カラム420から流れるガスが流量Fmで中間点供給ライン422を逆流することによって、試料が損失し、空気圧システムが汚染される可能性が生じる。
【0069】
いくつかの実施例では、図4Bを参照して、カラムFcおよび制限器Ftを流れる流量が同一である場合、中間点接合部425への、または中間点接合部425からの流れは実質的になく、たとえばFmはほぼゼロである。図4Bに概略的に示される状況下では、中間点圧力は自然中間点圧力と称され、システムは圧力平衡化されているとみなされ得る。この圧力平衡状態は、圧力設定の基線として作用し得る。
【0070】
いくつかの実施例では、図4Cを参照して、カラムを流れる流量Fcが制限器を流れる流量Ftよりも低い場合、たとえば中間点接合部425の流量Fmを増大させることによって、ガスが中間点調整器421を通って中間点接合部425に流れ込み、制限器430および検出器435に入るカラム流出物と混合する。中間点圧力が漸進的に増大するにつれて、カラムからのガスの流量は、中間点圧力がインジェクタ圧力と同一である(図4D参照)点に到達するまで、順調に減少する。カラムを流れる流量Fcはゼロになり、いずれのクロマトグラフィーも停止する。このような状況下では、検出器435内へのガス流は依然として中間点調整器421によってのみ維持されている。
【0071】
いくつかの実施例では、図4Eを参照して、中間点圧力がインジェクタの圧力よりも上昇してp2がp1よりも大きくなると、カラムを流れるガス流Fcは逆流し、分割点415でシステムから出る。この状況はクロマトグラフィー分離には特に有利ではないが、バックフラッシュに用いられ得る。たとえば、カラムからの溶出が困難な重い1つまたは複数の試料を、対象スピーシーズがカラムから溶出した後にバックフラッシュを用いてカラムから駆り立てることができる。
【0072】
いくつかの実施例に従って、システムの自然中間点は、本明細書中に開示される方法および構成で有利に用いられ得る。本明細書中に説明されるように、自然中間点は、試料損失と中間点希釈との間の閾値を表すため、それを求めることによって本明細書中に記載の方法および装置の全体精度を向上させることができる。自然中間点を求めるため、図5に示すようなシステムが用いられ得る。システム500は、カラム520に流体連結されたインジェクタ510と、キャリアガス源505とを含む。カラム520と制限器530との間に中間点接合部525がある。システム500はさらに、各々が制御部545に電気的に結合された圧力変換器540、切換弁550、および比例弁555を含む。通常動作時、圧力変換器540は、ガスがシステム内を流れる際のガス圧を監視し得る。内部制御部545はこの情報を用いて、圧力変換器540の上流に配置された比例弁555を調整する。このように、閉ループ制御によって圧力が設定値に維持され得る。
【0073】
自然中間点圧力を確定するために、切換弁550は、中間点接合部525内への、または中間点接合部525からの流れがないように(漏れがないと仮定して)作動される。こうして、カラム520および制限器530を流れる流量は実質的に同一となる。ガスがカラム520を通って制限器530を流れると、中間点圧力は最終的に安定した値−自然中間点圧力に達する。カラム520を通る流れは式1を用いて計算され得るか、表から推定され得る。流れを調節する必要がある場合、入口圧力p1が変更され得、中間点圧力に安定化する時間が与えられ、所望の流量が得られるまで計算が繰返される。
【0074】
正確な流量が確定されて対応の自然中間点圧力が分かると、切換弁550が作動されてガスの流れが可能になり得、中間点圧力が自然中間点圧力よりも1または2psiだけ高く設定され得る。このように設定圧力を自然圧力よりも若干増大させることによって中間点調整器からガスが確実に流れ、試料が供給ライン552に拡散することが防止される。また、オーブン温度が変化する際に圧力平衡を維持するように作用する。差圧制御を用いた従来の方法における圧力平衡システムの設定は長く手間のかかる作業であり、多くの可能性のあるユーザのやる気をなくさせたり、設定およびその後の作業に困難を生じさせる傾向にある。
【0075】
いくつかの実施形態では、カラムおよび制限器内の流量を明確に制御することによって、システム設定が大幅に簡略化され、全体的な精度および正確度が向上し得る。システムは、制限器を流れる流量がカラムを流れる流量よりも低くなって正確に動作するように構成され得る。システムユーザは分析法にそれぞれの流量を入力するだけでよく、差異の流れ制御によってカラムと制限器との間の正確な平衡が保たれ、カラムを通って検出器に流れ込むガスの一定流量が与えられ得る。この方法は、上述のような単一カラムバックフラッシュの単純な状況で用いられ得るが、図6および図7に示されるようなハートカットおよび分割とともにも用いられ得る。ハートカット構成が示される図6を参照して、システム600は、供給ライン607を通じて圧力調整器605に流体連結されたインジェクタ610を含む。インジェクタ610は、供給ライン617を通じてカラム620に流体連結される。カラム620は供給ライン622を通じてマイクロ流体素子630に流体連結される。マイクロ流体素子630は供給ライン637を通じて中間点圧力調整器635に流体連結される。検出器650および660は、それぞれ制限器640および645を通じてマイクロ流体素子630に流体連結される。制限器640および645は望ましくは、制限器640を流れる流量Fr1が制限器650を流れる流量Fr2の流量と実質的に同一であるように適合されるか、または実質的に同一である。所望の流量を提供するための制限器長さおよび直径を求める方法が本明細書中に説明される。
【0076】
いくつかの実施例では、図7を参照して、圧力調整スプリッタシステムが示される。システム700は、供給ライン707を通じて圧力調整器705に流体連結されたインジェクタ710を含む。インジェクタ710は、供給ライン717を通じてカラム720に流体連結される。カラム720は、供給ライン722および737を通じて、接合部またはスプリット727において中間点圧力調整器735に流体連結される。検出器750および760は、接合部またはスプリット727を介して、およびそれぞれ抵抗器740および745を介して、中間点圧力調整器735に流体連結される。システム700の動作時、制限器740および745の一方について流量が設定され得、他方の制限器は表示および維持され得るが、もう1つの制限器と独立して制御されない。カラムおよび制限器の両方の実際の流量は、計算用の式1を用いて求められ得る。カラムの長さおよびその直径は、カラム供給者によって与えられるカラム仕様に基づいてユーザによって入力され得る。式1より、カラム流量はカラム直径に四次依存性を有する。したがって、カラムの直径の誤差は、図8Aのグラフに予測的に示されるように大きな誤差に繋がり得る。図8Aに示されるように、カラム内径のたった2%の誤差、たとえば内径250ミクロンのカラムに対して5ミクロンの誤差であっても、適用流量に約8%の不正確さをもたらすのに十分である。カラム長さに関して、カラム長さと流れとの間には、図8Bに示されるような相互関係が存在する。この場合、カラム長さにおける2%の誤差、たとえば30メートルのカラムに対する約60センチメートルの誤差によって、計算流量に約2%の誤差が生まれる。しかしこの誤差によって、流量仮定にさらなる誤差がもたらされ得る。
【0077】
いくつかの実施例では、可能性のある不正確さに対する1つの解決策は、特定のカラムに適用され得る幾何学的因子(GF)の条件を考慮することである。GFは式2を用いて近似され得る。
【0078】
【数5】

【0079】
GFはいずれのカラムについても一定であり、単純な実験(供給者またはエンドユーザのいずれか一方による)によって単純に確定されなければならない。この測定は経験的なものであるため、所与のカラムの形状について全く仮定することなく当該カラムに直接的に適用される。式1に幾何学的因子を挿入すると、式3が得られる。
【0080】
【数6】

【0081】
流量を計算するためには、粘度を計算するための入口(pi)および出口(po)圧力ならびに温度が入力されるか、既知でなければならない。典型的な構成では、これらのパラメータは制御部によって既知であるか、ユーザによって入力される。
【0082】
いくつかの実施例に従って、制限器の流量制御の状況はカラムの流量制御の状況と同様である。制限器は一般的にカラムよりもはるかに短いため、その長さの測定がはるかに容易である。内径は通常はるかに小さいため、その測定における小さな誤差は制限器を通過するガスの流量にはるかに大きな影響を与える。したがって、制限器についてGFを適用することは、カラムについての適用と同じくらい望ましい。制限器の考慮され得るもう1つの局面は、その一部(またはMSの場合はその大部分)が検出器の本体の中にあることである。したがって、制限器の異なる部分は異なる温度に晒されるため、式1および3は完全に正確ではない場合がある。この局面は、式4に示されるように、TurboMatrix熱脱着システムについての直列接続移送ラインおよびカラムを流れる流量を計算するために採られる方策を用いて対処することができ、これはたとえば、共通譲渡人に譲渡された米国特許第7,219,532号および第7,468,095号に記載されており、これら文献の各々の全開示内容は、全文が引用によって本明細書に援用される。
【0083】
【数7】

【0084】
式(4)中、Foは制限器出口の流量(その場所における温度および圧力における)であり、GFcはカラム幾何学的因子であり、GFrは制限器幾何学的因子であり、dcはカラム内径であり、Lcは(GFcを求めるための)カラム長さであり、drは移送ライン内径であり、Lrは(GFrを求めるための)移送ラインの長さであり、ηcはカラム内のキャリアガスの粘度であり、ηrは制限器内のキャリアガスの粘度であり、Tcはカラムの絶対温度であり、Trは移送ラインの絶対温度であり、piはカラム入口におけるキャリアガスの絶対圧力であり、poは制限器出口におけるキャリアガスの絶対圧力である。式3の代わりに式4用いて、流量をより正確に計算することができる。
【0085】
いくつかの実施例では、選択された内径を有する制限器の長さは、特定形状のカラムを流れる所望の流量に基づいて計算され得る。そのような寸法は、少なくとも部分的に、システム内に望まれる温度およびガス圧に依存し得る。制限器を有するシステムの1つの構成が図9Aに示される。図9Aのシステムは、第1のカラム910とキャリアガス源902とに流体連結された分割インジェクタ905を含む。マイクロ流体素子920は第1のカラム910に流体連結され、第1のカラム910から溶出するスピーシーズを所望の構成要素に導くように構成される。たとえば、カラム流出物は、マイクロ流体素子920および切換弁945を用いて、制限器925を通じて第1の検出器930に導かれるか、第2のカラム935および第2の検出器940に導かれ得る。
【0086】
いくつかの実施例では、システム内の圧力をさらに平衡化するために制限器925の寸法および形状が選択され得る。典型的な制限器は、特定の印加圧力および温度下でカラムを流れるガスの流量と実質的に同一の流量を与えるように計算された長さに切断され得る、既知の内径の不活性化溶融シリカ管類片を含む。制限器の長さは試行錯誤によって求められ得、制限器の長さは正確な流量が達成されるまで漸進的に短くされる。しかし、この処理は面倒であり、適切な制限器長さを求めるためにかなりの時間がかかり得る。制限器の長さを徐々に減少させることは、カラムおよび制限器を流れる流量に対する検出器温度の下流効果も考慮していない場合があり、これは実際の流量に重大な影響を及ぼしてシステム内の圧力不均衡をもたらし得る。たとえばFID(周囲圧力)およびMS検出器(真空圧力)などの複数の検出器が存在して異なる圧力で用いられる場合、圧力不均衡はより大きくなり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、制限器の形状および長さは、オーブンおよび検出器温度ならびに検出器動作圧力に基づいて、選択されたカラム内のガス流に一致または実質的に一致するように計算され得る。現行の計算では、制限器が均一の長さおよび温度であると仮定される。流量は式(5)に従って計算され得る。
【0088】
【数8】

【0089】
式中、Faは周囲温度および圧力における制限器出口流量であり、drは制限器の内径であり、Taは周囲絶対温度であり、piは制限器入口におけるキャリアガス絶対圧力であり、porは制限器出口におけるキャリアガス絶対圧力であり、Lrは制限器の長さであり、paは周囲絶対圧力であり、ηは制限器温度におけるキャリアガスの粘度であり、Trは制限器絶対温度である。
【0090】
カラム内の所望のガス流と適合する制限器長さを求めるために、式(5)に基づいた2つの連立方程式を用いてLrを解くことができ、これによって式(6)が与えられる。
【0091】
【数9】

【0092】
式中、dcはカラムの内径であり、Lcはカラムの長さである。式6はたとえば、温度ならびに印加される入口および出口圧力がカラムと制限器との間で同一である場合に用いられ得る。
【0093】
2つ以上の検出器、または1つの検出器および通気孔、または異なる圧力で動作されるいずれかの2つの素子が存在する場合は、式(5)を用いて式7を得ることができる。
【0094】
【数10】

【0095】
式中、pocはカラム出口におけるキャリアガス絶対圧力である。
いくつかの実施形態では、カラムおよび制限器の両方を流れるガス流量に対する検出器温度の影響を考慮するため、式(8a)に示される関係が用いられ得る。
【0096】
【数11】

【0097】
式(8a)中、Faはカラム出口の流量であり、dcはカラム内径であり、dtは移送ライン(または制限器)内径であり、Lcはカラム長さであり、Ltは移送ライン(または制限器)長さであり、ηcはカラム内のキャリアガスの粘度であり、ηtは移送ライン(または制限器)内のキャリアガスの粘度であり、Tcはカラムの絶対温度であり、Ttは移送ライン(または制限器)の絶対温度であり、Taは絶対周囲温度であり、piは入口におけるキャリアガスの絶対圧力であり、poは出口におけるキャリアガスの絶対圧力であり、paは絶対周囲圧力である。式(8a)は、式8(b)に示されるように、異なる内径、長さまたは温度を有する任意の数の直列接続カラムまたは制限器について一般化され得る。
【0098】
【数12】

【0099】
均一の直径のカラムおよび制限器はGCオーブン内にあり、検出器とは異なる温度にある。式(8a)は制限器およびカラム用に修正されて、それぞれ制限器およびカラム用の式(9)および(10)が与えられ得る。
【0100】
【数13】

【0101】
式(9)中、Lr1はオーブン内の制限器の長さであり、Lr2は検出器内の制限器の長さであり、ηr1はオーブン温度におけるキャリアガスの粘度であり、ηr2は検出器温度におけるキャリアガスの粘度であり、Tr1はオーブンの絶対温度であり、Tr2は検出器の絶対温度である。
【0102】
【数14】

【0103】
式(10)中、Lc1はオーブン内の制限器の長さであり、Lc2は検出器内の制限器の長さであり、ηc1はオーブン温度におけるキャリアガスの粘度であり、ηc2は検出器温度におけるキャリアガスの粘度であり、Tc1はオーブンの絶対温度であり、Tc2は検出器の絶対温度である。
【0104】
いくつかの実施例では、式(10)を式(11)のように並び替えることによって、カラムを流れる必要流量を供給するためにカラムに印加する圧力が計算され得る。
【0105】
【数15】

