説明

グリカン修飾可溶性受容体および結合タンパク質ならびにそれらの使用

本発明は、末端にGal、GlcNAcまたはGalNAcをもつように修飾された、サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環から望ましくない成分をクリアランスできる薬剤および該薬剤の臨床用途に関する。このような望ましくない成分の例は、炎症性サイトカイン、LDL、VLDL、酸化LDL、レムナントリポタンパク質および成長因子である。
【背景技術】
【0002】
可溶性受容体および結合タンパク質は、種々のサイトカイン、成長因子、ポリペプチドホルモンおよび他の循環エフェクタータンパク質と高い親和性および特異性で結合する循環タンパク質である。ほとんどの場合、可溶性受容体は、対応する細胞表面受容体の細胞外のリガンド結合ドメインに相当する。このような可溶性受容体は、可溶性受容体をコードするmRNAスプライシング変異または細胞表面受容体のリガンド結合細胞外ドメインを切断することにより生じる。しかしながら、細胞表面受容体に対応しないIL−18結合タンパク質(IL−18BP)およびオステオプロテゲリンなどのサイトカイン結合タンパク質もある。
【0003】
可溶性受容体の存在とその製造および機能についての複雑な制御とは、これらが通常の生理機能および疾患への応答において重要な役割を有することを示唆するが、場合によっては病理学的過程にも貢献すると考えられる。たとえば、アレルギー反応の重要な成分は、IL−5によりその製造および活性が著しく促進される好酸球によって媒介される。アレルギー喘息患者において、気管支生検試料中の膜結合性IL−5受容体をコードするmRNAの値は、気管支収縮の重症度とともに増加する。急性喘息症状から治療施行患者が回復すると、可溶性IL−5受容体mRNAの発現が増加するため、可溶性IL−5受容体が肺内のIL−5の影響に反作用し、その増加した発現が喘息からの回復に影響し得ることが示唆される(HeaneyおよびGolde, 1998)。
【0004】
サイトカインは多くの疾患の病因に基本的に関与するため、これは生物学的治療アプローチの重要な標的を構成する。サイトカイン受容体の可溶型がサイトカイン活性の内生的調節に関与するという発見は、免疫療法薬としての潜在用途において重要な関心を促すものであった。このため、可溶性サイトカイン受容体は、特異性、低免疫原性および高親和性を含む多くの利点を有する。多くの可溶性サイトカイン受容体がこれらのリガンドの結合および生物活性を阻害できることにより、きわめて特異的なサイトカインアンタゴニストとなる。いくつかの製薬会社は、可溶性サイトカイン受容体に基づく多くの治療薬を生み出し、これらの多くが臨床試験中である。臨床開発が最も進んでいるものは、エタネルセプト(商品名エンブレル(商標)、アムジェン社)であり、II型可溶性TNF受容体とヒトIgG1のFc領域との融合タンパク質である。このTNF−αアンタゴニストは、ヒトでの使用の承認を受けた最初の可溶性サイトカイン受容体であった。通常、可溶性サイトカイン受容体に基づくほとんどの薬剤は安全で高い耐容性があり、ほとんどの患者において軽度の副作用しか示さない。可溶性サイトカイン受容体は、多種多様なヒトの疾患において著しい適用の可能性をもつ新世代の治療薬を構成する(IdrissおよびNaismith, 2000)。
【0005】
TNFαは、55kDaおよび75kDaの分子量の2つの同族受容体に結合する。ヒトTNFR−1は434のアミノ酸を含むのに対し、TNFR−2は439の残基を含む。これらの受容体は、細胞外領域においてきわめて限定的なホモロジーを共有する。TNF受容体スーパーファミリーは、システインクラスターの繰り返し単位の存在により規定される。TNF受容体は、赤血球および非刺激T細胞など、いくつかの例外を除き、ほとんどの既知の細胞種に存在する。受容体の比重は、細胞毎に200〜10,000の範囲である。細胞に存在する受容体数とTNF誘導反応の規模または方向性とのあいだには相関関係はないと考えられる。可溶型のTNFR−1およびTNFR−2はヒトの尿および癌患者の血清中に同定される。おそらく、これらはリガンドをおびき寄せることでTNFの活性を調節し、発生シグナルをダウンレギュレーションする。
【0006】
(TNFR−1および2を含む)多くの膜結合受容体がこれまでに同定されており、TNF受容体スーパーファミリーとして知られるものを形成している。これらの分子量は50〜120kDaの範囲内である。TNF受容体ファミリーのメンバーは、I型膜貫通糖タンパク質に属する。また、「デコイ受容体」と称される多くの関連する受容体も同定されており、分泌されたリガンドを隔離するように機能する。デコイ受容体(DcR1、DcR2およびDcR3)は、Trail(DcR1およびDcR2)およびFas(DcR3)リガンドを隔離するため、アポトーシスを回避する。さらに、オステオプロテゲリン(OPG)と称された可溶性非膜結合デコイ受容体も同定されている。TNFR−1ファミリーには、それほど多くの翻訳後修飾は報告されていない。TNFR−1およびTNFR−2は、両方ともN−グリコシル化されているが、TNFR−2のみがO−グリコシル化されている。また他のすべての膜受容体はグリコシル化されている(IdrissおよびNaismith, 2000)。
【0007】
全身性疾患である関節リウマチ(RA)は、炎症性関節炎の最も多い病型である。この疾患は世界中で約1%の罹患率であり、年間に成人10,000人につき3人が発症する。RAは、重大な疾病率および死亡率をともなう。初期の疾患の重症度により、身体障害の危険性は33%の高さがあり、しばしば感染または循環器系統の疾患の結果として、死亡率は52%にも増加し得る。予期されるように、RA患者は生活の質が多大に減退する。
【0008】
治療の最終目的は、関節損傷の予防または制御、機能的損失の予防および痛みの軽減である。1999年の腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニストの導入により、RAの管理は顕著に変化した。インフリキシマブ(レミケード(Remicade)(登録商標))、エタネルセプト(エンブレル(Enbrel)(登録商標))およびアダリムマブ(ヒュミラ(Humira)(商標))は、TNFを結合し、そのバイオアベイラビリティーを減少させることによりRAの炎症カスケードを調節するように設計されている。
【0009】
TNF、インターロイキン1(IL−1)、IL−17、IL−18およびIL−6を含む種々の炎症性サイトカインがRA患者の髄液から検出されている。初期の研究は、滑膜細胞培養系において、IL−1および他のサイトカインの二次合成が、TNFを標的にすることで著しく減少可能であることを実証した。TNFの役割は、(1)インビトロにて軟骨および骨を分解する能力、(2)動物モデルにおける関節炎誘発特性、(3)RA滑膜およびパンヌス−軟骨関節での受容体の共存、および(4)培養されたRA由来滑膜細胞におけるIL−1の合成を調節する中心的役割に基づくものである。
【0010】
エタネルセプトは、ヒトp75TNF受容体のリガンド結合部分にヒトIgG1のFc断片を加えたものからなる融合タンパク質である。エタネルセプトは、102±30時間の最終半減期を有する。推奨開始用量は、メトトレキサートを使用してまたは使用せずに、皮下に一週間に2度、25mgの用量である。エタネルセプトによる治療は、疾患活性を著しく用量依存的に減少し、重大な安全性の問題はなかった。TNFアンタゴニストは、活性RAの治療において著しい進展を示す。これらは、多様な期間にわたる関節破壊の阻害と、症状の緩和、RA患者の身体機能の改善に有効性を示す(Schwartzman, Fleischmannら, 2004)。
【0011】
エタネルセプトは、全身治療または光線治療の対象である中等度から重度の乾癬をもつ成人の皮下単剤療法として米国において使用が承認されている。該薬物は、乾癬性関節炎患者においても望ましく、メトトレキサートとの組み合わせにより使用可能である。中等度から重度の乾癬患者において、短期間のエタネルセプト治療は、プラセボと比較して、乾癬の面積と重症度の指数において75%の減少を達成した患者の割合が著しく増加した。同様に、乾癬性関節炎患者において、短期間のエタネルセプト単独またはメトトレキサートとの組み合わせによる治療は疾患の臨床兆候を改善した一方で、X線上の関節損傷の進行は著しく遅くなったことが見られた(GoldsmithおよびWagstaff, 2005)。より最近には、エタネルセプトは強直性脊椎炎をもつ成人の治療における有効性を示した(McCormackおよびWellington, 2004)。
【0012】
エタネルセプトはヒトIgG1のFcドメインを含むため、TNFとの複合体は、免疫細胞に見られるFc受容体を介して循環からクリアランスされる。単独の可溶性p55TNF受容体に基づく抗TNF療法の開発は、該受容体がp75TNF受容体に比べてより高い親和性でTNFと結合するにもかかわらず、現在までのところ成功していない。
【0013】
アテローム性動脈硬化は、脂肪性物質、コレステロール、細胞分解物、カルシウムおよびフィブリンが動脈の内層にプラークを形成する過程である。プラークは、動脈を通る血流を部分的または完全に阻止し得る。プラーク崩壊は、きわめて細い動脈において塞栓症を生じ得るためさらに深刻な脅威である。アテローム性動脈硬化症は、大動脈および中動脈に影響する。動脈の種類およびプラークの発現箇所は個人により異なる。アテローム性動脈硬化症は、小児期に始まり得る遅効性の進行性疾患である。一部の人において、この疾病は30歳代のときに急速に進行する。また他の人においては、50歳代または60歳代まで脅威とはならない。これは、脳、心臓、腎臓ならびに腕および脚の動脈に影響し得る。プラークが蓄積すると、これは重病化および合併症の原因となり得る。これらには、冠動脈疾患、狭心症、心臓発作、突然死、脳血管疾患、脳卒中、一過性脳虚血発作および末梢動脈疾患が含まれる。アテローム性動脈硬化症により生じた疾患は、西欧諸国において疾病および死亡の主要原因である。特定の習慣(高脂肪の食事、タバコの乱用および運動不足)の広がりにより、循環器疾患は、2020年までに世界中で生産年齢の落ち込みの主要原因となる(MurrayおよびLopez, 1997)。
【0014】
近年、アテローム発生に関する分子メカニズムについての新たな見識が生み出された。BrownおよびGoldsteinは、血漿および動脈中のコレステロールの進行的蓄積が、LDL受容体の欠陥によるものであり、これが家族性高コレステロール血症の主要原因であることを説明可能にした(BrownおよびGoldstein, 1986)。この合併症において、LDL関連コレステロール(LDLc)は動脈硬化症におけるコレステロールの蓄積に関与することが示された。動脈硬化性プラークにおけるコレステロール蓄積のメカニズムのモデルは、血管壁へのLDLの取り込みの増加、またはすでに血管壁に進入したLDLの保持の増加を重視している。現在は、コレステロール合成の阻害による肝臓LDL受容体発現のアップレギュレーションが、血漿コレステロール値を低下させる最も有効な手段である(Kong, Liuら, 2006)。
【0015】
リポタンパク質は球状の分子であり、脂質とタンパク質とが結合した分子である。リポタンパク質は、体内において脂質の輸送および代謝に関与する。これらは、アテローム性リポタンパク質および血管保護性リポタンパク質に分けられる。アテローム性リポタンパク質は、通常、すべてがVLDL、IDLまたはLDLなどのアポB含有リポタンパク質であるが、血管保護性リポタンパク質はHDLなどのアポA−I−含有リポタンパク質である。種々のリポタンパク質は、親水性遊離コレステロール、リン脂質およびアポリポタンパク質の層により囲まれたトリグリセリドとコレステロールエステルとの疎水性コアからなる。リポタンパク質は、異なる浮遊密度と大きさとにより分類される。リポタンパク質粒子の比重は、粒子中に含まれた脂質とタンパク質との相対量により決定される。
【0016】
次の表は主要なリポタンパク質の特性を要約したものである。
【0017】

【0018】
種々のリポタンパク質は、主として肝臓で生じる複合変換によって互いから由来するものである。リポタンパク質の展開に都合のよい開始点は最低比重クラスのキロミクロンである。これらの粒子は、食物脂肪、すなわちトリグリセリド、コレステロールおよびリン脂質、およびこれら細胞内で合成されるアポリポタンパク質(アポ)B48から直接的に小腸粘膜細胞内で合成される。これらの比重は、粒径が大きく(≧100nm)多量の脂質(特に浮遊トリグリセリド)を含むために低い。この大きいサイズは、毛細血管膜の浸透を不可能にする。その代わり、キロミクロンは、腸粘膜によってリンパ腺に分泌され、その後、胸管を通って循環に入る。キロミクロンは血中のアポEおよびアポC−IIを獲得する。その後、キロミクロントリグリセリドプールからの遊離脂肪酸の除去を触媒する血管内皮リポタンパク質リパーゼの作用によりサイズが漸減する。劣化キロミクロンレムナント粒子は、受容体媒介作用による肝細胞への取り込みによりこの経路を出て、キロミクロンアポEは肝臓LDL受容体のリガンドとして機能する。肝細胞内において、キロミクロンレムナントはその内容物(すなわち、残留トリグリセリド、コレステリルエステル、リン脂質およびアポリポタンパク質)を放出する。肝細胞は、これらのキロミクロンレムナント由来生成物を再構成して、内因性トリグリセリドおよびコレステリルエステルをきわめて低比重のリポタンパク質(VLDLs)にし、これらを次段階の末梢部への脂質の輸送のために循環内に分泌する。キロミクロンと同様に、VLDLsもまたトリグリセリドに富むリポタンパク質であり、アポC−IIおよびアポEを含む。しかしながら、キロミクロンとは異なり、これらはより少ないトリグリセリドを含み、より小さく、アポB48の代わりにアポB100をもつ。
【0019】
ここでのアポB100の出現は、これがLDL受容体の生理的リガンドであるために重要である。このあと半時間にわたり、リポタンパク質リパーゼがVLDLトリグリセリド含有量をさらに減少し、既知のカスケードを中間比重リポタンパク(IDL)へと下向するにつれて、粒子を漸次的により小さく濃密で、よりコレステロールが豊富にさせる。IDLトリグリセリドの遊離脂肪酸への加水分解は、さらに別のリパーゼおよび肝性リパーゼによって媒介され、程なくLDLはこの経路において最終粒子として現れる。LDLは血漿中で最もコレステロールに富むリポタンパク質であり、血漿LDLコレステロール(LDL−c)の上昇は、アテローム性動脈硬化症および冠状動脈性心臓病(CHD)の主要な危険因子である。よって、肝臓由来のLDLによる周辺部への過剰なコレステロールの運搬はアテローム硬化性プラークの蓄積につながる。したがって、LDLコレステロールを「悪玉コレステロール」およびHDLコレステロールを「善玉コレステロール」と説明し、また単純化することがある。循環における半減期が約数日間であるLDLはアポB100のみを含有し、粒子毎に本質的にただ1つのコピーのみを含有する。また、上流の前駆体粒子(IDLおよびVLDL)もアポB100を含有することに留意を要する。このことは、LDL値に比べてアポB100値は心筋梗塞による死亡率により高程度に相関しており、食後のリポタンパク質もまたアテローム性であることを示唆するため重要である(TulenkoおよびSumner, 2002)。
【0020】
第3の型のリポタンパク質であるHDLは、第一に逆コレステロール輸送と称される過程において、主にコレステロールである脂質を肝臓に戻すことに関与する。
【0021】
アテローム発生の最先の事象は、血管内皮細胞の活性化、付着および単球とTリンパ球との内皮下空間への移動である。循環LDLは、これを高い生物反応性の酸化LDL(ox−LDL)に変換する血管細胞による酸化後に初めてアテロームを発生する。酸化LDLは泡沫細胞生成に関与し、接着分子、化学誘引物質、成長因子、炎症性およびアポトーシス促進性サイトカインの過剰発現などのアテローム形成促進的事象を誘引する。さらに、酸化LDLのこの毒性作用は、おそらくプラークの侵食/崩壊と、それに続くアテローム血栓症とに関与する。ox−LDLのいくつかの生物学的作用は、転写因子の活性とそれに続く遺伝子発現の変化とを通して媒介される。ox−LDLは酸化還元感受性転写因子NF−κBを活性化し、これは接着分子の遺伝子、組織因子の遺伝子およびスカベンジャー受容体LOX−1の遺伝子などのさらなる炎症促進性遺伝子の発現をアップレギュレーションする(Robbesyn, Salvayreら, 2004)。
