クローラ走行装置
【課題】金属製のアイドラホィール外周と金属製の芯金とが直接に接当することを避けられるようにして、走行中の騒音の発生を抑制できるようにする。
【解決手段】ゴム材からなるベルト本体60に芯金61をベルト周方向に一定ピッチで埋設したクローラ走行装置2において、左右一対の芯金突起63の間に位置して、クローラベルト6の外れを防止するための外れ止めガイド7を備え、この外れ止めガイド7には、芯金突起63との接当によって、その外れ止めガイド7の下縁がクローラベルト6内面側に接当することを阻止する近接規制部Aを備えた。
【解決手段】ゴム材からなるベルト本体60に芯金61をベルト周方向に一定ピッチで埋設したクローラ走行装置2において、左右一対の芯金突起63の間に位置して、クローラベルト6の外れを防止するための外れ止めガイド7を備え、この外れ止めガイド7には、芯金突起63との接当によって、その外れ止めガイド7の下縁がクローラベルト6内面側に接当することを阻止する近接規制部Aを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記左右一対の芯金突起の間でクローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のクローラ走行装置では、クローラベルトの外れを防止するために、左右一対の芯金突起の間に位置させて外れ止めガイドを設けている。
このような外れ止めガイドを備えたクローラ走行装置としては、下記[1]に記載のものが知られている。
[1]外れ止めガイド(特許文献1では脱輪防止用ガイド)が、トラックフレームにステーを介して取り付けられ、芯金突起の内側面に摺接するように台形状断面の棒材から構成されたもの(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−81144号公報(段落〔0032〕、図1、図4、図5、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載のクローラ走行装置では、外れ止めガイドを備えることによって、クローラベルトの横ズレ等によるベルトの外れを防止し得るものであるが、次のような問題がある。
つまり、左右一対の芯金突起は、ゴム製のクローラベルト内に埋設されている芯金と一体に構成されていて、通常、その突起部分のみがクローラベルトの内周面側へ突出する構造であるため、左右の芯金突起同士の間におけるクローラ部分は、芯金の内周面側を覆うゴムの層が比較的薄い層となっている。
このため、クローラベルトに下側からの突き上げ作用が働くなどした場合に、芯金突起同士の間に位置する外れ止めガイドの下縁が、前記芯金の内周面側を覆うゴムの層に摺接して、このゴム層が早期のうちに損壊してしまうことがある。そうすると、左右の芯金突起の間でベルト内周面に接当するアイドラホィールに対して、クローラベルトのゴム層が接当する部分と、ゴム層が消失して金属製の芯金が直接に接当する部分とが生じることになる。その結果、金属製のアイドラホィールが金属製の芯金に乗り上げて直接に接当することにより、その部位でゴトゴトと大きな騒音を発する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、金属製のアイドラホィール外周と金属製の芯金とが直接に接当することを避けられるようにして、走行中の騒音の発生を抑制できるようにしたクローラ走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記左右一対の芯金突起の間でクローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置であって、前記左右一対の芯金突起の間に位置して、前記クローラベルトの外れを防止するための外れ止めガイドを備え、この外れ止めガイドには、前記芯金突起との接当によって、その外れ止めガイドの下縁がクローラベルト内面側に接当することを阻止する近接規制部を備えてあることを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した構成によると、外れ止めガイドの下縁がクローラベルト内面側に接当することを、芯金突起との接当によって阻止する近接規制部を外れ止めガイドに備えたので、この外れ止めガイドがクローラベルト内面側に摺接することを避けられる。したがって、クローラベルト内周面側のゴム層を外れ止めガイドの摺接によって損壊してしまうことがない。
その結果、金属製のアイドラホィールが金属製の芯金の内周面側に直接接触することを避けられて、前述した騒音の発生を抑制し得る効果を奏することになる。
【0008】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、クローラベルトは、その内周面側に駆動スプロケットの駆動爪体と係合する係合用凹部を備えるとともに、この係合用凹部は、ベルト周方向での芯金同士の間に位置して周方向前後の芯金との間に、ゴム製の受圧用ブロック部を介在させた状態でベルト幅方向に長く形成してあり、駆動スプロケットは、外周側が左右の芯金突起との間に嵌り込む円盤状部材を備えているとともに、その円盤状部材の外周側に所定間隔毎に前記クローラベルトに形成された係合用凹部に係入する前記駆動爪体を備えていることである。
【0009】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、クローラベルトの内周面側で芯金の配設間隔内に設けた係合用凹部と、その係合用凹部に係入する駆動爪体とを備え、かつ、周方向前後の芯金との間に、ゴム製の受圧用ブロック部を介在させたものであるから、金属製の芯金と金属製の駆動スプロケットとの直接の接触を避けた状態で動力の伝達を行うことができる。
