説明

クーラント濾過装置

【課題】省スペースでクーラントaの温度上昇を抑えたクーラント濾過装置を提供する。
【解決手段】
工作機械200から排出される金属等の異物が混入したクーラントaを貯溜させるクーラントタンク3(サブタンク4a、4b)に、クーラントaの熱を吸収しクーラントタンク外の気体中に放熱するため、クーラントタンク3の周壁面にヒートシンク17を固定し、さらにクーラントタンク3外でヒートシンク17の周囲の気体の強制対流するファン18を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械から排出されるクーラントを処理するクーラント濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、研削工具や被加工材料等の冷却や切削焼けを防止するため、クーラントが用いられる。クーラントの温度上昇は、工作機械を不規則に熱変形させたり、また被加工品を急激に熱膨張させて工作機械と被加工品の加工位置との相対位置を変化させる。このため、クーラントを冷却する技術として、例えば、特許文献1及び2に開示されたようなものがある。
【0003】
特許文献1の技術は冷却のための専用のクーラントタンクや、このタンク内浸漬される冷却コイルや、該コイルをクーラント温度以下に冷やすための装置や、クーラントを案内する配管や、先のクーラントタンク内のクーラントを攪拌する手段などを備えている。また特許文献2の技術は、クーラントを冷却するために専用に設けられたクーラントタンクや、このタンク内のクーラントを自身の内方に導入し冷却した後に先のタンク内に送り戻すように作用するクーラントや、先のタンク内のクーラントを攪拌する手段などを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−187851号公報
【特許文献2】特開平11−0276818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術においては、クーラントの冷却のために広い設置スペースを必要とする。
本発明は、多くのスペースを必要とせずにクーラントの温度上昇を抑えることができるクーラント濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明に係るクーラント濾過装置は、工作機械から排出される金属等の異物が混入したクーラントを受け入れて貯溜させるクーラントタンクと、該クーラントタンク内のクーラントの熱を吸収し該クーラントタンク外の気体中に放熱するために該クーラントタンクの周壁面に固定されたヒートシンクと、該クーラントタンク外で前記ヒートシンクの周囲の気体の強制対流するファンとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヒートシンク及びファンによる気体への放熱作用により、クーラントの温度上昇を、従来の技術に較べて省スペース的に抑えることができる。また従来の技術に較べ装置がコンパクト化されるため、クーラントの温度上昇を比較的低コストで抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】クーラント濾過装置の平面図である。
【図2】クーラント濾過装置の後部拡大側面図である。
【図3】冷却ユニットを示す平面図である。
【図4】ヒートシンクを示しAは平面図でBは正面図である。
【図5】ヒートシンクの取付構造を示す図である。
【図6】サブタンクの後部周辺を上方から見た図である。
【図7】サブタンクの冷却ユニット周辺を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例のクーラント濾過装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1において、クーラント濾過装置100は、工作機械200から排出される金属片等の異物(切粉など)の混入したクーラントaを開口部d1で受け入れて貯溜するクーラントタンク3を備えている。クーラントタンク3内においては、多数のスクレーパ7がチェーン6に連動して周回し、紙面右側の排出口d2から異物を外方へ落下させる。クーラントタンク3は、サブタンク4a、4bを有している。クーラントタンク3内は、濾過装置(パンチ板、フィルタ、サイクロン集塵機等、図示せず)を介して濾過度により、ダーティ側からクリーン側への複数領域に分割され、この分割された領域をサブタンク4a、4bに対応させても良い。本実施例では、サブタンク4aは異物が含まれているダーティ側領域となっており、サブタンク4bは、前後に仕切られその前側(紙面左側)が浄化されたクーラントを保持するクリーン側領域となっている。
【0010】
図2は、クーラント濾過装置100の排出口d2側の一部側面図である。サブタンク4aの上面c7にポンプ10が縦向きに固定され、サブタンク4bの上面c7ではポンプ11が横置きに固定されている。ポンプ10は上面c7に固定されるモータ10aと、クーラントaに浸漬送液部10bとからなる。ポンプ11は、サブタンク4bの上面c7に固定されるモータ11aと送液部11bとからなる。
【0011】
上記クーラントタンク3の周壁面には貯溜されたクーラントaを冷却するため、複数の冷却ユニット16a、16b、16cを設ける。冷却ユニット16a、16b、16cのそれぞれは図3に示すようにヒートシンク17及び動力ファン18からなっている。本実施例では、各冷却ユニット16a、16b、16cはサブタンク4aの後面c9、及び、サブタンク4bの前面c13及び後面c14のそれぞれに固定してある。
【0012】
ヒートシンク17は図4に示すように、支持板17aの表側に設けられた複数からなる表側フィン17bと、支持板17aの裏側に設けられた複数からなる裏側フィン17cとを有するもので、全体を銅やアルミニウムなどの熱伝導性のよい材料で一体成形され、支持板17aの外周縁に固定用にフランジ部f1を有し、このフランジ部f1に複数のボルト孔f2を形成している。また表側フィン17b及び裏側フィン17cのそれぞれは図5Aに示すように厚さg1に対して幅g2が大きい板状体とする。この実施例では表側フィン17b及び裏側フィン17cは全て上下方向に沿って並列状に配置してあり、また裏側フィン17cの相互間隔はクーラントaに混入しクーラントaと一緒に流動する異物が容易に通過し得る大きさとしてある。裏側フィン17cが上下方向に沿わせ、クーラントaに含まれる沈降性の異物が各裏側フィン17cの表面上に堆積するのを抑制する。
