説明

クーラント腐敗防止装置

【課題】確実なクーラントの腐敗防止が得られコンパクトで構成が簡単なクーラント腐敗防止装置を提供する。
【解決手段】貯留タンクTの上壁部Taに設けたベース部11から下端に電極取付部21C、22Cが形成された一対のステー21、22を吊設し、各ステー21、22の電極取付部21C、22Cに銅電極31、32を設け、両銅電極31、32にそれぞれステー21、22を介して交番直流電流を供給する。ベース部11からステー21、22を介して銅電極31、32を対向して吊設する簡単な構成でクーラント腐敗防止装置1がコンパクトに形成できる。また、各ステー本体21Aと22Aの間をクーラントCの液面CLに浮遊するスカムに混在する切粉が掛け渡されることなく通過する離間距離Lを確保して配置することにより、安定した銅イオンの発生が確保でき確実なクーラントの腐敗防止が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等に使用されるクーラントの腐敗を防止するクーラント腐敗防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、貯留タンクに貯留されたクーラントがポンプによって供給管を介して工作機械の加工域に供給され、加工域で工具及びワークを冷却した後、クーラントは回収管により貯留タンクに戻されて循環使用される。この循環して使用されるクーラントには工作機械の加工域において切り屑や研磨屑等の切粉と共に鉱物油等の潤滑油や異物が混入する場合がある。これらの混入によりクーラントの性能が劣化したりバクテリアが繁殖すると、クーラントが腐敗し悪臭が発生して作業環境に悪影響を与えると共に、クーラントの寿命を短くし、クーラントの機能低下によりワークの加工精度に影響を与える。
【0003】
この対策として、殺菌作用のある金属イオンを発生させることによりクーラントを殺菌処理してクーラントの腐敗を防止する種々のクーラント腐敗防止装置が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に示すクーラント腐敗防止装置は、図6に示すように小型ポンプ101の吐出口101aにホース102を介して電極部103が結合されている。電極部103は筒状の銅管電極104内に絶縁材を介して銅棒電極105が貫通支持され、銅管電極104と銅棒電極105との間の隙間は外部と流通している。銅管電極104と銅棒電極105は交流電源106に接続される電源制御盤107に導線によって接続されている。
【0005】
クーラント腐敗防止装置の小型ポンプ101の吸込口101bと電極部103が貯留タンクTに貯留されたクーラントCの液中に入れられ、小型ポンプ101が運転されると、貯留タンクTのクーラントCが小型ポンプ101の吸込口101bからホース102及び電極部103の銅管電極104と銅棒電極105との間の隙間に流入し、貯留タンクTへ流出して循環する。
【0006】
クーラントCが銅管電極104と銅棒電極105との間を流れているとき、電源制御盤107から銅管電極104と銅棒電極105とに交番直流電流が供給されて、銅管電極104と銅棒電極105との間の隙間において、陽極側から銅イオンが析出してクーラントCが殺菌処理され、殺菌処理されたクーラントCは貯留タンクTへ流出する。一方、銅管電極104及び銅棒電極105に付着した不純物はクーラントCの流れにより銅管電極104及び銅棒電極105から脱落してクーラントCと共に貯留タンクTへ排出されて貯留タンクTの底部に沈殿する。殺菌処理されたクーラントCは図示しないポンプ等によって工作機械の加工域に供給されて貯留タンクTと工作機械との間で循環使用される。
【0007】
また、特許文献2に示すクーラント腐敗防止装置は、図7に示すようにクーラントCを貯留する貯留タンクTの他にイオン液用小タンク112及び銅管電極114内に絶縁状態で銅棒電極115を挿通した電極装置113を備え、電源制御装置116から電極装置113の銅管電極114と銅棒電極115に交番直流電流を供給し、イオン液用小タンク112に貯留された水道水をポンプ117によって銅管電極114と銅棒電極115との間の隙間に循環供給してイオン液を生成し、銅イオン濃度が設定値以上となったイオン液を貯留タンクTに添加してクーラントCの腐敗を防止する。
【0008】
【特許文献1】特開平7−100729号公報
【特許文献2】実用新案登録第3028248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1のクーラント腐敗防止装置によると、交番直流電流が供給された銅管電極104と銅棒電極105との間に小型ポンプ101によりホース102を介して貯留タンクT内のクーラントCを流入して循環することによってクーラントCが銅イオンによって殺菌処理されてクーラントCの腐敗が抑制できる。
【0010】
