説明

グラウト用セメント組成物、グラウト用モルタル組成物、グラウト用セメントペースト、及びグラウト用モルタル

【課題】 充填性が良好で施工性に優れ、流出時、だれる量が少なく作業性が良好で、充填箇所での空隙の発生を低減でき、余剰水が存在する箇所に充填しても余剰水と混合されにくく、さらに高い強度発現性を有するグラウト用セメント組成物、グラウト用モルタル組成物、グラウト用セメントペースト、及びグラウト用モルタルを提供すること。
【解決手段】 セメント、シリカ質微粉末、減水剤、消泡剤、及びデュータンガムを含有するグラウト用セメント組成物、前記デュータンガムが、セメント100質量部に対して、0.002〜0.015部であることを特徴とするグラウト用セメント組成物、前記グラウト用セメント組成物と、細骨材とを含有してなるグラウト用モルタル組成物、また、前記グラウト用セメント組成物と水を混合してなるグラウト用セメントペースト、並びに、前記グラウト用モルタル組成物と水を混合してなるグラウト用モルタルを構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築分野で使用されるグラウト用セメント組成物、グラウト用モルタル組成物、グラウト用セメントペースト、及びグラウト用モルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に土木・建築工事において、充填施工されるセメントペースト又はモルタルをグラウト材料と呼ぶが、グラウト材料には、PCグラウト、プレパックドコンクリート用グラウト、トンネルやシールドの裏込めグラウト、プレキャスト用グラウト、構造物の補修・補強グラウト、橋梁の支承下グラウト、舗装床板下グラウト、軌道床板下グラウト、及び原子力発電所格納容器下グラウトなどがある。
【0003】
近年、土木・建築構造物に使われるコンクリートの品質が高性能化し、グラウト材料に要求される性能が高度化している。
【0004】
グラウト材料に要求される性能の一つに、流動性が良好でその保持性能が良好であることが挙げられるが、流動性が良すぎると、その分、充填時に型枠等の隙間からグラウト材料が流出するトラブルがあり、流出時のだれが止まらなくなり、充填した箇所に空隙が生じたり、型枠等に付着したグラウト材料の除去に手間がかかるなどの課題があった。
【0005】
セメント、ポゾラン微粉末、減水剤、発泡剤、消泡剤、及び細骨材を含有してなるセメントモルタル組成物を使用して、優れた流動性や優れた流動性の保持性能が得られるセメントモルタルが提案された(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1には、デュータンガムを併用すること、デュータンガムを併用することによって、だれる量を低減する(低だれ性)を付与することについては記載がない。
【0006】
また、施工箇所に余剰水が存在する場合、通常、余剰水を除去してからグラウト材料を充填するが、余剰水を除去するのが困難な箇所では、余剰水の除去が不充分なままグラウト材料を充填してしまう場合もある。その際、グラウト材料と余剰水が混合され、充分な強度発現性が得られないという課題もあった。
【0007】
流出時のだれる量を低減するために、アクリル系やセルロース系の増粘剤を配合したグラウト材も提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、アクリル系やセルロース系の増粘剤を用いてもだれの量を低減する効果が充分でない場合があり、また、その効果を高めるために、増粘剤の添加量を増加した場合には、グラウト材の強度が低下するという課題があった。
【0008】
また、主に、工業用や水処理分野の増粘安定剤として使用されているバイオガムの一種であるデュータンガムをセメント分野に使用することは検討されている(特許文献3、特許文献4参照)。
しかしながら、特許文献3や特許文献4には、高流動性を有するセメント組成物やモルタルの記載はあるものの、「高流動性」と相反する性能である「低だれ性」を併せ持つことについての記載はない。
【0009】
そこで、本発明者は、前記課題を解決すべく、種々の努力を重ねた結果、特定の材料を組み合わせることにより、流動性が良いため充填性が良好であり、流出時のだれる量を低減する効果も大きく、余剰水が存在する箇所に充填しても余剰水と混合されにくく、さらに、強度発現性にも優れたグラウト用セメント組成物、グラウト用モルタル組成物、グラウト用セメントペースト、及びグラウト用モルタルが得られることを知見し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−150073号公報
【特許文献2】特開平01−096053号公報
【特許文献3】特開2010−013301号公報
