説明

グランドピアノの大屋根取付構造

【課題】 グランドピアノの側板に蝶番によって開閉可能に取り付けた大屋根の人手による開閉が容易な大屋根取付構造を提供すること。
【解決手段】 巻き線部5aと巻き線の両端のアーム部5b,5cとを備えるコイル形のトーションばね5の巻き線部5aを蝶番3のヒンジピン33に外挿して、アーム部5b,5cで大屋根2を開方向に付勢する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グランドピアノの大屋根取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】グランドピアノの大屋根は、一般的には、側板に蝶番を介して開閉可能に取り付けられている。また、グランドピアノには大屋根突揚棒が備えられており、大屋根突揚棒の先端を大屋根の裏面に取り付けた突揚棒受の凹部に突き当てることで大屋根を開状態で支えられるようになっている。大屋根を開状態にするには、まず大屋根の蝶番の反対側を持ち上げて大屋根を開き、開いた大屋根を支えながら大屋根突揚棒を取り上げて、大屋根突揚棒の先端を突揚棒受の凹部に突き当てる。一方、大屋根を閉じる場合は、大屋根を少し開方向に回動させて大屋根突揚棒の先端を突揚棒受の凹部から外し、大屋根突揚棒を所定の場所に収納した後、大屋根を閉じる。
【0003】ところで、グランドピアノの大屋根は重量物である(特にフルコンサートピアノの大屋根は50kg以上である)ので、大屋根を持ち上げて開くには相当大きな力が必要である。また、1人で開閉する場合は大屋根突揚棒を突揚棒受の凹部に突き当てるときや大屋根突揚棒の先端を凹部から外すときに大屋根を片手で支えなければならず、この場合にも相当大きな力が必要である。従って、腕力が小さい女性が1人で大屋根を開閉することは困難な場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような問題点に鑑み、人手によるグランドピアノの大屋根の開閉が容易な大屋根取付構造を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明は、グランドピアノの側板に開閉可能に枢支された大屋根の取付構造において、大屋根を開方向に付勢する付勢手段を設け、付勢手段の付勢力を大屋根が自重で閉状態に維持される大きさに設定したことを特徴とする。
【0006】このような構成にすれば、人手によって大屋根を開くために閉じられた大屋根を持ち上げたり支えたりするときに、付勢手段の開方向の付勢力を、これらの作業で必要な力の一部として利用できるので、開閉作業者の負担が軽減され、大屋根の開閉作業が容易になる。また大屋根は自重で閉状態に維持されるので、従来通りの取扱いで大屋根を開閉できる。
【0007】前記大屋根が前記側板に蝶番を介して開閉可能に枢支されるものでは、前記付勢手段として1巻き以上の巻き線部と巻き線の両端のアーム部とを備えるコイル形のトーションばねを用い、前記巻き線部を蝶番の回転軸に外挿し、前記アーム部で大屋根を開方向に付勢すれば、付勢手段が目立たないので大屋根を開いた状態でのグランドピアノの見栄えが損なわれない。
【0008】
【発明の実施の形態】図1から図3を参照して、1はグランドピアノの側板であり、当該側板1には側板1の開口を覆う大屋根2が2つの蝶番3を介して開閉可能に取り付けられている。大屋根2の裏面には凹部を備える突揚棒受2aが取り付けられており、グランドピアノに備わる大屋根突揚棒4の先端を突揚棒受2aの凹部に突き当てると、大屋根2が開位置で支えられる。
【0009】蝶番3は、大屋根2にねじNで固定される平板状の第1回動片31と、側板1にねじNで固定される断面形状が逆L形の第2回動片32と、両回動片31,32を回動可能に連結するヒンジピン(回転軸)33とを備える角蝶番である。第1回動片31及び第2回動片32の連結側の端部には、複数の筒部31a,32aが間隔をあけて曲げ加工により形成されており、各回動片31,32の筒部31a,32aが同軸上に交互に並ぶ状態で、筒部31a,32aにヒンジピン33が挿通されている。
【0010】ヒンジピン33には、2つのコイル形のトーションばね(付勢手段)5が組み込まれている。当該トーションばね(以下、単に「ばね」とする)5は、図3R>3に示すように、ヒンジピン33に外挿される1巻きの巻き線部5aと、巻き線部5aの一端から延びる第1アーム部5bと、巻き線部5aの他端から延びる屈曲した第2アーム部5cとから構成されており、筒部31a,32aの間に配置されている。第1アーム部5bは第1回動片31の下面に当接しており、第2アーム部5cは第2回動片32と側板1との間に挟まれている。巻き線部5aは弾発力を備えており、大屋根2は当該弾発力をアーム部5b,5cから受けて開方向に付勢される。ばね5の付勢力は、2つのばね5で大屋根2を開方向に付勢しても、大屋根2が自重で閉状態に維持される大きさに設定されている。従って、大屋根2の開閉についての取扱いは従来通りである。