しかし、小型ポンプ101、ホース102、銅管電極104と銅棒電極105を備えた銅電極部103等を要することからクーラント腐敗防止装置が複雑で大型化すると共に製造コスト及びランニングコストの増大を招く要因となる。更に、電極部103の銅管電極104と銅棒電極105との間の隙間に供給されるクーラントCに混在する切粉やスラッジ等が付着して銅管電極104と銅棒電極105とが短絡し、銅イオンの生成を阻害して安定したクーラントCの腐敗防止が妨げられることが懸念される。このため電極部103に付着する切粉やスラッジ等を除去する等のメンテナンスが要求される。
【0011】
また、特許文献2によりとイオン液用小タンク112に貯留された水道水をポンプ117によって銅管電極114と銅棒電極115との間の隙間に循環供給してイオン液を生成し、生成されたイオン液を貯留タンクTに貯留されたクーラントCに添加してクーラントCの腐敗を防止することから、電極装置113の銅管電極114と銅棒電極115に切粉やスラッジ等が付着することはない。
【0012】
しかし、クーラントCを貯留する貯留タンクTと別個にイオン液用小タンク112を設け、更にポンプ117及び電極装置113等を備えるクーラント腐敗防止装置は、複雑で大型化すると共に製造コスト及びランニングコストの増大を招くと共に、その設置には大きな設置スペースを要する。
【0013】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、確実なクーラントの腐敗防止が得られコンパクトで構成が簡単なクーラント腐敗防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する請求項1に記載のクーラント腐敗防止装置の発明は、金属イオンを発生させて貯留タンク内に貯留されたクーラントの腐敗を防止するクーラント腐敗防止装置において、上記貯留タンクの上部に取り付けられたベース部と、上下方向に延在するステー本体の上端に形成された基端部が上記ベース部に支持され下端に電極取付部が形成されて互いに平行配置された一対のステーと、上記各ステーの電極取付部にそれぞれ取り付けられて互いに間隙を介して対向する一対の金属電極と、上記両金属電極にそれぞれ上記ステーを介して交番直流電流を供給する電流供給手段とを備え、上記貯留タンク内のクーラントの液面が上記各ステー本体の上下方向中間位置に保持され上記金属電極がクーラント内に没し、上記互いのステー本体がクーラントの液面に浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体間に掛け渡されることなく通過する離間距離を確保して配置されたことを特徴とする。
【0015】
この発明によると、ベース部からステーを介して金属電極を対向して吊設すると共に金属電極に交番直流電流を供給する電流供給手段による簡単な構成でコンパクトにクーラント腐敗防止装置が形成できる。更に、金属電極を支持する各ステーのステー本体をクーラント液面に浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体間に掛け渡されることなく通過する離間距離を確保して配置することからスカムに混在する切粉によりステー本体間が短絡することがなく、かつ各金属電極の陽極と陰極の極性が反転されて各金属電極の表面における電気化学的反応による不活性化が抑制されて安定した良好な金属イオンの発生が確保できる。従って、確実なクーラントの腐敗防止が得られ、クーラントの腐敗による作業環境への悪影響が回避できると共に、クーラントの寿命を長くし、クーラントの品質の機能が維持されて安定した加工精度が確保できる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1のクーラント腐敗防止装置において、上記各金属電極は共に、銅電極であることを特徴とする。この発明は、金属電極の具体的例を示すもので、金属電極を銅電極とすることによりバクテリアの繁殖抑制作用に優れた銅イオンによるクーラントの腐敗防止ができる。
【0017】
上記目的を達成する請求項3に記載クーラント腐敗防止装置の発明は、金属イオンを発生させて貯留タンク内に貯留されたクーラントの腐敗を防止するクーラント腐敗防止装置において、上記貯留タンクの上部に取り付けられたベース部と、上下方向に延在するステー本体の上端に形成された基端部が上記ベース部に支持され下端に電極取付部が形成されて互いに平行配置された一対のステーと、上記各ステーの電極取付部にそれぞれ取り付けられて互いに間隙を介して対向する一対のイオン化傾向が異なる金属電極とを備え、上記貯留タンク内のクーラントの液面が上記各ステー本体の上下方向中間位置に保持され上記金属電極がクーラント内に没し、上記互いのステー本体がクーラントの液面に浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体間に掛け渡されることなく通過する離間距離を確保して配置されたことを特徴とする。
【0018】
