説明

グラフィックスプロセッサ及び情報処理装置

【課題】画像データに対して補正処理を行うときに、例えばCPUの動作能力によっては、グラフィックスプロセッサにおける画像演算処理の動作速度が低下してしまうことが考えられる。
【解決手段】情報処理装置10において、画像演算処理を行って補正された画像データを生成するときに、GPU12の記憶部17に記憶されている補正パラメータPを用いる。ここで、GPU12の記憶部17は、不揮発性の強誘電体メモリによって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィックスプロセッサ、及び当該グラフィックスプロセッサを含む情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に表示したり印刷装置で印刷したりする対象となる画像データに対して、各種の補正処理が行われる。補正処理としては、例えば、形状補正、輪郭強調、色変換、γ補正、色むら補正、ゴースト補正など多種の補正処理がある。近年、動作速度を向上させるために、CPUに換わって画像演算処理を行うグラフィックスプロセッサが、例えばパーソナルコンピュータやゲーム機器等の情報処理装置に搭載され、前記したような補正処理を行っている。以下の特許文献1に記載されている画像処理装置の例では、画像データに対して色補正を行うために、色補正用のパラメータをハードディスクから読み込み、読込んだ色補正用のパラメータを用いてグラフィックスプロセッサにより補正処理を行っている。
【0003】
図6は、従来の情報処理装置の補正処理に係る概略構成の例を示す図である。同図に示すように、従来の情報処理装置80の概略構成の例では、CPU81、GPU(Graphics Processing Unit)82、RAM83、ROM84及び表示装置85を備えている。CPU81、GPU82、RAM83及びROM84のそれぞれは、バス86を介して接続されている。GPU82は、CPU81からの画像処理コマンドに応じて、画像の描画処理を高速に行うグラフィックスプロセッサである。また、ROM84には、補正された画像データを生成するための補正パラメータPが記憶されている。なお、補正パラメータPは、ROM84に限られず、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリのような不揮発性メモリや、ハードディスク等に記憶されていても良い。
【0004】
図7は、従来の情報処理装置の補正処理の動作の例を示すフローチャートである。同図に示すように、画像データに対して補正を行う際、ステップS810では、CPU81は、ROM84等に記憶されている補正パラメータPを読み取る。そして、読み取った補正パラメータPをバス86を介してRAM83に記憶させる。
【0005】
ステップS820では、CPU81は、描画命令等の画像処理コマンドをバス86を介してGPU82へ送る。
【0006】
ステップS830では、CPU81は、RAM83に記憶されている補正パラメータPをバス86を介してGPU82へ送る。
【0007】
ステップS840では、GPU82は、CPU81から取得した画像処理コマンドに応じて、RAM83から送られた補正パラメータPを用いて画像演算処理を行い補正データを生成する。
【0008】
ステップS850では、GPU82は、補正された画像データを表示装置85に出力させる。
【0009】
【特許文献1】特開2006−303917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記したような従来の情報処理装置では、画像データに対して補正処理を行うときに用いる補正パラメータは、CPUが、ROM等からRAMに記憶させ、その後、バスを介してグラフィックスプロセッサに送った補正パラメータを用いることになる。このため、補正処理を行うときに、例えばCPUの動作能力によっては、グラフィックスプロセッサにおける画像演算処理の動作速度が低下してしまうことが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]
取得した画像処理コマンドに応じて、補正された画像データを生成することを可能とするグラフィックプロセッサであって、前記補正された画像データを生成するための補正パラメータを記憶する不揮発性の記憶部を有することを特徴とするグラフィックスプロセッサ。
【0013】
上記したグラフィックスプロセッサによれば、不揮発性の記憶部を有し、その記憶部に、補正された画像データを生成するための補正パラメータを記憶する。このことから、グラフィックスプロセッサは、画像演算処理を行って補正された画像データを生成するときに、自らが有する不揮発性の記憶部に記憶された補正パラメータを用いることができる。このため、画像データに対して補正処理を行うときに、CPUの制御により、RAMなどから補正パラメータを取得する必要がなくなる。これにより、グラフィックスプロセッサは、補正処理を行うときに、CPUの動作能力に関わらず効率的に画像演算処理を行うことができ、動作速度を向上させることができる。
