説明

クロム基板上に二酸化チタン(TiO2)薄膜がコーティングされた親水性の鏡およびその製造方法

本発明は、クロム基板上に光触媒効果が優れたアナターゼ型の二酸化チタン(TiO2)薄膜を得るために提案された親水性光触媒体およびその製造方法に関するものであって、より詳しくは基板の温度を200℃以下に維持した状態で非晶質二酸化チタン(TiO2)薄膜をコーティングし、二酸化チタン(TiO2)薄膜直上に純アナターゼ型を有する二酸化チタン(TiO2)薄膜をコーティングして、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO2)薄膜直上に二酸化ケイ素(SiO2)薄膜をコーティングすることによって、UV照射に応じた光触媒効果である10度以下の超親水性が1時間以内に現れて、水との接触角が20°以下の親水性が18時間まで維持される特徴を有するクロム基板上に二酸化チタン(TiO2)薄膜がコーティングされた親水性光触媒体およびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロム基板上に光触媒機能に優れたアナターゼ(ANATASE)型を有する二酸化チタン(TiO2)薄膜の親水性鏡およびその製造方法に関するものであって、より詳しくは反射率を減少させて、親水性を向上させた光触媒体の鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に光触媒特性を有する二酸化チタン(TiO2)の結晶構造には、アナターゼ(ANATASE)、ルチル(RUTILE)、ブルッカイト(BROOKITE)の3種類がある。
この中でアナターゼ(3.2eV)型とルチル(3.0eV)型TiO2は光励起による親水効果を示して、このような光活相には、ルチル型よりアナターゼ型がさらに優れていると知られているのに、このような原因はアナターゼ型TiO2のバンドギャップがルチル型TiO2より大きいためである。
親水特性が現れるためには、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO2)に、比較的に短波長の紫外線を照射すべきであり、親水性が夜間にも維持されるためには、光励起過程で発生した電子と正孔との再結合を遅延させるのが望ましい。
【0003】
光触媒特性を有する部品中の一つが自動車のサイドミラーであり、サイドミラーとしては、青色(BLUE)鏡が有利である。その理由は、周囲が暗くなるほど、人の視感も最高値が青色へ移る特徴があって、夜間に良好な可視性を提供することができるためである。
【0004】
二酸化チタン(TiO2)の光触媒効果による親水性鏡を製造する方法に関する先行技術として、(特許文献1)が提案されており、前記先行技術による方法は、特に、ガラスを基板で使ったものとして、ここに紫外線を照射する場合、親水性鏡は基板と水との接触角が10°以下として超親水特性を示す長所がある反面、紫外線を遮断する場合には超親水性を喪失する短所も有している。
【0005】
前記先行技術に基づく改善された技術として、(特許文献2)で提案された発明によると、既存のガラス基板上に、単に二酸化チタン(TiO2)薄膜をコーティングする代わりに、反射率に優れた金属クロムメッキ層上に反射率調節のためのSiO2、A12O3、SnO2、MgF2等の薄膜を形成した後、その上に再びTiO2薄膜をコーティングすることによる青色の親水性鏡の製造方法を提案している。
【0006】
親水性鏡が効果的に利用されるためには先に言及した通り、紫外線が遮断された夜間にもその親水性が維持されるべきなのに、そのために前記改善された先行技術では、水に対する吸着特性に優れていると知られた二酸化ケイ素(SiO2)を薄膜の最上層に形成しており、二酸化ケイ素(SiO2)に吸着した水分子は昼間に紫外線照射によって、発生した二酸化チタン(TiO2)表面のヒドロキシルラジカル(OH-)と結合して、親水性が長時間維持されるように手伝う補助作用をし、この従来技術に応じたミラーの構造は図1に示されたことと同じである。
【0007】
図1に示された従来技術に応じた自動車用ミラーの構成は、基板(5)の正面にクロム反射膜(4)が形成され、クロム反射膜(4)の直上には反射率調節層(6)が形成され、反射率調節層(6)の上面には二酸化チタン(TiO2)薄膜(7)が形成される。
