説明

グリストラップの廃棄物処理車

【課題】 排液中の固液分離及び油水分離を更に効率よく確実に行えるように改良して欲しいとの要望がある。
【解決手段】 本発明の廃棄物処理車は、吸引装置、貯留室、固液分離機、加熱器、油水分離タンクを搭載し、前記固液分離機には貯留室から送り出された排液を搬送しながら固液分離して固形物を外部に搬送する搬送体と、分離された排液を収容するタンクを備え、前記油水分離タンクはその内部に、加熱器から送り込まれる排液を上下に分離する分離室を備えた。油水分離タンクで分離された水分をグリストラップ又は/及び貯留室に戻す帰還路を備えた。固液分離機を、回転軸に多数の円板が間隔をあけて設けた複数本の送り体を搬送方向に回転自在に備え、各円板間にガイドを搬送方向に沿って配置し、前記各送り体の回転により、ガイドと送り体上に投入された排液中の固形物を搬送しながら液体を下方に落下させて固液分離するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、給食センタ−、レストラン、ホテル、食物加工所、スーパー、デパート、病院等の厨房内又は屋外に設置されているグリストラップ内の廃棄物を処理する廃棄物処理装置を搭載した廃棄物処理車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記グリストラップには厨房から出る料理油、生ごみ、食べ残しの食物類、箸、爪楊枝、紙屑、ビニール屑、汚泥、その他の塵芥等々の廃棄物が日常的に廃棄されている。現在、我が国では前記のような廃棄物を厨房から下水管、排水管に直接排出することは禁止されているため、それら廃棄物を厨房内又は屋外に設置したグリストラップ内に溜め、それを随時、バキューム車で汲み取って処分している。
【0003】
前記グリストラップ内の廃棄物を処理すべく、本件出願人は先に特許文献1に示すグリストラップの廃棄物処理装置を搭載した廃棄物処理車を開発した。この廃棄物処理車は図6に示すように、グリストラップAから廃棄物を吸引するバキュームBと、バキュームBが吸引した廃棄物中の塵芥及び汚泥を破砕して除去する撹拌分離機Cと、吸引した廃棄物を油分と水分とに分離する油水分離室Dと、油水分離室D内の廃棄物を加熱して油分と水分との分離を促進する燃焼装置Eと、油水分離室Dで分離された油分から塵芥及び汚泥を除去して燃料油とし、その燃料油を前記油水分離室Dの燃焼装置Eに燃料として供給する油精製機Fと、油水分離室Dで分離された水分から塵芥及び汚泥を除去して水とし、その水をグリストラップAに戻す遠心分離機Gを備えるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の廃棄物処理車には特に課題はないが、廃棄物中の固液分離及び油水分離を更に効率よく確実に行なうことができるようにした処理装置の開発が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はレストランや給食センターなどに出掛けて、それら建物の内部又は外部に設置されているグリストラップ内の廃棄物を汲み上げて、固液分離及び油水分離をこれまで以上に効率良く確実に行うことができる廃棄物処理車を提供するものである。
【0007】
本件出願のグリストラップの廃棄物処理車は、請求項1記載のように次の1〜4の構成を備えることを特徴とするグリストラップの廃棄物処理車である。
1.グリストラップの廃棄物処理装置が車両に搭載され、
2.前記廃棄物処理装置は次の(1)〜(5)の構成を備え、
(1)グリストラップから廃棄物を吸引する吸引装置と、
(2)吸引装置で吸引した廃棄物を貯留する貯留室と、
(3)貯留室から送り出された廃棄物中の固液を分離する固液分離機と、
(4)固液分離機で固液分離されて送り出された排液を管内に通し、管を加熱することにより排液を加熱する加熱器と、
(5)加熱器から送り出された排液を油分と水分とに分離する油水分離タンク、
