説明

グリコペプチド抗細菌剤と組み合わせたポリエンマクロライド抗真菌剤の使用

【課題】ポリエンマクロライドの副作用を減少させる、このような薬剤を投与する新規方法を提供すること。特に、このような抗真菌剤の効果を増強させ、それによって投与されるこのような抗真菌剤の量の低減を可能にする新規方法および組成物を提供すること。
【解決手段】ポリエンマクロライド抗真菌剤をグリコペプチド抗細菌剤と組み合わせて投与する新規方法。少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤がポリエンマクロライド抗真菌剤と組み合わせて投与される場合、ポリエンマクロライド抗真菌剤の効果が実質的に増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、グリコペプチド抗細菌剤と組み合わせたポリエンマクロライド抗真菌剤の使用に関する。より詳細には、本発明は、真菌感染を処置するために、グリコペプチド抗細菌剤と組み合わせてポリエンマクロライド抗真菌剤を使用する方法、ならびにポリエンマクロライド抗真菌剤およびグリコペプチド抗細菌剤を含む組成物、キットおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
(技術水準)
ポリエンマクロライド抗真菌剤(例えば、アンホテリシンBおよびニスタチン)は、真菌感染の処置に関する分野では周知である。しかし、非経口的に投与される場合、このようなポリエンマクロライド抗真菌剤は、多数の重篤な副作用(腎臓毒性が挙げられる)を有する。これらの副作用は、患者に安全に投与され得るポリエンマクロライド抗真菌剤の量を制限し、従って、このような副作用は、これらの抗真菌剤の有効性を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、ポリエンマクロライドの副作用を減少させる、このような薬剤を投与する新規方法に対する必要性が存在する。特に、このような抗真菌剤の効果を増強させ、それによって投与されるこのような抗真菌剤の量の低減を可能にする新規方法および組成物に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、ポリエンマクロライド抗真菌剤(polyene macrolide antifungal agent)をグリコペプチド抗細菌剤(glycopeptide antibacterial agent)と組み合わせて投与する新規方法を提供する。驚くべきことに、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤がポリエンマクロライド抗真菌剤と組み合わせて投与される場合、ポリエンマクロライド抗真菌剤の効果が実質的に増加することが発見された。従って、このようなグリコペプチド抗細菌剤と組み合わせて使用される場合、真菌感染を処置するために必要であるポリエンマクロライド抗真菌剤の量は減少し、それにより副作用もより少なくなる。
【0005】
従って、本発明の方法の一局面において、本発明は、ポリエンマクロライド抗真菌剤を被験体に投与するための方法を提供し、上記方法は、ポリエンマクロライド抗真菌剤および少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤を被験体に投与する工程を包含する。
【0006】
本発明の方法の別の局面において、本発明は、被験体の真菌感染を処置するための方法を提供し、上記方法は、被験体に抗真菌量のポリエンマクロライド抗真菌剤および少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤を投与する工程を包含する。
【0007】
本発明のなお別の局面において、本発明は、ポリエンマクロライド抗真菌剤の効力を増加させるための方法を提供し、上記方法は、ポリエンマクロライド抗真菌剤を、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤と組み合わせて被験体に投与する工程を包含する。
【0008】
本発明の組成物の一局面において、本発明は、以下を含有する薬学的組成物を提供する:
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤;および
(c)薬学的に受容可能なキャリア。
【0009】
別の局面において、本発明は、以下を備えるキットを提供する:
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;および
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤。
【0010】
一実施形態において、上記キットはさらに、上記抗真菌剤および抗細菌剤を処置の必要な被験体に投与するための指示書を備える。
【0011】
なお別の局面において、本発明は、被験体における真菌感染を処置するためのシステムを提供し、上記システムは、以下を備える。
【0012】
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;および
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤。
【0013】
本発明はまた、真菌感染を処置するための医薬の製造における以下の使用に関する:
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;および
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤。
【0014】
特に、本発明は、真菌感染の処置のために、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤と併用投与するための医薬の製造におけるポリエンマクロライド抗真菌剤の使用に関する。
【0015】
さらに、本発明は、真菌感染の処置のために、ポリエンマクロライド抗真菌剤と併用投与するための医薬の製造における、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤の使用に関する。
【0016】
本発明のなお別の局面において、本発明は、以下を含む組み合わせを提供する:
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;および
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤。
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下の使用などが提供される:
(項目1)
真菌感染の処置のための医薬の製造における、以下:
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;および
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有する、グリコペプチド抗細菌剤;の使用。
(項目2)
真菌感染の処置のための、グリコペプチド抗細菌剤と一緒の併用投与のための医薬の製造におけるポリエンマクロライド抗真菌剤の使用であり、該グリコペプチド抗細菌剤は、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有する、使用。
(項目3)
真菌感染の処置のための、ポリエンマクロライド抗真菌剤との併用投与のための医薬の製造における、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤の使用。
(項目4)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤および前記グリコペプチド抗細菌剤が、連続して投与される、項目1〜3のいずれか1項に記載の使用。
(項目5)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤および前記グリコペプチド抗細菌剤が、同時に投与される、項目1〜3のいずれか1項に記載の使用。
(項目6)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンB、カンジジン、カンジドイン、カンジジニン、ミコヘプチン、ニスタチン、ポリフンジン、オウレオファシン、バシジン、トリコマイシン、カンジシジンまたはピマリシンであるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、項目1〜5のいずれか1項に記載の使用。
(項目7)
前記グリコペプチド抗細菌剤が、半合成化合物である、項目1〜6のいずれか1項に記載の使用。
(項目8)
前記グリコペプチド抗細菌剤が、テラバンシン、オリタバンシン、ダルババンシンおよびテイコプラニン;またはそれらの薬学的に受容可能な塩から選択される、項目1〜6のいずれか1項に記載の使用。
(項目9)
項目1〜6のいずれか1項に記載の使用であって、前記グリコペプチド抗細菌剤が、式Iの化合物:
【化1】


またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその立体異性体であり、
ここで、
およびXは、独立して、水素またはクロロであり;
は、
(a)-R
(b)−C(O)−R
(c)-R-W
(d)-C(O)-R-W;および
(e)-R-Y-R
からなる群より選択され、
ここで、
およびRは、独立して、C8〜14アルキル、C8〜14アルケニルまたはC8〜14アルキニルであり;
およびRは、独立して、C1〜8アルキレンであり;
は、C2〜8アルキレンであり;
は、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニルまたはC2〜12アルキニルであり;
およびWは、独立して、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、−(フェニル)、−CH−(フェニル)、−O−(フェニル)、および−O−CH−(フェニル)からなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で必要に応じて置換されたフェニルであり;ここで各−(フェニル)基は、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロからなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換され;
Yは、O、SまたはNHであり;
ただし、Rは、少なくとも8個の炭素原子を含み;
およびRのうちの1つは、ヒドロキシであり、そしてもう1つは、水素であり;
およびRは、独立して、水素またはメチルであり;
は、水素または式(f)の基:
【化2】


であり、
は、水素または式(g)の基:
【化3】


であり、
nは、1〜6の整数である、
使用。
(項目10)
項目9に記載の使用であって、ここで:
およびXは、両方ともクロロであり;
は、−CHCH−NH−(CHCHであり;
は、ヒドロキシであり;
は、水素であり;
は、メチルであり;
は、水素であり;
は、水素であり;そして
は、−CH−NH−CH−P(O)(OH)である、
使用。
(項目11)
項目9に記載の使用であって、ここで:
およびXは、両方ともクロロであり;
は、以下の式:
【化4】


の基であり;
は、水素であり;
は、ヒドロキシであり;
は、メチルであり;
は、水素であり;
は、式(f)の基であり;そして
は、水素である、
使用。
(項目12)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンBである、項目1〜11のいずれか1項に記載の使用。
(項目13)
薬学的組成物であって、以下:
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤;および
(c)薬学的に受容可能なキャリア
を含有する、薬学的組成物。
(項目14)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンB、カンジジン、カンジドイン、カンジジニン、ミコヘプチン、ニスタチン、ポリフンジン、オウレオファシン、バシジン、トリコマイシン、カンジシジンまたはピマリシンであるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、項目13に記載の薬学的組成物。
(項目15)
前記グリコペプチド抗細菌剤が、テラバンシン、オリタバンシン、ダルババンシンおよびテイコプラニン;またはそれらの薬学的に受容可能な塩から選択される、項目13または14に記載の薬学的組成物。
(項目16)
項目13または14に記載の薬学的組成物であって、ここで前記グリコペプチド抗細菌剤が、式Iの化合物:
【化5】


またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその立体異性体であり、
ここで、
およびXは、独立して、水素またはクロロであり;
は、
(a)-R
(b)−C(O)−R
(c)-R-W
(d)-C(O)-R-W;および
(e)-R-Y-R
からなる群より選択され、
ここで、
およびRは、独立して、C8〜14アルキル、C8〜14アルケニルまたはC8〜14アルキニルであり;
およびRは、独立して、C1〜8アルキレンであり;
は、C2〜8アルキレンであり;
は、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニルまたはC2〜12アルキニルであり;
およびWは、独立して、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、−(フェニル)、−CH−(フェニル)、−O−(フェニル)、および−O−CH−(フェニル)からなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で必要に応じて置換されたフェニルであり;ここで各−(フェニル)基は、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロからなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換され;
Yは、O、SまたはNHであり;
ただし、Rは、少なくとも8個の炭素原子を含み;
およびRのうちの1つは、ヒドロキシであり、そしてもう1つは、水素であり;
およびRは、独立して、水素またはメチルであり;
は、水素または式(f)の基:
【化6】