この発明によると、ベース部から各ステーを介してイオン化傾向が異なる金属電極を対向して吊設する簡単な構成でコンパクトに形成できると共に、各金属電極を支持する各ステーのステー本体をクーラント液面に浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体間に掛け渡されることなく通過する離間距離を確保して配置することからスカムに混在する切粉によりステー本体間が短絡することがなく、安定した良好な金属イオンの発生が確保できる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1または3のクーラント腐敗防止装置において、上記各金属電極は、銅電極とアルミニウム電極であることを特徴とする。この発明は、金属電極の具体例を示すもので、金属電極を銅電極とアルミニウム電極に設定することにより殺菌作用に優れた金属イオンによるクーラントの腐敗防止ができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、ベース部から各ステーを介して金属電極を対向して吊設する簡単な構成でコンパクトにクーラント腐敗防止装置が形成できると共に、各金属電極を支持する各ステーのステー本体をクーラントの液面に浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体間に掛け渡されることなく通過する離間距離を確保して配置することから、スカムに混在する切粉によりステー本体が短絡することがなく、安定した良好な金属イオンによるクーラントの腐敗防止が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図を参照して本発明に係るクーラント腐敗防止装置の実施の形態を説明する。
【0022】
(第1実施の形態)
図1乃至図3を参照して本発明の第1実施の形態を説明する。図1はクーラント腐敗防止装置を備えた機械加工システムの構成図であり、図2は、クーラント腐敗防止装置の構成図、図3は図2のA矢視図である。
【0023】
図1におけるMは研削装置等の工作機械であって、TはクーラントCを貯留する貯留タンクである。工作機械Mによる研削等の機械加工にあたり、貯留タンクTに配設されポンプPにより貯留タンクTのクーラントCが配管Fによって工作機械Mの加工域Maに供給され、加工域Maで工具及びワークを冷却したクーラントCは、配管Rにより貯留タンクTに戻されて循環使用される。循環使用されるクーラントCは貯留タンクTの上部である上壁部Taに配設されたクーラント腐敗防止装置1によって発される殺菌作用のある銀イオンや銅イオン、本実施の形態では銅イオンによって殺菌処理されてバクテリアの増殖が抑制されて腐敗が防止される。
【0024】
クーラント腐敗防止装置1が取り付けられる貯留タンクTの上壁部Taには、図2及び図3に示すように円形の開口部Tbが開口し、この開口部Tbに配設された外形が矩形で中央に円形の開口部Baが開口する取付部Bにクーラント腐敗防止装置1が配設される。
【0025】
クーラント腐敗防止装置1は、図2及び図3に示すように取付部Bにボルトによって取り外し可能に取り付けられて開口部Baを覆う円板乃至円柱状で合成樹脂等の絶縁材によって形成されたベース部11と、ベース部11に対向して吊設されたステー21、22に設けられた電極部30とを有している。電極部30は、金属電極、本実施の形態では銅製の電極、即ち銅電極31、32によって構成される。更に、電極部30に電流を供給する電源装置41及び切換手段42を備えた電流供給手段40を有している。
【0026】
ベース部11は、下面にステー嵌合部13a、14aが凹設されたステー支持部13、14が隣接して突出形成され、各ステー支持部13、14に対応してボルト孔15、16が上下方向に貫通している。また、ステー嵌合部13a、14aに装着されたステー21、22に接続される電極17、18が設けられている。これら電極17、18等を覆うカバー19がベース部11の上部にボルトによって取り付けられる。
【0027】
ステー21は導電性材料、例えば鉄製であって上下方向に延在する棒状のステー本体21Aと、ステー本体21Aの上端に形成されてステー嵌合部13aに嵌合する基端部21Bと、ステー本体21Aの下端に形成された矩形の電極取付部21Cとが一体形成された棒状であって、基端部21Bをステー嵌合部13aに嵌合してボルト孔15から挿入され基端部21Bに形成されたボルト孔に螺合するボルト23によってベース部11に取り付けられる。同様に、ステー22は上下方向に延在する棒状のステー本体22Aと、ステー本体22Aの上端に形成されてステー嵌合部14aに嵌合する基端部22Bと、ステー本体22Aの下端に形成された矩形の電極取付部22Cとが一体形成された棒状であって、基端部22Bをステー嵌合部14aに嵌合してボルト孔16から挿入され基端部22Bに形成されたボルト孔に螺合するボルト24によってベース部11に取り付けられる。
【0028】
銅電極31、32は中央部に上下方向に貫通する取付孔31a、32aを有する略矩形断面を有するブロック状であって、取付孔31a、32aに挿入されて電極取付部21C、22Cに形成されたネジ孔に螺合する取付ボルト37、38によってそれぞれ電極取付部21C、22Cの下面に取り付けられる。貯留タンクT内のクーラントCの液面CLは、ステー本体21A、22Aの上下方向中間位置に保持され、銅電極31及び32がクーラントC内に没する。