【特許文献4】特開2010−215479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、充填性が良好で施工性に優れ、流出時、だれる量が少なく、作業性が良好で、充填箇所での空隙の発生を低減でき、余剰水が存在する箇所に充填しても余剰水と混合されにくく、さらに高い強度発現性を有するグラウト用セメント組成物、グラウト用モルタル組成物、グラウト用セメントペースト、及びグラウト用モルタルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)本発明は、セメント、シリカ質微粉末、減水剤、消泡剤、及びデュータンガムを含有することを特徴とするグラウト用セメント組成物である。
(2)前記シリカ質微粉末が、シリカフュームであることを特徴とする前記(1)のグラウト用セメント組成物である。
(3)前記シリカ質微粉末が、セメント100質量部に対して、4〜12質量部であることを特徴とする前記(1)又は(2)のグラウト用セメント組成物である。
(4)前記減水剤が、セメント100質量部に対して、0.02〜5質量部であることを特徴とする前記(1)〜(3)のうちのいずれかのグラウト用セメント組成物である。
(5)前記消泡剤が、セメント100質量部に対して、0.002〜0.2質量部であることを特徴とする前記(1)〜(4)のうちのいずれかのグラウト用セメント組成物である。
(6)前記デュータンガムが、セメント100質量部に対して、0.002〜0.015部であることを特徴とする前記(1)〜(5)のうちのいずれかのグラウト用セメント組成物である。
(7)前記(1)〜(6)のうちのいずれかのグラウト用セメント組成物と、細骨材とを含有してなることを特徴とするグラウト用モルタル組成物である。
(8)前細骨材が、前記グラウト用セメント組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100質量部に対して、200質量部以下であることを特徴とする前記(7)のグラウト用モルタル組成物である。
(9)前記(1)〜(6)のうちのいずれかのグラウト用セメント組成物と水を混合してなることを特徴とするグラウト用セメントペーストである。
(10)前記水が、前記グラウト用セメント組成物中の、セメントとシリカ質微粉末からなる結合材100質量部に対して、15〜25質量部であることを特徴とする前記(9)のグラウト用セメントペーストである。
(11)前記(7)又は(8)のグラウト用モルタル組成物と水を混合してなることを特徴とするグラウト用モルタルである。
(12)前記水が、前記グラウト用モルタル組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100質量部に対して、15〜25質量部であることを特徴とする前記(11)のグラウト用モルタルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な充填性を有し、流出時、だれる量が少なく、余剰水と混合されにくく、硬化後の強度発現性にも優れるセメントペースト又はモルタルとなり、土木・建築工事において充填施工されるグラウト材料として適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は、特に断らない限り質量規準で示す。
【0015】
本発明で使用するセメントとしては、特に限定されるものではないが、JIS R 5210に規定されている各種ポルトランドセメント、JIS R 5211、JIS R 5212、及びJIS R 5213に規定された各種混合セメント、JISに規定された以上の混和材混入率で製造した高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、及び石灰石粉末等を混合したフィラーセメントから選ばれる一種又は二種以上等が挙げられる。
【0016】
本発明で使用するシリカ質微粉末は、流動性や充填性、さらに、硬化後の強度発現性を向上させるために用いるもので、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ、及びシリカフュームなどの潜在水硬性物質やポゾラン物質を挙げることができ、そのうち、シリカフュームの使用が好ましく、酸性シリカフュームの使用がより好ましい。
【0017】
酸性シリカフュームとは、シリカフューム1gを純水100ccに入れて攪拌したときの上澄み液のpHが5.0以下の酸性を示すシリカフュームである。酸性シリカフュームのなかでは、優れた流動性が得られる面で、酸化ジルコニウムを含有するシリカヒュームが好ましい。
【0018】
酸化ジルコニウムを含有するシリカヒュームは、例えば、以下の工程により製造される。まず、電気炉にて、ジルコンサンドをおよそ2,200℃まで電融し、ジルコンサンドの微粒子の平均粒径をおよそ1μmとして略均一に安定化させ、二次凝集を防止するべく電融温度を段階的に上昇させる。次に所定のサイクロンを複数直列に連結させて粗粒子を除去し、粒子を回収した後、サイロ内で再攪拌し、粒径のばらつきを小さくする。このようにして製造された酸化ジルコニウムを含有するシリカヒュームは、従来から使用されている、例えば、フェロシリコン製造時に副生するシリカフュームに比べて、粒径がおよそ2〜10倍大きくなりやすい。