また、二酸化チタン(TiO2)薄膜(7)上に多孔質二酸化ケイ素(SiO2)薄膜(8)が提供され、多孔質二酸化ケイ素(SiO2)薄膜(8)の厚さは二酸化チタン(TiO2)薄膜(7)による光触媒機能が十分に鏡面(9)に到達することができるように10nmから50nmの厚さを有する。
【0008】
前記反射率調節層(6)は、TiO2より低い屈折率を有するA12O3、ZrO3、SnO2、SiO2を含む物質から形成され、前記二酸化チタン(TiO2)は本質的に高い屈折率を有し、クロム反射膜(4)からの反射された画像は、ぼやけた画像を生成しようとする傾向がある。
しかし、前記改善された先行技術は、二酸化ケイ素(SiO2)薄膜の厚さが過度に厚い場合、下部の二酸化チタン(TiO2)薄膜から発生した正孔と電子らが表面に露出しにくくて親水特性が弱化できる問題点があるので、最上層二酸化ケイ素(SiO2)の厚さが15nm以下で提案される短所があって、また、ガラスおよびクロムメッキ層上でコーティングがなされるので、その製造工程が複雑であって、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO2)薄膜の結晶性が優れない短所がある。
【0009】
さらに、クロムメッキ層上に反射率調節のための酸化膜をコーティングする場合、酸化膜と金属との接着力も弱まる問題点を内包する。
【特許文献1】大韓民国登録番号第10−7004587号
【特許文献2】大韓民国登録番号第10-0397252号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのために、前記従来先行技術の問題点を解消するために提案された本発明は、クロムメッキ層上に非晶質状を有する二酸化チタン(TiO2)薄膜をコーティングして、その上に結晶性に優れたアナターゼ型の二酸化チタン(TiO2)薄膜をコーティングすることによって光触媒特性に優れた親水性薄膜を有する親水性光触媒体およびその製造方法を提供することと共に、水との吸着力に優れた二酸化ケイ素(SiO2)薄膜を最上層に付加することによって、夜間にも親水性がそのまま維持される親水性光触媒体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するための本発明の親水性光触媒体は、二酸化チタン(TiO2)薄膜層を含む光触媒体において、クロムメッキ層が形成された基板上に非晶質構造の第1二酸化チタン(TiO2)薄膜がコーティングされ、前記第1二酸化チタン(TiO2)薄膜上に純水アナターゼ型の第2二酸化チタン(TiO2)薄膜がコーティングされたことを特徴とする。
より望ましい本発明の親水性光触媒体は、前記第2二酸化チタン(TiO2)薄膜上に二酸化ケイ素(SiO2)薄膜がさらにコーティングされたことを特徴とする。
ここで前記基板は、ガラス、金属、セラミックのうちのいずれか一つであることもあって、前記第1二酸化チタン(TiO2)薄膜の厚さは、5nm乃至100nmであるのが好ましい。
【0012】
また、前記第2二酸化チタン(TiO2)薄膜の厚さは、10nm乃至200nmになる一方、前記二酸化ケイ素(SiO2)薄膜の厚さは、5nm乃至20nmであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるクロム基板上に二酸化チタン(TiO2)薄膜がコーティングされた光触媒体によると、非晶質二酸化チタン(TiO2)薄膜は、その直上に二酸化チタン(TiO2)薄膜がコーティングされる場合、その薄膜の結晶構造が純粋なアナターゼ型で形成されるようにする効果を有し、光触媒体の一つとして前記特徴により製造された親水性ミラーはUV照射により優秀な超親水性を示す。
また、アナターゼ型の二酸化チタン薄膜上に二酸化ケイ素薄膜がコーティングされると、親水特性がUV照射後、18時間まで維持される優れた特性を示すので、これを光触媒体の一つである自動車のミラーに適用すれば、超親水性効果によって雨天時や霧が形成されやすい環境で、ミラー表面に液滴の形成を抑える効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の典型的な実施態様を添付した図面を参照して具体的に説明する。
図2は、本発明の典型的な実施態様についての親水性光触媒体を示す断面図であり、本発明の光触媒体の親水性ミラーは、クロムがコーティングされた商業用鏡を基板(10)として使用する。