【0022】
アテローム形成促進性プラークに存在する脂質を持った「泡沫細胞」のほとんどは、固有のLDLの取り込みの結果ではなく、むしろ酸化リポタンパク質の取り込みによるものである。LDLの酸化修飾は内皮下空間にて起こる。スカベンジャー受容体によるox−LDLの取り込みは、単球由来マクロファージを泡沫細胞に変化させる。これまで、少なくとも10のスカベンジャー受容体が同定されており、このいずれがインビボでのこの特定の現象に寄与しているかはわかっていないが、ノックアウト実験に基づきSRAおよびCD36が定量的に重要であることが明らかとなっている(Kita, Kumeら, 2001)。
【0023】
血漿中のox−LDLの濃度は、CHD患者の全LDLの0.5%未満であることがあり、これに対して内皮細胞が露出させられる。この血漿濃度は、ox−LDLのアテローム形成促進および炎症促進活性には充分でないこともある。いくつかの研究は、レムナントリポタンパク質(RLP)が血漿中にてすでに酸化されていることを報告している。多量のアテローム形成促進性および炎症促進性の脂質ホスファチジルコリンは、RLPの成分であるキロミクロンレムナント中に同定された。換言すれば、血漿中に酸化された主要なリポタンパク質はox−RLPであり得る。血漿からのRLPの単離は、レムナントリポタンパク質の酸化感受性を検証し、RLPのアテローム形成促進特性および炎症促進特性とox−LDLのこれらとの比較を可能にした。ox−LDLと同様に、循環RLPは血管構成細胞を活性化し、いくつかのアテローム形成促進遺伝子(ICAM−1、VCAM−1、HB−EGF、PDGF−A−B、COX−2およびeNOS)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)、CD−40、CD−40Lおよび組織因子(TF)を誘引する。多くの臨床研究は、血漿ox−LDLに比べて、血漿RLP−C濃度が、早発性アテローム性動脈硬化症の危険性の増加とより関連することを示唆している。さらに、これらのリポタンパク質の血漿濃度から判断すると、内皮機能障害は、循環ox−LDLに比べて、循環RLPにより生じているようである。これらをもとに、とりわけLDL−C値ではなく、血漿RLP−C値に高度に関連するメタボリックシンドローム患者において、血漿RLPを減少させることもまた高脂血症治療の目標とすべきである(Nakajima, Nakanoら, 2006)。
【0024】
アポリポタンパク質Bは大きな両親媒性タンパク質であり、アポB100およびアポB48の2つの型で存在する。ヒトにおいて、アポB100は肝臓中にて発現され、VLDL、IDLおよびLDL上に存在する。アポB48は腸にて発現され、キロミクロンおよびこれらのレムナント上に存在する。アポB48およびアポB100は、同一の遺伝子によりコードされる。アポB48のmRNAは、いわゆる編集工程によりアポB100のmRNAから生じ、このあいだにシチジンからウリジンへの脱アミノ化によって、グルタミンコドンから終止コドンへと変化する。
【0025】
アポB100は、1つの球状N末端構造と、2つの両親媒性βシートドメインと、2つの両親媒性αへリックスドメインとからなる五深裂構造(pentapartite structure)を有する。N末端1000アミノ酸領域は、ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)と相互作用するため、VLDLの生成にきわめて重要である。リポタンパク質の生成のあいだ、MTPは脂質のアポBへの転移を触媒する。
【0026】
両親媒性βシートドメインは、約30Åの幅を有する逆平行βシートからなり、きわめて強い脂質結合構造を形成する。これらの領域は他のアポリポタンパク質に比べて独特で、別のリポタンパク質との平衡を阻害するが、血漿中に分泌された粒子に結合されたままである。両親媒性βシートの2つのドメインのあいだにおいて、別のアポリポタンパク質に見られる種類の両親媒性へリックスドメインがある。このようなドメインは、C末端の近傍にも存在する。LDLの全体構成は解明されたが、完全には解決されていない。タンパク質は細長い構造を有し、LDL粒子全体を包囲する。C末端は前構造上に折りたたまれ、アミノ酸3500にて交差する。ここで、アルギニン(残基3500)はトリプトファン(残基4396)に結合し、C末端が、アミノ酸3359と3369とのあいだでのLDL受容体の結合部位を邪魔しないようにしている。実際に、これらのアミノ酸に関するいくつかの既知の突然変異(最もよく知られているのはArg3500のものである)はこの相互作用を壊し、LDL受容体との結合を減少させる。タンパク質のC末端部はそのN末端と相互作用すると考えられる(Segrest, Jonesら, 2001; OlofssonおよびBoren, 2005)。
【0027】
当初は血漿中のリポタンパク質の成分として同定されたアポEは299のアミノ酸残基を含有し、34,000Daの相対分子量を有する。他の可溶性アポリポタンパク質と同様に、アポEは、リポタンパク質結合状態と無脂質状態とのあいだを可逆的に切替え可能にする両親媒性のα−へリックス脂質結合ドメインを含有する。無脂質状態においてアポEは2つのドメインを含有し、それぞれは分子の各々の端部にある。2つのドメインは独立して折りたたまれ、各々は異なる主要機能に関与する。LDL受容体結合領域は、残基136〜150にある。しかしながら、完全な受容体結合活性は、2つのドメインを接続する「ヒンジ領域」にある172位にアルギニンをも必要とする。無脂質アポEは、LDL受容体に高親和性で結合しない。アポEの主要なリポタンパク質結合要素は、C末端ドメインの残基244〜272にある。
【0028】
アポEは多形であり、その種々のアイソフォームは別々の機能的および構造的特性を示す。3つの一般的な対立アイソフォームである、アポE2、アポE3およびアポE4は、112位および158位において異なる。最も一般的なアイソフォームであるアポE3は、それぞれにてシステインおよびアルギニンを含有するのに対し、アポE2はこれらの位置にて2つのシステインを有し、アポE4は2つのアルギニンを有する。アポE3およびアポE4は同様の高い親和性でLDL受容体に結合するのに対して、アポE2の結合は50〜100倍弱い。この結果、ホモ接合アポE2は、コレステロールおよびトリグリセリドの血漿レベルの増加に特徴付けられる脂質異常であるIII型高リポタンパク質血症と、早発性循環器疾患とに関連する。
【0029】
ヒトにおけるアポEの多形性に帰する最も顕著な病理学的作用は、アポE4とアルツハイマー病を含む神経変性疾患との関連である。ドメイン相互作用とアポE2およびアポE3に比して減少した安定性というアポE4の2つの主要特性は、アポE4と疾病との関連性の根拠をなす。「ドメイン相互作用」の概念は、なぜアポE3とアポE4とがリポタンパク質結合優先性において相異するのかを説明するために導入された。アポE4は、大きな低比重のリポタンパク質、すなわちVLDLsおよびLDLsに優先的に結合するのに対し、アポE3およびアポE2は、HDLsなどのより小さいコレステロールに富む高比重のリポタンパク質を優先する。アポE4の結合優先性は、112位での(正荷電の)アルギニンの存在により支配される。アポE3とアポE4とのN末端ドメインのX線構造の比較は、112位での残基がArg61の側鎖の構造に影響することを示す。アポE4において、Arg112は、アポE4のArg61がそのC末端の酸性残基と相互作用することを可能にする。
【0030】
無脂質アポEのN末端ドメインとC末端ドメインとの距離は、ドメイン間相互作用のために異なる。ドメイン相互作用は、アポE4を発現するためにニューロンに応力をかけて誘引する際の神経毒性フラグメントの生成に関与するとされている。ニューロンを殺すことに加えて、これらのフラグメントは、アミロイドプラークとともに、アルツハイマー病の病理的特徴とされる神経原線維変化に類似した細胞内堆積物を生じる。部分的に折りたたまれた構造またはモルテングロビュール状構造は、タンパク質に、リガンド結合に付随する実質的な構造変化に対する柔軟性および適合性を付与する。特に、3つのアポEアイソフォームにおけるN末端ドメインの安定性の変動は、リポタンパク質結合優先度およびインビボの他の生物学的機能の相異に寄与し得る。アポE3に比べてのアポE4の低安定性は、脳内での重要な病理学的役割を有し得る。
【0031】
リポタンパク質結合アポEのLDL受容体結合領域近傍の構造における異質性は、特異的エピトープに対するモノクローナル抗体で検出されている。リン脂質との結合により、アポEは相当な構造的変化をする。最近の研究により、リン脂質結合アポEは、α−へリックスヘアピン様構造に折りたたまれることが示唆されている。α−へリックスヘアピン構造は、Arg172を含むLDL受容体結合モチーフのすべての既知の要素を構造的頂点に置き、これによってなぜ脂質結合アポEのみが高親和性でLDL受容体に結合するのかが説明され得る。しかしながら、アポE含有リポタンパク質粒子中のリン脂質二重層の存在は、実験的に証明されていない(Hatters, Peters-Libeuら, 2006)。
【0032】
LDLRは、1974年に最初に発見された。これ以後、その構造、機能、突然変異体および生理的ならびに薬理学的モジュレーションについて広く研究されている。細胞表面のLDLRは、循環からアポBおよびアポE含有リポタンパク質を結合して内在化する。アポE3およびアポE4リポタンパク質に対するLDLRの親和性(KD=0.12nM)は、アポBリポタンパク質のそれよりも25〜50倍高い。しかしながら、アポE含有キロミクロンレムナントは、肝細胞へのさらなるエントリーモードを有する。エンドサイトーシス後、LDLRはそのリガンドから分離してリサイクリングのために細胞表面に戻るが、LDLはさらに代謝される(Kong, Liuら, 2006)。
【0033】
ヒトLDLRは、ヒトおよび他の動物種における高度に保存された構造を有する膜貫通糖タンパク質である。この成熟形態は160kDaの分子量を有する836のアミノ酸残基を含有し、次の5つの機能的ドメインを有する:リガンド結合ドメイン、上皮成長因子(EGF)前駆体相同体ドメイン、O結合型多糖類ドメイン、膜貫通ドメインおよび短い細胞質ドメイン。LDLRのオリゴ糖含有量の分析は、1つのAsn結合型オリゴ糖と6〜9個のO結合型ユニットとを明らかにした(Cummings, Kornfeldら, 1983)。単一のAsn結合オリゴ糖の位置は、ヒトLDLR前駆体のアミノ酸残基657である(Zhang, Liら, 2003)。
【0034】
LDLRのリガンド結合ドメインは、いわゆるLDLRクラスAリピート(LDL−A、相補型リピートとしても知られる)である、〜40個のアミノ酸の7つのシステイン豊富な不完全リピート(R1〜R7)からなる。核磁気共鳴構造ならびに結晶構造は、3つのジスルフィド結合により安定化された2ループ構造を明らかにした。特徴的に、ジスルフィド結合の形成は、システイン残基IおよびIII、IIおよびV、IVおよびVI(ローマ数字はリピートにおけるシステイン残基の相対位置を示す)のあいだで生じる。さらに、酸性アミノ酸の保存配列(CDXXXDCXDXSDE;酸性残基は太字体で示され、Xは任意のアミノ酸を示す)は、各々のLDL−AリピートのC末端部に存在する。結晶分析は多くの酸性残基がカルシウムイオンの配位錯体化に関与していることを示し、LDL−Aリピートの正確な折りたたみとジスルフィド結合とのためのカルシウムの必要条件、およびリポタンパク質のLDLRへの結合のためのカルシウムの必要条件を明らかにした。LDLとVLDLとの結合のための構造的要件は異なる。LDLはアポB100を介してその受容体と結合し、VLDLはアポEを介する。LDLの結合はR2〜R7の有無によるが、R5のみがVLDLとの相互作用に必須であると考えられる。R5の重要性は、このリピートに局在化された多数のFHの突然変異により強調される。FHの突然変異の少数のみがR1に局在化され、これはいずれのリガンドをLDLRに結合するためにも重要でない(GentおよびBraakman, 2004)。
【0035】
極低比重リポタンパク質(VLDL)受容体(VLDLR)は、きわめてLDLRに類似している。主要な相違点は、N末端に存在するリガンド結合ドメインにおける1つの余分な相補型リピートの存在である。LDLRと比較して、VLDLRのほとんどは、たとえば心臓、筋肉および脂肪組織などの肝外組織にて発現する。VLDLRは、トリグリセリド豊富なアポE含有リポタンパク質の取り込み機能を果たす(Hussain, Stricklandら, 1999)。
【0036】
ヒトアポE受容体2、つまりLR7/8Bは、リンカーにより隔てられた5C2にグループ化された7つのリガンド結合リピートを含有し、これはVLDLR(5C3)に見られるものと類似し、LDLR(4C3)に見られるものとは異なる。アポE受容体2は、LDLRに比べてVLDLRに近似しているため、LDLRに見られる限定的特異性ではなく、VLDLRに見られるリガンド結合能力に類似した広範なリガンド結合能力を有することが期待される(Hussain, Stricklandら, 1999)。
【0037】
メガリン(gp330またはLRP−2としても知られる)は、36のシステイン豊富なリガンド結合ドメイン、16のEGF前駆体ホモログドメインおよび細胞外ドメインに40YWMDリピートを含有する4660のアミノ酸の単一ポリペプチドである。分子中に、7、8、10および11の相補型リピートからなるリガンド結合ドメインの4つのクラスターがあり、いくつかのグループのリガンドを認識する(Hussain, Stricklandら, 1999)。LDLRファミリーの他のメンバーは、LDLR関連タンパク質、LR11(SORLA−1とも称される)、LRP3およびLRP6を含む。これらの正確なリガンド結合特異性は、部分的に知られているのみである(Hussain, Stricklandら, 1999)。
【0038】
LDLRファミリーのメンバーは、いくつかの構造的に異なるリガンドを認識する。LDLRおよびアポE受容体2は、リポタンパク質とリポタンパク質リパーゼを結合する。LDLRは、アポE4>アポE3>>>アポE2の順序の結合親和性でアポEの3つのアイソフォームを区別可能である。アポE4リポタンパク質とアポE3リポタンパク質との解離定数(KD)は0.12nMであるが、アポE4はLDLRに対してきわめて低い親和性を有する。しかしながら、ファミリーの他の受容体は区別せず、これらのすべてはアポEのすべてのアイソフォームを均等に結合すると考えられる。それにもかかわらず、ホモ接合性アポE2である個人は(人口の約1%(Mahley, 1998))は、LDL受容体を介するVLDLの非効率的な取り込みのために〜2倍の高さのVLDLトリグリセリドを示す(Cardona, Tinahonesら, 2003)。LDLRファミリーの他のメンバーはより特異的でなく、リポタンパク質ならびに種々のプロテアーゼおよびプロテアーゼ阻害剤を結合する。重複するリガンドの特異性に加えて、各々の受容体は独自のリガンドを有すると考えられる。アポB100は、LDLRおよびメガリンと結合することが示されている。RAP、アポE−VLDL、リポタンパク質リパーゼ、アプロチニンおよびラクトフェリンのメガリンへの結合を阻害したモノクローナル抗体は、ドメイン2内にて相補型リピート4および5を認識し(アミノ酸1111〜1210)、これがこれら4つのリガンドの共通する結合部位であることを示している。また、LDLRに類似する7つの相補型リピートとEGF前駆体領域との構成はメガリンにも存在する。他の受容体は、これらのリガンド結合ドメインに8つの相補型リピートを含有する。8つのリピートの存在は、大きなLDLがこれらの受容体に結合することを阻止し得る。小胞体のルーメンに存在するシャペロンである受容体関連タンパク質(RAP)は、LDLRファミリーのすべてのメンバーに結合する。これは、適性な折りたたみと、リガンドの受容体への早期結合の阻止を補助する。RAPの顕著な特性は、すべてのリガンドの異なる受容体への結合の普遍的アンタゴニストとして作用することである(Hussain, Stricklandら, 1999)。
【0039】
