説明

グラウト注入制御方法および装置

【課題】廃液で地球環境を汚染することがなく、また、洗浄工程を注入工程と同時に行うことで作業時間を短縮することのできる方法及び装置を提供すること。
【解決手段】原液グラウトを第1供給ラインを経て合流管に送るとともに、希釈液を第2供給ラインを経て合流管に送り、この合流管に連結された注入ラインのミキサにより所定の濃度に混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御方法において、原液グラウトを第1供給ラインから第2供給ラインに、希釈液を第2供給ラインから第1供給ラインに交互に切替えて合流管に送り、希釈液の通過時にラインを洗浄し、その洗浄済液を希釈液として利用して廃液を出さないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤や地盤などの地山に構造体を建設するダム建設工事、都市土木工事等の土木工事において、当該地山にグラウトを注入するときに配管内にグラウトが目詰まりしないようにしたグラウト注入制御方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラウト(地山改良剤又は安定剤)を地山に注入して地山改良を行う土木工法には、従来から、配合比毎に一定量ずつ注入するバッチ方式(特許文献1)と配合比を注入圧力等に応じて連続的に可変して注入する連続可変方式とが知られている(特許文献2)。
バッチ方式は、まず、グラウト注入前に透水テスト(水押し)を行う。次いで、図10に示すように、1ステージにおいて透水が30L(リットル)/分以上のときは、配合比の濃いW/C=8/1を初期設定とし、透水が30L/分以下のときは、配合比の薄いW/C=10/1を初期設定とし、例えば、400Lを混合生成して23分で注入する。
以後、配合比W/C=6/1のグラウト400Lを混合生成して21分で注入し、つぎに配合比W/C=4/1のグラウト400Lを混合生成して20分で注入し、つぎに配合比W/C=2/1のグラウト800Lを混合生成して48分で注入する。最後にW/C=1/1のグラウト原液を1000Lをそのまま、1L/分に達するまで時間を設定せずに注入し(この例では2時間12分)、1L/分に達したら、所定時間(たとえば30分間)のダメ押しの注入をする。
この例では、ダメ押し注入後にグラウト原液349.0Lが廃棄される。
【0003】
連続可変方式は、水押し試験等の予備調査に基づいて、グラウト注入プログラム制御ラインを設定し、グラウトの濃度、成分比を注入施工時の地山性状に応じて最適となるように、注入流量制限値と注入圧力制限値を監視しながら、注入施工開始後の工程の進捗に伴う当該地山の性状変化に応じて注入グラウト濃度の濃淡を制御しつつ注入する方法であり、高濃度の原液グラウトと希釈液とをそれぞれ別途に用意し、それぞれ独立したポンプによって圧送し、注入工程の進捗に応じて濃度、成分などが変化する最適性状のグラウト供給の要求に対応すべく、注入孔に至る直前の管路において混合比及び総量を地山の状態に応じて連続的に増減する等、可逆調整しつつ注入する。
【0004】
さらに詳しくは、図9において、注入点における地山の性状に適合したグラウト注入プログラム制御ラインが与えられた場合、注入を開始するS点からは、初期設定濃度に基づくグラウト原液と希釈液の流量値が自動演算され、その結果によってグラウト原液ポンプと希釈液ポンプの速度が与えられ、初期設定濃度のグラウト注入が開始され、プログラム設定された注入流量Q0に至り流量制御が継続される。
低濃度である初期設定濃度のグラウトが地山に注入され、次第に地山の注入抵抗が増加するに従い、注入流量Qを制御値に維持する結果、注入圧力PはP1のように、次第に上昇する。
【0005】
A0時点に至り注入流量Qを低減させる領域に入ると、注入圧力Pの上昇傾向は若干低下するが、さらに注入圧力Pは上昇を続け、圧力制御幅に入ってAl時点において設定制御値を越えることになるので、ここに至り注入圧力PをP2のように制限値内に維持しつつ、プログラムによって与えられる流量値に制御しようとすれば、注入抵抗が低下するよう、注入グラウトの粘度を低下させればよく、そのために希釈液の流量に対するグラウト原液の流量比率を自動的に低下させて対処する。