したがって、この駆動スプロケットによるクローラベルトの駆動箇所においても、金属同士の接当を避けて、騒音発生の少ない状態での駆動を行える利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項3に記載のように、芯金の周方向での前後に位置する受圧用ブロック部は、芯金の内周面よりも内方側へ突出していて、アイドラホィールの外周縁が受圧用ブロック部の内周に接した状態でアイドラホィールの外周縁と芯金内周面との間に隙間を形成するように構成したことである。
【0011】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、芯金の周方向での前後に位置する受圧用ブロック部のベルト内周側の面が、芯金の内周面よりも内方側へ突出しているので、アイドラホィールの外周縁が受圧用ブロック部の内周側の面に接した状態でアイドラホィールの外周縁と芯金内周面との間に隙間が存在する。
したがって、芯金の内周側の被覆が、土砂や小石の噛み込みなどで剥がれたり、あるいは、芯金の内周側を被覆しない仕様のものであっても、その芯金に金属製のアイドラホィールが直接に接当することを避けられ、金属同士の接触による騒音の発生を回避することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】クローラ走行装置の全体側面図
【図3】クローラベルトの平面図
【図4】図3におけるIV-IV線断面図
【図5】クローラベルトのベルト周方向での部分断面図
【図6】芯金突起部分を示す概略斜視図
【図7】駆動スプロケットの一部を示す斜視図
【図8】外れ止めガイドを示し、(a)が平面図、(b)が側面図、(c)が正面図
【図9】クローラベルトに対する関連部材の作用状態を示し、(a)が駆動スプロケットとの関係を示す説明図、(b)がアイドラホィールとの関係を示す説明図、(c)が外れ止めガイドとの関係を示す説明図
【図10】外れ止めガイドと芯金突起との近接規制状態を示し、(a)が基準姿勢、(b)が最大近接姿勢を示す説明図
【図11】アイドラホィールとクローラベルトとの接当状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔トラクタの全体構成〕
図1は、本発明に係るクローラ走行装置2を機体後部側に設けたセミクローラ型トラクタを示す。このセミクローラ型トラクタは、4輪駆動型のトラクタをセミクローラ型に仕様変更したものであり、キャビン付きのトラクタ本機1の前部に操向可能な左右一対の前輪10を備えるとともに、機体後部に主推進装置として左右一対のクローラ走行装置2を備えて構成されている。また、機体後部には、図示しない三点リンク機構を介して耕耘装置や収穫装置、あるいは各種の中間管理用の作業装置を連結するように構成されている。
【0014】
〔クローラ走行装置〕
図1,2に示すように、前記クローラ走行装置2は、トラクタ本機1における後部ミッションケース11に後輪駆動用として備えられた後車軸12に連結した大径の駆動スプケット3を備えている。
この駆動スプロケット3と、トラックフレーム20の前後に備えられたアイドラホィール4,4、およびトラックフレーム20の長手方向に並列配備された複数の転輪5に亘ってクローラベルト6を巻回張設してある。
このクローラ走行装置2の左右方向のトレッドは、畑地における畝の間を走行するために前輪10のトレッドとほぼ同一に設定されている。
【0015】
図2に示すように、前記転輪5は前後方向に3個が並設され、最前端側の転輪5はトラックフレーム20に対して固定ブラケット21を介して位置固定状態に取り付けてある。
そして、その後方側の2個の転輪5,5は、前記トラックフレーム20に取り付けられた支持ブラケット22に対して、中間部を横軸心x周りで上下揺動自在に枢着された天秤状部材23の両端側に振り分け配置してあり、シーソー揺動自在に構成されている。
【0016】
上記各転輪5とクローラベルト6とがベルト横幅方向で所定の位置関係を保ち、かつ転輪5からクローラベルト6が外れることを防止するための外れ止めガイド7が前後2箇所に設けてある。
前側の外れ止めガイド7は、最前端の転輪5を固定支持する固定ブラケット21の下端側に連設してあり、後側の外れ止めガイド7は、天秤状部材23の下端側で、最後端位置の転輪5の前後にわたる状態で連設してある。
【0017】
〔クローラベルト〕
前記クローラベルト6は、図3乃至図6に示すように構成されている。
このクローラベルト6は、ゴム材で無端帯状に成形されたベルト本体60に芯金61がベルト周方向に一定ピッチで埋設されているとともに、各芯金61の間におけるベルト内周面側に、駆動スプロケット3の駆動爪体31が係入してクローラベルト6側へ動力を伝えるための係合用凹部62が形成されている。
【0018】
各芯金61は、ベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に向けて転輪案内用の左右一対の芯金突起63が突設され、この芯金突起63の間を駆動スプロケット3および前後のアイドラホィール4,4が通過するよう構成されている。
また、各芯金突起63の横外側箇所に位置するベルト本体60の内周面には転輪5が転動移動する偏平な転輪軌道面64が形成されるとともに、ベルト本体60の外周面側には、ベルト周方向で前記係合用凹部62と表裏で重複する位置に、芯金突起63部分を除くベルト本体60の厚さより厚い推進ラグ65が一体に突出形成されている。
【0019】
前記芯金61と前記係合用凹部62との間におけるベルト本体60の内周面側には、係合用凹部62に係入した駆動スプロケット3の駆動爪体31の駆動力を芯金61に伝えるための受圧用ブロック部66が設けられている。つまり、係合用凹部62に入り込んだ金属製の駆動用爪体31によってゴム製の受圧用ブロック部66が圧縮作用を受けながら金属製の芯金61に駆動力を伝えるように構成されているものであり、駆動用爪体31と芯金61との金属同士の直接の接触を避けて騒音の発生を回避できるようにしている。
【0020】
また、前記受圧用ブロック部66は、図11に示すように、この受圧用ブロック部66の内周面側にアイドラホィール4が接触した状態で、アイドラホィール4の外周面と芯金61の内周面との間に、アイドラホィール4と芯金61との直接の接触を避けるための所定の隙間S3を形成するように、芯金61の内周面よりもベルト内周面側へ突出させて形成してある。
