説明

クロージャ

【課題】簡便かつ確実にケーブルの接続点を浸水から保護できるクロージャの提供。
【解決手段】光ケーブル2a,2bが引き込まれたクロージャ1内部の底面上に、ガスボンベ36内の圧縮充填ガス放出用のガス供給口31、該ガス供給口を閉鎖状態から開放状態に切り換えてガスを放出させる開閉切り換え用の開閉用可動片310、該開閉用可動片に当接してこれを閉鎖状態に保持する当接部材33、該当接部材33に付勢力を付与して前記開閉用可動片を開放状態に切り替える第二の開放用ばね34、該第二の開放用ばねの付勢力に抗して、前記当接部材に接してこれを静止させ、開閉用可動片を閉鎖状態に保持する移動規制部材32、を具備するガス放出ユニット3を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの接続点を浸水から保護するクロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルの接続点は、通常クロージャと呼ばれる気密性の接続点防護ケースに収容され、保護されている。ケーブルは、例えば、地下管路に敷設される場合と、地上高所に敷設される場合とがあるが、いずれにおいても、その接続点がクロージャに収容されていることで、外部からの浸水に対して保護されているのである。
そして、クロージャにピンホール等が生じた場合でも、クロージャ内部への浸水を防止するための保守策が施される。
【0003】
例えば、メタルケーブルをクロージャで接続する場合には、局舎側のメタルケーブル末端から、乾燥空気などの不活性ガスを大気圧以上の圧力でメタルケーブル中に送出する。これにより、送出された不活性ガスは、ケーブル中からクロージャ内に到達し、クロージャ内の圧力を大気圧以上の圧力に保持するので、クロージャ内部への浸水が防止される。このような浸水からの保守方法は、通常「ガス保守方式」と呼ばれる(例えば、非特許文献1参照)。「ガス保守方式」が適用可能なのは、メタルケーブルの密度が比較的小さいため、メタルケーブル中のガス流動抵抗が小さく、不活性ガスを容易にクロージャ内に供給できるからである。
【非特許文献1】電子情報通信ハンドブック,7−10編「通信線路」,電子情報通信学会編(2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ケーブルの密度が大きい光ケーブル等の場合には、ケーブル中のガス流動抵抗が大きいため、「ガス保守方式」は適用できない。なぜなら、ケーブルの不活性ガス供給末端からの距離が大きくなるほど、十分な圧力の不活性ガスをクロージャ内に供給できないからである。
したがって、光ケーブル等のようにガス流動抵抗が大きいケーブルに対しては、従来、クロージャの気密性を高くすること以外に、浸水防止策を適用できないという問題点があった。
また、クロージャの気密性は、例えば、クロージャ本体に取り付けられたガスバルブから大気圧以上の圧力の乾燥空気をクロージャ内に封入し、クロージャの合わせ目等からガス漏れが無いかを確認することで検査できる。しかし、施工直後にガス漏れが無くても、経時劣化により気密性が低下することがあり、長期間にわたって確実にケーブルの接続点を浸水から保護する方法がないのが現状であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、簡便かつ確実にケーブルの接続点を浸水から保護できるクロージャを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、
請求項1に係る発明は、クロージャであって、ケーブルが引き込まれるクロージャスリーブ内に、ガスボンベ内の圧縮充填されたガスの放出用のガス供給口に設けられている開閉弁を含み該開閉弁を閉鎖状態から開放状態に切り換えることで前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させる弁開放ユニットが設けられ、前記ガスは、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス(CO)およびこれらの二種以上の混合ガスのいずれかであり、前記弁開放ユニットは、前記開閉弁と、該開閉弁に突設されている開閉切り換え用の開閉用可動片を直接、あるいは、前記開閉用可動片の前記開閉弁から突出された突出部に当接又は連結される付勢力伝達部材を介して付勢して、前記開閉用可動片を、前記開閉弁を閉鎖する閉位置から前記開閉弁を開放する開位置に移動するための開放用ばねと、この開放用ばねの付勢力に抗して、前記開閉用可動片あるいは前記付勢力伝達部材の前記開放用ばねの付勢力による移動を阻止する移動規制部材とを具備し、前記移動規制部材は、水との接触により崩壊又は溶解する材質で形成され、前記開閉用可動片の前記突出部、又は、該突出部を直接あるいは前記付勢力伝達部材を介して前記開放用ばねの付勢力によって付勢する付勢機構の構成部材に接して、前記クロージャスリーブ内に固定して1又は複数箇所に設けられて、前記開閉用可動片あるいは前記付勢力伝達部材の前記開放用ばねの付勢力による移動を阻止しており、前記弁開放ユニットは、前記移動規制部材が水との接触により崩壊又は溶解することで、前記開放用ばねの付勢力によって前記開閉弁の開閉用可動片を前記閉位置から開位置へ移動して、前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させることを特徴とするクロージャである。
請求項2に係る発明は、クロージャであって、ケーブルが引き込まれるクロージャスリーブ内に、ガスボンベ内の圧縮充填されたガスの放出用のガス供給口に設けられている開閉弁を含み該開閉弁を閉鎖状態から開放状態に切り換えることで前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させる弁開放ユニットが設けられ、前記ガスは、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス(CO)およびこれらの二種以上の混合ガスのいずれかであり、前記開閉弁は、該開閉弁に突出量可変として組み込まれた開閉切り替え用の開閉用可動片と、該開閉用可動片を前記開閉弁から突出するように付勢する開放用ばねとを具備し、前記弁開放ユニットは、前記開閉弁と、前記開閉用可動片の前記突出部に当接された当接部材と、水との接触により崩壊又は溶解する材質からなる移動規制部材とを具備し、前記開閉弁及び前記当接部材の一方又は両方に接して設けられた1又は複数の前記移動規制部材が、前記開放用ばねの付勢力に抗して前記開閉弁と前記当接部材との間の距離の増大を阻止して、前記開閉用可動片が前記開閉弁に押し込まれた状態が維持され、前記移動規制部材が水との接触により崩壊又は溶解することで、前記開閉用可動片が前記開閉弁に押し込まれた閉位置から、前記開放用ばねの付勢力によって前記開閉弁から突出されて、前記開閉弁を開放する開位置へ移動され、前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させることを特徴とするクロージャである。
請求項3に係る発明は、さらに、前記弁開放ユニットに、前記開閉弁及び前記当接部材の一方又は両方を付勢して前記開閉弁と前記当接部材との間を離隔させる離隔用ばねが設けられ、前記移動規制部材は、前記離隔用ばねの付勢力に抗して、前記開閉弁と前記当接部材との間の距離の増大を阻止することを特徴とする請求項2に記載のクロージャである。
