説明

グランドピアノのダンパーホルダ

【課題】 ホルダ本体と弦との間隔を適切かつ容易に調整でき、それにより、ダンパーの適正な動作を確保することができるグランドピアノのダンパーホルダを提供する。
【解決手段】 鍵2の押鍵および離鍵に伴って水平に張られた弦Sに対して離接することによって、弦Sの振動による発音を許容および停止するダンパー21を案内するグランドピアノのダンパーホルダ1であって、弦Sの下方に設けられた基部31と、ダンパーワイヤ21cが通されたガイド孔33bを有し、基部31に設けられ、鍵2の押鍵および離鍵に伴って上下方向に移動するダンパー21を、ガイド孔33bを介して案内するホルダ本体33と、ホルダ本体33を基部31に対して上下方向の任意の位置に位置決めする手段32と、ホルダ本体33を、位置決め手段により位置決めされた状態で、基部31に固定する手段34と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押鍵に伴って作動するダンパーを、ダンパーワイヤを介して案内するグランドピアノのダンパーホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダンパーホルダとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このダンパーホルダは、グランドピアノの一般的なダンパーホルダと同様に構成され、鍵盤の後方に設けられており、通常、響板の上面前端部に設けられた複数の脚と、弦から所定の間隔を隔てるように複数の脚に取り付けられたホルダ本体(ダンパーガイドレール)を備えている。このホルダ本体には、上下方向に貫通するガイド孔が形成されている。
【0003】
また、グランドピアノのダンパーは、ピアノの中低音域に鍵ごとに設けられており、鍵の後方に設けられたダンパーレバーと、下端部においてダンパーレバーに連結され、弦と弦の間を通ってそれらの上方に延びる細長いダンパーワイヤと、ダンパーワイヤの上端部に取り付けられ、自重により弦を上方から押圧するダンパーヘッドを備えている。ダンパーワイヤは、上述したホルダ本体のガイド孔に通されており、押鍵に伴い、ダンパーヘッドは、ダンパーレバーおよびダンパーワイヤを介して上方に駆動され、弦から離れることによって、弦の振動による発音が許容される。その際、ダンパーは、ダンパーワイヤおよびホルダ本体のガイド孔を介して、上下方向に案内される。
【0004】
上述したように、ダンパーワイヤは上下方向に細長く延びているので、ダンパーヘッドを適正に動作させるためには、ダンパーワイヤを案内するホルダ本体を、ダンパーヘッドにできるだけ近い位置に配置することが好ましい。一方、振動する弦がホルダ本体に接触しないようにするために、ホルダ本体と弦との間にある程度の間隔を確保する必要がある。このため、従来、響板に取り付ける前に、脚の上面を治具などを用いながら切削することにより、ホルダ本体の高さを調整することが行われている。しかし、前述したように、響板とホルダ本体の間には複数の脚が設けられているので、ホルダ本体と弦の間の間隔を調整するためには、上記のような切削加工をすべての脚に対して行わなければならず、調整作業が非常に煩雑になってしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ホルダ本体と弦との間隔を適切かつ容易に調整でき、それにより、ダンパーの適正な動作を確保することができるグランドピアノのダンパーホルダを提供することを目的としている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−312272号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、上下方向に延びるダンパーワイヤを一体に有し、鍵の押鍵および離鍵に伴って上方および下方にそれぞれ移動することにより、水平に張られた弦に対して離接することによって、弦の振動による発音を許容および停止するダンパーを、ダンパーワイヤを介して案内するグランドピアノのダンパーホルダであって、弦の下方に設けられた基部と、ダンパーワイヤが通されたガイド孔を有し、基部に設けられ、鍵の押鍵および離鍵に伴って上下方向に移動するダンパーを、ガイド孔を介して案内するホルダ本体と、ホルダ本体を基部に対して上下方向の任意の位置に位置決めする位置決め手段と、ホルダ本体を、位置決め手段により位置決めされた状態で、基部に固定する固定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