であり、
は、水素または式(g)の基:
【化7】


であり、
nは、1〜6の整数である、
薬学的組成物。
(項目17)
項目16に記載の薬学的組成物であって、ここで:
およびXは、両方ともクロロであり;
は、−CHCH−NH−(CHCHであり;
は、ヒドロキシであり;
は、水素であり;
は、メチルであり;
は、水素であり;
は、水素であり;そして
は、−CH−NH−CH−P(O)(OH)である、
薬学的組成物。
(項目18)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンBである、項目13〜17のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目19)
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;および
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤、
を含む、組み合わせ。
(項目20)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンB、カンジジン、カンジドイン、カンジジニン、ミコヘプチン、ニスタチン、ポリフンジン、オウレオファシン、バシジン、トリコマイシン、カンジシジンまたはピマリシンであるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、項目19に記載の組み合わせ。
(項目21)
前記グリコペプチド抗細菌剤が、テラバンシン、オリタバンシン、ダルババンシンおよびテイコプラニン;またはそれらの薬学的に受容可能な塩から選択される、項目19または20に記載の組み合わせ。
(項目22)
項目19または20に記載の組み合わせであって、ここで前記グリコペプチド抗細菌剤が、式Iの化合物:
【化8】


またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその立体異性体であり、
ここで、
およびXは、独立して、水素またはクロロであり;
は、
(a)-R
(b)−C(O)−R
(c)-R-W
(d)-C(O)-R-W;および
(e)-R-Y-R
からなる群より選択され、
ここで、
およびRは、独立して、C8〜14アルキル、C8〜14アルケニルまたはC8〜14アルキニルであり;
およびRは、独立して、C1〜8アルキレンであり;
は、C2〜8アルキレンであり;
は、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニルまたはC2〜12アルキニルであり;
およびWは、独立して、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、−(フェニル)、−CH−(フェニル)、−O−(フェニル)、および−O−CH−(フェニル)からなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で必要に応じて置換されたフェニルであり;ここで各−(フェニル)基は、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロからなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換され;
Yは、O、SまたはNHであり;
ただし、Rは、少なくとも8個の炭素原子を含み;
およびRのうちの1つは、ヒドロキシであり、そしてもう1つは、水素であり;
およびRは、独立して、水素またはメチルであり;
は、水素または式(f)の基:
【化9】


であり、
は、水素または式(g)の基:
【化10】


であり、
nは、1〜6の整数である、
組み合わせ。
(項目23)
項目22に記載の組み合わせであって、ここで:
およびXは、両方ともクロロであり;
は、−CHCH−NH−(CHCHであり;
は、ヒドロキシであり;
は、水素であり;
は、メチルであり;
は、水素であり;
は、水素であり;そして
は、−CH−NH−CH−P(O)(OH)である、
組み合わせ。
(項目24)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンBである、項目19〜23のいずれか1項に記載の組み合わせ。
(項目25)
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;および
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤、
を備える、キット。
(項目26)
前記キットが、前記ポリエンマクロライド抗真菌剤および前記グリコペプチド抗細菌剤を被験体に投与するための指示書をさらに備える、項目25に記載のキット。
(項目27)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤および前記グリコペプチド抗細菌剤が、別個の薬学的組成物中に存在する、項目25または26に記載のキット。
(項目28)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤および前記グリコペプチド抗細菌剤が、単一の薬学的組成物として存在する、項目25または26に記載のキット。
(項目29)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンB、カンジジン、カンジドイン、カンジジニン、ミコヘプチン、ニスタチン、ポリフンジン、オウレオファシン、バシジン、トリコマイシン、カンジシジンまたはピマリシンであるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、項目25〜28のいずれか1項に記載のキット。
(項目30)
前記グリコペプチド抗細菌剤が、テラバンシン、オリタバンシン、ダルババンシンおよびテイコプラニン;またはそれらの薬学的に受容可能な塩から選択される、項目25〜29のいずれか1項に記載のキット。
(項目31)
項目25〜29のいずれか1項に記載のキットであって、ここで前記グリコペプチド抗細菌剤が、式Iの化合物:
【化11】


またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその立体異性体であり、
ここで、
およびXは、独立して、水素またはクロロであり;
は、
(a)-R
(b)−C(O)−R
(c)-R-W
(d)-C(O)-R-W;および
(e)-R-Y-R
からなる群より選択され、
ここで、
およびRは、独立して、C8〜14アルキル、C8〜14アルケニルまたはC8〜14アルキニルであり;
およびRは、独立して、C1〜8アルキレンであり;
は、C2〜8アルキレンであり;
は、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニルまたはC2〜12アルキニルであり;
およびWは、独立して、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、−(フェニル)、−CH−(フェニル)、−O−(フェニル)、および−O−CH−(フェニル)からなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で必要に応じて置換されたフェニルであり;ここで各−(フェニル)基は、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロからなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換され;
Yは、O、SまたはNHであり;
ただし、Rは、少なくとも8個の炭素原子を含み;
およびRのうちの1つは、ヒドロキシであり、そしてもう1つは、水素であり;
およびRは、独立して、水素またはメチルであり;
は、水素または式(f)の基:
【化12】


であり、
は、水素または式(g)の基:
【化13】


であり、
nは、1〜6の整数である、
キット。
(項目32)
項目31に記載のキットであって、ここで:
およびXは、両方ともクロロであり;
は、−CHCH−NH−(CHCHであり;
は、ヒドロキシであり;
は、水素であり;
は、メチルであり;
は、水素であり;
は、水素であり;そして
は、−CH−NH−CH−P(O)(OH)である、
キット。
(項目33)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンBである、項目25〜33のいずれか1項に記載のキット。
(項目34)
被験体における真菌感染を処置するための方法であって、該方法は:
該被験体に、抗真菌量のポリエンマクロライド抗真菌剤、および少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤を投与する工程
を包含する、方法。
(項目35)
ポリエンマクロライド抗真菌剤の効力を増大させるための方法であって、該方法は、該ポリエンマクロライド抗真菌剤を、被験体に、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤と組み合わせて投与する工程を包含する、方法。
(項目36)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤および前記グリコペプチド抗細菌剤が、連続して投与される、項目34または35に記載の方法。
(項目37)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤および前記グリコペプチド抗細菌剤が、同時に投与される、項目34または35に記載の方法。
(項目38)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンB、カンジジン、カンジドイン、カンジジニン、ミコヘプチン、ニスタチン、ポリフンジン、オウレオファシン、バシジン、トリコマイシン、カンジシジンまたはピマリシンであるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、項目34〜37のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記グリコペプチド抗細菌剤が、テラバンシン、オリタバンシン、ダルババンシンおよびテイコプラニン;またはそれらの薬学的に受容可能な塩から選択される、項目34〜38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
項目34〜38のいずれか1項に記載の方法であって、ここで前記グリコペプチド抗細菌剤が、式Iの化合物:
【化14】


またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその立体異性体であり、
ここで、
およびXは、独立して、水素またはクロロであり;
は、
(a)-R
(b)−C(O)−R
(c)-R-W
(d)-C(O)-R-W;および
(e)-R-Y-R
からなる群より選択され、
ここで、
およびRは、独立して、C8〜14アルキル、C8〜14アルケニルまたはC8〜14アルキニルであり;
およびRは、独立して、C1〜8アルキレンであり;
は、C2〜8アルキレンであり;
は、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニルまたはC2〜12アルキニルであり;
およびWは、独立して、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、−(フェニル)、−CH−(フェニル)、−O−(フェニル)、および−O−CH−(フェニル)からなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で必要に応じて置換されたフェニルであり;ここで各−(フェニル)基は、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロからなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換され;
Yは、O、SまたはNHであり;
ただし、Rは、少なくとも8個の炭素原子を含み;
およびRのうちの1つは、ヒドロキシであり、そしてもう1つは、水素であり;
およびRは、独立して、水素またはメチルであり;
は、水素または式(f)の基:
【化15】