3.前記固液分離機は貯留室から送り出された廃棄物を搬送しながら固形物と排液に分離する搬送体と、搬送体での搬送中に落下する排液を収容するタンクを備え、
4.前記油水分離タンクの内部に、前記加熱器から送り込まれる排液中の油分と水分を上下に分離する分離室を備える。
【0008】
本件出願のグリストラップの廃棄物処理車は、請求項2記載のように次の1〜4の構成を備えることを特徴とするグリストラップの廃棄物処理車である。
1.グリストラップの廃棄物処理装置が車両に搭載され、
2.前記廃棄物処理装置は次の(1)〜(5)の構成を備え、
(1)グリストラップから廃棄物を吸引する吸引装置と、
(2)吸引装置で吸引した廃棄物を貯留する貯留室と、
(3)貯留室から送り出された廃棄物中の固液を分離する固液分離機と、
(4)固液分離機で固液分離されて送り出された排液を加熱する加熱器と、
(5)加熱器から送り出された排液を油分と水分とに分離する油水分離タンク、
3.前記固液分離機は貯留室から送り出された廃棄物を搬送しながら固形物と排液に分離する搬送体と、搬送体での搬送中に落下する液体を収容するタンクを備え、搬送体はタンク上方に搬送方向に並べて回転自在に備えられた多数本の送り体と、隣接する送り体の間に搬送方向に沿って配置されて廃棄物中の固形物を出口側に案内するガイドを備え、各送り体は回転軸の軸方向に多数枚の円板が間隔をあけて設けられ、各送り体が搬送方向に回転することによってガイド及び送り体上に投入された廃棄物中の固形物が上下動しながら前記ガイド上を搬送され、その搬送中に廃棄物中の排液が落下して固液分離されるものであり、
4.前記油水分離タンクの内部に、前記加熱器から送り込まれる排液中の油分と水分を上下に分離する分離室を備える。
【0009】
本件出願のグリストラップの廃棄物処理車は、請求項3記載のように、請求項1又は請求項2記載のグリストラップの廃棄物処理車において、油水分離タンクで分離された水分をグリストラップ又は/及び貯留室に戻す帰還路を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本件出願の請求項1のグリストラップの廃棄物処理車は次のような効果がある。
(1)グリストラップの廃棄物処理装置を車両に搭載したため、グリストラップ所在地まで廃棄物処理装置ごと移動してその場で即座に廃棄物を処理することができ、集積場や処理場へ廃棄物を運ぶ必要がなく、廃棄物処理車がそれら場所を回ってグリストラップ内の廃棄物を処理することができる。
(2)貯留室から送り出された廃棄物を搬送しながら固液分離する固液分離機を備えるため、排液中の箸、爪楊枝、食材屑、バラン、輪ゴム、ビニール等や汚泥等の固形物は迅速且つ確実に分離され、その後の処理に用いる加熱器や油水分離タンク等に負担が掛からず、廃棄物処理装置が故障しにくくなり、長持ちする。
(3)油水分離タンク内に、加熱器から送り込まれる排液を上下に分離する油水分離室があるため油水分離が確実に行なわれる。
(4)固液分離された排液を管内に通し、管を加熱することにより排液を加熱する加熱器を備えるので加熱効率が向上し、排液が加熱され易くなり、その後の油水分離タンク内で油水分離され易くなる。
【0011】
本件出願の請求項2のグリストラップの廃棄物処理車は請求項1のグリストラップの廃棄物処理車の上記(1)〜(4)の効果を備え、更に次のような効果もある。
(1)搬送体はタンク上方に搬送方向に並べて回転自在に備えられた多数本の送り体と、隣接する送り体の間に搬送方向に沿って配置されて廃棄物中の固形物を出口側に案内するガイドを備え、各送り体は回転軸の軸方向に多数枚の円板が間隔をあけて設けられ、各送り体が搬送方向に回転することによってガイド及び送り体上に投入された廃棄物中の固体(固形物)が上下動しながら前記ガイド上を搬送され、その搬送中に廃棄物中の液体(排液)が落下して固液分離されるものであるため、固形物と排液の分離が確実になる。