このグランドピアノのダンパーホルダによれば、水平に張られた弦の下方に設けられた基部に、ホルダ本体が設けられている。ダンパーは、ホルダ本体に設けられたガイド孔、およびこれに通されたダンパーワイヤを介して案内されながら、押鍵に伴って上方に移動し、弦から離れることによって、弦の振動による発音を許容するとともに、離鍵に伴って下方に移動し、弦に当接することによって、発音を停止する。
【0009】
また、ホルダ本体は、位置決め手段により、基部に対して上下方向の任意の位置に位置決めされ、その状態で、固定手段によって基部に固定される。このように、ホルダ本体を基部対して上下方向の任意の位置に位置決めすることによって、ホルダ本体と弦との間の間隔が調整される。したがって、従来のような、ホルダ本体の高さを調整するための脚の切削加工が不要になり、ホルダ本体と弦との間の間隔を、従来よりも容易に調整することができる。その結果、ホルダ本体を、振動する弦との接触を回避しながら、ダンパーにできるだけ近い所望の位置に配置できるので、ダンパーの適正な動作を確保することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のグランドピアノのダンパーホルダにおいて、ホルダ本体は取付け孔を有し、位置決め手段は、つば部と、つば部よりも上側のボルト部および下側のねじ込み部とを有し、ボルト部がホルダ本体の取付け孔に通され、かつつば部がホルダ本体に下方から当接した状態で、基部にねじ込まれたねじ込み部のねじ込み量によって、ホルダ本体を基部に対して上下方向に位置決めする位置決め用ねじで構成され、固定手段は、位置決め用ねじのボルト部にねじ込まれ、締め付けられた固定ナットで構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、位置決め用ねじのねじ込み部は、基部にねじ込まれており、つば部はホルダに当接し、ボルト部は、ホルダ本体に設けられた取付け孔に通され、ホルダ本体の上方に突出している。したがって、基部へのねじ込み部のねじ込み量を調整することにより、ホルダ本体が基部に対して上下方向の任意の位置に位置決めされる。そして、ホルダ本体から突出したボルト部に固定ナットをねじ込み、締め付けることにより、ホルダ本体は、つば部と固定ナットの間に挟み付けられた状態で、位置決め用ねじを介して基部に固定されている。
【0012】
したがって、基部への位置決め用ねじのねじ込み量を変化させるだけで、ホルダ本体と弦との間の間隔を、所望の値に容易に調整することができる。また、ホルダ本体は、位置決め用ねじおよび固定ナットだけで基部に固定されるので、従来の脚を省略することができ、ダンパーホルダの組立て作業をより容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるグランドピアノのダンパーホルダ1と、グランドピアノの左右方向に並んだ複数の鍵2(1つのみ図示)と、アクション3などを、離鍵状態において示している。なお、以下の説明では、演奏者側から見たときのグランドピアノの手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0014】
棚板4上には筬5が設けられている。この筬5は、前側から順に筬前(図示せず)、筬中5aおよび筬後5bを有しており、筬中5aにはバランスピン5cが鍵2ごとに立設されている。鍵2は、白鍵および黒鍵(図示せず)で構成されており、前後方向(図1の左右方向)に延び、その中央において、バランスピン5cを介して筬中5aに回動自在に支持されている。また、鍵2の後端部は、離鍵状態において、筬後5bに着座している。
【0015】
また、筬5には、左右方向に並設された複数のブラケット6(1つのみ図示)が設けられており、これらのブラケット6の間にはハンマーシャンクレール7が渡されている。ハンマーシャンクレール7には、ハンマーシャンクフレンジ8が鍵2ごとに設けられており(1つのみ図示)、各ハンマーシャンクフレンジ8には、ハンマー9が回動自在に支持されている。
【0016】
ハンマー9は、前後方向に延びるハンマーシャンク9a、およびその後端部に設けられたハンマーへッド9bを有しており、ハンマーヘッド9bは、上方に水平に張られた弦Sに対向している。ハンマーシャンク9aの下面の前端部には、シャンクローラ9cが設けられている。
【0017】
アクション3は、鍵2の後部の上方に設けられており、ウィッペン11と、ウィッペン11に回動自在に取り付けられたジャック12およびレペティションレバー13などを、鍵2ごとに有している(いずれも1つのみ図示)。また、複数のブラケット6の間には、ウィッペンレール10が渡されており、ウィッペン11は、このウィッペンレール10にねじ止めされたウィッペンフレンジ10aに、回動自在に支持されている。ウィッペン11の前後方向の中央には、下方に突出するヒール部11aが設けられており、ウィッペン11は、このヒール部11aを介して、鍵2の後部に設けたキャプスタンスクリュー2dに載置されている。
