説明

グラファイト基板前処理方法

【課題】グラファイト基板前処理方法を提供する。
【解決手段】
本発明のグラファイト基板前処理方法は、グラファイトの電気めっき工程を行う前に行う表面処理方法であって、pH値がpH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤と濃度が3%〜50%の間に介在する硝酸を利用し、グラファイト基板の電気めっき工程を行う前に行う表面処理方法が使用する活性剤及び溶剤とし、グラファイト基板表面に対する侵蝕破壊を防止し、グラファイト基板表面に付着した金属層に良好な結合力を持たせることができ、金属層の寿命を増長することができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイト基板前処理工程に関し、特に、グラファイト基板の電気めっき工程を行う前に行う表面処理方法であって、グラファイト基板の電気めっき後、グラファイト基板表面に付着した金属層に良好な結合力を持たせ、金属層の寿命を増長させることができる前処理工程に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部材の堆積は、益々微小化し、単位面積の密度も益々高くなり、電子部材の総発熱量は、ほぼ逐年上昇し、良好なヒートシンク方式で電子部材が発生する熱を排除しなければ、これら過度に高い温度が電子部材に電子衝突イオン化及び熱応力等の現象を発生させ、全体的安定感の低下、及び電子部材自身の寿命の短縮を招くが、前のヒートシンク方式は、純銅又はアルミ合金を熱拡散の基礎材料とし、或いは、更に熱管を基礎材料内に埋め込み、熱拡散の速度を加速するが、この種の方法が必要とするコストは、相対的に高くなり、銅、アルミの導熱係数は、約400W/mk及び200W/mkであり、発熱量が絶え間なく上昇する電子部材において、徐々に使用されなくなっており、現在は、カーボンが自然界中に豊富な含量の物質であり、且つカーボンがグラファイト化処理を経た後、良好な導電体及び熱導体となることができるが、グラファイト表面は、後続電気めっき加工時に、その表面に形成される金属層は、短時間内に腐蝕、剥離を発生し、且つ金属層とグラファイト表面の結合力が比較的悪く、後段加工工程の歩留まりの低下を招き、且つ製品使用寿命が比較的短いので、業界は、グラファイト基板を導熱体として使用することを排除しているが、本願の発明者は、上記の問題及び欠陥の発生の原因を研究し、グラファイト基板が電気めっき工程を行う前、表面処理を先に行う必要があり、グラファイト基板表面の油脂を除去し、油脂を除去する時、HP値14の溶剤を利用し、油脂を溶解するが、この種の方法は、グラファイト基板表面に侵蝕を発生し、溶剤をグラファイト内に残留させ、且つ油脂を除去した後、濃度70%の硝酸を利用し、グラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面が発生する酸化物を除去し、この時、濃度70%の硝酸は、再度大量にグラファイト基板表面を侵蝕し、硝酸をグラファイト内に残留させ、グラファイト基板の金属層の電気めっき後、金属層とグラファイト基板の結合力が悪く、且つ一定時間後、グラファイト内に残留する硝酸及び溶剤が金属層を腐蝕、剥離させるので、本願の発明者は、上記方法が発生する問題に対して絶え間ない研究及び試行を行い、本願の前処理方法に発展している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−11352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、pH値がpH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤と濃度が3%〜50%の間に介在する硝酸を利用し、グラファイト基板の電気めっき工程を行う前に行う表面処理方法が使用する溶剤とし、グラファイト基板の電気めっき後、グラファイト基板表面に付着した金属層に良好な結合力を持たせることができ、金属層の寿命を増長することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記の特徴を有する。
(1)グラファイト基板の電気めっき前に使用する表面処理方法であって、該処理方法が以下のステップ:
(A)洗浄:溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の汚れ及び顆粒を除去し;
(B)脱脂:pH値を利用し、pH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤を利用し、グラファイト基板表面に付着する油脂を除去し、;
(C)水洗:グラファイト基板表面に脱脂を行った後、表面に残留する溶剤を洗浄し;
(D)活性化:濃度が3%〜50%の間に介在する稀釈硝酸を利用しグラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の脱脂及び水洗により発生した酸化物を除去し、グラファイト基板表面に結晶組織を露出させ;
(E)水洗:グラファイト基板表面の活性化により残留した硝酸を洗浄する;
に基づき、行い、
グラファイト基板に電気めっき工程を行い、グラファイト基板表面に金属層をめっき可能にするグラファイト基板前処理方法。
(2)前記ステップD及びステップEを1回以上重複して行う(1)記載のグラファイト基板前処理方法。
(3)前記ステップAは、溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄時、超音波洗浄方式で行うことができる(1)記載のグラファイト基板前処理方法。
(4)アルミ材質を含むグラファイト基板の電気めっき前に使用する表面処理方法であって、該処理方法が以下のステップ:
