説明

グラフト修飾されたビニルエステル及びエチレンポリマー、それらの調製方法、及び液体炭化水素の冷間性能を改良する添加物の使用方法

【課題】エチレン及びビニルエステル系で、共役させることにより、低温での液体炭化水素、特に石油及び粗油の蒸留で得られる中間留分の濾過性及び流動性を改良する二重目的の添加剤として、液体炭化水素中での溶解度を改良し、粘度を低下させる新規なポリマーを提供する。
【構成】a)構造A:−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、b)構造B:- (CH2-CHOCOR1)m-x- の基、c)構造C:- (CH2-CHOH)x1-の基及びd)構造D:- (CH2-CHG)x2- 又はD´: 2C(OCOCH3)Q)x2-の基を含むコポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン及びビニルエステル系で、共役させることにより、低温での液体炭化水素、特に石油及び粗油の蒸留で得られる中間留分の濾過性及び流動性を改良する二重目的の添加剤として、液体炭化水素中での溶解度を改良し、粘度を低下させる新規なポリマーの合成と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多年に渡って石油工業では、エチレンと酢酸ビニル及び/又はプロピオン酸ビニル(EVA及びEVP)のポリマーの形態の燃料製品の低温濾過性を改良する添加剤(LFT(制限濾過温度)添加剤と参照される)を開発している。これらの添加剤は、低温(例えば5℃未満)で形成されるパラフィン結晶の成長を抑制しかつサイズを減少させて、結晶化プロセスに影響を与え、これにより内燃機関や加熱設備内のフィルタを通過する。従来技術で周知であるこれらの添加剤は、石油精製設備で古典的なタイプの中間留分に添加される。このように処理された留分は、ディーゼルエンジンや加熱システムで燃料として使用される。これらの添加剤の殆どは、特に低温用としてガソリンスタンドで販売される燃料製品に添加される。
【0003】
LFTで機能する、エチレン、酢酸ビニル、及びビニルネオデカノエート(VeoVA)のような分枝ビニルエステルのコポリマーのような他のタイプの添加剤が、特に特許文献1に開示されている。
【0004】
これらのLFT添加剤(EVA又はEVP)に加えて、留分のLFT及び流動点を改良するために、それ自身のために又は他の添加剤と共同して、従来の炭化水素留分の制限濾過温度と低温流動性を低下させるために、他の物質を添加できる。
【0005】
LFTと低温流動性の両者を改良するこのような添加剤の組み合わせは公知である。
【0006】
特許文献2には、分子量が1000から3000の酢酸ビニル10〜30%を含む90〜10重量%のエチレンコポリマーと、分子量が760から100000のポリアクリル酸ラウリル及び/又はポリメタクリル酸ラウリル10〜90重量%から成る添加剤を含む、177℃と400℃の間の沸点を有する中間留分が記載されている。これらのポリアクリル酸塩とEVAの組み合わせは、LFT(NF EN116 Normに従って測定)及び流動点温度(NF EN60105 Normに従って測定)の両者を改良することに注目すべきである。
【0007】
粗油や重質成分の配管について、特許文献3の発明者は、製品が配管内で詰まってしまうような、特に低温での流動性の改良の問題に遭遇した。その5〜20%の沸点が350℃を超えかつ軟化点が35℃を超えるパラフィンを含む炭化水素組成物のこれらの性質を改良するために、前記発明者は、これらの組成物に、炭素原子数が3〜5個のカルボン酸のオレフィンエステルのポリマー、炭素原子数が14〜30個で分子量が1000から1000000のアルコール、及び平均分子量が20000から60000で1〜40(好ましくは14〜24)の酢酸ビニル残基を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)の混合物であって、オレフィン−エステルポリマーのエチレン−酢酸ビニルコポリマーに対するモル比が0.1から10である添加剤10ppmから2重量%を添加することを提案している。
【0008】
沸点が120℃から480℃の中間留分中で3%未満の濃度のパラフィン結晶のサイズをコントロールするために、特許文献4の発明者は、アルキル鎖の炭素原子数が14〜16個で分子量が1000から200000のアクリル酸又はメタクリル酸のオレフィンエステルのホモポリマーと、平均分子量が4000未満であるエチレン−酢酸ビニルコポリマーの混合物であって、オレフィン−エステルホモポリマーのエチレン−酢酸ビニルコポリマーに対するモル比が0.1:1から20:1である混合物10ppmから1重量%を添加することを提案している。
【0009】
しかし近年では出発蒸留分が多様化し、現在の中間留分は、特に初期濾過性改良の添加剤がEVA及びEVPコポリマー系と考えられる以前の中間留分とは大きく異なった組成を有している。更に2000年の、最近では2005年の仕様変化で、ディーゼルモータと国内用石油加熱システムの両者で使用する蒸留物を精製業者が精製する手法が変化した。
【0010】
使用される蒸留物の多くは、特に炭化水素の直接蒸留、熱分解プロセス、水素化分解及び/又は接触分解、及び粘度低下プロセスなどの精製操作で得られる。
【0011】
ディーゼル燃料への要求が増加するにつれ、精製業者は、石油以外の原料からの組成物に留分を導入することを検討しているが、このことは、LFT及び流動温度を上昇させて低温性能を劣化させるおそれがあるため、優れた商品に問題を生じさせることがある。前記新規原料には、
−高濃度の重いパラフィン種(18個を超える炭素原子)の分解又は粘度低下プロセスで得られる重い留分、
−フィッシャー−トロプシュ(Fischer Tropsch)法で得られるもののようなガス変換で得られる合成留分、
−植物や動物の生物的物質の加工で得られる合成留分(例えばNexBTL)、及び
−植物や動物から得られるオイル及び/又はオイルエステル、
が含まれる。
【0012】
これらの新規燃料は、それら単独で、又は燃料ベースとしての石油から得られる中間留分と混合して使用だれる。これらは、16個又はそれ以上の炭素原子を有する長鎖パラフィンを含む。
【0013】
石油から得られる物質を新規原料と組み合わせて得られる留分のLFTは比較的高く、かつ従来の濾過性改良のための添加剤(例えばEVA及び/又はRVP)の添加は必ずしも濾過可能温度を低下させるものではないことが観察された。更にこれらの添加剤は、新規組成物中に十分溶解する訳でもない。
【0014】
同じ現象が、従来の精製製品より長鎖のパラフィンを含んで市場に到達する新規粗製品から得られる中間留分蒸留物でも観察されている。
【0015】
従ってこれらの新規留分原料に、濾過性改良のための添加剤を適応させ、かつ流動性と溶解性の両者を改良する解決法を探し出す必要がある。
【0016】
本願出願人が採用する解決法の一つは、ポリマー鎖の全てに沿った共役基を追加する形態でエチレン−ビニルエステルコポリマーに化学変化を起こさせることにより、新規な中間蒸留分ベースの制限濾過温度を低下させかつ従来の蒸留物との混合性を低下させる従来の濾過性改良添加剤(エチレン−ビニルエステルコポリマー)の性能を向上させることである。共役基は、結晶化の調整剤としての性能、従って制限濾過温度及び流動性を損なうことなく、新規ベース中でこれらのエチレン−ビニルエステルコポリマーの溶解性を向上させる。
【0017】
特許文献5は、例えば、開始剤の存在下、遊離ラジカルで仲介される反応を使用する、オレフィンポリマーへ不飽和カルボン酸をグラフトすることによる重合可能モノマーの共役化を記載している。
【0018】
特許文献6は、エチレン基と、15個までの炭素原子を含むアルキル基でエステル化されたアクリル酸塩とメタクリル酸塩のモノマーから誘導される基(2又はそれ以上)とのコポリマーを記載している。これらのコポリマーは、従来からの、高温で開始剤を使用する遊離ラジカル介在の重合反応を使用するが、これらの方法は実行しにくい。
【0019】
特許文献7は、低硫黄含有量の鉱油留分(特に中間留分)用の抗沈殿添付物であって、前記鉱油の流動性、及び特に低温でのパラフィンの分散性を改良するよう意図されたものを記載している。この添付物は、アクリル酸のアルキルエステルは、好ましくは分子量(Mn)が1000から10000g/モルである、3.5から21モル%の酢酸ビニルを含む、EVAコポリマーへ、アクリル酸アルキルエステルを共役させて得られる共役コポリマーである。
【0020】
特許文献8も、低硫黄含有量の鉱油留分(特に中間留分)用の抗沈殿添付物であって、前記鉱油の流動性、及び特に低温でのパラフィンの分散性を改良するよう意図されたものを記載している。この添付物は、アクリル酸のアルキルエステル(C8〜C22)を、エチレンと3.5モル%以下の酢酸ビニルを含む少なくとも1種のビニルエステルCH2=CH−OCO−R1のコポリマーへ共役させて得られる共役コポリマーである。これらのコポリマーは、1000から10000g/モルのMnを有することが好ましく、フェノールアルキル樹脂や、EVAを含むFT添加剤のような他の共添加剤とともに使用することが好ましい。
【0021】
ポリマー鎖に沿って重合したブランチを導入するあまり標準的ではない方法が、非特許文献1に記載されている。この方法では、CuCl及びビピリジンを触媒とし、80℃における原子移動ラジカル重合(ATPR)反応により、EVAコポリマーへ、ポリメチルメタクリレートを共役させることを含み、12%を超える共役効率が得られる。このタイプの技術は高圧を必要としないため、実施しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許公開第2004/0226216号
【特許文献2】米国特許明細書第3275427号
【特許文献3】米国特許明細書第3726653号
【特許文献4】米国特許明細書第号4156422号
【特許文献5】米国特許明細書第号4161452号
【特許文献6】米国特許明細書第号6106584号
【特許文献7】米国特許公開第2006/0137242号
【特許文献8】米国特許公開第2007/0157509号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Garcia F. G. ら、 Eur Polym J. 2002, 38, 759.