肝臓は、(VLDLを介する)循環LDLの供給源であるのみならず、LDL異化作用の主要部位でもある。肝臓によるLDLの取り込みは、主として、低比重リポタンパク質受容体(LDLR)を伴う受容体依存性メカニズムによって媒介され、全身の受容体依存性LDLの取り込みの完全な80〜90%は肝臓にて生じる(Spady, 1992)。また、大きいHDL含有アポE粒子はコレステロールを直接肝臓に輸送可能であり、これは、粒子がLDLRに対して高い親和性を示すアポEを含有するためである(Hatters, Peters-Libeuら, 2006)。西欧式の食事では、ヒトは1g/日のコレステロールを合成し、さらに0.4gを摂取する(Grundy, 1983)。定常状態において、この量のコレステロールが除去されなければならない。コレステロールの輸送および代謝に関与する種々のリポタンパク質、受容体および酵素は、この「過剰な」コレステロールの値に対処するように調整される。これらのリポタンパク質、受容体または酵素の値または活性における干渉は、血清コレステロール値の変化につながる。
【0040】
LDLRの発現レベルは、細胞質コレステロールにより転写レベルにおいて間接的に調節される。LDLRプロモーターは、翻訳開始コドンの上流の200塩基対からなる。プロモーターは、2つのSp1結合配列に隣接したステロール調節エレメント1(SRE−1)を含有する。LDLRの基礎発現は、2つのSp1エレメントにより媒介される。LDLRの発現は、核ステロール調節エレメント結合タンパク質(nSREBPs)のLDLRプロモーターのSRE−1への結合によって相乗的に増加可能である。nSREBPsは、塩基性へリックス−ループ−へリックス−ロイシンジッパー(bHLH−Zip)転写因子の大きなファミリーに属する。nSREBPファミリーの3つのメンバーである、nSREBP−1a、−1cおよび−2は同定されている。これらはSREBPと称される不活性前駆体としてERにおいて合成される。これらのNH2−末端ドメインはサイトゾル内に突出する。これは、bHLH−Zipと、機能するために転写コアクチベータに結合されなければならない酸性ドメインとを含む。SREBPの中心部は、SREBPをERおよび核エンベロープに固定する2つの膜全域ドメインからなる。また、COOH末端部はサイトゾルまで延伸し、SREBPの活性nSREBPへの変化のための調節ドメインとして機能する。
【0041】
3つのER膜タンパク質は、SREBP処理の調節に関与する。細胞コレステロールが豊富な場合、これはSREBP開裂活性タンパク質(SCAP)と称される膜貫通型エスコートタンパク質に結合し、そしてこれは、インスリン誘導遺伝子−1および−2(Insig−1およびInsig−2)と称される2つの他のタンパク質のうちの1つとともにSREBP/SCAP/Insig三重複合体を形成する。この複合体はER膜に捕捉されるため、SREBPの処理を阻止する。
【0042】
細胞質コレステロールの減少は三重複合体を不安定にし、これは解離してSCAP−SREBPヘテロ二量体を生じる。これらのヘテロ二量体はゴルジ装置に輸送され、ここにてSREBPsはタンパク質分解的に開裂されて活性nSREBPsを生じる。これらのnSREBPsおよび特にnSREBP−2は核に転移し、LDLRプロモーターならびに脂質代謝に関する他の約30の遺伝子を結合および活性化する。nSREBPsは安定していない。これらはポリユビキチン化され、3時間の推定半減期でプロテアソームによって急速に分解される。
【0043】
したがって、コレステロールまたはその誘導体が細胞内に豊富にある場合、SREBP経路は抑制され、LDLR遺伝子の転写はきわめて低い水準に保持される。対照的に、コレステロールの欠乏はLDLRの発現を促進する(Kong, Liuら, 2006)。これらのメカニズムは、肝細胞を含むすべての細胞種において生じ、血清コレステロール(LDL−c)が豊富にある場合の肝臓のLDLR発現の望ましくない減少につながる。
【0044】
肝臓は、コレステロールの異化作用および腸に分泌される胆汁塩へのコレステロールの変換が可能である。しかしながら、ほとんどの胆汁塩は効率的に再吸収される。肝臓は、コレステロール−7α−ヒドロキシラーゼを発現し、これは、コレステロールのステロイド核にヒドロキシル基が2または3つの位置に導入され、コレステロールの側鎖が短縮およびカルボキシル化される複合酵素カスケードの最初の律速段階を触媒する。最終生成物は胆汁塩と称される分子である。ヒトの肝臓において生成される2つの胆汁塩のうちの1つはコール酸塩と称される。きわめて水に不溶性であるコレステロールとは異なり、胆汁塩は水溶性の洗剤様分子である。
【0045】
肝細胞は偏向した肝臓の細胞であり、一方にて血液と他方にて胆汁とのあいだの境界を生成する。類洞膜は血液に面し、管状膜は胆汁に面する。管状膜には3つの主要な輸送体がある。ABCB11は、胆汁塩を胆汁に輸送するATP依存性輸送に関与する。胆汁に含まれると、胆汁塩は反転して、管状膜および輸送体ABCB4およびABCG5/G8と相互作用する。この複合的相互作用は、胆汁ミセルの生成につながる。胆汁脂質の1日の分泌量は、コレステロールが最大2g/日であり、リン脂質が11g/日であり、胆汁塩が24g/日の範囲である。しかしながら、胆汁塩は一度胆道系および腸内でその機能を果たすとほとんどすべてが遠位回腸にて再吸収され、門脈循環を通って肝臓に戻るため、平均的個人においては0.4g/日のみの割合で合成される。毎日5%未満の胆汁塩が排出物中に失われ、これは約0.4g/日となる。コレステロールが肝臓での胆汁塩合成の基質であることを考慮すると、胆汁塩の0.4g/日の喪失は同一量のコレステロールの喪失となる(Carey MC, Duane WC. Enterohepatic circulation. In: Arias IM, Boyer JL, Faustoet Nら, eds. The Liver: Biology and Pathobiology. New York: Raven Press, 1994: 719-767)。コレステロールは、最大2g/日の割合で胆汁に分泌される。平均的なアメリカ人の食事は、約0.4g/日のコレステロールを含む。したがって、腸内での胆汁由来のコレステロールの量は、食事によって摂取された量の最大5倍である。平均的個人は、毎日腸を通過するコレステロールの50%を吸収する。このことは、50%は排出物に喪失され、1.2g/日の量となる。合計して、通常は1.6gのコレステロールが排出物中に除去され、そのうちの1.2gが肝臓から発生する。
【0046】
コレスチポール(商標)などの胆汁酸分離剤は、多くの臨床試験により有効なLDLc降下薬である。これらは、用量依存的にLDLcを10〜30%減少するが、頻繁な副作用により多くの場合においてその使用が制限される。コレセベラムは、新しく、より有効な胆汁酸分離剤であり、625mgの錠剤で入手可能である。成人の推奨投与量は1日3.8g(1日2回3錠を食事とともに)であり、より有効でない胆汁酸分離剤、コレスチラミンおよびコレスチポール(商標)よりも優れた耐容性がある。これらの優れた安全的特徴により、新たなレジンは、特に子供または若い女性への単剤療法におけるスタチンの代替物として残存する。
【0047】
エゼチミブは、食事および胆汁源からのコレステロールの腸吸収を、腸壁にわたってコレステロールの輸送を妨げることにより阻害する新しい脂質降下薬である。単剤治療として使用して、エゼチミブはLDLcを平均して17.3%減少する。現行のスタチン治療への1日10mgのエゼチミブの追加は、プラセボに比べてさらにLDLc値を減少する(−14〜−25%)。この投薬法は、異なるスタチンの広範な用量範囲にわたって一般的に耐容性が良好であり、またスタチンの大量投与を回避し、または高リスク患者においてLDLcの目標を達成する有効なスタチンとともに使用する際に、LDLcにおいて60%を超える減少を可能にすることによりLDLcの減少への新たな手法を提供する(Civeira, 2004)。
【0048】
家族性高コレステロール血症(FH)は、低比重リポタンパク質(LDLc)のきわめて高い血漿濃度、腱黄色腫および早発性冠状動脈性心臓病(CHD)の危険性の増大により特徴付けられるリポタンパク質代謝の常染色体の相互優性遺伝性疾患である。通常、臨床的に同定されるFHは、LDL受容体遺伝子(LDLR)の突然変異により生じる。FHのヘテロ接合体はヒトにおける最も一般的な常染色体性優性遺伝病の一つであり、ホモ接合体は稀ではあるがより重症である。ほとんどの国において、ヘテロ接合体の頻度は、500人に約1人である。しかしながら、フランス系カナダ人、南アフリカ系白人、レバノン人およびフィンランド人などの人は創始者効果のためより高い有病率である。世界中で10,000,000人がFHを有すると推測されている。FHは、主としてCHDである、早発性(55歳未満の男性および65歳未満の女性)循環器疾患の高発生率と、FHをもつ多くの家族に見られる平均寿命の減少とのために、世界的な公衆衛生問題である。治療がされない場合、約85%の男性と50%の女性とが65歳以前に冠状動脈血栓症を生じる。フィンランド東部およびドイツにおいて最大9%の全早発性CHDがFHに関連している(Civeira, 2004)。
【0049】
現在までにFHを生じる800を超える突然変異が報告されており、これらはタンパク質への表現型効果に基づきいくつかの種類に分類される(Kong, Liuら, 2006)。FHの浸透率はほぼ100%であり、罹患した親の子の半数が出生時からきわめて上昇した血漿コレステロール値を有し、男性および女性は同等に罹患する。上昇した血漿LDL値は、遅いLDLの異化作用と奇異性のリポタンパク質過剰生成とに起因する。未治療のヘテロ接合性FH(heFH)対象中のLDLcは、通常190〜400mg/dl(4.9〜10.3mmol/l)の範囲内にある。同様に、マウスLDLR(−/−)肝細胞は、野生型肝細胞と比較して、3.5倍の高い割合でアポB100を分泌する。さらに、LDLR(−/−)細胞においては、野生型肝細胞の55%に比べて、新たに合成されたアポBの20%未満が分解される。したがって、機能性肝LDLRは循環LDLの減少において重要である(Twisk, Gillian-Danielら, 2000)。National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel(NCEP−ATPIII)ガイドラインの3回目の報告書により、<100mg/dl(2.6mmol/l)が最適なLDLc濃度と規定されていることを考慮すると、目標達成のためにはheFH患において50〜75%のあいだの平均的減少が達成される必要がある。生活様式の改善は常に行わなければならないが、許容されるLDLc値になる可能性は低い。<100mg/dl(2.6mmol/l)のLDLcは、依然として、症候性CVDを有する対象の最適値であり、目標である(Civeira, 2004)。したがって、特にFH患者に対して、血清LDLcを減少するためのいくつかの手段の組み合わせが必要である。
【0050】
現行のheFHの治療は次を含む(http://www.emedicine.com/med/TOPIC1072.HTM):
・飽和脂肪、トランス脂肪およびコレステロールを大幅に制限した食事。望ましい体重に達するべきである。著しい体重の減少はすべての脂質のパラメータ(LDLc、HDLc、トリグリセリド)の改善となるはずである。
【0051】
・エアロビクスおよびトーン運動は、30分以上で一週間に4回以上行われる場合に血中脂質値を改善する。
【0052】
・いずれのHMG−CoA還元酵素阻害剤の2倍投与はLDLcを6〜7%減少するのみであるため、異なるコレステロール降下薬の組み合わせがより有効である。このような組み合わせは、高用量の3つの最も強力なスタチンのうちの1つと、胆汁酸分離剤、エゼチミブまたはナイアシンなどの1つ以上の他のLDL降下薬を含むべきである。ミオパシーの危険性を減少させるために、最大量の一段階下のスタチンを考慮すべきである。第3の薬剤、あるいは第4の薬剤を追加することも有益である。50%の機能性LDL受容体を有するヘテロ接合性FH患者は、通常のコレステロール降下薬に対して優れた反応を有するが、治療は依然として困難である。閉経後の女性におけるエストロゲン補充療法もまたLDLc値の低下を補助するが、この療法は、利益が時としてリスクを上回ることがあるにもかかわらず、より高齢の女性における副作用のために推奨されない。
【0053】
・従来の治療によりLDLc値を200mg/dL未満に減少できないと確認されたCHDを有する患者はLDL血漿交換の候補となる。また、CHDではないが、300mg/dLを超えるLDLc値を有する患者も本治療法に適する。しかしながら、健康保険の補償は自動的でなく、その判断は、患者の生涯にわたり2週間に1度、各治療において$3000に達する費用のため個別的に行われる。
【0054】
C型レクチンは、その炭水化物認識ドメインにおいて一次性の構造的ホモロジーを共有するca2+依存性レクチンの大きなファミリーを示す。多くの細胞内受容体と、多くのプロテオグリカンと、すべての既知のコレクチンおよびセレクチンとを含む、このきわめて大きいファミリーは動物界にわたって見出される。しかしながら、このファミリーのほとんどのメンバーは、高親和性で認識する炭水化物構造の種類において相違する。
【0055】
動物において同定された最初のレクチンは、肝アシアロ糖タンパク質受容体または肝Gal/GalNAc受容体であった。脱シアル化糖タンパク質は、親糖タンパク質よりも迅速に循環から除去される。さらに、脱シアル化の際に露出された最後から2番目のガラクトース残基はクリアランスのために重要である。循環から除去されたアシアロ糖タンパク質は、肝臓および主としてリソソームにて隔離される。アシアロ糖タンパク質に対する特異的Ca2+依存性受容体は、肝細胞血漿膜分画にて同定された。肝レクチンは、非還元末端GalNAcまたはガラクトースのいずれかを含有する糖タンパク質と結合する。
【0056】
すべてのCa2+依存性レクチンは共通の構造的モチーフを共有する。配列ホモロジーはCRDにおいて記され、このモチーフを有するタンパク質はC型レクチンファミリーのメンバーとして分類される。C型レクチンに対するCRDの発見は、炭水化物リガンドとのCa2+依存性結合をも示す他の関連するタンパク質を特徴付けする道を開いた。現在まで、ヒトにおいてC型レクチンCRDを含有する20を超える異なるタンパク質が同定されており、対応するホモログもまた多くの他の高等動物にて見出されている。高等動物におけるこれらの多くのC型レクチンは、その機能または独自の局在性に基づき、サブファミリーに分類される。
【0057】
肝レクチンは、結合リガンドのエンドサイトーシスを媒介可能にするC型レクチンの種類である。エンドサイトーシス経路は、細胞表面でのリガンドのレクチン認識と、被覆小窩を介する内在化と、低いpHがリガンドとレクチンとの解離を誘発するエンドソーム区画への複合体の輸送とに関与する。レクチンは細胞表面にリサイクルされ、工程を繰り返す(Essentials of Glycobiology, Varki A.ら, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)。
【0058】
哺乳動物において、既知であり充分に研究されたC型レクチンの1つに、肝細胞に独自に見出されるアシアロ糖タンパク質受容体(ASGP−R)がある。この高容量の受容体は、末端ガラクトースまたはN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)を有するリガンドと結合し、細胞表面へのリサイクルの前に、これらをリソソームに送る。ASGP−Rに対する天然のリガンドは、循環中にその末端シアル酸を喪失し、これらのN−グリカン上の末端近傍のGal残基のクラスターを露出させる血清糖タンパク質であると考えられる。その結果、ASGP−Rは、主として構造的に異なる糖タンパク質の血清濃度の維持に関与すると考えられる。
【0059】
より最近、ASGP−Rは、そのN−グリカンがシアル化GalNAcにて終結する糖タンパク質のより豊富でないファミリーを迅速にクリアランスするが、N−グリカンがシアル化Galで終結する大部分の糖タンパク質は、肝クッパー細胞に存在するガラクトース粒子受容体による末端シアル酸の除去の後に主として除去されることが見出された。実際に、ASGP−RのGalNAcで終結するNグリカンに対する親和性は、Galで終結するものに比べて約50倍高い。