【0006】
図9におけるA0時点からの流量低減領域のうち、注入圧力Pが制限値に至ったAl時点からB時点に至る領域では、注入流量Qをプログラムによる逓減曲線に追従させたとき、地山の注入抵抗の増加と注入量の減少が平衡し、注入圧力Pを管理値の一定範囲内に維持できるとは限らず、変動を伴う。
注入圧力Pが上昇した場合にはグラウト原液に対する希釈液の供給比率を増やして注入グラウトの濃度を低下させ、注入圧力Pが低下した場合には注入グラウトの濃度を上昇させる自動調整を行う。
【0007】
このように注入グラウトの濃度調節は、注入施工の進捗に応じて一方的に増加させるのみではなく、注入圧力の変化に応じて高濃度側へも低濃度側へも、グラウト原液ポンプと希釈液ポンプの運転速度を自在に自動調整することによって高濃度側から低濃度側へ又は低濃度側から高濃度側へと可逆的な制御を行う。
【0008】
B時点に至り、注入流量Qがほぼゼロになってからも、さらにC時点に至るまでの一定時間、ポンプの低速運転を続け圧力を加えるが、この領域は「ダメ押し」と称し、先立って注入された高濃度のグラウトを地山に十分浸透させる工程であり、加圧媒体として全工程中で最も低濃度のグラウトが、場合によっては希釈液のみが適用される。
【0009】
上記何れの方式によらずグラウト注入時に、グラウトを圧送する配管内でグラウトが付着し、その状態が長時間経過すると、目詰まりを起こし、正確な注入ができないばかりか、注入不能になる恐れがあり、さらにグラウト注入装置自体が故障したり、使用不可能になる。
このような目詰まりを防止するため、図5ないし図8に示すような配管内を洗浄水で洗浄する方法が提案されている(特許文献3)。これらの図の配管路において、太線が開通しているラインを表わしている。
【0010】
グラウト注入時には、図5において、ミキシングプラント10から圧送・廃棄切替えコック11を介して原液ミキサ12に供給された原液(例えば、W/C=1/1)のグラウトが原液ポンプ13、原液・水切替え弁15、原液流量計16、原液開閉弁17、原液・廃液切替え弁18を経てサブミキサ19に供給される。水は、水ポンプ20から水流量調整コック22、水流量計23、水開閉弁24を経てサブミキサ19に供給される。サブミキサ19で目的の濃度に混合されたグラウトは、グラウト・水洗切替え弁27、グラウトポンプ28、質量流量計29、自動グラウト流量計30の制御弁31を経て地山に注入されるとともに、一部は、復帰・廃棄切替え弁32を介してサブミキサ19に戻される。
【0011】
注入終了時には、図6において、原液・水切替え弁15が閉じられ、原液ミキサ12のグラウトの原液は、原液ポンプ13、原液流量調整コック14を経て原液ミキサ12に戻されて循環する。水流量調整コック22が閉じられ、水ポンプ20からの水は、水流量調整コック21を経て戻される。また、グラウト・水洗切替え弁27と制御弁31が切り替えられ、洗浄水は、ライン水洗弁26、グラウト・水洗切替え弁27、グラウトポンプ28、質量流量計29、制御弁31、復帰・廃棄切替え弁32を介してサブミキサ19へ送られ、配管内のグラウトをサブミキサ19に押し出す。
【0012】
洗浄時には、図7において、原液・水切替え弁15と原液・廃液切替え弁18を切替え、水を水ポンプ20により、原液・水切替え弁15、原液流量計16、原液開閉弁17、原液・廃液切替え弁18のラインに流して洗浄し、洗浄した廃液を廃棄する。また、ライン水洗弁26、グラウト・水洗切替え弁27、復帰・廃棄切替え弁32を切替えてグラウト・水洗切替え弁27、グラウトポンプ28、質量流量計29、復帰・廃棄切替え弁32のラインに水を流して洗浄し、洗浄した廃液を廃棄するとともに、注入管を洗浄する。さらに、エアブロー弁25を開いてサブミキサ19とグラウト・水洗切替え弁27との間に空気を送り、グラウトの固着を防止する。
【0013】