【0106】
特定的な形状、温度および出口圧力におけるカラムについての入口圧力が計算されると、制限器の長さは、式(12)に示されるように式(9)の並び替えられた形式を用いて計算され得る。
【0107】
【数16】

【0108】
式(12)を用いて、システムを平衡化するための所望の流量を提供し得る既知の内径の制限器の長さが計算され得る。特に、他方の検出器の検出器長さ、温度および圧力を考慮した、別のチャネル内の流量を平衡化するための既知の内径の制限器の長さが求められ得る。使用時、アルゴリズムは、ユーザが所望の流量を入力でき、特定のカラムパラメータおよび温度下でそのような所望の流量を提供するための制限器の長さおよび直径がユーザインターフェイスに表示されてシステムの使用が容易になるように、ソフトウェアで実現され得る。
【0109】
本明細書中に記載のいくつかの実施形態は、クロマトグラフィーシステム内の付加的なカラムの使用を含む。付加的なカラムは制限器の代わりに用いられ、ハートカットが所望される場合に典型的に存在する。溶融シリカ制限器とは異なり、ユーザは、マイクロ流体素子全体の圧力平衡を達成するためにカラムの片を切断する可能性は低い。カラム同士が同一の長さおよび直径を有するように選択されたとしても、2つの異なる検出器同士の間の温度および圧力差によって圧力平衡が乱され得る。カラム同士が異なる形状または長さを有する場合、圧力不平衡はより大きくなり得る。
【0110】
複数のカラムが存在する場合の1つの可能性のある解決策は、図9Bに概略的に示されるように、最も高流量のカラムを有するインライン制限器を用いることである。図9Bのシステムは、マイクロ流体素子920を通じて第1のカラム910に流体連結された第2のカラム955を含む。第1の検出器965と第2のカラム955との間には制限器960がある。図9Bに示されるシステムは、検出器975に流体連結された第3のカラム970も含む。この構成では、カラム955はカラム910および970よりも高流量を有する。図9Bに示される構成では、考慮すべき限定区域は3つある。すなわち、オーブン温度の第2のカラム955、オーブン温度の制限器960、および第1の検出器965の温度の制限器960である。式(13)に示されるように、これら3つの区域を含むように式(9)が修正され得る。
【0111】
【数17】

【0112】
式中、Lc3はカラム955の長さであり、ηc3はカラム955内のキャリアガスの粘度であり、Tc3はカラム955の絶対温度である。所望の流量を供給するための制限器の長さを計算するために、式(13)並び替えて式(14)が与えられ得る。
【0113】
【数18】

【0114】
使用時、式(11)を用いて、制限器を有しないカラムを流れる流量が計算され得る。次に式(14)を用いて、その流量と適合するように制限器長さが計算され得る。また、図示していないが、カラム955は制限器960と第1の検出器965との間に配置され得、式(13)および(14)はこの再配置に基づいて修正され得る。
【0115】
いくつかの実施例では、所望の流量を提供するために、制限器内径(または他の管類もしくはカラムの内径)が選択され得る。本明細書中に説明されるようなマイクロ流体素子を用いる多数のGC技術にとって、カラムおよび管の内径を正確に知ることが重要である。実際は、製造業者による記述が正確であると仮定され、採用される。ほとんどの関係式は、内径の4乗に基づく計算を含むため、これは重大な誤差に繋がり得る。これらの場合、真の内径が既知であることが望ましいであろう。式(15)を用いて流量が近似され得る。
【0116】
【数19】

【0117】
式中、Faは周囲温度および圧力におけるカラム出口の流量であり、dcはカラムの内径であり、Lはカラムの長さであり、piはカラム入口におけるキャリアガス圧であり、poは出口圧力であり、paは周囲圧力であり、Tcはカラム温度であり、Taは周囲温度であり、ηはカラム温度におけるキャリアガスの粘度である。周囲温度のカラムまたは管については、式(15)を並び替えて式(16)が与えられ得る。
【0118】
【数20】

【0119】
所与のカラムまたは管については、大括弧内の項は一定であるため、式(16)は式(17)として表され得る。
【0120】
【数21】

【0121】
式中、aおよびbは定数である。したがって、カラムまたは管の一端にある範囲の圧力を印加し、他端で流量を測定することによって、定数bの値が最小二乗統計適合によって求められ得る。bの値が確定すると、式(18)から内径が計算され得る。
【0122】
【数22】

【0123】
以下の実施例1に具体的に示されるように、たとえばカラム、制限器などの管類の直径は、これらの式を用いて正確に求めることができる。本方法はソフトウェアで実現され、たとえばカラム、内部管類、制限器などの管類のさまざまな直径が求められ得る較正プロトコルを提供して、システムの精度を向上させ得る。較正はクロマトグラフィーシステムによって実行可能であってもよいし、本明細書中に説明されるようにユーザが管類の直径を求めて、計算した直径をシステムに入力して流量の制御または調節に用いてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、より使いやすいシステムを提供するために、上記式は、ユーザがたとえば長さおよび内径、オーブン温度および検出器温度などのカラムパラメータを入力でき、システムが所望の分離動作を達成するために必要な特定圧力を正確に予測できるように、ソフトウェアで実現され得る。ソフトウェアは、入力されたパラメータに基づいて流量、検出器長さおよび/または直径を計算し得、ユーザは次に、計算された長さおよび直径を有する制限器をシステムの所望の位置に挿入し得る。
【0125】
図10を参照して、本明細書中に説明されるようなマイクロ流体素子であって、カラム流出物を2つ以上の検出器に分割するように構成され得る分割素子を含む例示的なシステムが示される。システム1000は、供給ライン1007を通じて圧力調整器1005に流体連結されたインジェクタ1010を含む。インジェクタ1010は、インジェクタ1010に導入された試料の一部が、供給ライン1017を通じてインジェクタ1010に流体連結されたカラム1020に送られ、残りの試料が方向1015に沿って通過して排出されるか別のカラムに送られ得るような分流を有し得る。カラム1020は供給ライン1022を通じて分割素子1030に流体連結され、供給ライン1022は、分割素子1030上の入口ポートを通じてカラム1020を分割素子1030に流体連結する。分割素子1030は、供給ライン1027を通じて中間点圧力調整器1025にも流体連結される。図10に概略的に示されるように、分割素子1030は、カラム1020からの流出物の流れを3つの異なる流路に分割するように構成される。分割素子1030は、それぞれ制限器1035、1040および1045を通じて検出器1050、1055および1060に流体連結される。システム1000の動作時、カラム流出物は分割素子1030の入力ポートに入り、中間点圧力調整器1025から供給されるキャリアガスと混合する。流出物はその後、分割素子の複数の出口ポートを通じて検出器1050、1055および1060に出て行く。図10には3つの検出器が示されているが、より少ない数、たとえば2つの検出器、またはより多い数、たとえば4つ以上の検出器のいずれか一方が用いられてもよい。制限器1035、1040および1045を平衡化する必要はない。制限器は、本明細書中に記載の形態などのいくつかの形態を取り得る。適切な長さおよび内径の制限器を選択することによって、カラム流出物は、取付けられた検出器同士の間で広範な割合で分割され得る。システム1000内の中間点圧力調整器1025を用いることによって、いくつかの有利な特徴が得られる。中間点ガス供給源を有することによって、各検出器内への流量を各検出器の必要に応じて増大させることができるので、検出器流量に柔軟性が与えられる。ナローボアカラムを流れるキャリアガス流量が低いと、マイクロ流体素子から流れ出る流量がより低くなり得、使用可能な分割割合の範囲が制限され得る。中間点調整器は付加的なガス量を与えてこれらの課題を克服し得、所望であれば非常に狭いナローボアカラムの使用を可能にする。カラムバックフラッシュも実行され得る。中間点調整器はさらに、カラム交換時に能動MS検出器を保護する能力を提供する。
【0126】
いくつかの実施例では、マイクロ流体素子を含む本明細書中に記載のシステムは、多くの異なる構成で用いられ得る。たとえば、同一クロマトグラム上で選択検出器を同時に用いることが可能である。この特徴によって時間が節約され(1回の運転で済む)、異なるクロマトグラム同士の間の変動(特に保持時間)が無くなる。一例は、FIDおよびECDの両方を用いて同一クロマトグラム内の異なる成分を監視する、TO−14 US−EPA空気監視方法である。他の構成では、異なる量を同一種類の検出器に分割することによって、ダイナミックレンジの向上が達成され得る。検出器(たとえばFPD)の中にはダイナミックレンジが非常に制限されているものがあるため、1つの検出器で大きなピークを見て、他方の検出器で小さなピークを見れることが有用であり得る。本明細書中に記載のいくつかの実施例では、システム内のさまざまな点の流量を制御することによって単一カラムバックフラッシュが実行され得る。このプロセスは、検体の溶出後にカラムから重い試料滞留物を効率的に除去することによって、時間を節約して拡張温度プログラムを無くすことができる。二重カラムバックフラッシュも実行され得る。たとえば、システム1000内に示される制限器のうちの1つ(または1つ以上)をGCカラムに置き換えてもよい。この構成によって、第2のカラムでクロマトグラフィーが継続している間に第1のカラムをバックフラッシュさせることが可能になる。中間点検出器は、2つのカラム同士の間のピークの通過を監視して設定を助けるように構成され得る。二重カラムバックフラッシュは、バックフラッシュがクロマトグラフィー動作と同時に発生するので時間を大幅に節約できるという点で、単一カラムバックフラッシュに対して大きな利点を有する。MSまたはECDなどの空気に敏感な検出器の場合、このシステムによって、カラムの交換中またはインジェクタの稼働中にこれらの検出器を検出器温度に、たとえば高温に能動的に維持することができる。この特徴は時間を大幅に節約してシステムに対する負荷を減らすため、ダウンタイムが最小化される。また、第1の(または1つよりも多いカラム)がバックフラッシュされている間に1つ以上の他のカラムでクロマトグラフィーが進行し得るような3つ以上のカラムバックフラッシュも実行され得る。
【0127】
いくつかの実施例では、本明細書中に記載のシステムは極性調整に用いられ得る。この技術では、2つのカラム内の成分のそれぞれの滞留時間が、中間点圧力を変えることによって修正され得る。この構成は、組み合わされたカラムの有効極性を変更するように作用し、カラムを選択的に微変更または微調整して困難な分離を達成することができる。
【0128】
いくつかの実施例に従って、マイクロ流体素子の1つの構成が図11に示される。この断面図では、マイクロ流体素子はウェハ1100として構成され、内部マイクロチャネル1110の異なる部分で可変径を有する内部マイクロチャネル1110を含む。たとえば、領域1125におけるマイクロチャネルの直径は約300から約700ミクロン、たとえば直径約400から約600ミクロンであり、領域1130におけるマイクロチャネルの直径は約75ミクロンから約300ミクロン、たとえば直径約100ミクロンから約200ミクロンであり、領域1135におけるマイクロチャネルの直径は約300から約700ミクロン、たとえば直径約400から約600ミクロンであり、領域1140におけるマイクロチャネルの直径は約75ミクロンから約300ミクロン、たとえば直径約100ミクロンから約200ミクロンであり、領域1145におけるマイクロチャネルの直径は約300から約700ミクロン、たとえば直径約400から約600ミクロンであり得る。いくつかの実施例では、マイクロチャネルの狭窄部、たとえば領域1140の直径は、隣接するチャネル部の直径よりも少なくとも2倍小さく、たとえば3倍、4倍または5倍小さく、制限された流体の流れを提供し得る。ウェハ1100はさらに、ウェハを、システムの動作時にウェハ1100を所定の位置に保持するウェハホルダまたは他の素子に結合し得る、開口またはアパーチャ1115および1120を含む。
【0129】
いくつかの実施例では、マイクロ流体素子は、カラムとマイクロ流体素子の下流のさまざまな他の構成要素との間の流体連結を提供し得る、たとえば入口ポートおよび出口ポートなどのさまざまなポートを含み得る。そのようなウェハ1200の1つの構成が図12に示される。この構成では、ポートはマイクロチャネル1205内に直列に配置される。ポート1210はカラムに流体連結される。ウェハ1200を流れるガス流は、全体的な方向としてポート1210からポート1220、1230、1240および1250に向かう。中間点圧力調整器がポート1260においてウェハ1200に流体連結され得る。動作時、ポート1210を通じて入るカラムからの流出物は、ポート1260を通じて入る中間点調整器からのキャリアガスと混合してから、ポート1220、1230、1240および最終的に1250の順に流れる。ウェハ1200はアパーチャ1265および1270を通じてホルダに連結され得る。厳密な構成に依存して、システム内に存在するさまざまな制限器はさまざまな異なる動作状態を取り得る。ウェハ1200を用いた制限器装置の一例が表1に示される。
【0130】
【表1】