【0060】
先行技術は、その末端糖残基がGalではなくGalNAcである組換え糖タンパク質を生成する方法を教示している。したがって、機能性UDP−Gal輸送体が欠損したCHO lec8細胞のβGalNAc転移酵素(βGalNAcT)での安定したトランスフェクションは糖タンパク質の発現となり、糖タンパク質のN−グリカンは三本鎖、四本鎖、およびβGalの代わりに最後から2番目のβGalNAcを有するさらに高度の構造である(Kawar, Haslamら, 2005)。このようなCHO細胞は、最後から2番目のβGalNAcをもつ組換え糖タンパク質の発現のために、通常のCHO細胞の代わりに使用され得る。
【0061】
ASGP−Rは、150,000〜500,000の結合部位/細胞をもち、肝細胞にきわめて豊富にある。肝臓に存在する肝細胞の数は、1匹のマウスにつき約2×108であり、ASGP−R内在化の速度は、106細胞毎に0.1pmol/分である。このような推定のもとに、マウスの肝臓は、ASGP−Rによって約1.2nmol/時間でリガンドを除去可能であり、これは20,000Daの分子量である糖タンパク質での2.4μg/時間に等しい(Park, Miら, 2005)。ヒト肝臓への推測においては、5mg/時または120mg/日を超える、ほぼ無限の可能なクリアランス速度が示唆される。分子量が2×106であるタンパク質の場合には、これらの値は5g/時または120g/日に増加する。
【0062】
肝臓ASGP−Rに基づき血清LDLを減少するいくつかのアプローチが開発された。1つのアプローチは、末端GalNAc残基を含有する糖脂質の合成に基づくものであった。この考えは、長鎖脂肪酸である糖脂質の疎水成分がLDL粒子に迅速および不可逆的に浸透することにより、粒子の肝臓ASGP−Rへの結合と、その後の内在化を可能にするものであった。この糖脂質は急性毒性の兆候を示さないが、LDLに対する特異性を示さず、実際にHDLおよび任意の細胞膜に結合可能であった。さらに、この全体的な洗剤様の構造は、長期毒性の危険性を上昇させる。それにもかかわらず、この研究は、〜30%の血清コレステロールの減少が見られ、ASGP−R手段が実現可能であることを示唆する原理の証明であった(Rensen, van Leeuwenら, 2004; Rensen, Sliedregtら, 2006)。
【0063】
初期の研究においては、ヒトLDLに対する抗体のFab断片の使用による、より多くのLDL特異的アプローチが採用された。乳糖は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムとの還元アミノ化によってこれらのFab断片に結合され、放射性標識ヒトLDLのクリアランスはラットにおいて実証された(Bernini, Tanenbaumら, 1986)。このアプローチは、これ自体が免疫原性であり得る抗体またはFab断面の使用により、特に血清LDLとの結合に必要な多くの量を定期的に投与すると抗イディオタイプの抗体の生成を導くために制限される。
【0064】
血液またはリンパ液などの細胞外液中に存在する、選択された物質を細胞内に輸送する代替的アプローチが、2005年2月22日に発行された米国特許第6,858,578号明細書に提供されている。米国特許第6,858,578号明細書の一実施例によると、可溶性LDLRおよびトランスフェリンを含むキメラが生成され、LDLの細胞への取り込みに使用される。このアプローチは実現可能ではあるが、これはLDLを特異的に肝臓に誘導しない。トランスフェリン受容体はほとんどの細胞種と臓器とにおいて発現する。ほとんどの細胞に進入する過剰なコレステロールは元の循環に分泌される。したがって、コレステロールが胆汁酸に代謝されて消化管に分泌され得る肝臓に対して、特異的に過剰のコレステロールを向かわせる必要性が依然として存在する。
【0065】
米国特許第5,958,408号明細書(Griffithsら, 1999年9月28日)および第5,965,131号明細書(Griffithsら, 1999年10月12日)は、診断用薬および治療薬の標的部位への輸送を記載する。これらの発明によると、「直接標的種(direct targeting species)」は、タンパク質に結合された診断用薬または治療薬である。例えば腫瘍特異性抗体などの前記タンパク質は、前記薬剤を標的組織に誘導する。「クリアランス剤」が提供され、これは直接標的種に対する特異的結合相補体である。該クリアランス剤の例は抗イディオタイプの抗体である。本発明の一実施態様において、クリアランス剤は、肝アシアロ糖タンパク質受容体に結合するガラクトースに共役され、これによってクリアランス剤およびクリアランス剤一次標的種複合体が肝細胞によって迅速に認識される。これは、患者に投与された過剰な治療薬または過剰な診断用薬を除去し、これらの薬剤の標的組織への改善された結合特異性を得るということである。
【0066】
酸化LDLは、主要なアテローム形成リポタンパク質である。その親LDLとは異なり、これはLDLRには結合しないため、肝取り込みによってクリアランスされない。oxLDLを代表的なリガンドとして使用する広範な研究により、集合的に「スカベンジャー受容体ファミリー」と分類される少なくとも11の異なる受容体が開示されている。終末糖化産物(AGE)とその受容体システムとは、AGEタンパク質もまた同一のスカベンジャー受容体による活性リガンドとして認識された最近の研究成果までは独立して研究されてきた。これらの受容体は、A型スカベンジャー受容体(SR−A)、CD36およびSR−BIなどのB型スカベンジャー受容体、D型スカベンジャー受容体(OLR1/LOX1)およびFEEL−1/FEEL−2を含むいくつかのサブファミリーに属する。マクロファージまたはマクロファージ由来細胞によるoxLDLおよびAGEタンパク質のエンドサイトーシス取り込みは、SR−AおよびCD36によって主として媒介される(Horiuchi, Sakamotoら, 2003)。SR−Aは、マクロファージに発現される膜貫通糖タンパク質である。この前駆体は、そのうちのN末端50が細胞質であり、26の膜貫通残基と375の残基が細胞外ドメインに続く451のアミノ酸残基からなる。細胞外ドメインは7の潜在的N−グリコシル化部位を含む。
【0067】
OLR−1/LOX−1は、血漿oxLDLおよびAGEタンパク質の肝クリアランスに関与するC型レクチン受容体である。これは、40kDaの単分子量の一回膜貫通型糖タンパク質であるが、Cys140でのジスルフィド結合によって80kDaの二量体として存在する(Xie, Matsunagaら, 2004)。OLR1/LOX−1前駆体は273のアミノ酸残基からなり、そのうち216のC末端残基は細胞外領域にあってリガンド結合ドメインを含有する。これは血管内皮と、肺、脊椎および骨髄などの血液豊富な器官とに発現する(Sawamura, Kumeら, 1997)。細胞外残基73および139は、潜在的N−グリコシル化部位である(Shi, Niimiら, 2001)。これは、血管内皮細胞およびマクロファージによるoxLDLの認識、内在化および分解を媒介する。
【0068】
可溶型のOLR1/LOX−1は大動脈内皮細胞の培地にて同定された。これは、Arg86またはLys89のいずれかを通る開裂によって膜結合性受容体のタンパク質分解により生じた(Murase, Kumeら, 2000)。予備的研究は、可溶性OLR1/LOX−1とoxLDLとの結合を示していない(Murase, Kumeら, 2000)。しかしながら、これは、グリコシル化が膜結合OLR1/LOX−1へのリガンド結合に必須であることが実証されたため、残基73での必須N−グリカンの損失によるものであった可能性がある(Kataoka, Kumeら, 2000)。しかしながら、より最近には、OLR1/LOX−1のリガンド結合ドメインに対応する可溶性受容体はoxLDLの内皮細胞への取り込みを阻害した(Smirnova, Sawamuraら, 2004)。
【0069】
可溶性受容体または結合タンパク質は、種々のサイトカインの活性を中和および阻害する手段として提案された。しかしながら、その大きい粒径のために、得られたサイトカイン可溶性受容体複合体は、個々の成分に比べて循環においてより長い半減期を有する。さらに、複合体の生成は可逆性であるため、サイトカインの持続的供給源となり得る。したがって、可溶性受容体とそのリガンドとのあいだに生じた複合体の迅速なクリアランスのための手段を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【0070】
一側面において、本発明は、末端Gal、GLcNAcまたはGAlNAcをもつように修飾された、TNF受容体スーパーファミリーの可溶性受容体、可溶性LDL受容体または関連ホモログ、可溶性スカベンジャー受容体、可溶性OLR1/LOX−1および可溶性FLk−1などの、サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質に関する。
【0071】
グリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の例としては、アシアロ可溶性TNFR(as−sTNFR)、アシアロ、アガラクト可溶性TNFR(as−ag−sTNFR)、ラクトサミン可溶性TNFR(lac−sTNFR)、N−アセチルガラクトサミン可溶性TNFR(sTNFR−Gn)、N−アセチルガラクトサミン可溶性LDLR(sLDLR−Gn)、N−アセチルガラクトサミン可溶性OLR1/LOX−1(sOLR1/LOX−1−Gn)およびラクトサミン可溶性FLk−1(lac−sFLK−1)を含むが、これらに限定されない。
【0072】
別の側面において、本発明は、可溶性受容体または結合タンパク質に結合可能な循環サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のクリアランスを促進するための医薬の製造における本発明のグリカン修飾可能性受容体または結合タンパク質の使用に関する。
【0073】
本発明の一実施態様において、リポタンパク質または酸化リポタンパク質は、LDL、VLDL、酸化LDLまたはレムナントリポタンパク質であり得る。
【0074】
本発明のさらなる実施態様において、サイトカインまたは成長因子は、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4/IL−13、IL−5、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12、IL−14、IL−15、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−28A、IL−28B、IL−29、アクチビン、アポ2L/TRAIL、APRIL、BAFF、TNFSF9、BMP−2、CD27L、BMP−3、BMP−7、CD30L、CD40L、CNTF、EGF、VEGF、FASL、FGF、CSF、FLT3、G−CSF、GDNF、GITRL、GM−CSF、GH、HGF、IGF I&II、IFN−α、IFN−γ、LIGHT、リンホトキシン、M−CSF、MSP、NGF、NT−3、NT−4、OX−40L、PDGF、プロラクチン、SCF、TGF−α、TGF−β、TPO、TRANCE、TSLPおよびTWEAKであり得る。
【0075】
別の側面において、本発明は、その病因または経過がサイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質の値および/または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防するための医薬の製造における、本発明のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の使用に関する。
【0076】
本発明の一実施態様において、疾患、障害または症状状態の病因または経過が、循環中のLDL、VLDL、酸化LDLおよびレムナントリポタンパク質などの過剰なリポタンパク質または酸化リポタンパク質に関連する。
【0077】
本発明のさらなる実施態様において、障害は高コレステロール血症である。
【0078】
本発明のさらに別の実施態様において、疾患、障害または症状の病因または経過が、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4/IL−13、IL−5、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12、IL−14、IL−15、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−28A、IL−28B、IL−29、アクチビン、アポ2L/TRAIL、APRIL、BAFF、TNFSF9、BMP−2、CD27L、BMP−3、BMP−7、CD30L、CD40L、CNTF、EGF、VEGF、FASL、FGF、CSF、FLT3、G−CSF、GDNF、GITRL、GM−CSF、GH、HGF、IGF I&II、IFN−α、IFN−γ、LIGHT、リンホトキシン、M−CSF、MSP、NGF、NT−3、NT−4、OX−40L、PDGF、プロアクチン、SCF、TGF−α、TGF−β、TPO、TRANCE、TSLPおよびTWEAKから選択されたサイトカインまたは成長因子の値または活性に関連する。
【0079】
本発明の別のさらなる実施態様において、疾患、障害または症状の病因または経過が過剰な成長因子により悪化されるか、または疾患、障害または症状の経過が成長因子の値を減少させることにより改善される。
【0080】
本発明の別のさらなる実施態様において、疾病が癌である。
【0081】
本発明のさらなる側面は、病因または経過がTNFの値または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防するための医薬の製造における、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性TNF受容体(sTNF)の使用に関する。
【0082】
病因または経過がTNFの値または活性に関連する疾患または障害あるいは症状の例として、関節リウマチ、クローン病および乾癬などの炎症性疾患や自己免疫疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明のさらなる実施態様において、sTNFRが、as−sTNFR、as−ag−sTNFR、lac−sTNFRおよび/またはsTNFR−Gnである。
【0084】
本発明のさらなる実施態様において、sTNFRがsTNFRp55である。
【0085】
また、本発明の別の側面は、高コレステロール血症の治療のための医薬の製造における、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性LDL(sLDLR)受容体またはその関連ホモログの使用に関する。
【0086】
本発明の一実施態様において、医薬は家族性高コレステロール血症の治療のためのものである。
【0087】
本発明のさらなる実施態様において、可溶性受容体がsLDLR−Gnである。
【0088】
本発明のさらなる側面は、個体におけるアテローム性動脈硬化症を治療または予防するための医薬の製造における、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性OLR1/LOX−1の使用に関する。
【0089】
本発明の一実施態様において、個体が、収縮性アテローム性動脈硬化症のリスクが高い個体である。
【0090】
本発明の別の実施態様において、可溶性受容体が、sOLR1/LOX−1−Gnである。
【0091】
本発明のさらなる特徴は、原発性癌または転移の治療のための医薬の製造における、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性FLk−1の使用に関する。
【0092】
本発明の一実施態様において、可溶性受容体が、ラクトサミン可溶性FLk−1(lac−sFLK−1)である。
【0093】
本発明の1つの目的は、循環サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のクリアランスを促進するための本発明のグリカン修飾可溶性受容体と、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物を提供することである。