【非特許文献2】Garcia F. G. ら、Polym. Int. 2002, 51, 1340-1347
【非特許文献3】Teodorescu M. ら、 Reactive&Functional Polymers 2004, 61, 387-395
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の第1の目的は、ブランチの共役化により化学的に修飾された、新規なエチレン−ビニルエステルコポリマーを提供することである。
【0025】
エチレン−ビニルエステルコポリマーの化学的修飾は、炭化水素中に存在するパラフィンの結晶化を禁止する効率を保持し、時には改良しつつ、ポリマーの粘度を低下させるだけでなく、液体炭化水素中への溶解度を向上させる。
【0026】
本発明の他の目的は、公知のものより良好なATRPプロセスを構築できる、特にEVAポリマーとポリアクリレートとの化学的な共役に適したATRP反応に基づく、前記新規ポリマーの製造方法を提供することである。
【0027】
本願は、特にパラフィンを多く含みかつ芳香族化合物の含有量が少ない(従って溶液力が小さい)、ディーゼル及び国内用加熱燃料用の蒸留物タイプの塩基のための添加物に関する。
【0028】
本発明は、炭化水素用の濾過用添加物として使用できる炭化水素中に容易に溶解する粘度の低いポリマーを生成できるという利点を有する。
【0029】
エチレン−ビニルエステルポリマー共役により得られる溶解度が卓越しているということの意味は、共役ポリマーで処理された炭化水素が、室温でその初期濾過特性を保持し、かつエンジンの供給システムや国内用加熱設備の上流にあるフィルタの容易に通過することである。
【0030】
更に、ポリマーの共役によって与えられる粘度の減少は、それらの溶液がポンプで汲み上げられかつ使用される容易さを損なうことなく(ポンピング及び注入システムにおける粘度及びレオロジ的制約)、芳香族化合物低含有量の炭化水素中のポリマー濃度を上昇させることが可能になる。
【0031】
この目的達成のために、本発明は、
a)「n」が45から650の整数である、構造A、−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、
b)「m」が5から110の整数である、少なくとも1つの構造B、- (CH2-CHOCOR1)m-x- の基で、R1が直鎖又は分枝のアルキル基(C1-C15)から成る群から選択される少なくとも1種の残基であり、
c)「x1」が0から0.95xである、構造C、- (CH2-CHOH)x1-の基、
d)少なくとも1種の構造D、- (CH2-CHG)x2- 又はD‘ 2C(OCOCH3)Q)x2-で、x2はゼロでなく、0.05xからxの範囲で、好ましくはx2はxに等しく、Gは、G1,G2又はG3の構造の基に対応し、
ここで、G1は-OCOCHCH3Q-の構造に対応し、
G2は-OCOCH2Q-の構造に対応し、
G3は-OCOCH2SQ-の構造に対応し、
ここで、Qは、
−p1が1から800の範囲である構造Q1、-(CH2-CZCOOR)p1-Xq、又は
−p2が1から100の範囲である構造Q2、-(CH2-CZOCOR)p2-Xq であり、
ここでXは、ハロゲン原子、好ましくは臭素又はヨウ素を示し、「q」は0から1の範囲であり、Zは水素原子又はCH3基に対応し、Rは飽和又は不飽和のC1-C30 、好ましくはC4-C15の直鎖又は分枝のアルキル基に対応し、
コポリマーで、x = x1 + x2 で、xは0.25から55の範囲で、
ポリマー中のA基のモル%は、29〜97モル%で、
ポリマー中のB基のモル%は、1〜20モル%で、
ポリマー中のC基のモル%は、0〜10モル%で、
ポリマー中のD又はD´基のモル%は、0.6〜64モル%で、
D又はD´基中のQのモル%は、8.2〜99モル%であり、
モル質量が10000g/モルである共役エチレン−ビニルエステルコポリマーを提案する。
【0032】
一態様によると、共役エチレン−ビニルエステルコポリマーは、モル質量が10500〜30000g/モルであり、
a)「n」が45から650、好ましくは75から520の整数である、構造A、−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、
b)「m」が5から110、好ましくは10から75の整数である、少なくとも1つの構造B、- (CH2-CHOCOR1)m-x- の基で、R1が直鎖又は分枝のアルキル基(C1-C15)から成る群から選択される少なくとも1種の残基、
c)「x1」が0から0.95x、好ましくは0である、構造C、- (CH2-CHOH)x1-の基、
d)少なくとも1種の構造D、- (CH2-CHG)x2- で、x2はゼロでなく、0.05xからxの範囲で、好ましくはx2はxに等しく、Gは、構造G1:-OCOCHCH3Q-に対応し、ここでQは、
−p1が1から800、好ましくは1から50の範囲である構造Q1、-(CH2-CZCOOR)p1-Xq、又は
−p2が1から100、好ましくは1から10の範囲である構造Q2、-(CH2-CZOCOR)p2-Xq であり、
ここでXは、ハロゲン原子、好ましくは臭素又はヨウ素を示し、「q」は0から1の範囲であり、Zは水素原子又はCH3基に対応し、Rは飽和又は不飽和のC1-C30 、好ましくはC4-C15である直鎖又は分枝のアルキル基に対応し、
コポリマーで、x = x1 + x2 で、xは0.25から55、好ましくは0.5から40の範囲で、
ポリマー中のA基のモル%は、29〜97モル%、好ましくは54〜90モル%で、
ポリマー中のB基のモル%は、1〜20モル%、3.5〜11モル%で、
ポリマー中のC基のモル%は、0〜10モル%、好ましくは0モル%で、
ポリマー中のD基のモル%は、0.6〜64モル%、2.3〜42モル%で、D中のQのモル%は、8.2〜99.9モル%、好ましくは35〜98.7モル%である。
【0033】
本発明のコポリマーで、Qは、構造基Q1、-(CH2-CZCOORq1)p1-Xqを表し、ここでqは0、p1は1から50の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明のコポリマーで、Rq1 は、飽和又は不飽和のC6-C15 、好ましくはC6-C12 、更に好ましくはアクリル酸2−エチルヘキシルである、直鎖又は分枝のアルキル基に対応することが好ましい。
【0035】
本発明のコポリマーで、Qは、構造基Q2、-(CH2-CZOCORq2)p2-Xq を表わすことが好ましく、ここでqは0、p2は1から10の範囲で、ZはHであり、Rq2は、C5からC25、好ましくはC5からC15の分枝アルキル基で、分枝は、アルキル基の任意の点、好ましくはアルキル鎖の2位又は3位、より好ましくは3級炭素を形成する位置に存在する。
【0036】
本発明のコポリマーで、OCORq2基は、ピルビン酸エステル、イソペンタン酸エステル、イソヘキサン酸エステル、2-エチルヘキサン酸エステル、イソノナン酸エステル、イソドデカン酸エステル、イソトリデカン酸エステル、ネオノナン酸エステル、ネオドデカン酸エステル又はネオウンデカン酸エステルから成る群から選択されることが好ましい。
【0037】
本発明のコポリマーで、OCORq2基は、植物及び/又は動物由来の脂肪酸で、Rq2基は、C8-C25、好ましくはC12-C15の飽和又は不飽和の直鎖又は分枝のアルキル基を有することが好ましい。
【0038】
本発明のコポリマーの一態様によると、構造Bの基は、
a)構造B´の基、-(CH2-CHOCOR'1)m'-xであって、R´1はCH3で、m´は10から75、
b)又は構造B”の基、-(CH2-CHOCOR''1)m''-xで、R''1 iが C2H5基で、m”は10から75、
c)又は構造B’’’の基、-(CH2-CHOCOR'''1)m'''-xで、R’’’1は、C5からC15の分枝アルキル基で、分枝は、アルキル基の任意の点、好ましくはアルキル鎖の2位又は3位、より好ましくは3級炭素を形成する位置に存在し、m’’’は10から75の範囲にあり、
又はこれらの混合物、好ましくは基B´及びB”の、又は基B´及びB”’の、又は基B”及びB”’の混合物である。
【0039】
本発明のコポリマーの一態様では、nが79から515で、
構造Bの基は、構造B´の基-(CH2-CHOCOR'1)m'-xを表し、R´1はCH3基で、m´は10から71で、
xは0.5から38で、X1は0で、
Qは、構造Q1の基- (CH2-CHCOOR)p1-Xqを表し、qは0、p1は1から50の範囲で、
かつRは、飽和又は不飽和のC1-C30 、好ましくはC4-C15、更にC6-C15であることが望ましく、より望ましくはC6-C12 であり、更により望ましくはアクリル酸2−エチルヘキシルである直鎖又は分枝のアルキル基に対応し、
ポリマー中のA基のモル%は、54〜90モル%で、
ポリマー中のB基のモル%は、3.5〜11モル%で、
ポリマー中のC基のモル%は、0モル%で、