【0029】
このベース部11に吊設されるステー21のステー本体21Aとステー22のステー本体22Aは、クーラントCの液面CLに浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体21Aと22Aの間に掛け渡されることなく通過する離間距離L、例えば31〜35mm位を確保して配置される。
【0030】
また、電極取付部21C、22Cに対向して取り付けられる銅電極31と32との間隙δは、取付ボルト37によってクーラントCの流れを許容する例えば1〜4mm程度に調整される。
【0031】
ベース部11に設けられた電極17、18には、電流供給手段40の切換手段42を介して電源装置41に接続され、切換手段42を切換えることにより、電極17と18のいずれかが陽極、他方が陰極となるように切換え自在となっている。この切換手段42はタイマにより正負交番して電極17と18に交番直流電流を供給する。即ち電極17が陽極となるとステー21を介して銅電極31が陽極となり、ステー22を介して銅電極32が陰極となる一方、電極18が陽極となるとステー22を介して銅電極32が陽極となり、ステー21を介して銅電極31が陰極となる。貯留タンクT内においてクーラントCは循環使用に伴って環流し、銅電極31と32と間の間隙δにはクーラントCが流れている。
【0032】
クーラントCには、水と水素イオンと水酸化イオンとが混在しており、クーラントCが銅電極31と32との間隙δを流れているとき、両銅電極31と32に交番直流電流が供給されると、銅電極31と銅電極32の間の間隙δにおいて、陽極側から銅イオンが析出し、その銅イオンはクーラントCを殺菌処理してバクテリアの増殖を抑制すると共に、水素イオンと結合して水酸化銅となり、不純物として銅電極31、32に付着する。タイマにより一定時間毎に切換手段42により、銅電極31と32の陽極と陰極の極性が反転されて、両銅電極31と32の表面が電気化学的反応で不活性化するのが防止される。また、銅電極31と32がほぼ同じように消費され、一方の銅電極31或いは32の一方のみが短時間で消費されることがなくなり、銅電極31、32を取り替えるまでの時間が長くなりメンテナンスが容易になる。
【0033】
従って、このように構成された本実施の形態によるクーラント腐敗防止装置1によると、ベース部11からステー21、22を介して銅電極31、32を対向して吊設する簡単な構成でコンパクトに形成できると共に、銅電極31、32を支持するステー21、22のステー本体21Aと22Aとの間をクーラントCの液面CLに浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体21Aと22Aの間に掛け渡されることなく通過する離間距離Lを確保して配置することから、スカムに混在する切粉によりステー本体21Aと22Aの間が短絡することがなく、安定した良好な銅イオンの発生が確保でき、確実なクーラントの腐敗防止が得られる。これにより、クーラントの腐敗による作業環境に対する悪影響が回避でき、クーラントの寿命を長くし、クーラントの品質の機能が維持されて安定したワークの加工精度が確保できる。
【0034】
上記実施の形態では、電極部30における金属電極として銅電極31及び32を用いたが、金属イオンを発生する他の金属からなる電極、例えば銀電極等を用いることもできる。
【0035】
(第2実施の形態)
図4を参照して本発明の第2実施の形態を説明する。図4は第1実施の形態における図2に対応する本実施の形態に係るクーラント腐敗防止装置の構成図である。
【0036】
本実施の形態は、電極部30の金属電極として異種金属からなる電極を使用することを特徴とし、他の構成は第1実施の形態と同様であり、図2と対応する部分に同一符号を付して当該部分の詳細な説明を省略する。
【0037】
図4に示すように、クーラント腐敗防止装置1のベース部11に対向してステー21、22によって吊設された電極部30として、異種金属の電極、本実施の形態では銅製の電極とアルミニウム製の電極、即ち銅電極31とアルミニウム電極35によって構成される。
【0038】
銅電極31及びアルミニウム電極35は、中央部に上下方向に貫通する取付孔31a、35aを有する略矩形断面を有するブロック状であって、取付孔31a、35aに挿入されて電極取付部21C、22Cに形成されたネジ孔に螺合する取付ボルト37、38によってそれぞれ電極取付部21C、22Cの下面に取り付けられる。
【0039】
貯留タンクT内のクーラントCの液面CLは、液面CLに浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体21A、22Aの間に掛け渡されることなく通過する離間距離Lを確保して配置されたステー本体21A、22Aの上下方向中間位置に保持され、銅電極31及びアルミニウム電極35がクーラントC内に没し、電極取付部21C、22Cに取り付けられる銅電極31とアルミニウム電極35との間隙δは、取付ボルト37によってクーラントCの流れを許容する例えば1〜4mm程度に調整される。