【0018】
レペティションレバー13は、斜め前上がりに前後方向に延びており、その中央において、ウィッペン11に回動自在に取り付けられている。レペティションレバー13の前部には、上下方向に貫通するジャック案内孔13aが形成されており、ハンマー9は、このレペティションレバー13のジャック案内孔13a付近に、シャンクローラ9cを介して載置されている。また、レペティションレバー13の前端部は、前述したハンマーシャンクフレンジ8の下面に設けられたドロップスクリュー8aに、下方から対向している。
【0019】
ジャック12はL字状に形成されており、その角部において、ウィッペン11の前端部に回動自在に取り付けられている。また、ジャック12の上端部は、レペティションレバー13のジャック案内孔13aに係合するとともに、レペティションレバー13に載置されたシャンクローラ9cに、若干の間隔を存して対向している。
【0020】
鍵2の後方には、左右方向に延びるダンパーレバーレール15が設けられている。このダンパーレバーレール15には、ダンパーレバーフレンジ15aが、中低音域の鍵2ごとにねじ止めされており、各ダンパーレバーフレンジ15aには、ダンパー21が設けられている。
【0021】
ダンパー21は、ダンパーレバーフレンジ15aに取り付けられたダンパーレバー21aと、その前部に取り付けられたダンパーワイヤフレンジ21bと、ダンパーワイヤフレンジ21bから上方に延びるダンパーワイヤ21cと、ダンパーワイヤ21cに取り付けられたダンパーヘッド21dを有している。
【0022】
ダンパーレバー21aは、前後方向に延び、後端部においてダンパーレバーフレンジ15aに回動自在に支持されるとともに、リフティングレール16に載置されており、前端部が鍵2の後端部に上方から対向している。また、ダンパーワイヤフレンジ21bは、ダンパーレバー21aに回動自在に取り付けられており、ダンパーワイヤ21cは、このダンパーワイヤフレンジ21bから、隣り合う弦S、Sの間を通ってそれらの上方まで延びている。また、ダンパーヘッド21dはダンパーワイヤ21cの上端部に取り付けられ、その下面に貼り付けられた前後2つのダンパーフェルト21e、21eを有しており、離鍵状態において、ダンパーフェルト21e、21eを介して上方から弦Sに当接している。
【0023】
また、ダンパーホルダ1は、アクション3の後方に設けられており、図2および図3に示すように、響板31(基部)と、その上面前端部に設けられた複数の位置決め用ねじ32(位置決め手段)と、この位置決め用ねじ32を介して響板31に取り付けられた複数のダンパーワイヤガイドホルダ(以下、単に「ガイドホルダ」という)33(ホルダ本体)などを備えている。
【0024】
響板31は、弦Sの振動を空気振動に変換し、ピアノ音を発生させるためのものであり、例えばスプルスなどの木質材で構成されるとともに、弦Sの下方に配置され、打ち廻し17の上面に接着されている。また、図4に示すように、位置決め用ねじ32は、中央のつば部32aと、このつば部32aよりも上側のボルト部32bおよび下側のねじ込み部32cを一体に有している。ボルト部32bは、後述する固定ナット34を取り付けるためのものであり、その上面には、溝32dが形成されている。また、ねじ込み部32cは、木ねじで構成されており、位置決め用ねじ32が、溝32dを介してドライバで回されることにより、響板31にねじ込まれている。このねじ込み部32cのねじ込み部位は、各弦Sと左右方向にずれており、それにより、押鍵に伴って振動する弦Sが、位置決め用ねじ32に接触しないようになっている。また、ねじ込み部32cの先端部は、響板31を貫通し、これを取り付けた打ち廻し17まで達している。
【0025】
ガイドホルダ33は、例えば低音域および中音域のそれぞれに分割して設けられており、木質材で構成され、左右方向に延びている。各ガイドホルダ33は、前後方向に長い長方形状の断面を有しており、その後部寄りの所定の部位に、上下方向に貫通する複数の取付け孔33aが、左右方向に並んで形成されている。各取付け孔33aには、位置決め用ねじ32のボルト部32bが下方から通され、上方に突出しており、ガイドホルダ33はつば部32aに当接している。また、ボルト部32bには固定ナット34がねじ込まれ、締め付けられている。それにより、ガイドホルダ33は、つば部32aと固定ナット34によって挟み付けられた状態で、位置決め用ねじ32を介して、響板31に固定されている。
