グライドヘッド、グライドヘッド・アセンブリおよび磁気ディスクの製造方法
【課題】突起との接触で発生する衝撃波が左右のレールからピエゾ素子に到達するまでに減衰し、左右のレールの浮上量が同じであったとしてもその出力が異なり、検出精度が低い。
【解決手段】グライドヘッド1はスライダ2と、スライダ2の空気流出端から空気流出方向に張り出したウィング3と、ウィング3に接着などにより固定されて搭載されたピエゾ素子などの圧電素子4とを有する。ウィング3の厚さはスライダ2の厚さよりも薄く、スライダ2の浮上に影響を及ぼさない程度の厚さである。スライダ2の浮上面5は、空気流入端側の両端にテーパ部6を有し正圧を発生させる流入端レール7と、空気流出端側の両端に正圧を発生させる流出端レール8と、流入端レール7と流出端レール8の間にクロスカット領域9を有し、左右の流入端レール7の間及び流出端レール8の間には溝部10を有する。
【解決手段】グライドヘッド1はスライダ2と、スライダ2の空気流出端から空気流出方向に張り出したウィング3と、ウィング3に接着などにより固定されて搭載されたピエゾ素子などの圧電素子4とを有する。ウィング3の厚さはスライダ2の厚さよりも薄く、スライダ2の浮上に影響を及ぼさない程度の厚さである。スライダ2の浮上面5は、空気流入端側の両端にテーパ部6を有し正圧を発生させる流入端レール7と、空気流出端側の両端に正圧を発生させる流出端レール8と、流入端レール7と流出端レール8の間にクロスカット領域9を有し、左右の流入端レール7の間及び流出端レール8の間には溝部10を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクの突起欠陥のグライド検査を行う際に使用するグライドヘッド及びグライドヘッド・アセンブリに関するものである。また、グライド検査を含む磁気ディスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、磁気ヘッドと磁気ディスクの磁性膜との間隔を狭めるため、磁気ヘッドの低浮上量化が進んでいる。磁気ディスク表面にある突起欠陥は磁気ヘッドの浮上を妨げ、磁気ヘッドのクラッシュや摩耗を引き起こす場合があり、数nm〜数10nmの高さの微小な突起欠陥を無くすこと、検査することが重要な技術となっている。従来から磁気ディスクの最終検査工程で前述の突起欠陥を検査する方法としてグライド検査が行われている。
【0003】
グライド検査は例えば特許文献1の図1あるいは図6に記載されているように、圧電素子を側面に張り出したウィングに搭載し、浮上面の流入端側に浮上用レールを有し、流出端近傍に2つの突起検出用レールを有するスライダと、スライダとリード線を支えるサスペンションを備えるグライドヘッドをディスク上に浮上させ、スライダがディスク上の突起欠陥と接触した際に生じる衝撃波により圧電素子が振動変形して誘起される電荷をリード線間の電圧として取り出し、突起欠陥を判別する方法が知られている。また、特許文献2の図2(B)に記載されているように、サスペンションの先端の微小な板バネ上に圧電素子を搭載する方法も提案されている。
【0004】
スライダの浮上面は上記従来例にも記載されているように左右2本の浮上レールを配置したものや、フォトレジスト加工などで負圧・正圧を発生させる浮上パッドを形成したものが一般的である。浮上面の流出端のレールあるいはパッド幅は、検査時間を少なくするためには幅が広い方が好ましく、また左右のレールあるいはパッドの浮上量は等しい方が好ましい。
【0005】
【特許文献1】特開2003−30824号公報
【特許文献2】特開平11−37748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているようなグライドヘッドは、圧電素子がスライダの側面に張り出したウィング上に搭載されているため、突起との接触で発生する衝撃波が左右のレールから圧電素子に到達するまでに減衰して、左右のレールの浮上量が同じであったとしてもその出力が異なり、検出精度が上がらないという課題を有している。また、ウィングを側面に設けているため、質量が左右でアンバランスになり、左右のレールで浮上量が異なるという課題も有している。さらに、圧電素子からの信号線も浮上アンバランスの原因となっている。
【0007】
特許文献2に記載されているようなグライドヘッドは、サスペンションの先端の微小な板バネに接着剤などにより圧電素子が固定されているため、突起との接触で発生する衝撃波が接着剤部分及び板バネ部分で減衰してしまい、検出精度が上がらないという課題がある。
【0008】
浮上面の流出端のレールあるいはパッド幅は、検査時間を少なくするためには幅が広い方が好ましいが、広すぎるとグライドヘッドが浮きすぎて突起検出精度が低下してしまう。しかしながら、流出端のレールあるいはパッド幅を狭くすると検査時間が長くなる上、ヘッド送りピッチとレールあるいはパッド幅との関係でレール当り何回突起欠陥に接触するかが決定されるが、レールあるいはパッド幅が狭いと突起欠陥のすり抜けを許容する確率が高くなり検査精度が落ちるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、左右のレールあるいはパッドの浮上量アンバランスを低減できるグライドヘッドを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、突起欠陥の検出精度が高いグライドヘッド・アセンブリを提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、突起欠陥の少ない磁気ディスクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のグライドヘッドにおいては、浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有することを特徴とする。
【0013】
前記流入端レールは、空気流入端にテーパ部を有する。
【0014】
