説明

クロミア質キャスタブル耐火物及びそれを用いたプレキャストブロック

【課題】本発明の目的は、クロミアを大量に添加して耐食性を向上させると同時に耐熱衝撃性を低下させることがないクロミア質キャスタブル耐火物、及びそれを用いたプレキャストブロックを提供することにある。
【解決手段】本発明のクロミア質キャスタブル耐火物は、Cr:70〜90質量%、Al:5〜20質量%及びSiO:1〜10質量%の組成を有するクロミア骨材5〜85質量%、酸化クロム微粉5〜35質量%、ジルコニア微粉1〜15質量%、アルミナセメント1〜10質量%を含有してなり、残部がアルミナ骨材及び/またはアルミナ微粉から構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性と耐熱衝撃性を必要とする各種工業炉の内張りに使用されるクロミア質キャスタブル耐火物、及びそれを用いたプレキャストブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐火物の耐食性を向上させるために、市販品の酸化クロム微粉が使用されていた。例えば、特許文献1には、下記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)からなるキャスタブル耐火物:
(A)粒子径が15〜1mmの耐火性原料を70〜40wt%(質量%);
(B)粒子径が5〜0.1μのアルミナ、酸化クロム、ジルコンおよびジルコニアから選ばれた1種または2種以上の微粉を15〜0.5wt%(質量%);
(C)粒子径が100〜2μのアルミナセメントまたはマグネシアを7〜0.5wt%(質量%);
(D)前記(A)、(B)および(C)の残部を粒子径が1mm〜1μの耐火性原料;
(E)分散剤を外掛で0.5wt%(質量%)以下
が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、アルミナ質原料を主要成分とし、酸化クロムを1〜7重量%(質量%)及び粒径10μm以下のシリカ超微粉を0.5〜5重量%(質量%)含有してなる溶銑脱珪樋用流込み材が開示されている。
【0004】
また、市販の酸化クロム微粉と焼結剤を用いて予め焼成した形態で酸化クロムを添加することによりCrの含有量を増加させることが行われていた。例えば、特許文献3には、Cr50〜90重量%(質量%)、Al5〜20重量%(質量%)、ZrO1〜20重量%(質量%)及び鉱化剤1〜10重量%(質量%)を含む粒子径1〜10mmの骨材粒子55〜85重量部(質量部)並びにCr50〜90重量%(質量%)及びセメント成分を10〜50重量%(質量%)含む粒子径1mm以下で前記骨材粒子より細かい微細粒子15〜45重量部に水を加えて混練固化することにより得られ且つ見かけ気孔率10〜40%である不定形耐火物(第1項);Cr50〜90重量%(質量%)、Al5〜20重量%(質量%)、ZrO1〜20重量%(質量%)及び鉱化剤1〜10重量%(質量%)を含む粒子径1〜10mmの骨材粒子55〜85重量部(質量部)並びにCr50〜90重量%(質量%)及びセメント成分を10〜50重量%(質量%)含む粒子径1mm以下で前記骨材粒子より細かい微細粒子15〜45重量部(質量部)に水を加えて混練固化することにより得られ且つ見かけ気孔率10〜40%である成形物を更に焼成することにより得られる不定形耐火物(請求項2)が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、粒度調整を施したアルミナ質原料またはアルミナ質原料とジルコン質原料との混合物30〜85重量%(質量%)、粒子径が1mm〜1μのクロミア粗角7〜50重量%(質量%)、粒子径が45μ以下の耐火性微粉末3〜20重量%(質量%)、粒子径が100〜1μのアルミナセメント0.5〜10重量%(質量%)、および適宜量の分散剤からなり、トータルSiO含量を6重量%(質量%)以下としたことを特徴とするアルミナ・クロミア質キャスタブル耐火物(請求項1);粒度調整を施したアルミナ質原料またはアルミナ質原料とジルコン質原料との混合物30〜85重量%(質量%)、粒子径が1mm〜1μのクロミア粗角7〜50重量%(質量%)、粒子径が45μ以下の耐火性微粉末3〜20重量%(質量%)、粒子径が100〜1μのアルミナセメント0.5〜10重量%(質量%)、および適宜量の分散剤からなり、トータルSiO含量を6重量%(質量%)以下としたアルミナ・クロミア質キャスタブル耐火物に少量の水を加えて混練、成形、乾燥してなることを特徴とするアルミナ・クロミア質キャスタブル耐火物を用いたプレキャストブロック(請求項2)が開示されている。