再注入準備時には、図8において、原液・水切替え弁15を水側に切替えるとともに、原液・廃液切替え弁18をサブミキサ19側に切替え、水にて原液ラインを洗浄しつつ希釈液をサブミキサ19に供給し、また、グラウト・水洗切替え弁27、制御弁31、復帰・廃棄切替え弁32を切替えて、サブミキサ19内の残留グラウトを循環して所定の濃度に希釈する。
なお、ミキシングプラント10からの原液の廃液は、必要に応じて圧送・廃棄切替えコック11を切替えて廃棄される。
【特許文献1】特開平8−209674号公報。
【特許文献2】特開2005―113523号公報。
【特許文献3】特開2002―61165号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のような洗浄方法では、次のような場合にはいずれも廃液が廃棄される。
ミキシングプラント10のグラウト原液が不必要になると、その廃液が圧送・廃棄切替えコック11を介して廃棄される。
サブミキサ19の入口側の原液ラインを水で洗浄すると、洗浄した廃液が原液・廃液切替え弁18を介して廃棄される。
サブミキサ19の出口側のラインを洗浄液で洗浄すると、その洗浄した廃液が復帰・廃棄切替え弁32を介して廃棄される。
このように、グラウトの供給ラインや注入管を洗浄した廃液を廃棄するだけでなく、グラウト原液も廃棄するので、グラウト廃液で土壌や地下水などが汚染され、地球環境を悪化させるおそれがある。
また、洗浄工程は、グラウトの注入工程を終了してから別工程として行なわれるため、作業時間が長くなるばかりか、長時間かけて注入工程で付着したグラウトをその後の洗浄工程では十分洗浄できない。
などの問題点を有する。
本発明は、廃液で地球環境を悪化させることがなく、また、洗浄工程を注入工程と同時に行うことで作業時間を短縮することのできる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、原液タンク40からの原液グラウトを第1供給ライン44を経て合流管54に送るとともに、希釈液タンク43からの希釈液を第2供給ライン45を経て合流管54に送り、この合流管54に連結された注入ライン55にて混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御方法において、前記原液タンク40の原液グラウトを第1供給ライン44から第2供給ライン45に、前記希釈液タンク43の希釈液を第2供給ライン45から第1供給ライン44に交互に切替えて合流管54に送るようにしたことを特徴とするグラウト注入制御方法である。
【0016】
また、原液タンク40からの原液グラウトを第1供給ライン44を経て合流管54に送るとともに、希釈液タンク43からの希釈液を第2供給ライン45を経て合流管54に送り、この合流管54に連結された注入ライン55にて混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御方法において、前記原液タンク40からの原液グラウトを、第1供給ライン44、合流管54を経てそのまま注入ライン55から地山に注入するときは、前記希釈液タンク43の希釈液を、第2供給ライン45の洗浄液として用い、その洗浄済液を合流管54の前段の第2希釈液戻し弁53を経て貯留タンク58に貯留し、前記原液タンク40の原液グラウトを、第1供給ライン44から第2供給ライン45に切替えて合流管54を経てそのまま注入ライン55から地山に注入するときは、前記希釈液タンク43の希釈液を、第2供給ライン45から第1供給ライン44に切替えて第1供給ライン44の洗浄液として用い、その洗浄済液を合流管54の前段の第1希釈液戻し弁52を経て貯留タンク58に貯留するようにしたことを特徴とするグラウト注入制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び3の記載によれば、原液タンク40からの原液グラウトと希釈液タンク43からの希釈液をミキサ56により所定の濃度に混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御方法及び装置において、前記原液タンク40の原液グラウトを第1供給ライン44から第2供給ライン45に、前記希釈液タンク43の希釈液を第2供給ライン45から第1供給ライン44に交互に切替えて合流管54に送るようにしたので、グラウト原液を廃棄したり、洗浄時に、原液ラインを洗浄した洗浄済液や、サブミキサ19の後段のラインを洗浄した洗浄済液を廃棄したりすることがなく、土壌や地下水などを汚染するおそれがない。