【0131】
制限器は流量の増加順に配置され、最速流量はポート1250の流量である。マイクロチャネルは、出口ポートが単一マイクロチャネル流路内にあるように配置され得る。いずれか特定のポートに栓をするか閉じるため、ポートはブランキングナット、取付具、フェルールまたは流体密封を提供し得る他の好適な素子を用いて蓋を被せられるか、そうでなければ塞がれ得る。ポートが閉じられると、ポート内に死容積が全くまたはほとんど作り出されず、ピーク損失を防止し得るかテーリングをもたらし得ることが望ましい。図12に示されるような単一ウェハを用いることによって、異なる検出器の組合せの各々についてウェハを交換せずに1−4個の検出器のいずれかを用いることができる。
【0132】
いくつかの実施例に従って、さまざまなポート同士の間の流路の特定の長さは、所望の効果に依存して異なり得る。異なる流路構成を有するウェハの1つの構成が図13に示される。ウェハ1300はマイクロチャネル1305と、カラム(図示せず)に流体連結されたポート1310と、中間点圧力調整器(図示せず)に流体連結されたポート1360と、各々が制限器および/または検出器に流体連結され得るポート1320、1330、1340および1350とを含む。マイクロチャネル1305の部分1315は延長されて流路の長さを増大させ、中間点調整器ポート1360およびカラム流出物ポート1310からのキャリアガスさらなる混合を可能にする。このように長さが伸びることによって、たとえば、試料滞留時間を延長させ、カラム流出物とキャリアガスとをより均質化して混合するための付加的な時間が与えられ、これを用いて、本明細書中により詳細に説明されるように、検体ピークの拡散による広がりを回避または減少させることができる。また、ポート1320、1330、1340および1350のうちのいずれか2つ以上同士の間の流路の特定の長さは、他の長さとは異なり得る。このような異なる長さが存在する場合、制限器流量を変更して、異なる検出器に与えられるガスの流量を平衡化することが望ましいことがある。開口部1365および1370は、たとえば、マイクロ流体素子を、マイクロ流体素子を所望の位置または所望の向きに保持するように設計されたホルダまたは他の素子に取付けるために用いられ得る。
【0133】
本開示内容から、ウェハのポートの厳密な数は異なり得、たとえば図12および図13に示される例示的な構成よりも少ないポートまたは多いポートであり得ることが当業者に認識されるであろう。例示的な構成が図14A−図15Bに示される。図14Aを参照して、ウェハは、たとえば各々が制限器および/または検出器に流体連結され得る中間点圧力調整器ポート1425ならびにポート1410および1415に流体連結された、カラム流出物ポート1405を含む。アパーチャ1430および1435は、ウェハをホルダまたはマイクロ流体素子の他の構造に取付けるために用いられ得る。2つのポート1410と1415との間の流路の長さは異なり得、所望であれば、異なるポートを流れる流量を実質的に同一にするために特定の制限器流量が変更され得る。図14Bは、ポート1410と1415との間の流路の長さが延長された構成を示す。このような延長は、たとえば、取付具をさまざまなポートに連結するための空間を増やすため、装置の全体設定を容易にするため、および滞留時間の延長や他の所望の性能を提供するために望ましい場合がある。
【0134】
図14Aおよび図14Bには2つのポート1410および1415が示されているが、ポート1415を省略して単一のポートにしてもよい。代替的に、1つ以上の付加的なポートを設けて、そのような付加的なポートと制限器および/または検出器との間を流体連結してもよい。付加的なポートを用いた2つの構成が図15Aおよび図15Bに示される。図15Aを参照して、ウェハは、中間点圧力調整器ポート1510およびポート1520、1525、1530、1535、1540および1545に流体連結されたカラム流出物ポート1505を含む。アパーチャ1550および1555は、ウェハをホルダまたはマイクロ流体素子の他の部分に取付けるために用いられ得る。図15Bは図15Aと同様の配置を示すが、ポート1535の位置が移動している。
【0135】
いくつかの実施例では、マイクロチャネルの厳密な断面形状および角度は異なり得る。いくつかの実施例では、マイクロチャネルの断面形状は円形または実質的に円形であるが、他の実施例では楕円形または他の非円形形状であり得る。同様に、2つ以上のポート同士の間のマイクロチャネルの角度は異なり得、非連続的な流路が存在する場合、流路の方向の変化によって形成される角度は、たとえばL字型面または曲面などの鋭角または緩やかな角であり得る。たとえば、鋭角によって流れが乱れ得る流体クロマトグラフィーシステムでは、そのような乱れを回避または減少させるために角度がL字型または緩やかな曲がり角として構成され得る。
【0136】
いくつかの実施例では、本明細書中に記載のマイクロ流体素子は多くの異なる構成で用いられ得る。図16−図25はいくつかの例示的な構成を示す。図16を参照して、たとえばバックフラッシュ用にMS Ventモードで用いられ得る単一検出器構成が示される。システム1600は、供給ライン1607を通じて圧力調整器1605に流体連結されたインジェクタ1610を含む。インジェクタ1610は供給ライン1612を通じてカラム1620にも流体連結される。カラム1620は供給ライン1617を通じてマイクロ流体素子1625に流体連結される。マイクロ流体素子1625は、ポート1633を通じて中間点圧力調整器1630に流体連結されたカラム流出物ポート1627を含む。ガスは、供給ライン1632を通じて中間点圧力調整器1630からポート1633に与えられる。マイクロ流体素子1625はポート1635、1640、1645および1650を含む。図16の実施形態では、ポート1635、1640および1645は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート1650は制限器1655を通じて検出器1660に流体連結される。動作時、試料がインジェクタ1610に導入され、試料内のスピーシーズがカラム1620を用いて分離され得る。スピーシーズはカラム1620から溶出し、マイクロ流体素子1625を通じて検出器1660に与えられる。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム1600内の全体的なガス流を示す。所望であれば、ポート1635、1640または1645のいずれかをスニッファまたは他の素子に連結させて、マイクロ流体素子1625のマイクロチャネル内のガスおよび/またはガス内のスピーシーズのインラインサンプリングが提供され得る。さらに、中間点圧力調整器によって与えられるガスの流れをカラムへの流量よりも増大させることによって、システム1600をバックフラッシュまたは排出する、たとえばMS Ventモードで動作させることができる。
【0137】
いくつかの実施例に従って、図17を参照して、二重検出器構成が示される。システム1700は、供給ライン1707を通じて圧力調整器1705に流体連結されたインジェクタ1710を含む。インジェクタ1710は供給ライン1712を通じてカラム1720にも流体連結される。カラム1720は供給ライン1717を通じてマイクロ流体素子1725に流体連結される。マイクロ流体素子1725は、ポート1733を通じて中間点圧力調整器1730に流体連結されたカラム流出物ポート1727を含む。ガスは、供給ライン1732を通じて中間点圧力調整器1730からポート1733に与えられる。マイクロ流体素子1725はポート1735、1740、1745および1750を含む。図17の実施形態では、ポート1735および1740は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート1745および1750は、それぞれ制限器1765および1755を通じて検出器1770および1760に流体連結される。動作時、試料がインジェクタ1710に導入され、試料内のスピーシーズがカラム1720を用いて分離され得る。スピーシーズはカラム1720から溶出し、マイクロ流体素子1725を通じて検出器1760および1770の一方または両方に与えられる。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム1700内の全体的なガス流を示す。検出器1760および1770は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、供給ライン内の好適な弁の調節を含めることによって、および/またはたとえば切換弁を用いてマイクロ流体素子1725の1つ以上のポートを閉鎖位置にくるように作動させることによって、異なるピークが異なる検出器に与えられ得る。
【0138】
いくつかの実施例に従って、図18を参照して、3検出器構成が示される。システム1800は、供給ライン1807を通じて圧力調整器1805に流体連結されたインジェクタ1810を含む。インジェクタ1810は供給ライン1812を通じてカラム1820にも流体連結される。カラム1820は供給ライン1822を通じてマイクロ流体素子1825に流体連結される。マイクロ流体素子1825は、ポート1833を通じて中間点圧力調整器1830に流体連結されたカラム流出物ポート1827を含む。ガスは、供給ライン1832を通じて中間点圧力調整器1830からポート1833に与えられる。マイクロ流体素子1825はポート1835、1840、1845および1850を含む。図18の実施形態では、ポート1835は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート1840、1845および1850は、それぞれ制限器1875、1865および1855を通じて検出器1880、1870および1860に流体連結される。動作時、試料がインジェクタ1810に導入され、試料内のスピーシーズがカラム1820を用いて分離され得る。スピーシーズはカラム1820から溶出し、マイクロ流体素子1825を通じて検出器1860、1870および1880の1つ以上に与えられる。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム1800内の全体的なガス流を示す。検出器1860、1870および1880は同一であってもよいし、異なっていてもよいし、また検出器1860、1870および1880のうちの2つが同一であってもよい。また、供給ライン内の好適な弁の調節を含めることによって、および/またはたとえば切換弁を用いてマイクロ流体素子1825の1つ以上のポートを閉鎖位置にくるように作動させることによって、異なるピークが異なる検出器に与えられ得る。
【0139】
いくつかの実施例に従って、図19を参照して、4つの検出器を含むシステム1900が示される。システム1900は、供給ライン1907を通じて圧力調整器1905に流体連結されたインジェクタ1910を含む。インジェクタ1910は供給ライン1912を通じてカラム1920にも流体連結される。カラム1920は供給ライン1922を通じてマイクロ流体素子1925に流体連結される。マイクロ流体素子1925は、ポート1933を通じて中間点圧力調整器1930に流体連結されたカラム流出物ポート1927を含む。ガスは、供給ライン1932を通じて中間点圧力調整器1930からポート1933に与えられる。マイクロ流体素子1925はポート1935、1940、1945および1950を含む。図19の実施形態では、ポート1935、1940、1945および1950は、それぞれ制限器1985、1975、1965および1955を通じて検出器1990、1980、1970および1960に流体連結される。動作時、試料がインジェクタ1910に導入され、試料内のスピーシーズがカラム1920を用いて分離され得る。スピーシーズはカラム1920から溶出し、マイクロ流体素子1925を通じて検出器1960、1970、1980および1990の1つ以上に与えられる。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム1900内の全体的なガス流を示す。検出器1960、1970、1980および1990は同一であってもよいし、異なっていてもよいし、また検出器1960、1970、1980および1990のうちのいずれか2つまたは3つが同一であってもよい。また、供給ライン内の好適な弁の調節を含めることによって、および/またはたとえば切換弁を用いてマイクロ流体素子1925の1つ以上のポートを閉鎖位置にくるように作動させることによって、異なるピークが異なる検出器に与えられ得る。
【0140】
いくつかの実施例に従って、図20を参照して、単一検出器2070およびスニッファポート2060を含むシステム2000が示される。システム2000は、供給ライン2007を通じて圧力調整器2005に流体連結されたインジェクタ2010を含む。インジェクタ2010は供給ライン2012を通じてカラム2020にも流体連結される。カラム2020は供給ライン2022を通じてマイクロ流体素子2025に流体連結される。マイクロ流体素子2025は、ポート2033を通じて中間点圧力調整器2030に流体連結されたカラム流出物ポート2027を含む。ガスは、供給ライン2032を通じて中間点圧力調整器2030からポート2033に与えられる。マイクロ流体素子2025はポート2035、2040、2045および2050を含む。図20の実施形態では、ポート2035および2040は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート2045は制限器2065を通じて検出器2070に流体連結される。ポート2050はスニッファポート2060に流体連結され、スニッファポート2060は、流出物内のスピーシーズのインラインサンプリングまたは監視に用いられ得るか、所望であれば制限器2055を通じて流路内のスピーシーズを引抜くことができるポートを一般的に提供する。動作時、試料がインジェクタ2010に導入され、試料内のスピーシーズがカラム2020を用いて分離され得る。スピーシーズはカラム2020から溶出し、マイクロ流体素子2025を通じて検出器2070およびスニッファポート2060の一方または両方に与えられる。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム2000内の全体的なガス流を示す。スニッファポート2060は典型的に、ユーザがポート2060からのサンプリングを所望するまで閉鎖位置にあり続け得る。供給ライン内の好適な弁調節および/またはスニッファポート2060の作動によって、所望どおりにスニッファポートを開けることができる。
【0141】
いくつかの実施例に従って、図21を参照して、MSシステムにおけるバックフラッシュまたは排気用に構成されたシステム2100が提供される。システム2100は図17に示されるシステムと同様であるが、バックフラッシュまたは排気を実行するためにさまざまなガスの流量が変えられる。図21を参照して、システム2100は、供給ライン2107を通じて圧力調整器2105に流体連結されたインジェクタ2110を含む。インジェクタ2110は供給ライン2112を通じてカラム2120にも流体連結される。カラム2120は供給ライン2122を通じてマイクロ流体素子2125に流体連結される。マイクロ流体素子2125は、ポート2133を通じて中間点圧力調整器2130に流体連結されたカラム流出物ポート2127を含む。ガスは、供給ライン2132を通じて中間点圧力調整器2130からポート2133に与えられる。マイクロ流体素子2125はポート2135、2140、2145および2150を含む。図21の実施形態では、ポート2135および2140は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート2145および2150は、それぞれ制限器2165および2155を通じて、それぞれ検出器2170および検出器2160に流体連結される。動作時、試料がインジェクタ2110に導入され、試料内のスピーシーズがカラム2120を用いて分離され得る。スピーシーズはカラム2120から溶出し、マイクロ流体素子2125を通じて検出器2160および2170の一方または両方に与えられる。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、バックフラッシュ構成におけるシステム2100内の全体的なガス流を示す。検出器2160および2170は同一であってもよいし、異なっていてもよい。バックフラッシュまたは排気モードでは、中間点圧力調整器2130からのガスの流量は圧力調整器2105からのガスの流量よりも大きく、たとえばp2はp1よりも大きい。このように流れが異なる結果、ガスがカラム2120を通じてフラッシュバックされ、たとえば出口2102を通じてシステムから排気され得る。MS検出器が存在する場合、この異なる流体の流れを用いて、システムがフラッシュされる間MS検出器をその動作温度に保つことができる。このような利点によって時間を大幅に節約することができる。