【0006】
更に、特許文献5には、電融クロミア質原料5〜90重量%(質量%)と水硬性アルミナ0.5〜10重量%(質量%)を含有することを特徴とするキャスタブル耐火物(請求項1);電融クロミア質原料5〜90重量%(質量%)と水硬性アルミナ0.5〜10重量%(質量%)を含有することを特徴とするキャスタブル耐火物に水を加えて混練、成形、乾燥してなるプレキャストブロック又は乾燥後焼成してなる定形耐火物(請求項2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−50081号公報
【特許文献2】特開昭62−207772号公報
【特許文献3】特開平3−174369号公報
【特許文献4】特開平6−293570号公報
【特許文献5】特開2003−342080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されているようなキャスタブル耐火物のように酸化クロムを大量に使用すると、施工性が低下するだけでなく、キャスタブル耐火物の熱膨張率が大きくなり、耐熱衝撃性が大幅に低下する傾向にある。また、特許文献3の実施例によれば、不定形耐火物には、CaO成分、MgO成分や、P成分等を多量に含んだ微細粒子が相当量使用されており、クロム成分の耐食性向上効果を抑制している。更に、特許文献4に開示されているアルミナ・クロミア質キャスタブル耐火物は、クロミア粗角を1mm〜1μの範囲で使用しているために、十分な耐食性が得られない。また、特許文献5に開示されているキャスタブル耐火物には、電融クロミア質原料と水硬性アルミナが使用されているが、シリカ成分のような焼結助剤が全く含まれていないため、耐食性は良好であるものの、耐熱衝撃性は低下傾向にあり、また、水硬性アルミナが含まれているために、乾燥時に爆裂しやすいという問題点がある。即ち、キャスタブル耐火物に、酸化クロム(クロミア)を大量に配合すると、耐食性は向上するものの、耐熱衝撃性は低下傾向にある。
【0009】
従って、本発明の目的は、クロミアを大量に添加して耐食性を向上させると同時に耐熱衝撃性を低下させることがないクロミア質キャスタブル耐火物、及びそれを用いたプレキャストブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、Cr:70〜90質量%、Al:5〜20質量%及びSiO:1〜10質量%の組成を有するクロミア骨材5〜85質量%、酸化クロム微粉5〜35質量%、ジルコニア微粉1〜15質量%、アルミナセメント1〜10質量%を含有してなり、残部がアルミナ骨材及び/またはアルミナ微粉から構成されることを特徴とするクロミア質キャスタブル耐火物に係る。
【0011】
また、本発明のクロミア質キャスタブル耐火物は、シリカフラワーを1質量%以下の量で含有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は上記クロミア質キャスタブル耐火物に水を加えて混練、成形、乾燥するか、または更に焼成することにより得られるプレキャストブロックに係る。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物は、SiOを1〜10質量%含有するクロミア骨材、酸化クロム微粉、ジルコニア微粉、アルミナセメントを含有し、残部をアルミナ骨材及び/またはアルミナ微粉から構成されているので、Crの耐火性向上効果を一層高めて、しかもCr含量の増加によるキャスタブル耐火物の耐熱衝撃性や施工性の低下もないという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、1〜10質量%のSiOを含むクロミア骨材を適用することにより低温域で酸化クロムを含んだマトリックスとの結合性を高め、且つジルコニア微粉を併用することにより高温域での過焼結を抑制し、溶融スラグに対する耐食性と耐浸透性に一層優れ、しかも耐熱衝撃性を低下させることのないクロミア質キャスタブル耐火物を得たものである。骨材とマトリックスとの結合性が低いと亀裂が発生したり、亀裂が伸展しやすく、更に、結合性が低くなり過ぎた場合には、組織脆化を引き起こし、耐熱衝撃性が著しく低下し、剥離損傷が顕著となる。