(A)洗浄:溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の汚れ及び顆粒を除去し;
(B)脱脂:pH値を利用し、pH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤を利用し、グラファイト基板表面に付着する油脂を除去し、;
(C)水洗:グラファイト基板表面に脱脂を行った後、表面に残留する溶剤を洗浄し;
(D)活性化:濃度が3%〜50%の間に介在する稀釈硝酸を利用しグラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の脱脂及び水洗により発生した酸化物を除去し、グラファイト基板表面に結晶組織を露出させ;
(E)水洗:グラファイト基板表面の活性化により残留した硝酸を洗浄し;
(F)亜鉛置換工程:亜鉛置換液を利用し、亜鉛イオンをアルミ表面に置換し、表面に一層の亜鉛金属薄膜を形成し;
(G)水洗:グラファイト基板表面に残留する亜鉛置換液を洗浄する;
に基づき、行うグラファイト基板前処理方法。
(5)前記ステップDからステップGを1回以上重複して行う(4)記載のグラファイト基板前処理方法。
(6)前記ステップAは、溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄時、超音波洗浄方式で行うことができる(4)記載のグラファイト基板前処理方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のグラファイト基板前処理方法は、グラファイトの電気めっき工程を行う前に行う表面処理方法であって、pH値がpH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤と濃度が3%〜50%の間に介在する硝酸を利用し、グラファイト基板の電気めっき工程を行う前に行う表面処理方法が使用する活性剤及び溶剤とし、グラファイト基板表面に対する侵蝕破壊を防止し、グラファイト基板表面に付着した金属層に良好な結合力を持たせることができ、金属層の寿命を増長することができるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の好適実施方式のフロー図である。
【図2】本発明の好適実施方式のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、グラファイト基板の電気めっき前に表面処理を行う時、以下のステップに基づき行う:
(A)洗浄:溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の汚れ及び顆粒を除去し、且つ溶剤がグラファイトの表面を洗浄する時、超音波振動の機械力を利用し、溶剤中に無数の小さな気泡を発生させ、これら小さな気泡が生長を形成し、閉じ合う時、強大な振動力を発生し、グラファイト基板表面に付着した汚れ及び顆粒を迅速に離脱させ、より徹底したグラファイト基板表面の洗浄を行う。
(B)脱脂:pH値を利用し、pH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤を利用し、グラファイト基板表面に付着する油脂を除去し、有機溶剤のPH値が中性に近くなっているので、グラファイト基板表面を比較的侵蝕しない。
(C)水洗:グラファイト基板表面に脱脂を行った後、表面に残留する溶剤を洗浄し、且つステップBが使用する溶剤グラファイト基板表面に対して侵蝕しないので、この水洗ステップは、更に溶剤を清潔に洗浄することができる。
(D)活性化:濃度が3%〜50%の間に介在する稀釈硝酸を利用しグラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の脱脂及び水洗により発生した酸化物を除去し、グラファイト基板表面に結晶組織を露出させ、グラファイト基板表面に金属層を電気めっきした後、金属層がグラファイト基板表面において良好な結合力を有し、且つこの濃度範囲の硝酸は、グラファイト基板表面を比較的侵蝕しない。
(E)水洗:グラファイト基板表面の活性化により残留した硝酸を洗浄し、且つステップDが使用する硝酸がグラファイト基板表面に対して比較的侵蝕しないので、この水洗ステップは、より硝酸を清潔に洗浄できる。
【0009】
上記ステップを完成した後、グラファイト基板に対して電気めっき工程を行い、グラファイト基板表面上に金属層をめっきし、且つグラファイト基板に電気めっきを行う前の表面処理時に、グラファイト基板表面に対して侵蝕破壊を起こしておらず、ソルビタン系活性剤又は硝酸を残留させていないので、グラファイト基板表面に付着する金属層は、良好な結合力を有することができ、グラファイト内に溶剤又は硝酸が残留していないので、金属層の寿命を増加させることができる。
【0010】
また、金属層とグラファイト基板表面の結合力を増加したい場合、1回以上のステップD及びステップEを繰り返し行い、グラファイト基板表面をより活性化することができる。
【0011】
図2に示すように、グラファイト基板がアルミ材質を含み、グラファイト基板の電気めっき前に表面処理を行う時、以下のステップに基づき行う:
(A)洗浄:溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の汚れ及び顆粒を除去し、且つ溶剤がグラファイトの表面を洗浄する時、超音波振動の機械力を利用し、溶剤中に無数の小さな気泡を発生させ、これら小さな気泡が生長を形成し、閉じ合う時、強大な振動力を発生し、グラファイト基板表面に付着した汚れ及び顆粒を迅速に離脱させ、より徹底したグラファイト基板表面の洗浄を行う。