また、一方のラインでグラウトの供給工程を行っているときに、他方のラインでは希釈水で洗浄工程を行い、逆に、これまでグラウトを送っていた一方のラインを希釈水で洗浄工程を行っているときに、他方のラインではグラウトの供給工程を行なうようにしたため、グラウト供給工程と洗浄工程が同時に行われ、従来のグラウト供給後の洗浄工程が不要になり、作業時間を大幅に改善できる。
【0018】
請求項2及び4の記載によれば、原液タンク40からの原液グラウトを第1供給ライン44を経て合流管54に送るとともに、希釈液タンク43からの希釈液を第2供給ライン45を経て合流管54に送り、この合流管54に連結された注入ライン55にて混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御方法において、前記原液タンク40からの原液グラウトを、第1供給ライン44、合流管54を経てそのまま注入ライン55から地山に注入するときは、前記希釈液タンク43の希釈液を、第2供給ライン45の洗浄液として用い、その洗浄済液を合流管54の前段の第2希釈液戻し弁53を経て貯留タンク58に貯留し、前記原液タンク40の原液グラウトを、第1供給ライン44から第2供給ライン45に切替えて合流管54を経てそのまま注入ライン55から地山に注入するときは、前記希釈液タンク43の希釈液を、第2供給ライン45から第1供給ライン44に切替えて第1供給ライン44の洗浄液として用い、その洗浄済液を合流管54の前段の第1希釈液戻し弁52を経て貯留タンク58に貯留するようにしたので、一方のラインで原液グラウトをそのまま地山に注入するときは、他方のラインは専ら洗浄を行い、その洗浄済液は貯留タンク58に戻して再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、原液タンク40にて配合比の最も濃い、例えば、W(水)/C(セメント)=1/1のグラウトを作り、この原液タンク40を、第1供給ライン44に連結する。
また、希釈液としての水を供給する希釈液タンク43には、第2供給ライン45が連結される。
本発明は、配合比毎に一定量ずつ注入するバッチ方式であってもよいし、また、配合比を注入圧力等に応じて連続的に可変して注入する連続可変方式であってもよい。
【0020】
前記第1供給ライン44と第2供給ライン45の間であって、原液タンク40にできるだけ近い位置に第1供給ライン44と第2供給ライン45の流路を交互に切替える切替え弁46が設けられる。
前記第1供給ライン44には、第1ポンプ47、第1圧力・流量検出器48、1入力2出力の第1希釈液戻し弁52を介して合流管54の一方の入力側に連結する。
前記第2供給ライン45には、第2ポンプ49、第2圧力・流量検出器50、1入力2出力の第2希釈液戻し弁53を介して合流管54の他方の入力側に連結する。
この合流管54の出力側に連結された注入ライン55にはミキサ56が設けられる。このミキサ56は、グラウト原液と希釈液を撹拌翼等でかき混ぜる駆動型の方式のものでもよいし、グラウト原液と希釈液が配管中を通過するときに混合される静止型のスタテックミキサであってもよい。
前記第1希釈液戻し弁52と第2希釈液戻し弁53の他の出力側は、貯留タンク58に連結され、この貯留タンク58は、開閉弁59を介して前記原液タンク40に連結される。
【0021】