請求項4に係る発明は、クロージャであって、ケーブルが引き込まれるクロージャスリーブ内に、ガスボンベ内の圧縮充填されたガスの放出用のガス供給口に設けられている開閉弁を含み該開閉弁を閉鎖状態から開放状態に切り換えることで前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させる弁開放ユニットが設けられ、前記ガスは、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス(CO)およびこれらの二種以上の混合ガスのいずれかであり、前記開閉弁は、該開閉弁に突出量可変として組み込まれた開閉切り替え用の開閉用可動片を具備し、前記弁開放ユニットは、前記開閉用可動片を前記開閉弁からの突出寸法が開位置に比べて大きい閉位置に配置した前記開閉弁と、前記開閉用可動片の前記突出部を押圧して前記開閉用可動片を開閉弁に押し込むための当接部材と、前記開閉弁及び前記当接部材の一方又は両方を付勢して前記開閉弁と前記当接部材とを互いに接近させる開放用ばねと、水との接触により崩壊又は溶解する材質からなり前記開閉弁及び前記当接部材の一方又は両方に接して設けられて前記開放用ばねの付勢力に抗して前記開閉弁と前記当接部材との間の接近を阻止する1又は複数の移動規制部材とを具備し、前記移動規制部材が水との接触により崩壊又は溶解することで、前記開放用ばねの付勢力によって前記当接部材に押圧された前記開閉用可動片が、前記閉位置から前記開閉弁に押し込まれて前記開閉弁を開放する開位置へ移動され、前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させることを特徴とするクロージャである。
請求項5に係る発明は、前記開閉用可動片が、前記開閉弁のハウジングに組み込まれて、該開閉弁に設けられた突出用ばねによって前記ハウジングから突出するように付勢されたステムであり、前記開閉弁から突出する突出部に開口するガス放出孔を具備することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のクロージャである。
請求項6に係る発明は、前記開閉弁及び前記当接部材の一方が前記クロージャスリーブ内に固定され、前記移動規制部材は、前記開放用ばねの付勢力に抗して、前記開閉弁及び前記当接部材の他方の移動を規制することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のクロージャである。
請求項7に係る発明は、前記弁開放ユニットが、クロージャ内の底部に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のクロージャである。
請求項8に係る発明は、クロージャであって、ケーブルが引き込まれるクロージャスリーブ内に、ガスボンベ内の圧縮充填されたガスの放出用のガス供給口が設けられ、前記ガスは、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス(CO)およびこれらの二種以上の混合ガスのいずれかであり、前記ガス供給口は、その開口部が水との接触により崩壊または溶解する材質からなる封止部材で封止されていることを特徴とするクロージャである。
請求項9に係る発明は、前記ガス供給口がクロージャ内の底部に設けられていることを特徴とする請求項8に記載のクロージャである。
請求項10に係る発明は、前記ガスボンベが、前記クロージャスリーブの外側に設置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のクロージャである。
請求項11に係る発明は、前記移動規制部材または封止部材が、岩塩または生石灰からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のクロージャである。
請求項12に係る発明は、前記ガスの充填量が、クロージャ内の圧力を、常温で大気圧より少なくとも0.65気圧高く維持できる量であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のクロージャである。
請求項13に係る発明は、さらに、浸水検知センサが内部に設けられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のクロージャである。
請求項14に係る発明は、内部に引き込まれたケーブルの露出断面に、ガス透過抑制手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のクロージャである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡便かつ確実にケーブルの接続点を浸水から保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
本発明のクロージャは、ピンホール等の隙間が生じて内部に浸水が生じても、さらなる浸水を速やかに防止するものであり、この間に浸水箇所を特定して補修できるので、ケーブルの接続点を簡便且つ確実に浸水から保護できるものである。
そして、例えば、従来の「ガス保守方式」のクロージャは、クロージャ内への浸水を一切防止することを目的としたものであるのに対し、本発明のクロージャは、内部への浸水初期における水分を利用してさらなる浸水を防止するものであり、従来技術とは技術思想を全く異にするものである。
【0009】
図1は、上記本発明に係る地下敷設用のクロージャを例示する正面図である。
多心の光ケーブル2aの、クロージャ1内に露出されているケーブル断面200aから、光ファイバ20aが突出され、同様に、多心の光ケーブル2bの、クロージャ1内に露出されているケーブル断面200bから、光ファイバ20bが突出されており、これら光ファイバ20aおよび20bの前記突出部位先端同士が、光接続点21で光接続されている。そして、光ケーブル2aおよび2bから分岐して引き出された光ファイバ20aおよび20bは、光接続点22および23を介して検知用光ファイバ20cと光接続され、該検知用光ファイバ20cは浸水検知ユニット40に引き込まれて浸水検知センサ4を構成している。なお、浸水検知センサ4は、ここでは詳細について省略するが、光パルス試験器(OTDR)を用いて検知用光ファイバ20cの変形から浸水を検知するタイプのものである。すなわち、検知用光ファイバに応力付与部材を当接し、該応力付与部材の前記検知用光ファイバの配置された側と対向する側に、浸水した水によって膨潤する膨潤部材が配置されてなる光ファイバセンサ(例えば、特開平3−197844号公報参照)であって、膨潤部材の膨潤に伴い応力付与部材によって駆動されて前記検知用光ファイバ20cに曲げや伸び歪み等の変形を与えるものである。
本発明においては、クロージャ内部に必ずしも浸水検知センサを備える必要はないが、備えておけば、クロージャ補修開始までの時間短縮に有利である。そして、クロージャ内部に設ける浸水検知センサの数は特に限定されないが、通常一つで十分である。また、浸水検知センサの種類もここに示すものに限定されず、従来公知の如何なるものでも良い。
このように、光接続点21、22および23は、防水性を確保してクロージャ1内に収納されており、クロージャ1内への浸水は、浸水検知センサ4で検知できるようになっている。
【0010】