(2)排液中の箸、爪楊枝、食材屑、バラン、輪ゴム、ビニール等や汚泥等の固形物を迅速且つ確実に分離することができ、その後の工程に用いる加熱器や油水分離タンク等に負担が掛からず、廃棄物処理装置が故障しにくくなり、長持ちする。
(3)分離された排液は固液分離機のタンク内に、固形物はタンク外に搬送されるので、分離後の排液、固形物の処理がし易くなる。
【0012】
本件出願の請求項3のグリストラップの廃棄物処理車は請求項1、2と同様の効果を備え、更に次のような効果、即ち、油水分離タンクで分離された水分をグリストラップや貯留室に戻す帰還路を備えているため、グリストラップ内や貯留室内の廃棄物に水分を加えることができ、粘性の強い廃棄物、特に、冬期におけるゲル化、固体化した廃棄物が希釈化され、廃棄物の油水分離が促進される。特に、油水分離タンクで分離された水分を加温して加えた場合は廃棄物が希釈化され易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施形態1)
本発明のグリストラップの廃棄物処理車(以下単に「廃棄物処理車」と記す。)の実施形態の一例を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。本発明の廃棄物処理車は図1(a)に示すようにトラック、バン等の貨物自動車1の貨物積載部2の荷台の上に廃棄物処理装置3を搭載してある。
【0014】
本実施形態の廃棄物処理装置3は、図1(a)に示すようにグリストラップ4から廃棄物を吸引する吸引装置(バキューム)5と、吸引した廃棄物を貯留する貯留室6と、貯留室6から送り出された廃棄物を固体(固形物)と液体(排液)に分離する固液分離機7と、固液分離機7から送り出された排液を加熱管40内に通しその加熱管40を加熱することにより油水分離を促進する加熱器8と、加熱器8から送り出された排液中の油分を上に水分を下に分離する油水分離タンク9を備えている。固液分離機7で分離されて送り出される固形物(固体)から更に水分を分離する第2分離機10、第2分離機10で固液分離された固体を更に固液分離する第3分離機11、前記油水分離タンク9で分離された油分を精製するための油精製機18も備えられている。自動車のエンジン17には動力取り出し装置(以下「PTO」とする。)16が連結され、PTOからの動力により廃棄物処理装置3の前記各機器が駆動されるようにしてある。
【0015】
前記油水分離タンク9の内部には加熱器8から送り込まれる排液を油分が上、水分が下になるように油水分離する分離室12が形成されている。油水分離タンク9には分離した水を貯留室6に戻す貯留室帰還路13と、グリストラップ4に戻すグリストラップ用帰還路15が夫々設けられ、更に、油水分離タンク9内の中間水(油分と水分の境目の澄んだ水分)を貯留室6に戻す中間水用帰還路14が設けられている。貯留室6内の廃棄物に水を加えることで油水分離タンク9内の廃棄物中の液体を緩めて(薄めて)油分と水分に分離し易くすることができ、廃棄物を汲み上げた後のグリストラップ内に水を供給することにより、グリストラップ内に水道水を供給する必要がなくなる。
【0016】
前記貯留室6は図2に示すように、廃棄物を収容可能な容器(タンク)であり、グリストラップ4内の全部の廃棄物を収容できる大きさの容量、例えば、グリストラップ4の容量が1t〜2tの場合は、それよりも多少大きめにしてある。
【0017】
前記バキューム5は、図1(a)、図2に示すように、グリストラップ4内の廃棄物を吸引ホース20で吸引する吸引装置であり、貯留室6の上部に設けられている。バキューム5には既存のバキュームと同じもの或はその改良品を使用可能である。吸引ホース20は可撓性のあるものが望ましく、一端がグリストラップ4内に差し込み可能であり、他端がバキューム5に連結されている。
【0018】