【0014】
[適用例2]
前記不揮発性の記憶部は、強誘電体メモリであることを特徴とする上記グラフィックスプロセッサ。
【0015】
上記したグラフィックスプロセッサによれば、不揮発性の記憶部は強誘電体メモリであることから、グラフィックスプロセッサの製造工程において、容易に搭載することができる。
【0016】
[適用例3]
前記強誘電体メモリは、1010以上の書き換え回数に対して耐性を有することを特徴とする上記グラフィックスプロセッサ。
【0017】
上記したグラフィックスプロセッサによれば、強誘電体メモリは書き換え耐性に優れた特性を有することから、不揮発性の記憶部に記憶されている補正パラメータを頻繁に更新する場合においても、問題なく実用化することができる。
【0018】
[適用例4]
前記不揮発性の記憶部に記憶されている補正パラメータは変更可能であることを特徴とする上記グラフィックスプロセッサ。
【0019】
上記したグラフィックスプロセッサによれば、記憶されている補正パラメータが変更可能であることから、対象となる画像データ等の状況に応じて補正パラメータを変更することができ、画像データに対しての補正処理を柔軟に行うことができる。
【0020】
[適用例5]
上記したグラフィックスプロセッサを含むことを特徴とする情報処理装置。
【0021】
上記した情報処理装置によれば、画像データに対して補正処理を行う際、効率的に画像演算処理を行うことができるグラフィックスプロセッサを搭載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、グラフィックスプロセッサに係る第1実施形態としての補正処理を行う情報処理装置について説明する。
【0023】
<情報処理装置の概略構成>
最初に、第1実施形態における情報処理装置の補正処理に係る概略構成について説明する。
図1は、第1実施形態における情報処理装置の補正処理に係る概略構成を示す図である。同図に示すように、情報処理装置10の補正処理に係る概略構成では、CPU11、GPU12及び表示装置15を備えている。CPU11とGPU12とは、バス16を介して接続されている。また、GPU12は、不揮発性の記憶部17を備えている。この記憶部17は、強誘電体メモリであるFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)によって構成される。なお、FeRAMの構成の詳細については後述する。
【0024】
記憶部17には、画像データに対して補正を行うための補正パラメータPが記憶されている。補正パラメータPには、例えば、解像度変換、形状補正、輪郭強調、色変換、γ補正、VT−γ補正、白黒伸張及び色ムラ補正等を各画素単位に実行するためのパラメータが登録されている。また、補正パラメータPに、例えば、ゴースト補正やクロストーク補正等を近隣の複数画素にまたがって実行するパラメータが登録されていても良い。
【0025】
CPU11は、情報処理装置10の全体を制御するものであり、描画命令等の画像処理コマンドをバス16を介してGPU12へ送る。
【0026】
GPU12は、CPU11からの画像処理コマンドに応じて、画像の描画処理を高速に行うグラフィックスプロセッサである。GPU12は、記憶部17に記憶されている補正パラメータPを用いて画像演算処理を行い補正された画像データを生成する。そして、GPU12は、補正された画像データを図示しない表示用コントローラに出力する。表示用コントローラは、表示装置15を直接制御し、GPU12からの補正された画像データを表示装置15に表示させる。なお、ここで、表示装置15は表示装置に限られず、画像データを印刷する印刷装置でも良い。
【0027】
<FeRAMの構成>
次に、FeRAMの構成について説明する。
FeRAMは、強誘電体材料によってメモリセルが構成されており、強誘電体材料をデータ保持用のキャパシタに利用したメモリである。ここで、強誘電体膜は、自発分極特性を有し、印加される電界方向に応じて分極方向が反転する性質を有している。FeRAMは、この分極反転を記憶保持に利用している。FeRAMは、データ保持のための電源を不要とする不揮発性メモリである。
【0028】