【0021】
前記芯金突起63は、図4乃至図6に示すように、芯金61の一部に一体形成されたベルト内周面側へ突出する金属製の突起部分61aを、ベルト本体60を構成するゴム材からなる山形突起部67で覆うことによって外形形状がほぼ山形状に形成されている。
つまり、芯金突起63は、図4に示すベルト幅方向でも、図5に示すベルト周方向でも、断面視で山形状に形成されている。そして、図6に示すように、芯金突起63のベルト幅方向での内方側に向く面が、アイドラホィール4や外れ止めガイド7に対する案内面Cとなる傾斜面によって形成されている。
また、この山形状の芯金突起63は、その頂部63aが、ベルト周方向に沿う線とその線に直交するように内側に向けられた線とで平面視T字状に形成され、かつ山形突起部67の前記案内面Cにおける前記頂部63a近くのベルト幅方向での内側に位置する箇所に凹部63bを設けた形状に形成されている。
【0022】
〔駆動スプロケット〕
前記駆動スプロケット3は、図2及び図7に示すように構成されている。
すなわち、後車軸12に連結した大径の円盤状部材30と、その円盤状部材30の外周縁から径方向の外方へ突出するように設けられた駆動用爪体31とを備えて構成されている。
この駆動用爪体31は、図7及び図9(a)に示すように、円盤状部材30の板面に対して横方向へ張り出すことにより、係合用凹部62のベルト横幅方向の長さと同程度の横幅を備え、左右の芯金突起63の両方にわたる長さと同程度に形成されている。
前記円盤状部材30のベルト横幅方向での厚みは、左右一対の芯金突起63の対抗間隔よりも薄く形成され、この円盤状部材30が左右の芯金突起63,63の間に入り込んだ状態で回転駆動される。
【0023】
〔外れ止めガイド〕
前記外れ止めガイド7は、図2、図8、図9(c)、及び図10に示すように構成されている。
すなわち、最前端位置の転輪5、及び最後端位置の転輪5が設けられた位置で、左右の芯金突起63,63同士の間に位置するように、トラックフレーム20に連設された固定ブラケット21、及び支持ブラケット22に連設の天秤状部材23に連結固定される各外れ止めガイド7は、前後何れも同じもので構成してある。
【0024】
この外れ止めガイド7は、図8に示すように、全体が側面視で舟形状に形成してあり、その前後2箇所に、前記固定ブラケット21、又は支持ブラケット22に連設の天秤状部材23に対する連結固定用のねじ孔71,71を備えた取り付け部72,72を設けてある。
前記固定ブラケット21、又は天秤状部材23に対する取り付け姿勢で、外れ止めガイド7の最下端となる位置は、図2、及び図8(b)に示す転輪5の回転中心pからの垂線y1と交差する位置である。この外れ止めガイド7の最下端位置は、左右の芯金突起63,63の間でクローラベルト6の内周面に対して最も近接する状態となるのであるが、この外れ止めガイド7の、前記垂線y1と交差する箇所でのベルト横幅方向での接当箇所の幅L1が、前記クローラベルト6側の芯金突起63のベルト周方向での中心線y2が存在する箇所での芯金突起63の上部における接当箇所での横幅L2よりも大きく設定されている。
【0025】
前記外れ止めガイド7のベルト横幅方向での接当箇所の幅L1は、図8(a),(b)に示すように、外れ止めガイド7のベルト周方向(前後方向)における直線状部分の長さL3の範囲で同一であるように形成してあり、この直線状部分L3の前後では、図8(a)に示すように外れ止めガイド7の前後端が平面視で先細り状に形成してあり、側面視では図8(b)に示すように、前後端が上側へ反り上がった形状に形成されている。
さらに外れ止めガイド7の前記直線状部分L3のうち、前記垂線y1と交差する箇所の近くでは、図8(b)に示すように、垂線y1に対して直交する直交下縁部分73が存在する直交下縁範囲L4が形成され、その前後における前記直線状部分L3のうち、前記直交下縁範囲L4よりも前方の前側下縁部分74は少し前上がり形状に形成してあり、前記直交下縁範囲L4よりも後方の後側下縁部分75は少し後ろ上がり形状に形成してある。
【0026】
このように外れ止めガイド7の下縁形状を形成してあるのは次の理由による。つまり、図2に示すように、全ての転輪5が平坦地に位置する場合を想定した場合、その全ての転輪5に対する下方側の接線よりも、クローラ走行装置2の前端側及び後端側のアイドラホィール4,4の下縁が高く位置している。このため、クローラベルト6が、最前端の転輪5よりも前側では少し前上がり状態に掛張され、最後端の転輪5よりも後側では少し後上がり状態に掛張されるので、外れ止めガイド7の下縁とクローラベルト6の内周面との間に必要な間隙を維持するためである。
また、外れ止めガイド7の前端側及び後端側が平面視で先細り形状に形成されているのは、前述のようにベルト横幅方向での幅L1を広くした外れ止めガイド7による案内作用をスムースに行わせるためである。さらにまた、前述のように、外れ止めガイド7の前後端が平面視での先細り形状に加えて上側へ反り上がった形状に形成されているのは、この外れ止めガイド7とクローラベルト6との間に小石などが噛み込むことを避け易くすることと、前後端の反り上がり部分がクローラベルト6に直接に接触することを回避できるようにするためである。
【0027】
このように構成された外れ止めガイド7は、図10(a)に示す基準姿勢(全ての転輪5が転輪軌道面64に接してクローラベルト6が全体に平均的な圧力を受けている状態での走行姿勢)では、外れ止めガイド7の最下端となる位置とクローラベルト6の内周面(この実施形態では受圧用ブロック部66の内周側の面)との間には、十分大きな間隔S1を備えるように、転輪5の接触面と外れ止めガイド7の下面との相対高さ位置が設定されている。
【0028】
ところが、図10(b)に示すように、最大近接姿勢(凸部に乗り上げるなどして一部の転輪5の下方から集中的な突き上げ力が作用する状態での走行姿勢)では、クローラベルト6が部分的に圧縮あるいは屈曲して、外れ止めガイド7が相対的にクローラベルト6内周面に接近する状態となる。