ポリマー中のD基のモル%は、2.3〜42モル%で、D基中のQのモル%は35〜98.7モル%である。
【0040】
本発明の他の対象は、
j)a)構造A、−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、
b)少なくとも1つの構造B、- (CH2-CHOCOR1)m- の基(R1は、直鎖又は分枝アルキル基C1-C15、CH2SH又はCH2I基から成る群から選択される少なくとも1種の残基であり、「n」及び「m」は、出発のポリマーの平均分子量(Mn)が3000から20000g/モルになるように調節される)
を含む出発のエチレン−ビニルエステルポリマーを供給し、続いて、
jj)遊離ラジカルを導入して、M1:CH2=CZCOOR,又はM2:CH2=CZOCORの重合可能なモノマーを、そのプライミングサイトで、遊離ラジカルで触媒される重合反応を起こさせる(モノマーM1又はM2で、Zは水素原子又はCH3基で、R基は,飽和又は不飽和のC1-C30の直鎖又は分枝のアルキル基で、反応により、プライミングサイトでのQ1基を与えるモノマーM1の重合割合p1が1から800の範囲になり、あるいはプライミングサイトでのQ2基を与えるモノマーM2の重合割合p2が1から100の範囲になる)、
ステップを含む本発明の共役ポリマーの製造方法である。
【0041】
他の態様によると、本発明の共役ポリマー望ましい製造方法は、
j)a)構造A、−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、
b)少なくとも1つの構造B、- (CH2-CHOCOR1)m- の基(R1は、直鎖又は分枝アルキル基C1-C15から成る群から選択される少なくとも1種の残基であり、「n」及び「m」は、出発のポリマーの平均分子量(Mn)が3000から20000g/モルになるように調節される)
を含む出発のエチレン−ビニルエステルポリマーを供給し、続いて、
jj)加水分解可能なサイトの50%以下、好ましくは該サイトの20%未満の加水分解率となるようにB基に存在するアルキルエステルの部分加水分解を行い、続いて、
jjj) 構造:XOC-CH2-jXj-CH3のハロゲン酸のハロゲン化物(jは1又は2、Xはハロゲン原子、好ましくはClを示す)を使用して、これらのサイトの少なくとも部分的なエステル化を、エステル化効率が50%を超え、好ましくは80%を超え、より好ましくは100%になるように行い、次いで、
jjjj)ハロゲン原子を有するサイトで、構造M1:CH2=CZCOOR,又は構造M2:CH2=CZOCORのモノマー(モノマー中、Zは水素原子又はCH3基で、R基は,飽和又は不飽和のC1-C30の直鎖又は分枝のアルキル基)を、反応により、プライミングサイトでのQ1基を与えるモノマーM1の重合割合p1が1から50の範囲になり、あるいはプライミングサイトでのQ2基を与えるモノマーM2の重合割合p2が1から6の範囲になるように重合させる、
ステップを含む本発明の共役ポリマーの製造方法である。
【0042】
本発明の製造方法の一態様によると、ステップiv)は、好ましくはCuBrのような銅ハロゲン化物のような遷移金属と窒素含有配位子を含む触媒システムの存在下で、原子移動ラジカル重合(ATRP)を行うことにより達成される。
【0043】
本発明の他の製造方法の一態様では、遊離ラジカル開始剤の存在下、遊離ラジカルが介在する反応により、ステップiv)が行われる。
【0044】
本発明の他の製造方法の一態様では、ステップjj)の後に、ステップjj)で生成したコポリマーの部分加水分解アルコール基へ、構造:TOC-(CH2-CHCOOR)p1-(p1及びRは前記定義通りで、Tは、特にClであるハロゲン原子、又はOH基)の官能基化されたポリアクリレートの共役を行うことを含むステップkkk)を有する。
【0045】
本発明の製造方法では、前記プライミングサイトでのM1又はM2タイプのモノマーの重合により生成するコポリマーQ1又はQ2の共役効率が、10から80重量%、好ましくは15から70重量%であることが好ましい。
【0046】
本発明の他の対象は、好ましくは濃度50重量%超、より好ましくは60から80重量%である、炭化水素蒸留物中の、本発明のポリマーの濃厚溶液に関する。
【0047】
本発明の他の対象は、前記濃厚溶液を、中間蒸留分タイプの炭化水素の濾過性及び流動性を改良するための添付物として使用することである。
【0048】
この用途は、炭素原子18個超を含むn―パラフィンを4重量%超の濃度で有する炭化水素を対象とすることが好ましい。
【0049】
本発明の濃厚溶液を、ディーゼルエンジン燃料又は国内用加熱油のベースとして使用することが好ましい。
【0050】
本発明の他の対象 は、本発明の共役ポリマーを含む液体炭化水素の低温濾過性及び流動性を抑制するよう設計された二重目的の添加物に関する。
【0051】
本発明の他の対象は、硫黄含有量が5000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは50ppm未満である中間蒸留物タイプの炭化水素留分である少なくとも1つの主要成分と、前述した少なくとも1つの、二重目的である濾過性及び流動性を有する添加物である少量成分を含む中間蒸留物に関する。
【0052】
本発明の蒸留物では、主要成分は、150〜450℃で沸騰し、結晶化開始温度Tccが、−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃である蒸留物から構成され、かつ直接蒸留で得られる蒸留物、減圧蒸留物、水素化処理蒸留物、減圧蒸留物の接触分解及び/又は水素化分解で得られる蒸留物、ARDS(常圧残油脱硫)及び/又は粘度低下変換プロセスで得られる蒸留物、フィッシャー−トロピッシュ留分の回収で得られる蒸留物、植物及び/又は動物由来の生物的物質単独又は組み合わせ、及び植物及び/又は動物由来の液体のエステルのBTL(バイオマスから液体)変換で得られる蒸留物、又はこれらの組み合わせを含む。
【0053】
本発明の蒸留物は、炭素原子18個超を含むn―パラフィンを4重量%超で有することが好ましい。
【0054】
本発明の蒸留物は、炭素原子24個超を含むn―パラフィンを0.7%以上有することが好ましい。
【0055】
本発明の蒸留物を含む燃料は、主要成分が、少なくとも1つの前述の二重目的である濾過性及び流動性用添加物を10〜5000ppmと、これに混合可能な、洗剤、分散剤、反乳化剤、反発泡剤、殺虫剤、脱臭剤、ケタン改良剤、防食剤、及び摩擦、潤滑、燃焼、曇り点、流動点、沈殿及び導電性の改良剤を含むことが好ましい。
【0056】
本発明の他の対象は、硫黄1〜5000ppmと、本発明の少なくとも1つの蒸留物を含む加熱用燃料である。
【0057】
本発明の他の対象は、本発明の少なくとも1つの蒸留物を含む国内用重油である。
【0058】
本発明の他の特性及び利点は、引き続いて行う詳細な説明及び発明の好ましい態様から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[出発ポリマーの説明]
本発明方法で使用する出発エチレン−ビニルエステルコポリマーは、
a)構造A:−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基と、
b)少なくとも1つの構造B:- (CH2-CHOCOR1)m- の基(R1は、直鎖又は分枝アルキル基C1-C15、CH2SH又はCH2I基から成る群から選択される少なくとも1種の残基であり、「n」及び「m」は、出発のポリマーの平均分子量(Mn)が3000から20000g/モル、好ましくは5000から15000g/モルになるように調節される)
を含む統計的なコポリマーである。「n」は、45から650の整数、「m」は、5から110の整数であることが好ましい。
【0060】
好ましい態様では、構造Bの基は、
a)構造B´の基、-(CH2-CHOCOR'1)m'-xであって、R´1はCH3で、m´は10から75、
b)又は構造B”の基、-(CH2-CHOCOR''1)m''-xで、R''1iが C2H5基で、m”は10から75、
c)又は構造B’’’の基、-(CH2-CHOCOR'''1)m'''-xで、R’’’1は、C5からC15の分枝アルキル基で、分枝は、アルキル基の任意の点、好ましくはアルキル鎖の2位又は3位、より好ましくは3級炭素を形成する位置に存在し、m’’’は10から75の範囲にあり、
又はこれらの混合物、好ましくは基B´及びB”の、又は基B´及びB”’の、又は基B”及びB”’の混合物を表す。
【0061】
基OCOR1iは、EVA(酢酸ビニル)又はEVP(プロピオン酸ビニル)又はEVeo(ネオアルカン酸ビニル)であることが好ましい。R1がCH2SH又はCH2I基である構造Bの基も使用できる。
【0062】