図3は、FeRAMを構成するメモリセルを示す図である。同図に示すように、メモリセル50は、トランジスタ51と、強誘電体膜から構成される強誘電体キャパシタ52とから構成されている。トランジスタ51のゲート端子にWL(ワード線)53が接続され、トランジスタ51のドレイン端子(又はソース端子)にBL(ビット線)54が接続され、トランジスタ51のソース端子(又はドレイン端子)に強誘電体キャパシタ52の一方側の端子が接続され、強誘電体キャパシタ52の他方側の端子にPL(プレート線)55が接続されている。
【0029】
次に、メモリセル50にデータを書き込む動作について説明する。メモリセル50は、強誘電体キャパシタ52の両端子間に所定電圧(Vcc)が印加されることにより、「1」及び「0」のデータが書き込まれる。例えば、メモリセル50は、WL53が選択状態(トランジスタ51オン状態)にされ、BL54が0Vにされ、PL55にVccが印加されることにより「0」が書き込まれる。また、BL54にVccが印加され、PL55が0Vにされることにより「1」が書き込まれる。また、メモリセル50は、WL53が非選択状態(トランジスタ51オフ状態)になっても書き込まれたデータを保持する。
【0030】
次に、メモリセル50に書き込まれているデータを読み出す動作について説明する。メモリセル50には、図示しないセンスアンプ回路が備えられており、BL54がオープン状態(0V)にされ、WL53が選択状態にされ、PL55にVccが印加されることにより、BL54を介してセンスアンプ回路に所定の電圧が供給される。センスアンプ回路は、強誘電体キャパシタ52の分極状態に応じて異なる電圧が供給され、それぞれの電圧に基づいて増幅を行う。メモリセル50は、センスアンプ回路による増幅後の電圧に応じて「1」又は「0」が読み出される。
【0031】
ここで、メモリセル50は、データの読み出し動作において、「1」が読み出された場合、強誘電体キャパシタ52の分極が「1」から「0」の状態に反転されることで破壊読出しの動作を行う。そして、メモリセル50は、強誘電体キャパシタ52の分極を「1」の状態に維持するために、「1」のデータを読み出した後、再び「1」のデータを書き込むことで再書き込み動作を行うように制御されている。また、上記したFeRAMは、破壊読出しの動作を行った後の再書き込みの動作を通常の揮発性メモリ(例えば、SRAMやDRAM等)と同等の高速実行性能を利用して行う。更に、FeRAMは、1010以上の書き換え回数に対して耐性を有する。
【0032】
<情報処理装置の動作>
次に、第1実施形態における情報処理装置の補正処理の動作について説明する。
図2は、第1実施形態における情報処理装置の補正処理の動作を示すフローチャートである。
【0033】
同図に示すように、画像データに対して補正を行う際、ステップS110では、CPU11は、描画命令等の画像処理コマンドをバス16を介してGPU12へ送る。
【0034】
ステップS120では、GPU12は、CPU11から取得した画像処理コマンドに応じて、表示すべき画像データに対して、GPU12の記憶部17に記憶されている補正パラメータPを用いて画像演算処理を行い補正された画像データを生成する。
【0035】
ステップS130では、GPU12は、補正処理された画像データを表示用コントローラに出力することで、補正された画像データを表示装置15に出力させる。
【0036】
<効果>
上述したように、本実施形態における情報処理装置10では、GPU12において画像演算処理を行い補正された画像データを生成するときに、GPU12の記憶部17に記憶されている補正パラメータPを用いる。この記憶部17は、不揮発性の強誘電体メモリであることから、記憶されている補正パラメータPのデータ保持のために、例えばバッテリ等の電源を必要としない。また、GPU12の記憶部17に記憶されている補正パラメータPを用いることから、従来の情報処理装置のように、CPU11の制御により、RAMなどから補正パラメータPを取得する必要がなくなり、効率的に画像演算処理を行うことができ、動作速度を向上させることができる。
【0037】
(第2実施形態)
以下、グラフィックスプロセッサに係る第2実施形態としての補正処理を行う情報処理装置について説明する。
【0038】
<情報処理装置の概略構成>
図4は、第2実施形態における情報処理装置の補正処理に係る概略構成を示す図である。同図に示すように、情報処理装置20の補正処理に係る概略構成は、図1に示した情報処理装置10の概略構成に加えて、補正パラメータ取得部18を備えている。
【0039】
補正パラメータ取得部18は、画像データに対して補正を行うための補正パラメータPを取得する。ここで、補正パラメータ取得部18において取得される補正パラメータPは、外部装置から情報処理装置20に読込まれたパラメータでも良いし、情報処理装置20に備えた入力装置からユーザが追加及び変更を行ったパラメータでも良い。また、情報処理装置20において画像データの内容に応じて自動的に生成されたパラメータでも良い。補正パラメータ取得部18によって取得された補正パラメータPは、CPU11により、GPU12の記憶部17に登録される。即ち、記憶部17に記憶される補正パラメータPは、固定ではなく変更可能なパラメータとなる。