【0142】
いくつかの実施例に従って、図22を参照して、二重カラムバックフラッシュ構成が示される。システム2200は、供給ライン2207を通じて圧力調整器2205に流体連結されたインジェクタ2210を含む。インジェクタ2210は供給ライン2212を通じて第1のカラム2220にも流体連結される。第1のカラム2220は供給ライン2222を通じてマイクロ流体素子2225に流体連結される。マイクロ流体素子2225は、ポート2233を通じて中間点圧力調整器2230に流体連結されたカラム流出物ポート2227を含む。ガスは、供給ライン2232を通じて中間点圧力調整器2230からポート2233に与えられる。マイクロ流体素子2225はポート2235、2240、2245および2250を含む。図22の実施形態では、ポート2235、2240および2245は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート2250は第2のカラム2255に流体連結される。第2のカラム2255は検出器2260に流体連結される。動作時、試料がインジェクタ2210に導入され、試料内のスピーシーズがカラム2220を用いて分離され得る。スピーシーズは第1のカラム2220から溶出し、マイクロ流体素子2225を通じて第2のカラム2255に与えられる。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム2200内の全体的なガス流を示す。システム2200の構成によって、流出物がマイクロ流体素子2225に入ると、第1のカラム2220のバックフラッシュが可能になる。圧力p2を圧力p1よりも増大させて、たとえば中間点圧力調整器2230からの流量を圧力調整器2205からの流量よりも大きくさせることによって、ガスが第1のカラム2220に流れ込んで第1のカラム2220をバックフラッシュさせ、さらにマイクロ流体素子2225からの流出物を、第2のカラム2225を用いた継続的または付加的な分離のために第2のカラム2255に送る。図22に示されるようなシステムを用いて、極性調整法も実行され得る。
【0143】
いくつかの実施例に従って、中間点監視検出器を有する二重カラムバックフラッシュ構成が図23に示される。システム2300は、供給ライン2307を通じて圧力調整器2305に流体連結されたインジェクタ2310を含む。インジェクタ2310は供給ライン2312を通じて第1のカラム2320にも流体連結される。第1のカラム2320は供給ライン2322を通じてマイクロ流体素子2325に流体連結される。マイクロ流体素子2325は、ポート2333を通じて中間点圧力調整器2330に流体連結されたカラム流出物ポート2327を含む。ガスは、供給ライン2332を通じて中間点圧力調整器2330からポート2333に与えられる。マイクロ流体素子2325はポート2335、2340、2345および2350を含む。図23の実施形態では、ポート2335および2340は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート2350は第2のカラム2355に流体連結される。第2のカラム2355は検出器2360に流体連結される。ポート2345は制限器2365を通じて検出器2370に流体連結される。動作時、試料がインジェクタ2310に導入され、試料内のスピーシーズが第1のカラム2320を用いて分離され得る。スピーシーズは第1のカラム2320から溶出し、マイクロ流体素子2325を通じて第2のカラム2355に与えられる。また、スピーシーズは検出器2370を用いて検出され得る。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム2300内の全体的なガス流を示す。システム2300の構成によって、流出物がマイクロ流体素子2325に入ると、第1のカラム2320のバックフラッシュが可能になる。圧力p2を圧力p1よりも増大させることによって、ガスが第1のカラム2320に流れ込んで第1のカラム2320をバックフラッシュさせ、さらにマイクロ流体素子2325からの流出物を、第2のカラム2355を用いた継続的または付加的な分離のために第2のカラム2355に送る。流出物は、さらなる分離を伴わずに検出器2370にも与えられ得る。図23に示されるようなシステムを用いて、極性調整法も実行され得る。
【0144】
いくつかの実施例に従って、3カラムバックフラッシュ構成が図24に示される。システム2400は、供給ライン2407を通じて圧力調整器2405に流体連結されたインジェクタ2410を含む。インジェクタ2410は供給ライン2412を通じて第1のカラム2420にも流体連結される。第1のカラム2420は、供給ライン2422を通じてマイクロ流体素子2425に流体連結される。マイクロ流体素子2425は、ポート2433を通じて中間点圧力調整器2430に流体連結されたカラム流出物ポート2427を含む。ガスは、供給ライン2432を通じて中間点圧力調整器2430からポート2433に与えられる。マイクロ流体素子2425はポート2435、2440、2445および2450を含む。図24の実施形態では、ポート2435および2340は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート2450は第2のカラム2455に流体連結される。第2のカラム2455は検出器2460に流体連結される。ポート2445は第3のカラム2465に流体連結され、第3のカラム2465は検出器2470に流体連結される。動作時、試料がインジェクタ2410に導入され、試料内のスピーシーズが第1のカラム2420を用いて分離され得る。スピーシーズは第1のカラム2420から溶出し、マイクロ流体素子2425を通じて第2のカラム2455および第3のカラム2465に与えられる。また、スピーシーズは検出器2460および2470を用いて検出され得る。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム2400内の全体的なガス流を示す。システム2400の構成によって、流出物がマイクロ流体素子2425に入ると、第1のカラム2420のバックフラッシュが可能になる。圧力p2を圧力p1よりも増大させることによって、ガスが第1のカラム2420に流れ込んで第1のカラム2420をバックフラッシュさせ、さらにマイクロ流体素子2425からの流出物を、第2のカラム2455および第3のカラム2465を用いた継続的または付加的な分離のために第2のカラム2455および第3のカラム2465に送る。図24に示されるようなシステムを用いて、極性調整法も実行され得る。図示していないが、図24のシステムは、ポート2435および2440の一方に流体連結された検出器を含み得る。
【0145】
いくつかの実施例では、図25を参照して、インジェクタの流れを2つ以上のカラムに分割するためのマイクロ流体素子を有するシステムが構成され得る。システム2500は、供給ライン2507を通じて圧力調整器2505に流体連結されたインジェクタ2510を含む。インジェクタ2510は供給ライン2512を通じてマイクロ流体素子2525にも流体連結される。マイクロ流体素子2525は、ポート2533を通じて中間点圧力調整器2530に流体連結されたポート2527を含む。ガスは、供給ライン2532を通じて中間点圧力調整器2530からポート2533に与えられる。マイクロ流体素子2525はポート2535、2540、2545および2550を含む。図25の実施形態では、ポート2535および2540は、ガスがその中に流れ込まないように閉じられるか塞がれる。ポート2550は第1のカラム2555に流体連結される。ポート2545は第2のカラム2565に流体連結される。カラム2555および2565は、それぞれ検出器2560および2570に連結される。動作時、試料がインジェクタ2510に導入され、試料内のスピーシーズが第1のカラム2555および第2のカラム2565を用いて分離され得る。カラム2555および2565内のカラム媒体は同一であってもよいし、異なっていてもよい。スピーシーズはカラムから溶出し、検出用にそれぞれの検出器に送られる。システム全体の流れ制御は本明細書中に記載されるように、または他の好適なアルゴリズムを用いて実行され得る。矢印は、システム2500内の全体的なガス流を示す。図示していないが、図25のシステムは、ポート2535および2540の一方に流体連結された検出器を含み得る。ポート2535またはポート2540と検出器との間に制限器または別のカラムが配置され得る。
【0146】
いくつかの実施例では、上述のシステムは中間点圧力調整器に連結されるように設計されたマイクロ流体素子を含むが、コスト重視であったり、カラム流出物にガスを加える必要がない用途もある。そのような用途が実行される場合、異なるマイクロ流体素子が用いられ得る。または代替的に、図11−図15Bに示されるウェハの中間点圧力ポートが、ガスがその中に入らないように塞がれるか蓋を被せられ得る。中間点圧力ポートが省略された1つのそのような構成が図26Aに示される。マイクロ流体素子2600は直列ポート2610、2615、2620、2625、2630および2635を含む。このマイクロ流体素子は、ポートのすべてまたはいくつかが用いられ得るという点で拡張性がある。アパーチャ2640および2645は、マイクロ流体素子2600をホルダまたは他の素子に取付けるために用いられ得る。ポート2615は、カラム流出物がポート2610でマイクロ流体素子に入る所よりも下流にある。ポート2615はガス入口に接続されるか、または蓋を被せられるか塞がれ得る。ポート2620、2625、2630および2635の各々は、カラム、制限器、検出器またはそれらのさまざまな組合せに流体連結され得る。3つ以下の連結が所望される場合、いずれか1つ以上のポートに蓋を被せるか栓をして、そのポートを遮断する。また、5個以下のポートを有するマイクロ流体素子も設計可能である。1つのそのような例が図26Bに示される。マイクロ流体素子2650はポート2655、2660、2665および2670を含む。アパーチャ2675および2680は、ウェハ2650をホルダまたは他の素子に取付けるために用いられ得る。ポート2660、2665および2670は、カラム、制限器、検出器およびそれらのさまざまな組合せに流体連結され得る。1つの代替例では、ポート2660はガス源に流体連結されてウェハ2650を通じて付加的なガスを提供し得る。また、マイクロ流体素子2600および2650と整合性のある他のポート数、構成および形状が、システム内に用いられる所望の検出器数またはシステムの特定の所望の構成に依存して用いられ得る。
【0147】
いくつかの実施例に従って、本明細書中に記載のマイクロ流体素子は、ウェハ内の1つ以上のマイクロチャネルを含む。マイクロチャネルの厳密な構成およびマイクロチャネルの製造方法は、ウェハとして用いるために選択された特定の材料に依存して異なり得る。たとえば、マイクロチャネルは、製造時に化学的研磨、レーザエッチング、ドリルによる穴をあけ、研削、または成形によってウェハ内に形成される。マイクロチャネルの幅および全体形状は異なり得る。1つの実施形態では、マイクロチャネルの幅は約10ミクロンから約750ミクロンであり得、たとえば50ミクロンから約500ミクロン、たとえば約10ミクロンから約100ミクロン、約100ミクロンから約300ミクロン、または約300ミクロンから約500ミクロンであり得る。マイクロチャネルの断面形状は円形、楕円形、三角形、または他の形状であり得る。本明細書中に説明されるように、マイクロチャネルは、マイクロチャネルを流れるガス流を促進するために、L字型などのように滑らかに移行していることが望まれるが、必須ではない。
【0148】
いくつかの実施例では、マイクロ流体素子は多層装置または複数構成要素装置で用いられ得る。たとえば、マイクロ流体素子は2つ以上の他の素子同士の間に挟まれて、実質的な流体密封を提供して漏れを防止し得る。密封をさらに高めるために1つ以上のガスケットまたはガスケット材料が用いられ得る。また、所望であれば、さらなる密封を提供するために素子のポートにガスケット、テープまたは他の材料が用いられ得る。いくつかの実施例では、マイクロ流体素子はそれ自体が多層構造、たとえば積層ウェハであり得、連続した層がマイクロチャネルを形成するために追加されている。マイクロ流体素子およびウェハを保持するために用いられる2枚のプレートの一例が図27に示される。ウェハ2710は、第1のプレート2720と第2のプレート2730との間に挟まれ得る。フェルールまたは取付具2740がアセンブリに取付けられて、マイクロ流体素子の使用時にマイクロ流体素子2710およびプレート2720、2730をともに保持し得る。
【0149】
マイクロ流体素子がウェハとして構成されるいくつかの実施例では、ウェハは、金属、プラスチック、複合物、ポリマー、鋼、ステンレス鋼、合金、およびマイクロチャネルを提供するために組合わせられ得る他の材料を含むさまざまな材料から製造され得る。たとえば、ウェハのさまざまな層は、積層または溶接されてウェハ内の全体的なマイクロチャネル構造を形成し得るステンレス鋼プレートを用いて製造され得る。いくつかの実施形態では、所望のチャネル部が自身にエッチング、ドリルで穴あけ、または刻まれたポリエーテルエーテルケトンまたは他のポリマーの層が互いにレーザ溶接または溶剤溶接されてウェハを提供し得る。ウェハ内で用いるために選択された特定の材料に拘らず、材料は、試料とウェハとの間に望ましくない化学反応が起こらないように不活性であることが望ましい。ウェハ材料が反応性であり得る実施例では、マイクロチャネル(またはウェハ全面)が、たとえばポリテトラフルオロエチレンまたは他の一般的な不活性材料などの不活性材料でコーティングされ得る。分析する試料が腐食性である場合、マイクロチャネル(またはウェハ全面)が、耐腐食性であり、かつ下部のウェハ構造を損傷から保護し得るイットリア、アルミナ、または他の材料でコーティングされ得る。コーティングが用いられる場合、そのコーティングは、試料測定の妨げに繋がり得る浸出、剥離または脱着を回避するよう十分厚く、十分頑強であらねばならない。また、マイクロ流体素内に用いられる材料は、クロマトグラフィーシステム分離において一般に見られ用いられるオーブンおよび温度などの高温オーブンで用いられる際に溶融したり何らかの実質的な熱変形を経験しないように耐熱性であることが望ましい。
【0150】