前記流入端レールと前記流出端レールは、テーパフラット型レールがクロスカット領域で分離されたものである。
【0015】
前記流入端レールと前記流出端レールは正圧を発生させるパッドであっても良い。
【0016】
前記スライダは前記浮上面に形成されたDLC膜を有することが望ましい。
【0017】
前記圧電素子はピエゾ素子である。
【0018】
前記流出端レールの幅は250μm以上であることが望ましい。
【0019】
前記ウィングの厚さは、前記スライダの厚さよりも薄く形成される。
【0020】
上記他の目的を達成するために、本発明のグライドヘッド・アセンブリにおいては、浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有するグライドヘッドと、
該グライドヘッドの前記浮上面と反対側の背面が接続され、前記圧電素子からのリード線が接続される配線を有するサスペンションと、を有することを特徴とする。
【0021】
前記リード線は前記ウィングの上部を経由して前記サスペンションの配線に接続される。
【0022】
上記さらに他の目的を達成するために、本発明の磁気ディスクの製造方法においては、
基板上に下地膜、磁性膜及び保護膜を形成する工程と、
前記保護膜上に潤滑剤を塗布する工程と、
前記潤滑剤を塗布した保護膜表面の突起を除去する工程と、
浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有するグライドヘッドを用いて前記保護膜表面の突起を検査する工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
前記保護膜表面の突起を検査する工程は、前記潤滑剤を塗布した段階の磁気ディスクを回転させ、該磁気ディスク上に前記グライドヘッドを浮上させ、該グライドヘッドの前記流出端レールの片側のレールと突起との接触が同一突起当り少なくとも4回以上になるような送りピッチで前記磁気ディスクの半径方向に移動させて行うことが望ましい。
【0024】
前記突起を除去する工程は、前記グライドヘッドを用いて前記保護膜表面の突起を検査する工程の中で行っても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、左右のレールあるいはパッドの浮上量アンバランスが少ないグライドヘッドを提供することができる。
【0026】
また、本発明によれば、突起欠陥の検出精度が高いグライドヘッド・アセンブリを提供することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、突起欠陥の少ない磁気ディスクの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1A、図1B及び図1Cは実施例によるグライドヘッドの構成を示す図であり、図1Aは浮上面側から見た図、図1Bは空気流出端側から見た図、図1Cは側面図である。図2は、グライドヘッドをサスペンションに支持した状態の側面図である。図3A、図3B及び図3Cに、比較例1として従来一般的に使用されているグライドヘッドの構成を示す。
【0029】
図1A、図1B及び図1Cにおいて、グライドヘッド1はスライダ2と、スライダ2の空気流出端から空気流出方向に張り出したウィング3と、ウィング3に接着などにより固定されて搭載されたピエゾ素子などの圧電素子4とを有する。ウィング3の厚さはスライダ2の厚さよりも薄く、スライダ2の浮上に影響を及ぼさない程度の厚さである。スライダ2の浮上面5は、空気流入端側の両端にテーパ部6を有し正圧を発生させる流入端レール7と、空気流出端側の両端に正圧を発生させる流出端レール8と、流入端レール7と流出端レール8の間にクロスカット領域9を有し、左右の流入端レール7の間及び流出端レール8の間には溝部10を有する。
【0030】
流入端レール7と流出端レール8は、浮上面5に機械加工により溝部10を形成して2本のテーパフラット型レールを形成し、2本のテーパフラット型レールに機械加工によりクロスカット領域9を形成することにより形成することができる。他の方法としては、浮上面5をフォトレジストを用いたエッチング加工を行うことにより、4個の浮上パッドとして流入端レール7と流出端レール8を形成することもできる。また、浮上面5にダイアモンド・ライク・カーボン膜(DLC膜)を形成することにより、グライド検査時に、磁気ディスク表面の潤滑剤がグライドヘッド1の浮上面5に付着することを防止することができる。
【0031】
上記グライドヘッド1は4つ以上の正圧を発生させるエアベアリング面を有し、少なくとも2つ以上のエアベアリング面が流出端のサイドに配置され、流出端側にウィング3を有し、その上にピエゾ素子4が搭載された構造であるため、左右の流出端レール(パッド)8と突起との接触による衝撃波は等しくピエゾ素子4で検出され、ウィング3が流出端側に配置されているため左右の流出端レール(パッド)8の浮上量アンバランスを生じることが少ない。また、ウィング3が左右の流出端レール(パッド)8の浮上量バランスに影響を与えないため、ウィング3に搭載するピエゾ素子4の面積を大きくすることができ、ピエゾ素子4の出力を大きくすることができる。
【0032】
また、上記グライドヘッド1は、左右のレール幅を広くしてもクロスカット加工によりヘッドの浮上量を低くすることが可能である。左右のレールそれぞれの幅を250μm以上とすることが、突起検査精度向上のために好ましい。
【0033】
図2にグライドヘッド・アセンブリ20を示すが、グライドヘッド・アセンブリ20はバネ材からなるサスペンション12に、上記グライドヘッド1を、浮上面5と反対側の背面11を接着剤にて固定したものである。ピエゾ素子4のリード線4a,4bはピエゾ素子4の上部を回してサスペンション12の配線に接続される。この構成によれば、ピエゾ素子4はウィング3に直接固定されるため、突起との接触の検出精度を高くすることができる。また、ピエゾ素子4のリード線4a,4bは、ウィング3の外側(横側)にはみ出ることがないので、グライドヘッド1の浮上バランスに影響を及ぼすことはない。