酸化ジルコニウムを含有するシリカヒュームの酸化ジルコニウムの含有率は、1〜10%が好ましく、3〜6%がより好ましい。
【0019】
シリカ質微粉末の粉末度は特に限定されるものではないが、通常、高炉水砕スラグ微粉末やフライアッシュは、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で3,000〜9,000cm2/gが好ましく、シリカフュームは、BET比表面積値(以下、BET面積という)で8〜200m2/gが好ましい。ただし、酸化ジルコニウムを含有するシリカヒュームのBET面積は8〜13m2/gが好ましい。
【0020】
シリカ質微粉末の使用量は、通常、セメント100部に対して、2〜14部が好ましく、4〜12部がより好ましく、6〜10部がもっとも好ましい。2部未満では練り混ぜ時や充填時の負荷が大きくなったり、強度発現性が不充分となる傾向があり、14部を超えると所定の水量で優れた流動性が得られなくなったり、強度発現性が不充分となる傾向がある。
【0021】
本発明で使用する減水剤は、強度発現性向上のため、少ない練り混ぜ水量で高流動性を得るために用いるもので、特に限定されるものではないが、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及びポリカルボン酸塩系高性能減水剤等が挙げられ、そのうち、減水効果の高い、ポリカルボン酸塩系高性能減水剤が好ましい。具体的には、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤としては、第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」や出光石油化学社製商品名「IPC」などが、また、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤としては、花王社製商品名「マイティ100」や三洋化成工業社製商品名「三洋レベロンP」などが、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤のものとしては、シーカ社製商品名「シーカメントFF86/100」などが、さらに、ポリカルボン酸塩系高性能減水剤としては、例えば、BASFポゾリス社製商品名「メルフラックスAP101F」や花王社製商品名「マイティ21PZ」などが挙げられる。
【0022】
減水剤の使用量は、通常、セメント100部に対して、0.01〜6部が好ましく、0.02〜5部がより好ましく、0.05〜3部がもっとも好ましい。0.01部未満では流動性が低下したり、練り混ぜ時や充填時の負荷が大きくなる傾向があり、6部を超えると流動性が高くなり、流出時のだれが止まりにくくなる傾向がある。
【0023】
本発明で使用する消泡剤は、グラウト材料練り混ぜ時に巻き込まれる空気量を低減し、強度発現性を向上させるために使用するもので、特に限定されるものではないが、作業性の面から、あらかじめセメントなどの原材料に混合しておくことが可能な粉末状の消泡剤を用いることが好ましい。
消泡剤としては、低級アルコール系消泡剤、高級アルコール系消泡剤、油脂系消泡剤、界面活性剤系消泡剤、及びシリコーン系消泡剤等があり、具体的には、粉末状の消泡剤としては、旭電化工業社製商品名「アデカネートB−115F」や、サンノプコ社製商品名「SNデフォーマー14HP」などが挙げられる。
【0024】
消泡剤の使用量は、通常、セメント100部に対して、0.001〜0.3部が好ましく、0.002〜0.2部がより好ましく、0.005〜0.1部がもっとも好ましい。0.001部未満では消泡効果が低下し、強度発現性が悪くなる傾向があり、0.3部を超えても消泡効果がそれ以上向上せず不経済となる傾向がある。
【0025】
本発明で使用するデュータンガムとは、2個のグルコース、1個のグルクロン酸、及び3個のラムノースを構成単位とする、発酵法により製造した水溶性の天然高分子多糖類であるバイオガムの一種である。
デュータンガムは、セメントなどの材料を混練したペーストの流動性を損なわない程度に適度に増粘させ、充填後のだれる量を顕著に低下させることを可能にするものであり、白色〜淡黄褐色の粉末であって、水に可溶で、粘性の水溶液になり、この1%水溶液のpHはほぼ中性である。
デュータンガムの粒度は、80メッシュパスが95%以上である。
【0026】
デュータンガムの使用量は、通常、セメント100部に対して、0.001〜0.020部が好ましく、0.002〜0.015部がより好ましく、0.005〜0.013部がもっとも好ましい。0.001部未満では増粘効果が低下し、流出時のだれが止まりにくくなる傾向や、余剰水が存在する箇所に充填した際、余剰水と混合され充分な強度発現性が得られにくい傾向があり、0.020部を超えると粘性が大きくなり、練り混ぜ時の負荷が大きくなる傾向や、ポンプなどで圧送する際の施工性が低下する傾向がある。