貯留室6の底6aの近くには図2に示すように貯留室6に送り込まれた廃棄物中の砂や汚泥(以下「汚泥類」と記す。)を分離させるための網22が設けられている。この網22には排液中に混在する汚泥類が通過できる程度の網目が開口されており、網22を通過した汚泥類は貯留室6の底部に落下する。貯留室6の底部に落下した汚泥類は貯留室6の底6aに設けられたドレイン23から外部に排出される。網22を通過しない割り箸、食材屑等の固形物を含む廃棄物は図2に示す排出口21から固液分離機7へ送り出される。
【0019】
固液分離機7は図1(a)、図3に示すように貯留室6から送り出された廃棄物を搬送しながら固液分離して固形物を外部に搬送する搬送体25の下に、搬送中に廃棄物から分離された排液を収容するタンク24を備えている。また、固液分離機7には、貯留室6から送り出された廃棄物を搬送体25へ投入するためのホッパー29も備えられている。前記搬送体25は長方形の周枠26内に多数本の送り体27が一定間隔で搬送方向に回転自在に配置されている。個々の送り体27は回転軸30に多数枚の楕円板31が所定間隔をあけて同じ向きで取り付けられており、横に並べて配置された多数本の送り体27の楕円板31が交互に縦向きと横向きになるように配置されており、全ての送り体27は同一速度で同期回転するようにしてある。
【0020】
前記各回転軸30上には、図3に示すように、各軸30の各楕円板31間に挿入されるように、板状のガイド28が、搬送方向に沿って着脱可能に配置されている。このガイド28の上端面は、前記楕円板31の回転によって送られる処理物を搬送方向にガイドする平滑なガイド面を形成する。
【0021】
従って、貯留室6の排出口21からホッパー29に投入され、ホッパー29から搬送体25上へ投入された廃棄物は、全ての送り体27を同一速度で同期回転させることにより、送り体27及びガイド28上(楕円板31の上部外周面上)を図中矢印B方向に波打つように上下しながら搬送され、楕円板31とガイド28の間の隙間及び隣接する送り体27の楕円板31同士の外周縁間の間隙Sから、固形物を分離した排液を下方に濾過する。濾過された排液は、下部のタンク24に収容される。送り体27及びガイド28上に捕集された廃棄物中の固形物、例えば、箸、爪楊枝、食材屑、バラン、輪ゴム、ビニール等や汚泥は、送り体27によって搬送されながら順次固液分離されて、排出口32より第2分離機10に排出される。
【0022】
前記固液分離機7には、既存の又は改良されたいずれの固液分離機を用いることもできる。従って、本発明の固液分離機7としては、例えば、研電社製「底部開閉型固液分離装置」(特許第3771515号。商品名「スリットセイバー(登録商標)」。)を用いることができる。
【0023】
前記第2分離機10は、図1(b)に示すように、容器10a内にネット10bを備えてなるものであり、排出口32から排出される固形物は、ネット10bで捕集できるようにしてある。ネット10bに捕集された固形物から出る排液は、容器10a内に溜まり、容器10aに備えられた帰還路10cによって前記固液分離機7のタンク24内へと戻される。
【0024】
前記ネット10bに捕集された固形物は、ネット10bごと図1(a)に示す第3分離機11に投入して、排液と固形物とに完全に分離する。第3分離機11には、遠心分離機を用いる。第3分離機11には既存の遠心分離機と同じもの或はその改良品を使用可能である。分離された排液はホース33によってタンク24に送り込まれ、タンク24内の固形物を分離した排液と混合される。第3分離機11内に残った固形物はネットごと廃棄する。
【0025】
タンク24には、図1(a)、図3に示すように、途中にモータ34を備える移送管35が備えられ、タンク24内に収容された排液を、モータ34によって汲み出して前記加熱器8の加熱管40内に送り込むことができるようにしてある。移送管35は、加熱器8に連結されるため、熱による変形に強い銅製等とすることが望ましい。
【0026】