【0094】
本発明は、循環サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のクリアランスを促進するための、薬学的に許容され得る担体と、可溶性アシアロTNFR(as−sTNFR)、アシアロ、アガラクト可溶性TNFR(as−ag−sTNFR)、ラクトサミン可溶性TNFR(lac−sTNFR)、N−アセチルガラクトサミン可溶性TNFR(sTNFR−Gn)、N−アセチルガラクトサミン可溶性LDLR(sLDLR−Gn)、N−アセチルガラクトサミン可溶性OLR1/LOX−1(sOLR1/LOX−1−Gn)およびラクトサミン可溶性FLk−1(lac−sFLK−1)から選択されるグリカン修飾可溶性受容体とを含む医薬組成物を提供する。
【0095】
本発明の別の目的は、本発明のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、循環サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のクリアランスを促進する方法を提供することである。
【0096】
本発明のさらなる目的は、本発明のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、病因または経過がサイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質の値および/または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防する方法を提供することである。
【0097】
また、本発明は、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性TNF受容体(sTNFR)の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、病因または経過がTNFの値または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防する方法を提供する。
【0098】
さらに、本発明は、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性LDL受容体(sLDLR)またはその関連ホモログの治療有効量を必要な対象に投与することを含む、高コレステロール血症を治療または予防する方法を提供する。
【0099】
さらに、本発明は、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性OLR/LOX−1の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、アテローム性動脈硬化症を治療または予防する方法を提供する。
【0100】
さらに、本発明は、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性FLk−1の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、原発性癌または転移を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】PNGase(N−グリコシダーゼFとしても知られる。これは、N型糖タンパク質由来の高マンノースでハイブリッドの複合オリゴ糖の最内側のGlcNAcとアスパラギン残基とのあいだで開裂するアミダーゼである)での処理前後のCHO細胞にて発現されたsLDLRのSDS−PAGEを示す。試料は勾配ゲルにて実施され、クマシーブルーで染色された。
【図2】LDLがある場合(実線)または無い場合(破線)におけるSuperose6カラムにてsLDLRのサイズ排除クロマトグラフィーにより得られた画分のsLDLRのELISAの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0102】
一側面において、本発明は、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質と、該可溶性受容体または結合タンパク質と結合可能な循環不要成分の迅速なクリアランスを促進するためのその使用に関する。
【0103】
可溶性受容体および結合タンパク質という用語は、種々のサイトカイン、成長因子、ポリペプチドホルモンおよび他の循環エフェクタータンパク質に高い親和性と特異性で結合する循環および人工タンパク質に関する。本発明による結合タンパク質という用語は、抗体およびその断片を除外する。可溶性受容体は、対応する細胞表面受容体の細胞外のリガンド結合ドメインを含む。このような可溶性受容体は、たとえば、可溶性受容体をコードするmRNAを通じて、あるいは細胞表面受容体のリガンド結合細胞外ドメインの酵素切断により生じ得る。また、本発明は、分泌されたリガンドを隔離する機能の「デコイ受容体」と称される多数の関連受容体に関する。このようなデコイ受容体の例は、DcR1、DcR2、DcR3およびオステオプロテゲリンである(OPG)である。結合タンパク質の例としては、IL−18結合タンパク質(IL−18BP)などの細胞表面受容体に対応しないサイトカイン結合タンパク質を含むが、これに限定されない。
【0104】
循環システム(科学的に特に循環器系として知られる)は、細胞へまたは細胞から物質を移動する器官系であり、またこれは、体温およびpH(ホメオスタシスの一部)を安定化することを補助し得る(ウィキペディア)。循環系の主要な要素は、心臓、血液および血管である。
【0105】
可溶型のサイトカイン受容体および結合タンパク質がサイトカイン活性の内生調節に関与するという発見は、免疫療法薬としての潜在的適用において相当な関心を促した。このため、可溶性サイトカイン受容体は、特異性、低免疫原性および高親和性を含む多くの利点を有する。多くの可溶性サイトカイン受容体がそのリガンドの結合および生物活性を阻害するという能力は、これをきわめて特異的なサイトカインアンタゴニストにする。通常、可溶性サイトカイン受容体に基づくほとんどの物質は安全で、良好な耐容性があり、ほとんどの患者においてわずかな副作用を示すのみである。可溶性サイトカイン受容体は、広範なヒトの疾患においての適用に対して多大な可能性を有する新世代の治療薬を構成する(IdrissおよびNaismith, 2000)。
【0106】
炎症性サイトカインの可溶性受容体または結合タンパク質は、このような炎症性サイトカインの作用を中和および阻害するように提案されたものである。一般的に、このような可溶性受容体および結合タンパク質は、それらのそれぞれの炎症性サイトカインの作用を中和するために過剰に投与される。しかしながら、その大きなサイズのために、得られた受容体/結合タンパク質−サイトカイン複合体は、個々の成分に比べて循環においてより長い半減期を有し得る。さらに、複合体の生成は可逆性であるため、複合体は炎症性サイトカインの持続的供給源となり得る。本発明による可溶性受容体または結合タンパク質の修飾は、可溶性受容体または結合タンパク質の炎症性サイトカインへの結合能を変化させずに循環から複合体の迅速なクリアランスを促進する。したがって、本発明は、炎症性サイトカインに、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾した可溶性受容体または結合タンパク質を提供することによって、ASGP−Rまたは他の任意のレクチン型細胞表面受容体など、循環からのタンパク質のクリアランスに関与する特異的な受容体に複合体を結合することを支援する。したがって、前述のグリカン修飾可能性受容体または結合タンパク質の投与は、循環する炎症性サイトカインの迅速なクリアランスを促進するために、本発明により提供される。同様に、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつように修飾された、成長因子の可溶性受容体または結合タンパク質が本発明により提供される。前述の成長因子の可溶性受容体または結合タンパク質の投与は、たとえば癌細胞の増殖または血管内皮増殖を支援する成長因子などの望ましくない循環成長因子の有効的で迅速なクリアランスのために、本発明により提供される。
【0107】
末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつ対応するグリカン修飾受容体または結合タンパク質を使用して循環からのクリアランスが促進可能な他の不要成分は、リポタンパク質または酸化リポタンパク質である。
【0108】
したがって、一側面において、本発明は、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾受容体または結合タンパク質と、その病因または経過が前述の受容体または結合タンパク質と結合可能な成分の値および/または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防するための医薬の製造における本発明のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の使用を提供する。前述の成分の例は、サイトカイン、成長因子、リポタンパク質および酸化リポタンパク質を含むが、これに限定されない。
【0109】
一実施態様において、本発明は、そのN−グリカン構造が本発明により修飾され、哺乳類細胞に発現されるサイトカインTNF−α(p55)の可溶性受容体を提供する。このような修飾可溶性TNF受容体(m−sTNFR)は、たとえば関節リウマチ、クローン病、乾癬および種々の他の自己免疫疾患など、過剰なTNFにより特徴付けられる疾患の治療に有効である。前記疾患を有する患者へのm−sTNFRの投与により、循環TNFとm−sTNFRとのあいだでの複合体が形成される。得られた複合体は、ASGP−Rまたは他の任意のレクチン型細胞表面受容体への結合によって循環から迅速にクリアランスされる。レクチン型受容体への結合に続いて、レクチン型受容体、m−sTNFRおよびTNF−αからなる三重複合体はレクチン受容体を通じて内在化して複合体が解離し、m−sTNFRおよびTNF−αはリソソーム中で分解されるのに対し、レクチン型受容体は細胞表面に復元再生される。このようなレクチン型受容体は肝臓、マクロファージ、血管内皮細胞および他の多くの細胞種中に豊富に存在する。
【0110】
末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcを有する修飾糖タンパク質を生成するためのいくつかの方法が先行技術において既知である。これらの方法は、3つの主要な群に分類され得る。(1)修飾グリカン構造による糖タンパク質の生合成に向けられた発現システム、(2)糖タンパク質の酵素変換反応、および(3)タンパク質の化学修飾。これらの方法は、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcを有する本発明の可溶性サイトカイン受容体または結合タンパク質を生成するために採用され得る。本発明の一実施態様において、CHO細胞に発現されるsTNFRp55が、末端Nアセチルノイラミン酸を除去するノイラミニダーゼで処理されることにより、最後から2番目のガラクトース残基を露出する。本発明の別の実施態様において、前記sTNFRは、ノイラミニダーゼ、次にβガラクトシダーゼにより処理されてGlcNAc残基を露出する。得られた切断糖タンパク質は、そのままで使用されるか、あるいはGalNAc転移酵素(βGalNAcT)の存在下でUDP−GalNAcとさらに反応させられる(Rice, Thomasら, 2003)。代替的に、sTNFRは、GalNAcをN−グリカン部分に組み込むシステム中に発現され得る。たとえば、CHO−lec8細胞は、βGalNAcTおよびsTNFRp55を発現するベクターで安定して共トランスフェクト可能である。これらの細胞はsTNFRを発現および分泌し、ここにてGal残基がGalNAcにより置き替えられる。得られた糖タンパク質のノイラミニダーゼによる処理は、最後から2番目のGalNAcを露出させる(Kawar, Haslamら, 2005)。別のアプローチにおいて、sTNFRp55は、ノイラミニダーゼ、次にβガラクトシダーゼにより処理されて、末端N−アセチルノイラミン酸および最後から2番目のβガラクトースを除去する。得られた切断糖タンパク質は、その後、GalNAcTの存在下でUDP−GalNAcと反応させられる(Rice, Thomasら, 2003)。末端GalNAcを有する得られたsTNFRは、GalNAcにより終結する糖タンパク質に対して高い特異性を示すフジ凝集体(Wisteria Floribunda)レクチン−アガロースカラムにて単離可能である(Do, Doら, 1997)。
【0111】
代替的には、GalNAcは、CHO細胞または大腸菌などの原核発現系において発現されるsTNFRに化学的に追加され得る。たとえば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムでの還元アミノ化により、GalNAcまたは乳糖をsTNFRにおいてLys残基のεアミノ基に直接結合することも可能である。同様に、GalNAcの2つの残基は、Lリジンのεおよびαアミノ基に結合可能であり、得られた誘導体は水溶性カルボジイミドにより活性化され、その後sTNFRにおいてLys残基のεアミノ基に結合されることにより、GalNAc残基とsTNFR骨格とのあいだにスペーサを生み出す。sTNFRへの結合に適した他のGalNAcシントンが文献に記載された。たとえば、Westerlindらの化合物5および8f(Westerlind, Westmanら, 2004)は、弱アルカリにより脱O−アセチル化され、水溶性カルボジイミドにより活性化されて、その後sTNFRに結合され得る。
【0112】
すべてのサイトカインおよび成長因子は特異的細胞表面受容体によって作用するため、前記受容体または結合タンパク質の細胞外ドメインを発現し、sTNFRp55のN−グリカンで説明したように、N−またはO−グリカンのいずれかを修飾することが可能である。代替的に、所望の糖残基がこのような可溶性受容体または結合タンパク質に化学的に追加可能である。次のサイトカインおよび成長因子のリストは、sTNFR p55について前述した1または複数の方法を使用して、本発明によりそのグリカン部分が修飾された、対応する可溶性受容体または結合タンパク質を使用して循環から迅速および効率的にクリアランスされ得るエフェクター分子の例である。IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4/IL−13、IL−5、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12、IL−14、IL−15、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−28A、IL−28B、IL−29、アクチビン、アポ2L/TRAIL、APRIL、BAFF、TNFSF9、BMP−2、CD27L、BMP−3、BMP−7、CD30L、CD40L、CNTF、EGF、VEGF、FASL、FGF、CSF、FLT3、G−CSF、GDNF、GITRL、GM−CSF、GH、HGF、IGF I&II、IFN−α、IFN−γ、LIGHT、リンホトキシン、M−CSF、MSP、NGF、NT−3、NT−4、OX−40L、PDGF、プロラクチン、SCF、TGF−α、TGF−β、TPO、TRANCE、TSLP、TWEAK。
【0113】