【0027】
本発明で使用する細骨材としては特に限定されるものではなく、その具体例としては、例えば、通常、ケイ石系や石灰石系の天然骨材、再生細骨材、並びに、ケイ石微粉末、石灰石微粉末、及び再生微粉末等の不活性な無機粉末が使用可能である。
【0028】
細骨材の使用量は、通常、グラウト用セメント組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100部に対して、250部以下が好ましく、200部以下がより好ましく、150部以下がもっとも好ましい。250部を超えると流動性や強度発現性が低下する傾向がある。
【0029】
本発明では、必要に応じ、アクリル系やセルロース系の増粘剤、アルミニウム粉末等の沈下抑制剤、撥水剤、及び抗菌剤等の各種セメント混和剤を併用することが可能である。
【0030】
本発明のグラウト用セメントペースト及びグラウト用モルタルの練り混ぜ水量は、通常、セメントとシリカ質微粉末からなる結合材100部に対して、13〜26部が好ましく、15〜25部がより好ましく、17〜23部がもっとも好ましい。13部未満では練り混ぜ時の負荷が大きくなる傾向や、ポンプなどで圧送する際の施工性が低下する傾向があり、26部を超えると強度発現性が低下する傾向がある。
【実施例】
【0031】
以下、実験例にて詳細に説明する。
【0032】
実験例1
セメント100部に対して、減水剤1.5部、消泡剤0.01部、デュータンガム0.008部、及び表1に示すシリカ質微粉末を加えてグラウト用セメント組成物を調製した。
調製したグラウト用セメント組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100部に対して、水を20部加えて練り混ぜ、セメントペーストを作製し、その静置フロー、圧縮強度、及びだれる量を測定した。結果を表1に併記する。
【0033】
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、市販品
シリカ質微粉末A:酸化ジルコニウムを含有するシリカヒューム、酸化ジルコニウムの含有率5%、BET面積12m2/g、pH3.0、市販品
シリカ質微粉末B:フェロシリコン製造時、副生するシリカヒューム、BET面積19m2/g、市販品
シリカ質微粉末C:高炉水砕スラグ微粉末、ブレーン値4,000cm2/g、市販品
シリカ質微粉末D:フライアッシュ、ブレーン値4,000cm2/g、市販品
減水剤 :ポリカルボン酸塩系高性能減水剤、市販品
消泡剤 :高級アルコール系消泡剤、市販品
デュータンガム:2個のグルコースと1個のグルクロン酸と3個のラムノースを構成単位とする天然高分子多糖類、市販品
【0034】
<試験方法>
静置フロー:JIS R 5201のフロー試験に準拠した。ただし、15回の落下運動は行わず、コーン引き上げ後のフローの広がりを測定した。
圧縮強度 :JSCE-G 505に準拠した。材齢28日。
だれる量 :グリースガンのカートリッジ中に作製したグラウト用セメントペーストを100g充填し、角度90°に設置したコンパネに押し当ててから吐出した。全量吐出後、グラウト用セメントペーストの上部からだれ落ちた部分の長さを測定した。
【0035】
【表1】

【0036】
実験例2
セメント100部に対して、シリカ質微粉末8部、消泡剤0.01部、デュータンガム0.008部、及び表2に示す量の減水剤を加えてグラウト用セメント組成物を調製したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0037】
【表2】

【0038】
実験例3
セメント100部に対して、シリカ質微粉末8部、減水剤1.5部、デュータンガム0.008部、及び表3に示す量の消泡剤を加えてグラウト用セメント組成物を調製したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0039】
【表3】

【0040】
実験例4
セメント100部に対して、シリカ質微粉末8部、減水剤1.5部、消泡剤0.01部、及び表4に示す量のデュータンガムを加えてグラウト用セメント組成物を調製し、水中採取圧縮強度を測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
なお、比較のため、デュータンガムの代わりに市販の増粘剤を使用して同様に実験を行った。結果を表4に併記する。
【0041】
<使用材料>
市販の増粘剤:主成分ヒドロキシエチルメチルセルロース、市販品
【0042】
<試験方法>
水中採取圧縮強度:φ50×100mmサイズの型枠を水中に存置し、型枠上面から漏斗にてモルタルを流し込み、供試体を成形。材齢3日で脱型後、水中養生し、材齢28日で圧縮強度を測定。
【0043】
【表4】

【0044】
実験例5
セメント100部に対して、シリカ質微粉末8部、減水剤1.5部、消泡剤0.01部、及びデュータンガム0.008部を加えてグラウト用セメント組成物を調製した。