【0026】
このように固定されたガイドホルダ33の前部は、響板31よりも前側に突出しており、その所定の部位には、上下方向に貫通する複数のガイド孔33bが、左右方向に並ぶように形成されている。各ガイド孔33b内には、ホルダブッシングクロス(図示せず)が取り付けられている。ダンパーワイヤ21cは、ホルダブッシングクロスを介してガイド孔33bに通されている。
【0027】
以上の構成によれば、例えば固定ナット34を取り付ける前に、響板31へのねじ込み部32cのねじ込み量を調整することによって、ガイドホルダ33と響板31の間の間隔が無段階に調整される。それに応じて、ガイドホルダ33と上方の弦Sとの間の間隔Dもまた、無段階に調整される。この間隔Dは、押鍵に伴って振動する弦Sがガイドホルダ33に接触せず、且つ上方のダンパーヘッド21dにできるだけ近い所定の値(例えば7mm)に設定されている。そして、間隔Dの調整が終了した後、固定ナット34をボルト部32bにねじ込み、締め付けることによって、ガイドホルダ33は響板31に固定される。また、このような間隔Dの調整は、固定ナット34を緩め、位置決め用ねじ32に取り付けた状態のまま、行うことも可能である。
【0028】
次いで、押鍵に伴うアクション3やダンパー21などの動作を簡単に説明する。図1に示す離鍵状態から鍵2が押鍵されると、ウィッペン11が、鍵2で突き上げられることにより上方に回動し、それと一緒にジャック12およびレペティションレバー13が上方に移動する。この移動に伴い、レペティションレバー13が、シャンクローラ9cを介してハンマー9を押し上げる。押鍵がさらに進むと、レペティションレバー13の前端部がドロップスクリュー8aに係合することにより、レペティションレバー13の上方への移動が規制される一方、ジャック12は、さらに上方に移動することにより、シャンクローラ9cを介してハンマー9を突き上げ、上方に回動させる。
【0029】
一方、ダンパー21は、押鍵に伴って回動する鍵2の後端部で突き上げられることにより、作動する。具体的には、ダンパーレバー21aが、同図の反時計方向に回動し、それと一緒にダンパーワイヤフレンジ21b、ダンパーワイヤ21cおよびダンパーヘッド21dが上方に移動することによって、ダンパーヘッド21dが弦Sから離れる。この移動の際、ダンパー21は、ガイド孔33bおよびダンパーワイヤ21cを介して案内される。そして、この状態で、上方に回動したハンマー9が弦Sを打弦し、弦Sの振動による発音が許容される。
【0030】
そして、鍵2が離鍵され、押鍵時と逆方向に回動することにより、ダンパー21は、ガイド孔33cおよびダンパーワイヤ21cを介して案内されながら、自重により下方に移動する。それにより、ダンパーヘッド21dが弦Sに当接し、これを押圧することによって、弦Sの振動による発音が停止される。
【0031】
以上のように、本実施形態のダンパーホルダ1によれば、ガイドホルダ33を響板31に対して上下方向の任意の位置に位置決めすることによって、ガイドホルダ33と弦Sとの間の間隔Dが無段階に調整される。したがって、従来のような、ガイドホルダ33の高さを調整するための脚の切削加工が不要になり、ガイドホルダ33と弦Sとの間の間隔Dを、従来よりも容易に調整することができる。その結果、ガイドホルダ33を、振動する弦Sとの接触を回避しながら、ダンパーヘッド21dにできるだけ近い所望の位置に容易に配置でき、ダンパー21の適正な動作を確保することができる。
【0032】
また、響板31への位置決め用ねじ32のねじ込み量を変化させるだけで、ガイドホルダ33と弦Sとの間の間隔Dを、所望の値に容易に調整することができる。さらに、ガイドホルダ33は、位置決め用ねじ32および固定ナット34だけで響板31に固定されるので、従来の脚を省略することができる。また、位置決め用ねじ32のねじ込み量の調整を、位置決め用ねじ32の上面に形成した溝32dを介して、作業を行いやすい上方のスペースから行えるので、この調整作業をより容易に行うことができる。
【0033】
図5は、ダンパーホルダの変形例を示している。このダンパーホルダ61では、位置決め用ねじ32のボルト部32eの長さは、第1実施形態のボルト部32bよりも短く、ガイドホルダ33の厚さよりも若干、大きい。また、このダンパーホルダ61では、六角形の固定ナット34に代えて、円形の固定ナット64(固定手段)が用いられている。図6に示すように、この固定ナット64の上面には、その中心のねじ孔64aからずれた位置に、溝64bが形成されている。また、ガイドホルダ33の上面には、取付け孔33aと同心状に、断面円形の凹部33cが形成されている。