分子、生化学、微生物学および組換えDNA技術についての先行技術において既知のツールは、次の文献中に見出すことができる。Selected Methods in Cellular Immunology, W. H. Freeman and Co., New York (1980); Oligonucleotide Synthesis Gait, M. J., ed. (1984); Transcription and Translation Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1984); Animal Cell Culture Freshney, R. I., ed. (1986); Immobilized Cells and Enzymes IRL Press, (1986); Nucleic Acid Hybridization Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985); A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley & Sons, New York (1988); Molecular Cloning: A laboratory Manual Sambrook et al., (1989); Academic Press; PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications, Academic Press, San Diego, CA (1990); Perbal, Watson et al., Recombinant DNA, Scientific American Books, New York; Birren et al. (eds) Genome Analysis: A Laboratory Handbook, Cellis, J. E., ed. (1994); Current Protocols in Immunology Coligan J. E., ed. (1994); Stites et al. (eds), Basic and Clinical Immunology, Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994); Mishell and Shiigi (eds),; Marshak et al., Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual CSHL Press (1996); および A Laboratory Manual Series, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998); Methods in Enzymology Vol. 1-317。
【0114】
ASGP−Rは、150,000〜500,000の結合部位/細胞をもつ肝細胞にきわめて豊富にあり、さらなるレクチン受容体もまた多くの細胞種に存在するため、サイトカインまたは成長因子と、露出したGal、GlcNAcまたはGalNAcをもつ、それぞれの可溶性受容体とからなる複合体のクリアランスはきわめて迅速である。ちょうど1つのレクチン型受容体、ASGP−Rに対して入手できる情報は、クリアランスの有効性を実証する。したがって、肝臓中にある肝細胞数は、マウスにつき約2×108であり、ASGP−R内在化の速度は106細胞毎に0.1pmol/分である。このような推測に基づいて、マウスの肝臓は、ASGP−Rにより約1.2nmol/時にてリガンドを除去可能であり、または同等に2.4μg/時にて分子量が20,000の糖タンパク質を除去可能である(Park, Miら, 2005)。ヒトの肝臓に対する推定では、たとえば、m−sTNFRとTNF−αとの複合体の5mg/時または120mg/日を超えるほぼ無限の潜在的クリアランス速度が示唆される。
【0115】
本発明者らは、水疱性口内炎ウイルスに対する抗ウイルス活性に基づき、ヒトLDLR(sLDLR)のリガンド結合ドメインに対応する可溶性タンパク質を単離した(Fischer, Talら, 1993)。その後、本発明者らは、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞中に発現された組換えsLDLRを特徴付けした(LDLR前駆体のアミノ酸残基25〜352;受入番号第P01130、SwissProt/ExPASyデータベース)。予想外に、本発明によって、この可溶性LDLR(sLDLR)は、PNGaseによる開裂前後のSDS−PAGEにより決定されたようにN−グリコシル化されることが見出された(図1)。N−グリコシル化部位は、PNGaseでの処理前後において、トリプシンペプチド消化の質量分析的特徴を比較することにより、LDLR前駆体のAsn272にあることが見出された(表1)。本発明により、N−グリコシル化sLDLRはLDLに結合し、該結合は、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定されるように、生理学的条件での解離に抵抗することが見出された(図2)。したがって、末端GalNAc(sLDLR−Gn)をもつsLDLRが本発明により提供される。本発明によるsLDLR−Gnには、たとえば、全LDL結合部位を含む7つの不完全なリピートならびにEGF前駆体ホモログドメイン(リガンド結合に寄与すると報告されている)のリピートAを含有するアミノ酸残基25〜352にわたるLDLR前駆体のポリペプチドと、全LDL結合部位を含む7つの不完全なリピートを含有するアミノ酸残基25〜313にわたるLDLR前駆体のポリペプチドなどがあり得る。sLDLR−Gnの投与は、循環中のコレステロールの有効的で迅速な減少を促進するために、本発明により提供される。このような投与は、突然変異LDLRまたはLDLR減少による家族性高コレステロール血症を有する個体、ならびにLDLR値またはLDLR機能が減少した他の個人にとって有用である。sLDLR−Gnの投与は、HMG−CoA阻害物質などの血清コレステロールを減少する他の手段に耐容がない個人に対しても有用である。sLDLR−Gnの投与は、従来のいずれの方法によっても血清コレステロールが管理できないため、LDL血漿交換に依存する一部の家族性高コレステロール血症の患者にとって特に有用である。
【0116】
末端GalNAcを有するsLDLRまたは関連ホモログを生成するために、先行技術において既知であるいくつかの一般的方法を使用することができる。本発明の一実施態様において、CHO−lec8細胞は、βGalNAc転移酵素(βGalNAcT)およびsLDLRを発現するベクターとともに安定して共トランスフェクト可能である。これらの細胞は、最後から2番目のGalNAcを露出させるためにノイラミニダーゼで処理され得るsLDLR−Gnを発現および分泌する(Kawar, Haslamら, 2005)。別のアプローチにおいて、sLDLRは、CHO細胞などの宿主細胞中に発現され、培養上清から回収可能である。産生されたsLDLRはノイラミニダーゼ、次にβガラクトシダーゼにより処理されて、末端N−アセチルノイラミン酸および最後から2番目のβガラクトースを除去する。得られた切断糖タンパク質は、その後、GalNAcTの存在下にてUDP−GalNAcと反応させることができる(Rice, Thomasら, 2003)。得られたsLDLR−Gnは、GalNAcにて終端する糖タンパク質に対して高い特異性を示すフジ凝集体レクチン−アガロースカラムにて単離可能である(Do, Doら, 1997)。
【0117】
代替的に、GalNAcをsLDLRまたはその関連ホモログに化学的に追加可能である。たとえば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムでの還元アミノ化により、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)をsLDLRのLys残基のεアミノ基に直接結合可能である。同様に、GalNAcの2つの残基は、L−リジンのεおよびαアミノ基により結合可能であり、得られた誘導体は水溶性カルボジイミドにより活性化可能であり、その後sLDLRのLys残基のεアミノ基に結合されることにより、GalNAc残基とsLDLR骨格とのあいだにスペーサを生じる。sLDLRを結合するのに適した他のGalNAcシントンが文献に記載されていた。たとえば、Westerlindらの化合物5および8f(Westerlind, Westmanら, 2004)は、弱アルカリにより脱O−アセチル化され、水溶性カルボジイミドにより活性化されたのち、sLDLRに結合される。
【0118】
アポBの合成および異化率は、正常な個体において8.0±0.7mg/kg/日であり、FHヘテロ接合体の個人においては13.8±3.6mg/kg/日であり、FHホモ接合体の個人においては26.4±10mg/kg/日である(Bilheimer, Stoneら, 1979)。したがって、異化率は、5.8±3.6mg/kg/日の血漿アポBを除去することによりFHヘテロ接合体において標準化される。グリコシル化sLDLRの分子量は34,000で、アポBの分子量は550,000であるため(Johs, Hammelら, 2006)、100%の有効率を仮定すると、少なくとも0.36±0.22mg/kg/日のsLDLR−Gn誘導体の投与が、FHヘテロ接合体におけるLDLRの異化率を標準化する。しかしながら、肝細胞により得られたコレステロールの向上した取り込みは、さらに細胞表面LDLRの発現をダウンレギュレーションするため、投与量の増大を要する。極端な場合には、0.85±0.5mg/kg/日のsLDLR−Gn誘導体の投与がheFH患者の全コレステロール産出量を内在化する。また、sLDLRのアポE含有リポタンパク質への結合が生じる。アポEはきわめて大きいVLDRおよびさらに小さいHDL−アポEの両方に存在するため、リポタンパク質中に存在するアポEの正確な効果は評価できず、またsLDLR−Gnの最適投与量は実験的に決定されなければならない。
【0119】
2つ以上の構造体が、共通する祖先のために類似している場合にこれらはホモログであると称される。タンパク質およびDNAのあいだのホモロジーは、特に生物情報学において配列の類似性に基づきしばしば決定される。たとえば、通常、もし2つの遺伝子がほぼ同一のDNA配列を有する場合は、これらはホモログである可能性が高い。多くのアルゴリズムがタンパク質の配列を配列の系統群にまとめるために存在し、これらは一連の共通ホモログ配列である。配列のホモロジーは、オーソロガスまたはパラロガスの2種類であり得る。共通の祖先に由来する2つの異なる種における2つの類似した遺伝がオーソロガスである。ホモログ配列が種形成事象によって分かれた場合はオーソロガスである。もし遺伝子がある種において存在し、その種が2つの種に分岐した場合、得られた種におけるこの分岐コピーした遺伝子はオーソロガスである。オーソロガスの2つ目の定義は、2つの種において、きわめて類似した機能を有する任意の2つの遺伝子である。ホモログ配列が、遺伝子複製事象により分かれた場合はパラロガスである。生物中の遺伝子が同一のゲノムにおいて2つの異なる位置を占めるように複製された場合、その2つのコピーはパラロガスである。ミオグロビンおよびヘモグロビンをコードする遺伝子は古来のパラログと考えられる。
【0120】
そのそれぞれの細胞関連受容体の細胞外リガンド結合ドメインに対応し、Galの代わりにGalNAcをもつ可溶性スカベンジャー受容体を発現するために、本発明によって同様の方法が提供される。このような修飾可溶性受容体は、oxLDLおよびoxRLPなどの酸化リポタンパク質を結合してこれらを肝臓に渡し、ここにおいて複合体が迅速にASGP−Rに結合して内在化および分解される。sLDLRの場合、組換え可溶性スカベンジャー受容体はCHO−lec8細胞などの宿主細胞中に発現可能であり、βGalNAcTを発現するベクターと安定して共トランスフェクト可能である。可溶性スカベンジャー受容体構築物は、シグナルペプチドの配列コードに続き、前記スカベンジャー受容体の細胞外ドメインのいずれかのDNAコードを含む一般的配置を有する。分泌生成物はノイラミニダーゼで処理し、最後から2番目のGalNAcを露出させることが可能である(Kawar, Haslamら, 2005)。別のアプローチにおいて、可溶性スカベンジャー受容体のいずれかは、CHO細胞などの宿主細胞にて発現されて、培地から単離可能である。単離後、可溶性受容体は、ノイラミニダーゼ、次にβガラクトシダーゼで処理し、末端N−アセチルノイラミン酸および最後から2番目のβ−ガラクトシダーゼを除去することが可能である。得られた切断糖タンパク質は、GalNAcTの存在下でUDP−GalNAcと反応可能である(Rice, Thomasら, 2003)。得られた修飾可溶性スカベンジャー受容体は、GalNAcにて終端する糖タンパク質に対して高い特異性を示すフジ凝集体レクチン−アガロースカラムにて単離可能である(Do, Doら, 1997)。
【0121】
代替的に、GalNAcを可溶性スカベンジャー受容体に化学的に追加することが可能である。たとえば、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムでの還元アミノ化により、前記可溶性スカベンジャー受容体のLys残基のεアミノ基に直接結合可能である。同様に、GalNAcの2つの残基は、L−リジンのεおよびαアミノ基に結合可能であり、得られた誘導体は水溶性カルボジイミドにより活性化され、その後いずれかの可溶性スカベンジャー受容体のLys残基のεアミノ基に結合されることにより、GalNAc残基と前記受容体骨格とのあいだにスペーサを生ずる。種々のタンパク質との結合に適した他のGalNAcシントンが文献に記載された。たとえば、Westerlindらの化合物5および8f(Westerlind, Westmanら, 2004)は、弱アルカリにより脱O−アセチル化され、水溶性カルボジイミドにより活性化されて、その後可溶性スカベンジャー受容体のいずれかに結合される。
【0122】
本発明は、本発明によるグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質を含有する活性物質を含む医薬組成物を包含する。
【0123】
活性タンパク質の治療有効量は、たとえば投与経路、患者の臨床状態などの種々の変数の関数である。
【0124】
「治療有効量」とは、投与された場合、グリカン修飾受容体または結合タンパク質が生物活性を示すような量である。個人に対して単回または複数回の投与により投与される用量は、薬物動態特性、投与経路、患者の状態および特徴(性別、年齢、体重、健康状態およびサイズ)、症状の程度、併用療法、治療回数および所望の効果を含む種々の要因により変化する。設定された用量範囲の調整および操作、ならびに個人における効果を決定するインビトロおよびインビボ方法は当業者の能力の範囲内である。
【0125】
参考文献中に含まれたすべての情報は、参照としてここに組み入れられる。
【0126】
本発明を、次の非限定的実施例により説明する。
【実施例】
【0127】
実施例1:アシアロsTNFR p55の生成
製造者の指示にしたがって、PBS1ml中の50,000単位のノイラミニダーゼ(ニューイングランド バイオラボ(New England Biolabs)、カタログ番号P0720L)が、Affigel 10(1mlの充填ビーズ、バイオラッド ラボラトリーズ(BioRad Labs))に固定化され、カラム内に充填される。クエン酸緩衝液(50mM、pH6、10ml)中のCHO細胞(1g、メルクセローノ ラボラトリーズ(Merck Serono laboratories))に発現した、プロ−TNF−R1(http://www.expasy.org/uniprot/P19438)のアミノ酸22〜211に対応する組換えsTNFR p55が、25℃にて2時間、固定化されたノイラミニダーゼカラムを通って循環される。得られたアシアロsTNFR(as−sTNFR)は回収され、PBS(500ml、3回交換)に対して透析され、遊離N−アセチルノイラミン酸が除去される。
【0128】
実施例2:アシアロsTNFR p55からのβ1−3ガラクトースの除去
製造者の指示にしたがって、PBS1ml中の10,000単位のβ1−3ガラクトシダーゼ(ニューイングランド バイオラボ、カタログ番号P0726L)が、Affigel 10(1mlの充填ビーズ、バイオラッド ラボラトリーズ)に固定化され、カラム内に充填される。アセテート緩衝液(50mM、pH4.5、10ml)中の、実施例1で説明したように生成されたアシアロ−sTNFR p55(1g)が、25℃にて2時間、固定化されたβガラクトシダーゼカラムを通って循環される。得られたアシアロ−アガラクトsTNFR(as−ag−sTNFR)は回収され、PBS(500ml、3回交換)に対して透析され、遊離ガラクトースが除去される。
【0129】