いくつかの実施例に従って、本明細書中に記載の装置およびシステムとともに用いられ得る制限器は、構成および設計が異なり得る。いくつかの実施例では、本明細書中に記載のマイクロ流体素子は、マイクロ流体素子の未使用領域へのガスおよび/または試料の流れを減少または制限するためのバイパス制限器または他の同等の素子を含み得る。そのような一例が図28に示される。マイクロ流体素子2800は複数のポート2810、2815、2820、2825、2830、および2835を含む。ポート2810はカラムからの流出物を与える。ポート2815は第1の検出器(任意にインライン制限器を有する)に流体連結され得る。ポート2820は切換ガス源に流体連結される。ポート2825はこの構成では用いられない。ポート2830は別の切換ガス源に流体連結される。ポート2835は第2の検出器(任意にインライン制限器を有する)に流体連結される。たとえば内部または外部接続である流体接続2850が、ポート2825をバイパスするためにポート2820と2830との間に設けられ得る。流体接続2850は外部ニードル弁を含み得るか、たとえば電磁弁などの切換弁である弁を含み得る。バイパス寸法は、ウェハの未使用部分にガス拡散が実質的に発生しないように調整され得る。動作時、十分なガス流がバイパス制限器に与えられて、特定の時点で使用されていない切換ガス入口チャネルに沿った試料拡散を防止する。流量は、GCカラムに入るガスの体積を回避または減少させるように低いことが望ましく、これによって試料が希釈され得る。
【0151】
いくつかの実施例では、マイクロチャネルを流れる流量を減らすために、切換ガスチャネルがその端の近くで狭くなるか、だんだん細くなるか、収縮されることによって、ガスが試料流路に入る際のガス速度が増大され得る。たとえば図28を参照して、マイクロチャネル部分2852および2854の接合部において、または接合部の近傍で、マイクロチャネル部分2854の直径はマイクロチャネル部分2852の直径よりも小さくてもよい。たとえば、マイクロチャネル部分2852が直径約600ミクロンである場合、マイクロチャネル部分2854は直径約300ミクロンにまで減少され得る。本開示内容から、50%の減少は必要でないことが当業者に認識されるであろう。他の百分率および割合を用いてもよい。たとえば、収縮されていないマイクロチャネル部分直径:収縮されたマイクロチャネル部分直径の割合は約5:1から約1.1:1であり得、たとえば4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1であり得、より特定的には約3:1から約1.1:1であり得、たとえば約2.5:1から約1.2:1または約2:1から約1.5:1であり得る。いくつかの実施例では、マイクロチャネルの全径は約400−500ミクロンであり得、マイクロチャネルの収縮部の直径は約100−200ミクロンであり得る。バイパス制限器チャネルの厳密な長さも約5mmから約30mmの例示的な長さの間で異なり得、より特定的には約10mmから約20mmであり、たとえば約11、12、13、14、15、16、17、18、19mm、またはこれらの特定的な長さのうちのいずれかの値である。
【0152】
いくつかの実施例に従って、本明細書中に記載のマイクロ流体素子の組立および使用において、マイクロ流体素子は典型的に複数構成要素装置内で挟まれるか当該装置に入れられて、GCシステム内の空気圧管類に結合され得るマイクロ流体素子を提供する。本明細書中に説明されるように、これらのシステムは多くの異なる構成で、多次元クロマトグラフィー分析において用いられ得る。さらに、マイクロ流体素子のいくつかの実施形態が本明細書中に説明されるが、本開示内容から、マイクロ流体素子はたとえば同一システム内の連続装着などによって互いに組合せて用いられ得ることが当業者に認識されるであろう。空気圧管類および他のコネクタを用いて、所望のポートへの好適な流体接続が提供され得る。また、たとえば1つのマイクロ流体素子内に、または2つ以上の異なるマイクロ流体素子同士の間に、交差チャネルが与えられ得る。インライン弁またはアクチュエータを用いて、所望のポートおよび/または所望のマイクロ流体素子へのガス流が制御され得る。たとえば、所望のポートまたは検出器への1つのスピーシーズの流れを可能にするように、電磁弁がたとえば約10−100Hz、たとえば約50Hzで調節され得る。特定のポートへのそのような流れを停止するためには、電磁弁が閉められるか切換えられ得る。これらの構成のいくつかが以下に詳細に説明される。
【0153】
いくつかの実施例では、図29を参照して、交差スイッチを有するマイクロ流体素子を含むシステムの一例が示される。交差スイッチの使用は、たとえばカラム交換、自動化選別、バックフラッシュ、大量注入、多次元クロマトグラフィーまたは多重化動作が所望される場合に特に望ましいことがある。たとえば、1つのMS検出器が2つの異なるカラムからの流出物を受取り得る。システム2900は、第1のカラム2905に流体連結されたインジェクタ(図示せず)を含む。第1のカラム2905は、たとえば空気圧管類などの流体流路を通じてマイクロ流体素子2910に流体連結される。システムは、各々がマイクロ流体素子2910に流体連結された複数の制限器2915、2920、2925および2930も含む。本明細書中に説明されるように、制限器はシステム内の圧力を平衡化するために用いられ得る。マイクロ流体素子2910は切換弁を含み、この切換弁は、それぞれのインジェクタ(図示せず)に流体連結され得る第1のカラム2905および第2のカラム2940からのスピーシーズが検出器2935または検出器2945に選択的に与えられ得るような交差路を提供するように動作する。たとえば、切換弁を調節することによって、システムの2つ以上の所望の構成要素同士の間に流体流路が与えられ、いずれか一方のカラムから溶出する異なるスピーシーズを一方または両方の検出器に与えることができる。また、本明細書中に説明されるように、試料の流れは、1つのカラムからの流出物が検出器2935および2945の両方に与えられるように分割され得る。システム内のさまざまな圧力は本明細書中に記載されるように、または他の好適な構成を用いて平衡化され得る。カラム同士の内径は同一であることが望ましいが、長さは異なっていてもよい。インジェクタは、たとえば高速インジェクタ、自動熱脱着インジェクタ、ならびにGC素子およびシステムとともに一般に用いられる他のインジェクタなどの、液体インジェクタまたは他の好適なインジェクタであり得る。検出器2935および2945は同一であってもよいし、異なっていてもよい。望ましくは、一方の検出器はMS検出器であり、他方の検出器はたとえば本明細書中に説明されるような異なる検出器であり得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、2つ以上のマイクロ流体素子が図29の例示的な実施形態で用いられ得る。たとえば、各々が少なくとも1つのカラムに流体連結される2つ以上のマイクロ流体素子同士の間に交差接続が設けられ得る。たとえば、第1のマイクロ流体素子が第1のカラム2905に流体連結され、第2のマイクロ流体素子が第2のカラム2940に流体連結され得る。切換弁を作動させて、マイクロ流体素子の特定のポートに所望の流れが与えられるか、マイクロ流体素子同士の間に流れが与えられ得る。
【0155】
図29の構成要素同士のさまざまな可能性のある接続が図30Aおよび図30Bにより詳細に示される。図30Aを参照して、マイクロ流体素子3015の切換弁は、カラム3010からの流出物が検出器3025に与えられるように構成され得る。インジェクタ3005はカラム3010に流体連結される。インライン制限器3020がマイクロ流体素子3015と検出器3025との間にある。インジェクタ3030は第2のカラム3035に試料を与える。マイクロ流体素子3015は第2のカラム3035にも流体連結される。マイクロ流体素子3015は制限器3040を通じて第2の検出器3045に流体連結される。図30Aに示される構成では、マイクロ流体素子3015は、カラム3005からの流出物が検出器3025に与えられ、カラム3030からの流出物が検出器3045に与えられるように構成される。図30Bに示される交差構成では、カラム3030からの流出物が検出器3025に与えられ、カラム3030からの流出物が検出器3045に与えられる。システムの動作時、マイクロ流体素子は、カラム3010からの一定のスピーシーズが検出器3025に与えられ、カラム3010からの他のスピーシーズが検出器3045に与えられ得るように、2つの異なる状態の間で動作され得る。カラム3035から出るスピーシーズについても、同様の動作が実行され得る。所望であれば、マイクロ流体素子を用いて異なるカラム3010、3035からの試料が同一検出器に与えられ得る。また、所望であれば、2個以上のマイクロ流体素子が図30のシステム内に用いられ得る。
【0156】
いくつかの実施例では、マイクロ流体素子3015は、カラム3010および3035の一方または両方をバックフラッシュさせるためにも用いられ得る。たとえば、圧力調整器p1およびp2からのガス流を圧力調整器p3からのガス流よりも低くすることによって、カラム3010および3035の両方が洗浄のためにバックフラッシュされ得る。代替的な構成では、一方のカラムのみをバックフラッシュさせて他方のカラムを用いて分離が継続し得るように、圧力p1またはp2のみがp3よりも低くされ得る。
【0157】
いくつかの実施例では、図30Aおよび図30Bに示される検出器のうちの1つが省略されるか、別のカラム、通気孔、もしくはクロマトグラフィーシステム内に一般に用いられる他の構成要素などに置き換えられ得る。1つの構成が図31に示される。システム3100は、第1のカラム3110に流体連結されたインジェクタ3105を含む。カラム3110はマイクロ流体素子3115に流体連結される。通気孔3125は制限器3120を通じてマイクロ流体素子3115に流体連結している。第2のインジェクタ3130は第2のカラム3135に流体連結される。第2のカラム3135はマイクロ流体素子3115に流体連結される。マイクロ流体素子3115は制限器3140を通じて検出器3145にも流体連結される。システム3100の動作時、マイクロ流体素子は、カラム3110およびカラム3135の両方からのカラム流出物を検出器3145に与えるために用いられ得る。カラムから溶出するスピーシーズが分析に所望されない場合、マイクロ流体素子を用いて、それらのスピーシーズを通気孔3125にそらすことができる。代替的な構成では、通気孔3125は、検出器3145を通常の動作温度および圧力に維持することを可能にしつつ、システムの排気を可能にする。この特徴は、検出器3145が質量分析計である場合に特に望ましい。
【0158】
いくつかの実施例に従って、ウェハとして構成され、交差流路を含むマイクロ流体素子の一例が図32A−図32Dに示される。全体的なウェハ構造は図32Aに示され、さまざまな層が拡大されて図32Bから図32Dに示される。図32Aを参照して、ウェハ3200は全体的に、1つ以上のマイクロチャネルを内部に有する多層基板3205を含む。本実施形態では、マイクロチャネルは6個のポート3210、3215、3220、3225、3230、および3235を有する。ポート3210は第1のカラムからの入口ポートであり得、ポート3230は第1の切換ガス用のポートであり得、ポート3220は第2の切換ガス用のポートであり得、ポート3235は第1の検出器への出口ポートであり得、ポート3225は第2のカラムからの入口ポートであり得、ポート3215は第2の検出器(または通気孔)への出口ポートであり得る。素子は、交差チャネル3242および3244、ならびに収縮チャネル3246および3247を含む。ウェハの製造時、異なる層が組合されてさまざまな流路が提供され得る。図32Bを参照して、1つの層によって交差路3242が提供され得、これによってポート3215と3230との間に流体連結が提供される。図32Bに示される層は、マイクロ流体素子の厳密な向きに依存して、積層物の底部層または積層物の外面上の層であり得る。別の層(図32D参照)によって、交差路3244ならびに収縮チャネル3246および3247が提供され得る。図32Dに示される層は、積層物の頂部層または図32Bに示される層と反対の積層物の外面上の層であり得、中間層が頂部層と底部層との間に配置されている。交差路3244はポート3220と3235との間の流体連結を提供し得る。収縮チャネル3246はポート3230と3235との間の流体連結を提供する。収縮チャネル3247はポート3215と3220との間の流体連結を提供する。中間層(図32C)は、マイクロチャネルを完成するため、およびマイクロ流体素子の所望のポート同士の間の流体の流れを提供するための好適な流路を含み得る。さまざまな層が積層されてウェハが提供される場合、流体流路は、クロマトグラフィーシステム内のスピーシーズの方向を制御ように形成され、用いられ得る。ウェハ全体は、アパーチャ3250および3255、ならびにたとえばねじ、ナット、ボルト、フェルールなどの好適な取付具を用いて試料ホルダまたは他の好適な装置に装着され得る。図32B−図32Dに示されるさまざまな層の各々は、それ自体が多層構造または積層物であり得るか、それぞれのマイクロチャネルが内部にエッチングされるかまたは他の方法で含まれる一般的に剛質のボディであり得る。流体密封を促進して、内部漏れが起こり得る可能性を回避または減少させるために、ガスケット、封止剤または他の材料が層同士の間に加えられ得る。
【0159】
いくつかの実施例では、本明細書中に説明されるように、マイクロ流体素子は、2つ以上の流体流路を連結または分離し得る1つ以上のアクチュエータまたは切換弁を含み得る。アクチュエータの位置によって2つ以上のポート同士の間の流体の流れが提供されるか、2つ以上のポート同士の間の流体の流れが防止される。マイクロ流体素子は、所望の周波数で開閉または調節されて2つ以上の流路同士を接続したり2つ以上の流路同士の間の流れを停止させ得る、低コストの電磁弁を含み得る。いくつかの実施例では、この電磁弁は完全開放位置と完全閉鎖位置との間で作動され得る。電磁弁が作動される周波数は、たとえばハートカットまたは溶剤ダンプなどの実行中のクロマトグラフィーの特定の種類、接続される特定のポート、および弁の開閉によって達成され得る圧力に対する所望の効果に依存し、例示的な周波数は、5−200Hz、10−100Hz、20−90Hz、30−80Hz、40−70Hz、45−65Hz、および50−60Hzを含むがこれらに限定されない。電磁弁は典型的にウェハの外部にあり、空気圧管類または他の好適な接続を通じて所望のポートに連結される。いくつかの実施例では、切換弁は、エンドユーザが接続する構成要素が少なくなるように、ウェハのポートに統合され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、同一または異なる2つ以上の直列接続切換弁が用いられ得る。たとえば、比例弁と一列に並んだ電磁弁がマイクロ流体素子のポートに流体連結され得る。システムは、システム内の圧力が確実に平衡化されるように、ガス流モニタ、圧力変換器または他の素子を含み得る。
【0161】