そして符号3は、後記する開放用ばねを含むガス供給口31、移動規制部材32、当接部材33および第二の開放用ばね34から構成されるガス放出ユニットである。そのうちガス供給口31は、クロージャ1の側面を貫通して内部に引き込まれた配管35を通じて、クロージャ1の外部に設けられたガスボンベ36と接続されており、該ガスボンベ36内に圧縮充填されたガスをクロージャ1内に放出できるようになっている。そして、ガス放出ユニット3は、クロージャ1内の底部に、前記浸水検知センサ4と近接して配置されている。
【0011】
ガスボンベ36内に充填されるガスは、クロージャおよびケーブル等を劣化させず、防災上問題のないものであればいずれでも良い。具体的には、例えば、乾燥空気、窒素ガスおよび炭酸ガス(CO)のいずれかである。または、これらガスの二種以上の混合ガスでも良い。
配管35の材質は、供給するガスに対する耐圧性を有するものであれば特に限定されないが、ゴム管等、変形が容易で軽量なものが好ましい。
【0012】
例えば、クロージャスリーブ10にピンホール等の隙間が生じて、これがクロージャ1内への浸水原因である場合を考えると、この時クロージャ1内の圧力が、大気圧よりも高ければ浸水が防止される訳であるが、大気圧との差圧が大きいほど安定して浸水を防止できる。

例えば、クロージャにピンホール等の隙間が生じて、これがクロージャ内への浸水原因である場合を考えると、この時クロージャ内の圧力が、大気圧よりも高ければ浸水が防止される訳であるが、大気圧との差圧が大きいほど安定して浸水を防止できる。
このような観点から、炭酸ガス発生物質の収納量は、浸水時のクロージャ内の圧力を、 このような観点から、ガスボンベ36内への前記ガスの充填量は、浸水時のクロージャ1内の圧力を、常温で大気圧より少なくとも0.3気圧高く維持できる量であることが好ましく、少なくとも0.4気圧高く維持できる量であることがより好ましく、少なくとも0.65気圧高く維持できる量であることが特に好ましい。
放出されたガスによるクロージャ1内の圧力増加は、同じガス放出量でも、クロージャ1の内容積等によって異なる。また、クロージャ1内への浸水検知からクロージャ1の補修開始までに1週間程度の時間が必要であるとすると、ピンホール等の隙間のサイズまたは後記するようにケーブル断面の状態にもよるが、この間、放出されたガスの一部は、クロージャ1外への流出により失われてしまう。したがって、このような用いるクロージャの形態および内容積等を考慮して、前記ガスは予めガスボンベ36内に過剰量充填しておくことが好ましい。
なお、本発明において「常温」とは、クロージャがその設置環境において晒される温度のことであり、具体的には、概ね0〜40℃程度の範囲の温度のことである。
【0013】
次に、前記ガス放出ユニット3について、さらに詳しく説明する。
(第一の実施形態)
図2は、前記ガス放出ユニット3を例示する正面図であり、図2(a)は平常時における正面図、図2(b)は浸水時に作動した状態の正面図である。
ここで示すガス供給口31は、開閉弁を兼ねるものである。これは、以降に示す他の実施形態でも同様である。具体的には、突出量可変として組み込まれた開閉切り替え用の開閉用可動片310と、該開閉用可動片310をガス供給口31から突出するように付勢する開放用ばね312とを具備している。また、開閉用可動片310は略中空筒状でガス流路を兼ねており、その一端が開口(以下、ガス放出孔と略記する)され、該ガス放出孔よりガスが放出可能とされている。そして、ガス供給口31は、開閉用可動片310がガス供給口31本体に押し込まれた状態では閉鎖されるが、開閉用可動片310のガス供給口31からの突出寸法が、前記閉位置よりも大きい開位置においては解放され、ガスボンベ36内のガスを放出するものである。
【0014】
すなわち、本実施形態において、前記開放用ばね312は「突出用ばね」として機能するものであり、したがって、前記開閉用可動片310は、「開閉弁のハウジング(ガス供給口)に組み込まれて、該開閉弁に設けられた突出用ばねによって前記ハウジングから突出するように付勢され、該開閉弁から突出する突出部に開口するガス放出孔を具備するステム」と見ることができる。
【0015】
ガス供給口31は、クロージャ1の底面上に固定されており、その固定方法は、水共存下においても安定して固定できる方法であれば特に限定されず、例えば、ビス留め等でも良い。
【0016】
図2(a)において、第二の開放用ばね34は、クロージャ1底面上に固定配置された支持体部340にその一端が固定されており、他端には略直方体状の当接部材33が、その底面がクロージャ1の底面に固定されることなく接するようにして取り付けられている。そして、該当接部材33は、第二の開放用ばね34の略中心軸方向、すなわち図中の矢印で示す向きに第二の開放用ばね34から付勢力(引張力)を受けている。これは、この状態における第二の開放用ばね34の中心軸方向の長さが、自然長よりも長いからである。また当接部材33の支持体部340と対向する面に接触して略直方体状の移動規制部材32が、クロージャ1底面上に固定されており、前記第二の開放用ばね34からの引張力に抗して当接部材33をクロージャ1底面上で静止させている。さらにこの静止状態において当接部材33は、前記開閉用可動片310の突出部位に接して、開放用ばね312の付勢力に抗して開閉用可動片310をガス供給口31本体へ向けて圧迫して押し込んでおり、このように、ガス供給口31と当接部材33との間の距離の増大が阻止されて、ガス供給口31の閉塞状態が維持されている。
すなわち、当接部材33は、移動規制部材32による静止状態を解除されれば、第二の開放用ばね34の略中心軸方向に該ばね34によって引き戻され、開放用ばね312の付勢力によって開閉用可動片310がガス供給口31から突出して、閉位置から開位置へ移動し、ガス供給口31が開放される。本実施形態においては、ガス供給口31、当接部材33、第二の開放用ばね34および移動規制部材32が弁開放ユニットとして機能する。
なお、ガス供給口31、開閉用可動片310、移動規制部材32、当接部材33および第二の開放用ばね34は、略一直線上に配置されている。
【0017】
移動規制部材32は、水との接触により崩壊または溶解する材質からなるものである。ここで崩壊とは、水接触前と比べて強度が弱くなることを指す。
移動規制部材32の材質は、このような性質を有するものであれば特に限定されず、具体的には、岩塩、石灰等が好ましいものとして例示できる。
そして、移動規制部材32の外形は、ここでは略直方体状のものを示しているが、当接部材33を安定して静止できるものであれば特に限定されず、当接部材33と面接触するようにされていることが好ましい。
【0018】
移動規制部材32をクロージャ1の底面上に固定する方法も特に限定されず、平常時に当接部材33を安定して静止できるものであれば、いずれの方法でも良い。そして、移動規制部材32の材質を考慮して適宜選択すれば良い。例えば、クロージャ1の底面上のうち、第二の開放用ばね34と、該ばね34の動きに連動して動くもの(ここでは当接部材33)の動きを妨げない領域に、クランプを設けてこれに挟み込んで固定しても良い。または、移動規制部材32の底面を、接着剤層を介してクロージャ1の底面上に接着しても良い。
【0019】
当接部材33の材質は、開閉用可動片310の圧迫により変形し難いものであれば特に限定されず、具体的には、木材、金属類およびプラスチック類等が例示できる。これらのなかでも、移動規制部材32により安定して静止状態を保持できることから、比重の大きいものが好ましい。