実施例3:sTNFR p55のラクトサミン化
乳糖(270mg、0.79mmol、シグマ(Sigma))が、NaHCO3(50mM、10ml、pH8.4)中の大腸菌(1g、ぺプロテック社(PeproTech Inc.))に発現したプロ−TNF−R1(http://www.expasy.org/uniprot/P19438)のアミノ酸22〜211に対応する組換えsTNFR p55に添加され、ついでシアノ水素化ホウ素ナトリウム(48mg、0.79mmol)が添加される。溶液は室温にて170時間保持される。ラクトサミンsTNFR(lac−sTNFR)はPBS(500ml、3回交換)に対して透析され、低分子量成分が除去される。
【0130】
実施例4:末端GalNAcを有する組換えsTNFR p55の発現
CHO Lec8細胞(ATCC CRL−1737)は、CMVプロモーターの制御下にてCeβ4GalNAcTの完全なオープンリーディングフレームをコードするプラスミド(このプラスミドはジェネティシン耐性遺伝子もコードする。)で、記載されたように(Kawar,Haslamら,2005)トランスフェクトされた。細胞は、10%のウシ胎仔血清および600μg/mlのジェネティシン(インビトロジェン)を含有するダルベッコ改変イーグル培地中で培養されて、安定した転換細胞が選択された。4週間の培養後、Ceβ4GalNAcT活性を発現する細胞系(L8−GalNAcT)が、記載されたように(Kawar,Haslamら,2005)限界希釈培養によって単細胞からクローン化された。
【0131】
その後、L8−GalNAcT細胞は、CMVプロモーターの制御下にて、分泌のための同族シグナルペプチドを含むヒトTNFR(p55)のコドン1〜211のオープンリーディングフレーム(http://www.expasy.org/uniprot/P19438)を、続いて終止コドンをコードする哺乳類発現プラスミドpCDNA4/His(インビトロジェン)(このプラスミドはゼオシン耐性遺伝子もコードする。)で前述のようにトランスフェクトされる。その後、細胞は10%のウシ胎仔血清および600μg/mlのジェネティシンおよび400μg/mlのゼオシン(インビトロジェン)を含有するダルベッコ改変イーグル培地中で培養されて、安定した転換細胞が選択される。4週間の培養後、GalNAcTおよびsTNFRを発現する細胞系は、記載されたように(Selmaj, 2000; Kawar, Haslamら, 2005)単細胞からクローン化された。
【0132】
実施例5:CHO細胞に発現される組換えsLDLRは糖タンパク質である。
Cummingsらは、ヒトLDLRが単Asn結合オリゴ糖を含有することを見出した(Cummings, Kornfeldら, 1983)(15269頁、右欄、第3段落参照)。N−グリコシル化部位は、プロ−LDLRのAsn657に位置していた(http://www.expasy.org/uniprot/P01130)。すべてのOグリコシル化部位は、血漿膜に隣接した細胞外ドメインに集まっている(GentおよびBraakman, 2004)。したがって、sLDLR25−352のグリコシル化は見込まれない。328個のアミノ酸残基のsLDLR(プロsLDLRのAsp25〜Cys352に対応する)がCHO細胞(インターファーム ラボラトリーズ(InterPharm laboratories)、ネスジオナ(Ness Ziona)、イスラエル)中で生成された。簡潔には、hsLDLRおよびDHFR発現の両方が、プロモーターおよびSV40由来の転写終結要素により制御されている場合、DHFR−欠損CHO細胞のトランスフェクションのために構築される発現プラスミドは、同一プラスミド上に、プロhsLDLRのアミノ残基1〜352にわたるポリペプチドをコードするDNA配列[(同族24アミノ酸シグナルペプチドおよび後続に成熟ポリペプチドの328アミノ酸残基(LDLR前駆体タンパク質のアミノ酸25〜352にわたる)を含む)]と、マウスDHFRとを含有した。
【0133】
プロhsLDLRの1〜352のアミノ酸残基をコードするDNA断片は、全プロLDLR遺伝子をテンプレートとして使用してPCR増幅により単離された(LDLRのcDNA、Yamamotoら, Cell 39: 27-38, 1984)。増幅は、全量100マイクロリットル中に、1ngのテンプレート、400ngの各プライマー(フォアワードおよびリバース)、0.2nMのdNTP混合物、2mMのMgCl2、5U Pfu DNAポリメラーゼ(この酵素が供給される緩衝液で)を含むPCR反応混合物を使用して実施された。31回の熱サイクルが適用され(94℃にて1分間、65℃にて1分間、72℃にて2分間)、94℃での2分間の加熱が先行し、72℃での10分間の加熱が後続した。使用されたプライマーは、Hind III部位、コザック配列およびプロhsLDLRの最初の5のアミノ酸をコードする配列を含むフォワードプライマー(配列番号1)5'CCC AAGCTT CCACC ATG GGG CCC TGG GGC TG、ならびにBamHI部位、2つの停止コドンおよび最後がCys352である最後の6アミノ酸の配列を含むリバースプライマー(配列番号2)5'CCG GGATCC TTA CTA GCA TCT TCG CTG GGC CAC Cである。hsLDLRの発現カセットを含む中間プラスミドは、PCR生成物をHind IIIおよびBam HIで消化し、これをHINDIIIおよびBc1Iで事前に消化したpSVE3プラスミドに導入することにより得られた(これらの酵素による消化はpSVE3のほとんどのSV40初期領域を除去する)。hsLDLRおよびDHFRの発現カセットを含む最終プラスミドは、BamHIで中間プラスミドを消化してhsLDLR発現カセットを単離し、BamHIで事前に消化されたpDHFRの大きな断片に連結することにより得られた。当技術分野において既知の方法で、制限地図および配列分析による最終構築物の確認後、細胞は最終プラスミドによりトランスフェクトされ、DHFR陽性細胞を選択するために選択培地にさらされた。トランスフェクションは、製造者により説明されたプロトコルにしたがって、リポフェクトアミン(ギブコ(Gibco) BRL)を使用してカチオン性リポソームにより実施された。トランスフェクションの72時間後、細胞は、デオキシおよびリボヌクレオシドを欠き、10%透析FCSが補充された選択培地に移された。DHFR活性を発現した細胞は選択培地にてコロニーを形成することができ、これはトリプシン浸漬ペーパーディスクで細胞をリフティングさせることにより単離された。米国特許第6849720号明細書の実施例9に記載されているように、単離細胞は培養されてr−hsLDLR抗ウイルス活性について選別される。その後、r−hsLDLRを産生するトランスフェクト細胞は、徐々にMTX濃度を上昇させることにより遺伝子増幅され、安定した産生クローンのサブクローニングおよび選択がされた。r−hsLDLRは、Cys313を欠いたhsLDLRの短縮形(該特許において291型とされている、プロsLDLRからのアミノ酸25〜312全域)の産生を記載した米国特許第6849720号明細書の実施例1に示されたこのような安定したCHO産生クローンの培養から産生されたため、奇数のCys残基を含む。
【0134】
生成されたr−hsLDLRは、PNGase(15,000単位、ニューイングランド バイオラボ、カタログ番号P0704S)により製造者の指示にしたがい消化された。未消化と消化sLDLRのアリコート(各1μg)は、勾配ポリアクリルアミドゲル(8〜15%アクリルアミド)で分解されて、クマシーブルーで染色された。消化後にr−hsLDLRの移動度の著しい増加が見られ、CHO細胞に発現したr−hsLDLR25〜352が糖タンパク質であることを示した(図1)。
【0135】
実施例6:sLDLRのグリコシル化位置の測定
実施例5の非処理r−hsLDLRおよびPNGase消化r−hsLDLRに対応するバンドがゲルから切り出されて還元およびアルキル化され、ついでトリプシンで消化された。得られたペプチド混合物はMALDI−TOF質量分析を受けた。2つの調製物中で同定されたペプチドの比較により、PNGase後に出現した1つの新たなペプチド(ペプチド17)を明らかにした(表1)。このペプチドは、プロLDLRのAsn272にて潜在的N−グリコシル化部位を含むペプチド

に対応する。
【0136】
【表1】

【0137】
実施例7:組換えsLDLRとLDLの結合
表面プラズモン共鳴(BIAcore)によるCHO細胞中で産生された組換えsLDLRのLDLへの結合を実証する試みはうまくいかなかった。したがって、本発明者らは、sLDLRのLDLとの結合を試験する別の方法を採用した。この目的のため、本発明者らは、PBSプラス10μMの塩化カルシウム(PBS+)中にて、各7μMの最終濃度のLDL溶液(バイオメディカル テクノロジー社(Biomedical technologies, Inc.)、マサチューセッツ、米国)および実施例5のr−hsLDLRを37℃で1時間インキュベートした。0.1mlのアリコートが、Superose 6 HR 10/30カラム(GEヘルスケア ライフ サイエンス(GE Healthcare Life Sciences)、カタログ番号17−5172−01)にてサイズ排除クロマトグラフィーに付された。カラムは0.4ml/分の流速にてPBS+で溶出され、0.5mlの画分が集められた。r−hsLDLRの濃度は、つぎのとおり特異的ELISAにより測定された。
【0138】
Mab #28抗ヒトsLDLR(PBS中に5μg/ml;米国特許第6849720号明細書でNo.1−2391としてCNCMに寄託されたハイブリドーマクローン28由来のMabに対応)が、室温にて一晩、0.1ml/ウェルで96ウェルELISAプレートの被覆に使用された。その後、プレートは、0.05%のTween−20を含有するPBSで3回洗浄され、0.3mlのブロッキング緩衝液(PBS中に1%のウシ血清アルブミン、5%のショ糖、0.05%のアジ化ナトリウム)によってブロックされた。その後、プレートはPBSで3回洗浄された。0.1mlのPBS中のCHO細胞(125 ng/ml、インターファーム ラボラトリーズ、ネスジオナ、イスラエル)に発現した標準組換えsLDLR25〜352は、第1のウェルに添加され、連続的に2倍希釈された。同様に、未知量のsLDLRを含有する試料は他の列の第1のウェルに添加され、連続的に2倍希釈された。その後、プレートは室温にて2時間インキュベートされた後、ブロッキング緩衝液で3回洗浄された。試薬希釈剤(PBS中に1%のウシ血清アルブミン、0.1ml)中に4μg/mlに希釈された、ビオチン化mab #29.8抗ヒトsLDLR(米国特許第6849720号明細書でNo.1−2392としてCNCMに寄託されたハイブリドーマクローン29.8由来のMabに対応)が各ウェルに添加され、室温で2時間インキュベートされた。その後、プレートは試薬希釈剤で3回洗浄された。製造者(R&Dシステムズ(R&D systems))の指示にしたがって、作業希釈で試薬希釈剤中のストレプトアビジンHRP(R&Dシステムズ)(0.1ml)は、各ウェルに添加されて、プレートは室温にて20分間インキュベートされた。その後、プレートは試薬希釈剤で3回洗浄され、基質溶液(0.1mlTMB/E、ケミコン(Chemicon))が各ウェルに添加されて、プレートは630nmで5分以内で読み取られるか、またはH2SO4(2N、0.05ml)で停止されて450nmで読み取られた。プレートの光学的不完全性は、540nmまたは570nmでの表示を差し引くことにより補正された。
【0139】
sLDLRのみのクロマトグラフィー(図2の破線)は、画分27〜35にて溶出した遊離sLDLRのピークが画分31でピークに達したことを示した。LDL−sLDLR複合体のクロマトグラフィーは、LDL(平均質量2.5×106Da)移動のピークと同じ画分20〜26のより高い分子量にて溶出したsLDLRのピークならびに遊離sLDLRの大きなピークを示した。sLDLRのELISAにより測定された2つのピークの割合に基づき、初期濃度に対して5倍の希釈と仮定して、本発明者らは、LDL−sLDLR複合体のKDは10nMの範囲にあると想定する。
【0140】
実施例8:大腸菌に発現したsLDLRのN−アセチルガラクトサミン化
組換えsLDLR(プロLDLRのアミノ酸25〜352、http://www.expasy.org/uniprot/P01130)は大腸菌中に発現し、基本的に記載されたように(Simmons, Newhouseら,1997)再度折りたたまれ、精製される。N−アセチルガラクトサミン(100mg、0.4mmol、カルビオケム(Calbiochem))は、NaHCO3緩衝液(50mM、pH8.4、10ml)中の1gのsLDLR 25−352に添加され、その後シアノ水素化ホウ素ナトリウムが添加される(シグマ、28mg、0.46mmol)。溶液は室温にて170時間保持される。N−アセチルガラクトサミンsLDLR 25−352(sLDLR−Gn)は、PBS(500ml、3回交換)に対して透析されて低分子量成分が除去された。
【0141】
実施例9:大腸菌中のsLDLR断片のN−アセチルガラクトサミン化
アポE含有リポタンパク質(プロLDLRのアミノ酸146−233、http://www.expasy.org/uniprot/P01130)と選択結合可能な組換えsLDLR断片は、大腸菌中に発現し、基本的に記載されたように(Fisher, Abdul-Azizら,2004)再度折りたたまれ、精製される。N−アセチルガラクトサミン(340mg、1.5mmol)は、NaHCO3(50mM、pH8.4、10ml)中の1gのsLDLR 146−233に添加され、その後シアノ水素化ホウ素ナトリウム(91mg、1.5mmol)が添加される。溶液は室温にて170時間保持される。N−アセチルガラクトサミンsLDLR 146−233は、PBS(500ml、3回交換)に対して透析されて低分子量成分が除去された。
【0142】
実施例10:末端GalNAcを有するsLDLRの発現
実施例4のL8−GalNAcT細胞は、CMVプロモーターの制御下に、分泌のための同族シグナルペプチドを含むコドン1から315までヒトLDLRのオープンリーディングフレーム(http://www.expasy.org/uniprot/P01130)、続いて停止コドンをコードするプラスミドpCDNA4/His(インビトロジェン)(このプラスミドはゼオシン耐性遺伝子もコードする。)で前述のようにトランスフェクトされた。その後、細胞は10%のウシ胎仔血清、600μg/mlのジェネティシンおよび400μg/mlのゼオシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地中で培養されて、安定した転換細胞が選択される。4週間の培養後、RT−PCTにより測定されたGalNAcTと実施例7で記載されたELISAにより測定されたsLDLRとを発現する細胞系が、前述のように単細胞からクローン化される。Nグリカン(sLDLR−Gn)にてGalの代わりに最後から2番目のGalNAcを有するsLDLRは、これらのCHO細胞の培養上清から単離され、当技術分野において既知であるクロマトグラフィー法を使用して精製される。sLDLR−Gnは、末端N−アセチルノイラミン酸残基を除去するために固定化ノイラミニダーゼで処理される。sLDLR−Gnは、PBS(500ml、3回交換)に対して透析されて低分子量成分が除去される。
【0143】
実施例11:大腸菌に発現した可溶性oxLDL受容体断片のN−アセチルガラクトサミン化
oxLDLに選択結合可能なOLR1/LOX−1の組換え断片(OLR1/LOX−1のアミノ酸143−273)は大腸菌中に発現し、基本的に記載されたように(Smirnova, Sawamuraら,2004)(Ishigaki, Ohkiら,2005)再度折りたたまれ、精製される。N−アセチルガラクトサミン(340mg、1.5mmol)は、NaHCO3(50mM、pH8.4、10ml)中の1gのsOLR1/LOX−1 143−273に添加され、その後シアノ水素化ホウ素ナトリウムが添加される(91mg、1.5mmol)。溶液は室温にて170時間保持される。N−アセチルガラクトサミンsOLR1/LOX1 143 273(sOLR1/LOX−1−Gn)は、PBS(500ml、3回交換)に対して透析されて低分子量成分が除去される。