加熱器8は、図4に示すように、複数層に折り曲げられたパイプ状の加熱管40を筺体43内に収容してなるものである。前記加熱管40は、図4に示すように、始端部41を前記移送管35と連結して、固液分離機7のタンク24から送り出された排液を加熱管40内に通すことができるようにしてあり、終端部42を、前記油水分離タンク9に排液を投入する投入管46と連結して設けられている。前記筺体43内にはオイル44が充填されており、そのオイル44を筺体43下部に設けたバーナ45で加熱し、加熱管40を加熱することで加熱管40内に通される排液を加熱できるようにしてある。バーナ45の燃料は、例えばプロパンガス等、任意のものを用いることができる。
【0027】
従って、前記移送管35を通って固液分離機7のタンク24から送り出された排液は、オイル44によって加熱された加熱管40内を通されて、70〜80度に加熱されて油水分離を促進されて、投入管46へと送り出される。
【0028】
前記加熱管40及び投入管46は、熱による変形に強い銅製等とすることが望ましい。加熱による排液の到達温度は、前記70〜80度には限られず、油水分離を促進できる温度であれば、任意の温度とすることができる。また、筺体43内のオイル44の加熱は、バーナ45に限らず、他の任意の熱源によって行うこともできる。
【0029】
油水分離タンク9は、図5に示すように、加熱器8から送り出される加熱された排液を収容可能な容器であり、その内部に、加熱器8から送り込まれる排液を上下に分離する分離室12を備えるものである。
【0030】
前記分離室12は、油水分離タンク9内側壁に取り付けられた上面開口の細長箱状の本体50内に、前記加熱器8から送り出された排液を移送する投入管46の開口部51が本体下端付近まで差し込まれたものであって、本体50内の投入管46の外側面及び本体50内側面に交互に遮蔽翼52が設けられてなるものである。前記本体50の底面53には分離された水分を通過させる隙間54が開口されている。
【0031】
従って、加熱器8によって加熱され、投入管46の開口部51から分離室12の本体50の下端付近に投入された排液は、遮蔽翼52に沿ってジグザグに本体50内を上昇する。排液は、遮蔽翼52に当たりながら上昇する途中で油分と水分とに分離され、比重の小さい油分はそのまま上昇して本体50の上面開口部55から油水分離タンク9の上部56付近に排出され、比重の大きい水分は底面53の隙間54から油水分離タンク9の下部57付近に排出される。そのため油水分離タンク9の上部56には油分が、下部57には水分が、夫々分離されて溜まる。
【0032】
油水分離タンク9は、図5に示すように、上端面58を傾斜させて形成したものであり、排液中の油分が上部56に溜まり易くなるようにしてある。前記上部56は、貨物積載部2の上方に突出させることもできる。油水分離タンク9の上部56には油分排出口59が設けられ、油水分離タンク9の上部56に溜まった油分を排出して、弁60のついた油分ホース61によって前記油精製機18に送り出すことができるようにしてある(図1a参照。)。油精製機18は、油分ホース61から送り出された油分をフィルタ(図示しない)によって濾過して細かな塵芥や汚泥などを除いた油を取り出し、燃料等として再利用可能な油を取り出し可能なものである。
【0033】
油水分離タンク9の下部57には、図5に示すように、油水分離タンク9の下部57に溜まった水分を貯留室6に戻す貯留室帰還路13の下端部62と、油水分離タンク9で分離された水分をグリストラップ4に戻すグリストラップ帰還路15の下端部63とが夫々備えられている。貯留室帰還路13は、図1(a)、図2、図5に示すように、弁64が設けられた管状部材であって、貯留室6に連結されており、貯留室6に水を供給して貯留室6内の排液を緩めて油水分離し易くすることができる。グリストラップ帰還路15は、図1(a)、図5に示すように、弁65が設けられた管状部材であって、グリストラップ4内に差し込まれ、グリストラップ4内に水を戻すことができるようにしてある。
【0034】
油水分離タンク9の上部56と下部57の間の中間部66には、図5に示すように、油水分離タンク9内の中間水(油分と水分の境目の澄んだ水分)を貯留室6に戻す中間水用帰還路14が備えられている。中間水を貯留室6に戻すことにより、貯留室6内の排液を一層緩めて油水分離を更に促進することができる。