【0015】
クロミア骨材に含まれるSiO成分は、中〜低温域で酸化クロムを含んだマトリックスとの結合性を高めるだけでなく、クロミア骨材の熱膨張率を低下させる効果もあるため、耐熱衝撃性の向上に有効である。また、使用中にスラグが浸透してきた際、スラグの塩基度(CaO/SiO質量比:以下、「C/S」という)を低下させることが可能となり、スラグが高粘性化することでスラグの浸透を抑制することが可能となる。クロミア質耐火物が高耐食性を示す理由としては、Cr成分がスラグに溶出すると、高粘性化、稼動面に保護膜を形成するためであると考えられているが、その高粘性化の効果は、スラグのC/Sが低い程高くなるため、SiOが1〜10質量%の範囲内であれば、耐食性への影響は非常に軽微になる。
【0016】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物に使用されるクロミア骨材は、Cr:70〜90質量%、好ましくは75〜88質量%、Al:5〜20質量%、好ましくは7〜18質量%、SiO:1〜10質量%、好ましくは1.5〜9質量%の範囲内にある。ここで、Crが90質量%を超えると、熱膨張率が大きくなるだけでなく、クロミア骨材とマトリックスとの結合性が低下して耐熱衝撃性が低下するために好ましくない。また、Crが70質量%未満であると、十分な耐食性が得られないために好ましくない。更に、Alが20質量%を超えると、十分な耐食性が得られないために好ましくない。また、Alが5質量%未満であると、クロミア骨材とマトリックスとの結合性が低下し、耐熱衝撃性が低下する傾向にあるために好ましくない。更に、SiOが10質量%を超えると、耐食性低下への影響が大きくなるために好ましくない。また、SiOが1質量%未満では、マトリックスとの結合性が低下するために好ましくない。なお、クロミア骨材のCr+Al+SiOの合計量は95質量%以上、好ましくは97質量%以上である。Cr+Al+SiOの合計量が95質量%未満では、耐食性が低下するために好ましくない。
【0017】
上述の組成を有するクロミア骨材は、例えば目的組成にした配合物をプレス成形した後、トンネルキルン等で焼成し、それから所定の粒度になるように粉砕、造粒することにより製造することができる。
【0018】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物において、上記クロミア骨材の配合量は、5〜85質量%、好ましくは10〜80質量%の範囲内である。該配合量が5質量%未満であると、耐食性をあまり向上させることができないため好ましくない。また、該配合量が85質量%を超えても、耐食性と耐熱衝撃性の向上作用が飽和してしまうため好ましくない。
【0019】
次に、本発明のクロミア質キャスタブル耐火物に使用される酸化クロム微粉は、特に限定されず、一般的に市販されている酸化クロム微粉を使用することができる。酸化クロム微粉の純度は、97質量%以上のものが好ましい。酸化クロム微粉の純度が97質量%未満であると、耐食性が低下するために好ましくない。なお、酸化クロム微粉の配合量は、5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲内である。該配合量が5質量%未満では、マトリックス中のクロム量が不足して耐食性が低下するために好ましくない。また、該配合量が35質量%を超えると、施工性が著しく低下するだけではなく、クロミア骨材とマトリックスの結合性が低下し、耐熱衝撃性が低下するために好ましくない。酸化クロム微粉の粒径は、75μm以下、好ましくは45μm以下のものである。ここで、該粒径が75μmを超えると、焼結抑制効果が小さくなるために好ましくない。
【0020】
酸化クロム微粉は、マトリックスを形成するものであるが、高温域でアルミナセメントやアルミナ微粉などと焼結反応が急速に進行するため耐熱衝撃性の低下を引き起こす原因となるが、ジルコニア微粉を配合することにより、過焼結を抑制することができる。ジルコニア微粉としては、安定化ジルコニア、未安定化ジルコニア、バデライト等を使用することができる。なお、ジルコニア微粉の配合量は、1〜15質量%、好ましくは2〜12質量%の範囲内である。ここで、該配合量が1質量%未満では、過焼結抑制効果が少ないために好ましくない。また、該配合量が15質量%を超えると、クロミア骨材、酸化クロム微粉の配合量が少なくなり、耐食性が低下するために好ましくない。ジルコニア微粉の粒径は、0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下のものである。ここで、該粒径が0.5mmを超えると、焼結抑制効果が小さくなるために好ましくない。