【0040】
<情報処理装置の動作>
次に、第2実施形態における情報処理装置の補正処理の動作について説明する。
図5は、第2実施形態における情報処理装置の補正処理の動作を示すフローチャートである。
【0041】
同図に示すように、ステップS210では、CPU11は、補正パラメータ取得部18によって補正パラメータPを取得する。
【0042】
ステップS220では、CPU11は、補正パラメータ取得部18によって取得した補正パラメータPを、バス16を介してGPU12の記憶部17に登録する。
【0043】
そして、画像データに対して補正を行う際、ステップS230では、CPU11は、描画命令等の画像処理コマンドをバス16を介してGPU12へ送る。
【0044】
ステップS240では、GPU12は、CPU11から取得した画像処理コマンドに応じて、表示すべき画像データに対して、記憶部17に記憶されている可変の補正パラメータPを用いて画像演算処理を行い補正データを生成する。
【0045】
ステップS250では、GPU12は、補正処理された画像データを表示用コントローラに出力することで、補正された画像データを表示装置15に出力させる。
【0046】
<効果>
上述したように、本実施形態における情報処理装置20では、補正パラメータ取得部18によって取得した補正パラメータPをGPU12の記憶部17に登録する。このため、GPU12において画像演算処理に用いる補正パラメータPは、固定ではなく変更可能なパラメータとなる。これにより、GPU12は、表示すべき画像データに対して、画像データ内容やユーザの状況等に応じて柔軟に補正処理を行うことが可能になる。また、記憶部17は、高速書き換え可能であり、且つ1010以上の書き換え回数に対して耐性を有する強誘電体メモリであるFeRAMによって構成される。これにより、記憶部17に記憶される補正パラメータPが頻繁に更新される場合でも、商業的な実使用上の品質保証を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態における情報処理装置の補正処理に係る概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態における情報処理装置の補正処理の動作を示すフローチャート。
【図3】FeRAMを構成するメモリセルを示す図。
【図4】第2実施形態における情報処理装置の補正処理に係る概略構成を示す図。
【図5】第2実施形態における情報処理装置の補正処理の動作を示すフローチャート。
【図6】従来の情報処理装置の補正処理に係る概略構成の例を示す図。
【図7】従来の情報処理装置の補正処理の動作の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0048】
10,20,80…情報処理装置、11,81…CPU、12,82…GPU、15,85…表示装置、16,86…バス、17…記憶部、18…補正パラメータ取得部、83…RAM、84…ROM、P…補正パラメータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得した画像処理コマンドに応じて、補正された画像データを生成することを可能とするグラフィックプロセッサであって、
前記補正された画像データを生成するための補正パラメータを記憶する不揮発性の記憶部を有することを特徴とするグラフィックスプロセッサ。
【請求項2】
前記不揮発性の記憶部は、強誘電体メモリであることを特徴とする請求項1に記載のグラフィックスプロセッサ。
【請求項3】
前記強誘電体メモリは、1010以上の書き換え回数に対して耐性を有することを特徴とする請求項2に記載のグラフィックスプロセッサ。
【請求項4】
前記不揮発性の記憶部に記憶されている補正パラメータは変更可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のグラフィックスプロセッサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のグラフィックスプロセッサを含むことを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−31465(P2009−31465A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194156(P2007−194156)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】