しかしながら、本発明では、前述のように、外れ止めガイド7のベルト横幅方向での接当箇所の横幅L1が、クローラベルト6側の芯金突起63の上部における接当箇所での横幅L2よりも大きく設定されているので、図示のように、外れ止めガイド7とクローラベルト6の内周面(この実施形態では受圧用ブロック部66の内周側の面)との接近の際に、外れ止めガイド7の接当箇所と芯金突起63の上部における接当箇所との接当によって、それ以上の接近が阻止され、両者の接触を回避するように間隔S2を確保することができる。
つまり、前記外れ止めガイド7に設定された横幅L1を有した前記直線部分L3における範囲の接当箇所によって、その外れ止めガイド7の下縁がクローラベルト6の内周面側に接当することを阻止する近接規制部Aが構成されている。
【0029】
上記の外れ止めガイド7の近接規制部Aは、外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bのうち、前記芯金突起63の案内面Cの上部における接当箇所に対して接当する箇所によって構成されているものであり、前記両側面B,Bは、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度よりも、少し角度の大きいテーパーとなるように傾斜角度を設定してある。
したがって、外れ止めガイド7が比較的強く左右の芯金突起63,63の間に嵌り込んでも、近接規制部Aでの接触面積は比較的小さく、強く噛み込んで外れにくくなるというような事態を避けやすい。
【0030】
〔アイドラホィール〕
アイドラホィール4,4は、図2及び図9(b)に示すように、左右の芯金突起63,63の間に入り込む状態で、かつ、クローラベルト6の内周面に接した状態で遊転回動する。
このとき、アイドラホィール4,4の外周面は、前述したように、クローラベルト6の受圧用ブロック部66の内周面側に接触した状態で回転されるので、この箇所での騒音の発生を回避することができる。
そして、アイドラホィール4,4の両側面は、左右の芯金突起63,63の金属部分と接触する可能性はあるが、この箇所では、アイドラホィール4,4とクローラベルト6とは、殆ど相対移動のない状態で回動しているので、たとえ金属部分同士が触れあっても、この箇所ではあまり大きな騒音にはならず、やはり騒音の発生を抑制することができる。
【0031】
〔別実施形態の1〕
近接規制部Aとしては、実施の形態で説明したような、芯金突起63,63に対する外れ止めガイド7の接当箇所の横幅L1の設定によるものに限らず、例えば、外れ止めガイド7の一部に、基準姿勢では接触せず、最大近接姿勢で、芯金突起63,63の最大突出箇所に対して接当する部分を形成して、外れ止めガイド7がそれ以上クローラベルト6内周面側へ接近することを阻止するようにした構造によって間隔S2を確保するように構成してもよい。
【0032】
〔別実施形態の2〕
外れ止めガイド7としては、実施の形態で説明したような、前後二つに分離した構造のものに限らず、例えば、前後何れか一方のみを設ける、もしくは、前端側から後端側にわたる長い外れ止めガイド7を設けるものであってもよい。
【0033】
〔別実施形態の3〕
外れ止めガイド7の近接規制部Aとして、実施の形態では、外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bを、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度よりも、少し角度の大きいテーパーとなるように傾斜角度を設定したものを示したが、これに限らず、前記外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bと、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度を同じ角度に設定してもよい。このように同じ角度に設定すると、接当箇所の面積を広くして単位面積当たりの面厚を下げることができるので、接当箇所での摩耗度合いを軽減し得る点での有利さがある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のクローラ走行装置は、実施形態で示したトラクタの他、コンバインや建設機械などの各種の車両の推進装置として用いることができる
【符号の説明】
【0035】
2 クローラ走行装置
3 駆動スプロケット
4 アイドラホィール
5 転輪
6 クローラベルト
7 外れ止めガイド
66 受圧用ブロック部
30 円盤状部材
31 駆動爪体
60 ベルト本体
61 芯金
62 係合用凹部
63 芯金突起
64 転輪軌道面
A 近接規制部
L1 横幅
L2 横幅
S1 間隔
S2 間隔
S3 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記左右一対の芯金突起の間でクローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のクローラ走行装置では、クローラベルトの外れを防止するために、左右一対の芯金突起の間に位置させて外れ止めガイドを設けている。
このような外れ止めガイドを備えたクローラ走行装置としては、下記[1]に記載のものが知られている。
[1]外れ止めガイド(特許文献1では脱輪防止用ガイド)が、トラックフレームにステーを介して取り付けられ、芯金突起の内側面に摺接するように台形状断面の棒材から構成されたもの(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−81144号公報(段落〔0032〕、図1、図4、図5、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載のクローラ走行装置では、外れ止めガイドを備えることによって、クローラベルトの横ズレ等によるベルトの外れを防止し得るものであるが、次のような問題がある。