【0040】
電流供給手段40の電源装置41に接続された切換手段42を切換えることにより、電極17と18のいずれかが陽極、他方が陰極となるように切換え自在となっている。この切換手段42はタイマにより正負交番して電極17と18に交番直流電流を供給する。即ち電極17が陽極となるとステー21を介して銅電極31が陽極となり、ステー22を介してアルミニウム電極35が陰極となる一方、電極18が陽極となるとステー22を介してアルミニウム電極35が陽極となり、ステー21を介して銅電極31が陰極となる。
【0041】
クーラントCには、水と水素イオンと水酸化イオンとが混在しており、クーラントCが銅電極31とアルミニウム電極35との間隙δを流れているとき、切換手段42を切換えることで、銅電極31が陽極にアルミニウム電極35が陰極となると、銅電極31とアルミニウム電極35の間の間隙δにおいて、陽極側となる銅電極31から銅イオンが析出し、その銅イオンはクーラントCを殺菌処理してバクテリアの増殖を抑制すると共に、アルミニウム電極35が陽極に銅電極35が陰極となると、銅電極31とアルミニウム電極35の間の間隙δにおいて、陽極側となるアルミニウム電極35からアルミニウムイオンが析出し、そのアルミニウムイオンはクーラントCを殺菌処理する。タイマにより一定時間毎に切換手段42により、銅電極31とアルミニウム電極35の陽極と陰極の極性が反転されて、両電極31と35の表面が電気化学的反応で不活性化するのが防止される。
【0042】
従って、このように構成された本実施の形態によるクーラント腐敗防止装置1によると、ベース部11からステー21、22を介して銅電極31とアルミニウム電極35を対向して吊設する簡単な構成でコンパクトに形成できると共に、銅電極31、アルミニウム電極35を支持するステー21、22のステー本体21Aと22Aとの間をクーラントCの液面CLに浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体21Aと22Aの間に掛け渡されることなく通過する離間距離に設定することから、スカムに混在する切粉によりステー本体21Aと22Aが短絡することがなく、安定した良好な金属イオンの発生が確保でき、確実なクーラントの腐敗防止が得られて、クーラントの腐敗による作業環境に対する悪影響が回避でき、クーラントの寿命を長くし、クーラントの品質の機能が維持されて安定した加工精度が確保できる。
【0043】
上記実施の形態では、電極部30において金属電極として銅電極31とアルミニウム電極35を用いたが、金属イオンを発生する他の異種金属からなる金属電極、例えば銅電極と銀電極等を用いることもできる。
【0044】
(第3実施の形態)
図5を参照して本発明の第3実施の形態を説明する。図5は第2実施の形態における図4に対応する本実施の形態に係るクーラント腐敗防止装置の構成図である。
【0045】
本実施の形態は、電極部30の金属電極としてイオン化傾向が異なる異種金属からなる電極を使用し、電源装置を使用しないことを特徴とし、他の構成は第2実施の形態と同様であり、図4と対応する部分に同一符号を付して当該部分の詳細な説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、クーラント腐敗防止装置1のベース部11に対向してステー21、22によって吊設された電極部30として、イオン化傾向が異なる異種金属の電極、本実施の形態では銅製の電極とアルミニウム製の電極、即ち銅電極31とアルミニウム電極35によって構成される。
【0047】
銅電極31及びアルミニウム電極35は、中央部に上下方向に貫通する取付孔31a、35aを有する略矩形断面を有するブロック状であって、取付孔31a、35aに挿入されて電極取付部21C、22Cに形成されたネジ孔に螺合する取付ボルト37、38によってそれぞれ電極取付部21C、22Cの下面に取り付けられる。
【0048】
貯留タンクT内のクーラントCの液面CLは、ステー本体21A、22Aの上下方向中間位置に保持され、銅電極31及びアルミニウム電極35がクーラントC内に没し、ステー本体21Aと22Aは液面CLに浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体21Aと22Aの間に掛け渡されることなく通過する離間距離Lを確保して配置され、電極取付部21C、22Cに取り付けられる銅電極31とアルミニウム電極35との隙間δは、取付ボルト37によってクーラントCの流れを許容する例えば1〜4mm程度に調整される。貯留タンクT内においてクーラントCは循環使用に伴って環流し、銅電極31とアルミニウム電極35と間の間隙δにはクーラントCが流れている。
【0049】
クーラントCが銅電極31とアルミニウム電極35との間隙δを流れているとき、イオン化傾向が大きい銅電極31が溶解して銅イオンが析出し、その銅イオンはクーラントCを殺菌処理してバクテリアの増殖を抑制する。