【0034】
図3A、図3B及び図3Cに示したグライドヘッド30(比較例1)は、スライダ32の側面に張り出して形成されたウィング34の上に圧電素子36が搭載されたタイプのグライドヘッドである。左右のレール33の幅はそれぞれ150μmである。
【0035】
グライド検査は、上記グライドヘッド1を回転する磁気ディスクに浮上させて半径方向に移動(走査)することにより行った。グライドヘッド1の浮上量は周速8m/sで7nmである。グライドヘッド1の空気流出端に配置されている左右のレール(パッド)8と磁気ディスク表面の突起との接触が、同一突起あたり少なくとも4回以上になるようなヘッドの送りピッチでグライド検査を行うことでその検査精度を向上させることが可能である。
【0036】
グライド検査に用いた磁気ディスクの構成を図4に示す。磁気ディスク40は、65mm径のガラス基板41と、ガラス基板41の上に形成された下地膜42を有する。下地膜42は、Co合金プリシード層43と、その上に形成されたWCoシード層44と、その上に形成されたCrTi系合金下地層45で構成されている。さらに、下地膜42の上に形成されたCoCr系合金下層磁性膜46と、Ru中間層47と、CoCr系合金上層磁性膜48と、DLC保護膜49とを有し、DLC保護膜上には潤滑剤を塗布して形成された潤滑膜50を有する。このような磁気ディスク40の表面には、微小な突起が存在するものであり、磁気ディスク上を浮上する磁気ヘッドと衝突あるいは接触するような高さの突起は突起欠陥となる。
【0037】
図6に上記実施例のグライドヘッド1と比較例1のグライドヘッド30で同一の突起欠陥と接触した際のピエゾ素子4、36の出力を示す。検査に用いたグライドヘッドの数はそれぞれ3個であり、ヘッド送りピッチは60μmである。図には左右のレールで突起に接触した時の出力が観測されている。比較例1では右側の出力が500mV程度あるのに対して、左側の出力は300mV程度であり、出力アンバランスが大きい。これはレールの突起接触位置からピエゾ素子までの距離が異なること、および浮上量のアンバランスによるものと推定される。それに対して実施例では左右の出力は700〜800mV平均の出力が観測されており、アンバランスも無いことが理解される。すなわち本発明の実施例のグライドヘッド1では出力アンバランスが大きく改善されていることがわかる。
【0038】
さらに各グライドヘッドのレール幅に相当する出力の幅を比較すると、実施例の方が幅広であり、スライダ幅240μmに相当する幅となっているが、比較例1ではレール幅150μmに相当する幅となっている。ヘッド送りピッチが60μmの場合、実施例では4回/レール、比較例1では2回/レール、接触が観測される。
【0039】
次に、同一突起に接触させて実施例と比較例1とで出力を比較した結果を図7に示す。実施例の出力が比較例1の出力の約3倍になっていることがわかる。これは実施例の場合、クロスカット加工を行っているためヘッドの浮上姿勢が立っておりピッチ角度が大きいこと、突起欠陥とピエゾ素子4との距離が近いこと、ピエゾ素子4とウィング3との接触面積を大きく取ることが可能なためなどの理由が考えられる。出力が大きいということはそれだけ突起の検出精度向上を図ることが可能である。
【0040】
次に、突起接触時のピエゾ素子出力と出力変動の関係について詳細に解析を行った。実施例と比較例1のグライドヘッドで突起接触時のピエゾ素子出力が小さいものから大きいものまで接触信号の測定を行い、ひとつの突起に接触した時の出力変動量(ひとつの突起接触からのピエゾ素子出力の標準偏差)を求めた。結果を図8に示す。図8で塗りつぶし記号は実施例を、白抜き記号は比較例1を示している。比較例1と実施例でその傾向に差は無く、いずれもピエゾ素子出力が大きいと出力変動も大きくなっている。例えば500mV出力の場合、出力変動は約150mVとなる。すなわち接触で検出されるピエゾ素子出力はこのような出力変動を伴って観測されるということであり、これが突起検出の誤差となり検査のすり抜けをある確率で許容している事となる。突起検出の閾値と突起検出のピエゾ素子出力平均値が同じ場合について突起検出すり抜け誤差を見積もると図9のようになる。
【0041】
図9の横軸は突起接触回数であり、縦軸はすり抜け確率を示している。突起接触回数が1回の場合、すり抜けの確率は50%、2回の場合は0.52=25%となる。グライドヘッドの送りピッチを60μmとしたとき、比較例1ではヘッドの出力アンバランスが大きく、かつレール幅が狭いため2回の突起接触信号を観測するが、そのすり抜け誤差は25%と大きい。実施例ではグライドヘッドの出力アンバランスが無く、レール幅が比較例1より大きいため、左右のスライダでそれぞれ4回ずつ突起と接触する(合計8回接触)検査条件で検査することが出来る。このとき、すり抜け確率が1%以下となり検査精度を大幅に向上することが可能である。また、このように片レール4回以上の接触信号を検出するグライド検査条件で検査することで検査精度を飛躍的に向上することが出来る。
【0042】
上記実施例によるグライドヘッドでは流出端側の左右にレール(パッド)8を形成しているが、流出端中央にパッド8を形成した例を比較例2として図10に示す。この比較例2のグライドヘッド100と上記実施例のグライドヘッド1で、2.5型磁気ディスク(直径65mm)の外周側へどこまで測定可能かを比較した。結果を図11に示す。横軸はグライドヘッドのセンタでの半径位置、縦軸はピエゾ素子4の出力を示している。比較例2では半径位置約32mmからピエゾ素子出力が増加して測定できなくなっているが、実施例では約32.3mmまで測定可能であり、測定可能エリアが大きいことが判る。
【0043】
以上のように本発明の実施例によるグライドヘッドは磁気ディスクのグライド検査精度の向上に効果を発揮し、高密度記録に適した磁気ディスクのグライド検査を可能とする。
【0044】