いくつかの実施例では、切換弁は制御部、プロセッサまたは他の好適な電気部品を用いて制御され得る。弁を調節するために用いられ得る1つの構成が図33Aおよび図33Bに示される。図33Aを参照して、関数発生器3310はトランジスタ駆動回路3320に電気的に結合され、所望の波形をトランジスタ駆動回路3320に与えるように動作する。トランジスタ駆動回路3320は電磁弁3330に電気的に結合され、関数発生器3310から与えられる特定の波形に対応する周波数で電磁弁3330を調節するように動作する。関数発生器3310によって与えられる波形は、たとえば所望の周期周波数に依存して、分離中に異なり得る。いくつかの実施例では、電磁弁3330が所与の出口に関して開放位置と閉鎖位置を周期的に繰り返すように、関数発生器3310から矩形波が与えられ得る。たとえば、3方向電磁弁が用いられる場合、当該弁は入口の流れを2つの異なる出口同士の間で切換えることによって、一方の出口関しては「オン」となり、他方の出口に関しては「オフ」となり得る。ウェハに流体連結された切換弁の特定の種類に依存して、たとえば三角形、正弦波形、鋸歯状などの他の波形も用いられ得る。いくつかの実施形態では、マイクロ流体素子の各ポートは、各ポートを流れる流体の流れを独立して制御できるように、制御部およびガス源に電気的に結合された独立して制御可能な電磁弁を含み得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示されるマイクロ流体素子は、2つのクロマトグラムの同時分析を可能にし得る。図36を参照して(図34および図35は後で説明される)、第1のカラム3615に流体連結された第1のインジェクタ3610を含むシステム3600が示される。システム3600は、第2のカラム3625に流体連結された第2のインジェクタ3620も含む。第1のカラム3615および第2のカラム3625の各々はマイクロ流体素子3630に流体連結される。マイクロ流体素子3630は制限器3635を通じて通気孔3640に流体連結される。マイクロ流体素子3640は制限器3645を通じてMS検出器3650にも流体連結される。MS検出器3650は、ガス源3655とマイクロ流体素子3630との間の電磁弁(図示せず)に電気的に結合される。MS検出器3650は中間点電磁弁調節を駆動して、マイクロ流体素子3630をMS検出器3650の走査と同期させる。第1のカラム3615および第2のカラム3625の両方から溶出するスピーシーズは、マイクロ流体素子3630を用いてMS検出器3650に導かれ得る。このような導きによって、2つのクロマトグラムの同時処理が可能になる。マイクロ流体素子3630の厳密な構成は、本明細書中に記載の例示的な構成のいずれか、または他の好適な構成であり得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、同時確認クロマトグラフィーを実行するように構成されたシステムが図37に示される。システム3700は、第1のカラム3715および第2のカラム3720の各々に流体連結されたインジェクタ3710を含む。インジェクタ3710は、試料の一部が第1のカラム3715に与えられ、一部が第2のカラム3720に与えられるように試料の流れを分割する。第1のカラム3715および第2のカラム3720の各々はマイクロ流体素子3725に流体連結される。マイクロ流体素子3725は、制限器3730を通じて通気孔3735に流体連結され、制限器3740を通じて検出器3745に流体連結される。カラム内の分離媒体とカラム内径とが同一である場合、各カラムによる分離は実質的に同一となる。スイッチ3725は、第1のカラム3715および第2のカラム3720の両方からのピークを、たとえばMS検出器などの検出器3745に与え得る。このシステムは、検出器3745が動作温度および圧力に維持されている間に、通気孔3735を通じて排気され得る。
【0164】
いくつかの実施例では、多次元分離および多重化検出用に構成された例示的なシステムが図38に示される。システム3800は、カラム3815およびキャリアガス源3805に流体連結されたインジェクタ3810を含む。カラム3815は、ガス源3822に連結された第1のマイクロ流体素子3820に流体連結される。第1のマイクロ流体素子3820は、第2のカラム3825および第2のマイクロ流体素子3830にも流体連結される。第1のマイクロ流体素子3815と第2のマイクロ流体素子3830との間には、制限器3827がある。第2のマイクロ流体素子3830はガス源3835に流体連結される。第2のマイクロ流体素子3830は通気孔3845および検出器3855にも流体連結される。ピークが第1のカラム3815から溶出して、第2のカラム3825に与えられ得るか、第1のマイクロ流体素子3815および第2の流体素子3830を用いて検出器3855または通気孔3845に与えられ得る。ピークは、それぞれ第1および第2のマイクロ流体素子3815および3830内に流体連結された特定のポートに基づいて所望の構成要素に選択的に与えられ得る。第1のマイクロ流体素子3820および第2の流体素子3830は同一である必要はないが、同一であってもよい。いくつかの実施例では、第1および第2のマイクロ流体素子は、1つまたは2つのカラムから溶出する試料の制御を高めるため、異なるように選択される。
【0165】
いくつかの実施形態では、図39を参照して、二重カラム、単一検出器構成が示される。システム3900は、それぞれガス源3905および3915に流体連結された第1のカラム3910および第2のカラム3920を含む。第1および第2のカラムの各々はマイクロ流体素子3925にも流体連結される。マイクロ流体素子3925は第1のバッファ3932および第2のバッファ3934を含む。バッファという用語は、場合によっては充填チャンバという用語と同じ意味で用いられる。第1のバッファ3932および第2のバッファ3934の各々は、カラムからのピークを保持するために用いられ得る。たとえば、スピーシーズはカラム3910から溶出して第1のバッファ3932に集められ得る。集められたスピーシーズは、ガス源3930および切換弁3927からの切換ガスを用いて、制限器3940を通じて検出器3945に導かれ得る。同時に、第2のカラム3920から溶出するスピーシーズは第2のバッファ3934に集められ得る。第1のバッファ3932からのスピーシーズが検出器3945に与えられると、第2のバッファ3934内の試料が今度は切換ガスを用いて検出器3945に導かれるように弁3927が切換えられ得る。バッファ3932、3934の容量は、カラム流出物流量および多重化周波数に対して適合しており、十分な体積であることが望ましい。たとえば、バッファの各々は約80マイクロリットルから約150マイクロリットル、たとえば約120マイクロリットルであり得、これは約10Hzの多重化周波数での毎分約1ミリリットルのカラム流出物速度とともに用いるのに好適である。本開示内容から、他の好適なカラム流出物速度および多重化周波数が当業者によって選択されるであろう。
【0166】
いくつかの実施例では、バッファを含むウェハが図40により詳細に示される。ウェハ4000は複数のポートおよび2つのバッファを含む。ポート4010は第1のバッファ4012および第2のポート4015に流体連結される。バッファ4012はポート4010とポート4020との間に一列に並んでいる。第2のバッファ4022はポート4025と4030との間に一列に並んでいる。バッファ4012および4022はマイクロチャネルの一部であり得るが、より大きな直径を有する。特に、バッファの直径および長さは、調節された切換弁の一周期中に印加中間点圧力でカラムから流れる流出物を収容するために十分な容量であるよう選択され得る。いくつかの実施例では、バッファの長さおよび幅は、バッファがウェハに嵌合されつつ所望の流体容量を提供するように選択され得る。動作時、ポート4010は切換ガス源に流体連結され得、ポート4015は第1のカラムに流体連結されて第1のカラムからの流出物を受取り得、ポート4020は検出器に流体連結されて検出器に試料を与え得、ポート4025は別のカラムに流体連結されて第2のカラムからの流出物を受取り得、ポート4030は別の切換ガス源に流体連結され得る。以下により詳細に説明されるように、バッファを流れ制御とともに用いて、ピークの拡散ブロードニングを減少させることができる。
【0167】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の装置は、流れ調節を与えるために用いられ得る。流れ調節によって、ピーク検出向上などの実質的な利点が与えられ得る。典型的なクロマトグラムが図41に示されており、ここでは反応が、検出器を流れる検体の流量(質量流量検出器について)または濃度(濃度依存検出器)に関係付けられている。流れ調節を図41に用いられるのと同一の試料に用いた場合、信号はほぼ図42に示される信号のように現れることになる。流れ調節によって、通常は緩やかな速度(たとえば1mL/min)で流れるカラム流出物がチャンバに流れ込むことが可能になる。たとえば、図43Aを参照して、カラム流出物4305はカラムから流体流路4310へ、そしてバッファまたは充填チャンバ4320に流れ込み得る。切換弁4315が第1の位置にあるとき、カラム流出物4305は充填チャンバ4320内に蓄積する傾向があるが、いくらかは充填チャンバを出て矢印4325の方向に検出器に与えられ得る。次に図43Bを参照して、切換弁4315が第2の位置に作動されると、調節ガスが矢印4330の方向に与えられる。調節ガスの流量はカラム流出物の流量よりも高い。この流量の大きな差異は、充填チャンバ4320内に存在し得るカラム流出物4305を単一の大きなパルスまたは塊で検出器に押し出すように作用する。このプロセスによって、図42に示されるような大きな狭いピークがもたらされる。特に、この調節は、図42に示されるように、カラム流出物の狭帯域を清潔な調節キャリアガスによって分離された検出器に導入する効果を有する。信号処理システムは、離散検出器読取値を流れ調節と同期させて、これらの読出値がパルスの頂点で取られるようにすることが望ましい。検出器読取値は、バックグラウンド信号を得るためにパルス同士の間でも取られ得る。任意に本明細書中に記載のマイクロ流体素子とともに流れ調節を用いることによって、いくつかの利点が得られる。たとえば、質量流量敏感検出器を用いる場合、検体の質量流量を50倍以上増大させることによって、より高い感度および検出限界の向上がもたらされる。濃度依存検出器を用いる場合は、調節によってカラム流出物が高速であるがほとんど希釈なしで検出器セルを通過することが可能になる。この結果、通常はメイクアップガスの使用に関連付けられる感度損失を伴わずに、比較的大きなセル検出器をナローボアカラムとともに用いることが可能になる。パルス間の検出器バックグラウンド信号を監視する能力は、検出器ドリフト効果を無くし、検出限界および分析安定性を向上させる助けとなり得る。従来の炎光光度検出器を有する調節器用いて、各パルスの後でフレームからの光学的発光の時間ゲートを可能にすることによって、たとえばある一定のパルス化された炎光光度検出器を用いて達成されるのと同様な方法で選択度を向上させてノイズを低減させる機会があり得る。また、良好な流れ調節器はGC×GCシステムの基盤を形成し得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、図43Aおよび図43Bに示される充填チャンバにはいくつかの制約があり得る。図43Aでは、切換弁が調節ガスが充填チャンバ4340に流れ込むことを防止するため、検出器内へのガスの流量はカラム流出物の流量となる。切換弁が第2の位置に作動されると、検出器に入る流量が急激に増加する。このキャリアガスの遅−速−遅流量は検出器内のノイズおよび不安定性に繋がり得る。そのようなノイズが存在する場合、より安定したガス流量を検出器に与えるために図44Aおよび図44Bに示されるような3方向切換弁が用いられ得る。図44Aおよび図44Bを参照して、素子は、流体流路4405を通じてカラム(図示せず)に流体連結された充填チャンバ4420を含む。素子は、3方向切換弁4415と充填チャンバ4420との間の流体流路4410も含む。また、バイパス流路4430が3方向切換弁4415に流体連結される。3方向切換弁4415が流体流路4435からの調節ガスをバイパス流路4430に流体連結する(図44)と、調節ガスはバイパス流路に流れ込み、流体流路4425を通じて検出器へ流れる。この状態では、カラムからの流出物は充填チャンバ4420に蓄積し得る。3方向切換弁が異なる位置に作動される(図44B)と、調節ガスは流体流路4410を通じて充填チャンバ4420に与えられ得、蓄積された流出物を充填チャンバから流体流路4425に沿って検出器に押出すように作用し得る。3方向切換弁の一周期で検出器への1パルスが生成される。したがって、たとえば毎秒50パルスを生成するためには、3方向切換弁は50Hzで共振する必要がある。この高周期レベルは切換弁に大きなストレスを加え得る。また、図43Bおよび図44Bに示すようにチャンバがフラッシュされている間、カラム流出物はチャンバに流れ込み続ける。この物質は希釈され、検体から効果的に失われ得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、2つ以上の充填チャンバが本明細書中に記載の流れ調節方法および本明細書中に記載のマイクロ流体素子で用いられ得る。この構成の一例が図45Aおよび図45Bに示される。この素子は、流体流路4510を通じて調節ガスに流体連結された3方向切換弁4515を含む。切換弁4515は流体流路4520を通じて第1のチャンバ4525に流体連結され、流体流路4535を通じて第2のチャンバ4540に流体連結される。カラム(図示せず)が入口4505を通じて第1のチャンバ4525および第2のチャンバ4540の各々に流体連結される。チャンバ4525は流体流路4530および4550を通じて検出器(図示せず)に流体連結され、チャンバ4540は流体流路4545および4550を通じて検出器に流体連結される。チャンバ4525、4540の一方が充填されている間、他方のチャンバは調節ガスでフラッシュされている。この構成によって、切換弁の各周期ごとに2パルスが生成されることになるので、切換弁は同一の性能を達成するのに単一チャンバ設計の半分の速度で共振すればよい。さらに、カラム流出物は常に一方のチャンバを充填しているため、まったく無駄にならない。チャンバ同士の間の調節ガスの小さな流れによって、ガスが流されているチャンバ内への試料蒸気の拡散が防止または減少され得る。検出器への流量は、切換弁がどちらの位置にあっても同一である。
【0170】
いくつかの実施例では、本明細書中に記載のマイクロ流体素子は1つ以上の充填チャンバを有して構成され得る。図46は、少なくとも1つの充填チャンバを有するマイクロ流体素子の一例を示す。マイクロ流体素子4600は第1のチャンバ4610および第2のチャンバ4615を含む。カラム流出物ポート4640は第1のチャンバ4610および第2のチャンバ4615の各々に流体連結される。調節ガスは、チャンバ4610、4615のどちらにガスを流すか、またはどちらがフラッシュされるかに依存して、ポート4630または4650で導入され得る。切換弁(図示せず)がポート4630および3650の各々に流体連結されて、どちらのポートが調節ガスを受取るかを制御する。システム内の流れを平衡化するために1つ以上の制限器が存在し得る。調節ガスがポート4630に導入されると、調節ガスはチャンバ4615を流れて検出器に入り、カラム流出物はチャンバ4610を充填する。調節ガスがポート4650に切換えられると、チャンバ4610にガスが流されてチャンバ4610が充填される。チャンバは、フラッシュされる際の試料の希釈および拡散を最小化にするように、長く細く設計され得る。
【0171】
充填チャンバが存在するいくつかの実施形態では、チャンバ形状は動作状況に適合するように選択され得る。たとえば、チャンバ形状および寸法を選択する際には以下の変数、すなわちカラム流量、調節ガス流量、マイクロ流体素子内の圧力、および切換弁変調周波数が考慮され得る。一例では、カラム流量が0.5から3mL/min(たとえば最大内径0.32mmのカラム)であり、検出器内への流量が約50mL/minである場合、これらの仮定によって17倍から100倍の範囲の圧縮因子が与えられる。マイクロ流体素子の内圧が約8psigである場合、溶融シリカ管類片が検出器に接続されて約8psigで約50mL/minを提供し得る。制限器形状は、選択される特定の検出器に依存する。充填チャンバは、パルス化される前のカラムから溶出するカラム流出物をすべて保持するほど十分大きいことが望ましい。マイクロ流体素子内の圧力では、カラムからの最大体積流量は
3×(周囲圧力)/マイクロ流体素子圧力+周囲圧力)=3×15/23=〜2mL/min
となる。表IIは、8psigで2mL/min流量の、さまざまな切換弁変調周波数に望まれるチャンバ容量を示す。
【0172】
【表2】