であり、
は、水素または式(g)の基:
【化16】


であり、
nは、1〜6の整数である、
方法。
(項目41)
項目40に記載の方法であって、ここで:
およびXは、両方ともクロロであり;
は、−CHCH−NH−(CHCHであり;
は、ヒドロキシであり;
は、水素であり;
は、メチルであり;
は、水素であり;
は、水素であり;そして
は、−CH−NH−CH−P(O)(OH)である、
方法。
(項目42)
前記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、アンフォテリシンBである、項目34〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
被験体の真菌感染を処置するためのシステムであって、該システムが:
(a)ポリエンマクロライド抗真菌剤;および
(b)少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤
を備える、システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、処置の必要な被験体に、ポリエンマクロライド抗真菌剤を投与する新規方法を提供する。本発明の特徴は、ポリエンマクロライド抗真菌剤が、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤と組み合わせて被験体に投与されるということである。上記抗真菌剤および抗細菌剤は、連続的に、または同時に投与され得;そして、同一または別個の処方物であり得る。本明細書中で規定されるポリエンマクロライド抗真菌剤およびグリコペプチド抗細菌剤を含む、薬学的組成物を含む組成物、キットおよびシステムがまた提供される。
【0018】
特定の実施形態の変化がなされ得、そしてそれは、なお添付の特許請求の範囲内であるので、本発明をさらに記載する前に、本発明が、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される用語が、特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、限定することを意図しないこともまた理解されるべきである。そうではなくて、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形態「a」「an」および「the」は、その文脈が明らかに他を指示しない限り、複数の参照を含む。他に規定しない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。
【0020】
一定の範囲の値が提供される場合、文脈が明確に他に指示しない場合、その範囲の上限界と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各介入値および任意の他に述べた値またはその述べた範囲内の介入値が本発明に含まれることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立により小さい範囲に含まれ得、そしてまた本発明内に含まれ、述べた範囲内の任意の特に除外された制限を受ける。述べた範囲が、一方または両方の制限を含む場合、制限に含まれるこれらの一方または両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0021】
(定義)
本発明の化合物、組成物、方法、キット、システムおよびプロセスを記載する場合、以下の用語は、他に示されない限り、以下の意味を有する。
【0022】
用語「アルキル」は、直鎖または分枝鎖であり得る一価飽和炭化水素基を意味する。他に定義しない限り、このようなアルキル基は、代表的に1〜15個の炭素原子を含む。代表的なアルキル基としては、例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0023】
特定の数の炭素原子が、本明細書中で使用される特定の用語に対して意図される場合、その炭素原子の数は、その用語に先行して示される。例えば、用語「C8〜12アルキル」は、8〜12個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0024】
用語「アルキレン」は、直鎖または分枝鎖であり得る、二価飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このようなアルキレン基は、代表的に、1〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルキレン基としては、例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。
【0025】
用語「アルコキシ」は、式(アルキル)−O−の一価の基を意味し、ここで、アルキルは、本明細書中に定義されるとおりである。代表的なアルコキシ基としては、例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0026】
用語「アルケニル」は、直鎖または分枝鎖であり得、少なくとも1個、そして代表的には1個、2個または3個の炭素−炭素二重結合を有する一価不飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このようなアルケニル基は、代表的に2〜15個の炭素原子を含む。代表的なアルケニル基としては、例として、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブト−2−エニル、n−ヘキサ−3−エニルなどが挙げられる。
【0027】
用語「アルキニル」は、直鎖または分枝鎖であり得、少なくとも1個、そして代表的には1個、2個または3個の炭素−炭素三重結合を有する一価不飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このようなアルキニル基は、代表的に2〜15個の炭素原子を含む。代表的なアルキニル基としては、例として、エチニル、n−プロピニル、n−ブト−2−イニル、n−ヘキサ−3−イニルなどが挙げられる。
【0028】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0029】
用語「糖基」は、糖部分の任意の原子を介して(例えば、アグリコン炭素原子を介して)グリコペプチドまたは他の化合物に一ラジカル共有結合した、酸化されたか、還元されたか、もしくは置換された糖を意味する。この用語は、アミノ含有糖基を含む。代表的な糖としては、例として、ヘキソース(例えば、D−グルコース、D−マンノース、D−キシロース、D−ガラクトース、バンコサミン、3−デスメチル−バンコサミン、3−エピ−バンコサミン、4−エピ−バンコサミン、アコサミン、アクチノサミン(actinosamine)、ダウノサミン、3−エピ−ダウノサミン、リストサミン、D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミン、D−グルクロン酸、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、シアル酸(sialyic acid)、イズロン酸、L−フコースなど);ペントース(例えば、D−リボースまたはD−アラビノース);ケトース(たとえば、D−リブロースまたはD−フルクトース);二糖類(例えば、2−O−(α−L−バンコサミニル)−β−D−グルコピラノース、2−O−(3−デスメチル−α−L−バンコサミニル)−β−D−グルコピラノース、スクロース、ラクトース、またはマルトース);誘導体(例えば、アセタール、アミン、アシル化糖、硫酸化糖およびリン酸化糖);2〜10個の糖単位を有するオリゴ糖が挙げられる。この定義の目的のために、上記糖類は、開環形態または環状形態(すなわち、ヘキソースに関しては、ピラノース形態)のいずれかであり得る。
【0030】
用語「アミノ含有糖基」は、アミノ置換基を有する糖基を意味する。代表的なアミノ含有糖基としては、L−バンコサミン、3−デスメチル−バンコサミン、3−エピ−バンコサミン、4−エピ−バンコサミン、アコサミン、アクチノサミン、ダウノサミン、3−エピ−ダウノサミン、リストサミン、N−メチル−D−グルカミンなどが挙げられる。
【0031】
「少なくとも8個の炭素原子を含む置換基」は、置換基が、他の原子(例えば、酸素、窒素、硫黄もしくはハロ;またはこれらの組合せ)もまた含み得る少なくとも8個の炭素原子を有する任意の置換基を意味する。グリコペプチド抗細菌剤に結合する場合、このような置換基は、(1)グリコペプチド抗細菌剤のコアを形成するアミノ酸(AA1〜7)、または(2)グリコペプチド抗細菌剤の単糖基もしくは多糖基に結合される。上記置換基の炭素原子の数を決定する場合、この用語は、グリコペプチドのコアを形成するアミノ酸(AA1〜7)のいずれの炭素原子を含まないか、またはグリコペプチドコアに結合する単糖基または多糖基の環を形成するいずれの炭素原子を含まない。
【0032】
「薬学的に受容可能な塩」は、親化合物の生物学的有効性および生物学的性質を保持し、かつ、投与される投薬量で生物学的に、または別なふうに有害ではない塩を意味する。本発明の方法に使用される活性物質は、アミノ基およびカルボキシ基それぞれの存在によって、酸性塩と塩基性塩との両方を形成し得る。
【0033】
薬学的に受容可能な塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製され得る。無機塩基由来の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。有機塩基由来の塩としては、第一級アミンの塩、第二級アミンの塩、第三級アミンの塩、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)の塩および環状アミンの塩が挙げられるが、これらに限定されず、これらとしては、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジンおよびN−エチルピペリジンが挙げられる。他のカルボン酸誘導体(例えば、カルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジ(低級アルキル)カルボキサミドなどを含むカルボン酸アミド)が本発明の実施に有用であることもまた理解されるべきである。
【0034】
薬学的に受容可能な酸付加塩は、無機酸および有機酸から調製され得る。無機酸由来の塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの塩が挙げられる。有機酸由来の塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの塩が挙げられる。
【0035】
用語「処置する」または「処置」とは、本明細書中で使用される場合、被験体または患者(例えば、哺乳動物(特にヒト))における疾患または医学的状態(例えば、真菌感染)を処置すること、またはそれらの処置を意味し、以下を包含する:
(a)疾患または医学的状態が生じるのを予防する工程、すなわち、患者の予防的処置;
(b)疾患または医学的状態を寛解する工程、すなわち、患者における疾患または医学的状態を取り除くかまたは回帰を引き起こす工程;
(c)疾患または医学的状態を抑制する工程、すなわち、患者における疾患または医学的状態の進行を遅延させるか、または停止させる工程
(d)患者における疾患または医学的状態の症状を緩和する工程。
【0036】
用語「治療的有効量」とは、処置の必要な被験体または患者に投与する場合に処置をもたらすために十分な量を意味する。治療的有効量は、処置される被験体および疾患状態、病気の重篤度および投与の様式に依存して変動し、日常的に当業者により決定され得る。
【0037】
用語「抗真菌量」とは、真菌感染または医学的状態を処置するのに十分な量を意味する。
【0038】
用語「抗細菌量」とは、細菌感染または医学的状態を処置するのに十分な量を意味する。
【0039】
(ポリエンマクロライド抗真菌剤)
本発明において使用されるポリエンマクロライド抗真菌剤は、抗真菌剤の周知の種類である。例えば、S.Zotchev,Current Medicinal Chemistry,(2003)10(3):211−223を参照のこと。このようなポリエンマクロライド抗真菌剤は、極性親水性ヘッドと、対抗する発色団鎖およびポリオール鎖と、親水性テールとを有する、置換マクロラクトン環を有することによって特徴付けられる。上記マクロラクトン環は、代表的には、一連の約2個〜約10個(3個〜8個が挙げられる)の共役二重結合を含む22〜24員のマクロラクトン環である。このマクロラクトン環は、上記の一連の共役二重結合が上記化合物の発色団成分を構成する場合には、トリエン、テトラエン、ペンタエン、ヘキサエン、ヘプタエン、またはオクタエンとして分類され得る。このようなポリエンマクロライド抗真菌剤は、代表的には、上記の疎水性発色団成分と正反対に位置する極性基(例えば、カルボニル基、水酸基、またはエポキシド基など)を含み得る。多くの実施形態において、上記極性ヘッド基は、発色団に連結されてヘミケタールを形成する、上記マクロラクトン環の8個の炭素原子の領域を含む。具体的な実施形態において、アミノ糖(例えば、ミコサミン(mycosamine)、ペロサミン(perosamine)など)は、(反時計回りの方向で)上記発色団領域の後の最初の炭素原子へのグリコシド結合を介して、連結される。具体的な実施形態において、カルボキシル基は、上記発色団領域から反時計回りで4番目の炭素原子に結合される。また、このような化合物の誘導体(上記の部分または基のうちの1つ以上に対する改変がなされており、かつ抗真菌活性を保持する化合物)もまた、目的の誘導体である。
【0040】
目的の代表的なポリエンマクロライド抗真菌剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:テトラエン(例えば、ニスタチン、ピマリシンおよびパルトリシン(partricin);ペンタエン(例えば、アリオマイシン(aliomycin));メチルペンタエン(例えば、フィリピン(filipin));カルボニルペンタエン(例えば、ミコチシン(mycoticin));ヘキサエン(例えば、クリプトシジン(cryptocidine));カルボニルヘキサエン(例えば、デルモスタチン(dermostatin));およびヘプタエン(例えば、アンホテリシンB、カンジシジンD);またはこれらの薬学的に受容可能な塩。
【0041】
本発明において使用されるポリエンマクロライド抗真菌剤は、市販されているか、または、当業者に公知の技術によって慣用的には、調製され得る。例えば、種々のポリエンマクロライド抗真菌剤およびこれらの誘導体、ならびにこれらの合成および調製を記載する代表的な特許としては、米国特許第2,797,183号;同第2,908,611号;同第4,812,312号;同第5,567,685号;同第5,606,038号;同第5,908,834号;同第5,965,158号;同第6,080,744号;同第6,121,244号;および同第6,413,537号が挙げられる。
【0042】
目的の特定のポリエンマクロライド抗真菌剤としては、アンホテリシンB、カンジジン(candidin)、カンジドイン(candidoin)、カンジジニン(candidinin)、ミコヘプチン(mycoheptin)、ニスタチン(nystatin)、ポリフンジン(polyfungin)、オーレオファシン(aureofacin)、バシジン(vacidin)、トリコマイシン、カンジシジンおよびピマリシンが挙げられる。具体的な実施形態において、アンホテリシンBおよびニスタチンが、特に目的とされる。目的とされる特定のポリエンマクロライド抗真菌剤は、アンホテリシンBである。
【0043】
(グリコペプチド抗細菌剤)
本発明において使用されるグリコペプチド抗細菌剤は、周知の種類の抗細菌剤である。例えば、Nicolaouら,Angew.Chem.Int.編(1999)38:2096−2152;およびRaoら,Glycopeptides Classification,Occurrence,and Discovery,Glycopeptide Antibiotics;Ramakrishnan Nagarajan(編);Marcel Dekker,Inc.:New York,NY,1994;第63巻,1−27頁を参照のこと。
【0044】
グリコペプチド抗細菌剤は、代表的には、7個のアミノ酸(すなわち、AA−1〜AA−7)および少なくとも5個の芳香環(すなわち、環A〜環E)を含む、多環式ペプチドコアを有する。上記ペプチドコアは、必要に応じて、1個以上の糖基で置換される。I型構造物は、AA−1およびAA−3の脂肪族環を含む。II型構造物、III型構造物およびIV型構造物は、これらのアミノ酸内に芳香族側鎖を含む。さらに、III型構造物およびIV型構造物は、余分なF−O−G環系を含む。さらに、IV型化合物は、上記糖部分に結合された長い脂肪酸鎖を有する。V型化合物は、中心のアミノ酸に連結されたトリプトファン部分を含む。
【0045】
グリコペプチド抗菌剤の例としては、以下として同定されたものが挙げられる:A477、A35512、A40926、A41030、A42867、A47934、A80407、A82846、A83850、A84575、AB−65、アクタプラニン(actaplanin)、アクチノイジン(actinoidin)、アルダシン(ardacin)、アボパルシン(avoparcin)、アズレオマイシン(azureomycin)、バルヒマイシン(balhimycin)、クロロオリエンチエイン(chloroorientiein)、クロロポリスポリン(chloropolysporin)、ダルババンシン(dalbavancin)、デカプラニン(decaplanin)、N−デメチルバンコマイシン(N−demethylvancomycin)、エレモマイシン(eremomycin)、ガラカルジン(galacardin)、ヘルベカルジン(helvecardin)、イズペプチン(izupeptin)、キドデリン(kibdelin)、LL−AM374、マンノペプチン(mannopeptin)、MM45289、MM47756、MM47761、MM49721、MM47766、MM55260、MM55266、MM55270、MM56597、MM56598、OA−7653、オレンチシン(orenticin)、オリチバンシン(oritivancin)、パルボジシン(parvodicin)、リストセチン、リストマイシン(ristomycin)、シンモニシン(synmonicin)、テイコプラニン(teicoplanin)、テラバンシン(telavancin)、UK−68597、UK−69542、UK−72051、バンコマイシンなど。
【0046】
グリコペプチド抗菌剤のさらなる例は、以下に開示される:米国特許第4,639,433号;同第4,643,987号;同第4,497,802号;同第4,698,327号;同第5,591,714号;同第5,840,684号;および同第5,843,889号;EP 0 802 199;EP 0 801 075;EP 0 667 353;WO 97/28812;WO 97/38702;WO 98/52589;WO 98/52592;ならびにJ.Amer.Chem.Soc.,1996,118,13107−13108;J.Amer.Chem.Soc.,1997,119,12041−12047;およびJ.Amer.Chem.Soc.,1994,116,4573−4590。
【0047】
グリコペプチド抗菌剤の別の群は、天然に存在するグリコペプチド抗菌剤のN末端アミノ酸が除去されているもの(すなわち、ヘキサペプチド)である。このようなヘキサペプチドを調製するための方法は、米国特許第5,952,310号;およびP.M.Boothら,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.(1987)1964−1965に開示される。
【0048】
用語「半合成のグリコペプチド抗菌剤」は、天然に存在するグリコペプチド抗菌剤を改変すること(例えば、親化合物の外圏の改変を介して;または、例えば、新しいアミノ酸成分の組み込みを伴うシクロペプチドコアの分解および再組立を介して)によって生産される、グリコペプチド抗菌剤を意味する。用語「合成グリコペプチド抗菌剤」は、それが改変された天然に存在する化合物(すなわち、半合成化合物)であってもなくても、任意の非天然に存在するグリコペプチド抗菌剤を意味する。本発明のグリコペプチド抗菌剤を定義する場合、用語「I型」、「II型」、「III型」、「IV型」、「V型」、「半合成」、および「外圏」は、当該分野において規定されるように(例えば、上記で引用されたNicolaouら)概説)において使用されるように)使用される。
【0049】
本発明において使用される特定のグリコペプチド抗菌剤は、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗菌剤である。これに関して、上記グリコペプチド抗菌剤は、天然に存在するグリコペプチド抗菌剤または合成グリコペプチド抗菌剤(半合成グリコペプチド抗菌剤を含む)であり得る。
【0050】
代表的には、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基は、約8個〜約24個の炭素原子(約8個〜約20個の炭素原子(例えば、約8個〜約14個の炭素原子)が挙げられる)と;酸素、窒素、硫黄またはハロから選択される0個〜約5個のヘテロ原子とを、含む。このような置換基の炭素原子は、直鎖であっても、または分枝鎖であってもよく、または脂肪族環もしくは芳香環(例えば、フェニル環)を形成するように結合され得る。必要に応じたヘテロ原子が、炭素鎖に割り込み得、すなわち、エーテル、チオエーテルまたはアミンを形成し得るか、または必要に応じたヘテロ原子が、炭素鎖(例えば、クロロ置換基)に付着された置換基であり得る。
【0051】
具体的な実施形態において、上記グリコペプチド抗菌剤は、式I:
【0052】
【化17】