次に、上記実施例のグライドヘッド1を用いたグライド検査工程を含む磁気ディスク40の製造方法を図4及び図5を参照して説明する。65mm径のガラス基板41を洗浄し、乾燥させた後、Co合金プリシード層43を約14nm積層し、その上にWCoシード層44を約3nm積層し、その後ランプヒータによりシード層43,44を積層したガラス基板41を約280°Cで加熱した後、CrTi系合金下地層45を約10nm積層して下地膜42を形成した(ステップ500)。下地膜42の上に厚さ約4nmのCoCr系合金下層磁性膜46を積層し、続いてRu中間層47を約0.5nm積層し、さらにその上にCoCr系合金上層磁性膜48を約17.5nm形成した(ステップ501)。次にDLC保護膜49をIBD法により約3nm成膜し(ステップ502)、DLC保護膜上にパーフロロアルキルポリエーテル系の潤滑剤を約1.0nm塗布して潤滑膜50を形成した(ステップ503)。次に、潤滑膜50まで形成した磁気ディスク40を回転させながらバニッシュヘッドあるいはバニッシュテープによる表面突起の除去(バニッシュ)を行った(ステップ504)。続いて上記実施例によるグライドヘッド1を用いて上記したグライド検査を行い(ステップ505)、このグライド検査において、突起欠陥の無い磁気ディスクを合格品とした。なお、突起除去工程(ステップ504)と突起検査工程(ステップ505)は、グライドヘッド1により同一工程で行うこととしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】本発明の実施例によるグライドヘッドの浮上面側から見た図である。
【図1B】本発明の実施例によるグライドヘッドの空気流出端側から見た図である。
【図1C】本発明の実施例によるグライドヘッドの側面図である。
【図2】本発明の実施例によるグライドヘッド・アセンブリの側面図である。
【図3A】比較例1のグライドヘッドの浮上面側から見た図である。
【図3B】比較例1のグライドヘッドの空気流出端側から見た図である。
【図3C】比較例1のグライドヘッドの側面図である。
【図4】磁気ディスクの構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例による磁気ディスクの製造方法の工程図である。
【図6】実施例と比較例1の突起接触信号の観測結果を示す図である。
【図7】実施例と比較例1の突起接触信号のレベルを示す図である。
【図8】実施例と比較例1の突起接触信号の変動量を示す図である。
【図9】突起すり抜け誤差の見積もりを示す図である。
【図10】比較例2のグライドヘッドの浮上面側から見た図である。
【図11】実施例と比較例2の外周側測定可能エリアの比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1…グライドヘッド、2…スライダ、3…ウィング、4…ピエゾ素子、4a,4b…リード線、5…浮上面、6…テーパ部、7…流入端レール(パッド)、8…流出端レール(パッド)、9…クロスカット領域、10…溝部、11…背面、12…サスペンション、20…グライドヘッド・アセンブリ、40…磁気ディスク、41…基板、42…下地膜、46…下層磁性膜、47…中間層、48…上層磁性膜、49…DLC保護膜、50…潤滑膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクの突起欠陥のグライド検査を行う際に使用するグライドヘッド及びグライドヘッド・アセンブリに関するものである。また、グライド検査を含む磁気ディスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、磁気ヘッドと磁気ディスクの磁性膜との間隔を狭めるため、磁気ヘッドの低浮上量化が進んでいる。磁気ディスク表面にある突起欠陥は磁気ヘッドの浮上を妨げ、磁気ヘッドのクラッシュや摩耗を引き起こす場合があり、数nm〜数10nmの高さの微小な突起欠陥を無くすこと、検査することが重要な技術となっている。従来から磁気ディスクの最終検査工程で前述の突起欠陥を検査する方法としてグライド検査が行われている。
【0003】
グライド検査は例えば特許文献1の図1あるいは図6に記載されているように、圧電素子を側面に張り出したウィングに搭載し、浮上面の流入端側に浮上用レールを有し、流出端近傍に2つの突起検出用レールを有するスライダと、スライダとリード線を支えるサスペンションを備えるグライドヘッドをディスク上に浮上させ、スライダがディスク上の突起欠陥と接触した際に生じる衝撃波により圧電素子が振動変形して誘起される電荷をリード線間の電圧として取り出し、突起欠陥を判別する方法が知られている。また、特許文献2の図2(B)に記載されているように、サスペンションの先端の微小な板バネ上に圧電素子を搭載する方法も提案されている。
【0004】
スライダの浮上面は上記従来例にも記載されているように左右2本の浮上レールを配置したものや、フォトレジスト加工などで負圧・正圧を発生させる浮上パッドを形成したものが一般的である。浮上面の流出端のレールあるいはパッド幅は、検査時間を少なくするためには幅が広い方が好ましく、また左右のレールあるいはパッドの浮上量は等しい方が好ましい。
【0005】
【特許文献1】特開2003−30824号公報
【特許文献2】特開平11−37748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているようなグライドヘッドは、圧電素子がスライダの側面に張り出したウィング上に搭載されているため、突起との接触で発生する衝撃波が左右のレールから圧電素子に到達するまでに減衰して、左右のレールの浮上量が同じであったとしてもその出力が異なり、検出精度が上がらないという課題を有している。また、ウィングを側面に設けているため、質量が左右でアンバランスになり、左右のレールで浮上量が異なるという課題も有している。さらに、圧電素子からの信号線も浮上アンバランスの原因となっている。
【0007】
特許文献2に記載されているようなグライドヘッドは、サスペンションの先端の微小な板バネに接着剤などにより圧電素子が固定されているため、突起との接触で発生する衝撃波が接着剤部分及び板バネ部分で減衰してしまい、検出精度が上がらないという課題がある。