【0144】
実施例12:末端GalNAcを有するsOLR1/LOX−1の発現
実施例4のL8−GalNAcT細胞は、CMVプロモーターの制御下に、ヒトOLR1/LOX−1のオープンリーディングフレームのコドン58−273に続くシグナルペプチド(http://www.expasy.org/uniprot/P78380)、続いて停止コドンをコードするプラスミドpCDNA4/His(インビトロジェン)で前述のようにトランスフェクトされる。また、このプラスミドはゼオシン耐性遺伝子をコードする。その後、細胞は10%のウシ胎仔血清、600μg/mlのジェネティシンおよび400μg/mlのゼオシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地中で培養されて、安定した転換細胞が選択される。4週間の培養後、GalNAcTおよびsOLR1/LOX−1を発現する細胞系が前述のように単細胞からクローン化される。N−グリカンにてGalの代わりに最後から2番目のGalNAcを有するsOLR1/LOX−1(sOLR1/LOX−1−Gn)は、これらのCHO細胞の培養上清から単離され、当該技術分野において既知であるクロマトグラフィー法を使用して精製される。sLDLR−Gnは、末端N−アセチルノイラミン酸残基を除去するために固定化ノイラミニダーゼで処理される。N−アセチルグルコサミンsOLR1/LOX−1(sOLR1/LOX−1−Gn)は、PBS(500ml、3回交換)に対して透析されて低分子量成分が除去される。
【0145】
実施例13:末端ガラクトースを有するsVEGF受容体2の発現
アミノ酸20から764の可溶性VEGF受容体2(sFlK−1)(http://www.expasy.org/uniprot/P35968)は、基本的に記載されたように(Huang, Gottsteinら,1998)バキュロウイルス系にて発現する。得られたsFLk−1は、当該技術分野において既知であるクロマトグラフィー法を使用して精製され、製造者の指示にしたがってAffigel 10(1mlの充填ビーズ、バイオラッド ラボラトリーズ)に固定化されたPNGase(15,000単位、ニューイングランド バイオラボ、カタログ番号P0704S)により処理され、実施例3の記載のように化学的にラクトサミン化されて、ラクトサミンsFlk−1(lac−sFLK−1)が得られる。lac−sFLK−1は、PBS(500ml、3回交換)に対して透析されて低分子量成分が除去される。
【0146】
実施例14:ラットの循環からの過剰TNF−アルファの除去
PBS中のヒトTNF−アルファ(1mg/ml、0.1mlのPBSで)が、PBS(0.1ml)、sTNFR p55(5mg/ml、0.1mlのPBSで)または実施例1のアシアロsTNFR p55(5mg/ml、0.1mlのPBSで)とともに、麻酔された成体ラット(300g)の尾部静脈に注射される。時間0から開始して、血液試料(0.1ml)が20分間隔で120分にわたり抽出される。血清が集められ、血清TNF値がELISAにより測定される。血清TNFの半減期は30分間である。これは、sTNFR p55の同時投与により増加し、アシアロsTNFR p55の同時投与により減少する。
【0147】
実施例15:アシアロTNFRによる関節リウマチの治療
実施例1のAs−sTNFRが、1日用量50mg/sq.m.にて関節リウマチ患者の皮下に投与される。
【0148】
実施例16:sLDLR−Gnによる家族性高コレステロール血症の治療
実施例8または10のsLDLR−Gnが、1日用量50mg/sq.m.にて、血清コレステロールが200mg%を超える患者の皮下または点滴(infusion)により投与される。
【0149】
実施例17:sOLR1/LOX−1−Gnによるアテローム性動脈硬化症を発現する危険性が高い患者の治療
実施例11または12のsOLR1/LOX−1−Gnが、1日用量50mg/sq.m.にて、血清コレステロールが200 mg%を超える患者の皮下に投与される。
【0150】
実施例18:lac−sFlk−1による癌患者の治療
実施例13のlac−sFlk−1が、1日用量50mg/sq.m.にて、癌患者の皮下に投与される。
【0151】








【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつように修飾された、サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質。
【請求項2】
TNF受容体スーパーファミリーの可溶性受容体、可溶性LDL受容体またはその関連ホモログ、可溶性スカベンジャー受容体、可溶性OLR1/LOX−1および可溶性FLk−1から選択される請求項1記載のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質。
【請求項3】
アシアロ可溶性TNFR(as−sTNFR)、アシアロ、アガラクト可溶性TNFR(as−ag−sTNFR)、ラクトサミン可溶性TNFR(lac−sTNFR)、N−アセチルガラクトサミン可溶性TNFR(sTNFR−Gn)、N−アセチルガラクトサミン可溶性LDLR(sLDLR−Gn)、N−アセチルガラクトサミン可溶性OLR1/LOX−1(sOLR1/LOX−1−Gn)およびラクトサミン可溶性FLk−1(lac−sFLK−1)から選択される請求項1または2記載のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質。
【請求項4】
前記可溶性受容体または結合タンパク質に結合可能な、循環サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のクリアランスを促進するための医薬の製造における請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の使用。
【請求項5】
リポタンパク質または酸化リポタンパク質が、LDL、VLDL、酸化LDLおよびレムナントリポタンパク質から選択される請求項4記載の使用。
【請求項6】
サイトカインまたは成長因子が、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4/IL−13、IL−5、IL−7、IL−9、IL−1O、IL−12、IL−14、IL−15、IL− 17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−28A、IL−28B、IL−29、アクチビン、アポ2L/TRAIL、APRIL、BAFF、TNFSF9、BMP−2、CD27L、BMP−3、BMP−7、CD30L、CD40L、CNTF、EGF、VEGF、FASL、FGF、CSF、FLT3、G−CSF、GDNF、GITRL、GM−CSF、GH、HGF、IGF I & II、IFN−α、IFN−γ、LIGHT、リンホトキシン、M−CSF、MSP、NGF、NT−3、NT−4、OX−40L、PDGF、プロラクチン、SCF、TGF−α、TGF−β、TPO、TRANCE、TSLPおよびTWEAKから選択される請求項4記載の使用。
【請求項7】
病因または経過がサイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質の値および/または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防するための医薬の製造における、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の使用。
【請求項8】
疾患、障害または症状の病因または経過が、循環中の過剰なリポタンパク質または酸化リポタンパク質に関連する請求項7記載の使用。
【請求項9】
リポタンパク質または酸化リポタンパク質が、LDL、VLDL、酸化LDLまたはレムナントリポタンパク質から選択される請求項8記載の使用。
【請求項10】
障害が、高コレステロール血症である請求項7〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
疾患、障害または症状の病因または経過が、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4/IL−13、IL−5、IL−7、IL−9、IL−1O、IL−12、IL−14、IL−15、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−28A、IL−28B、IL−29、アクチビン、アポ2L/TRAIL、APRIL、BAFF、TNFSF9、BMP−2、CD27L、BMP−3、BMP−7、CD30L、CD40L、CNTF、EGF、VEGF、FASL、FGF、CSF、FLT3、G−CSF、GDNF、GITRL、GM−CSF、GH、HGF、IGF I & II、IFN−α、IFN−γ、LIGHT、リンホトキシン、M−CSF、MSP、NGF、NT−3、NT−4、OX−40L、PDGF、プロラクチン、SCF、TGF−α、TGF−β、TPO、TRANCE、TSLPおよびTWEAKから選択されるサイトカインまたは成長因子の値または活性に関連する請求項7記載の使用。
【請求項12】
疾患、障害または症状の病因または経過が過剰な成長因子により悪化されるか、または疾患、障害または症状の経過が成長因子の値を減少させることにより改善される請求項7記載の使用。
【請求項13】
疾患が癌である請求項12記載の使用。
【請求項14】
病因または経過がTNFの値または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防するための医薬の製造における、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性TNF受容体(sTNFR)の使用。
【請求項15】
疾患、障害または症状が、過剰なTNFに関連する請求項14記載の使用。
【請求項16】
疾患が、自己免疫疾患または炎症性疾患である請求項14または15記載の使用。
【請求項17】
自己免疫疾患が、関節リウマチ、クローン病および乾癬から選択される請求項16記載の使用。
【請求項18】
疾患が関節リウマチである請求項16記載の使用。
【請求項19】
可溶性受容体が、as−sTNFR、as−ag−sTNFR、lac−sTNFRおよび/またはsTNFR−Gnから選択される請求項14〜18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
sTNFRがsTNFRp55である請求項19記載の使用。
【請求項21】
高コレステロール血症の治療のための医薬の製造における、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性LDL受容体(sLDLR)またはその関連ホモログの使用。
【請求項22】
家族性高コレステロール血症の治療のための請求項21記載の使用。
【請求項23】
可溶性受容体がsLDLR−Gnである請求項21または22記載の使用。
【請求項24】
個体におけるアテローム性動脈硬化症を治療または予防するための医薬の製造における、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性OLR1/LOX−1の使用。
【請求項25】
前記個体が、収縮性アテローム性動脈硬化症のリスクが高い個体である請求項24記載の使用。
【請求項26】
可溶性受容体が、sOLR1/LOX−1−Gnである請求項24または25記載の使用。
【請求項27】
原発性癌または転移の治療のための医薬の製造における、末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性FLk−1の使用。
【請求項28】
可溶性受容体が、ラクトサミン可溶性FLk−1(lac−sFLK−1)である請求項27記載の使用。
【請求項29】
循環サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のクリアランスを促進するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリカン修飾可溶性受容体と薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項30】
循環サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のクリアランスを促進するための、薬学的に許容され得る担体と、可溶性アシアロTNFR(as−sTNFR)、アシアロ−アガラクト可溶性TNFR(as−ag−sTNFR)、ラクトサミン可溶性TNFR(lac−sTNFR)、N−アセチルガラクトサミン可溶性TNFR(sTNFR−Gn)、N−アセチルガラクトサミン可溶性LDLR(sLDLR−Gn)、N−アセチルガラクトサミン可溶性OLR1/LOX−1(sOLR1/LOX−1−Gn)およびラクトサミン可溶性FLk−1(lac−sFLK−1)から選択されるグリカン修飾可溶性受容体とを含む医薬組成物。
【請求項31】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、循環サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のクリアランスを促進する方法。
【請求項32】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、病因または経過がサイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質の値および/または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防する方法。
【請求項33】
末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性TNF受容体(sTNFR)の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、病因または経過がTNFの値または活性に関連する疾患、障害または症状を治療または予防する方法。
【請求項34】
末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性LDL受容体(sLDLR)またはその関連ホモログの治療有効量を必要な対象に投与することを含む、高コレステロール血症を治療または予防する方法。
【請求項35】
末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性OLR1/LOX−1の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、アテローム性動脈硬化症を治療または予防する方法。
【請求項36】
末端Gal、GlcNAcまたはGalNAcをもつグリカン修飾可溶性FLk−1の治療有効量を必要な対象に投与することを含む、原発性癌または転移を治療する方法。
【請求項37】
病因または経過がサイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質の値および/または活性に関連する疾患または障害または症状を治療または予防するための、末端Gal、GlcNAc、GalNAcをもつように修飾された、サイトカイン、成長因子、リポタンパク質または酸化リポタンパク質のグリカン修飾可溶性受容体または結合タンパク質。

【図2】
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【図1】
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【公表番号】特表2010−526773(P2010−526773A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−505006(P2010−505006)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000574
【国際公開番号】WO2008/135972
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】