の化合物、またはその薬学的受容可能な塩もしくはそれらの立体異性体であり、
ここで、
およびXは、独立して水素またはクロロであり;
は、
(a)-R
(b)-C(O)−R
(c)−R−W
(d)-C(O)−R−W;および
(e)−R−Y−R
からなる群より選択され、
ここで、
およびRは、独立して、C8−14アルキル、C8−14アルキルまたはC8−14アルキニルであり;
およびRは、独立して、C1−8アルキレンであり;
は、C2−8アルキレンであり;
は、C1−12アルキル、C2−12アルケニルまたはC2−12アルキニルであり;
およびWは、独立して、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ、−(フェニル)、−CH−(フェニル)、−O−(フェニル)および−O−CH−(フェニル)からなる群より独立して選択される1個〜3個の置換基で必要に応じて置換されるフェニルであり;ここで、各−(フェニル)基は、必要に応じて、C1−6アルキル、C1−6アルコキシおよびハロからなる群より独立に選択される1個または2個の置換基で置換され;
Yは、O、SまたはNHであり;
但し、Rは、少なくとも8個の炭素原子を含み;
およびRのうちの一方は、ヒドロキシであり、他方は、水素であり;
およびRは、独立して、水素またはメチルであり;
は、水素または式(f):
【0053】
【化18】