前記第1供給ライン44の第1圧力・流量検出器48と第2供給ライン45の第2圧力・流量検出器50は、制御回路51に接続される。前記第1圧力・流量検出器48は、第1供給ライン44を流れる流体の圧力と流量を検出して、その出力信号を制御回路51に送り、また、前記第2圧力・流量検出器50は、第2供給ライン45を流れる流体の圧力と流量を検出して、その出力信号を制御回路51に送る。制御回路51では、予め設定された流量となるように第1ポンプ47と第2ポンプ49の開度を制御するとともに、切替え弁46、第1希釈液戻し弁52、第2希釈液戻し弁53、開閉弁59の開閉を制御する。このうち、切替え弁46では、一方の第1供給ライン44でグラウトを送っているときに、他方の第2供給ライン45で水を送り、逆に、一方の第1供給ライン44で水を送っているときに、他方の第2供給ライン45でグラウトを送るように、所定時間間隔で交互に切替えてグラウトの注入工程と水による洗浄工程を同時に行なう。
【0022】
切替える時間間隔は、注入するグラウトの濃度が薄いときは長く、濃いときは短くする。すなわち、グラウト濃度が薄いときは、グラウトの付着量が少なく、かつ、グラウト原液に対する希釈液の量が多くなって、洗浄がよく行なわれるので、切替えの時間間隔は、長くしてもよく、また、グラウト濃度が濃いときは、グラウトの付着量が多く、かつ、グラウト原液に対する希釈液の量が少なくなって、洗浄が不十分になるおそれがあるので、切替えの時間間隔は、短くすることが望ましい。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1を図1ないし図4に基づき説明する。
図1(a)において、原液タンク40には、セメントと水(希釈液)が供給され、撹拌翼41で撹拌されて所定濃度の原液、例えば、配合比の最も濃いW(水)/C(セメント)=1/1の原液グラウトを作る。この原液タンク40には、第1供給ライン44が連結される。
また、希釈液タンク43には、希釈液としての水が供給され、この希釈液タンク43には、第2供給ライン45が連結される。
【0024】
前記第1供給ライン44と第2供給ライン45の間であって、原液タンク40にできるだけ近い位置に第1供給ライン44と第2供給ライン45の流路を交互に切替える切替え弁46が設けられる。この切替え弁46は、1入力2出力の3方弁46aと46c、2入力1出力の3方弁46bと46dで構成されている。しかし、これに限られるものではなく、図1(b)に示すような2ライン切替えのスプール弁を使用してもよいし、(c)に示すような2入力2出力の4方弁を使用してもよい。
【0025】
前記第1供給ライン44には、第1ポンプ47、第1圧力・流量検出器48、1入力2出力の第1希釈液戻し弁52が順次連結され、さらに、合流管54の一方の入力側に連結され、前記第2供給ライン45には、第2ポンプ49、第2圧力・流量検出器50、1入力2出力の第2希釈液戻し弁53が順次連結され、さらに、合流管54の他方の入力側に連結される。この合流管54の出力側には注入ライン55が連結され、この注入ライン55にはミキサ56が設けられる。
前記第1希釈液戻し弁52と第2希釈液戻し弁53の他の出力側は、貯留タンク58に連結され、この貯留タンク58は、開閉弁59を介して前記原液タンク40に連結されている。
【0026】
前記第1供給ライン44の第1圧力・流量検出器48と第2供給ライン45の第2圧力・流量検出器50は、制御回路51に接続されている。前記第1圧力・流量検出器48は、第1供給ライン44を流れる流体の圧力と流量を検出して、その出力信号を制御回路51に送り、また、前記第2圧力・流量検出器50は、第2供給ライン45を流れる流体の圧力と流量を検出して、その出力信号を制御回路51に送る。制御回路51では、予め設定された流量となるように第1ポンプ47と第2ポンプ49の回転速度、開度等を制御するとともに、切替え弁46、第1希釈液戻し弁52、第2希釈液戻し弁53、開閉弁59の開閉を制御する。
【0027】
次に、グラウトの注入動作を説明する。
第1回目の注入動作(図1)
まず、原液タンク40が第1供給ライン44に連結され、希釈液タンク43が第2供給ライン45に連結されるように、制御回路51からの指令で切替え弁46を切替え制御するとともに、第1希釈液戻し弁52と第2希釈液戻し弁53を合流管54側に連通する(図1の太線ラインが連通している)。
ついで、グラウト注入前に透水テスト(水押し)を行い、その結果に応じて最初の配合比を濃いW/C=8/1とするか、薄いW/C=10/1とするかを制御回路51で判断して第1ポンプ47と第2ポンプ49の開度を制御する。