【0173】
マイクロ流体素子のチャネルが高さ80ミクロンであり、チャンバ長さが約30mmである場合、チャンバ幅は表IIIに示されるように選択され得る。
【0174】
【表3】

【0175】
表IIおよびIIIは指針として示されるが、いずれの仮定も変化し得、それによって選択される厳密な寸法も変わる。
【0176】
いくつかの実施形態では、所望の流れ特性を与えるために内部チャンバチャネル形状も選択され得る。たとえば、カラムポートと2つのチャンバの各々との間のマイクロチャネルの形状によって、流体の流れが変化し得る。これらが幅広すぎると、調節ガスが2つのチャンバの間を交差してそれらを同時にフラッシュすることができる。これらが狭すぎると、カラムポートの圧力はカラム流出物の圧力よりも増大するため、流出物が両チャンバ内に分割される。充填中のチャンバ内への調節ガスの流れは非常に低いように(たとえば<50μL/min)維持されるべきである。図47は、このプロセスがマイクロ流体素子を用いて制御され得る一例を示す。マイクロ流体素子4700は第1のチャンバ4710および第2のチャンバ4715を含む。マイクロ流体素子4700は複数のポートも含む。カラム流出物ポート4740は第1のチャンバ4710および第2のチャンバ4715に流体連結される。3方向切換弁(図示せず)がポート4730および4750に流体連結され、弁の位置に基づいてポート4730、4750のいずれか一方に調節ガスを供給し得る。調節ガスがポート4730に切換えられると、50mL/minのガスがチャンバ4715を通過し、ポート4720に接続された流体流路を通じて検出器へ流れ出る。チャンバ4715は大幅な制限を加えるべきではないが、ポート4720への流体流路4755は制限された流れを提供し得る。ポート4730からチャンバ4710を流れる調節ガスの流量は、流体流路4760によって制御される。チャンバ4710およびチャンバ4715を流れる調節ガスの流量を決定するのは、流路4755および4760の相対インピーダンスである。したがって、流体流路4755および4760の寸法をマイクロチャネルの他の部分の寸法に対して制限または拡大することによって、マイクロ流体素子を流れる所望の流量を与えることができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のマイクロ流体素子は、たとえばピークを分割するために用いられ得る。たとえば、独立ピークが切取られて異なる検出器(または異なる構成要素)に与えられ得るか、単一ピークが分割されて2つの異なる構成要素に与えられ得る。たとえば、試料内の特定のスピーシーズが高濃度である場合は、ピーク全体を検出器に送るよりも、その試料ピークを分割してその一部を通気孔に送ることが望ましいことがある。そのような分割によって、カラムおよび/または検出器のダイナミックレンジ制限を克服できる。また、大量注入を用い、溶剤ピークを完全に分割(または除去)することによって、検出器に対する過負荷を回避できる。ピーク分割用に構成されたシステムの1つの構成が図48に示される。システム4800は、キャリアガス源4805および第1のカラム4815に流体連結されたインジェクタ4810を含む。第1のカラム4815はマイクロ流体素子4820に流体連結され、マイクロ流体素子4820はそれ自体が切換弁4825に流体連結される。第2のカラム4830はマイクロ流体素子4820および検出器4835に流体連結される。マイクロ流体素子4820は制限器4840および通気孔4845にも流体連結される。切換弁4845の位置に依存して、第1のカラム4815から溶出するピークが切取られ、第2のカラム4830または通気孔4845に与えられ得る。たとえば、汚染ピークまたは溶剤ピークを通気孔4845に選択的に与えて、第2のカラム4830および検出器4835に与えられ得る試料ピークの検出の障害とならないようにすることができる。いくつかの実施例では、ピークの一部が切取られて通気孔に与えられ得る。たとえば、試料中の一成分(または試料中の汚染物質)が他の構成要素よりもかなり高濃度で存在する場合、この高濃度成分は検出器のダイナミックレンジよりも高い濃度で存在し得るため、信号が最大検出信号を超えるとフラットトップピークがもたらされ得る。このピークを2つ以上の部分に分割することによって、濃度は検出器範囲内に入り、その成分がどれだけ試料内に存在するかについてのより正確な評価が与えられ得る。異なるピークは異なる分割量、たとえば25%、50%、75%または他の分割割合であり得る。図48のシステムでは、通気孔4845を通じた排気も可能である。そのような排気によって、大量溶剤に起因する問題を克服できるため、より大量の注入を用いることができる。また、バックフラッシュおよびMS排気機能も本明細書中に記載されるように実行され得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、システムは異なるピークを分割するように、または異なるピークを2つ以上の検出器に与えるように構成され得る。図49を参照して、システム4900は、キャリアガス源4910およびカラム4915に流体連結されたインジェクタ4905を含む。カラム4915はマイクロ流体素子4975に流体連結される。中間点圧力調整器4920は任意にマイクロ流体素子4975に流体連結され得る。マイクロ流体素子4975は制限器4925を通じて第1の検出器4940に流体連結され、制限器4930を通じて第2の検出器4945に流体連結され、制限器4935を通じてMS素子4950に流体連結される。システムの動作時、ピークが切取られ、一部が第1の検出器4940に与えられ、切取られたピークの残りが第2の検出器4945に与えられ得る。代替的に、ピークの一部がMS素子4950に与えられ得る。いくつかの実施形態では、ピーク全体が異なる検出器に与えられ得る。本開示内容から、システム4900の他の使用法が当業者に容易に選択されるであろう。
【0179】
いくつかの実施形態では、試料はすべての分離の前に分割され得る。そのようなシステムの1つの構成が図50に示される。システム5000は、キャリアガス源5010に流体連結されたインジェクタ5005を含む。インジェクタ5005はマイクロ流体素子5075に流体連結される。中間点圧力調整器5020は任意に制限器5015を通じてマイクロ流体素子5075に流体連結され得る。切換ガス源5020はマイクロ流体素子5075に流体連結され得る。マイクロ流体素子5075は第1のカラム5025を通じて第1の検出器5040に流体連結され、第2のカラム5030を通じて第2の検出器5045に流体連結され、第3のカラム5035を通じてMS素子5050に流体連結される。試料はインジェクタ5005を用いてシステムに注入され、マイクロ流体素子5075を用いて異なる成分に分割され得る。分離はカラム5025、5030および5035を用いて実行され得、ピークは対応する検出器に与えられ得る。図50に示される構成によって、異なる種類の検出器および/または異なる種類のカラム材料を用いた試料の同時分析が可能になる。
【0180】
いくつかの実施形態では、ピークの分割によって異なるキャリアガスの使用が可能になる。そのようなシステムの1つの構成が図51に示される。システム5100は、第1のキャリアガス源5110に流体連結されたインジェクタ5105を含む。インジェクタ5105は第1のカラム5115に流体連結される。切換弁5125は、マイクロ流体素子5155、スプリッタ5160、および第1のキャリアガス源と同一または異なり得る第2のキャリアガス源5120に流体連結され得る。マイクロ流体素子5155は、第1および第2のキャリアガス源5110、5120と同一または異なり得る第3のガス源5145にも流体連結される。マイクロ流体素子5155はさらに、第2のカラム5140を通じて第1の検出器5135に流体連結され、第3のカラム5150を通じて第3の検出器5165に流体連結される。図51のシステムを用いる1つの方法では、第1のガス源5110は、10cm/secの流量で用いられる窒素であり得る。第2のガス源5120も、十分な流量で導入されて約40cm/secの第2のカラム5140を通る流量を提供し得る窒素であり得る。第2のガス源は、たとえば充填チャンバ5130からの流出物を流すために設けられ得る。第3のガス源は水素であり、約40cm/secの流量で第3のカラム5150に与えられ得る。この構成では、第2および第3のカラム5140、5150を用いて異なるキャリアガスによって異なる分離が提供され得る。このような異なるキャリアガスは、たとえば、単一種類のキャリアガスによって試料内のすべての成分の好適な分離が提供されない場合に望ましいことがある。
【0181】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のシステムは多次元分離に用いられ得る。一例が図52Aおよび図52Bに示される。システム5200は、キャリアガス源5205および第1のカラム5215に流体連結されたインジェクタ5210を含む。第1のカラム5215はマイクロ流体素子5220に流体連結され、マイクロ流体素子5220はそれ自体が調節ガス源5225に流体連結される。マイクロ流体素子5220は、制限器5230を通じて第1の検出器5235に流体連結され、第1のカラム5240を通じて第2の検出器5245にも流体連結される。マイクロ流体素子5220は典型的に切換弁(図示せず)とも流体連結しており、切換弁は、1つの位置にあるとき(図52A)に第1のカラム5215から第2のカラム5240および第2の検出器5245への流体の流れを可能にし、別の位置にあるとき(図52B)に制限器5230を通じて第2の検出器5235への流体の流れを可能にし得る。切換弁の位置は、システムのどの構成要素がカラム流出物を受取るかを制御するために変更され得る。このような流れ方向によって異なるデータセットが与えられ、これを用いて試料内の成分をよりよく分析することができ、またデータセットは所望であればより容易な分析のために同一のクロマトグラム上に与えられ得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、多次元分離は、カラム流出物が分割された後であるがすべての分離が起こるに起こり得る。多次元分析用の分流を用いるシステムの1つの構成が図53に示される。システム5300は、キャリアガス源5305および制限器5315に流体連結されたインジェクタ5310を含む。制限器5315はマイクロ流体素子5320に流体連結され、マイクロ流体素子5320はそれ自体が調節ガス源5325に流体連結される。マイクロ流体素子5320は第1のカラム5330を通じて第1の検出器5335に流体連結され、第2のカラム5340を通じて第2の検出器5345にも流体連結される。マイクロ流体素子5320は典型的に切換弁(図示せず)とも流体連結しており、切換弁はインジェクタ5310からの流体の流れを分割して、分流をシステム5300の異なるカラムに与え得る。このような分割によって2つのカラム内の異なる分離媒体を用いることができ、単一システムを用いて異なるデータセットおよび異なる分離を提供することができる。
【0183】
いくつかの実施例では、多次元分離に用いられるシステム、たとえばGC×GCは3つ以上のカラムを含み得る。3つのカラムを含む1つのシステムが図54に示される。システム5400は、キャリアガス源5405および第1のカラム5415に流体連結されたインジェクタ5410を含む。第1のカラム5415はマイクロ流体素子5420に流体連結され、マイクロ流体素子5420はそれ自体が調節ガス源5425に流体連結される。マイクロ流体素子5420は第2のカラム5430を通じて第1の検出器5435に流体連結され、第3のカラム5440を通じて第2の検出器5445にも流体連結される。マイクロ流体素子5420は典型的に切換弁(図示せず)とも流体連結しており、切換弁は第1のカラム5415からのカラム流出物の流れ(または所望であれば特定のピーク)を分割して、分流をシステム5400の残りの2つのカラムに与え得る。このような分割によって3つのカラム内の異なる分離媒体を用いることができ、所望であれば、単一システムを用いて異なるデータセットおよび異なる分離を提供することができる。
【0184】
いくつかの実施例では、本明細書中に記載の装置、方法およびシステム(またはそれらの一部)は、プロセッサを含むコンピュータまたは他の装置を用いて実現または制御され得るか、本明細書中に記載の装置およびシステムはコンピュータシステムまたはプロセッサに電気的に結合され得る。そのようなコンピュータによって実現される方法は、グラフィカルユーザインターフェイスなどを用いた制御を可能にすることによって、本方法をより使いやすいように実現し得る。また、コンピュータは、流量を監視し、1つ以上の検出器からのデータを受取り、その後の使用のための分離ルーチンを記憶または呼出すために用いられ得る。コンピュータシステムは典型的に、任意に1つ以上のメモリユニットに電気的に結合された少なくとも1つのプロセッサを含む。コンピュータシステムはたとえば、Unix(登録商標)、インテル社のPENTIUM(登録商標)型プロセッサ、モトローラ社のPowerPC、サン社のUltraSPARC、ヒューレット・パッカード社のPA-RISCプロセッサ、またはいずれかの他の種類のプロセッサに基づくコンピュータなどの、汎用コンピュータであり得る。いくつかの実施例では、プロセッサは、入力を受取り、受取った入力に基づいて処理パラメータを出力するようにプログラム可能であり得る安価なプロセッサであり得る。1つ以上のいずれかの種類のコンピュータシステムが技術のさまざまな実施形態に従って用いられ得ることが認識されるべきである。さらに、システムは単一コンピュータ上に配置され得るか、通信ネットワークによって接続される複数のコンピュータ間に分配され得る。汎用コンピュータシステムは、たとえば、制限器長さおよび直径計算、ガス源制御、切換弁制御、温度制御、実行時間などを含むがこれらに限定されない説明された機能のいずれかを実行するように構成され得る。システムは、ネットワーク通信を含む他の機能を実行し得、本技術はいずれかの特定の機能または機能セットを有するように限定されないことが認識されるべきである。
【0185】
たとえば、さまざまな局面は、汎用コンピュータシステムで実行される特化ソフトウェアとして実現され得る。コンピュータシステムは、データを記憶するためのディスクドライブ、メモリ、または他の装置などの1つ以上のメモリ装置に接続されたプロセッサを含み得る。メモリは典型的に、コンピュータシステムの動作時にプログラムおよびデータを記憶するために用いられる。コンピュータシステムの構成要素は相互接続装置によって結合され得、相互接続装置は1本以上のバス(たとえば同一機械内に統合された構成要素同士の間)および/またはネットワーク(たとえば別個の離散機械に存在する構成要素同士の間)を含み得る。相互接続装置によって、システムの構成要素同士の間で交換される通信(たとえば信号、データ、指示)が与えられる。コンピュータシステムは典型的に、電気信号が検出器へ、および検出器からコンピュータに与えられ、データを受取って記憶および/または処理し得るように検出器に電気的に結合される。コンピュータシステムはさらに、たとえばキーボード、マウス、トラックボール、マイク、タッチスクリーン、手動スイッチ(たとえばオーバーライドスイッチ)などの1つ以上の入力装置、およびたとえば印刷装置、ディスプレイスクリーン、スピーカーなどの1つ以上の出力装置を含み得る。さらにコンピュータシステムは、(相互接続装置に加えて、または相互接続装置の代わりに)コンピュータシステムを通信ネットワークに接続する1つ以上のインターフェイス(図示せず)を含み得る。
【0186】
記憶システムは典型的に、コンピュータ読取可能および書込可能不揮発性記録媒体を含み、この中に、プロセッサによって実行されるプログラム、または当該媒体上もしくは内に記憶されてプログラムによって処理される情報を定義する信号が記憶される。たとえば、特定の分離についてのオーブン温度、流量、切換弁位置および変調周波数が媒体に記憶され得る。媒体は、たとえばディスクまたはフラッシュメモリであり得る。典型的に、動作時、プロセッサは、データが不揮発性記録媒体から別のメモリに読出されるようにして、媒体よりもプロセッサによる情報へのより迅速なアクセスを可能にする。このメモリは典型的に、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)または静的メモリ(SRAM)などの揮発性ランダムアクセスメモリである。これは記憶システム内またはメモリシステム内に配置され得る。プロセッサは一般的に、集積回路メモリ内のデータを操作し、処理完了後にデータを媒体にコピーする。媒体と集積回路メモリ要素との間のデータ移動を管理するためのさまざまなメカニズムが公知であり、本技術はそれらに限定されない。本技術は特定のメモリシステムまたは記憶システムにも限定されない。
【0187】
いくつかの実施例では、コンピュータシステムは、たとえば特定用途向けIC(ASIC)などの特別にプログラムされた専用ハードウェアであり得る。本技術の局面はソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはそれらのいずれかの組合せで実現され得る。さらに、そのような方法、作用、システム、システム要素およびその構成要素は、上記のコンピュータシステムの一部として、または独立した構成要素として実現され得る。
【0188】
コンピュータシステムは、本技術のさまざまな局面が実践され得る一種のコンピュータシステムとして例示的に説明されるが、局面は例示されるコンピュータシステムで実現されることに限定されないことが認識されるべきである。さまざまな局面は、異なるアーキテクチャまたは構成要素を有する1つ以上のコンピュータで実践され得る。コンピュータシステムは、高水準コンピュータプログラミング言語を用いてプログラム可能な汎用コンピュータシステムであり得る。コンピュータシステムは、特別にプログラムされた専用ハードウェアを用いても実現され得る。コンピュータシステムにおいて、プロセッサは典型的に、インテル社から入手可能な周知のPentium(登録商標)クラスプロセッサなどの市販プロセッサである。多くの他のプロセッサが入手可能である。そのようなプロセッサは通常、たとえばマイクロソフト社から入手可能なWindows(登録商標) 95、Windows(登録商標) 98、Windows(登録商標) NT、Windows(登録商標) 2000(Windows(登録商標) ME)、Windows(登録商標) XPまたはWindows(登録商標) Vistaオペレーティングシステム、アップルコンピュータ社から入手可能なMAC OS System Xオペレーティングシステム、サンマイクロシステムズ社から入手可能なSolarisオペレーティングシステム、またはさまざまなソースから入手可能なUNIX(登録商標)もしくはLinuxオペレーティングシステムなどのオペレーティングシステムを実行する。多くの他のオペレーティングシステムが用いられ、いくつかの実施形態では単純な指令または指示セットがオペレーティングシステムとして機能し得る。
【0189】
いくつかの実施例に従って、プロセッサおよびオペレーティングシステムはともに、高水準プログラミング言語のアプリケーションプログラムが書込まれ得るコンピュータプラットフォームを定義し得る。本技術は特定のコンピュータシステムプラットフォーム、プロセッサ、オペレーティングシステム、またはネットワークに限定されないことが理解されるべきである。また本開示内容から、本技術は特定的なプログラミング言語またはコンピュータシステムに限定されないことが当業者にとって自明であるべきである。さらに、他の適切なプログラミング言語および他の適切なコンピュータシステムも使用可能であることが認識されるべきである。いくつかの実施例では、ハードウェアまたはソフトウェアは、認知アーキテクチャ、ニューラルネットワークまたは他の好適なインプレメンテーションを実現するように構成される。
【0190】
コンピュータシステムの1つ以上の部分は、通信ネットワークに結合された1つ以上のコンピュータシステム全体に分配され得る。これらのコンピュータシステムは汎用コンピュータシステムでもあり得る。たとえば、サービス(たとえばサーバ)を1つ以上のクライアントコンピュータに提供するように、またはタスク全体を分配システムの一部として実行するように構成される1つ以上のコンピュータシステム同士の間に、さまざまなアスペクトが分配され得る。たとえば、さまざまなアスペクトは、さまざまな実施形態に従ってさまざまな機能を実行する1つ以上のサーバシステム同士の間に分配された構成要素を含むクライアントサーバまたは複層システムで実行され得る。これらの構成要素は、通信プロトコル(たとえばTCP/IP)を用いて通信ネットワーク(たとえばインターネット)上で通信する、実行可能な、中間の(たとえばIL)または解釈済みの(たとえばJava(登録商標))コードであり得る。本技術はいずれかの特定のシステムまたはシステム群の実行に限定されないことも認識されるべきである。また、本技術はいずれかの特定の分配アーキテクチャ、ネットワーク、または通信プロトコルに限定されないことも認識されるべきである。
【0191】
いくつかの実施例に従って、さまざまな実施形態は、SmallTalk、Basic、Java(登録商標)、C++、Ada、またはC#(C-Sharp)などのオブジェクト指向プログラミング言語を用いてプログラム化され得る。他のオブジェクト指向プログラミング言語を用いてもよい。代替的に、機能的な、スクリプティングおよび/またはロジカルプログラミング言語を用いてもよい。さまざまな構成が非プログラム化環境で実現され得る(たとえばHTML、XMLまたは他のフォーマットで作成されたドキュメントは、ブラウザプログラムのウィンドウで見ると、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)のアスペクトをレンダリングしたり、他の機能を実行したりする)。いくつかの構成はプログラム化または非プログラム化要素として、またはそれらのいずれかの組合せとして実現され得る。
【0192】
いくつかの実施例では、ユーザインターフェイスは、ユーザが所望の流量、管類の長さおよび直径、カラムの種類、溶剤グラジエントラン、ならびにガスまたは液体クロマトグラフィー分離の開始前に一般に入力されるその他の情報を入力可能なように提供され得る。ユーザインターフェイスに含める他の特徴は、本開示内容から当業者によって容易に選択されるであろう。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のマイクロ流体素子は、任意にマイクロ流体素子の使用指示とともにキット内にパッケージ化され得る。いくつかの実施例では、キットはさらに、本明細書中に記載の流れ制御または調節を実現するのに好適なアルゴリズムを含むコンピュータ読取可能媒体を含み得る。キットはさらに、システム内の所望の流量を促進するための所望の長さまたは直径の取付具、管類、制限器などを含み得る。いくつかの実施例では、1つ以上の分離カラムもキットに含まれ得る。
【0194】
本明細書中に記載の技術の新規で有用な特徴のいくつかをさらに例示するため、いくつかの特定的な実施例が以下に説明される。
【0195】
実施例1
管類直径アルゴリズムを実証するため、溶融石英管類の長さ(内径150ミクロンとして示される)を、ヘリウムと窒素のキャリアガスを用いて検査した。流量対絶対印加圧力の二乗に最小二乗線形適合を適用して、式(17)の定数bの値を確定し、式(18)からdcを計算した。周囲圧力はその場所のデジタルパラメータから求め、周囲温度における粘度は表から採用した。この結果が表IV(ヘリウムガス)およびV(窒素ガス)に示され、長さLの減少順に列挙されている。
【0196】
【表4】