【0035】
PTO16は、図1に示すように、貨物自動車1のエンジン17に備えられた動力取り出し装置であって、貨物自動車1のエンジン17の動力を、本発明の廃棄物処理装置3全体に伝達させ、エンジン17を廃棄物処理装置3の駆動源とさせるための装置である。PTO16には、車内又は車外から操作可能なスイッチ(図示しない)が備えられ、ON/OFFの切替えやその他の操作等を行うことができるようにしてある。
【0036】
また、本実施形態の廃棄物処理装置3には、バキューム5、貯留室6、固液分離機7、加熱器8、油水分離タンク9等の各部の動作を制御する制御盤(図示しない)を備える。制御盤には、本発明の廃棄物処理装置3全体の動作を制御するスイッチや、バキューム5、貯留室6、固液分離機7、加熱器8、油水分離タンク9等の各部毎の動作を制御するスイッチ等を設けることができる。そのため、操作盤の操作によって、グリストラップ4内の排液を自動的に油水分離できるようにしてある。
【0037】
(使用例)
図1〜図5に示す廃棄物処理車で、グリストラップ内の廃棄物を処理する場合は、次のようにする。
(1)バキューム5の吸引ホース20をグリストラップ4内に入れて、バキューム5によってグリストラップ4内に廃棄物を吸引する。
(2)吸引された廃棄物を貯留室6内に導入し、その廃棄物に貯留室帰還路13から供給される水及び中間水用帰還路14から供給される中間水を加えて、水分と油分を分離し易いように緩める。
(3)緩められた廃棄物は、網22によって汚泥類が分離され、汚泥類を分離した廃棄物は、排出口21から固液分離機7へと送り出される。
(4)排出口21から送り出された廃棄物はホッパー29に投入され、ホッパー29から搬送体25上に投入される。ホッパー29から搬送体25上へ投入された廃棄物は、全ての送り体27を同一速度で同期回転させることにより、送り体27及びガイド28上(楕円板31の上部外周面上)を図中矢印B方向に波打つように上下しながら搬送され、楕円板31とガイド28の間の隙間及び隣接する送り体27の楕円板31同士の外周縁間の間隙Sから、固形物を分離した排液を下方に濾過する。濾過された排液は、下部のタンク24に収容される。送り体27及びガイド28上に捕集された廃棄物中の固形物、例えば、箸、爪楊枝、食材屑、バラン、輪ゴム、ビニール等や汚泥は、送り体27によって搬送されながら順次固液分離されて、排出口32より第2分離機10に排出される。
(5)排出口32から排出される固形物は、第2分離機10に備えられたネット10bで捕集される。ネット10bに捕集された固形物から出る排液は、容器10a内に溜まり、容器10aに備えられた帰還路10cによって前記固液分離機7のタンク7内へと戻される。
(6)ネット10bに捕集された固形物は、ネット10bごと図1(a)に示す第3分離機11に投入して、排液と固形物とに完全に分離する。分離された排液はホース33によってタンク24に送り込まれ、タンク24内の固形物を分離した排液と混合される。第3分離機11内に残った固形物はネットごと廃棄する。
(7)タンク24内に収容された排液は、モータ34によって汲み出されて、移送管35を通って加熱器8の加熱管40内に送り込まれる。
(8)移送管35を通って固液分離機7のタンク24から送り出された排液は、オイル44によって加熱された加熱管40内を通されて、70〜80度に加熱されて油水分離が促進されて、投入管46へと送り出される。
(9)投入管46の開口部51から送り出された排液は、分離室12の本体50の下端付近に投入され、遮蔽翼52に沿ってジグザグに本体50内を上昇する。排液は、遮蔽翼52に当たりながら上昇する途中で油分と水分とに分離され、比重の小さい油分はそのまま上昇して本体50の上面開口部55から油水分離タンク9の上部56付近に排出され、比重の大きい水分は底面53の隙間54から油水分離タンク9の下部57付近に排出される。そのため油水分離タンク9の上部56には油分が、下部57には水分が、夫々分離されて溜まる。