【0050】
従って、このように構成された本実施の形態によるクーラント腐敗防止装置1によると、第1実施の形態及び第2実施の形態に比べ、電流供給手段40等が省略され構成及びメンテナンスの簡素化が得られ、ベース部11からステー21、22を介して銅電極31とアルミニウム電極35を対向して吊設する簡単な構成でコンパクトに形成できると共に、銅電極31、アルミニウム電極35を支持するステー21、22のステー本体21Aと22Aとの間が液面CLに浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体21Aと22Aの間に掛け渡されることなく通過する離間距離Lを確保して配置されることから、スカムに混在する切粉によりステー本体21Aと22Aが短絡することがなく、安定した良好な金属イオンの発生が確保でき、確実なクーラントの腐敗防止が得られて、クーラントの腐敗による作業環境に対する悪影響が回避でき、クーラントの寿命を長くし、クーラントの品質の機能が維持されて安定した加工精度が確保できる。
【0051】
上記実施の形態では、電極部30において金属電極として銅電極31とアルミニウム電極35を用いたが、イオン化傾向の異なる他の異種金属からなる金属電極を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る第1実施の形態のクーラント腐敗防止装置を備えた機械加工システムの構成図である。
【図2】クーラント腐敗防止装置の構成図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】本発明の第2実施の形態のクーラント腐敗防止装置の構成図である。
【図5】本発明の第3実施の形態のクーラント腐敗防止装置の構成図である。
【図6】従来のクーラント腐敗防止装置を示す図である。
【図7】従来のクーラント腐敗防止装置を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 クーラント腐敗防止装置
11 ベース部
21、22 ステー
21A、22A ステー本体
21B、22B 基端部
21C、22C 電極取付部
30 電極部
31、32 銅電極(金属電極)
35 アルミニウム電極(金属電極)
40 電流供給手段
T 貯留タンク
Ta 上壁部(上部)
C クーラント
CL 液面
L ステー本体の離間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを発生させて貯留タンク内に貯留されたクーラントの腐敗を防止するクーラント腐敗防止装置において、
上記貯留タンクの上部に取り付けられたベース部と、
上下方向に延在するステー本体の上端に形成された基端部が上記ベース部に支持され下端に電極取付部が形成されて互いに平行配置された一対のステーと、
上記各ステーの電極取付部にそれぞれ取り付けられて互いに間隙を介して対向する一対の金属電極と、
上記両金属電極にそれぞれ上記ステーを介して交番直流電流を供給する電流供給手段とを備え、
上記貯留タンク内のクーラントの液面が上記各ステー本体の上下方向中間位置に保持され上記金属電極がクーラント内に没し、上記互いのステー本体がクーラントの液面に浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体間に掛け渡されることなく通過する離間距離を確保して配置されたことを特徴とするクーラント腐敗防止装置。
【請求項2】
上記各金属電極は共に、銅電極であることを特徴とする請求項1に記載のクーラント腐敗防止装置。
【請求項3】
金属イオンを発生させて貯留タンク内に貯留されたクーラントの腐敗を防止するクーラント腐敗防止装置において、
上記貯留タンクの上部に取り付けられたベース部と、
上下方向に延在するステー本体の上端に形成された基端部が上記ベース部に支持され下端に電極取付部が形成されて互いに平行配置された一対のステーと、
上記各ステーの電極取付部にそれぞれ取り付けられて互いに間隙を介して対向する一対のイオン化傾向が異なる金属電極とを備え、
上記貯留タンク内のクーラントの液面が上記各ステー本体の上下方向中間位置に保持され上記金属電極がクーラント内に没し、上記互いのステー本体がクーラントの液面に浮遊するスカムに混在する切粉が両ステー本体間に掛け渡されることなく通過する離間距離を確保して配置されたことを特徴とするクーラント腐敗防止装置。
【請求項4】
上記各金属電極は、銅電極とアルミニウム電極であることを特徴とする請求項1または3に記載のクーラント腐敗防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−68366(P2008−68366A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249495(P2006−249495)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】