説明

グラビア印刷用塗工紙

【課題】本発明の課題は、剛度およびグラビア印刷特性に優れたグラビア印刷用塗工紙を提供することである。
【解決手段】平均粒子径が2〜15μmであるカルシウムアルミネートモノカーボネートを顔料塗工層に配合することによって、剛度およびグラビア印刷特性に優れたグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛度および印刷特性に優れたグラビア印刷用塗工紙に関する。特に本発明は、軽量でありながら剛度が高く、ミッシングドットが少ないグラビア印刷用塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷は、版の凹部分のインキを加圧下で印刷用紙に転移する凹版印刷であり、階調再現性に優れているため、雑誌、カタログ、パンフレットなどの印刷に広く用いられている。グラビア印刷では、オフセット印刷と比較して硬質の金属ロールを版として用いるため、印刷時に版が用紙に密着しないと、網点が欠落する「ミッシングドット」が生じる。このミッシングドットが多い場合は、印刷品質の著しい低下となる。そのため、グラビア印刷用塗工紙の原紙と塗工層には、グラビア印刷の版が用紙と密着できるよう、平滑性およびクッション性が特に要求される。
【0003】
一般に、印刷用塗工紙の塗工層表面の平滑度を向上させるには、塗工層組成物中にアスペクト比の高い顔料(デラミネーテッドクレー、タルク等)を配合することが有効とされている。しかしながら、塗工紙の製造において塗工液にアスペクト比の高い顔料を多く配合すると、塗工液の粘度が上昇するため調液時のハンドリングが難しく、ストリーク、スクラッチ等の塗工不良の原因になりやすい。このため、塗工液の固形分濃度をあまり高くできないのが現状であり、水分の多い塗工液を用いる結果、乾燥条件を強くする必要が生じ、コスト高につながる。また、アスペクト比の高いデラミネーテッドクレーやタルクといった顔料は、一般的に艶消し塗被紙のような白紙光沢度の低い用途に多く使用されることからも分かるように、配合量を多くした場合に塗工紙の白紙光沢度が低下し、高白紙光沢度を必要とする用途には適さない。また、アスペクト比の高い顔料は白色度が低い傾向にあるため、高白色度を必要とする用途には適さない。
【0004】
また、ミッシングドットの発生防止、不透明度の向上を目的として、焼成クレーを他の顔料と併用する方法も知られている。しかし、焼成クレーは流動性に劣るため、塗工液の粘度が上昇し、ストリーク、スクラッチ等の塗工不良の原因になりやすく、コーターでの作業性が悪化する可能性がある。このため、塗料の固形分濃度をあまり高く出来ない。
【0005】
さらに、プラスチックピグメントなどの有機顔料を使用し、高白紙光沢度、ミッシングドットの防止効果、不透明性などを付与するという方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、有機顔料は無機顔料と比較して高価であるためコスト高となり、さらに有機顔料を添加した塗工液は、高剪断力下における粘度が上昇しやすく、ストリーク、スクラッチ等の塗工不良の原因になりやすい。このため、塗料の固形分濃度をあまり高く出来ないのが現状であり、その結果、乾燥条件を強くする必要が生じ、コスト高につながる。
【0006】
一方で、近年、雑誌および書籍は、重厚なものから軽いものが好まれるようになっている。これに伴い、紙にも軽量化が求められている。また、輸送および郵送コストの削減や、環境保護気運の高まりに伴う森林資源から製造される製紙用パルプの有効活用などの点でも、紙の軽量化は避けて通れない問題であり、グラビア印刷用塗工紙の分野においても例外ではない。
【0007】
一般に塗工紙を軽量化する場合、原紙の低坪量化と、顔料塗工層の低塗工量化が考えられる。しかし、原紙を低坪量化すると、軽量化に比例して紙厚が薄くなり、剛度が低下する。この対策として塗工層中にデンプンを高配合して剛度を向上させることがあるが、塗工紙のクッション性が低下し、ミッシングドットが増加するためグラビア印刷適性が悪化する。一方、顔料塗工層を低塗工量化すると、塗工層の原紙被覆性が低下するために白色度や印刷面感などが悪化し、また、グラビア印刷に必要な用紙のクッション性も低下する。また、塗工紙に過度のカレンダー処理を施して塗工層表面を機械的に平滑化し、ミッシングドットを減らす方法もあるが、この方法では、カレンダー処理によって用紙の剛度が低下し、印刷用紙の手肉感が低下するため好ましくない。
【0008】
また、グラビア印刷用塗工紙において剛度が低下すると、印刷物の手肉感が悪化したり、印刷時のこしがなくなって印刷作業性が低下するため好ましくない。この点から、印刷用塗工紙にとって剛度は重要な品質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭64−20396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、軽量でありながら、剛度およびグラビア印刷適性に優れるグラビア印刷用塗工紙を得ることは技術的に困難であった。
【0011】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、グラビア印刷用塗工紙、特に軽量グラビア印刷用塗工紙において、優れた剛度(こわさ)とグラビア印刷適性を備えたグラビア印刷用塗工紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために顔料塗工層を構成する顔料について種々検討を行った結果、平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを顔料塗工層の顔料として配合すると、剛度が高く、グラビア印刷品質に優れた印刷用塗工紙が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明に関する。