図2に示されているようにガラス基板(10)上にクロムメッキ層(20)が形成された商業用ミラーに使用される、本発明による親水性光触媒体を製造するためには、まず、前記クロムメッキ層(20)上に存在する不純物や酸化膜などを除去するためにアセトン溶液内でクロムメッキ層(20)の超音波洗浄を実施する。
以降、クロムメッキ層(20)上にスパッタリング(SPUTTERING)法を利用して、非晶質の二酸化チタン(TiO2)薄膜(31)をコーティングし、これを第1二酸化チタン薄膜(31)と称することにする。
前記第1二酸化チタン薄膜(31)は、ルチルやアナターゼ型でない非晶質状を示すのが望ましいが、これは前記非晶質の第1二酸化チタン(TiO2)薄膜(31)が結晶質状に比べて、薄膜内残留応力が小さいから基板と薄膜との結合力を増大する効果があるためである。
また、前記第1二酸化チタン薄膜(31)の厚さは、好ましくは5〜100nmであり、前記第1二酸化チタン薄膜(31)の最小厚さが5nmである理由としては、二酸化チタンの結晶粒大きさが最小5nm以上であるので、薄膜が良好な単一層で形成されるためには最小5nmが好ましいからである。
前記第1二酸化チタン薄膜(31)の最大の厚さが100nm以下であるのは、後述するアナターゼ型の第2二酸化チタン薄膜(32)の厚さと関連する。つまり、第1二酸化チタン薄膜(31)と第2二酸化チタン薄膜(32)との二重像を避けるためには、第1および第2二酸化チタン薄膜(31)(32)の全体の厚さが150nm以下に制限されることが好ましいからであって、ここで親水効果が現れるためには、アナターゼ型の第2二酸化チタン薄膜(32)の厚さが最小50nm以上にならなければならないので、結局、非晶質二酸化チタン薄膜(31)の最大の厚さは100nmである。
したがって、第2二酸化チタン薄膜(32)の厚さが80nmだったら、第1二酸化チタン薄膜(31)の厚さは70nm以下に制限することによって、全体の二酸化チタン薄膜(31)(32)の厚さが150nm以下にならなければならないものである。
次に、前記非晶質の第1二酸化チタン(TiO2)薄膜(31)上には、光触媒機能を有する二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)をコーティングして、これを第2二酸化チタン薄膜(32)と称することにする。
【0015】
前記光触媒機能を有する第2二酸化チタン薄膜(32)の厚さは、10nm〜200nmが好ましく、ここで第2二酸化チタン薄膜(32)の厚さが最小10nmである理由は、第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)内結晶の大きさが最小10nmと観察されたためであり、また、最大200nmである理由は、紫外線が浸透できる最大の深さが200nmであるためである。
また、第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)の厚さが200nm以上の場合、光触媒効果が現れないだけでなく、クロムメッキ層(20)と第1二酸化チタン(TiO2)薄膜(31)とから独立的に反射される現象によって、反射されたイメージが二重で重なる問題が発生することになるので、第2二酸化チタン薄膜(32)の厚さは、10nm乃至200nmであるのが好ましい。
このとき、第1二酸化チタン薄膜(31)と第2二酸化チタン薄膜(32)との厚さは、二重像を防ぐために第1二酸化チタン薄膜(31)の厚さを考慮して、150nm以下であるという点を勘案すれば、第2二酸化チタン薄膜(32)の厚さは必要に応じて適宜調節することができる。
【0016】
第1二酸化チタン(TiO2)薄膜(31)上にコーティングされた第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)の結晶構造はアナターゼ型を有しており、その下部の非晶質の第1二酸化チタン(TiO2)薄膜(31)は、上部の第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)との結合力を増進させる機能をすることと共に第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)とクロムメッキ層(20)とを互いに分離させることによって、第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)が純粋なアナターゼ型で形成されて、第2二酸化チタン薄膜(32)がアナターゼの構造を有することは図3乃至図5に記載されている。
【0017】