つまり、左右一対の芯金突起は、ゴム製のクローラベルト内に埋設されている芯金と一体に構成されていて、通常、その突起部分のみがクローラベルトの内周面側へ突出する構造であるため、左右の芯金突起同士の間におけるクローラ部分は、芯金の内周面側を覆うゴムの層が比較的薄い層となっている。
このため、クローラベルトに下側からの突き上げ作用が働くなどした場合に、芯金突起同士の間に位置する外れ止めガイドの下縁が、前記芯金の内周面側を覆うゴムの層に摺接して、このゴム層が早期のうちに損壊してしまうことがある。そうすると、左右の芯金突起の間でベルト内周面に接当するアイドラホィールに対して、クローラベルトのゴム層が接当する部分と、ゴム層が消失して金属製の芯金が直接に接当する部分とが生じることになる。その結果、金属製のアイドラホィールが金属製の芯金に乗り上げて直接に接当することにより、その部位でゴトゴトと大きな騒音を発する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、金属製のアイドラホィール外周と金属製の芯金とが直接に接当することを避けられるようにして、走行中の騒音の発生を抑制できるようにしたクローラ走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記左右一対の芯金突起の間でクローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置であって、前記左右一対の芯金突起の間に位置して、前記クローラベルトの外れを防止するための外れ止めガイドを備え、この外れ止めガイドには、前記芯金突起との接当によって、その外れ止めガイドの下縁がクローラベルト内面側に接当することを阻止する近接規制部を備えてあることを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した構成によると、外れ止めガイドの下縁がクローラベルト内面側に接当することを、芯金突起との接当によって阻止する近接規制部を外れ止めガイドに備えたので、この外れ止めガイドがクローラベルト内面側に摺接することを避けられる。したがって、クローラベルト内周面側のゴム層を外れ止めガイドの摺接によって損壊してしまうことがない。
その結果、金属製のアイドラホィールが金属製の芯金の内周面側に直接接触することを避けられて、前述した騒音の発生を抑制し得る効果を奏することになる。
【0008】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、クローラベルトは、その内周面側に駆動スプロケットの駆動爪体と係合する係合用凹部を備えるとともに、この係合用凹部は、ベルト周方向での芯金同士の間に位置して周方向前後の芯金との間に、ゴム製の受圧用ブロック部を介在させた状態でベルト幅方向に長く形成してあり、駆動スプロケットは、外周側が左右の芯金突起との間に嵌り込む円盤状部材を備えているとともに、その円盤状部材の外周側に所定間隔毎に前記クローラベルトに形成された係合用凹部に係入する前記駆動爪体を備えていることである。
【0009】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、クローラベルトの内周面側で芯金の配設間隔内に設けた係合用凹部と、その係合用凹部に係入する駆動爪体とを備え、かつ、周方向前後の芯金との間に、ゴム製の受圧用ブロック部を介在させたものであるから、金属製の芯金と金属製の駆動スプロケットとの直接の接触を避けた状態で動力の伝達を行うことができる。
したがって、この駆動スプロケットによるクローラベルトの駆動箇所においても、金属同士の接当を避けて、騒音発生の少ない状態での駆動を行える利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項3に記載のように、芯金の周方向での前後に位置する受圧用ブロック部は、芯金の内周面よりも内方側へ突出していて、アイドラホィールの外周縁が受圧用ブロック部の内周に接した状態でアイドラホィールの外周縁と芯金内周面との間に隙間を形成するように構成したことである。
【0011】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、芯金の周方向での前後に位置する受圧用ブロック部のベルト内周側の面が、芯金の内周面よりも内方側へ突出しているので、アイドラホィールの外周縁が受圧用ブロック部の内周側の面に接した状態でアイドラホィールの外周縁と芯金内周面との間に隙間が存在する。
したがって、芯金の内周側の被覆が、土砂や小石の噛み込みなどで剥がれたり、あるいは、芯金の内周側を被覆しない仕様のものであっても、その芯金に金属製のアイドラホィールが直接に接当することを避けられ、金属同士の接触による騒音の発生を回避することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】クローラ走行装置の全体側面図
【図3】クローラベルトの平面図
【図4】図3におけるIV-IV線断面図
【図5】クローラベルトのベルト周方向での部分断面図
【図6】芯金突起部分を示す概略斜視図
【図7】駆動スプロケットの一部を示す斜視図
【図8】外れ止めガイドを示し、(a)が平面図、(b)が側面図、(c)が正面図
【図9】クローラベルトに対する関連部材の作用状態を示し、(a)が駆動スプロケットとの関係を示す説明図、(b)がアイドラホィールとの関係を示す説明図、(c)が外れ止めガイドとの関係を示す説明図
【図10】外れ止めガイドと芯金突起との近接規制状態を示し、(a)が基準姿勢、(b)が最大近接姿勢を示す説明図
【図11】アイドラホィールとクローラベルトとの接当状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔トラクタの全体構成〕