の基であり;
は、水素もしくは式(g):
【0054】
【化19】

の基であり、
nは、1〜6の整数である。
【0055】
目的とする具体的な実施形態において、上記グリコペプチド抗菌剤は、式Iの化合物であり、ここで:XおよびXは、ともにクロロであり;Rは、−CHCH−NH−(CHCHであり;Rは、ヒドロキシであり;Rは、水素であり;Rは、メチルであり;Rは、水素であり;Rは、水素であり;そしてRは、−CH−NH−CH−P(O)(OH)である。この化合物は、当該分野でテラバンシン(telavancin)として公知である。
【0056】
目的とする別の具体的な実施形態において、上記グリコペプチド抗菌剤は、式Iの化合物であり、ここで;XおよびXは、ともにクロロであり;Rは、式:
【0057】
【化20】

の基であり;Rは、水素であり;Rは、ヒドロキシであり;Rは、メチルであり;Rは、水素であり;Rは、式(f)の基であり;そしてRは、水素である。この化合物は、当該分野でオリタバンシン(oritavancin)として公知である。
【0058】
目的とする別の具体的な実施形態において、上記グリコペプチド抗菌剤は、式Iの化合物であり、ここで:XおよびXは、ともにクロロであり;Rは、式:
【0059】
【化21】