(10)油水分離タンク9の上部56に溜まった油分は、油分ホース61によって前記油精製機18に送り出され、油精製機18によって細かな塵芥や汚泥などを除いた油を取り出し、燃料等として再利用可能な油とされる。油水分離タンク9の下部に溜まった水分は、貯留室帰還路13によって貯留室6に戻される。また、グリストラップ帰還路15によってグリストラップ4内にも戻される。油水分離タンク9の中間部の中間水は、中間水用帰還路14によって貯留室6に戻される。
(11)繰り返し廃棄物を処理する場合は、上記(1)〜(10)の工程を繰り返す。
【0038】
(その他の実施形態)
本発明の廃棄物処理車は、前記のトラック、バン等の貨物自動車1の貨物積載部2には限られず、任意の車両に廃棄物処理装置3を搭載させることができる。従って、廃棄物処理車は、例えば、廃棄物処理装置を自動車に積み込み可能な台車等に搭載したものとすることもできる。
【0039】
前記実施形態では、バキューム5、貯留室6、固液分離機7、第2分離機10、第3分離機11、加熱器8、油水分離タンク9、油精製機18等の各部品は、貨物自動車1の貨物積載部2に設置されているが、前記各部品は、貨物自動車1の貨物積載部2から降ろして、貨物積載部2外で廃棄物処理装置3を組み立てて使用することも可能である。また、前記各部品は、使用時に貨物自動車1の貨物積載部2から降ろして使用することもできる。
【0040】
貯留室6に加えられる水は、貯留室帰還路13からの水と中間水用帰還路14からの中間水の双方には限られず、前記水と前記中間水の一方のみであってもよい。また、油水分離タンク9から取り出した水と中間水には限られず、水道水や湯を供給できるようにしてもよい。また、貯留室6に水を加えないようにすることもできる。
【0041】
固液分離機7では、送り体27の楕円板31は必ずしも楕円形である必要はなく、例えば三角形、四角形、五角形等の多角形状とすることもできる。この場合、一回転あたりの上下動回数が3回、4回、5回等となる。
【0042】
加熱器8の筺体43内のオイル44の加熱は、油精製機18によって精製された油を燃料として行うこともできる。
【0043】
貯留室6内にエアーポンプを備える等して、貯留室6内の廃棄物にエアーを供給して廃棄物を撹拌し、油水分離を促進させることもできる。また、貯留室6内に撹拌翼を備えて廃棄物を撹拌し、油水分離を促進させることもできる。その他、任意の装置を備えて貯留室6内の廃棄物の油水分離を促進することもできる。
【0044】
貯留室6、油水分離タンク9の一方又は双方に熱源を備え、貯留室6内の廃棄物や、油水分離タンク9内の排液を加熱して油水分離を促進させることもできる。この場合、熱源として、貨物自動車1のラジエーター管、マフラー管、バーナ、ヒータ線等、任意の熱源を用いることができる。また、吸引ホース20、排出口21、移送管35、投入管46等の各移送路の外周にヒータ線を巻き付ける等して、各移送路内の廃棄物や排液を加熱することも可能である。
【0045】
本発明の廃棄物処理車では、固液分離機7、第2分離機10、第3分離機11等の各装置によって取り除かれた塵芥や汚泥に有用部生物群(EM菌)を付着させて、そのEM菌によって塵芥や汚泥を発酵・分解させて肥料とする肥料作成装置を備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)は、本発明の廃棄物処理車の実施形態の一例を示す斜視説明図。(b)は、本発明の廃棄物処理車の第2分離機を示す説明図。
【図2】図1に示す廃棄物処理車の貯留室を示す説明図。
【図3】図1に示す廃棄物処理車の固液分離機を示す斜視説明図。
【図4】図1に示す廃棄物処理車の加熱器を示す説明図。
【図5】図1に示す廃棄物処理車の油水分離タンクを示す説明図。