そして、当接部材33の外形は、ここでは略直方体状のものを示しているが、開閉用可動片310を確実にガス供給口31本体へ向けて押し込めるものであれば、特に限定されない。ただし、当接部材33の底面がクロージャ1底面と面接触しかつその時の接触面積が大きいものが好ましい。このようにすることで当接部材33をクロージャ1の底面上に安定して載置できるからである。
【0020】
また、ここでは図示を省略するが、当接部材33の開閉用可動片310と対向する面のうち、少なくとも開閉用可動片310と接触する部位には、例えばゴム等の、気密性および柔軟性を併せ持つ素材のシートまたは突起物を設けておくことが好ましい。このようにすることで、平常時における開閉用可動片310からのガス漏れを確実に防止できる。
【0021】
このような構成を有する本実施形態のクロージャ1においては、クロージャスリーブ10にピンホール等が生じ、クロージャ1内に浸水が生じると、底部に到達した水は速やかに移動規制部材32と接触し、これにより、移動規制部材32は崩壊または溶解して、当接部材33の静止状態を維持できなくなる。例えば、浸水した水がクロージャ1内の底面上に溜まっていれば、移動規制部材32は下部から崩壊または溶解していく。そして移動規制部材32は、その全体が水により崩壊または溶解しなくても、第二の開放用ばね34からの付勢力によって当接部材33が及ぼす力に抗しきれなくなった段階で崩壊することが多い。その結果、図2(b)に示すように、当接部材33は、第二の開放用ばね34からの引張力により開閉用可動片310から引き離され、開閉用可動片310のガス放出孔が開放されると同時に、開閉用可動片310は当接部材33によるガス供給口31本体への押し込みから開放されるので、ガス供給口31が開放されて、ガスボンベ36に充填されているガスが、配管35およびガス供給口31を介してクロージャ1内に放出される。
【0022】
なお、ここでは、一つの移動規制部材32を用いた例を示しているが、本発明ではこれに限定されず、複数の移動規制部材を用いても良い。
【0023】
(第二の実施形態)
図3は、ガス放出ユニット3の他の例を例示する正面図であり、図3(a)は平常時における正面図、図3(b)は浸水時に作動した状態の正面図である。なお、既に説明済みの構成要素と同じ構成要素には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。これは以降の図についても同様である。
ここで示すガス供給口51は、第二の開放用ばね34が取り付けられ、配管35の取り付け位置が異なること以外は、図2に示す第一の実施形態と同様のものである。なお、開放用ばね512および開閉用可動片510は、前記開放用ばね312および開閉用可動片310と同様のものである。
【0024】
図3(a)において、第二の開放用ばね34は、クロージャ1底面上に固定配置された支持体部340にその一端が固定されており、他端には前記ガス供給口51が、クロージャ1の底面に固定されることなく接するようにして取り付けられている。そして、該ガス供給口51は、第二の開放用ばね34の略中心軸方向、すなわち図中の矢印で示す向きに該ばね34から引張力を受けている。これは、この状態における第二の開放用ばね34の中心軸方向の長さが、自然長よりも長いからである。またガス供給口51の支持体部340と対向する面に接触して移動規制部材32が、クロージャ1底面上に固定されており、第二の開放用ばね34からの引張力に抗してガス供給口51をクロージャ1底面上で静止させている。一方、当接部材33は、クロージャ1底面上に固定配置されており、前記ガス供給口51の開閉用可動片510は、この静止状態において当接部材33によって、ガス供給口51本体へ向けて圧迫して押し込まれており、ガス供給口51は閉塞されている。
すなわち、ガス供給口51は、移動規制部材32による静止状態を解除されれば、第二の開放用ばね34の略中心軸方向に該ばねによって引き戻され、開放されるものである。
【0025】
上記の点を除けば、本実施形態は第一の実施形態と同様である。
【0026】
このような構成を有する本実施形態のクロージャ1内に浸水が生じると、底部に到達した水は速やかに移動規制部材32と接触し、これにより、移動規制部材32は崩壊または溶解して、ガス供給口51の静止状態を維持できなくなる。その結果、図4(b)に示すように、ガス供給口51は、第二の開放用ばね34からの引張力により、当接部材33から引き離され、開閉用可動片510のガス放出孔が開放されると同時に、開閉用可動片510は当接部材33によるガス供給口51本体への押し込みから開放されるので、ガス供給口51が開放されて、ガスボンベ36に充填されているガスが、配管35およびガス供給口51を介してクロージャ1内に放出される。
【0027】
(第三および第四の実施形態)
当接部材33またはガス供給口51として、比重が比較的小さいものを用いる場合などは、上記第一および第二の実施形態の構成をさらに簡略化することが可能である。具体的には、例えば、図示は省略するが、第一および第二の実施形態において、前記第二の開放用ばね34および支持体部340を設けなくても良い。第一の実施形態においてこのような簡略化を行った場合(第三の実施形態)、移動規制部材32が溶解または崩壊すると、ガス供給口31はクロージャ1の底面上に固定されているので、開放用ばね312の付勢力により、当接部材33が開閉用可動片310から付勢され、ガス供給口31が開放される。一方、第二の実施形態において同様の簡略化を行った場合(第四の実施形態)、移動規制部材32が溶解または崩壊すると、当接部材33はクロージャ1の底面上に固定されているので、開放用ばね512の付勢力により、ガス供給口51が付勢され、ガス供給口51が開放される。
【0028】
(第五および第六の実施形態)
さらに、上記第三および第四の実施形態の変形例を図7に例示する。
本発明においては、例えば、図7(a)に示すように、ガス供給口31および当接部材33をクロージャ1の底面上に固定することなく、第二の開放用ばね34で連結しても良い(第五の実施形態)。
すなわち、開閉用可動片310がガス供給口31本体へ向けて押し込まれてガス供給口31が閉鎖された状態となるように、当接部材33を開閉用可動片310の突出部に当接し、この状態を維持しながら、第二の開放用ばね34を、その中心軸方向の長さが自然長よりも短くなるようにしてガス供給口31および当接部材33に接続する。そして、一方の移動規制部材32を、ガス供給口31に対して当接部材33と対向する面の反対側の面に接触させ、他方の移動規制部材32を、当接部材33に対してガス供給口31と対向する面の反対側の面に接触させて、それぞれクロージャ1の底面上に固定し、第二の開放用ばね34の付勢力(反発力)に抗して、ガス供給口31と当接部材33との間の距離の増大を阻止する。
本実施形態では、浸水等により移動規制部材32が溶解または崩壊すると、第二の開放用ばね34の付勢力(反発力)により、ガス供給口31と当接部材33との間の距離が増大して、ガス供給口31が開放される。
【0029】