の基であり;Rは、ヒドロキシであり;Rは、Hであり;Rは、メチルであり;Rは、水素であり;Rは、水素であり;そしてRは、水素である。
【0060】
目的とするさらに別の具体的な実施形態において、上記グリコペプチド抗菌剤は、ダルババンシンである。
【0061】
目的とするさらに別の具体的な実施形態において、上記グリコペプチド抗菌剤は、テイコプラニンである。本明細書中で使用される場合、用語「テイコプラニン」とは、テイコプラニンA−1〜テイコプラニンA−5を含み、すなわち、1種以上の、テイコプラニンA−1;テイコプラニンA−2;テイコプラニンA−3;テイコプラニンA−4;テイコプラニンA−5を含む。
【0062】
特定の実施形態において、上記グリコペプチド抗菌剤は、テラバンシン、オリタバンシン、ダルババンシンおよびテイコプラニン;またはこれらの薬学的に受容可能な塩から選択される。
【0063】
また、このような化合物の誘導体(例えば、上記の部分または基のうちの1つ以上に対する改変がなされ、かつその誘導体が抗菌活性を保持する、化合物)も、目的の化合物である。
【0064】
このようなグリコペプチド抗菌剤は、市販されているか、または当業者に公知の技術によって慣用的に調製され得る。例えば、種々のグリコペプチド化合物およびその誘導体、ならびにそれらの合成または調製を記載する代表的な特許としては、米国特許第4,497,802号;同第4,639,433号;同第4,643,987号;同第4,698,327号;同第5,591,714号;同第5,750,509号;同第5,916,873号;同第5,919,756号;同第5,840,684号;同第5,840,684号;同第5,843,889号;同第5,977,062号;および同第6,444,786号;ならびに公開された米国出願公開番号2002/0022590 A1;同番号2003/008812 A1;同番号2003/0045457 A1;および同番号2003/0069391 A1が挙げられる。
【0065】
(方法)
本発明は、処置が必要な被験体にポリエンマクロライド抗真菌剤を投与するための方法を提供する。本発明の方法の特徴は、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗菌剤と組合わせて被験体に投与されることである。
【0066】
「〜と組合わせて」によって、一定量のポリエンマクロライド抗真菌剤が、一定量のグリコペプチド抗菌剤と一緒に被験体に投与されることが意味される。特定の実施形態において、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤およびグリコペプチド抗菌剤は、逐次投与される。例えば、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤は、グリコペプチド抗菌剤の前または後に投与される。他の実施形態において、上記ポリエンマクロライド抗菌剤およびグリコペプチド抗菌剤は、同時に投与される。例えば、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤およびグリコペプチド抗菌剤は、2つの別個の処方物として同時に投与されるか、または被験体に投与される単一組成物中に組合わされる。上記ポリエンマクロライド抗真菌剤およびグリコペプチド抗菌剤が、逐次投与されるかまたは同時に投与されるかにかかわらず、これらの薬剤は、本発明の目的上、一緒に、または組合わせて投与されることが考えられる。
【0067】
上記2つの薬剤の投与経路および使用される各薬剤の量は、種々の要因(例えば、使用されている特定の薬剤、処置されている状態など)に依存する。概して、被験体に投与される上記ポリエンマクロライド抗真菌剤の量は、被験体を冒している状態(例えば、被験体を冒している真菌感染)にとって、この被験体を処置するために治療上有効な量である。多くの実施形態において、この有効量は、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤が、グリコペプチド抗菌剤と組合わせて投与されない場合(すなわち、コントロール投与において)に有効である量よりも、少ない量である。例えば、本発明に従って投与される場合、ポリエンマクロライド抗真菌剤の量は、代表的には、1回投与あたり少なくとも約10重量%;他の場合では、1回投与あたり少なくとも約20重量%;なお別の場合では、1回投与あたり少なくとも約50重量%減少され得る。特定の代表的な実施形態において(例えば、静脈内(IV)注入によって投与される場合)、被験体に投与されるポリエンマクロライド抗真菌剤の量は、約0.1mg/kg〜約25mg/kg(例えば、約0.25mg/kg〜約10mg/kg(約0.5mg/kg〜約5mg/kgが挙げられる))の範囲である。
【0068】
上記被験体に投与されるグリコペプチド真菌剤の量は、代表的には、このポリエンマクロライド抗真菌剤の効力を増大する量であり、ここで、有効であるために必要なポリエンマクロライド抗真菌剤の量が、1回投与あたり少なくとも約10重量%減少する場合、効力は、増大されると考えられる。特定の実施形態において、上記被験体に投与されるグリコペプチドの量は、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤の効力の相乗作用的増加をもたらす量である。相乗作用的増加とは、上記被験体に投与されるグリコペプチド抗菌剤の量が、併用投与されるポリエンマクロライド抗真菌剤の効力を相乗作用的に増加させることを意味する。相乗作用は、例えば、Eliopoulos,E.G.およびR.Moellering,Jr.「Antimicrobial Combinations」in Antibiotics in Laboratory Medicine,V. Lorian編,第4版,Williams & Wilkins,Baltimore,MD,330−396頁(1996);Shalitら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 47(4):1416−1418(2003);またはAfeltraら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 46(10):3323−3326(2002)に記載され、そして本明細書中の実験の節で例示されるような、チェッカー盤MICアッセイを使用して、インビトロで実証され得る。多くの実施形態において、投与されるグリコペプチド抗菌剤の量は、上記MICアッセイを使用して決定される場合、≦0.7(≦0.6(例えば、≦0.5)が挙げられる)の機能的阻害性濃度指標(FICI)を生じるために十分な量である。
【0069】
特定の実施形態において(例えば、静脈内(IV)注射によって投与される場合)、所定の任意の用量で被験体に投与されるグリコペプチド抗菌剤の量は、約0.1mg/kg〜約50mg/kg(例えば、約0.25mg/kg〜約25mg/kg(約0.5mg/kg〜約10mg/kgが挙げられる))の範囲である。
【0070】
本発明の方法を実施する際に、ポリエンマクロライド抗真菌剤とグリコペプチド抗菌剤との組合わせは、1日用量または1日あたり複数回投与で投与され得る。処置レジメンは、長期間(例えば、数日間、または1〜6週間)にわたる投与を必要とし得る。
【0071】
(薬学的組成物)
本発明において使用される上記ポリエンマクロライド抗真菌剤および上記グリコペプチド抗菌剤は、代表的には、処置が必要な被験体への投与にとって適切な薬学的組成物として処方される。これに関して、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤および上記グリコペプチド抗菌剤は、処置が必要な被験体への併用投与または逐次投与のための別個の薬学的組成物として、処方され得る。あるいは、このような薬剤は、単一の薬学的組成物中にて組合わされ得る(すなわち、両方の活性薬剤を含有する1つの組成物)。
【0072】
概して、別個の薬学的組成物として処方されて投与される場合、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤および上記グリコペプチド抗菌剤は、このような薬剤についての分野で周知でありそして記載されている、慣用的な薬学的組成物を使用して処方される。例えば、ポリエンマクロライド抗真菌剤にとって適切な薬学的組成物は、米国特許第4,822,777号;同第4,973,465号;同第5,077,057号;同第5,194,266号;同第5,567,685号;同第5,616,334号;同第5,965,158号;および同第6,413,537号に記載される。適切なアンホテリシンB処方物としては、例えば、Abelcet(登録商標)、Amphotec(登録商標)、Ambisome(登録商標)、およびFungizoneが挙げられる。さらに、グリコペプチド抗菌剤にとって適切な薬学的組成物は、米港特許第5,977,062号および同第6,635,618号;EP 0 667 353;EP 0 525 499;ならびにWO01/82971に記載される。
【0073】
上記ポリエンマクロライド抗真菌剤および上記グリコペプチド抗細菌剤が、単一の薬学的組成物中で一緒に処方される場合、このような組成物は、新規である。従って、1つの実施形態において、本発明は、ポリエンマクロライド抗真菌剤;少なくとも約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌剤;および薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクルを含有する薬学的組成物に関する。
【0074】
さらなる例示として、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤および/または上記グリコペプチド抗細菌剤は、従来の薬学的キャリアおよび賦形剤(すなわち、ビヒクル)と混合され得、そして水溶液、錠剤、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で使用され得る。このような薬学的組成物は、一般的に、特定の実施形態において、約0.1重量%〜約90重量%の上記活性化合物、そしてより一般的には、約1重量%〜約30重量%の上記活性化合物を含有する。上記薬学的組成物は、一般的なキャリアおよび賦形剤(例えば、トウモロコシデンプンまたはゼラチン、ラクトース、デキストロース、スクロース、微晶質セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウムおよびアルギン酸)を含有し得る。本発明の処方物において一般的に使用される崩壊剤としては、クロスカルメロース、微晶質セルロース、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムおよびアルギン酸が挙げられる。
【0075】
液体組成物は、一般的に、適切な液体キャリア(例えば、エタノール、グリセリン、ソルビトール、非水性溶媒(例えば、ポリエチレングリコール、油)または水)中の上記化合物または薬学的に受容可能な塩の懸濁液または溶液と、懸濁剤、保存剤、界面活性剤、湿潤剤、香味添加剤または着色剤とからなる。あるいは、液体処方物は、再構成粉末から調製され得る。
【0076】
例えば、活性化合物、懸濁剤、スクロースおよび甘味剤を含有する粉末は、水を用いて再構成されて、懸濁液を形成し得る;そしてシロップは、活性成分、スクロースおよび甘味剤を含有する粉末から調製され得る。
【0077】
錠剤形態の組成物は、固体組成物を調製するために慣用的に使用される任意の適切な薬学的キャリアを用いて調製され得る。このようなキャリアの例としては、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、スクロース、微晶質セルロースおよび結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)が挙げられる。上記錠剤はまた、色素フィルムコーティングまたは上記キャリアの一部として含まれる色素を提供され得る。さらに、活性化合物は、親水性マトリックスまたは疎水性マトリックスを含有する錠剤として、制御放出投薬形態で処方され得る。
【0078】
カプセル形態の組成物は、慣用的な封入手順(例えば、活性化合物および賦形剤を、硬質ゼラチンカプセル中に組み込むことによる)を使用して調製され得る。あるいは、活性化合物および高分子量ポリエチレングリコールの半固体マトリックスが調製され得、そして硬質ゼラチンカプセル中に満たされ得るか;またはポリエチレングリコール中の活性化合物の溶液または食用油(例えば、液体パラフィンまたは分画されたココナッツ油)中の懸濁液が調製され、そして軟質ゼラチンカプセル中に満たされ得る。
【0079】
含まれ得る錠剤結合剤は、アカシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ−ビニルピロリドン(Povidone)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、デンプンおよびエチルセルロースである。使用され得る滑択剤としては、ステアリン酸マグネシウムまたは他の金属ステアリン酸塩、ステアリン酸、シリコン流体、タルク、蝋、油およびコロイド状シリカが挙げられる。
【0080】
香味添加剤(例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油、サクランボ香味添加剤など)がまた、使用され得る。さらに、着色剤を添加して、その投薬形態を、より人を引き付ける見かけにするかまたはその生成物の同一性を補助することが所望され得る。
【0081】
非経口的に与えられる場合に活性な本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩は、筋内投与、クモ膜下腔内投与または静脈内投与のために処方され得る。
【0082】
筋内投与またはクモ膜下腔内投与のための代表的な組成物は、油(例えば、落花生油またはごま油)中の活性成分の懸濁液または溶液からなる。静脈内投与またはクモ膜下腔内投与のための代表的な組成物は、例えば、活性成分、およびデキストロースもしくは塩化ナトリウム、またはデキストロースと塩化ナトリウムとの混合物を含有する滅菌等張水溶液である。他の例は、乳酸加リンガー液、デキストロース添加乳酸加リンガー液、Normosol−Mおよびデキストロース、Isolyte E、アシル化リンガー液などである。必要に応じて、共溶媒(例えば、ポリエチレングリコール)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)および抗酸化剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム)が、上記処方物中に含有され得る。あるいは、上記溶液は、凍結乾燥され得、次いで、投与直前に、適切な溶媒を用いて再構成され得る。
【0083】
直腸投与において活性な本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩は、坐剤として処方され得る。代表的な坐剤処方物は、一般的に、結合剤および/または滑沢剤(例えば、ゼラチンもしくはカカオ脂、あるいは低融点の植物もしくは合成の蝋または脂肪)を伴う活性成分からなる。
【0084】
局所投与において活性な本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩は、経皮的組成物または経皮的送達デバイス(「パッチ」)として処方され得る。このような組成物は、例えば、裏打ち(backing)、活性化合物レザバ、制御膜、ライナーおよび接触接着剤を含む。このような経皮パッチは、制御量の本発明の化合物の連続的注入または非連続的注入を提供するために使用され得る。薬剤の送達のための経皮パッチの構成および使用は、当該分野で公知である。例えば、1991年6月11日に発行された米国特許第5,023,252号を参照のこと。これらのパッチは、薬剤の連続的送達、拍動性送達または要求時送達のために構成され得る。
【0085】
特定の実施形態において、グリコペプチド抗細菌剤を含有する薬学的組成物は、シクロデキストリン化合物をさらに含有する。例示として、上記グリコペプチド抗細菌剤は、例えば、薬学的に受容可能な塩の形態で、シクロデキストリン水溶液と混合されて、薬学的組成物を形成し得る。このような薬学的組成物は、代表的に、約1重量%〜約40重量%の上記シクロデキストリンおよび有効量の上記グリコペプチド抗細菌剤を含有する。特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物において用いられるシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。特定の実施形態において、上記シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである。特定の実施形態において、上記シクロデキストリンは、上記処方物の約1重量%〜約40重量%;例えば、約2重量%〜約30重量%;例えば、約5重量%〜約15重量%を構成する。1つの実施形態において、上記シクロデキストリン水溶液は、デキストロースをさらに含有する(例えば、約5%デキストロース)。
【0086】
必要に応じて、上記薬学的組成物は、他の薬学的に受容可能な成分(例えば、緩衝液、界面活性剤、抗酸化剤、粘度改変剤、保存剤など)を含有し得る。これらの成分の各々は、当該分野において周知である。例えば、米国特許第5,985,310号を参照のこと。
【0087】
本発明の処方物における使用のために適切な他の成分は、Remington:The
Science and Practice of Pharmacy,第20版,Lippinott Williams & White,Baltimore,Maryland(2000)に見出され得る。
【0088】
(キットおよびシステム)
本発明はまた、本明細書中に記載の方法の実施における使用のためのキットおよびシステムを提供する。例えば、このような方法の実施のためのキットおよびシステムは、1つ以上の薬学的処方物を含有し得、これらの薬学的処方物は、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤および上記グリコペプチド抗細菌剤の一方または両方を含有し得る。例えば、特定の実施形態において、上記キットは、1つ以上の単位投与量として存在する単一の薬学的組成物を含有し得、ここで、上記組成物は、上記ポリエンマクロライド抗真菌剤および上記グリコペプチド抗細菌剤を含有する。さらに他の実施形態において、上記キットは、2つ以上の別個の薬学的組成物を含有し得、各々は、ポリエンマクロライド抗真菌剤またはグリコペプチド抗細菌剤のいずれかを含有する。
【0089】
上記成分に加えて、上記キットは、本発明の方法を実施するための指示書をさらに備える。これらの指示書は、上記キット中に種々の形態で存在し得、それらのうちの1つ以上は、上記キット中に存在し得る。これらの指示書が存在し得る1つの形態は、適切な媒体上または基質上(例えば、上記キットのパッケージ、パッケージ挿入物などにおける、その情報が印刷される紙面の一部(piece and pieces))に印刷された情報としてである。さらに別の手段は、コンピュータ判読可能な媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、CDなど)であり、そこに、上記情報が記録されている。存在し得るさらに別の手段は、インターネットを介して使用されて、離れた場所で上記情報にアクセスし得るウェブサイトアドレスである。指示書を提供するための任意の従来の手段が、上記キットに存在し得る。
【0090】
本明細書中で使用される場合、用語「システム」とは、単一組成物または別個の組成物中に存在するポリエンマクロライド抗真菌剤およびグリコペプチド抗細菌剤の収集物を意味し、本発明の方法を実施する目的のために一緒にもたらされる。例えば、本発明に従う、処置を必要としている被験体に一緒にもたらされるかまたは併用投与される、別個に得られるポリエンマクロライド抗真菌剤投薬形態およびグリコペプチド抗細菌剤投薬形態は、本発明に従うシステムである。
【0091】
(利用)
本発明の方法、組成物、キットおよびシステムは、病原体生物(例えば、ポリエンマクロライド抗真菌剤によって阻害されるかまたは処置可能な真菌)により引き起こされる真菌感染状態または医学的状態を有する被験体を処置するために有用である。この点において、上記被験体は、既に真菌感染を有し得るか、またはポリエンマクロライド抗真菌剤およびグリコペプチド抗細菌剤の組み合わせが、予防治療および経験的治療において使用され得、ここで、処置は、原因となる病原体の同定前に開始される。
【0092】
種々の被験体または患者または宿主は、本発明の方法、組成物、キットおよびシステムを用いて処置可能である。一般的に、このような被験体は、「哺乳動物(mammals)」または「哺乳動物(mammalian)」であり、これらの用語は、哺乳綱クラス(肉食動物(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモットおよびラット)および霊長類(例えば、ヒト、チンパンジーおよびサル)を含む)内にある生物を記載するために広範に使用される。本発明の特定の実施形態において、上記被験体または患者は、ヒトである。
【0093】
処置され得る代表的な真菌感染または医学的状態としては、以下の病原体種により引き起こされる真菌感染または医学的状態が挙げられる:Candida spp.(例えば、C.albicans、C.krusei、C.glabrata、C.tropicalis、C.parapsilosis、C.guilliermorulii、C.haemulonii、C.lusitaniae、C.neoformans、C.norvegensis、C.viswanathiiおよびC.kefyr);Hyaline糸状菌(例えば、Aspergillus fumigatus、A.flavus、A.niger、F.monilioforme、Geotricium candidum);Histoplasma capsulatum(var.capsulatum)、Coccidioides immitis、Cryptococcus neoformans(var.neoformansおよびvar.gattii)、C.bidus、C.laurentiiおよびC.fusarium、ならびにMucormycotic生物(例えば、Zygomycetes spp.(例えば、Rhizopus oryzae,R.micropsorus、R.pusillus、Cunninghamelle bertholletiae、Saksenaea vasiformis、Mucor circinelloides、M.ramosissimus、Absidia corymbifera、Apophysomyces elegans、Cokeromyces recurvatusおよびSyncephalastrum racemosum))。
【0094】
従って、本発明は、被験体において真菌感染を処置する方法を提供し、この方法は、上記被験体に抗真菌量(例えば、上記被験体を処置するための有効量)の本明細書中でさらに記載されるようなポリエンマクロライド抗真菌剤およびグリコペプチド抗細菌剤を投与する工程を包含する。
【0095】
本発明の組成物はまた、例えば、米国特許第6,541,506号においてさらに記載されるような、医療機器または移植片のコーティング、農業用途などのために使用され得る。
【0096】
特定の実施形態において、処置される被験体は、真菌感染および細菌感染の両方に罹患し、上記細菌感染は、本発明において用いられるグリコペプチド抗細菌剤に対して感受性である。従って、本発明はまた、処置を必要としている被験体における細菌感染および真菌感染を処置するための方法を提供し、この方法は、上記被験体に、本明細書中でさらに記載されるような抗真菌量のポリエンマクロライド抗真菌剤および抗細菌量のグリコペプチド抗細菌剤を投与する工程を包含する。
【0097】
処置され得る代表的な細菌感染または医学的状態としては、以下の、ブドウ球菌(メチシリン耐性ブドウ球菌を含む);腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含む);重篤なブドウ球菌性感染(例えば、ブドウ球菌性心内膜炎およびブドウ球菌性敗血症)などにより引き起こされる細菌感染または医学的状態が挙げられる。
【0098】
本発明の利用は、以下の代表的な実施例により、さらに示される。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、多少なりとも本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。以下の実施例において、別に示されなければ、以下の略語は以下の意味を有する。全ての他の略語は、それらの一般的に受容されている意味を有する。
【0100】
CFU/mL コロニー形成単位/mL
DMSO ジメチルスルホキシド
FIC 分画阻止濃度(fractional inhibitory concentration)
FICI 分画阻止濃度係数(fractional inhibitory
concentration index)
NCCLS 臨床研究所規格委員会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)
MIC 最小発育阻止濃度
MOPS (3−[N−モルホリノ]プロパンスルホン酸)
OD 光学密度
PDA ジャガイモデキストロース寒天
SDA サブローデキストロース寒天
(実施例1)
(MICおよびFICIを決定するためのアッセイ)
以下のアッセイを使用して、抗真菌剤とグリコペプチド抗細菌剤との組み合わせに対して最小発育阻止濃度(MIC)および分画阻止濃度係数(FICI)を決定した。このFICIを計算するためのアッセイおよび方法は、当該分野において周知である。例えば、Antiboiotics in Laboratory Medicine,V.Lorian編,第4版,Williams & Wilkins,Baltimore,MD,pp.330−396(1996)におけるEliopoulos,E.G.およびR.Moellering,Jr.「Antimicrobial Combinations」;Shalitら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 47(4):1416−1418(2003);またはAfeltraら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 46(10):3323−3326(2002)を参照のこと。
【0101】
FICI値は、代表的に、以下のように分類される:
FICI=0.5 相乗的効果
0.5<FICI<1.0 相加的効果
1.0<FICI<4.0 中立効果
FICI>4.0 拮抗的効果
このアッセイにおいて、抗真菌剤とグリコペプチド抗細菌剤との組み合わせは、上記組み合わされた化合物が約0.5以下の計算値FICIまたは少なくとも1倍の希釈係数による上記抗真菌MICの減少のいずれかを実証した場合、上記抗真菌剤単独よりも有効であると考えられた。
【0102】
(A.真菌株)
このアッセイにおいて使用された真菌株は、高度に感染性である。標準安全基準(例えば、使い捨て可能なスクリューキャップチューブの使用および安全マスクの使用)に厳密に従った。全ての仕事を、Biosafety Level 2キャビネットにおいて実施した。全ての物質および装置(例えば、ピペッターおよびインキュベーター)を、実験の間、除染した。
【0103】
このアッセイにおいて使用される真菌株は、American Type Culture Collection(ATCC),Manassas,VAから得た。以下の表において、各株についてのATCC寄託番号を、カラム見出し「ATCC」の下に示す。所望される場合、他の株が使用され得る。
【0104】
【化22】