ポリエチレン断片の平均長さ、従ってディーゼル中のポリマーの溶解度を決定するのは、エステル基の数「n」と、その鎖の沿った統計的分布である。ECA及び/又はEVP及び/又はEVeoをパラフィン結晶中に組み入れ、これにより結晶プロセスを調節して、形成される結晶のサイズ及び立体配置に影響を与えることができる。
【0063】
構造B’’’の基に関するステップc)の場合、分枝アルキル基は、分枝は、アルキル基の任意の点、好ましくはアルキル鎖の2位又は3位、より好ましくは3級炭素を形成する位置に存在するC5からC15の基である。ネオアルカン酸OCOR'''の基は、ピバル酸エステル、イソペンタン酸エステル、イソヘキサン酸エステル、2-エチルヘキサン酸エステル、イソノナン酸エステル、イソドデカン酸エステル、イソトリデカン酸エステル、ネオノナン酸エステル、ネオドデカン酸エステル又はネオウンデカン酸エステルであることが好ましい。
【0064】
[本発明の共役ポリマーの製造方法の一般説明]
本発明のエチレン及びビニルエステル系ポリマーの製造方法では、過酸化物のような遊離ラジカル開始剤を使用する。この開始剤は、前述の通り、出発のエチレン−ビニルエステルコポリマーに置換されたビニルモノマーの遊離ラジカルが介在する重合反応を開始する。このステップの間、モノマーの共重合が公知の遊離ラジカルが介在する重合プロセスとして進行するプライミングサイトが形成される。
【0065】
これは、基Bの3級炭素の出発エチレン−ビニルエステルポリマーの骨格に遊離ラジカルCを中間生成、つまり(CH2-COCOR1)m-するか、あるいは基Bのうち、出発エチレン−ビニルエステルポリマーのエステル基で分枝したエステル基のアルキル基R1の第1炭素に、遊離ラジカルCが生成、つまり- (CH2-CHOCOCHR1)m- する。
【0066】
次いで、遊離ラジカルCとプライミングサイトで重合できる置換ビニルモノマーの存在下、遊離ラジカルが介在する重合が進行する。
【0067】
1がCH2SH又はCH2I基の場合、置換ビニルモノマーの重合は、S原子又はヨウ素のいずれかを有する炭素原子をプライミングサイトとして進行する。
【0068】
他の態様では、置換ビニルモノマーの重合前に、出発のエチレン−ビニルエステルポリマーが、ハロゲン化されたプライミングサイトを導入することにより予備的に活性化される。この場合、この重合は、触媒システムの存在下で原子移動ラジカル重合(ATRP)、あるいは公知の、遊離ラジカル開始剤の存在下での公知の遊離ラジカルが介在する重合反応のいずれかを使用して進行する。
【0069】
ATRPプロセスは、遷移金属と窒素含有配位子を含む触媒システムの存在下で行う。これによりハロゲン原子を有することのある置換エチレン基と共役したコポリマーが生成する。
【0070】
ATRPプロセスによりビニルエステルモノマーの立体配置を確定するためには、第1にプライミングサイトを形成してコポリマーを活性化する必要がある。
【0071】
このような活性化したコポリマーを得るには、まずポリマー鎖の基BのOCOR1 残基を部分的に加水分解し、次いでそれら全部をエステル化する。
【0072】
この加水分解、続いてエステル化を行う操作は、非特許文献1に記載のものに類似する。
【0073】
これにより前述した通り、出発のエチレン−ビニルエステルコポリマーの基B中のエステルを予備的に部分加水分解して、活性化したエチレン−ビニルエステルコポリマーを得る。加水分解は、アルカリ性メタノリシスで行い、ビニルエステルのビニルアルコールへの変換率は、使用するアルカリの量に依存する。本プロセスのステップa)の加水分解速度を変えることにより、最終のコポリマーで分枝する共役数Qをコントロールできる、
【0074】
この加水分解ステップに続いて得られるビニルアルコール基の完全な又は部分的なエステル化を行う。このエステル化は、好ましくは2−クロロ−プロピオン酸塩化物であるα−ハロゲン化酸、又は存在の替わりに、塩化ジクロロアセチルのようなジハロゲン化アルファ酸の塩化物を使用して行う。
【0075】
本発明の共役ポリマーを原子移動ラジカル重合(ATRP)で得るには、非特許文献1に記載されたプロセスを、その分子量が5000から20000の範囲であることが多い、ディーゼル燃料で一般に使用される出発のエチレン−ビニルエステルコポリマーの特殊な問題に適用する。
【0076】
従って、本発明で使用される触媒システムは、好ましくは銅のハロゲン化物で、より好ましくはCuBrである遷移金属の群に属する金属のハロゲン化物を含む。CuClよりCuBrを使用する方が、重合反応が迅速に進行することが観察された。
【0077】
本発明で使用する触媒システムは、窒素含有配位子を含み、該配位子は、Rが水素原子、又は1から10の炭素原子を含む炭化水素ラジカルで、「i」及び「j」は、2から10、好ましくは2から5の範囲の整数である、H-[NR-(CH2)i-]j-NH2(I)の構造のポリアルキルアミンであることが好ましい。好ましいポリアミンは、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMEDTA)である。
【0078】
CuBrとPMEDTAの組み合わせが最良の結果を与え、良好なプライミングサイトと良好な重合コントロール、特に微細サイズ分布を保証する。
【0079】
次いで、遷移金属及び窒素含有配位子を含む触媒システムの存在下、ATRP(原子移動ラジカル重合)により、活性化コポリマーの共役を達成する。このステップの間、ハロゲン化されたプライミングサイトで、1から30の炭素原子を含む、好ましくはアクリル系の鎖を、ビニルエステルモノマーとの制御重合を行う。プライミングサイトでのこの重合は、ポリエステル残基、特にポリアクリレート残基へのグラフトを可能にする。このステップは、本発明で使用するポリアクリレートの構造及び性質を考慮して、非特許文献1記載のものを修正した。
【0080】
従って、触媒システムはCuBr系であることが好ましく、反応速度を増加させ、交換を容易にする。前記触媒システムは、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMEDTA)を使用して、プライミングサイトを卓越したものとし、良好な重合コントロール、特に微細サイズ分布を保証する。
【0081】
この反応は、芳香族化合物の溶媒中、好ましくはトルエン中、30℃から120℃の温度で、1〜10時間、好ましくは80℃で3時間行うことが望ましい。プライマー/CuBr/配位子のモル比は、化学量論の前後で変化する。
【0082】
本発明の変形例では、遊離ラジカル開始剤の存在下、公知の遊離ラジカルが介在する重合プロセスを、プライミングサイトを有する活性化コポリマーに行って、本発明の共役ポリマーを生成できる。この変形例は、ATRPプロセスで行うよりも重合反応及びポリマー鎖長のコントロールが難しい工業規模の用途として特に興味深い。
【0083】
他の変形例では、本発明の共役ポリマーを、構造:TOC-(CH2-CHCOOR)p1-(p1及びRは前述の定義通りで、Tは特にClであるハロゲン原子又はOH基を表す)の官能基を有するポリアクリレートを、部分加水分解コポリマーのアルコール基に直接カップリングさせることでも得られる。これは、ピリジンのようなアミンの化学量論的存在下の室温でのエステル化に相当する。
【0084】
[置換ビニルモノマーの説明]
遊離ラジカル又はハロゲン原子のいずれかを有するプライミングサイトでの重合は、2つのタイプの置換ビニルモノマーにより達成される。
【0085】
構造M1:CH2=CZCOOR(Zは水素原子又はCH3基に対応し、Rは飽和又は不飽和の直鎖又は分枝のアルキル基C1-C30、つまりポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマーを与えるメタクリル酸及び/又はアクリル酸エステル)の使用が好ましい。
【0086】
M1のメタクリル酸及び/又はアクリル酸エステルモノマーは、そのR基がモノ又はポリ芳香族残基を含んでも良い1〜30の炭素原子、好ましくは2〜20の炭素原子、より好ましくは4〜18の炭素原子、又は6〜15の炭素原子、又は6〜12の炭素原子を有する化合物から選択される。好ましいM1エステルモノマーは、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)及びラウリルポリアクリレートから選択され、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)が特に好ましい。
【0087】
構造M2:CH2=CZOCOR(Zは水素原子又はCH3基に対応し、Rは飽和又は不飽和の直鎖又は分枝のアルキル基C1-C30)も使用できる。M2のR基は、C5 to C15の分岐アルキル基で、分枝点は、アルキル基の任意の点、好ましくはアルキル鎖の2位又は3位、より好ましくは3級炭素を形成する位置に存在することが好ましい。OCOR基は、ピルビン酸エステル、イソペンタン酸エステル、イソヘキサン酸エステル、2-エチルヘキサン酸エステル、イソノナン酸エステル、イソドデカン酸エステル、イソトリデカン酸エステル、ネオノナン酸エステル、ネオドデカン酸エステル又はネオウンデカン酸エステルから成る群から選択されることが好ましい。