図1は、本発明に係るクローラ走行装置2を機体後部側に設けたセミクローラ型トラクタを示す。このセミクローラ型トラクタは、4輪駆動型のトラクタをセミクローラ型に仕様変更したものであり、キャビン付きのトラクタ本機1の前部に操向可能な左右一対の前輪10を備えるとともに、機体後部に主推進装置として左右一対のクローラ走行装置2を備えて構成されている。また、機体後部には、図示しない三点リンク機構を介して耕耘装置や収穫装置、あるいは各種の中間管理用の作業装置を連結するように構成されている。
【0014】
〔クローラ走行装置〕
図1,2に示すように、前記クローラ走行装置2は、トラクタ本機1における後部ミッションケース11に後輪駆動用として備えられた後車軸12に連結した大径の駆動スプケット3を備えている。
この駆動スプロケット3と、トラックフレーム20の前後に備えられたアイドラホィール4,4、およびトラックフレーム20の長手方向に並列配備された複数の転輪5に亘ってクローラベルト6を巻回張設してある。
このクローラ走行装置2の左右方向のトレッドは、畑地における畝の間を走行するために前輪10のトレッドとほぼ同一に設定されている。
【0015】
図2に示すように、前記転輪5は前後方向に3個が並設され、最前端側の転輪5はトラックフレーム20に対して固定ブラケット21を介して位置固定状態に取り付けてある。
そして、その後方側の2個の転輪5,5は、前記トラックフレーム20に取り付けられた支持ブラケット22に対して、中間部を横軸心x周りで上下揺動自在に枢着された天秤状部材23の両端側に振り分け配置してあり、シーソー揺動自在に構成されている。
【0016】
上記各転輪5とクローラベルト6とがベルト横幅方向で所定の位置関係を保ち、かつ転輪5からクローラベルト6が外れることを防止するための外れ止めガイド7が前後2箇所に設けてある。
前側の外れ止めガイド7は、最前端の転輪5を固定支持する固定ブラケット21の下端側に連設してあり、後側の外れ止めガイド7は、天秤状部材23の下端側で、最後端位置の転輪5の前後にわたる状態で連設してある。
【0017】
〔クローラベルト〕
前記クローラベルト6は、図3乃至図6に示すように構成されている。
このクローラベルト6は、ゴム材で無端帯状に成形されたベルト本体60に芯金61がベルト周方向に一定ピッチで埋設されているとともに、各芯金61の間におけるベルト内周面側に、駆動スプロケット3の駆動爪体31が係入してクローラベルト6側へ動力を伝えるための係合用凹部62が形成されている。
【0018】
各芯金61は、ベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に向けて転輪案内用の左右一対の芯金突起63が突設され、この芯金突起63の間を駆動スプロケット3および前後のアイドラホィール4,4が通過するよう構成されている。
また、各芯金突起63の横外側箇所に位置するベルト本体60の内周面には転輪5が転動移動する偏平な転輪軌道面64が形成されるとともに、ベルト本体60の外周面側には、ベルト周方向で前記係合用凹部62と表裏で重複する位置に、芯金突起63部分を除くベルト本体60の厚さより厚い推進ラグ65が一体に突出形成されている。
【0019】
前記芯金61と前記係合用凹部62との間におけるベルト本体60の内周面側には、係合用凹部62に係入した駆動スプロケット3の駆動爪体31の駆動力を芯金61に伝えるための受圧用ブロック部66が設けられている。つまり、係合用凹部62に入り込んだ金属製の駆動用爪体31によってゴム製の受圧用ブロック部66が圧縮作用を受けながら金属製の芯金61に駆動力を伝えるように構成されているものであり、駆動用爪体31と芯金61との金属同士の直接の接触を避けて騒音の発生を回避できるようにしている。
【0020】
また、前記受圧用ブロック部66は、図11に示すように、この受圧用ブロック部66の内周面側にアイドラホィール4が接触した状態で、アイドラホィール4の外周面と芯金61の内周面との間に、アイドラホィール4と芯金61との直接の接触を避けるための所定の隙間S3を形成するように、芯金61の内周面よりもベルト内周面側へ突出させて形成してある。
【0021】
前記芯金突起63は、図4乃至図6に示すように、芯金61の一部に一体形成されたベルト内周面側へ突出する金属製の突起部分61aを、ベルト本体60を構成するゴム材からなる山形突起部67で覆うことによって外形形状がほぼ山形状に形成されている。
つまり、芯金突起63は、図4に示すベルト幅方向でも、図5に示すベルト周方向でも、断面視で山形状に形成されている。そして、図6に示すように、芯金突起63のベルト幅方向での内方側に向く面が、アイドラホィール4や外れ止めガイド7に対する案内面Cとなる傾斜面によって形成されている。
また、この山形状の芯金突起63は、その頂部63aが、ベルト周方向に沿う線とその線に直交するように内側に向けられた線とで平面視T字状に形成され、かつ山形突起部67の前記案内面Cにおける前記頂部63a近くのベルト幅方向での内側に位置する箇所に凹部63bを設けた形状に形成されている。
【0022】
〔駆動スプロケット〕
前記駆動スプロケット3は、図2及び図7に示すように構成されている。
すなわち、後車軸12に連結した大径の円盤状部材30と、その円盤状部材30の外周縁から径方向の外方へ突出するように設けられた駆動用爪体31とを備えて構成されている。
この駆動用爪体31は、図7及び図9(a)に示すように、円盤状部材30の板面に対して横方向へ張り出すことにより、係合用凹部62のベルト横幅方向の長さと同程度の横幅を備え、左右の芯金突起63の両方にわたる長さと同程度に形成されている。
前記円盤状部材30のベルト横幅方向での厚みは、左右一対の芯金突起63の対抗間隔よりも薄く形成され、この円盤状部材30が左右の芯金突起63,63の間に入り込んだ状態で回転駆動される。
【0023】
〔外れ止めガイド〕
前記外れ止めガイド7は、図2、図8、図9(c)、及び図10に示すように構成されている。
すなわち、最前端位置の転輪5、及び最後端位置の転輪5が設けられた位置で、左右の芯金突起63,63同士の間に位置するように、トラックフレーム20に連設された固定ブラケット21、及び支持ブラケット22に連設の天秤状部材23に連結固定される各外れ止めガイド7は、前後何れも同じもので構成してある。