【0011】大屋根2を人手によって開く場合は、まず大屋根2の蝶番3とは反対側を手で持ち上げて大屋根2を開き、開いた大屋根2を支えながらグランドピアノに備わる大屋根突揚棒4を取り上げ、大屋根突揚棒4の先端を突揚棒受2aの凹部に突き当てて大屋根2を開位置で支える。大屋根2はばね5によって開方向に付勢されており、ばね5の付勢力を大屋根2を持ち上げたり支えたりするのに必要な力の一部として利用できる。従って、開閉作業者の負担が軽減され、大屋根の開閉作業が容易になる。一方、大屋根2を閉じる場合は、まず大屋根2を少し開方向に回動させて大屋根突揚棒4の先端を突揚棒受2aの凹部から外して、大屋根2を支えつつ大屋根突揚棒4を所定の場所に収納した後、大屋根2を閉じる。閉じる場合にも大屋根2を開方向に回動させたり支えたりするが、このときもばね5の開方向の付勢力を必要な力の一部として利用できるので、開く作業と同様に閉じる作業も容易である。
【0012】大屋根2を1人で開閉する場合は、1人で大屋根2を持ち上げなければならず、しかも大屋根突揚棒4の取り上げや収納の際は片手で大屋根2を支えなければならないが、大屋根2を開方向に付勢するばね5の付勢力を利用できれば、これらの作業時に必要な力が軽減されて1人での開閉作業も容易になり、腕力の小さい女性が1人で大屋根2を開閉できるようになる。また、付勢手段としてのコイル形のトーションばね5を蝶番3に組み込めば、付勢手段が目立たないので大屋根2を開いた状態でのグランドピアノの見栄えが損なわれない。
【0013】ところで、付勢手段は上記ばね5だけに限られるものではなく、例えば図4に示すように、両端が側板1と大屋根2とに支承されるエアダンパ6を用いても良い。エアダンパ6は、側板1にヒンジHによって回動可能に支承されるシリンダ61と、一端がシリンダ61内に挿入され他端が大屋根2にヒンジHによって回動可能に支承されるロッド62とを備える。シリンダ61内にはコイルばね63が収容されており、コイルばね63の弾発力でロッド62を押す。この弾発力で大屋根2が開方向に付勢される。またロッド62の先端にはシリンダ61の内面に沿って摺動自在な仕切り板64が取り付けられている。仕切り板64には図示しないオリフィスが形成されており、エアダンパ6の伸縮が緩やかに行われる。このようなエアダンパ6を付勢手段として用いれば、開閉途中で手を離したとしても大屋根2が閉方向に急に回動することがなく、より開閉しやすい。
【0014】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、グランドピアノの大屋根を人手によって容易に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のグランドピアノの大屋根取付構造が適用されたグランドピアノであり、大屋根が開位置にある状態を示す斜視図
【図2】 本発明のグランドピアノの大屋根取付構造の要部を示す斜視図
【図3】 図2のIII−III面を示す断面図
【図4】 本発明の他の実施の形態のグランドピアノの大屋根取付構造を示す斜視図
【符号の説明】
1 側板
2 大屋根
3 蝶番
33 ヒンジピン(回転軸)
5 コイル形のトーションばね(付勢手段)
6 エアダンパ(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 グランドピアノの側板に開閉可能に枢支された大屋根の取付構造において、大屋根を開方向に付勢する付勢手段を設け、付勢手段の付勢力を大屋根が自重で閉状態に維持される大きさに設定したことを特徴とするグランドピアノの大屋根取付構造。
【請求項2】 前記大屋根は前記側板に蝶番を介して開閉可能に枢支されており、前記付勢手段は1巻き以上の巻き線部と巻き線の両端のアーム部とを備えるコイル形のトーションばねであり、前記巻き線部を蝶番の回転軸に外挿し、前記アーム部で大屋根を開方向に付勢することを特徴とする請求項1に記載のグランドピアノの大屋根取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−194355(P2000−194355A)
【公開日】平成12年7月14日(2000.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−370929
【出願日】平成10年12月25日(1998.12.25)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)