【0088】
極性基の存在のため、これらのモノマーは、パラフィン結晶の成長を阻害できる共役ポリマーを生成する。更にこれらの共役体は、新規な種となる点の形成を促進でき、これにより分散効果を誘起する。両者とも低温の用途に有用な性質である。
【0089】
−80℃を超える、好ましくは−80℃から−50℃のガラス転移温度Tgを有するポリマーを生成するため、これらのエステルモノマーを選択した。それらのアルキル基は、炭素原子が1〜15まで変化する長くない基である。その結果、それらは最終コポリマーの粘度の減少を補助する。
【0090】
[本発明で得られる共役エチレン−ビニルエステルコポリマーの構造及び性質]
導入する共役体の数は、共役ステップの前に形成されるプライミングサイトの数に依存する。
【0091】
「p」(基Q1のp1又は基Q2のp2)で定義される共役体のサイズ又は長さは、活性化ポリマー中のプライミングサイトの数及び共役ステップで加えられるエステルモノマーの量に依存する。エステルモノマーが一定レベルの場合、サイト数が増加すると、共役体は小さくなり、逆にサイト数が増加すると、共役体は長くなる。
【0092】
GPCで測定される本発明のコポリマーのモル質量は、10000g/モル超、好ましくは10000から40000g/モル、より好ましくは10500から30000g/モル、更に好ましくは12000から20000g/モルである。
【0093】
10000g/モルのモル質量を有する本発明の共役エチレン−ビニルエステルポリマーは、
a)構造A:−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、
b)少なくとも1つの構造B:- (CH2-CHOCOR1)m-x- の基で、R1が直鎖又は分枝のアルキル基(C1-C15)から成る群から選択される少なくとも1種の残基であり、
c)構造C:- (CH2-CHOH)x1-の基、
d)少なくとも1種の構造D:- (CH2-CHG)x2- 又はD´: 2C(OCOCH3)Q)x2-を含み、
ここで、Gは、G1,G2又はG3の構造の基に対応し、
ここで、G1は-OCOCHCH3Q-の構造に対応し、
G2は-OCOCH2Q-の構造に対応し、
G3は-OCOCH2SQ-の構造に対応し、
ここで、Qは、
−構造Q1:-(CH2-CZCOOR)p1-Xq又は
−構造Q2:-(CH2-CZOCOR)p2-Xq に対応し、
ここでXは、ハロゲン原子、好ましくは臭素又はヨウ素を示し、「q」は0から1の範囲であり、Zは水素原子又はCH3基に対応し、Rは飽和又は不飽和のC1-C30 、好ましくはC4-C15、更にC6-C15であることが望ましく、より望ましくはC6-C12 であり、更により望ましくはアクリル酸2−エチルヘキシルである直鎖又は分枝のアルキル基に対応し、
「n」は、48から643、好ましくは79から515で、
「m」は、5から105、好ましくは10から71で、
x(x = x1 + x2 )は、0.25から52、好ましくは0.5から36の範囲で、
x1は、0から0.95x、好ましくはx1=0で、
x2は、0.05xからx、好ましくはx2=xで、
p1は、1〜800の範囲で、好ましくは1から50で、
p2は、1〜100の範囲で、好ましくは1から6である。
【0094】
ポリマー中のA基のモル%は29から97モル%、好ましくは54から90モル%、そして同様にして、ポリマー中のA基の重量%は7〜81%、好ましくは20〜62%である。
【0095】
ポリマー中のB基のモル%は1から20モル%、好ましくは3.5から11モル%、そして同様にして、ポリマー中のB基の重量%は1〜64%、好ましくは4〜25%である。
【0096】
ポリマー中のC基のモル%は0から10モル%、好ましくは0モル%、そして同様にして、ポリマー中のC基の重量%は0〜7%、好ましくは0%である。
【0097】
ポリマー中のD基のモル%は0.6から64モル%、好ましくは2.3から42モル%、そして同様にして、ポリマー中のD基の重量%は10〜85%、好ましくは16〜75%である。
【0098】
D基中のQのモル%は8.2から99.9モル%、好ましくは35から98.7モル%、そして同様にして、D基中のQの重量%は30〜99.9%、好ましくは50〜99.3%である。
【0099】
[性質]
共役が起きると、炭化水素中のコポリマーの溶解度が向上する。本発明のコポリマーで処理した中間蒸留物に関しては、この溶解度向上が、SOP IP387に従って測定したLFT濾過特性を改良する。実際のところ、共役ポリマーの卓越した溶解性は、不溶性留分がフィルタ(通常1.6ミクロンの孔径を有する)を閉塞することを防止し、当初のコポリマーと比較してフィルタ閉塞傾向(FBT)を減少させる。FBTにおけるこの改良は、共役ポリマーの量がいくらであっても(基D中の基Qのモル%がいくらであっても)観察される。
【0100】
低VA濃度(32重量%未満)のEVAについては、共役は、濃厚溶液、例えば芳香族石油留分中のポリマーの70重量%溶液中のレオロジ的挙動を修正する。実際のところ、このような濃厚EVA溶液は、低せん断勾配(つまり高注入しきい値)における高粘度の40℃で揺変性の挙動を示す。共役は、ニュートン挙動を有するこのタイプのEVAコポリマーの濃厚溶液に、特に低せん断力(≦10 s-1)で、当初のEVAより低粘度を与える。
【0101】
VAの割合が32重量%を超えると、ニュートン挙動が70重量%のコポリマー溶液中の出発コポリマーまで回復し、共役はコポリマーのレオロジ的性質を更に改良しなくなる。
【0102】
全ての場合、レオロジ的挙動中の変化とは無関係に、共役は、ポリマーの溶解度を改良してその取扱を容易にする。
【0103】
このことは、より濃厚なポリマー溶液を生成させることも容易にする。
【0104】
[本発明の濃厚添加溶液の説明]
本発明の共役コポリマーから始めて、脂肪族又は芳香族炭化水素のような溶媒中に、特に50から80重量%、好ましくは60から70重量%のポリマーを溶解させた濃厚ポリマー溶液を作製できる。その高濃度にもかかわらず、これらの溶液の粘度は、炭化水素添加物の通常の取扱い操作用として受け入れられる限界内に留まる。
【0105】
[本発明の添加物を含む蒸留物、燃料及び加熱油の説明]
本発明のコポリマーは、濾過性改良用添加物として、蒸留物、燃料及び加熱油に添加する。
【0106】
蒸留物は、硫黄含有量が5000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは50ppm未満の中間蒸留物タイプの炭化水素留分である少なくとも1つの主要部分と、少なくとも1つの、本発明の温濾過性及び流動性を改良するための二重目的の添加物の少量部分を含む。
【0107】
これらの蒸留物は、150〜450℃で沸騰し、結晶化開始温度Tccが、−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃である蒸留物から構成され、かつ直接蒸留で得られる蒸留物、減圧蒸留物、水素化処理蒸留物、減圧蒸留物の接触分解及び/又は水素化分解で得られる蒸留物、ARDS(常圧残油脱硫)変換及び/又は粘度低下プロセスで得られる蒸留物、フィッシャー−トロピッシュ留分の回収で得られる蒸留物、植物及び/又は動物由来の生物的物質単独又は組み合わせ、及び植物及び/又は動物由来の液体のエステルのBTL(バイオマスから液体)変換で得られる蒸留物、又はこれらの組み合わせを含む。
【0108】
勿論、本発明は記載した実施例及び態様には限定されず、多くの変形が当業者により行われる。
【0109】
[共役ポリマー製造の実施例]
2種類の出発エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーをテストした。以下、これらをP1及びP2とする。
【0110】
P1は、A基(n=130)を含む出発ポリマーに対応し、Bはmが16でR1がCH3である構造:- (CH2-CHOCOR1)m-に対応する。
【0111】
P2は、A基(n=125)を含む出発ポリマーに対応し、Bはmが18でR1がCH3である構造:- (CH2-CHOCOR1)m-に対応する。
【0112】
[ATRPプロセス]
最初の2ステップを、OHサイトの加水分解及びエステル化に対応する、非特許文献1の最初の2ステップに記載されているように実行する。しかしATRP重合については、CuCl及びビピリジンの触媒ペアを、CuBr及びPMDETAの触媒ペアに替えて使用する。
【0113】
[実施例1]
下記に略記したプロセスに示すように、EVAを使用して共役を達成する。NMRを使用して、共役反応を追跡する。
【0114】
【化1】

【0115】
1)第1のステップは、10重量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液を使用するアルカリ性メタノリシスによる加水分解である。酢酸ビニル基のビニルアルコール基への変換効率は、添加するアルカリの容量に依存する。