図3は、非晶質TiO2がコーティングされたクロム基板上に製造されたTiO2薄膜の結晶構造を説明するためのXRDスペクトルを示し、非晶質TiO2薄膜とアナターゼTiO2薄膜との結晶構造によりX線の回折が異なるように現れる。図3によると、クロム(Cr)基板上にコーティングされたTiO2薄膜の特性は、アナターゼ型(ANATASE)とルチル(RUTILE)型とが混在((b)項参照)されて現れた反面、非晶質TiO2薄膜の基板上にコーティングされたTiO2薄膜は、アナターゼ型だけを形成((c)項参照)している。
【0018】
図4は、クロム基板上のTiO2薄膜及び非晶質TiO2がコーティングされたクロム基板上に形成されたTiO2薄膜の微細組織を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、図5は、クロム基板および非晶質TiO2がコーティングされたクロム基板上にそれぞれ製造されたTiO2薄膜のAFM写真である。図4の(a)および図5の(a)によると、クロム基板上にコーティングされたTiO2薄膜の微細組織は、板状のルチル型が観察された反面、図4の(b)および5の(b)のように、非晶質TiO2がコーティングされたクロム基板上に形成されたTiO2薄膜の場合、20nmから30nmの間の均一な円柱状の非常に微細なアナターゼ型の組織が観察された。
【0019】
このように、本発明により非晶質の第1二酸化チタン(TiO2)薄膜(31)上にコーティングされた第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)は、ルチル型が混在されない20nm乃至30nmの間の均一なアナターゼ型の組織が形成される。
ここで非晶質薄膜は、結晶構造を持つことができないから、非晶質の第1二酸化チタン(TiO2)薄膜(31)上部に第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)を形成すれば、界面の結晶学的連続性が維持される必要がないので、アナターゼ型の形成が容易である。
このように形成されたアナターゼ型の第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)上には、最小5nm以上、最大20nm以下の厚さの二酸化ケイ素(SiO2)薄膜(40)を形成する。
【0020】
二酸化ケイ素(SiO2)薄膜(40)が5nm未満である場合、水の吸着が発生しないで、20nmをこえる場合、第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)の表面を完全に遮断するために親水維持特性が現れないので、二酸化ケイ素(SiO2)薄膜(40)の厚さは5nm乃至20nmであるのが好ましい。
【0021】
従来技術に知られた通り、二酸化ケイ素(SiO2)は水を吸着する特性があるところ、本発明の親水性基板の最上層に、このような二酸化ケイ素(SiO2)をコーティングする理由は、アナターゼ型の第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)の親水特性を持続するためである。
【0022】
つまり、アナターゼ型の第2二酸化チタン(TiO2)薄膜(32)は、紫外線照射によって、電子と正孔とを発生させ、その発生した正孔が薄膜表面にヒドロキシルラジカル(OH-)を形成することによって、親水特性が発揮され、その時水との吸着力に優れた二酸化ケイ素(SiO2)がこのような親水特性を維持させる作用をする。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を添付した図面を通して、より詳しく説明するが、該説明は図解の目的のための好ましい例示であり、本発明の範囲はこれらに限定されない。
例えば、後述するように選択されるガラス基板は、金属基板、セラミック基板などでおき替えることができ、この場合、必ず自動車のミラーにだけ適用されることを意味するものではない。
【0024】
まず、図2を参照すると、本発明によりクロムメッキ層(20)が形成されたガラス基板(10)を用意した後、クロムメッキ層(20)を、アセトンを利用して洗浄し、クロムメッキ層(20)上に200℃以下の温度でTiO2を、最小5nm以上の条件を満足するように10nmの厚さに非晶質の第1TiO2薄膜(31)をコーティングした。
