説明

クローラー式走行車

【課題】上下方向の寸法が小さい空間部においてもそこにあるのぼりの段差部の上面側に難なく乗り上がらせることができ、しかも、それを、回動のためのモーター等の駆動機構を備えさせることなく実現できると共に、段差部の上面側に乗り上がらせる操作が容易な、クローラー式走行車を提供する。
【解決手段】主クローラー6の前部に前方に突出する前クローラー7が設けられると共に、主クローラー6の後部に後方に突出する後クローラー8が設けられ、前クローラー7は、前方斜め上方を向いて回動不能状態に固定されており、後クローラー8は、後方を向いた状態から上方へは回動を阻止されていると共に、後方を向いた状態から自重により下方に回動するようになされている。第1ストッパー機構と第2ストッパー機構とが備えられているのもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラー式走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
のぼりの段差部を乗り越えることができるように構成されたクローラー式走行車として、従来より種々のものが考えられている。例えば、図7に示すクローラー式走行車51は、前後のプーリー52,53として、のぼりの段差部54に乗り上がることのできる大サイズのものを採用し、図7(イ)〜(ニ)に示すように、前進させていくことにより、段差部54の上面側に乗り上がらせることができるようになされたものである。55はベルトである。
【0003】
また、図8に示すクローラー式走行車61は、主クローラー62の前部に前方に突出する補助クローラー63が設けられ、該補助クローラー63は主クローラー62に対し上下方向に回動させることができるようになされたもので、図8(イ)(ロ)に示すように、補助クローラー63を回動させて前方斜め上方に向けた状態にし、その状態で走行車61を段差部64に向けて前進させていき、補助クローラー63の前端部を段差部64の上面側に位置させ、しかる後、図8(ハ)に示すように、補助クローラー63を逆方向に回動させて水平状態にし、その状態で、図8(ニ)に示すように、走行車61を前進させていくことで、段差部64の上面側に乗り上がらせることができるようになされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−143354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図7に示す構造のクローラー式走行車51では、走行車51の上下方向の寸法が大きくなってしまうと共に、段差部54の上面側に乗り上がらせていく過程で、走行車51の前端部が段差部54の上方に大きく突出してしまい、そのため、例えば、建物の床下などのように、上下方向の寸法の小さい空間部71では、段差部54の上面側に乗り上がらせていく途中の過程で、図7(ロ)(ハ)に示すように、走行車51の前端部が空間部71の天面72に当たってしまい、それが原因で乗り上がらせることができないという事態を生じてしまう。
【0006】
また、図8に示す構造のクローラー式走行車61では、そのような問題を解消することはできるが、その一方で、補助クローラー63を回動させるためのモーター等の駆動機構を必要とし、そのため、コストが高くつくと共に、段差部54の上面側に乗り上がらせるための補助クローラー63の回動操作に熟練を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、上下方向の寸法が小さい空間部においてもそこにあるのぼりの段差部の上面側に難なく乗り上がらせることができ、しかも、それを、回動のためのモーター等の駆動機構を備えさせることなく実現することができると共に、段差部の上面側に乗り上がらせる操作が容易な、クローラー式走行車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、主クローラーの前部に前方に突出する前クローラーが設けられると共に、主クローラーの後部に後方に突出する後クローラーが設けられ、