あるいは、図7(b)に示すようにしても良い(第六の実施形態)。すなわち、図7(a)に示した場合と同様に、ガス供給口51および当接部材33をクロージャ1の底面上に固定することなく配置する。そして、ガス供給口51が閉鎖された状態となるように、当接部材33が開閉用可動片510をガス供給口51本体へ押し込んだ状態を維持しながら、一方の第二の開放用ばね34を、その中心軸方向の長さが自然長よりも長くなるようにしつつ、その一端をガス供給口51の当接部材33と対向する面の反対側の面に固定し、他端をクロージャ1の底面上に固定した支持体部340に固定する。さらに、他方の第二の開放用ばね34を、その中心軸方向の長さが自然長よりも長くなるようにしつつ、その一端を当接部材33のガス供給口51と対向する面の反対側の面に固定し、他端をクロージャ1の底面上に固定した支持体部340に固定する。そして、一方の移動規制部材32を、ガス供給口51に対して当接部材33と対向する面の反対側の面に接触させ、他方の移動規制部材32を、当接部材33に対してガス供給口51と対向する面の反対側の面に接触させて、それぞれクロージャ1の底面上に固定し、第二の開放用ばね34,34の付勢力(引張力)に抗して、ガス供給口51と当接部材33との間の距離の増大を阻止する。
本実施形態でも、浸水等により移動規制部材32が溶解または崩壊すると、ガス供給口51と当接部材33との間の距離が増大して、ガス供給口51が開放される。
【0030】
このように、第五の実施形態では、一つの第二の開放用ばね34がガス供給口31及び当接部材33の両方を付勢し、第六の実施形態では、第二の開放用ばね34が別々にガス供給口51及び当接部材33を付勢して、ガス供給口と当接部材33との間を離隔させている。すなわち、第二の開放用ばね34は、離隔用ばねとして機能している。
【0031】
なお、第五および第六の実施形態においては、ガス供給口31及び当接部材33の両方を、クロージャ1の底面上に固定しない例について示したが、第五の実施形態においては、ガス供給口31及び当接部材33のいずれか一方をクロージャ1の底面上に固定しても良い。この場合、第二の開放用ばね34は、ガス供給口31及び当接部材33の固定されていない方を付勢する。
【0032】
(第七の実施形態)
図4は、上記第三の実施形態の構成をさらに簡略化した場合のガス放出ユニット3を例示する正面図である。
本実施形態のガス放出ユニット3は、開閉用可動片310をガス供給口31本体へ向けて押し込んだ状態を保持しつつ、開閉用可動片310とガス供給口31本体の一部を、水との接触により崩壊または溶解する材質からなる封止部材62で一体に封止したものである。すなわち、封止部材62は、開閉用可動片310のガス放出孔を閉塞すると共に、開閉用可動片310を、ガス供給口31本体へ向けて押し込まれた閉位置で固定している。封止部材62は、例えば、結束具等を用いてガス供給口31に固定しても良い。
【0033】
封止部材62は、前記移動規制部材と同様の材質からなるものである。そしてその外形は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。
【0034】
ガス供給口31は、クロージャ1内の底面上に固定されていなくても良いが、固定されている方が安定して設置できるので好ましい。固定方法は先に述べた方法で良い。
ガス供給口31をクロージャ1内の底面上に直接固定しない場合には、例えば、先に述べた移動規制部材の固定方法と同様の方法で、封止部材62を前記底面上に固定すれば良い。
そして勿論、ガス供給口31および封止部材62を個別にクロージャ1内の底面上に直接固定しても良い。
【0035】
本実施形態においては、開閉用可動片310および封止部材62間に、ガス非透過性の材質からなる封止補助部材313を介在させることが好ましい。ここで「ガス非透過性」とは、本発明で用いる種類のガスの透過を抑制する性質を指し、具体的には、ガラス、金属類、プラスチック類等が例示できる。そして例えば、これら材質のものを適当に成形し、開閉用可動片310をガス供給口31本体へ押し込んだ状態で、その開口部を封止するように装着し、さらにこれを前記のように封止部材62で封止すれば良い。封止補助部材313は、開閉用可動片310のガス放出孔には固定しないことが好ましい。このように封止補助部材313を併用することで、平常時におけるガス漏れを確実に抑制できる。
【0036】
このような構成を有する本実施形態のクロージャ1内に浸水が生じると、底部に到達した水は速やかに封止部材62と接触し、封止部材62は崩壊または溶解して、開閉用可動片310のガス供給口31本体への押し込み状態を維持できなくなる。例えば、浸水した水がクロージャ1内の底面上に溜まっていれば、封止部材62は下部から崩壊または溶解していく。そして封止部材62は、その全体が水により崩壊または溶解しなくても、開閉用可動片310からの付勢力に抗しきれなくなった段階で崩壊することが多い。その結果、ガス供給口31が開放され、ガスボンベ36に充填されているガスが、クロージャ1内に放出される。
【0037】
本実施形態のガス放出ユニット3は、本発明においては構成が最も単純で、且つ他の実施形態と同等の効果を奏するので、該ユニットを備えたクロージャはコスト面で有利である。
【0038】
(第八の実施形態)
図5は、ガス放出ユニット3のさらに他の例を例示する正面図であり、図5(a)は平常時における正面図、図5(b)は浸水時に作動した状態の正面図である。
本実施形態において、ガス供給口61は、突出量可変として組み込まれた開閉用可動片610がガス供給口61本体に押し込まれた状態では開放され、ガスボンベ36内のガスを放出するが、開閉用可動片610のガス供給口61からの突出寸法が、前記開位置よりも大きい閉位置においては閉鎖されるものである。
本実施形態においては、ガスを放出するためのガス放出孔614は、開閉用可動片610の突出部の端部近傍の側面に設けられており、前記突出部の端部に当接部材33が当接された状態でも外部にガスが放出可能とされている。
【0039】
図5(a)において、第二の開放用ばね34の他端には当接部材33が、その底面がクロージャ1の底面に固定されることなく接するようにして取り付けられている。そして、該当接部材33は、第二の開放用ばね34の略中心軸方向、すなわち図中の矢印で示す向きに該ばね34から反発力を受けている。これは、この状態における第二の開放用ばね34の中心軸方向の長さが、自然長よりも短いからである。また、当接部材33のガス供給口61と対向する面に接触して移動規制部材32が、クロージャ1底面上に固定されており、前記第二の開放用ばね34からの反発力に抗して当接部材33をクロージャ1底面上で静止させている。そして当接部材33は、前記開閉用可動片610から離間した位置に静止しており、ガス供給口61と当接部材33との間の接近が阻止されている。この状態で、開閉用可動片610はガス供給口61本体へ向けて押し込まれておらず、ガス供給口61は閉塞されている。
すなわち、当接部材33は、移動規制部材32による静止状態を解除されれば、第二の開放用ばね34の略中心軸方向に該ばねによって押し出され、開閉用可動片610の突出部を押圧し、開閉用可動片610をガス供給口61本体へ向けて押し込むことで、前記ガス供給口61を開放するものである。本実施形態においては、ガス供給口61、当接部材33、第二の開放用ばね34および移動規制部材32が弁開放ユニットとして機能する。
【0040】
本実施形態においては、第一の実施形態とは異なり、当接部材33の開閉用可動片610と対向する面には、必ずしも、ゴム等の気密性および柔軟性を併せ持つ素材のシートまたは突起物を設ける必要はない。これは、ガス供給口61がその開閉用可動片610が押し込まれた状態で閉塞されるものではないからである。