【0024】
この外れ止めガイド7は、図8に示すように、全体が側面視で舟形状に形成してあり、その前後2箇所に、前記固定ブラケット21、又は支持ブラケット22に連設の天秤状部材23に対する連結固定用のねじ孔71,71を備えた取り付け部72,72を設けてある。
前記固定ブラケット21、又は天秤状部材23に対する取り付け姿勢で、外れ止めガイド7の最下端となる位置は、図2、及び図8(b)に示す転輪5の回転中心pからの垂線y1と交差する位置である。この外れ止めガイド7の最下端位置は、左右の芯金突起63,63の間でクローラベルト6の内周面に対して最も近接する状態となるのであるが、この外れ止めガイド7の、前記垂線y1と交差する箇所でのベルト横幅方向での接当箇所の幅L1が、前記クローラベルト6側の芯金突起63のベルト周方向での中心線y2が存在する箇所での芯金突起63の上部における接当箇所での横幅L2よりも大きく設定されている。
【0025】
前記外れ止めガイド7のベルト横幅方向での接当箇所の幅L1は、図8(a),(b)に示すように、外れ止めガイド7のベルト周方向(前後方向)における直線状部分の長さL3の範囲で同一であるように形成してあり、この直線状部分L3の前後では、図8(a)に示すように外れ止めガイド7の前後端が平面視で先細り状に形成してあり、側面視では図8(b)に示すように、前後端が上側へ反り上がった形状に形成されている。
さらに外れ止めガイド7の前記直線状部分L3のうち、前記垂線y1と交差する箇所の近くでは、図8(b)に示すように、垂線y1に対して直交する直交下縁部分73が存在する直交下縁範囲L4が形成され、その前後における前記直線状部分L3のうち、前記直交下縁範囲L4よりも前方の前側下縁部分74は少し前上がり形状に形成してあり、前記直交下縁範囲L4よりも後方の後側下縁部分75は少し後ろ上がり形状に形成してある。
【0026】
このように外れ止めガイド7の下縁形状を形成してあるのは次の理由による。つまり、図2に示すように、全ての転輪5が平坦地に位置する場合を想定した場合、その全ての転輪5に対する下方側の接線よりも、クローラ走行装置2の前端側及び後端側のアイドラホィール4,4の下縁が高く位置している。このため、クローラベルト6が、最前端の転輪5よりも前側では少し前上がり状態に掛張され、最後端の転輪5よりも後側では少し後上がり状態に掛張されるので、外れ止めガイド7の下縁とクローラベルト6の内周面との間に必要な間隙を維持するためである。
また、外れ止めガイド7の前端側及び後端側が平面視で先細り形状に形成されているのは、前述のようにベルト横幅方向での幅L1を広くした外れ止めガイド7による案内作用をスムースに行わせるためである。さらにまた、前述のように、外れ止めガイド7の前後端が平面視での先細り形状に加えて上側へ反り上がった形状に形成されているのは、この外れ止めガイド7とクローラベルト6との間に小石などが噛み込むことを避け易くすることと、前後端の反り上がり部分がクローラベルト6に直接に接触することを回避できるようにするためである。
【0027】
このように構成された外れ止めガイド7は、図10(a)に示す基準姿勢(全ての転輪5が転輪軌道面64に接してクローラベルト6が全体に平均的な圧力を受けている状態での走行姿勢)では、外れ止めガイド7の最下端となる位置とクローラベルト6の内周面(この実施形態では受圧用ブロック部66の内周側の面)との間には、十分大きな間隔S1を備えるように、転輪5の接触面と外れ止めガイド7の下面との相対高さ位置が設定されている。
【0028】
ところが、図10(b)に示すように、最大近接姿勢(凸部に乗り上げるなどして一部の転輪5の下方から集中的な突き上げ力が作用する状態での走行姿勢)では、クローラベルト6が部分的に圧縮あるいは屈曲して、外れ止めガイド7が相対的にクローラベルト6内周面に接近する状態となる。
しかしながら、本発明では、前述のように、外れ止めガイド7のベルト横幅方向での接当箇所の横幅L1が、クローラベルト6側の芯金突起63の上部における接当箇所での横幅L2よりも大きく設定されているので、図示のように、外れ止めガイド7とクローラベルト6の内周面(この実施形態では受圧用ブロック部66の内周側の面)との接近の際に、外れ止めガイド7の接当箇所と芯金突起63の上部における接当箇所との接当によって、それ以上の接近が阻止され、両者の接触を回避するように間隔S2を確保することができる。
つまり、前記外れ止めガイド7に設定された横幅L1を有した前記直線部分L3における範囲の接当箇所によって、その外れ止めガイド7の下縁がクローラベルト6の内周面側に接当することを阻止する近接規制部Aが構成されている。
【0029】
上記の外れ止めガイド7の近接規制部Aは、外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bのうち、前記芯金突起63の案内面Cの上部における接当箇所に対して接当する箇所によって構成されているものであり、前記両側面B,Bは、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度よりも、少し角度の大きいテーパーとなるように傾斜角度を設定してある。
したがって、外れ止めガイド7が比較的強く左右の芯金突起63,63の間に嵌り込んでも、近接規制部Aでの接触面積は比較的小さく、強く噛み込んで外れにくくなるというような事態を避けやすい。
【0030】
〔アイドラホィール〕
アイドラホィール4,4は、図2及び図9(b)に示すように、左右の芯金突起63,63の間に入り込む状態で、かつ、クローラベルト6の内周面に接した状態で遊転回動する。
このとき、アイドラホィール4,4の外周面は、前述したように、クローラベルト6の受圧用ブロック部66の内周面側に接触した状態で回転されるので、この箇所での騒音の発生を回避することができる。
そして、アイドラホィール4,4の両側面は、左右の芯金突起63,63の金属部分と接触する可能性はあるが、この箇所では、アイドラホィール4,4とクローラベルト6とは、殆ど相対移動のない状態で回動しているので、たとえ金属部分同士が触れあっても、この箇所ではあまり大きな騒音にはならず、やはり騒音の発生を抑制することができる。