第1ポンプ47による原液グラウトの所定の供給量と、第2ポンプ49による水の所定の供給量とが合流管54を経て注入ライン55のミキサ56に送られて初期設定の濃度のグラウトとなり、地山への注入が行われる。
この注入方法は、図10に示すような配合比毎に一定量ずつ注入するバッチ方式であってもよいし、また、図9に示すような配合比を注入圧力等に応じて連続的に可変して注入する連続可変方式であってもよい。
【0028】
第2回目の注入動作(図2)
図10に示すようなバッチ方式により初期設定の濃度のグラウトを400Lを注入するものとした場合、例えば、第1回目の注入にて半分の200Lを注入した時点で、原液タンク40を第2供給ライン45に連結し、希釈液タンク43を第1供給ライン44に連結するように制御回路51からの指令により切替え弁46を切替える(図2の太線ラインが連通している)とともに、第1ポンプ47と第2ポンプ49の開度を水用とグラウト用に設定する。
また、図9に示すような連続可変方式により初期設定の濃度のグラウトを注入するものとした場合、第1回目の注入が所定時間、例えば、t1に達した時点で、制御回路51からの指令により切替え弁46を切替える。
すると、グラウトは、原液タンク40から切替え弁46の3方弁46aと46d、第2供給ライン45、第2ポンプ49、第2圧力・流量検出器50、第2希釈液戻し弁53を経て合流管54に供給され、また、水は、希釈液タンク43から切替え弁46の3方弁46cと46b、第1供給ライン44、第1ポンプ47、第1圧力・流量検出器48、第1希釈液戻し弁52を経て合流管54に供給され、注入ライン55のミキサ56に送られて所定の濃度のグラウトとなり、地山への注入が行われる。
【0029】
このように、第1回目にグラウトの供給路であった第1供給ライン44が、第2回目では、水の供給路となり、第1供給ライン44内が洗浄され、その洗浄済液がミキサ56に送られて希釈液として利用される。また、第1回目に水の供給路であった洗浄された第2供給ライン45内を、第2回目では、グラウトの供給路となり、目詰まりを起こすことなくミキサ56に送られる。このように、グラウトの注入工程を行いながら、洗浄工程をも同時に行なうことができて作業能率を向上させ、さらに、洗浄済液を廃棄せずに有効利用でき、環境汚染を防止できる。
以後、配合比が変化して次第に濃くなっても同様に、所定量毎に、又は、所定時間毎に切替え弁46により第1供給ライン44と第2供給ライン45を切り替えて次第に配合比W/Cの高い濃度のグラウトまで注入する。
なお、切替える時間間隔t1、t2、t3、t4、…は、図9に示すように、注入するグラウトの濃度が薄いときは長く、濃くなるに従がい短くすることが望ましい。すなわち、グラウト濃度が薄いときは、グラウト原液に対する希釈液の量が多くなって、洗浄がよく行なわれるので、切替えの時間間隔は、長くしてもよく、また、グラウト濃度が濃いときは、グラウト原液に対する希釈液の量が少なくなって、洗浄が不十分になるおそれがあるので、切替えの時間間隔は、短くすることが望ましい。
この切替える時間間隔は、配管中のグラウトの付着量を電磁気的な検出器等により検出し、この付着量に応じて制御するようにしてもよい。
【0030】
最後の原液グラウトの注入動作(図3及び図4)
図10に示すようにバッチ方式により原液タンク40で作られた原液のグラウト1000Lを注入する場合、又は、図9に示すように連続可変方式にてB時点で高濃度のグラウトを注入する場合、まず第1回目は、図3に示すように、原液タンク40を第1供給ライン44に連結するとともに第1希釈液戻し弁52を合流管54側に連結し、また、希釈液タンク43を第2供給ライン45に連結するとともに、第2希釈液戻し弁53を戻しライン57に連結する。
この状態では、原液のグラウトは、第1供給ライン44、注入ライン55を経て希釈されることなく注入される。また、水は、第2供給ライン45を通り、第2供給ライン45、第2ポンプ49、第2圧力・流量検出器50、第2希釈液戻し弁53を洗浄し、その洗浄済液は、戻しライン57を介して貯留タンク58に貯留される。