(1) 原紙と顔料塗工層を有するグラビア印刷用塗工紙であって、顔料塗工層が、平均粒子径が2〜15μmであるカルシウムアルミネートモノカーボネートを含んでなる、上記グラビア印刷用塗工紙。
(2) 前記カルシウムアルミネートモノカーボネートの平均粒子径が2〜10μmである、(1)に記載のグラビア印刷用塗工紙。
(3) 坪量が35〜70g/mである、(1)または(2)に記載のグラビア印刷用塗工紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた剛度とグラビア印刷品質を備えたグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。特に本発明の印刷用塗工紙は、低坪量でありながら、剛度が高く、ミッシングドットが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、原紙と顔料塗工層を有する印刷用塗工紙に関し、顔料塗工層を構成する顔料として平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを用いる。
【0016】
グラビア印刷用塗工紙
本発明のグラビア印刷用塗工紙は、平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを塗工層に配合することによって、軽量でありながら剛度が高い。特に低坪量の場合に、優れたグラビア印刷特性や剛度といった本発明の優位性が高くなるため、本発明のグラビア印刷用塗工紙は、坪量が35〜200g/mであることが好ましく、35〜100g/mがより好ましく、35〜70g/mがさらに好ましく、35〜50g/mいう低坪量においてもグラビア適性のみならず印刷作業性が良好であるという本発明の効果を享受することができる。
【0017】
本発明のグラビア印刷用塗工紙は、平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを塗工層に配合することによって、剛度の低下を避けることができる。本発明のグラビア印刷用塗工紙は、平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを塗工層に含まない塗工紙と比べて剛度が高いため、グラビア印刷における通紙性及び印面品質が良好になる。本発明のグラビア印刷用塗工紙の剛度は、坪量や塗工量によって様々であるが、低坪量であっても印刷作業性等に優れるように、MD方向のクラークこわさが20cm/100以上とすることが好ましい。
【0018】
カルシウムアルミネートモノカーボネート
本発明の印刷用塗工紙は、平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを顔料塗工層に含む。カルシウムアルミネートモノカーボネート(以下、モノカーボネートともいう)は、3CaO・Alの組成を有する結晶性物質であり、水分子と水和した状態で得られる。モノカーボネートは、層状構造を有し、カオリンなどと同様の六角板状の一次粒子からなり、一般に消石灰と水酸化アルミニウムから合成される。
【0019】
本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートの平均粒径(体積基準)は2〜15μmであり、このような粒径のモノカーボネートを用いることによって、優れた剛度とグラビア印刷適性を有するグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。モノカーボネートの平均粒径が2μm未満であると、顔料塗工層の光沢性は良化するものの、剛度が低下しグラビア印刷時の作業性が低下する。一方、モノカーボネートの平均粒径が15μmを超えると、顔料塗工層の平滑性が低下し、良好な印刷面を得ることが難しくなり、また、塗工液の粘度が高くなり、塗工適性や操業性が低下する。白紙光沢度や印刷光沢度を考慮すると、本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートの平均粒径(体積基準)は2〜10μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。ここで、本発明で規定する粒径とは、レーザー回折法によって測定した粒径分布の体積累積50%での値であり、例えば、MALVERN Instruments社のMastersizer 2000などのレーザー回折式粒度分布測定器などを用いて決定することができる。その他、顔料の粒径は、沈降法によって評価することもでき、例えば、Micromeritics社のSedigraphなどを用いることができる。
【0020】
本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートの配合量は、用途などに応じて適宜決定すればよく、特に制限されないが、顔料塗工層を構成する顔料100重量部のうち1
重量部以上であることが好ましく、30重量部以上であることがより好ましく、70重量部以上であることがさらに好ましい。カルシウムアルミニウムモノカーボネートのみを顔料として用いて顔料塗工層を形成させることもできる。このような量であると顔料塗工時の作業性などに悪影響を与えることなく、剛度やグラビア印刷特性に優れた本発明のグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。
【0021】