(B)脱脂:pH値を利用し、pH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤を利用し、グラファイト基板表面に付着する油脂を除去し、有機溶剤のpH値が中性に近くなっているので、グラファイト基板表面を比較的侵蝕しない。
(C)水洗:グラファイト基板表面に脱脂を行った後、表面に残留する溶剤を洗浄し、且つステップBが使用する溶剤グラファイト基板表面に対して侵蝕しないので、この水洗ステップは、更に溶剤を清潔に洗浄することができる。
(D)活性化:濃度が3%〜50%の間に介在する硝酸を利用しグラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の脱脂及び水洗により発生した酸化物を除去し、グラファイト基板表面に結晶組織を露出させ、グラファイト基板表面に金属層を電気めっきした後、金属層がグラファイト基板表面において良好な結合力を有し、且つこの濃度範囲の硝酸は、グラファイト基板表面を比較的侵蝕しない。
(E)水洗:グラファイト基板表面の活性化により残留した硝酸を洗浄し、且つステップDが使用する硝酸がグラファイト基板表面に対して比較的侵蝕しないので、この水洗ステップは、より硝酸を清潔に洗浄できる。
(F)亜鉛置換工程:亜鉛置換液を利用し、亜鉛イオンをアルミ表面に置換し、表面に一層の亜鉛金属薄膜を形成し、アルミ材質を含むグラファイト基板に電気めっき工程を行うことに有利にする。
(G)水洗:グラファイト基板表面に残留する亜鉛置換液を洗浄する。
【0012】
上記ステップを完成した後、アルミ材質を含有するグラファイト基板に対して電気めっき工程を行い、グラファイト基板表面上に金属層をめっきし、且つグラファイト基板に電気めっきを行う前の表面処理時に、グラファイト基板表面に対して侵蝕破壊を起こしておらず、ソルビタン系活性剤又は硝酸を残留させていないので、グラファイト基板表面に付着する金属層は、良好な結合力を有することができ、グラファイト内に溶剤又は硝酸が残留していないので、金属層の寿命を増加させることができる。
【0013】
また、金属層とグラファイト基板表面の結合力を増加したい場合、1回以上のステップDからステップGを繰り返し行い、グラファイト基板表面をより活性化することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイト基板の電気めっき前に使用する表面処理方法であって、該処理方法が以下のステップ:
(A)洗浄:溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の汚れ及び顆粒を除去し;
(B)脱脂:pH値を利用し、pH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤を利用し、グラファイト基板表面に付着する油脂を除去し、;
(C)水洗:グラファイト基板表面に脱脂を行った後、表面に残留する溶剤を洗浄し;
(D)活性化:濃度が3%〜50%の間に介在する稀釈硝酸を利用しグラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の脱脂及び水洗により発生した酸化物を除去し、グラファイト基板表面に結晶組織を露出させ;
(E)水洗:グラファイト基板表面の活性化により残留した硝酸を洗浄する;
に基づき、行い、
グラファイト基板に電気めっき工程を行い、グラファイト基板表面に金属層をめっき可能にするグラファイト基板前処理方法。
【請求項2】
前記ステップD及びステップEを1回以上重複して行う請求項1記載のグラファイト基板前処理方法。
【請求項3】
前記ステップAは、溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄時、超音波洗浄方式で行うことができる請求項1記載のグラファイト基板前処理方法。
【請求項4】
アルミ材質を含むグラファイト基板の電気めっき前に使用する表面処理方法であって、該処理方法が以下のステップ:
(A)洗浄:溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の汚れ及び顆粒を除去し;
(B)脱脂:pH値を利用し、pH3〜pH9の間に介在するソルビタン系活性剤を利用し、グラファイト基板表面に付着する油脂を除去し、;
(C)水洗:グラファイト基板表面に脱脂を行った後、表面に残留する溶剤を洗浄し;
(D)活性化:濃度が3%〜50%の間に介在する稀釈硝酸を利用しグラファイト基板表面を洗浄し、グラファイト基板表面の脱脂及び水洗により発生した酸化物を除去し、グラファイト基板表面に結晶組織を露出させ;
(E)水洗:グラファイト基板表面の活性化により残留した硝酸を洗浄し;
(F)亜鉛置換工程:亜鉛置換液を利用し、亜鉛イオンをアルミ表面に置換し、表面に一層の亜鉛金属薄膜を形成し;
(G)水洗:グラファイト基板表面に残留する亜鉛置換液を洗浄する;
に基づき、行うグラファイト基板前処理方法。
【請求項5】
前記ステップDからステップGを1回以上重複して行う請求項4記載のグラファイト基板前処理方法。
【請求項6】
前記ステップAは、溶剤を利用し、グラファイト基板表面を洗浄時、超音波洗浄方式で行うことができる請求項4記載のグラファイト基板前処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−46998(P2011−46998A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196133(P2009−196133)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(509240723)
【出願人】(509240734)
【Fターム(参考)】