このアッセイにおける手順、プロトコール、供給物および備品は、NCCL 2003、”Reference Method for Broth Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically;Approved Standard”(NCCLS書類M7−A6):NCCLS 2002、“Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Tests of Filamentous Fungi that Grow Aerobically;Approved Standard”(NCCLS書類M38−A);およびNCCLS 2002“Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Tests of Yeast;Approved Standards−2nd Edition”(NCCLS書類M27−A2)に記載される臨床実験の基準に関する国立委員会(NCCLS)、Wayne,PAにより認可され、公表されている報告に従う。
【0105】
(B.試験化合物および供給源)
以下の半合成グリコペプチドの抗細菌因子:
【0106】
【化23】

を、このアッセイにおいて試験した。ここで、RおよびRは、以下:
【0107】
【化24】

に定義される通りである。
化合物1および化合物2を、2002年2月21日に公開された米国仮出願番号2002/0022590 A1の実施例2に記載されてある通りに調製した。2002年5月21日に公表された米国特許第6,392,012号に記載される手順を用いて、化合物3をバンコマイシンおよび4−(4’−クロロフェニル)ベンズアルデヒドから調製した。
【0108】
バンコマイシンを、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。テイコプラニンを、ドイツの製薬会社から静注の注入Targocid(商標登録)として購入した。
【0109】
アンホテリシンBおよびミコナゾールを、U.S.Pharmacopeia(Rockville,MD)から購入した。フルコナゾールおよびボリコナゾール(Vfend(商標登録)として処方される)を、Peninsula Pharmacy(Burlingame,CA)から購入した。フルコナゾールを、Diflucan(商標登録)(経口処方物)として購入し、使用前に精製した。
【0110】
各化合物の最初のストックを、適切な溶媒(すなわち、化合物1、化合物2および化合物3、アンホテリシンB、バンコマイシンならびにフルコナゾールのDMSO溶液またはボリコナゾールおよびテイコプラニンについての供給業者の指示に従う滅菌水溶液のいずれか)中で作製した。
【0111】
(C.希釈比率)
チェッカーボード法を用いて、最終濃度の100倍のマスタープレートを2倍希釈したものを、96ウェルU字型マイクロタイタープレートおよび適切な溶媒を用いて調製した。「チェッカーボード」法では、マイクロタイタープレートを「行」へと分割し、この行では、各ウェルが同一量の抗真菌因子(化合物A)を含み、この抗菌因子は、x軸に沿って希釈され、そしてこの列では、列の各ウェルが同一量のグリコペプチド抗菌因子(化合物B)を含み、y軸に従って希釈される。また、化合物Aまたは化合物Bだけのための列(または行)が含まれる。チェックボードにおいて使用される希釈物は、指数的(2の指数)である。この結果は、マイクロタイタープレートにおける各ウェルは、試験される2つの化合物の特有の濃度を含む。
【0112】
最終濃度の2倍の濃度のマトリックスを、100×化合物Aおよび100×化合物B30μlを深いウェル(薬物の組み合わせあたりの深い一つのウェル)中の1440μLのRPMIへと移すことにより達成した。混合後、2×薬物の組み合わせ100μLを、96−ウェルマイクロタイタープレート中へと割り当てた。化合物Aを、行1(1,600μg/mLにて始める)から希釈し、行11(1.6μg/mL)にまで希釈した。行1のウェルは、最終濃度16μg/mL(接種物を加えた)の化合物Aを含んでいた;行2のウェルには、最終濃度8μg/mLの化合物Aを含んでいた;行3のウェルには、最終濃度4μg/mLの化合物Aを含んでいた;などである。行12には、化合物Aを加えなかったので、行2は、化合物Bしか含まなかった。
【0113】
化合物Bを、列A(6,400μg/mLより始める)から列G(100μg/mL)にまで希釈した。列Aのウェルは、最終濃度64μg/mLの化合物Bを含んでいた;列Bのウェルは、最終濃度32μg/mLの化合物Bを含んでいた;列Cのウェルは、最終濃度16μg/mLの化合物Bを含んでいた;などである。列Hには、化合物Bを加えなかったので、列Hは、化合物Aしか含んでいなかった。
【0114】
以下に示されるのは、化合物Aと化合物Bとを組み合わせて使用される96ウェルマイクロタイタープレートフォーマットの例である。この列および行上に記される濃度は、接種物が化合物の混合物と混合された後の最終濃度である。
【0115】
【化25】