主クローラーの前プーリーと前クローラーの後プーリーとが同軸配置で連動回転するようになされていると共に、主クローラーの後プーリーと後クローラーの前プーリーとが同軸配置で連動回転するようになされていて、前後のクローラーの各ベルトが、主クローラーのベルトと同じ方向に同一速度で周回動作を行うようになされており、
前クローラーは、前方斜め上方を向いて回動不能状態に固定されており、
後クローラーは、後方を向いた状態から上方へは回動を阻止されていると共に、後方を向いた状態から自重により下方に回動するようになされていることを特徴とするクローラー式走行車によって解決される(第1発明)。
【0009】
このクローラー式走行車では、主クローラーの前部に前方に突出する前クローラーが設けられ、前クローラーは、前方斜め上方を向いて回動不能状態に固定された構造となっているので、走行車をのぼりの段差部に向けて前進させていくだけで、走行車を、前方斜め上方を向いた前クローラーの前端部を通じて、段差部の上面側にスムーズに乗り上がらせていくことができる。
【0010】
しかも、主クローラーの後部には後方に突出する後クローラーが設けられ、後クローラーは、後方を向いた状態から上方へは回動を阻止されているので、走行車が段差部の上面側に乗り上がっていく途中の過程において、後クローラーの後端部が段差部の手前の床面に当接し、それにより、主クローラーの傾きは小さく抑えられ、走行車を安定良く段差部の上面側に乗り上がらせていくことができる。
【0011】
加えて、後クローラーは、後方を向いた状態から自重により下方に回動するようになされているので、主クローラーが傾斜姿勢で段差部の上面側へと進んでいく途中の早期の段階で、重心移動により、主クローラーと後クローラーとの間が屈折して主クローラーが段差部の上面側で水平状態となり、それによって、上下方向の寸法の小さい走行空間部においても、走行車の前端部が空間部の天面に当たってしまうのが防がれる。
【0012】
これら3つ作用が相俟って、上下方向の寸法が小さい空間部においても、走行車を、そこにあるのぼりの段差部の上面側に難なく乗り上がらせることができる。
【0013】
そして、このように、前クローラーは、前方斜め上方を向いて回動不能状態に固定されており、また、後クローラーは、後方を向いた状態から上方へは回動を阻止されていると共に、後方を向いた状態から自重により下方に回動するようになされている構成であるから、前後のクローラーを回動させるためのモーター等の駆動機構を備えさせる必要がなく、従ってまた、段差部の上面側に乗り上がらせる操作についても、走行車をのぼりの段差部に向けて前進させていくだけでよく、操作が容易である。
【0014】
第1発明において、走行車がのぼりの段差部に向けて前進していき、主クローラーの下方に該段差部の入り側の角部が位置して、主クローラーと後クローラーとが傾斜状態となって段差部に乗り上がっていく途中の過程において、段差部手前の床面に当接する第1ストッパー機構が後クローラーの後端側に位置して設けられ、
該第1ストッパー機構は、段差部手前の床面に当接した状態で走行車を後退駆動することにより、段差部手前の床面に対し後退阻止状態に係合するようになされており、該後退阻止係合作用により、主クローラーと後クローラーとの間が屈折して主クローラーが段差部上面側で水平状態となっていくようになされており、かつ、
該水平状態となっていく過程において、主クローラーと後クローラーとが一定以上に屈折してしまうのを阻止すると共に、該阻止状態において主クローラーと後クローラーとが真っ直ぐに戻ろうとするのを阻止する第2ストッパー機構が設けられ、
該第2ストッパー機構は、前記後退後の前進過程において、後クローラーの前端側が段差部の入り側の角部に位置するまでは、戻り阻止状態を維持し、段差部の入り側の角部に当接して負荷を受けることにより戻り阻止状態を解除されるようになされているとよい(第2発明)。
【0015】
この場合は、走行車がのぼりの段差部に向けて前進していき、主クローラーの下方に該段差部の入り側の角部が位置して、主クローラーと後クローラーとが傾斜状態となって段差部に乗り上がっていく途中の過程において、走行車を後退駆動すると、第1ストッパー機構により、主クローラーと後クローラーとの間が屈折して主クローラーが段差部上面側で水平状態となっていくようになされているので、主クローラーが傾斜姿勢で段差部の上面側へと進んでいく途中のより一層早い段階で、主クローラーと後クローラーとの間を屈折させて主クローラーを段差部の上面側で水平状態にすることができ、それによって、上下方向の寸法の小さい走行空間部において、走行車の前端部が空間部の天面に当たってしまうのをより効果的に防ぐことができる。