ここで、第1TiO2薄膜(31)のコーティング温度は、25℃乃至200℃の範囲内とするのが好ましく、基板の温度が200℃を超える場合、非晶質構造の薄膜が形成されなくて、アナターゼ型およびルチル型が形成されるから最大200℃以下が望ましくて、また、基板の温度が25℃未満であれば、第1TiO2薄膜と基板の接着力が低下して第1TiO2薄膜が基板から剥離することがあるからである。
【0025】
また、第1TiO2薄膜(31)の直上には、アナターゼ構造の第2TiO2薄膜(32)を最小10nm以上、最大200nm以下の条件を満足するように100nmの厚さにコーティングし、最後に最上層にSiO2薄膜(40)を最小5nm以上、最大20nm以下の条件を満足するように10nmの厚さにコーティングして、「アナターゼTiO2/非晶質TiO2/クロム層/ガラス基板」構造を有するミラーを製造した。
【0026】
実験例1
実験例1は、前記実施例によって、製造された「アナターゼTiO2/非晶質TiO2/クロム層/ガラス基板」構造を有するミラー(以下、‘親水性ミラー’と言う)の親水性特性を評価したもので、比較対照には、ルチル型が含まれている「(アナターゼ+ルチル)TiO2/クロム層/ガラス基板」構造を有するミラー(以下、‘対照ミラー’と言う)を用意し、親水性ミラーおよび対照ミラーの表面にそれぞれ水滴を接触させた後、紫外線(UV)を利用して基板と液滴との接触角を評価して、これを図6に示した。
図6は、対照としてのクロム基板と、本発明としての非晶質TiO2とがコーティングされたクロム基板上にそれぞれ形成されたTiO2薄膜の親水性変化を示したグラフである。
【0027】
図6を参照すれば、UV照射に応じた接触角変化において、本発明による親水性ミラーが紫外線(UV)を照射した後、1時間以内に接触角10°以下に落ちて、超親水特性(一般に接触角10°以下を‘超親水性’という)(図6の-白丸-グラフ)を示す反面、対照ミラーの場合は、5時間が経過してから親水性ミラーと同一な特性(図6の-黒四角-グラフ)を示した。
また、紫外線(UV)を36時間照射した後、紫外線(UV)が除去された状態で時間により接触角が変化される推移を測定して、親水維持力評価をしたが、本発明の親水性ミラーは、3時間まで20°以下の親水特性(一般に20°以下を‘親水性’という)(図6の-白下向き三角-グラフ)を示す反面、対照ミラーの場合は、2時間が経過しながら20°を超過(図6の-白上向き三角-グラフ)した。
【0028】
このように本発明による親水性ミラーは、UV照射により親水特性が大きく向上されて、持続力もまた、優れた結果を示している。
【0029】
実験例2
実験例2は、「アナターゼTiO2/非晶質TiO2/クロム層/ガラス基板」構造を有する親水性ミラーの最上層にSiO2をさらにコーティングして得られた「SiO2/アナターゼTiO2/非晶質TiO2/クロム層/ガラス基板」構造を有する親水性ミラーの親水性を評価するためのものである。実験方法は前述した実験例1のように、ミラー表面に水滴を接触させた後、紫外線(UV)を利用して基板と水滴との接触角を評価して、この結果を図7に示した。
【0030】
図7を参照すれば、紫外線(UV)照射に応じた接触角変化において、本発明の親水性ミラーは紫外線(UV)照射1時間以内に接触角7°以下の超親水特性(図7の-黒四角-グラフ)を示したし、また、紫外線(UV)を36時間照射した後、紫外線(UV)が除去された状態で、時間に応じた接触角変化推移を測定して親水維持力を評価した結果、18時間まで20°以下の親水特性(図7の-白丸-グラフ)を示した。
【0031】
このように、光触媒効果により、親水特性を示す純粋なアナターゼTiO2薄膜の結晶構造が、その下部に非晶質TiO2薄膜を形成することによって得られたし、このように得られたアナターゼTiO2薄膜上に親水維持力を付与するためにSiO2をコーティングして評価した結果、商用化することに十分な条件を満足した。
【0032】
つまり、親水性ミラーの商用化のためには、紫外線指数が非常に低く現れる遅れた午後から早朝に達する約12時間以上持続される親水維持力が必要であるところ、本発明による親水性ミラーは、前記商業用条件の親水性を十分に達成しているものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明による光触媒体は、自動車に適用されるミラーだけでなく、親水性ミラーを構成する基板がガラス、金属、タイルのようなセラミックであることもあり、これによって自動車以外に建築材料のように他の用途の製品に適用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来技術の親水性ミラーを示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に応じた親水性光触媒体を示す断面図である。