【0008】
浮上面の流出端のレールあるいはパッド幅は、検査時間を少なくするためには幅が広い方が好ましいが、広すぎるとグライドヘッドが浮きすぎて突起検出精度が低下してしまう。しかしながら、流出端のレールあるいはパッド幅を狭くすると検査時間が長くなる上、ヘッド送りピッチとレールあるいはパッド幅との関係でレール当り何回突起欠陥に接触するかが決定されるが、レールあるいはパッド幅が狭いと突起欠陥のすり抜けを許容する確率が高くなり検査精度が落ちるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、左右のレールあるいはパッドの浮上量アンバランスを低減できるグライドヘッドを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、突起欠陥の検出精度が高いグライドヘッド・アセンブリを提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、突起欠陥の少ない磁気ディスクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のグライドヘッドにおいては、浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有することを特徴とする。
【0013】
前記流入端レールは、空気流入端にテーパ部を有する。
【0014】
前記流入端レールと前記流出端レールは、テーパフラット型レールがクロスカット領域で分離されたものである。
【0015】
前記流入端レールと前記流出端レールは正圧を発生させるパッドであっても良い。
【0016】
前記スライダは前記浮上面に形成されたDLC膜を有することが望ましい。
【0017】
前記圧電素子はピエゾ素子である。
【0018】
前記流出端レールの幅は250μm以上であることが望ましい。
【0019】
前記ウィングの厚さは、前記スライダの厚さよりも薄く形成される。
【0020】
上記他の目的を達成するために、本発明のグライドヘッド・アセンブリにおいては、浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有するグライドヘッドと、
該グライドヘッドの前記浮上面と反対側の背面が接続され、前記圧電素子からのリード線が接続される配線を有するサスペンションと、を有することを特徴とする。
【0021】
前記リード線は前記ウィングの上部を経由して前記サスペンションの配線に接続される。
【0022】
上記さらに他の目的を達成するために、本発明の磁気ディスクの製造方法においては、
基板上に下地膜、磁性膜及び保護膜を形成する工程と、
前記保護膜上に潤滑剤を塗布する工程と、
前記潤滑剤を塗布した保護膜表面の突起を除去する工程と、
浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有するグライドヘッドを用いて前記保護膜表面の突起を検査する工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
前記保護膜表面の突起を検査する工程は、前記潤滑剤を塗布した段階の磁気ディスクを回転させ、該磁気ディスク上に前記グライドヘッドを浮上させ、該グライドヘッドの前記流出端レールの片側のレールと突起との接触が同一突起当り少なくとも4回以上になるような送りピッチで前記磁気ディスクの半径方向に移動させて行うことが望ましい。
【0024】
前記突起を除去する工程は、前記グライドヘッドを用いて前記保護膜表面の突起を検査する工程の中で行っても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、左右のレールあるいはパッドの浮上量アンバランスが少ないグライドヘッドを提供することができる。
【0026】
また、本発明によれば、突起欠陥の検出精度が高いグライドヘッド・アセンブリを提供することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、突起欠陥の少ない磁気ディスクの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1A、図1B及び図1Cは実施例によるグライドヘッドの構成を示す図であり、図1Aは浮上面側から見た図、図1Bは空気流出端側から見た図、図1Cは側面図である。図2は、グライドヘッドをサスペンションに支持した状態の側面図である。図3A、図3B及び図3Cに、比較例1として従来一般的に使用されているグライドヘッドの構成を示す。
【0029】
図1A、図1B及び図1Cにおいて、グライドヘッド1はスライダ2と、スライダ2の空気流出端から空気流出方向に張り出したウィング3と、ウィング3に接着などにより固定されて搭載されたピエゾ素子などの圧電素子4とを有する。ウィング3の厚さはスライダ2の厚さよりも薄く、スライダ2の浮上に影響を及ぼさない程度の厚さである。スライダ2の浮上面5は、空気流入端側の両端にテーパ部6を有し正圧を発生させる流入端レール7と、空気流出端側の両端に正圧を発生させる流出端レール8と、流入端レール7と流出端レール8の間にクロスカット領域9を有し、左右の流入端レール7の間及び流出端レール8の間には溝部10を有する。
【0030】
流入端レール7と流出端レール8は、浮上面5に機械加工により溝部10を形成して2本のテーパフラット型レールを形成し、2本のテーパフラット型レールに機械加工によりクロスカット領域9を形成することにより形成することができる。他の方法としては、浮上面5をフォトレジストを用いたエッチング加工を行うことにより、4個の浮上パッドとして流入端レール7と流出端レール8を形成することもできる。また、浮上面5にダイアモンド・ライク・カーボン膜(DLC膜)を形成することにより、グライド検査時に、磁気ディスク表面の潤滑剤がグライドヘッド1の浮上面5に付着することを防止することができる。
【0031】