【0016】
しかも、第2ストッパー機構による戻り阻止状態の維持によって、後退後の前進過程の初期段階において、主クローラーと後クローラーとが真っ直ぐに戻ってしまうことはなく、走行車の前端部が空間部の天面に当たってしまうのを防ぐことができる。
【0017】
加えて、第2ストッパー機構による戻り阻止状態は、走行車の前進過程において、後クローラーの前端側が段差部の入り側の角部に当接して負荷を受けることにより解除されるようになされているので、解除のための特別な操作を行う必要がなく、操作を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のクローラー式走行車は、以上のとおりのものであるから、上下方向の寸法が小さい空間部においてもそこにあるのぼりの段差部の上面側に難なく乗り上がらせることができ、しかも、それを、回動のための駆動機構を備えさせることなく実現することができると共に、段差部の上面側に乗り上がらせる操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図(イ)〜図(ニ)は、第1実施形態のクローラー式走行車が段差部に乗り上がっていく過程を順次に示す側面図である。
【図2】図(イ)は同クローラー式走行車の側面図、図(ロ)は主クローラーと前クローラーと後クローラーとを分離状態にして示す側面図、図(ハ)は同クローラー式走行車における各クローラーのベルトの動きを示す側面図、(ニ)は同クローラー式走行車における後クローラーの回動範囲を示す側面図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)は、図4(ニ)〜(ヘ)とともに、第2実施形態のクローラー式走行車が段差部を乗り越えていく過程を順次に示す側面図である。
【図4】図(ニ)〜図(ヘ)は、図3(イ)〜(ハ)とともに、同クローラー式走行車が段差部を乗り越えていく過程を順次に示す側面図である。
【図5】図(イ)は同クローラー式走行車の側面図、図(ロ)〜図(ニ)は第1ストッパー機構の構造と作用を示す一部断面側面図である。
【図6】図(イ)は同クローラー式走行車の側面図、図(ロ)及び図(ハ)は第2ストッパー機構の構造とその作用を示す一部断面側面図、図(ニ)〜図(ヘ)は第2ストッパー機構の代替可能な構造とその作用を示す一部断面側面図である。
【図7】図(イ)〜図(ニ)は、関連するクローラー式走行車の構造と、該クローラー式走行車が段差部に乗り上がっていく過程を順次に示す側面図である。
【図8】図(イ)〜図(ニ)は、関連する他のクローラー式走行車の構造と、該クローラー式走行車が段差部に乗り上がっていく過程を順次に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1及び図2に示す第1実施形態のクローラー式走行車1は、建物の床下点検用に構成されたもので、図1に示す床下空間部2において、3は走行させる床面、4はのぼりの凸状の段差部、5は床下の天面である。
【0022】
クローラー式走行車1は、主クローラー6の前部に前方に突出する前クローラー7が設けられると共に、主クローラー6の後部に後方に突出する後クローラー8が設けられ、図2(イ)(ロ)に示すように、主クローラー6の前プーリー6aと前クローラー7の後プーリー7bとが同軸配置で連動回転するようになされていると共に、主クローラー6の後プーリー6bと後クローラー8の前プーリー8aとが同軸配置で連動回転するようになされていて、図示しないモーター等の駆動源を駆動することにより、図2(ハ)に示すように、前後のクローラー7,8の各ベルト7c,8cが、主クローラー6のベルト6cと同じ方向に同一速度で周回動作を行うようになされている。点検用のカメラや測定器等は、図示しないが、主クローラー6の側に搭載される。
【0023】