本発明において平均粒子径が2〜15μmのカルシウムアルミネートモノカーボネートを顔料塗工層に配合すると、優れた剛度を有し、グラビア印刷適性に優れたグラビア印刷用塗工紙が得られる理由の詳細は明らかでなく、本発明はこれに拘束されるものではないが、本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートはカオリンや炭酸カルシウムなどの顔料と比べて比重が低いため、カルシウムアルミネートモノカーボネートを配合すると嵩高な顔料塗工層が形成され、剛度が向上するものと推測される。また、本発明のカルシウムアルミネートモノカーボネートは比較的規則的な板状形状を有しており、このような顔料を顔料塗工層に配合することによって塗工層の平滑性が向上し、また、平均粒子径を2μm以上とすることによって顔料塗工層の高い平滑性を維持しつつもある程度のクッション性を得ることができるものと推測される。
【0022】
本発明のカルシウムアルミニウムモノカーボネートは、市販品を用いても、合成したものを用いてもよい。モノカーボネートは、サチンホワイト(3CaO・Al・3CaSO)と同様にセメント硬化物中に生成することが知られている。粒径形状は、モノカーボネートが層状構造を有する六角板状であるのに対し、サチンホワイトは針状であり、塗工紙用顔料として用いると紙面上で平坦に配向しやすいとされる。カルシウムアルミニウムモノカーボネートの合成は、公知の方法により行うことができ、例えば、無水カルシウムアルミネートを水中で炭酸カルシウムと反応させる方法(大門他、「3CaO・Al2O3-CaSO4・2H2O-CaCO3-Na2SO4-H2O系水和物の合成」『無機マテリアル』196頁、vol.4、1997年)、水酸化アルミニウムを摩砕処理などによりメカノケミカル的に消石灰および炭酸カルシウムと水の存在下で反応させる方法(特開2008−37664号公報参照)などを挙げることができる。なお、本発明に用いられる粒子径2μm〜15μmのモノカーボネートは、特開2008−37664号公報記載の方法で合成する場合、水酸化アルミニウムの摩砕時間を短くし反応終了までの時間を長くすることによって合成することができる。
【0023】
原紙
本発明に使用する原紙は特に制限されず、上質紙や中質紙、再生紙等の一般的な用紙を使用することができ、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙のいずれによるものであってもよい。本発明の原紙の坪量は特に制限されないが、カーボネートを配合した本発明の塗工紙は裏抜けしにくいため、25〜200g/mが好ましく、30〜50g/mがより好ましく、30〜45g/mがさらに好ましい。
【0024】
本発明の原紙に使用するパルプは、特に限定されるものではないが、例えば、機械パルプ(MP)、再生パルプ、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、印刷用紙の抄紙原料として一般的に使用されているものを好適に使用することができ、適宜、これらの1種類または2種類以上を配合して使用される。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などが挙げられる。その他にも、一般的な木材パルプに加えて、リンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプ、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維などを使用することができる。
【0025】
本発明においては、剛度を維持し、グラビア印刷の作業性を悪化させないために、全パルプ中の機械パルプ含有量を10重量%以上とすることが好ましい。機械パルプは化学パルプに比べて繊維が剛直なので、機械パルプを原紙に配合すると、抄紙工程で各種の圧力を受けても紙層が潰れにくい。すなわち、機械パルプを使用することによって全体として嵩高になるので、原紙内部の空隙量が増して不透明度が向上すると同時に剛度も高くなる。機械パルプの中でもグランドパルプは、低密度化への寄与が高いので、本発明において好ましく用いることができる。なお、機械パルプの比率は、白色度や塗工適性等の観点から、全パルプの70重量%以下であることが好ましく、特に50重量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の原紙に使用する填料は、特に限定されるものではないが、例えば、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化チタン、ベントナイトなどの無機填料;尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料;を単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。特に、本発明においては、安価でかつ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを填料として使用することが好ましい。また、炭酸カルシウム−シリカ複合物(例えば、特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に記載の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)などの複合填料も使用可能である。酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。填料の配合量としては、原紙総重量あたり、2〜20重量%含有することが好ましく、3〜15重量%含有することが好ましい。