【0041】
上記の点を除けば、本実施形態は第一の実施形態と同様である。
【0042】
このような構成を有する本実施形態のクロージャ1内に浸水が生じると、底部に到達した水は速やかに移動規制部材32と接触し、これにより、移動規制部材32は崩壊または溶解して、当接部材33の静止状態を維持できなくなる。その結果、図5(b)に示すように、当接部材33は、第二の開放用ばね34からの反発力により、そのガス供給口61と対向する面が開閉用可動片610を押圧し、開閉用可動片610はガス供給口61本体へ向けて押し込まれて、ガス供給口61が開放される。その結果、ガスボンベ36に充填されているガスが、クロージャ1内に放出される。
【0043】
(第九の実施形態)
図6は、ガス放出ユニット3のさらに他の例を例示する正面図であり、図6(a)は平常時における正面図、図6(b)は浸水時に作動した状態の正面図である。
ここで示すガス供給口71は、第二の開放用ばね34が取り付けられ、配管35の取り付け位置が異なること以外は、第八の実施形態に示すものと同様のものである。
【0044】
図6(a)において、第二の開放用ばね34の他端にはガス供給口71が、その底面がクロージャ1の底面に固定されることなく接するようにして取り付けられている。そして、該ガス供給口71は、第二の開放用ばね34の略中心軸方向、すなわち図中の矢印で示す向きに第二の開放用ばね34から反発力を受けている。これは、この状態における第二の開放用ばね34の中心軸方向の長さが、自然長よりも短いからである。またガス供給口71の当接部材33と対向する面に接触して移動規制部材32が、クロージャ1底面上に固定されており、前記第二の開放用ばね34からの反発力に抗してガス供給口71をクロージャ1底面上で静止させている。そして当接部材33は、前記開閉用可動片710から離間して、クロージャ1底面上に固定されており、開閉用可動片710はガス供給口71本体へ向けて押し込まれておらず、ガス供給口71は閉塞されている。
すなわち、ガス供給口71は、移動規制部材32による静止状態を解除されれば、第二の開放用ばね34の略中心軸方向に該ばねによって押し出され、開閉用可動片710は当接部材33によってガス供給口71本体へ押し込まれ、ガス供給口71が開放されるものである。
【0045】
上記の点を除けば、本実施形態は第八の実施形態と同様である。
【0046】
このような構成を有する本実施形態のクロージャ1内に浸水が生じると、底部に到達した水は速やかに移動規制部材32と接触し、これにより、移動規制部材32は崩壊または溶解して、ガス供給口71の静止状態を維持できなくなる。その結果、図6(b)に示すように、ガス供給口71の開閉用可動片710は、第二の開放用ばね34からの反発力により当接部材33に当接する。続いて、開閉用可動片710がガス供給口71本体へ向けて押し込まれてガス供給口71が開放される。その結果、第八の実施形態と同様に、ガスボンベ36に充填されているガスが、クロージャ1内に放出される。
【0047】
(第十および第十一の実施形態)
さらに、上記第八および第九の実施形態の変形例を図7に例示する。
本発明においては、例えば、図7(c)に示すように、ガス供給口31および当接部材33をクロージャ1の底面上に固定することなく、第二の開放用ばね34で連結しても良い(第十の実施形態)。
本実施形態は、図7(a)に示す第五の実施形態において、第二の開放用ばね34を、その中心軸方向の長さが自然長よりも長くなるようにし、且つ移動規制部材32を、ガス供給口31と当接部材33との間の接近を阻止するように、これらの対抗する面に接触させてクロージャ1の底面上に固定すれば良い。
本実施形態では、浸水等により移動規制部材32が溶解または崩壊すると、第二の開放用ばね34の付勢力(引張力)により、ガス供給口31と当接部材33とが接近し、次いで、開閉用可動片310がガス供給口31本体へ向けて押し込まれてガス供給口31が開放される。
【0048】
あるいは、図7(d)に示すようにしても良い(第十一の実施形態)。すなわち、図7(b)に示す第六の実施形態において、第二の開放用ばね34を、その中心軸方向の長さが自然長よりも短くなるようにし、且つ移動規制部材32を、ガス供給口51と当接部材33との間の接近を阻止するように、これらの対抗する面に接触させてクロージャ1の底面上に固定すれば良い。
本実施形態でも、浸水等により移動規制部材32が溶解または崩壊すると、第二の開放用ばね34の付勢力(反発力)により、ガス供給口51と当接部材33とが接近し、次いで、開閉用可動片510がガス供給口51本体へ向けて押し込まれてガス供給口51が開放される。
【0049】
(第十二の実施形態)
ここまでは、ガス供給口として、開閉弁を兼ね、該開閉弁に突出量可変として組み込まれた開閉切り替え用の開閉用可動片が設けられたものを例示したが、本発明で用いるガス供給口はこれに限定されず、ガスの放出と放出抑制を調整できるものであれば公知の如何なるガス供給口でも良い。
図8は、このようなガス供給口を備えたガス放出ユニット3を例示する図であり、クロージャ1の底面上に配置されたガス放出ユニット3を、上方から見た時の図である。ここで示すガス供給口81は、その先端部に開閉弁810が固定配置されたものであり、該開閉弁810の突出された先端部には、開閉用可動片811が、開閉弁810を閉鎖または開放可能な状態とする位置に突設されている。該開閉用可動片811の他端には開放用ばね812の一端が接続されており、該開放用ばね812の他端は、該ばね812の中心軸方向の長さが自然長よりも長くなるように、クロージャ1底面上に固定配置された支持体部340に固定されている。そして、移動規制部材32は、開閉用可動片811に当接してクロージャ1底面上に固定されており、前記開放用ばね812からの付勢力(引張力)に抗して、開閉用可動片811を静止させている。この状態で開閉用可動片811は、開閉弁810を閉塞してガス放出を抑制する閉位置に保持されている。
【0050】
このような構成を有する本実施形態のクロージャ1内に浸水が生じると、底部に到達した水は速やかに移動規制部材32と接触し、これにより、移動規制部材32は崩壊または溶解する。そして開閉用可動片811は、開放用ばね812からの付勢力により、開閉弁810を閉塞する閉位置から、ガス放出可能な開位置に移動して、ガス供給口81が開放され、ガスボンベ36に充填されているガスが、クロージャ1内に放出される。
【0051】
このように、本実施形態は、開放用ばね812の引張力を利用して開閉弁810を開放するものであるが、上記他の実施形態と同様に、開放用ばね812をその中心軸方向の長さが自然長よりも短くなるように配置し、移動規制部材32の崩壊または溶解により、開放用ばね812の反発力を利用して開閉弁810を開放するようにしても良い。
また、例えば、開閉用可動片811は、開放用ばね812に直接接続せず、付勢力を伝達する部材を介して接続しても良い。
また、移動規制部材32は、開閉用可動片811の動きを阻止できれば、開閉用可動片811に当接させるのではなく、該開閉用可動片811の付勢に関与する他の如何なる部材に接して配置しても良い。例えば、開放用ばね812を、前記のようにその中心軸方向の長さが自然長よりも長くなるように維持して、移動規制部材32で該ばね812全体を被覆しても良い。