【0021】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物には、結合剤としてアルミナセメントを配合する。アルミナセメントとしては、一般的に市販されているものを使用することができる。アルミナセメントの配合量は、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%の範囲内である。ここで、該配合量が1質量%未満では、強度不足となり、耐熱衝撃性が低下するために好ましくない。また、該配合量が10質量%を超えると、CaO成分量が増加して耐食性が低下するために好ましくない。
【0022】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物において、上述のクロミア骨材、酸化クロム、ジルコニア微粉及びアルミナセメント以外の残部は、アルミナ骨材及び/またはアルミナ微粉のようなアルミナ質原料から構成される。アルミナ質原料としては、例えば電融アルミナ、焼結アルミナ、仮焼アルミナ等を使用することができる。なお、アルミナ質原料としては、純度98質量%以上のものを使用することが好ましい。
【0023】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物には、使用温度が低かったり、背面の水冷により、稼動面部に対して背面側の強度が不足する場合、シリカフラワーを1質量%以下の量で配合することができる。ここで、該配合量が1質量%を超えると、耐食性に影響を及ぼすために好ましくない。
【0024】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物の粒度構成は、1.0mm以上が30〜70質量%、好ましくは35〜65質量%、0.1mm以下が25〜60質量%、好ましくは30〜55質量%の範囲内の一般的な粒度範囲を有するものでよい。
【0025】
また、本発明のクロミア質キャスタブル耐火物には、施工体を緻密化するために分散剤を配合する。分散剤は解膠剤とも称され、キャスタブル耐火物施工時に流動性を付与する効果も有する。分散剤の材質としては、従来から種々のものが提案されているが、特に限定されるものではなく、例えばトリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ウルトラポリリン酸塩、酸性ヘキサメタリン酸塩などの無機系分散剤や、ポリアクリル酸塩、スルホン酸塩、オキシカルボン酸塩などの有機系分散剤などを挙げることができる。なお、分散剤の配合量は、上記成分100質量%に対して外掛けで0.03〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.3質量%の範囲内である。
【0026】
また、本発明のクロミア質キャスタブル耐火物には、キャスタブル耐火物を施工する際に施工時の作業性や可使時間などを調節するために通常使用されている硬化調整剤を使用することができる。硬化調整剤には、硬化促進剤と硬化遅延剤があり、例えばホウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、消石灰、炭酸リチウムなどを使用することができる。なお、硬化調整剤の配合量は、上記成分100質量%に対して外掛けで0.5質量%以下の範囲内である。
【0027】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物は、該キャスタブル耐火物に対して外掛けで3〜8質量%、好ましくは3〜7質量%程度の水を添加、混練し、型枠を用いて流し込み施工することができる。ただし、液状結合材を使用する場合は液分の量だけ水を減らす必要がある。施工の際には充填性を向上させるため、型枠にバイブレーターを取り付けるか、あるいは混練物中に棒状バイブレーターを挿入して施工することができる。