そして、このクローラー式走行車1において、前クローラー7は、前方斜め上方を向いて回動不能状態に固定されており、後クローラー8は、図2(ニ)に示すように、後方を向いた状態から上方へは回動を阻止されていると共に、後方を向いた状態から自重により下方に回動することができるようになされている。
【0024】
上記のクローラー式走行車1では、主クローラー6の前部に前方に突出する前クローラー7が設けられ、前クローラー7は、前方斜め上方を向いて回動不能状態に固定された構造となっているので、図1(イ)〜(ハ)に示すように、走行車1を前進駆動して、床面3を、のぼりの凸状段差部4に向けて前進させていくと、前クローラー7の前プーリー7aの側が、段差部4の入り側の角部4aをスムーズに乗り越え、主クローラー6は、傾斜していき、その下方に段差部4の入り側の角部4aが位置するようになる。後クローラー8は、後方を向いた状態から上方へは回動を阻止されているので、該傾斜していく過程において、主クローラー6と後クローラー8とは真っ直ぐな状態を維持し、後クローラー8の後端部が段差部4の手前の床面3に当接することで、主クローラー6の傾きは小さく抑えられ、走行車1は安定良く段差部4の上面側に乗り上がっていくことができる。
【0025】
そして、後クローラー8は、後方を向いた状態から自重により下方に回動するようになされているので、図1(ハ)(ニ)に示すように、主クローラー6が傾斜姿勢で段差部4の上面側へと進んでいく途中の早期の段階で、主クローラー6と後クローラー8との間が屈折し、主クローラー6が段差部の上面側で水平状態となる。それによって、上下方向の寸法の小さい床下空間部2においても、走行車1の前端部が空間部2の天面5に当たってしまうのが防がれる。
【0026】
こうして、上下方向の寸法が小さい床下空間部2においても、走行車1を、そこにあるのぼりの段差部4の上面4bの側に難なく乗り上がらせることができる。
【0027】
そして、上記のクローラー式走行車1によれば、このように、前クローラー7は、前方斜め上方を向いて回動不能状態に固定されており、また、後クローラー8は、後方を向いた状態から上方へは回動を阻止されていると共に、後方を向いた状態から自重により下方に回動するようになされている構成であるから、前後のクローラー7,8を回動させるためのモーター等の駆動機構を備えさせる必要がなく、従ってまた、段差部4の上面4bの側に乗り上がらせる操作についても、走行車1をのぼりの段差部4に向けて前進させていくだけでよくて、操作も容易である。
【0028】
なお、その後の前進過程では、走行車1の前クローラー7の側が、段差部4の向こう側の床面に当接するのと同時又は相前後して、後クローラー8が段差部4の入り側の角部4aに蹴られて主クローラー6と後クローラー8とは真っ直ぐなり、その状態を維持しつつ段差部4を越えていくことで、主クローラー6の傾きは小さく抑えられ、走行車1は安定良く段差部4の向こう側に降りていくことができる。
【0029】
図3〜図6に示す第2実施形態のクローラー式走行車1は、第1実施形態のクローラー式走行車において、第1ストッパー機構9と第2ストッパー機構10とが追加で備えられたものである。
【0030】
即ち、第1ストッパー機構9は、例えば、図5に示すように、後クローラー8の後端側の後プーリー8bと同軸配置に設けられているシャフト11にゴムなどからなる滑止め材12が設けられたものからなっていて、
図3(イ)に示すように、走行車1が床面3を走行しているときは、図5(ロ)に示すように、滑止め材12は、段差部4の手前の床面3から離間した状態を保持し、
図3(ロ)に示すように、走行車1がのぼりの段差部4に向けて前進していき、主クローラー6の下方に該段差部4の入り側の角部4aが位置して、主クローラー6と後クローラー8とが傾斜状態となって段差部4に乗り上がっていく途中の過程において、図5(ハ)に示すように、前記滑止め材12が、段差部4の手前の床面3に当接し、
その当接状態において、図3(ハ)に示すように、走行車1を後退駆動すると、図5(ニ)に示すように、滑止め材12が、段差部4の手前の床面3に対して、摩擦力等により、後退阻止状態に係合するようになされたものであり、
この後退阻止係合作用によって、後クローラー8の後端部が段差部4の手前の床面3から上方に離間すると共に、図3(ハ)に示すように、主クローラー6と後クローラー8との間が屈折して主クローラー6が段差部4の上面4bの側で水平状態となっていくようになされている。