上記グライドヘッド1は4つ以上の正圧を発生させるエアベアリング面を有し、少なくとも2つ以上のエアベアリング面が流出端のサイドに配置され、流出端側にウィング3を有し、その上にピエゾ素子4が搭載された構造であるため、左右の流出端レール(パッド)8と突起との接触による衝撃波は等しくピエゾ素子4で検出され、ウィング3が流出端側に配置されているため左右の流出端レール(パッド)8の浮上量アンバランスを生じることが少ない。また、ウィング3が左右の流出端レール(パッド)8の浮上量バランスに影響を与えないため、ウィング3に搭載するピエゾ素子4の面積を大きくすることができ、ピエゾ素子4の出力を大きくすることができる。
【0032】
また、上記グライドヘッド1は、左右のレール幅を広くしてもクロスカット加工によりヘッドの浮上量を低くすることが可能である。左右のレールそれぞれの幅を250μm以上とすることが、突起検査精度向上のために好ましい。
【0033】
図2にグライドヘッド・アセンブリ20を示すが、グライドヘッド・アセンブリ20はバネ材からなるサスペンション12に、上記グライドヘッド1を、浮上面5と反対側の背面11を接着剤にて固定したものである。ピエゾ素子4のリード線4a,4bはピエゾ素子4の上部を回してサスペンション12の配線に接続される。この構成によれば、ピエゾ素子4はウィング3に直接固定されるため、突起との接触の検出精度を高くすることができる。また、ピエゾ素子4のリード線4a,4bは、ウィング3の外側(横側)にはみ出ることがないので、グライドヘッド1の浮上バランスに影響を及ぼすことはない。
【0034】
図3A、図3B及び図3Cに示したグライドヘッド30(比較例1)は、スライダ32の側面に張り出して形成されたウィング34の上に圧電素子36が搭載されたタイプのグライドヘッドである。左右のレール33の幅はそれぞれ150μmである。
【0035】
グライド検査は、上記グライドヘッド1を回転する磁気ディスクに浮上させて半径方向に移動(走査)することにより行った。グライドヘッド1の浮上量は周速8m/sで7nmである。グライドヘッド1の空気流出端に配置されている左右のレール(パッド)8と磁気ディスク表面の突起との接触が、同一突起あたり少なくとも4回以上になるようなヘッドの送りピッチでグライド検査を行うことでその検査精度を向上させることが可能である。
【0036】
グライド検査に用いた磁気ディスクの構成を図4に示す。磁気ディスク40は、65mm径のガラス基板41と、ガラス基板41の上に形成された下地膜42を有する。下地膜42は、Co合金プリシード層43と、その上に形成されたWCoシード層44と、その上に形成されたCrTi系合金下地層45で構成されている。さらに、下地膜42の上に形成されたCoCr系合金下層磁性膜46と、Ru中間層47と、CoCr系合金上層磁性膜48と、DLC保護膜49とを有し、DLC保護膜上には潤滑剤を塗布して形成された潤滑膜50を有する。このような磁気ディスク40の表面には、微小な突起が存在するものであり、磁気ディスク上を浮上する磁気ヘッドと衝突あるいは接触するような高さの突起は突起欠陥となる。
【0037】
図6に上記実施例のグライドヘッド1と比較例1のグライドヘッド30で同一の突起欠陥と接触した際のピエゾ素子4、36の出力を示す。検査に用いたグライドヘッドの数はそれぞれ3個であり、ヘッド送りピッチは60μmである。図には左右のレールで突起に接触した時の出力が観測されている。比較例1では右側の出力が500mV程度あるのに対して、左側の出力は300mV程度であり、出力アンバランスが大きい。これはレールの突起接触位置からピエゾ素子までの距離が異なること、および浮上量のアンバランスによるものと推定される。それに対して実施例では左右の出力は700〜800mV平均の出力が観測されており、アンバランスも無いことが理解される。すなわち本発明の実施例のグライドヘッド1では出力アンバランスが大きく改善されていることがわかる。
【0038】
さらに各グライドヘッドのレール幅に相当する出力の幅を比較すると、実施例の方が幅広であり、スライダ幅240μmに相当する幅となっているが、比較例1ではレール幅150μmに相当する幅となっている。ヘッド送りピッチが60μmの場合、実施例では4回/レール、比較例1では2回/レール、接触が観測される。
【0039】
次に、同一突起に接触させて実施例と比較例1とで出力を比較した結果を図7に示す。実施例の出力が比較例1の出力の約3倍になっていることがわかる。これは実施例の場合、クロスカット加工を行っているためヘッドの浮上姿勢が立っておりピッチ角度が大きいこと、突起欠陥とピエゾ素子4との距離が近いこと、ピエゾ素子4とウィング3との接触面積を大きく取ることが可能なためなどの理由が考えられる。出力が大きいということはそれだけ突起の検出精度向上を図ることが可能である。
【0040】
次に、突起接触時のピエゾ素子出力と出力変動の関係について詳細に解析を行った。実施例と比較例1のグライドヘッドで突起接触時のピエゾ素子出力が小さいものから大きいものまで接触信号の測定を行い、ひとつの突起に接触した時の出力変動量(ひとつの突起接触からのピエゾ素子出力の標準偏差)を求めた。結果を図8に示す。図8で塗りつぶし記号は実施例を、白抜き記号は比較例1を示している。比較例1と実施例でその傾向に差は無く、いずれもピエゾ素子出力が大きいと出力変動も大きくなっている。例えば500mV出力の場合、出力変動は約150mVとなる。すなわち接触で検出されるピエゾ素子出力はこのような出力変動を伴って観測されるということであり、これが突起検出の誤差となり検査のすり抜けをある確率で許容している事となる。突起検出の閾値と突起検出のピエゾ素子出力平均値が同じ場合について突起検出すり抜け誤差を見積もると図9のようになる。
【0041】