【図3】クロム基板上に形成されたTiO2薄膜の結晶構造を説明するためのXRDスペクトル。
【図4】クロム基板および非晶質TiO2がコーティングされたクロム基板上に形成されたTiO2薄膜のSEM写真である。
【図5】クロム基板および非晶質TiO2がコーティングされたクロム基板上に形成されたTiO2薄膜のAFM写真である。
【図6】クロム基板および非晶質TiO2がコーティングされたクロム基板上に形成されたTiO2薄膜の親水性変化を示したグラフである。
【図7】最上層にSiO2がコーティングされたTiO2薄膜の親水性変化を示したグラフである。
【符号の説明】
【0035】
10:基板
20:クロムメッキ層
31:第1二酸化チタン(TiO2)薄膜
32:第2二酸化チタン(TiO2)薄膜
40:二酸化ケイ素(SiO2)薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン(TiO2)薄膜層を有する親水性光触媒体であって、該親水性光触媒体が、
クロムメッキ層が形成された基板上に非晶質構造の第1二酸化チタン(TiO2)薄膜がコーティングされたもの、及び、前記第1二酸化チタン(TiO2)薄膜上に純粋アナターゼ型の第2二酸化チタン(TiO2)薄膜がコーティングされたものを有することを特徴とする親水性光触媒体。
【請求項2】
前記第2二酸化チタン(TiO2)薄膜上に二酸化ケイ素(SiO2)薄膜がコーティングされたことを特徴とする請求項1に記載の親水性光触媒体。
【請求項3】
前記基板はガラス、金属、及びセラミックからなる群より選ばれるものである請求項1または2に記載の親水性光触媒体。
【請求項4】
前記第1二酸化チタン(TiO2)薄膜の厚さが5nm乃至100nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性光触媒体。
【請求項5】
前記第2二酸化チタン(TiO2)薄膜の厚さが10nm乃至200nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性光触媒体。
【請求項6】
前記二酸化ケイ素(SiO2)薄膜の厚さが5nm乃至20nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性光触媒体。
【請求項7】
二酸化チタン(TiO2)薄膜層を含む親水性光触媒体の製造方法において、
クロム基板を洗浄し、クロム基板上に非晶質構造の二酸化チタン(TiO2)薄膜を25℃乃至200℃範囲の温度下で5nm乃至100nmの厚さにコーティングして、前記非晶質構造の二酸化チタン薄膜の表面にアナターゼ型の二酸化チタン薄膜を10nm乃至200nmの厚さにコーティングすることを特徴とする親水性光触媒体の製造方法。
【請求項8】
前記アナターゼ型の二酸化チタン薄膜上に二酸化ケイ素(SiO2)薄膜を5nm乃至20nm厚さにコーティングすることを特徴とする請求項7に記載の親水性光触媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−509048(P2010−509048A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536145(P2009−536145)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000178
【国際公開番号】WO2008/056852
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(508246962)サンテック シーオー.,エルティーディー. (1)
【氏名又は名称原語表記】SUNTECH CO.,LTD.
【出願人】(508247475)コンジュ ナショナル ユニバーシティー インダストリー アカデミア コーポレーション グループ (1)
【氏名又は名称原語表記】KONGJU NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY ACADEMIA COOPERATION GROUP
【Fターム(参考)】