【0034】
固定ナット64は、ボルト部32eにねじ込まれ、溝64bを介してドライバで締め付けられており、凹部33cにほぼ収容されるとともに、その底面に当接している。それにより、ガイドホルダ33は、つば部32aと固定ナット64によって挟み付けられた状態で、位置決め用ねじ32を介して、響板31に固定されている。また、固定ナット64およびボルト部32eは、ガイドホルダ33から上方に若干、突出している。
【0035】
以上のように、この変形例によれば、ボルト部32eおよび固定ナット64がガイドホルダ33の凹部33cに収容されていて、ガイドホルダ33からの突出長さが非常に小さいので、これらと振動する弦Sとの接触を確実に回避でき、ガイドホルダ33を、ダンパーヘッド21dにさらに近い位置に配置することができる。また、位置決め用ねじ32のねじ込み量の調整だけでなく、固定ナット64の締付けを、溝64bを介して、スペースに比較的余裕のある上方から行えるので、ガイドホルダ33の取付け作業をより容易に行うことができる。
【0036】
図7は、第2実施形態によるダンパーホルダ41を示している。このダンパーホルダ41は、前述した第1実施形態のダンパーホルダ1と同様の響板31およびガイドホルダ33を備えている。また、ガイドホルダ33の裏面には、複数のねじ取付け部材42が、左右方向に間隔を隔てて配置され、固定されている(2つのみ図示)。
【0037】
各ねじ取付け部材42は、ブロック状に形成されており、その左端部には、位置決め用ねじ43(位置決め手段)が下方からねじ込まれている。この位置決め用ねじ43の頭部43aは、丸みを持った曲面形状を有しており、響板31に当接している。
【0038】
また、ねじ取付け部材42の位置決め用ねじ43の右側には、上下方向に貫通する取付け孔42aが形成され、ガイドホルダ33には、この取付け孔42aに連続するとともに上下方向に貫通する取付け孔33aが形成されている。これらの取付け孔33a、42aには、固定ねじ44(固定手段)が上方から通され、響板31および打ち廻し17にねじ込まれている。これにより、ガイドホルダ33は、ねじ取付け部材42および位置決め用ねじ43を介して、固定ねじ44によって響板31に固定されている。
【0039】
以上の構成によれば、ガイドホルダ33を固定ねじ44で響板31に固定する前に、ねじ取付け部材42への位置決め用ねじ43のねじ込み量を調整するだけで、響板31に対するガイドホルダ33の上下方向の位置を無段階に容易に調整することができる。それにより、ガイドホルダ33と弦Sとの間の間隔Dを、適切かつ容易に調整することができる。
【0040】
図8は、第3実施形態によるダンパーホルダ51を示している。このダンパーホルダ51は、前述した第1および第2実施形態のダンパーホルダ1、41と同様の響板31およびガイドホルダ33を備えている。また、ガイドホルダ33の裏面には、合成樹脂または金属から成る複数のねじ取付け部材52が、左右方向に間隔を隔てて配置され、固定されている(1つのみ図示)。
【0041】
ねじ取付け部材52の左右の端部には、その厚さの半分程度の深さを有する凹部52a、52aが形成されている。また、ガイドホルダ33には、これらの凹部52a、52aに連続するとともに上下方向に貫通する貫通孔33b、33bが形成されている。また、各凹部52aの底部には、これを貫通するねじ孔52bが形成されている。このねじ孔52bに、位置決め用ねじ53(位置決め手段)がねじ込まれており、その上部は凹部52aに収容されている。
【0042】
また、この位置決め用ねじ53は、その上面に形成された溝53aを有し、この溝53aを介してドライバで回されることにより、ねじ孔52bにねじ込まれている。位置決め用ねじ53の下部は、ねじ取付け部材52から下方に突出し、響板31に当接している。
【0043】
また、ねじ取付け部材52の左右の凹部52a、52aの間には、上下方向に貫通する取付け孔52cが形成されている。また、ガイドホルダ33には、この取付け孔52cに連続するとともに、上下方向に貫通する取付け孔33cが形成されている。これらの取付け孔33c、52cには、固定ねじ54(固定手段)が上方から通され、響板31および打ち廻し17にねじ込まれている。これにより、ガイドホルダ33は、ねじ取付け部材52および位置決め用ねじ53、53を介して、固定ねじ54によって響板31に固定されている。
【0044】
以上の構成によれば、ガイドホルダ33を固定ねじ54で響板31に固定する前に、左右のねじ孔52b、52bへの位置決め用ねじ53、53のねじ込み量を調整するだけで、ガイドホルダ33の響板31に対する上下方向の位置を無段階に容易に調整することができる。それにより、ガイドホルダ33と弦Sとの間の間隔Dを適切かつ容易に調整することができる。