【0031】
次に、所定量又は所定時間注入後の第2回目は、図4に示すように、切替え弁46を切替えて原液タンク40を第2供給ライン45に連結するとともに第2希釈液戻し弁53を合流管54側に連結し、また、希釈液タンク43を第1供給ライン44に連結するとともに、第1希釈液戻し弁52を戻しライン57に連結する。
この状態では、原液のグラウトは、第2供給ライン45、注入ライン55を経て希釈されることなく注入される。また、水は、第1供給ライン44を通り、第1供給ライン44、第1ポンプ47、第1圧力・流量検出器48、第1希釈液戻し弁52を洗浄し、その洗浄済液は、戻しライン57を介して貯留タンク58に貯留される。
以後、何回かの切替えにより所定量の原液グラウトを注入し、最後に所定時間(たとえば30分間)のダメ押しの注入をする。
【0032】
貯留タンク58に貯留された洗浄済液は、開閉弁59を開いて原液タンク40に戻し、希釈液として再利用される。
【0033】
前記実施例1において、切替え弁46の切替えタイミングは、前述のように一定時間毎に行なう方法、グラウトの濃度が薄いときは、切り替え時間を長くし、濃度が高くなるにつれて切替え時間を短くする方法、所定量毎に行う方法、グラウトの付着量に応じて行う方法など状況に応じて適宜設定できる。
【0034】
図1(a)においては、切替え弁46が4個の3方弁で構成したので、原液タンク40から3方弁46bまでと、3方弁46aと3方弁46dの間は洗浄されない。そこで、切替え弁46をできるだけ原液タンク40に近づけるか、図1(b)に示すような2ライン切替えのスプール弁を使用したり、(c)に示すような2入力2出力の4方弁を使用することで、洗浄できない範囲をできるだけ短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は、本発明によるグラウト注入制御方法及び装置の一実施例を示すもので、グラウトを設定された濃度に希釈しつつ注入するときの切替え弁46の切替え前の動作説明図、(b)は、切替え弁46の他の例の説明図、(c)は、切替え弁46のさらに他の例の説明図である。
【図2】図1において、切替え弁46の切替え後の動作説明図である。
【図3】本発明のグラウト注入制御方法及び装置において、グラウト原液をそのまま注入するときの切替え弁46の切替え前の動作説明図である。
【図4】図3において、切替え弁46の切替え後の動作説明図である。
【図5】従来のグラウト注入制御方法及び装置によるグラウト注入時の動作説明図である。
【図6】図5におけるグラウト注入終了時の動作説明図である。
【図7】図5における洗浄時の動作説明図である。
【図8】図5におけるグラウト再注入準備時の動作説明図である。
【図9】グラウトを連続可変方式で注入する場合の動作説明図である。
【図10】グラウトをバッチ方式で注入する場合の動作説明図である。
【符号の説明】
【0036】
10…ミキシングプラント、11…圧送・廃棄切替えコック、12…原液ミキサ、13…原液ポンプ、14…原液流量調整コック、15…原液・水切替え弁、16…原液流量計、17…原液開閉弁、18…原液・廃液切替え弁、19…サブミキサ、20…水ポンプ、21…水流量調整コック、22…水流量調整コック、23…水流量計、24…水開閉弁、25…エアブロー弁、26…ライン水洗弁、27…グラウト・水洗切替え弁、28…グラウトポンプ、29…質量流量計、30…自動グラウト流量計、31…制御弁、32…復帰・廃棄切替え弁、40…原液タンク、41…撹拌翼、43…希釈液タンク、44…第1供給ライン、45…第2供給ライン、46…切替え弁、47…第1ポンプ、48…第1圧力・流量検出器、49…第2ポンプ、50…第2圧力・流量検出器、51…制御回路、52…第1希釈液戻し弁、53…第2希釈液戻し弁、54…合流管、55…注入ライン、56…ミキサ、57…戻しライン、58…貯留タンク、59…開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液タンク40からの原液グラウトを第1供給ライン44を経て合流管54に送るとともに、希釈液タンク43からの希釈液を第2供給ライン45を経て合流管54に送り、この合流管54に連結された注入ライン55にて混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御方法において、前記原液タンク40の原液グラウトを第1供給ライン44から第2供給ライン45に、前記希釈液タンク43の希釈液を第2供給ライン45から第1供給ライン44に交互に切替えて合流管54に送るようにしたことを特徴とするグラウト注入制御方法。