図9の横軸は突起接触回数であり、縦軸はすり抜け確率を示している。突起接触回数が1回の場合、すり抜けの確率は50%、2回の場合は0.52=25%となる。グライドヘッドの送りピッチを60μmとしたとき、比較例1ではヘッドの出力アンバランスが大きく、かつレール幅が狭いため2回の突起接触信号を観測するが、そのすり抜け誤差は25%と大きい。実施例ではグライドヘッドの出力アンバランスが無く、レール幅が比較例1より大きいため、左右のスライダでそれぞれ4回ずつ突起と接触する(合計8回接触)検査条件で検査することが出来る。このとき、すり抜け確率が1%以下となり検査精度を大幅に向上することが可能である。また、このように片レール4回以上の接触信号を検出するグライド検査条件で検査することで検査精度を飛躍的に向上することが出来る。
【0042】
上記実施例によるグライドヘッドでは流出端側の左右にレール(パッド)8を形成しているが、流出端中央にパッド8を形成した例を比較例2として図10に示す。この比較例2のグライドヘッド100と上記実施例のグライドヘッド1で、2.5型磁気ディスク(直径65mm)の外周側へどこまで測定可能かを比較した。結果を図11に示す。横軸はグライドヘッドのセンタでの半径位置、縦軸はピエゾ素子4の出力を示している。比較例2では半径位置約32mmからピエゾ素子出力が増加して測定できなくなっているが、実施例では約32.3mmまで測定可能であり、測定可能エリアが大きいことが判る。
【0043】
以上のように本発明の実施例によるグライドヘッドは磁気ディスクのグライド検査精度の向上に効果を発揮し、高密度記録に適した磁気ディスクのグライド検査を可能とする。
【0044】
次に、上記実施例のグライドヘッド1を用いたグライド検査工程を含む磁気ディスク40の製造方法を図4及び図5を参照して説明する。65mm径のガラス基板41を洗浄し、乾燥させた後、Co合金プリシード層43を約14nm積層し、その上にWCoシード層44を約3nm積層し、その後ランプヒータによりシード層43,44を積層したガラス基板41を約280°Cで加熱した後、CrTi系合金下地層45を約10nm積層して下地膜42を形成した(ステップ500)。下地膜42の上に厚さ約4nmのCoCr系合金下層磁性膜46を積層し、続いてRu中間層47を約0.5nm積層し、さらにその上にCoCr系合金上層磁性膜48を約17.5nm形成した(ステップ501)。次にDLC保護膜49をIBD法により約3nm成膜し(ステップ502)、DLC保護膜上にパーフロロアルキルポリエーテル系の潤滑剤を約1.0nm塗布して潤滑膜50を形成した(ステップ503)。次に、潤滑膜50まで形成した磁気ディスク40を回転させながらバニッシュヘッドあるいはバニッシュテープによる表面突起の除去(バニッシュ)を行った(ステップ504)。続いて上記実施例によるグライドヘッド1を用いて上記したグライド検査を行い(ステップ505)、このグライド検査において、突起欠陥の無い磁気ディスクを合格品とした。なお、突起除去工程(ステップ504)と突起検査工程(ステップ505)は、グライドヘッド1により同一工程で行うこととしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】本発明の実施例によるグライドヘッドの浮上面側から見た図である。
【図1B】本発明の実施例によるグライドヘッドの空気流出端側から見た図である。
【図1C】本発明の実施例によるグライドヘッドの側面図である。
【図2】本発明の実施例によるグライドヘッド・アセンブリの側面図である。
【図3A】比較例1のグライドヘッドの浮上面側から見た図である。
【図3B】比較例1のグライドヘッドの空気流出端側から見た図である。
【図3C】比較例1のグライドヘッドの側面図である。
【図4】磁気ディスクの構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例による磁気ディスクの製造方法の工程図である。
【図6】実施例と比較例1の突起接触信号の観測結果を示す図である。
【図7】実施例と比較例1の突起接触信号のレベルを示す図である。
【図8】実施例と比較例1の突起接触信号の変動量を示す図である。
【図9】突起すり抜け誤差の見積もりを示す図である。
【図10】比較例2のグライドヘッドの浮上面側から見た図である。
【図11】実施例と比較例2の外周側測定可能エリアの比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1…グライドヘッド、2…スライダ、3…ウィング、4…ピエゾ素子、4a,4b…リード線、5…浮上面、6…テーパ部、7…流入端レール(パッド)、8…流出端レール(パッド)、9…クロスカット領域、10…溝部、11…背面、12…サスペンション、20…グライドヘッド・アセンブリ、40…磁気ディスク、41…基板、42…下地膜、46…下層磁性膜、47…中間層、48…上層磁性膜、49…DLC保護膜、50…潤滑膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有することを特徴とするグライドヘッド。
【請求項2】
前記流入端レールは、空気流入端にテーパ部を有することを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項3】
前記流入端レールと前記流出端レールは、テーパフラット型レールがクロスカット領域で分離されたものであることを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項4】
前記流入端レールと前記流出端レールは正圧を発生させるパッドであることを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項5】
前記スライダは前記浮上面に形成されたDLC膜を有することを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項6】
前記圧電素子はピエゾ素子であることを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項7】
前記流出端レールの幅は250μm以上であることを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項8】