【0028】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物は、廃棄物溶融炉に直接流し込み施工するだけでなく、予め任意の形状に施工し、乾燥、焼成したブロック、いわゆるプレキャストブロックを内張り材として使用することもできる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明のクロミア質キャスタブル耐火物を更に説明する。
表4に示す配合割合で各原料成分を配合したキャスタブル耐火物に所定量の水を加えて混練し、得られた混練物を型枠に流し込み、硬化させ、脱枠することにより成形体を得た。なお、クロミア骨材として下記の表1に記載するものを使用した:
【0030】
【表1】

【0031】
このようにして得られた成形体を110℃で24時間にわたり乾燥することにより供試体を得、耐食性及び耐熱衝撃性を次に示す方法により評価した。得られた結果を表4に併記する。
【0032】
侵食及び浸透テスト
ドラムの内側に供試体を内張りし、そのドラムを回転させながら酸素−プロパンバーナーで内張りした供試体を1650℃まで加熱、昇温させた。そこに下記の組成を有するスラグを投入し、12時間にわたり侵食試験を行った。供試体の耐食性は、侵食により減った供試体の厚み(mm)により評価し、耐浸透性はスラグの浸透深さにより評価した。なお、本発明品1の溶損量及び浸透深さを100とする指数で示した。指数が小さいほど良好であることを示す。
【0033】
スラグ組成:(化学分析値:質量%)
【表2】

【0034】
耐熱衝撃性テスト
並形れんがサイズ(230mm×114mm×65mm)の供試体を用い、長さ方向に対する片面を電気炉にて1400℃で30分間加熱した後、強制空冷を30分間行った。この加熱−冷却を10回繰り返した後、供試体切断面を観察することにより、亀裂の発生状況、背面組織の脆化の程度を次の4段階で評価した:
【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
表4に示すように、シリカ成分を添加したクロミア骨材を使用した場合でも、シリカ成分を含まないクロミア骨材を使用した場合とほぼ同等の耐食性が得られる一方、スラグの浸透量が大幅に低減され、また、耐熱衝撃性にも優れることが判る。ただし、クロミア骨材中のシリカ成分量が10質量%を超えると、耐食性は低下し、亀裂の発生が大きくなることが判る。
【0038】
ジルコニア微粉を添加しても、耐食性への影響はほとんどないが、耐熱衝撃性は大幅に向上する傾向が認められ、シリカ成分を添加したクロミア骨材を使用した場合には、ジルコニア微粉の添加効果は大きく発揮されることが判る。ただし、ジルコニア微粉の添加量が15質量%を超えると、クロミア骨材とマトリックスとの結合性が著しく損なわれ、粒度構成との関係からマトリックス中に含まれるクロム量が少なくなるために耐食性は低下傾向にあることが判る。
【0039】
シリカフラワーは、スラグの浸透抑制、背面組織の脆化抑制には有効であるが、添加量が1質量%を超えると、表4中の比較品8から判るように著しく耐熱衝撃性が低下するため、1質量%以下の量で活用することができることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のクロミア質キャスタブル耐火物は、溶融スラグに対する高耐食性及び高耐熱衝撃性を必要とする各種工業炉の内張り材として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cr:70〜90質量%、Al:5〜20質量%及びSiO:1〜10質量%の組成を有するクロミア骨材5〜85質量%、酸化クロム微粉5〜35質量%、ジルコニア微粉1〜15質量%、アルミナセメント1〜10質量%を含有してなり、残部がアルミナ骨材及び/またはアルミナ微粉から構成されることを特徴とするクロミア質キャスタブル耐火物。
【請求項2】
シリカフラワーを1質量%以下の量で含有する、請求項1記載のクロミア質キャスタブル耐火物。
【請求項3】
請求項1または2記載のクロミア質キャスタブル耐火物に水を加えて混練、成形、乾燥するか、もしくは更に焼成することにより得られるプレキャストブロック。

【公開番号】特開2010−280540(P2010−280540A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136029(P2009−136029)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】