そして、移動規制部材32は複数用いても良い。
【0052】
以上、ここまで具体的に十二の実施形態について順次説明したが、本発明のクロージャは、先に述べた特徴を有するものであれば、ここに示した実施形態に何ら限定されるものではない。
【0053】
例えば、ここまでは、開放用ばね(第二の開放用ばねを含む)としてコイル状ばねを示しているが、本発明においては付勢力(引張力または反発力)を印加できるものあればいずれでも良く、板ばね等種々のものを用いることができる。
そして、開放用ばねの付勢力は、当接部材やガス供給口等の種類、放出させるガスの圧力等に応じて、例えば、ばねの形態や材質を適宜選択して弾性定数を調節することで、適宜調整すれば良い。
【0054】
また、図示は省略するが、例えば、クロージャ1内への浸水時に、第二の開放用ばねの反発力により押し出されるものは、クロージャ1内の底面上にその動きをガイドする保持体を設けても良い。このようにすることで、ガス供給口(開閉弁)をより確実に開放できる。
【0055】
また、上記各実施形態においては、配管35は、クロージャ1の側面から内部へ引き込まれた例を示しているが、内部への引き込み箇所は本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。例えば、クロージャ1の上部からでも良いし、底部からでも良い。ただし、クロージャの設置作業のし易さや、クロージャ内部の構成を考慮すると、クロージャ1の側面であることが好ましい。
【0056】
さらに、ここでは、ガスボンベ36をクロージャスリーブ10の外部に設置しているが、クロージャ1内部に設置しても良い。この場合、クロージャ1に、配管35の引き込み用の穴を設ける必要がなく、クロージャ1内部への浸水の危険性を低減できる。またこの場合は、ガス供給口は配管35を介さずにボンベと一体化されたものを用いても良い。
【0057】
クロージャ内の圧力が大気圧よりも高い状態をより長時間維持するためには、先に述べた通り、前記ガスを予めボンベ内に過剰量充填しておけば良いが、例えば、クロージャ内部に引き込まれたケーブルの露出断面にガス透過抑制手段を設けても良い。
ここでいうガス透過抑制手段とは、前記ケーブル断面からケーブル中へのガスの進入を抑制できるものであれば特に限定されない。具体的には、前記ケーブル断面(例えば、図1中のケーブル断面200aおよび200b)に、ジェリーなどのガス透過抑制剤を塗布する方法が挙げられる。
【0058】
浸水によりクロージャ内に放出された前記ガスは、浸水からクロージャ補修開始までの時間は、クロージャ内を浸水から保護できる。そしてガスは時間経過と共に、主にクロージャ内に露出されているケーブル断面からケーブル中に進入してケーブル中を流れていくため、さらに場合によっては、浸水箇所からクロージャ外へ流出するため、クロージャ内の不活性ガス量が減少し、やがてはクロージャ内の圧力は大気圧と同程度になる。しかし、クロージャ内の圧力が大気圧よりも高い状態、例えば、大気圧よりも少なくとも0.3気圧だけ高い状態に維持されている間に、クロージャの補修を行えば良い。浸水しているクロージャの特定は、例えば先に述べた通り、クロージャ内に設けた浸水検知センサで行うことができる。
【0059】
本発明は、光ケーブル、メタルケーブルなど、クロージャの装着による接続点の保護を必要とするすべてのケーブルを対象とするものであるが、特に従来の「ガス保守方式」による浸水からの保護が困難であった光ケーブルに好適である。
そして、ここまで地下に敷設したケーブルを例に挙げて説明したが、地上高所に敷設する架空ケーブルにも適用可能である。
【0060】
本発明によれば、補修開始までに要する時間内であれば、簡便且つ確実にクロージャ内へのさらなる浸水を防止できる。また、用いるガスは不活性ガスであり、クロージャおよびケーブルを傷めることがない。したがって、低コストで安定してケーブル接続点を保護できる。
さらに、従来の「ガス保守方式」による浸水からの保護が困難なケーブルの接続点も、確実に保護できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、光ケーブルなどのケーブル接続点の保護に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のクロージャを例示する正面図である。
【図2】本発明におけるガス放出ユニットの第一の実施形態を例示する正面図であり、(a)は平常時における正面図、(b)は浸水時に作動した状態の正面図である。
【図3】本発明におけるガス放出ユニットの第二の実施形態を例示する正面図であり、(a)は平常時における正面図、(b)は浸水時に作動した状態の正面図である。
【図4】本発明におけるガス放出ユニットの第七の実施形態を例示する正面図である。
【図5】本発明におけるガス放出ユニットの第八の実施形態を例示する正面図であり、(a)は平常時における正面図、(b)は浸水時に作動した状態の正面図である。
【図6】本発明におけるガス放出ユニットの第九の実施形態を例示する正面図であり、(a)は平常時における正面図、(b)は浸水時に作動した状態の正面図である。
【図7】本発明におけるガス放出ユニットのさらに他の例を例示する正面図であり、(a)は第五の実施形態の平常時における正面図、(b)は第六の実施形態の平常時における正面図、(c)は第十の実施形態の平常時における正面図、(d)は第十一の実施形態の平常時における正面図である。
【図8】本発明におけるガス放出ユニットの第十二の実施形態を例示する図である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・クロージャ、2a,2b・・・光ケーブル、20a,20b・・・光ファイバ、200a,200b・・・ケーブル断面、3・・・ガス放出ユニット、31,51,61,71,81・・・ガス供給口、310,510,610,710,811・・・開閉用可動片、312,512,612,712,812・・・開放用ばね、32移動規制部材、33・・・当接部材、34・・・第二の開放用ばね、35・・・配管、36・・・ボンベ、4・・・浸水検知センサ、62・・・封止部材、810・・・開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロージャであって、
ケーブルが引き込まれるクロージャスリーブ(10)内に、ガスボンベ(36)内の圧縮充填されたガスの放出用のガス供給口(31)に設けられている開閉弁を含み該開閉弁を閉鎖状態から開放状態に切り換えることで前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させる弁開放ユニットが設けられ、
前記ガスは、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス(CO)およびこれらの二種以上の混合ガスのいずれかであり、
前記弁開放ユニットは、前記開閉弁と、該開閉弁に突設されている開閉切り換え用の開閉用可動片(310)を直接、あるいは、前記開閉用可動片の前記開閉弁から突出された突出部に当接又は連結される付勢力伝達部材を介して付勢して、前記開閉用可動片を、前記開閉弁を閉鎖する閉位置から前記開閉弁を開放する開位置に移動するための開放用ばね(34)と、この開放用ばねの付勢力に抗して、前記開閉用可動片あるいは前記付勢力伝達部材の前記開放用ばねの付勢力による移動を阻止する移動規制部材(32)とを具備し、