【0031】
この第1ストッパー機構9により、主クローラー6が傾斜姿勢で段差部4の上面側へと進んでいく途中のより一層早い段階、即ち、第1実施形態の走行車1の場合のように重心移動によって屈折するよりも早い段階において、主クローラー6と後クローラー8との間を屈折させることができて、主クローラー6を段差部4の上面4bの側で水平状態にすることができ、それによって、上下方向の寸法の小さい走行空間部2においても、走行車1の前端部が空間部2の天面5に当たってしまうのをより効果的に防ぐことができる。
【0032】
そして、後退後の前進によって主クローラー6と後クローラー8とが真っ直ぐに戻ろうとするのを阻止するのが、第2ストッパー機構10である。本実施形態では、この第2ストッパー機構10が、図6(イ)に示すように、主クローラー6と後クローラー8との回動関節部に備えられている。
【0033】
該第2ストッパー機構10は、例えば、図6(ロ)(ハ)に示すように、主クローラー6と後クローラー8との回動中心部において、主クローラー6の側に、円周方向に延びる溝13,13が設けられると共に、後クローラー8の側に、前記溝13,13内に移動可能に嵌合されるピン14,14が設けられたものからなっていて、
図6(ロ)に示すように、主クローラー6と後クローラー8とが真っ直ぐのときには、各ピン14が各溝13の一方の端部に当接して、後クローラー8が主クローラー6に対して上方に回動できないようになっており、
図6(ハ)に示すように、後クローラー8が下方に屈折しようとすると、各ピン14が各溝13内をもう一方の端部の方に向けて移動していくことで、その屈折が許容されるようになされている。
【0034】
そして、各溝13は、その幅寸法が、前記一方の端部の側からもう一方の端部の側に向けて漸次小さくなっていく構成となっていて、後クローラー8が下方に屈折していく過程で、ピン13が両側から溝14に挟み込まれて摩擦力によって固定され、該固定によって、主クローラー6と後クローラー8とが一定以上に屈折してしまうのが阻止されると共に、該阻止状態において主クローラー6と後クローラー8とが真っ直ぐに戻ろうとするのが阻止されるようになされている。
【0035】
この第2ストッパー機構10による戻り阻止状態の維持によって、後退後の前進過程の初期段階において、主クローラー6と後クローラー8とが真っ直ぐに戻ってしまうのが阻止され、それにより、走行車1の前端部が床下空間部2の天面5に当たってしまうのが防がれる。
【0036】
そして、第2ストッパー機構10による戻り阻止状態は、走行車1の更なる前進過程において、図4(ニ)(ホ)に示すように、後クローラー8の前端側が段差部4の入り側の角部4aに当接して負荷を受けることで解除されるようになされており、そのため、戻り阻止状態の解除のための特別な操作を行う必要がなく、ただ、走行車1を前進させていくだけでよく、操作が容易である。
【0037】
なお、その後の前進過程では、図4(ヘ)に示すように、走行車1の前クローラー7の側が、段差部4の向こう側の床面3に当接し、後クローラー8の下方に段差部4の出側の角部4cが位置すると、主クローラー6と後クローラー8とは真っ直ぐな状態を維持して、段差部4を越えていき、主クローラー6の傾きは小さく抑えられ、走行車1は安定良く段差部4の向こう側の床面3に降りていくことができる。
【0038】
第2ストッパー機構10として、その他、図6(ニ)〜(ヘ)に示すような構造のものを採用するのもよい。この第2ストッパー機構10は、主クローラー6の側の筺体15に、受け用凹所16を有するゴム状弾性体17が設けられると共に、後クローラー8の側にロッド18が設けられたものからなっていて、
図6(ニ)に示すように、主クローラー6と後クローラー8とが真っ直ぐのときには、ロッド18がゴム状弾性体17の受け用凹所16の外に位置し、図6(ホ)(ヘ)に示すように、後クローラー8が下方に屈折していく過程で、ロッド18がゴム状弾性体17を変形させることで受け用凹所16内に嵌り込んで固定され、該固定によって、主クローラー6と後クローラー8とが一定以上に屈折してしまうのが阻止されると共に、該阻止状態において主クローラー6と後クローラー8とが真っ直ぐに戻ろうとするのが阻止されるようになされており、この第2ストッパー機構10による戻り阻止状態の維持によって、図3(ハ)から図4(ニ)に示すような後退後の前進過程の初期段階において、主クローラー6と後クローラー8とが真っ直ぐに戻ろうとするのが阻止され、それにより、走行車1の前端部が床下空間部2の天面5に当たってしまうのが防がれる。