【0045】
なお、本発明は、説明した第1〜第3実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1実施形態では、固定手段として、六角形の固定ナット34を用いているが、これに代えて、変形例の円形の固定ナット64を用いてもよい。また、これとは逆に、変形例において、固定ナット64に代えて、第1実施形態の固定ナット34を用いてもよい。
【0046】
また、第3実施形態では、位置決め手段として、響板31に当接する位置決め用ねじ53を用いているが、響板31の上面に、響板31よりも硬度の大きな材質で構成されたねじ受けを設け、このねじ受けに位置決め用ねじ53を当接させるようにしてもよい。それにより、固定ねじ54をねじ込む際、位置決め用ねじ53が響板31に食い込むのを防止でき、その結果、ガイドホルダ33の高さをより正確に位置決めできるとともに、響板31の変形による音響的な特性への悪影響を回避することができる。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態によるグランドピアノのダンパーホルダ、ダンパー、鍵およびアクションなどを、離鍵状態において示す側面図である。
【図2】図1のダンパーホルダおよびその付近を示す部分拡大側面図である。
【図3】ダンパーホルダを部分的に示す断面図である。
【図4】位置決め用ねじおよび固定ナットを示す斜視図である。
【図5】図1のダンパーホルダの変形例を示す側面図である。
【図6】変形例の位置決め用ねじおよび固定ナットを示す斜視図である。
【図7】第2実施形態によるダンパーホルダを部分的に示す断面図である。
【図8】第3実施形態によるダンパーホルダを部分的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ダンパーホルダ
31 響板(基部)
32 位置決め用ねじ(位置決め手段)
32a つば部
32b ボルト部
32c ねじ込み部
33 ダンパーワイヤガイドホルダ(ホルダ本体)
33a 取付け孔
34 固定ナット(固定手段)
41 ダンパーホルダ
43 位置決め用ねじ(位置決め手段)
44 固定ねじ(固定手段)
51 ダンパーホルダ
53 位置決め用ねじ(位置決め手段)
54 固定ねじ(固定手段)
61 ダンパーホルダ
64 固定ナット(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるダンパーワイヤを一体に有し、鍵の押鍵および離鍵に伴って上方および下方にそれぞれ移動することにより、水平に張られた弦に対して離接することによって、当該弦の振動による発音を許容および停止するダンパーを、前記ダンパーワイヤを介して案内するグランドピアノのダンパーホルダであって、
前記弦の下方に設けられた基部と、
前記ダンパーワイヤが通されたガイド孔を有し、前記基部に設けられ、前記鍵の押鍵および離鍵に伴って上下方向に移動する前記ダンパーを、前記ガイド孔を介して案内するホルダ本体と、
当該ホルダ本体を前記基部に対して上下方向の任意の位置に位置決めする位置決め手段と、
前記ホルダ本体を、前記位置決め手段により位置決めされた状態で、前記基部に固定する固定手段と、
を備えていることを特徴とするグランドピアノのダンパーホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ本体は取付け孔を有し、
前記位置決め手段は、つば部と、当該つば部よりも上側のボルト部および下側のねじ込み部とを有し、前記ボルト部が前記ホルダ本体の前記取付け孔に通され、かつ前記つば部が前記ホルダ本体に下方から当接した状態で、前記基部にねじ込まれた前記ねじ込み部のねじ込み量によって、前記ホルダ本体を前記基部に対して上下方向に位置決めする位置決め用ねじで構成され、
前記固定手段は、前記位置決め用ねじの前記ボルト部にねじ込まれ、締め付けられた固定ナットで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドピアノのダンパーホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−216922(P2008−216922A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57834(P2007−57834)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)