【0116】
従って加水分解速度を変化させると、ポリアクリレート共役体の数を決定できる。
【0117】
2)第2のステップは、塩化クロロアセチルを使用するOH基のエステル化である。OHエステル化の効率は、添加する塩化物誘導体の量に依存する。目的がOH基濃度を限定することであるから、OH基当たり少なくとも1当量の塩化クロロアセチルを添加する。塩素誘導体2当量を添加すると、トリエチルアミンの存在下、エステル化は完全になる(トリエチルアミンなし、又は化学量論未満の塩素誘導体では、反応が部分的になる)。
【0118】
3)原子移動ラジカル重合ステップを非特許文献1のそれから修正し、モノマーの変換率を増加させ、狭いサイズ分布を得る。
【0119】
CuBr/PMEDTAシステムと、ステップ2)で得たプライマとの反応を使用する前記ステップは、5時間で84.5%のモノマー変換率(気相クロマログラフィ[VPC]で測定)の交換反応を行い、1.18(CPVで測定)のポリマーサイズ分布を得る。
【0120】
非特許文献1に記載の触媒システム(CuCl/ビピリジン)との比較により、低い変換率(22時間で61,5%)と広いサイズ分布(1,59)が得られた。
【0121】
構造M1:CH2=CZCOOR(Rは2−エチルヘキシル基)の置換ビニルモノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)を使用して行った前述の操作を、置換ビニルモノマーM1(R基は、ブチル、ラウリル、又はトリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、エイコシル及びステラリル基の種々の混合物)を使用して再度行った。
【0122】
単純な遊離ラジカルを使用すると、出発ポリマーは芳香族系溶媒(例えばケラセン留分)に攪拌下、90℃の温度で溶解する。次いで、開始剤の分解温度及び反応媒体を不活性ガス(窒素又はアルゴン)下に維持することを考慮して、モノマー及び開始剤(過酸化物)を一定割合で添加する。一般に、過酸化物の割合は、重合させるモノマーに対して、0.5〜5重量%である。
【0123】
硫黄誘導体タイプの移動マクロエージェント(macroagent)を使用する遊離ラジカルが介在する反応を選択すると、VA基が部分的に加水分解され、次いでメルカプト酢酸でエステル化が行われる。これにより、AIBNで開始されるアクリル酸エステル重合における鎖移動剤として使用されるメルカプト修飾されたEVAが生成する。
【0124】
ハロゲン誘導体タイプの移動マクロエージェントを使用する遊離ラジカルが介在する反応を選択すると、第1のステップは、室温で硫酸水銀の存在下、EVAとクロル酢酸のトランスエステル化により、クロル酢酸エチレン−ビニルエステルを作製することである。次いで、クロル酢酸エチレン−ビニルエステルをヨウ化カリウム(KI)と反応させて、ヨード酢酸エチレン−ビニルエステルを生成させる。
【0125】
最後に、アクリル酸エステルモノマーを、AIBN開始剤を使用して重合させる。
【0126】
非特許文献2及び3に記載の方法を参照できる。
【0127】
[実施例2:作製された生成物]
ポリスチレン標準で修正されたGPCで測定された作製された生成物のモル質量は、全て10000〜30000g/モルの範囲内である。
【0128】
作製された生成物の特性を表1に示す。
【0129】
【表1】

x = x1+x2
【0130】
p1値は、DのQ1(重合度)に対応する。
【0131】
サンプル1及び15は、試験したEVAの重合度、つまりp1又はp2望ましい参照サンプルである。
【0132】
サンプル2及び3は、同じ量のポリアクリレートを有するが、共役の数は同じではない。
【0133】
サンプル3は、サンプル2の4倍の数の共役を有し、ポリアクリレートの含有量は同じであるため、共役は4倍短い。
【0134】
共役した2EHAのサンプル2から7では、サンプル4及び5は、他のサンプルより2EHAポリアクリレート含有量が少ない(D欄のモル%参照)。
【0135】
サンプル8から12は、異なったアルキル鎖を有するポリアクリレート同族体を有する。
【0136】
サンプル8は、ポリ(ブチルアクリレート)の共役体を有する。
【0137】
サンプル9は、ポリ(ラウリルアクリレート)の共役体を有する。
【0138】
サンプル10は、[ポリ(ラウリルメタクリレート)(20〜30%)、ポリ(トリデシルメタクリレート)(25〜35%)、ポリ(テトラデシルメタクリレート)(25〜35%)及びポリ(ペンタデシルメタクリレート)(15〜25%)]の混合物である共役体を有する。
【0139】
サンプル11は、[ポリ(ステアリルメタクリレート)(60〜75%)、ポリ(ヘキサデシルメタクリレート)(22〜35%)及びポリ(エイコシルメタクリレート)(<2%)]の混合物である共役体を有する。
【0140】
サンプル12は、[ポリ(ステアリルアクリレート)(40〜46%)、ポリ(エイコシルアクリレート)(8〜44%)及びポリ(ベヘニルアクリレート)(42〜48%)]の混合物である共役体を有する。
【0141】
サンプル13は、2EHAと混合されたC12〜C15メタクリレートの混合共役体を有し、前記混合されたC12〜C15メタクリレートは、[ポリ(ラウリルメタクリレート)(20〜30%)、ポリ(トリデシルメタクリレート)(25〜35%)、ポリ(テトラデシルメタクリレート)(25〜35%)及びポリ(ペンタデシルメタクリレート)(15〜25%)]の混合物である。
【0142】
サンプル14は、ネオデカン酸ビニルで共役されている。
【0143】
サンプル16から19は、P2ポリマーの修飾に対応する。
【0144】
サンプル18はサンプル19と同数の共役を有するが、サンプル18の方がサンプル19より多くのポリアクリレートを有するため、サンプル18の方が長い。
【0145】
[結果]
それらの特性を表2に示した2種のタイプの燃料、Gz1及びGz2に対して、LFT、濾過性(FBT)及び粘度に関する効率試験を行った。
【0146】
その構造のため、P2ポリマーはGz1についてより効果的で、P1ポリマーはGz2についてより効果的である。
【0147】
【表2】

【0148】
Gz1は、硫黄含有量が50ppm未満で、炭素数24超のn−パラフィン類を0.7重量%未満含み、C18〜C23のパラフィン濃度が5%超で、そのTCCが−5℃未満の燃料である。
【0149】
Gz2は、硫黄含有量が5000ppm未満で、炭素数24超のn−パラフィン類を0.7重量%以上含み、そのTCCが−5℃以上の燃料である。
【0150】
LFTは、NF ENI16 ノルムに規定されているように測定する。
【0151】
ポリマーP1及びP2は、140ppm(Gz2)及び210ppm(Gz1)に近い濃度で、LFT効率の急転を示す。修飾されたポリマーのLFT性能をこれら2つの濃度で測定し、対応する出発ポリマーと比較した。
【0152】
ポリマーの粘度を、溶媒トラップを有する、錐体面形状(20mm/2°)のチタンで抑制したレオメータを使用して、30重量%のソバレックス10(芳香族石油留分)で希釈した溶液に関して測定した。
【0153】
FBT(フィルタ閉塞傾向)を、燃料中の添加物の「溶解度測定」に等しいIP387法を使用して測定した。
【0154】
IBT<1.41であると、添加物は、良好に溶解する。
【0155】
結果を表3に示す。
【0156】
【表3】

【0157】
サンプル1から15は、試験したEVAのグレード、つまりP1及びP2の両者用の参照サンプルである。
【0158】
その特性から、LFTに関して、Gz2はGzよりもその効果が「顕著」であることは注目すべきである。
【0159】
サンプル2及び3は、同じ量のポリアクリレートを有するが、共役の数は同じではない。
【0160】
サンプル3は、サンプル2の4倍の数の共役を有し、ポリアクリレートの含有量は同じであるため、共役は4倍短い。
【0161】
LFTに関しては、サンプル2は両者のタイプの蒸留物(Gz1及びGz2)に関して効果的であるが、一方サンプル3はGz1でのみ効果的であることが分かる。
【0162】
実際のところ、P1への共役度(B>7.5モル%)が高過ぎると、出発ポリマーの初期構造を強く修飾して、Gz2でより明確であるように、その効果を落とすことがある。
【0163】
両者とも、高溶解性(FBT<1.41)である。
【0164】
その多くの共役のため、サンプル3は、出発ポリマーP1より遥かに流動性が高いという利点がある。
【0165】
共役した2EHAサンプル(2から7)のうち、サンプル4及び5は、他のサンプルよりポリアクリレートの含有量が小さい(D欄のモル%参照)が、ポリアクリレート含有量が小さくても、LFT、溶解性(FBT<1.41)及び粘度に関して効果が観察される。
【0166】