【0197】
【表5】

【0198】
表IVおよびVから、制限器管類が漸進的に短くなるにつれて、内径について高度に不変の値が達成されることが分かる。平均値(ヘリウムについては152.3μm、窒素については152.6μm)は非常に近似しており、計算精度も良好である(ヘリウムについては0.49%RSD、窒素については0.40%RSD)。
【0199】
これらの結果の精度を確認するため、流れ測定検査時に除去された溶融石英管類の部分を500倍拡大顕微鏡で調べ、真の直径を顕微鏡写真法で求めた。図55は溶融石英管類の一部の端の顕微鏡写真を示しており、10ミクロンの目盛分割のグラティキュールが重ね合せられている。表VIは、顕微鏡による手動測定の結果を示す。これらの測定結果は、表IVおよびVの計算値と非常に近似している。
【0200】
【表6】

【0201】
したがって、流体クロマトグラフィーシステムで用いられる管類の真のサイズをよりよく求めるために、システム内で用いられるカラムや制限器などの管類の真の内径を正確に評価するための較正プロトコルが実行され得る。
【0202】
実施例2
上記の式に基づいたアルゴリズムを用いて移送ラインおよびカラムを流れるガスの流量を制御する熱脱着システムの結果が図56に示される。カラムから溶出するガスの質量流が炎光光度検出器によって直接的に監視され得るように、キャリアガスに固定濃度のメタンをドープした。図56は、一定の圧力制御、および次に一定の流れ制御を用いたカラム温度プログラム時の検出器信号のプロットを示す。これらのプロットから分かるように、質量流量は一定の流れ制御が用いられるプログラム中は適度に一定である。
【0203】
図56では、カラム温度の上昇に伴って流量を制御した。カラムにメタンを加え、その結果得られた信号を用いて、検出器反応を流量の関数として監視した。オーブンを40℃にまで熱し、この温度で1分間維持した。そして、温度を毎分10℃上昇させ、最終温度300℃まで上昇させた。最終温度を10分間維持した。曲線5610は実際の流量を表し、曲線5620は予想流量を表し、曲線5630は流れ制御を用いない(一定の圧力制御は用いた)場合の流量を表す。圧力制御を用いた場合、流量は所望の流量から大きく異なった。本明細書中に記載の流れ制御アルゴリズムを実行した場合、流量は所望の流量に近似した。
【0204】
実施例3
図34および図35A−図35Cは、本明細書中に説明されるように変調が行なわれた場合のクロマトグラフィーピークを示す。図34を参照して、単一ピークが示される。変調によってピークが複数の個別変調部分に分けられる。変調は、図33Aおよび図33Bの制御部および図11のマイクロ流体素子を用いて10Hzで実行した。使用したカラムは30m×0.25mm×0.25ミクロンのメチルシリコーンカラムである。移動層としてヘリウムを用いた。入口圧力は40psigであり、中間点圧力は30psig(ヘリウムガス)であった。オーブンを35℃にまで熱し、この温度で1分間維持した。次にこの温度を毎分10℃上昇させ、300℃にまで上昇させた。275℃の高速FID検出器を用いてピークを検出した。100mL/min分割インジェクタを用いて、1マイクログラム/マイクロリットルNIOSH芳香族化合物(0.2マイクロリットルを注入)である試料を導入した。
【0205】
図35A−図35Cを参照して、3つの異なる記録が示される。図35Aには、第1のカラムからの試料流出物を表す2つのピーク3510、3520が示される。図35Bには、第2のカラムからの試料流出物を表す単一ピーク3530が示される。これらのピークは、本明細書中に記載の変調技術を用いて同時に分析され得る。図35Cを参照して、異なる試料の変調された出力が示され、たとえば、第1および第2のカラムからの試料が単一の出力に与えられ得る。ピーク3510および3530は、変調された信号群3540に示されるように互いに重複するか、変調された出力で交錯する。ピーク3520は変調ピーク3550として示される。このように、異なるカラムからの試料ピークが同時に分析され得る。
【0206】
実施例4
内部バイパス制限器を含んだマイクロ流体素子が図57に示される。結果として得られるマイクロ流体素子(図57)は複数のポート5705、5710、5715、5720、5725および5730を含んでいた。ポート5705はカラムからの流出物を受取るように設計される。電磁弁からの切換ガスはポート5715および5725の各々に接続され得る。出口ポート5710および5730は、カラムまたは制限器または他の素子に接続され得る。内部バイパス制限器5750は、内部マイクロ流体チャネルの他の部分5760よりも直径が小さい。この内部バイパス制限器用に選択される特定の直径および長さによって、マイクロ流体素子を用いた流れ制御が可能になる。
【0207】
本明細書中に開示される実施例の要素を紹介する際、“a”、“an”および“the”という語は1つ以上の要素があることを意味するよう意図されている。また、「備える」、「含む」および「有する」という用語はオープンエンドであり、列挙した要素以外の付加的な要素があり得ることを意味するよう意図されている。本開示内容から、実施例のさまざまな構成要素が他の実施例のさまざまな構成要素と相互交換可能であるか、置換可能であることが当業者に認識されるであろう。
【0208】
いくつかの特徴、局面、実施例および実施形態が上記で説明されたが、本開示内容から、開示された例示的な特徴、局面、実施例および実施形態の追加、置換、修正、および変更が当業者に容易に認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーシステム内の流体の流れを調節する方法であって、切換弁を第1の位置または第2の位置に作動させるステップを含み、前記第1の位置によって、調節ガス源からマイクロ流体素子の第1の充填チャンバへの流体の流れが可能になり、前記第1の充填チャンバからのカラム流出物が、前記マイクロ流体素子に流体連結された検出器に与えられ、前記第2の位置によって、前記調節ガス源から前記マイクロ流体素子の第2の充填チャンバへの流体の流れが可能になり、前記第2の充填チャンバからのカラム流出物が、前記マイクロ流体素子に流体連結された前記検出器に与えられる、方法。
【請求項2】
前記切換弁は、約10Hzから約100Hzの周波数で作動される3方向電磁弁である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出器と前記マイクロ流体素子との間に制限器を有するように前記システムを構成することによって前記システム内の圧力を平衡化するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の充填チャンバからの前記カラム流出物を、前記マイクロ流体素子に流体連結された第1の検出器に与えるステップと、前記第2の充填チャンバからの前記カラム流出物を、前記マイクロ流体素子に流体連結された第2の検出器に与えるステップとをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の検出器と前記マイクロ流体素子との間に第1の制限器を有するように、かつ前記第2の検出器と前記マイクロ流体素子との間に第2の制限器を有するように前記システムを構成することによって前記システム内の圧力を平衡化するステップをさらに備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の充填チャンバの各々を前記マイクロ流体素子内の内部チャンバとして構成するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記調節ガス源からの流体流量を、前記第1および第2の充填チャンバ内への前記カラム流出物の流体流量よりも少なくとも5倍大きくするように構成するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の充填チャンバおよび第2の充填チャンバを有する内部マイクロチャネルを含むマイクロ流体素子を備えるシステムであって、前記第1の充填チャンバおよび前記第2の充填チャンバの各々は、前記マイクロ流体素子の入口ポートおよび出口ポートに各々が流体連結され、前記システムはさらに、
前記マイクロ流体素子の前記内部マイクロチャネルに流体連結された切換弁を備え、前記切換弁は、第1の位置にあるときに、調節ガスが前記入口ポートを通って前記第1の充填チャンバに流れることを可能にして、前記第1の充填チャンバからのカラム流出物を前記マイクロ流体素子の前記出口ポートに与えるように、かつ第2の位置にあるときに、調節ガスが前記入口ポートを通って前記第2の充填チャンバに流れることを可能にして、前記第2の充填チャンバからのカラム流出物を前記マイクロ流体素子の前記出口ポートに与えるように構成される、システム。
【請求項9】
前記マイクロ流体素子の前記出口ポートに流体連結された検出器をさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記検出器は質量分析計である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記切換弁は3方向電磁弁である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記質量分析計および前記切換弁に電気的に結合され、前記質量分析計の検出器読取値を前記3方向電磁弁の調節と同期させるように構成された制御部をさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記マイクロ流体素子に流体連結されたインジェクタをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記マイクロ流体素子は積層ウェハとして構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
第1のカラムに流体連結された第1のインジェクタと、
第2のカラムに流体連結された第2のインジェクタと、
第1のポートを通じて前記第1のカラムに流体連結され、第2のポートを通じて前記第2のカラムに流体連結されたマイクロ流体素子とを備えるシステムであって、前記マイクロ流体素子は、前記第1のポートに流体連結された第1の充填チャンバおよび前記第2のポートに流体連結された第2の充填チャンバを含み、前記システムはさらに、
前記マイクロ流体素子および調節ガス源に流体連結された切換弁を備え、前記切換弁は、第1の位置にあるときに、前記調節ガス源からの調節ガスの流れを可能にして、前記第1の充填チャンバからの流出物を、前記マイクロ流体素子に流体連結された検出器に与えるように構成され、前記切換弁はさらに、第2の位置にあるときに、前記調節ガス源からの前記調節ガスが前記第2の充填チャンバに流れることを可能にして、前記第2の充填チャンバからの流出物を、前記マイクロ流体素子に流体連結された前記検出器に与えるように構成される、システム。
【請求項16】
前記第1の充填チャンバに流体連結された第1の検出器、および前記第2の充填チャンバに流体連結された第2の検出器を有するように前記システムを構成するステップをさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記切換弁は前記第1または第2の位置に作動されて、前記第1の充填チャンバからパルス化された流れを前記検出器に与え、前記第2の充填チャンバからパルス化された流れを前記検出器に与えるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記切換弁は3方向電磁弁である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記検出器は質量分析計である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記質量分析計および前記切換弁に電気的に結合され、前記質量分析計の検出器読取値を前記切換弁の調節と同期させるように構成された制御部をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
クロマトグラフィーシステム内に用いられる流体流量を選択するステップと、
選択された前記流体流量を提供するための前記クロマトグラフィーシステム内のカラムの内径を求めるステップとを含む、方法。
【請求項22】
前記カラムの前記内径は、
【数1】

を用いて計算され、式中、dcは前記カラムの前記内径であり、Lはカラム長さであり、paは絶対圧力であり、ηはキャリアガスの粘度であり、bは定数である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
クロマトグラフィーシステム内に用いられる流体流量を選択するステップと、
選択された前記流体流量を提供するための前記クロマトグラフィーシステム内の制限器の寸法を求めるステップとを備える、方法。
【請求項24】
前記寸法は前記制限器の制限器内径であり、前記内径は以下の式
【数2】

を用いて計算され、式中、drは前記制限器の前記内径であり、Lは制限器長さであり、paは絶対圧力であり、ηはキャリアガスの粘度であり、bは定数である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記寸法は制限器長さであり、前記制限器長さは以下の式
【数3】

を用いて計算され、式中、Lr1はオーブンの内部の前記制限器の長さであり、Lr2は検出器の内部の前記制限器の長さであり、ηr1はオーブン温度におけるキャリアガスの粘度であり、ηr2は検出器温度おけるキャリアガスの粘度であり、Tr1は前記オーブンの絶対温度であり、Tr2は前記検出器の絶対温度であり、piは入口圧力であり、porは出口圧力であり、Faは流量である、請求項23に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32C】
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【図32D】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34】
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【図35A】
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【図35B】
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【図35C】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43A】
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【図43B】
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【図44A】
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【図44B】
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【図45A】
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【図45B】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52A】
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【図52B】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【公表番号】特表2011−524008(P2011−524008A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511781(P2011−511781)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/045300
【国際公開番号】WO2009/154984
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(505359506)パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシズ・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES, INC.