【0027】
本発明においては、パルプ、填料の他に、原紙の製造に一般的に使用される製紙用薬品を適宜使用することができる。例えば、本発明において内添サイズ剤として、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などのサイズ剤を使用することができる。その他にも、紙力増強剤、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、染料、pH制御剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、紫外線防止剤、退色防止剤、スライムコントロール剤などの抄紙用内添薬品を、目的に応じて適宜添加することができる。
【0028】
また、原紙上に、澱粉やポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)などの接着剤を予備塗工してから、後述の顔料塗工層を設けることもできる。予備塗工は、例えば、サイズプレス、ゲートロールコーター、プレメタリングサイズプレスなどの装置を用いて行うことができる。
【0029】
顔料塗工層
本発明の印刷用塗工紙は、原紙上に顔料塗工層を備える。本発明の顔料塗工層は、顔料と接着剤(バインダー)を含んでなり、公知の方法により原紙上に設けることができる。本発明の顔料塗工層は、原紙の片面または両面に設けられ、単層であっても2層以上設けてもよい。
【0030】
本発明において、顔料塗工層の塗工量は特に制限されないが、本発明のカーボネートは
低塗工量においてもその効果を発揮することができるため、片面あたり2〜35g/mであることが好ましく、3〜20g/mであることがより好ましく、3〜10g/mであることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の印刷用塗工紙は、平均粒子径が2〜15μmのカーボネートが顔料塗工層に含まれていれば、他の顔料を含んでいてもよい。本発明の塗工層に用いる顔料としては、これに限定されないが、例えば、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料を、モノカーボネートと併用することができる。
【0032】
一般に顔料塗工層には、顔料の他に各種バインダーが使用されるが、本発明においても種々のバインダーを使用することができる。本発明の塗工層に用いる接着剤としては、例えば、スチレン・ブタジェン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジェン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、あるいはポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシェチルェーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメテルセルロース、ヒドロキシェチルセルロース等のセルロース誘導体などのバインダーから、1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0033】
本発明のグラビア印刷用塗工紙の顔料塗工層に用いる接着剤としては、印刷適性の点から、顔料100重量部に対して5重量部未満の澱粉を配合することが好ましい。澱粉を配合することによって塗工層の強度は増すが、顔料100重量部に対して5重量部以上配合した場合、塗工層が堅くなりクッション性が低下するため、グラビア印刷適性は劣る。また、接着剤としては、ガラス転移温度が−50℃〜0℃の共重合体ラテックスを使用すると、グラビア印刷に適したクッション性を顔料塗工層に付与することができ、特に好適である。
【0034】
また、本発明の顔料塗工層には、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤、印刷適性向上剤など、顔料塗工液に一般的に配合される各種助剤を適宜使用することができる。
【0035】
本発明において、原紙上に塗工層を設ける装置は特に制限されず、例えば、2ロールサイズプレスコータやゲートロールコータ及びブレードメタリングサイズプレスコータ、ロッドメタリングサイズプレスコータ、及びシムサイザー等のフィルム転写型ロールコータ、フラデットニップ/ブレードコータ、ジェットファウンテン/ブレードコータ、及びショートドウェルタイムアプルケート式コータの他、ブレードの替わりにグルーブドロッド、プレーンロッド等を用いたロッドメタリングコータ、カーテンコータ、及びダイコータ等の公知のコータを用いて塗工することができる。また、操業効率を高めるため、オンラインのコーターを用いることも可能である。
【0036】
コーターによって塗工された塗工層の乾燥には、一般的なドライヤを用いることができ、加熱熱風エアドライヤ、加熱シリンダ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等、各種の方式のドライヤを、単独であるいは組み合せて用いることができる。乾燥状態が用紙のカールに影響を及ぼすため、本発明においては表裏の乾燥バランスをコントロールすることのできる装置を用いることが好ましい。
【0037】