前記移動規制部材は、水との接触により崩壊又は溶解する材質で形成され、前記開閉用可動片の前記突出部、又は、該突出部を直接あるいは前記付勢力伝達部材を介して前記開放用ばねの付勢力によって付勢する付勢機構の構成部材に接して、前記クロージャスリーブ内に固定して1又は複数箇所に設けられて、前記開閉用可動片あるいは前記付勢力伝達部材の前記開放用ばねの付勢力による移動を阻止しており、
前記弁開放ユニットは、前記移動規制部材が水との接触により崩壊又は溶解することで、前記開放用ばねの付勢力によって前記開閉弁の開閉用可動片を前記閉位置から開位置へ移動して、前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させることを特徴とするクロージャ。
【請求項2】
クロージャであって、
ケーブルが引き込まれるクロージャスリーブ(10)内に、ガスボンベ(36)内の圧縮充填されたガスの放出用のガス供給口(31,51)に設けられている開閉弁を含み該開閉弁を閉鎖状態から開放状態に切り換えることで前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させる弁開放ユニットが設けられ、
前記ガスは、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス(CO)およびこれらの二種以上の混合ガスのいずれかであり、
前記開閉弁は、該開閉弁に突出量可変として組み込まれた開閉切り替え用の開閉用可動片(310,510)と、該開閉用可動片を前記開閉弁から突出するように付勢する開放用ばね(312)とを具備し、
前記弁開放ユニットは、前記開閉弁と、前記開閉用可動片の前記突出部に当接された当接部材(33)と、水との接触により崩壊又は溶解する材質からなる移動規制部材(32)とを具備し、前記開閉弁及び前記当接部材の一方又は両方に接して設けられた1又は複数の前記移動規制部材が、前記開放用ばねの付勢力に抗して前記開閉弁と前記当接部材との間の距離の増大を阻止して、前記開閉用可動片が前記開閉弁に押し込まれた状態が維持され、
前記移動規制部材が水との接触により崩壊又は溶解することで、前記開閉用可動片が前記開閉弁に押し込まれた閉位置から、前記開放用ばねの付勢力によって前記開閉弁から突出されて、前記開閉弁を開放する開位置へ移動され、前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させることを特徴とするクロージャ。
【請求項3】
さらに、前記弁開放ユニットに、前記開閉弁及び前記当接部材の一方又は両方を付勢して前記開閉弁と前記当接部材との間を離隔させる離隔用ばねが設けられ、
前記移動規制部材は、前記離隔用ばねの付勢力に抗して、前記開閉弁と前記当接部材との間の距離の増大を阻止することを特徴とする請求項2に記載のクロージャ。
【請求項4】
クロージャであって、
ケーブルが引き込まれるクロージャスリーブ(10)内に、ガスボンベ(36)内の圧縮充填されたガスの放出用のガス供給口(61,71)に設けられている開閉弁を含み該開閉弁を閉鎖状態から開放状態に切り換えることで前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させる弁開放ユニットが設けられ、
前記ガスは、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス(CO)およびこれらの二種以上の混合ガスのいずれかであり、
前記開閉弁は、該開閉弁に突出量可変として組み込まれた開閉切り替え用の開閉用可動片(610,710)を具備し、
前記弁開放ユニットは、前記開閉用可動片を前記開閉弁からの突出寸法が開位置に比べて大きい閉位置に配置した前記開閉弁と、前記開閉用可動片の前記突出部を押圧して前記開閉用可動片を開閉弁に押し込むための当接部材(33)と、前記開閉弁及び前記当接部材の一方又は両方を付勢して前記開閉弁と前記当接部材とを互いに接近させる開放用ばね(34)と、水との接触により崩壊又は溶解する材質からなり前記開閉弁及び前記当接部材の一方又は両方に接して設けられて前記開放用ばねの付勢力に抗して前記開閉弁と前記当接部材との間の接近を阻止する1又は複数の移動規制部材(32)とを具備し、
前記移動規制部材が水との接触により崩壊又は溶解することで、前記開放用ばねの付勢力によって前記当接部材に押圧された前記開閉用可動片が、前記閉位置から前記開閉弁に押し込まれて前記開閉弁を開放する開位置へ移動され、前記ガスボンベ内のガスを前記ガス供給口から放出させることを特徴とするクロージャ。
【請求項5】
前記開閉用可動片が、前記開閉弁のハウジングに組み込まれて、該開閉弁に設けられた突出用ばねによって前記ハウジングから突出するように付勢されたステムであり、前記開閉弁から突出する突出部に開口するガス放出孔を具備することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項6】
前記開閉弁及び前記当接部材の一方が前記クロージャスリーブ内に固定され、前記移動規制部材は、前記開放用ばねの付勢力に抗して、前記開閉弁及び前記当接部材の他方の移動を規制することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項7】
前記弁開放ユニットが、クロージャ内の底部に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項8】
クロージャであって、
ケーブルが引き込まれるクロージャスリーブ(10)内に、ガスボンベ(36)内の圧縮充填されたガスの放出用のガス供給口(31)が設けられ、
前記ガスは、乾燥空気、窒素ガス、炭酸ガス(CO)およびこれらの二種以上の混合ガスのいずれかであり、
前記ガス供給口は、その開口部が水との接触により崩壊または溶解する材質からなる封止部材(62)で封止されていることを特徴とするクロージャ。
【請求項9】
前記ガス供給口がクロージャ内の底部に設けられていることを特徴とする請求項8に記載のクロージャ。
【請求項10】
前記ガスボンベが、前記クロージャスリーブの外側に設置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項11】
前記移動規制部材または封止部材が、岩塩または生石灰からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項12】
前記ガスの充填量が、クロージャ内の圧力を、常温で大気圧より少なくとも0.65気圧高く維持できる量であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項13】
さらに、浸水検知センサ(4)が内部に設けられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項14】
内部に引き込まれたケーブルの露出断面に、ガス透過抑制手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のクロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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