ほとんどの場合、グリコペプチド抗細菌因子だけのMICは、>64μg/mLである。正確な測定を得るために、NCCLSプロトコールを用いた標準MICアッセイを行い、濃度を256μg/mL〜0.25μg/mLにまで拡張した。この実験より決定されるグリコペプチド抗細菌因子のMICを、FIC計算に使用した。このグリコペプチド抗細菌因子のMICが>256μg/mLである場合、この化合物のFICを、256μg/mLをMICの真の値に最も近い値として計算した。
【0116】
(D.培地および接種物調製物)
炭酸水素ナトリウムを含まないRPMI−1640培地(GIBCO−BRL、Carlsbad、CA)、哺乳動物細胞のために処方された栄養富化培地(enriched
media)を、酵母および繊維状菌類の感受性の試験についてのNCCLSのガイドラインに従って使用した。この培地を、20g/Lのグルコースを補充され、そして塩酸を用いてpH7.0に調節された0.165Mの3−[N−モルホリノ]プロパンスルホン酸(MOPS)で緩衝化した。Sabouraudデキストロースアガー(SDA)スラントおよびプレート、ならびにポテトデキストロースアガー(PDA)プレートを、Hardy Diagnostic(Santa Maria,CA)より購入した。
【0117】
酵母の培養を、−80℃の凍結ストックから開始し、SDAスラント上にストリークし、35℃で24時間、好気性条件下でインキュベートした。このスラントを、冷蔵庫の中に2週間まで保持し、そして定期的に開始培養として用いた。各アッセイの開始する約24時間〜48時間前に、単離のコロニーを求めて酵母をSDAプレート上にストリークした。接種物を調製するために、1個〜4個のコロニーを、5mLの生理食塩水中に再懸濁し、そして15秒間ボルテックスした。
【0118】
約−80℃の凍結ストックから開始したカビ(mold)を、PNAのプレートの中心にスポットした。このプレートを、35℃で7日間インキュベートし、分生子(conidiospore)および胞子嚢胞子(sporangiospore)を誘導した。速増殖カビ(すなわち、Fusarium spp.およびRhizopus spp.)を35℃で48時間〜72時間インキュベートし、次いで、25℃〜28℃にて7日まで保持した。この接種物を調製するために、このカビ胞子を(エアロゾルの形成を避けながら)生理食塩水に再懸濁し、次いで、15秒間ボルテックスし、そして菌糸(hypheal)粒子を5分〜10分間沈降させた。
【0119】
生理食塩水中に懸濁したボルテックスした細胞の530nmでの最初の光学密度(OD)は、SmartSpec 3000分光光度計(BioRAD,Hercules,CA)を用いて測定したように、0.5未満であった。ほとんどの酵母およびカビの培養にとって、この懸濁物の光学密度(OD)を、生理食塩水中で0.11に調整し、約0.4×10CFU/mLを提供した。しかし、Fusarium moniliformeおよびPseudallescheria boydiiについては、懸濁物のODをOD=0.17に調整し、約0.4×10CFU/mLを提供する。次いで、この培養を、酵母については1:1,000で、そしてカビについては1:50で、RPMI培地(GIBCO−BRL)中で希釈し、2×最終接種物を得た。0.5×10〜2.5×10CFU/mL(酵母)および0.4×10〜5×10CFU/mL(カビ)を使用して、試験結果のより大きな再現能力を証明した。
【0120】
8−チャンネルマルチピペッターを使用して、2×接種物(100μL)を、2×薬物希釈物(最も希釈率の低いものから開始し、最も希釈率の高いものまで)100μLへと添加した。この結果を読む前に、マイクロタイタープレートを、35℃で好気性条件下で48時間インキュベートした。プレートを、約24時間後(Rhizopus spp.)または約72時間後(Cryptococcus neoformans)に読んだ。
【0121】
さらに、確認の目的で(すなわち、ピペットされた接種物量の正確性および細胞のバイアビリティを確かめること)、100μLの接種物を、個々のSDAプレート上にプレートした。約46時間後〜約48時間後に、確認プレート上のコロニー数から計算される接種物の大きさが、0.5×10〜2.5×10CFU/mL(酵母)および0.4×10〜5×10CFU/mL(カビ)の予想範囲の範囲外である場合、アッセイ全部がやり直した。
【0122】
約46時間〜約48時間後、菌類の96ウェルマイクロタイタープレートにおける増殖を評価し、そして最小限の阻害濃度(MIC)および分画阻害濃度(FIC)を計算した。
【0123】
マイクロタイタープレートの各行および各列を、細胞増殖について視覚的に評価し、この細胞増殖は、培地の(くもりまたは不透明さ)として明らかにした。RPMI培地は、接種(inoculation)にて透明である。不透明さが全く観察されない場合、接種物細胞の増殖が阻害され、そして透明なままであった。
【0124】
化合物の最小限の阻害濃度(MIC)(すなわち、化合物Aの最小限の阻害濃度(MIC)は、その濃度では増殖が全く見られない、化合物Aの濃度である。
【0125】
(E.相乗効果の測定)
試験化合物のインビトロでの相互作用を測定するために、少なくとも2倍の希釈因子により抗菌類化合物のMICを減少させる濃度(すなわち、相乗ウェルにおける化合物の濃度)を用いて、画分阻害濃度計算した。化合物Aについての画分阻害濃度、FIC(A)は、MIC(A)により割算された相乗ウェル中の化合物Aの濃度に等しい。同様に化合物Bについては、FIC(B)は、MIC(B)により割算された相乗ウェル中の化合物Bの濃度に等しい。分画阻害濃度指標(FICI)は、FIC(A)+FIC(B)の合計に等しい。
【0126】
【化26】

試験化合物の各組み合わせについて、このアッセイを少なくとも2回繰り返し、再現性を示した。MICは、このアッセイと関連する固有の50%の誤差を有するので、平均も統計的分析も行わなかった。しかし、FICは、MICのバリアビリティーにより影響されない。
【0127】
組み合わせられた試験化合物のFITCに対する計算値を、特定の実施形態において、以下の基準と比較した。
【0128】
FICI=0.5 相乗効果
FICI>0.5 非相乗作用
組み合わせられた化合物の相互作用は、抗菌類MIC(μg/mL)が、X軸上にプロットされた抗細菌濃度(μg/mL)の関数としてY軸上にプロットされたグラフとして発現され得る。所望の場合、2つの化合物の組み合わせのこの相乗相互作用は、他のアッセイ(例えば、Eliopoulos,E.G.およびR.Moellering,Jr.において議論されている、時間―殺傷(kill)相乗作用アッセイ)を用いて計算され得るか、または立証され得る。
【0129】
(F.結果および討論)
このアッセイの結果を、表1、表2、および表3に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

表1、表2、および表3のデータは、ポリエンマクロライド抗真菌類因子の組み合わせ(例えば、アンホテリシンBまたはナイスタチン)および約8個の炭素原子を含む置換基を有するグリコペプチド抗細菌因子が、代表的には、種々の真菌株に対して相乗効果または付加効果を有することを示す。
【0133】
対照的に、バンコマイシンおよびアンホテリシンBの組み合わせは、相乗作用も付加作用も有さなかった。さらに、グリコペプチド抗細菌因子と組み合わせられた場合、アゾール抗真菌類因子は、相乗作用も付加作用も示さなかった。
【0134】
これらの結果は、本発明がポリエンマクロライド抗真菌類因子を、これを必要としている披験体に投与することについての著しい利点を提供する。さらに具体的には、このようなポリエンマクロライド抗真菌類因子を特定のグリコペプチド抗細菌剤と組み合わせて投与することにより、ポリエンマクロライド抗真菌類因子の効力が著しく増大され、これにより、(例えば、毒性を減少させるかまたは排除するために)投薬量の減少を可能にし、より迅速な処置プロトコールなどを与える。
【0135】
本発明が、本発明の特定の局面または実施形態を参照して記載される一方で、本発明の本当の精神および範囲から逸脱せずに、種々の変更がなされ得るか、または等価物が、置換され得ることが当業者に理解される。さらに、適用可能な特許の地位および規制により許可される程度に、本明細書中に引用される全ての公報、特許、特許出願は、各書類が個々に本明細書中に参考として援用されるのと同程度に、その全体が参考として本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2010−241841(P2010−241841A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168705(P2010−168705)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【分割の表示】特願2006−533435(P2006−533435)の分割
【原出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】