C基の存在下で効果を調べると(両者は同じ量のポリアクリレートについて、同数の共役を有するため、サンプル7はサンプル6と比較できる)、Cが存在すると、Gz1中のLFT効果が消滅し(サンプル6では140ppm以上で効果があり、一方サンプル7では210ppm未満で効果が観察できない)、より重要なことは、Gz2で効果が落ちることである。
【0167】
サンプル8から12は、異なったアルキル鎖を有するポリアクリレート共役体を具有している。
【0168】
これらは、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)の共役体を有するサンプル2と比較できる。
【0169】
サンプル8のLFT効果はGz1では消滅し、サンプル11及び12はGz1では一切効果がないことが分かる。共役アクリル酸エステルのアルキル鎖が15個を超える炭素原子を有する前記サンプルは、「種付け」用としては機能せず、パラフィンを可溶化するという点で、曇り点用添加剤ちしてより活性である。
【0170】
従って、LFTに関して最も効果的なサンプルは、アルキル鎖がC6からC15のポリ(アルキルメタクリレート)共役体である。サンプル12は別にして、前記サンプルは全て良好に溶解する(FBT<1.41)。共役ポリマーの粘度は、2−エチルヘキシルポリアクリレート及びラウリルポリアクリレートの共役体で最小である。結晶性のより高いn−アルキルポリ(メタ)アクリレートを含むサンプル11及び12は、より粘性が高い。C16からC22のポリ(メタ)アクリレートを共役化しても、出発ポリマーの粘度は減少しない。
【0171】
サンプル13は、Gz1及びGz2でLFTに関して、高い効果がある(FBT<1.41)。
【0172】
サンプル14は、ビニルネオデカノエートで共役化する、そのLFT効果はGz1で消滅するが、Gz2では良好に機能する。一方、それはP1より粘度が高い。
【0173】
サンプル16から19のうち、サンプル18のみはLFTに関して機能しない。サンプル19と比較すると、サンプル18は同数の共役を有するが、鎖が長い(サンプル18は、サンプル19より、多くのポリアクリレートを含むから)。従って所定数の共役を超えられない(つまりポリアクリレートの最大量)共役サイズがある。
【0174】
全てのサンプルは可溶性(FBT<1.41)であるが、P2に関しては粘度の改良は見られない。
【0175】
粘度の改良は、10/s未満のせん断力でのみ見られ、例えば揺変性であるP2と異なりニュートン挙動を示すサンプル19で見られる。P1ポリマーは揺変性が小さいことに注意すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)「n」が45から650の整数である、構造A:−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、
b)「m」が5から110の整数である、少なくとも1つの構造B:- (CH2-CHOCOR1)m-x- の基で、R1が直鎖又は分枝のアルキル基(C1-C15)から成る群から選択される少なくとも1種の残基であり、
c)「x1」が0から0.95xである、構造C:- (CH2-CHOH)x1-の基、
d)x2はゼロでなく、0.05xからxの範囲で、好ましくはx2はxに等しい、少なくとも1種の構造D:- (CH2-CHG)x2- 又はD´: 2C(OCOCH3)Q)x2-
を含み、
ここで、Gは、G1,G2又はG3の構造の基に対応し、
G1は-OCOCHCH3Q-の構造に対応し、
G2は-OCOCH2Q-の構造に対応し、
G3は-OCOCH2SQ-の構造に対応し、
ここで、Qは、
−p1が1から800の範囲である構造Q1:-(CH2-CZCOORq1)p1-Xq、又は
−p2が1から100の範囲である構造Q2:-(CH2-CZOCORq2)p2-Xq であり、
ここでXは、ハロゲン原子、好ましくは臭素又はヨウ素を示し、「q」は0から1の範囲であり、Zは水素原子又はCH3基に対応し、Rq1又はRq2は飽和又は不飽和のC1-C30 、好ましくはC4-C15、更にC6-C15であることが望ましく、より望ましくはC6-C12であり、更により望ましくはアクリル酸2−エチルヘキシルである直鎖又は分枝のアルキル基に対応し、
コポリマーにおいて、x = x1 + x2 で、xは0.25から55の範囲で、
ポリマー中のA基のモル%は、29〜97モル%で、
ポリマー中のB基のモル%は、1〜20モル%で、
ポリマー中のC基のモル%は、0〜10モル%で、
ポリマー中のD又はD´基のモル%は、0.6〜64モル%で、
D又はD´基中のQのモル%は、8.2〜99モル%であり、
モル質量が10000g/モルを超える共役エチレン−ビニルエステルコポリマー。
【請求項2】
a)「n」が45から650、好ましくは75から520の整数である、構造A:−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、
b)「m」が5から110、好ましくは10から75の整数である、少なくとも1つの構造B:- (CH2-CHOCOR1)m-x- の基で、R1が直鎖又は分枝のアルキル基(C1-C15)から成る群から選択される少なくとも1種の残基、
c)「x1」が0から0.95x、好ましくは0である、構造C:- (CH2-CHOH)x1-の基、
d)少なくとも1種の構造D:- (CH2-CHG)x2- で、x2はゼロでなく、0.05xからxの範囲で、好ましくはx2はxに等しく、Gは、構造G1:-OCOCHCH3Q-に対応し、ここでQは、
−p1が1から800、好ましくは1から50の範囲である構造Q1、:(CH2-CZCOORq1)p1-Xq、又は
−p2が1から100、好ましくは1から10の範囲である構造Q2:-(CH2-CZOCORq2)p2-Xq であり、
ここでXは、ハロゲン原子、好ましくは臭素又はヨウ素を示し、「q」は0から1の範囲であり、Zは水素原子又はCH3基に対応し、Rq1又はRq2は飽和又は不飽和のC1-C30 、好ましくはC4-C15、更にC6-C15、であることが望ましく、より望ましくはC6-C12 であり、更により望ましくはアクリル酸2−エチルヘキシルである直鎖又は分枝のアルキル基に対応し、
コポリマーにおいて、x = x1 + x2 で、xは0.25から55、好ましくは0.5から40の範囲で、
ポリマー中のA基のモル%は、29〜97モル%、好ましくは54〜90モル%で、
ポリマー中のB基のモル%は、1〜20モル%、3.5〜11モル%で、
ポリマー中のC基のモル%は、0〜10モル%、好ましくは0モル%で、
ポリマー中のD基のモル%は、0.6〜64モル%、2.3〜42モル%で、
D中のQは、8.2〜99モル%、好ましくは35〜98.7モル%であり、
モル質量が10500〜30000g/モルである請求項1記載の共役エチレン−ビニルエステルコポリマー。
【請求項3】
Qは、構造基Q1:-(CH2-CZCOORq1)p1-Xqを表し、ここでqは0、p1は1から50の範囲である請求項1又は2記載のポリマー。
【請求項4】
q1 は、飽和又は不飽和のC6-C15 、好ましくはC6-C12 、更に好ましくはアクリル酸2−エチルヘキシルである、直鎖又は分枝のアルキル基に対応する請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
Qは、構造基Q2:-(CH2-CZOCORq2)p2-Xq を表わし、ここでqは0、p2は1から10の範囲で、ZはHであり、Rq2は、C5からC25、好ましくはC5からC15の分枝アルキル基で、分枝は、アルキル基の任意の点、好ましくはアルキル鎖の2位又は3位、より好ましくは3級炭素を形成する位置に存在する請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
OCORq2基は、ピルビン酸エステル、イソペンタン酸エステル、イソヘキサン酸エステル、2-エチルヘキサン酸エステル、イソノナン酸エステル、イソドデカン酸エステル、イソトリデカン酸エステル、ネオノナン酸エステル、ネオドデカン酸エステル又はネオウンデカン酸エステルから成る群から選択される請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
OCORq2ラジカルは、植物及び/又は動物由来の脂肪酸で、Rq2基は、C8-C25、好ましくはC12-C15の飽和又は不飽和の直鎖又は分枝のアルキル基を有する請求項5に記載のポリマー。
【請求項8】
構造Bの基は、
a)構造B´の基:-(CH2-CHOCOR'1)m'-xであって、R´1はCH3で、m´は10から75、
b)又は構造B”の基:-(CH2-CHOCOR''1)m''-xで、R''1iが C2H5基で、m”は10から75、
c)又は構造B’’’の基:-(CH2-CHOCOR'''1)m'''-xで、R’’’1は、C5からC15の分枝アルキル基で、分枝は、アルキル基の任意の点、好ましくはアルキル鎖の2位又は3位、より好ましくは3級炭素を形成する位置に存在し、m’’’は10から75の範囲にあり、