【0013】
各ヒートシンク17はサブタンク4aの後面c9や4bの前面c13や後面c14に図5に示すような四角状の透孔i1やネジ孔20aを形成しておき、この透孔i1やネジ孔に螺合されるボルト(ネジ部材)20などを介して、各面c9、c13、c14の外側から作業者による脱着処理ができるように固定している。このようにしておけば、裏側フィン17cの表面汚れを洗浄するなどの保守が容易に行えるようになる。このヒートシンク17は各面c9、c13、c14に固定された状態では、裏側フィン17cはクーラントタンク3(サブタンク4a、4b)内のクーラントaに浸漬した状態となり、表側フィン17bは大気に接触した状態となるようにその位置を設定される。
【0014】
サブタンク4aの後面c9に設けられたヒートシンク17に対して、ポンプ10の吐出管10cから分岐された分岐管21の先端が、ヒートシンク17の幅中央箇所の上方位置に導かれ裏側フィン17cへ向け下向きに開口されている。図7にフィン17cと分岐管21の先端の位置関係を示す。
【0015】
管部材22aの吐出し口は、ヒートシンク17の上方に限らず、ヒートシンクの中央位置から下部方向へ位置しても良い。ヒートシンクへの異物の堆積は、フィン上下方向の上部に比べて、中央部より下部への堆積が起こりやすく、ヒートシンクの上部から吐出すと、下部の堆積物を落とすことができない場合があるからである。
【0016】
分岐管21からポンプ10の送液部10bに吸い込まれて送り出されたクーラントaが図7に示すように流出し、ヒートシンク17の裏側フィン17c近傍のクーラントaを下方へ積極的に流動させる。これにより、サブタンク3d内のクーラントaの熱は後面c9のヒートシンク17に伝達される。
【0017】
サブタンク4bの後面c14に設けられたヒートシンク17も同様にポンプ10からの分岐管22の先端の開口が、ヒートシンク17の幅中央箇所の上下方向の中央から上方に導かれ裏側フィン17cへ向け下向きに取り付けられる。
サブタンク4bは、クリーン側領域に配置される冷却ユニット16bのヒートシンク17には、異物の堆積は無いことから分岐管に吐出しは不要である。
【0018】
冷却ユニット16a、16b、16cの動力ファン18は対応するヒートシンク17の表側フィン17bに向けて大気を吹きかけるファン18aと、これを回転駆動するモータ18bからなっている。このさい、モータ18bはこれの対応するヒートシンク17が接触しているクーラントaの温度に関連して回転数を大小に変更されるものとすることもできる。これによりクーラントaを個別的に冷却することができる。
【0019】
サブタンク4a内において、ポンプ10に吸引されたクーラントaは分岐管21の先端からクーラントa等が後面c9のヒートシンク17の裏側フィン17cに向かう下方へ流出され、裏側フィン17c近傍のクーラントa等を下方へ向け流動する。この流動によりサブタンク4a内のクーラントaは後面c9の裏側フィン17cの幅方向に沿った平面に頻繁に接触され、クーラントaの熱がそのヒートシンク17に伝導され、その後はファン18aにより送られた大気に放散される。サブタンク4bにおいても同様に、クーラントaの熱がこれに接触したヒートシンク17に伝導され、その後はファン18aにより送られた大気に放散される。このようにしてサブタンク4b内のクーラントaは2つの冷却ユニット16b、16cにより冷却され、その温度を降下させることができる。
【0020】
冷却ユニット16a、16bに対する分岐管21による洗浄はポンプが停止すれば停止するが、さらに冷却効果を上げたい場合は、ポンプ停止後もファン18aの運転を続け、ある一定時間運転後に停止するようにしても良いし、温度調整を行い、ある一定の温度になった場合に停止するようにしても良い。
【0021】
また、外気とクーラントタンク3内の温度検知を行い、クーラントタンク3内温度が外気温度より一定温度以上になったらファン18aを運転させ、一定温度以下になったらファン18aを停止させるようにしても良い。このように、ポンプ10,11の運転中か否かに拘らず、冷却ユニット16a、16b、16cにおける冷却効果を継続できる。
【符号の説明】
【0022】
200 工作機械
1 クーラント濾過装置
3 クーラントタンク
4a、4b サブタンク
17 ヒートシンク
17b 表側フィン
17c 裏側フィン
18a ファン
20 ボルト(ネジ部材)
21 分岐管
a クーラント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械から排出される金属等の異物が混入したクーラントを受け入れて貯溜させるクーラントタンクと、該クーラントタンク内のクーラントの熱を吸収し該クーラントタンク外の気体中に放熱するために該クーラントタンクの周壁面に固定されたヒートシンクと、該クーラントタンク外で前記ヒートシンクの周囲の気体の強制対流するファンとを有することを特徴とするクーラント濾過装置。

【請求項2】
前記ヒートシンクは複数からなる表側フィンと複数からなる裏側フィンとを具備し、前記周壁面に形成された孔を介して固定され、前記裏側フィンが前記クーラントに接触し、前記表側フィンが前記気体に接触することを特徴とする請求項1のクーラント濾過装置。

【請求項3】
前記裏側フィンが長さ方向を上下方向に沿わせられており、前記クーラントタンク内で前記クーラントを吸引し前記工作機械へ送るポンプによる吸引されたクーラントの一部が分岐して前記裏側フィンの冷却面上に降下するよう吐出すように配管の開口が設けられていることを特徴とする請求項1記載のクーラント濾過装置。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−166312(P2012−166312A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29739(P2011−29739)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000133939)テラル株式会社 (48)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】