【0039】
そして、該第2ストッパー機構10による戻り阻止状態は、図4(ニ)(ホ)に示すように、走行車1の前進過程において、後クローラー8の前端側が段差部4の入り側の角部4aに当接して負荷を受けることで、ロッド18が弾性体17の受け用凹所16の外に外れて解除されるようになされている。
【0040】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、第1,第2のストッパー機構9,10として、特定構造のものを採用した場合を示したが、本発明におけるストッパー機構は、そのような特定構造のストッパー機構に限られるものではなく、種々の構造のものが採用されてよい。
【0041】
また、本発明のクローラー式走行車が対象としているのぼりの段差部は、上の実施形態で述べたような、乗り上がりの後に降りがあるような凸状の段差部に限られるものではなく、乗り上がりだけの段差部であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…クローラー式走行車
6…主クローラー
7…前クローラー
8…後クローラー
9…第1ストッパー機構
10…第2ストッパー機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主クローラーの前部に前方に突出する前クローラーが設けられると共に、主クローラーの後部に後方に突出する後クローラーが設けられ、
主クローラーの前プーリーと前クローラーの後プーリーとが同軸配置で連動回転するようになされていると共に、主クローラーの後プーリーと後クローラーの前プーリーとが同軸配置で連動回転するようになされていて、前後のクローラーの各ベルトが、主クローラーのベルトと同じ方向に同一速度で周回動作を行うようになされており、
前クローラーは、前方斜め上方を向いて回動不能状態に固定されており、
後クローラーは、後方を向いた状態から上方へは回動を阻止されていると共に、後方を向いた状態から自重により下方に回動するようになされていることを特徴とするクローラー式走行車。
【請求項2】
走行車がのぼりの段差部に向けて前進していき、主クローラーの下方に該段差部の入り側の角部が位置して、主クローラーと後クローラーとが傾斜状態となって段差部に乗り上がっていく途中の過程において、段差部手前の床面に当接する第1ストッパー機構が後クローラーの後端側に位置して設けられ、
該第1ストッパー機構は、段差部手前の床面に当接した状態で走行車を後退駆動することにより、段差部手前の床面に対し後退阻止状態に係合するようになされており、該後退阻止係合作用により、主クローラーと後クローラーとの間が屈折して主クローラーが段差部上面側で水平状態となっていくようになされており、かつ、
該水平状態となっていく過程において、主クローラーと後クローラーとが一定以上に屈折してしまうのを阻止すると共に、該阻止状態において主クローラーと後クローラーとが真っ直ぐに戻ろうとするのを阻止する第2ストッパー機構が設けられ、
該第2ストッパー機構は、前記後退後の前進過程において、後クローラーの前端側が段差部の入り側の角部に位置するまでは、戻り阻止状態を維持し、段差部の入り側の角部に当接して負荷を受けることにより戻り阻止状態を解除されるようになされている請求項1に記載のクローラー式走行車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−63110(P2011−63110A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215029(P2009−215029)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(394025094)三菱電機特機システム株式会社 (24)