前記ウィングの厚さは、前記スライダの厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項9】
浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有するグライドヘッドと、
該グライドヘッドの前記浮上面と反対側の背面が接続され、前記圧電素子からのリード線が接続される配線を有するサスペンションと、を有することを特徴とするグライドヘッド・アセンブリ。
【請求項10】
前記リード線は前記ウィングの上部を経由して前記サスペンションの配線に接続されることを特徴とする請求項9記載のグライドヘッド・アセンブリ。
【請求項11】
基板上に下地膜、磁性膜及び保護膜を形成する工程と、
前記保護膜上に潤滑剤を塗布する工程と、
前記潤滑剤を塗布した保護膜表面の突起を除去する工程と、
浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有するグライドヘッドを用いて前記保護膜表面の突起を検査する工程と、
を含むことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【請求項12】
前記保護膜表面の突起を検査する工程は、前記潤滑剤を塗布した段階の磁気ディスクを回転させ、該磁気ディスク上に前記グライドヘッドを浮上させ、該グライドヘッドの前記流出端レールの片側のレールと突起との接触が同一突起当り少なくとも4回以上になるような送りピッチで前記磁気ディスクの半径方向に移動させて行うことを特徴とする請求項11記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項13】
前記突起を除去する工程は、前記グライドヘッドを用いて前記保護膜表面の突起を検査する工程の中で行うことを特徴とする請求項11記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項1】
浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有することを特徴とするグライドヘッド。
【請求項2】
前記流入端レールは、空気流入端にテーパ部を有することを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項3】
前記流入端レールと前記流出端レールは、テーパフラット型レールがクロスカット領域で分離されたものであることを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項4】
前記流入端レールと前記流出端レールは正圧を発生させるパッドであることを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項5】
前記スライダは前記浮上面に形成されたDLC膜を有することを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項6】
前記圧電素子はピエゾ素子であることを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項7】
前記流出端レールの幅は250μm以上であることを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項8】
前記ウィングの厚さは、前記スライダの厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1記載のグライドヘッド。
【請求項9】
浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有するグライドヘッドと、
該グライドヘッドの前記浮上面と反対側の背面が接続され、前記圧電素子からのリード線が接続される配線を有するサスペンションと、を有することを特徴とするグライドヘッド・アセンブリ。
【請求項10】
前記リード線は前記ウィングの上部を経由して前記サスペンションの配線に接続されることを特徴とする請求項9記載のグライドヘッド・アセンブリ。
【請求項11】
基板上に下地膜、磁性膜及び保護膜を形成する工程と、
前記保護膜上に潤滑剤を塗布する工程と、
前記潤滑剤を塗布した保護膜表面の突起を除去する工程と、
浮上面の空気流入端側の両端に設けられた流入端レールと、空気流出端側の両端に設けられた流出端レールと、空気流出端から空気流出方向に張り出したウィングとを備えたスライダと、前記ウィングに搭載された圧電素子とを有するグライドヘッドを用いて前記保護膜表面の突起を検査する工程と、
を含むことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【請求項12】
前記保護膜表面の突起を検査する工程は、前記潤滑剤を塗布した段階の磁気ディスクを回転させ、該磁気ディスク上に前記グライドヘッドを浮上させ、該グライドヘッドの前記流出端レールの片側のレールと突起との接触が同一突起当り少なくとも4回以上になるような送りピッチで前記磁気ディスクの半径方向に移動させて行うことを特徴とする請求項11記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項13】
前記突起を除去する工程は、前記グライドヘッドを用いて前記保護膜表面の突起を検査する工程の中で行うことを特徴とする請求項11記載の磁気ディスクの製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−294108(P2006−294108A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111798(P2005−111798)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
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