【図6】従来の廃棄物処理車を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0047】
1 貨物自動車
2 貨物積載部
3 廃棄物処理装置
4 グリストラップ
5 バキューム
6 貯留室
7 固液分離機
8 加熱器
9 油水分離タンク
10 第2分離機
11 第3分離機
12 分離室
13 貯留室帰還路
14 中間水用帰還路
15 グリストラップ帰還路
16 PTO
17 エンジン
18 油精製機
24 タンク
25 搬送体
27 送り体
28 ガイド
30 回転軸
31 楕円板
40 加熱管
43 筺体
44 オイル
45 バーナ
46 投入管
50 本体
52 遮蔽翼
53 底面
54 隙間
55 上面開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の1〜4の構成を備えることを特徴とするグリストラップの廃棄物処理車。
1.グリストラップの廃棄物処理装置が車両に搭載され、
2.前記廃棄物処理装置は次の(1)〜(5)の構成を備え、
(1)グリストラップから廃棄物を吸引する吸引装置と、
(2)吸引装置で吸引した廃棄物を貯留する貯留室と、
(3)貯留室から送り出された廃棄物中の固液を分離する固液分離機と、
(4)固液分離機で固液分離されて送り出された排液を管内に通し、管を加熱することにより排液を加熱する加熱器と、
(5)加熱器から送り出された排液を油分と水分とに分離する油水分離タンク、
3.前記固液分離機は前記貯留室から送り出された廃棄物を搬送しながら固形物と排液に分離する搬送体と、搬送体での搬送中に落下する排液を収容するタンクを備え、
4.前記油水分離タンクの内部に、前記加熱器から送り込まれる排液中の油分と水分を上下に分離する分離室を備える。
【請求項2】
次の1〜4の構成を備えることを特徴とするグリストラップの廃棄物処理車。
1.グリストラップの廃棄物処理装置が車両に搭載され、
2.前記廃棄物処理装置は次の(1)〜(5)の構成を備え、
(1)グリストラップから廃棄物を吸引する吸引装置と、
(2)吸引装置で吸引した廃棄物を貯留する貯留室と、
(3)貯留室から送り出された廃棄物中の固液を分離する固液分離機と、
(4)固液分離機で固液分離されて送り出された排液を加熱する加熱器と、
(5)加熱器から送り出された排液を油分と水分とに分離する油水分離タンク、
3.前記固液分離機は前記貯留室から送り出された廃棄物を搬送しながら固形物と排液に分離する搬送体と、搬送体での搬送中に落下する排液を収容するタンクを備え、搬送体はタンク上方に搬送方向に並べて回転自在に備えられた多数本の送り体と、隣接する送り体の間に搬送方向に沿って配置されて廃棄物中の固形物を出口側に案内するガイドを備え、各送り体は回転軸の軸方向に多数枚の円板が間隔をあけて設けられ、各送り体が搬送方向に回転することによってガイド及び送り体上に投入された廃棄物中の固形物が上下動しながら前記ガイド上を搬送され、その搬送中に廃棄物中の排液が落下して固液分離されるものであり、
4.前記油水分離タンクの内部に、前記加熱器から送り込まれる排液の油分と水分を上下に分離する分離室を備える。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のグリストラップの廃棄物処理車において、油水分離タンクで分離された水分をグリストラップ又は/及び貯留室に戻す帰還路を備えたことを特徴とするグリストラップの廃棄物処理車。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−301498(P2007−301498A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133905(P2006−133905)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(304025954)有限会社群馬環境衛生管理センター (4)
【Fターム(参考)】