【0031】
〔別実施形態の1〕
近接規制部Aとしては、実施の形態で説明したような、芯金突起63,63に対する外れ止めガイド7の接当箇所の横幅L1の設定によるものに限らず、例えば、外れ止めガイド7の一部に、基準姿勢では接触せず、最大近接姿勢で、芯金突起63,63の最大突出箇所に対して接当する部分を形成して、外れ止めガイド7がそれ以上クローラベルト6内周面側へ接近することを阻止するようにした構造によって間隔S2を確保するように構成してもよい。
【0032】
〔別実施形態の2〕
外れ止めガイド7としては、実施の形態で説明したような、前後二つに分離した構造のものに限らず、例えば、前後何れか一方のみを設ける、もしくは、前端側から後端側にわたる長い外れ止めガイド7を設けるものであってもよい。
【0033】
〔別実施形態の3〕
外れ止めガイド7の近接規制部Aとして、実施の形態では、外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bを、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度よりも、少し角度の大きいテーパーとなるように傾斜角度を設定したものを示したが、これに限らず、前記外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bと、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度を同じ角度に設定してもよい。このように同じ角度に設定すると、接当箇所の面積を広くして単位面積当たりの面厚を下げることができるので、接当箇所での摩耗度合いを軽減し得る点での有利さがある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のクローラ走行装置は、実施形態で示したトラクタの他、コンバインや建設機械などの各種の車両の推進装置として用いることができる
【符号の説明】
【0035】
2 クローラ走行装置
3 駆動スプロケット
4 アイドラホィール
5 転輪
6 クローラベルト
7 外れ止めガイド
66 受圧用ブロック部
30 円盤状部材
31 駆動爪体
60 ベルト本体
61 芯金
62 係合用凹部
63 芯金突起
64 転輪軌道面
A 近接規制部
L1 横幅
L2 横幅
S1 間隔
S2 間隔
S3 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記左右一対の芯金突起の間でクローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置であって、
前記左右一対の芯金突起の間に位置して、前記クローラベルトの外れを防止するための外れ止めガイドを備え、
この外れ止めガイドには、前記芯金突起との接当によって、その外れ止めガイドの下縁がクローラベルト内面側に接当することを阻止する近接規制部を備えてあることを特徴とするクローラ走行装置。
【請求項2】
クローラベルトは、その内周面側に駆動スプロケットの駆動爪体と係合する係合用凹部を備えるとともに、この係合用凹部は、ベルト周方向での芯金同士の間に位置して周方向前後の芯金との間に、ゴム製の受圧用ブロック部を介在させた状態でベルト幅方向に長く形成してあり、
駆動スプロケットは、外周側が左右の芯金突起との間に嵌り込む円盤状部材を備えているとともに、その円盤状部材の外周側に所定間隔毎に前記クローラベルトに形成された係合用凹部に係入する前記駆動爪体を備えている請求項1記載のクローラ走行装置。
【請求項3】
芯金の周方向での前後に位置する受圧用ブロック部は、芯金の内周面よりも内方側へ突出していて、アイドラホィールの外周縁が受圧用ブロック部の内周に接した状態でアイドラホィールの外周縁と芯金内周面との間に隙間を形成するように構成してある請求項1又は2記載のクローラ走行装置。
【請求項1】
ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記左右一対の芯金突起の間でクローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置であって、
前記左右一対の芯金突起の間に位置して、前記クローラベルトの外れを防止するための外れ止めガイドを備え、
この外れ止めガイドには、前記芯金突起との接当によって、その外れ止めガイドの下縁がクローラベルト内面側に接当することを阻止する近接規制部を備えてあることを特徴とするクローラ走行装置。
【請求項2】
クローラベルトは、その内周面側に駆動スプロケットの駆動爪体と係合する係合用凹部を備えるとともに、この係合用凹部は、ベルト周方向での芯金同士の間に位置して周方向前後の芯金との間に、ゴム製の受圧用ブロック部を介在させた状態でベルト幅方向に長く形成してあり、
駆動スプロケットは、外周側が左右の芯金突起との間に嵌り込む円盤状部材を備えているとともに、その円盤状部材の外周側に所定間隔毎に前記クローラベルトに形成された係合用凹部に係入する前記駆動爪体を備えている請求項1記載のクローラ走行装置。
【請求項3】
芯金の周方向での前後に位置する受圧用ブロック部は、芯金の内周面よりも内方側へ突出していて、アイドラホィールの外周縁が受圧用ブロック部の内周に接した状態でアイドラホィールの外周縁と芯金内周面との間に隙間を形成するように構成してある請求項1又は2記載のクローラ走行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−84092(P2011−84092A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236099(P2009−236099)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
[ Back to top ]