【請求項2】
原液タンク40からの原液グラウトを第1供給ライン44を経て合流管54に送るとともに、希釈液タンク43からの希釈液を第2供給ライン45を経て合流管54に送り、この合流管54に連結された注入ライン55にて混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御方法において、前記原液タンク40からの原液グラウトを、第1供給ライン44、合流管54を経てそのまま注入ライン55から地山に注入するときは、前記希釈液タンク43の希釈液を、第2供給ライン45の洗浄液として用い、その洗浄済液を合流管54の前段の第2希釈液戻し弁53を経て貯留タンク58に貯留し、前記原液タンク40の原液グラウトを、第1供給ライン44から第2供給ライン45に切替えて合流管54を経てそのまま注入ライン55から地山に注入するときは、前記希釈液タンク43の希釈液を、第2供給ライン45から第1供給ライン44に切替えて第1供給ライン44の洗浄液として用い、その洗浄済液を合流管54の前段の第1希釈液戻し弁52を経て貯留タンク58に貯留するようにしたことを特徴とするグラウト注入制御方法。
【請求項3】
原液タンク40からの原液グラウトを第1ポンプ47により第1供給ライン44を経て合流管54に送るとともに、希釈液タンク43からの希釈液を第2ポンプ49により第2供給ライン45を経て合流管54に送り、この合流管54に連結された注入ライン55にて混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御装置において、前記原液タンク40の原液グラウトを第1供給ライン44から第2供給ライン45に、前記希釈液タンク43の希釈液を第2供給ライン45から第1供給ライン44に交互に切替えるための切替え弁46を具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置。
【請求項4】
原液タンク40からの原液グラウトを第1ポンプ47により第1供給ライン44を経て合流管54に送るとともに、希釈液タンク43からの希釈液を第2ポンプ49により第2供給ライン45を経て合流管54に送り、この合流管54に連結された注入ライン55にて混合して地山に注入するようにしたグラウト注入制御装置において、前記原液タンク40の原液グラウトを第1供給ライン44から第2供給ライン45に、前記希釈液タンク43の希釈液を第2供給ライン45から第1供給ライン44に交互に切替えるための切替え弁46と、前記原液タンク40からの原液グラウトを、第1供給ライン44、合流管54を経てそのまま注入ライン55から地山に注入するときは、前記希釈液タンク43の希釈液を、第2供給ライン45の洗浄液として用い、その洗浄済液を戻しライン57に送るために、合流管54の前段に設けられた第2希釈液戻し弁53と、前記原液タンク40の原液グラウトを、第1供給ライン44から第2供給ライン45に切替えて合流管54を経てそのまま注入ライン55から地山に注入するときは、前記希釈液タンク43の希釈液を、第2供給ライン45から第1供給ライン44に切替えて第1供給ライン44の洗浄液として用い、その洗浄済液を戻しライン57に送るために、合流管54の前段に設けられた第1希釈液戻し弁52と、この戻しライン57に送られた洗浄済液を貯留する貯留タンク58とを具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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