又はこれらの混合物、好ましくは基B´及びB”の、又は基B´及びB”’の、又は基B”及びB”’の混合物である請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
nが79から515で、
構造Bの基は、構造B´の基:-(CH2-CHOCOR'1)m'-xを表し、R´1はCH3基で、m´は10から71で、
xは0.5から38で、X1は0で、
Qは、構造Q1の基:- (CH2-CHCOOR)p1-Xqを表し、qは0、p1は1から50の範囲で、
かつRは、飽和又は不飽和のC1-C30 、好ましくはC4-C15の直鎖又は分枝のアルキル基に対応し、
ポリマー中のA基のモル%は、54〜90モル%で、
ポリマー中のB基のモル%は、3.5〜11モル%で、
ポリマー中のC基のモル%は、0モル%で、
ポリマー中のD基のモル%は、2.3〜42モル%で、
D基中のQのモル%は35〜98.7モル%である、
請求項1から8までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
j)a)構造A:−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基と、
b)少なくとも1つの構造B:- (CH2-CHOCOR1)m- の基(R1は、直鎖又は分枝アルキル基C1-C15、CH2SH又はCH2I基から成る群から選択される少なくとも1種の残基であり、「n」及び「m」は、出発のポリマーの平均分子量(Mn)が3000から20000g/モルになるように調節される)
を含む出発のエチレン−ビニルエステルポリマーを供給し、続いて、
jj)遊離ラジカルを導入して、M1:CH2=CZCOOR、又はM2:CH2=CZOCORの重合可能なモノマーをそのプライミングサイトで、遊離ラジカルで触媒される重合反応を起こさせる(モノマーM1又はM2で、Zは水素原子又はCH3基で、R基は,飽和又は不飽和のC1-C30の直鎖又は分枝のアルキル基で、反応により、プライミングサイトでのQ1基を与えるモノマーM1の重合割合p1が1から800の範囲になり、あるいはプライミングサイトでのQ2基を与えるモノマーM2の重合割合p2が1から100の範囲になる)、
ステップを含む請求項1から9までのいずれか1項に記載の共役ポリマーの製造方法。
【請求項11】
j)a)構造A:−(CH2−CH2n− のエチレン誘導基、
b)少なくとも1つの構造B:- (CH2-CHOCOR1)m- の基(R1は、直鎖又は分枝アルキル基C1-C15から成る群から選択される少なくとも1種の残基であり、「n」及び「m」は、出発のポリマーの平均分子量(Mn)が3000から20000g/モルになるように調節される)
を含む出発のエチレン−ビニルエステルポリマーを供給し、続いて、
jj)加水分解可能なサイトの50%以下、好ましくは該サイトの20%未満の加水分解率となるようにB基に存在するアルキルエステルの部分加水分解を行い、続いて、
jjj) 構造:XOC-CH2-jXj-CH3のハロゲン酸のハロゲン化物(jは1又は2、Xはハロゲン原子、好ましくはClを示す)を使用して、これらのサイトの部分的なエステル化を、エステル化効率が50%を超え、好ましくは100%になるように行い、次いで、
jjjj)ハロゲン原子を有するサイトで、構造M1:CH2=CZCOOR,又は構造M2:CH2=CZOCORのモノマー(モノマー中、Zは水素原子又はCH3基で、R基は,飽和又は不飽和のC1-C30の直鎖又は分枝のアルキル基)を、反応により、プライミングサイトでのQ1基を与えるモノマーM1の重合割合p1が1から50の範囲になり、あるいはプライミングサイトでのQ2基を与えるモノマーM2の重合割合p2が1から6の範囲になるように重合させる、
ステップを含む請求項10記載の共役ポリマーの製造方法。
【請求項12】
ステップjjjj)が、好ましくはCuBrのような銅ハロゲン化物のような遷移金属と窒素含有配位子を含む触媒システムの存在下で、原子移動ラジカル重合(ATRP)を行うことにより達成される請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
遊離ラジカル開始剤の存在下、遊離ラジカルで介在する重合により、ステップjjjj)が行われる請求項11記載の製造方法。
【請求項14】
ステップjj)の後に、ステップjj)で生成したコポリマーの部分加水分解アルコール基へ、構造:TOC-(CH2-CHCOOR)p1-(p1及びRは前記定義通りで、Tは。特にClであるハロゲン原子、又はOH基)の官能基化されたポリアクリレートの共役を行うことを含むステップkkk)を有する請求項11記載の製造方法。
【請求項15】
前記プライミングサイトでのM1又はM2モノマーの重合により生成するコポリマーQ1又はQ2の共役効率が、10から80重量%、好ましくは15から70重量%である請求項10から13までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のコポリマーを製造するための請求項10から14までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
好ましくは濃度50重量%超、より好ましくは60から80重量%である、炭化水素蒸留物の請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリマーの濃厚溶液。
【請求項18】
請求項17記載の濃厚溶液を、中間蒸留分タイプの炭化水素の濾過性及び流動性を改良するための添付物として使用する方法。
【請求項19】
炭素原子18個超を含むn―パラフィンを4重量%超の濃度で有する炭化水素を対象とする請求項18記載の使用方法。
【請求項20】
ディーゼルエンジン燃料又は国内用加熱油のベースとして使用する請求項17に記載の濃厚溶液の使用方法。
【請求項21】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の共役ポリマーを含む液体炭化水素の低温濾過性及び流動性を改良するための二重目的の添加物。
【請求項22】
硫黄含有量が5000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは50ppm未満である中間蒸留物タイプの炭化水素留分である少なくとも1つの主要成分と、請求項21記載の、少なくとも1つの、二重目的である濾過性及び流動性を有する少量成分を含む中間蒸留物。
【請求項23】
主要成分が、150〜450℃で沸騰し、結晶化開始温度Tccが、−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃である蒸留物から構成され、かつ直接蒸留で得られる蒸留物、減圧蒸留物、水素化処理蒸留物、減圧蒸留物の接触分解及び/又は水素化分解で得られる蒸留物、ARDS(常圧残油脱硫)変換及び/又は粘度低下プロセスで得られる蒸留物、フィッシャー−トロピッシュ留分の回収で得られる蒸留物、植物及び/又は動物由来の生物的物質単独又は組み合わせ、及び植物及び/又は動物由来の液体のエステルのBTL(バイオマスから液体)変換で得られる蒸留物、又はこれらの組み合わせを含む請求項22記載の蒸留物。
【請求項24】
炭素原子18個超を含むn―パラフィンを4重量%超の濃度で有する請求項23記載の蒸留物。
【請求項25】
炭素原子24個超を含むn―パラフィンを0.7%以上有する請求項23又は24記載の蒸留物。
【請求項26】
炭素原子24個から40個を含むn―パラフィンの重量含有量が、0.7%から2%である請求項23から25までのいずれか1項に記載の蒸留物。
【請求項27】
硫黄0〜500ppmと、請求項22から25までのいずれか1項に記載の、少なくとも1つの蒸留物を含むディーゼル燃料。
【請求項28】
主要成分が、少なくとも1つの、請求項21記載の二重目的である濾過性及び流動性用添加物を10〜5000ppmと、これに混合可能な、洗剤、分散剤、反乳化剤、反発泡剤、殺虫剤、脱臭剤、ケタン改良剤、防食剤、及び摩擦、潤滑、燃焼、曇り点、流動点、沈殿及び導電性の改良剤を含む請求項27に記載の燃料。
【請求項29】
硫黄1〜5000ppmと、少なくとも1つの、請求項22から26までのいずれか1項に記載の蒸留物を含む加熱用燃料。
【請求項30】
少なくとも1つの、請求項22から26までのいずれか1項に記載の蒸留物を含む重油。

【公表番号】特表2010−534733(P2010−534733A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517455(P2010−517455)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001119
【国際公開番号】WO2009/044021
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(507289243)
【Fターム(参考)】