調製したグラウト用セメント組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100部に対して、表5に示す質量の細骨材を加えてグラウト用モルタル組成物を調製し、ペーストの代わりにモルタルを使用して静置フロー、圧縮強度、及びだれる量を実験例1と同様に測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0045】
【表5】

【0046】
実験例6
セメント100部に対して、シリカ質微粉末8部、減水剤1.5部、消泡剤0.01部、デュータンガム0.008部、及び表6に示す質量の細骨材を加えてグラウト用モルタル組成物を調製した。
調製したグラウト用モルタル組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100部に対して、表6に示す水を加えて練り混ぜたこと以外は実験例5と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0047】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のグラウト用セメント組成物、及びグラウト用モルタル組成物は、充填性が良好で施工性に優れ、流出時、だれる量が少なく作業性が良好で、充填箇所での空隙の発生を低減でき、余剰水が存在する箇所に充填しても余剰水と混合されにくく、高い強度発現性を示す。
したがって、土木、建築工事に用いられるPCグラウト、プレパックドコンクリート用グラウト、トンネルやシールドの裏込めグラウト、プレキャスト用グラウト、構造物の補修・補強グラウト、橋梁の支承下グラウト、舗装床板下グラウト、軌道床板下グラウト、及び原子力発電所格納容器下グラウトなど広範に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、シリカ質微粉末、減水剤、消泡剤、及びデュータンガムを含有することを特徴とするグラウト用セメント組成物。
【請求項2】
前記シリカ質微粉末が、シリカフュームであることを特徴とする請求項1に記載のグラウト用セメント組成物。
【請求項3】
前記シリカ質微粉末が、セメント100質量部に対して、4〜12質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のグラウト用セメント組成物。
【請求項4】
前記減水剤が、セメント100質量部に対して、0.02〜5質量部であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のグラウト用セメント組成物。
【請求項5】
前記消泡剤が、セメント100質量部に対して、0.002〜0.2質量部であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のグラウト用セメント組成物。
【請求項6】
前記デュータンガムが、セメント100質量部に対して、0.002〜0.015部であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のグラウト用セメント組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のグラウト用セメント組成物と、細骨材とを含有してなることを特徴とするグラウト用モルタル組成物。
【請求項8】
前記細骨材が、前記グラウト用セメント組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100質量部に対して、200質量部以下であることを特徴とする請求項7に記載のグラウト用モルタル組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のグラウト用セメント組成物と水を混合してなることを特徴とするグラウト用セメントペースト。
【請求項10】
前記水が、前記グラウト用セメント組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100質量部に対して、15〜25質量部であることを特徴とする請求項9に記載のグラウト用セメントペースト。
【請求項11】
請求項7又は請求項8に記載のグラウト用モルタル組成物と水を混合してなることを特徴とするグラウト用モルタル。
【請求項12】
前記水が、前記グラウト用モルタル組成物中のセメントとシリカ質微粉末からなる結合材100質量部に対して、15〜25質量部であることを特徴とする請求項11に記載のグラウト用モルタル。

【公開番号】特開2012−201561(P2012−201561A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68541(P2011−68541)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】