本発明においては、このようにして得られた塗工紙の顔料塗工層を、平滑度などを高めるため表面処理することも可能である。カレンダー処理は、コート紙の平滑化処理に通常使用されるスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等を用いて行なえばよく、また、これらを併用してもよい。印面品質及び印刷作業性のバランスを良好にする観点から、特に高温ソフトカレンダー処理することが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例をあげて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本明細書において部および%は、特記しない限り重量基準であり、重量部および重量%は、それぞれ固形分重量部および固形分重量%を示す。
【0039】
評価方法
本発明における各種評価方法の詳細は以下のとおりである。
(1)坪量 坪量はJIS P8124に準じて測定した。
(2)クラークこわさ
JIS P8143に準じてマシン方向(MD)のクラークこわさを測定した。
(3)ミッシングドット
大蔵省式グラビア印刷機(熊谷理器工業製)を用いて、印刷速度400m/分、印圧10kgf/cmで印刷し、得られた印刷物についてミッシングドットの発生状況を目視により評価した。評価基準は以下の通りである。◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る。
【0040】
実施例1
<モノカーボネートの合成>
モノカーボネートとして、平均粒子径が8.1μmと1.0μmのモノカーボネート(古手川産業製)を使用した。平均粒子径8.1μmのモノカーボネートは、特開2008−37664号公報に記載されたように水酸化アルミニウムを摩砕処理し、メカノケミカル的に消石灰および炭酸カルシウムと水の存在下で反応させることによって合成したが、水酸化アルミニウムの摩砕時間を短くし、反応終了までの時間を長くした。平均粒子径1.0μmのモノカーボネートは特開2008−37664号公報記載の方法で合成された。
【0041】
<塗工原紙> 塗工原紙として、坪量35g/mの中質紙を用いた。塗工原紙のパルプ配合は、LBKP36重量%、NBKP32重量%、NTMP22重量%、DIP10重量%であり、填料として軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:2.2μm)を用い、原紙灰分が原紙重量あたり10%となるように調整した。
【0042】
<塗工液の調製> カルシウムアルミネートモノカーボネートP(平均粒子径8.1μm、古手川産業製)30重量部、エンジニアードカオリン(CapimDG、平均粒子径1.19μm、IMERYS製)70重量部からなる顔料をセリエミキサーで水中に分散し、無機顔料スラリーを調製した。調製した顔料スラリーに、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(ガラス転移温度−40℃)10部を加え、アクリル系合成保水剤0.4部と水を加えて、固形分濃度65%の塗工液を得た。
【0043】
<塗工紙の調製> 前記した原紙の両面に、片面あたりの塗工量が7g/mになるように、500m/分の塗工速度でブレードコータを用いて上記塗工液を両面に塗工した。塗工後、スキャッフドライヤーを通過させ、シリンダードライヤーにて紙中水分が5.5%になるように乾燥した。
【0044】
<表面処理> さらにソフトニップカレンダー処理を行い、グラビア印刷用塗工紙を得た。カレンダー条件は、金属ロール温度160℃、弾性ロールのショアーD硬度85、通紙速度600m/分、線圧40kg/cmとし、カレンダーニップ数を4ニップとした。
【0045】
実施例2
実施例1に関して、カルシウムアルミネートモノカーボネートPを70重量部、エンジニアードカオリン30重量部とし、固形分濃度を50%とした以外は、実施例1と同様の方法にて塗工紙を得た。
【0046】
比較例1
カルシウムアルミネートモノカーボネートを配合せず、エンジニアードカオリンの配合量を100重量部とした以外は、実施例1と同様にしてグラビア印刷用塗工紙を得た。
【0047】
比較例2
平均粒子径が8.1μmのカルシウムアルミネートモノカーボネート(P、古手川産業製)に代えて平均粒子径が1.0μmのカルシウムアルミネートモノカーボネート(V3、古手川産業製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてグラビア印刷用塗工紙を得た。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に、実施例および比較例で得られた塗工紙の試験結果を示す。表1から明らかなように、本発明の塗工紙は、実施例1、実施例2ともに、軽量にも関わらず、剛度が高く維持され、クラーク剛度が高く、ミッシングドットが少なくグラビア印刷適性が優れていた。一方、比較例1の塗工紙は、剛度が低く、グラビア印刷適性が劣っていた。また、比較例2の塗工紙は、剛度が不足するために印刷作業性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙と顔料塗工層を有するグラビア印刷用塗工紙であって、
顔料塗工層が、平均粒子径が2〜15μmであるカルシウムアルミネートモノカーボネートを含んでなる、上記グラビア印刷用塗工紙。
【請求項2】
前記カルシウムアルミネートモノカーボネートの平均粒子径が2〜10μmである、請求項1に記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項3】
坪量が35〜70g/mである、請求項1または2に記載のグラビア印刷用塗工紙。

【公開番号】特開2010−236151(P2010−236151A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86719(P2009−86719)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】