説明

グリホサートアンモニウム塩を有効成分とする除草剤配合物

【課題】 グリホサートの特長を犠牲にすることなく初期害微を早く表すよう工夫された除草剤配合物を提供する。
【解決手段】グリホサートアンモニウム塩を有効成分とし、界面活性剤をその他の成分のうちの主成分とする水溶液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容易に散布でき、著しい初期害徴を示すとともに長期的防除効果が優れている除草剤水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
散布方法ラウンドアップなど従来のグリホサート塩を有効成分として含む除草剤は、通常100倍ぐらいに稀釈してから散布される。したがって、散布水量は10アール当たり50〜100L位にも達し、散布者は大量の散布液を担いで散布せねばならない。日本においては、農作業者の年齢が毎年のように高くなり高齢者にとって除草剤の散布はきつい仕事になりつつある。本発明の除草剤配合物は、この問題を解決すべく開発されたものである。
【0003】
除草効果ランドアップなど従来のグリホサート塩を有効成分として含む除草剤は、他の除草剤と比べて雑草の地上部のみを枯らすのではなく、根まで浸透移行し、雑草を枯殺するために再生がない、という他の除草剤には見られない特長を持つ。しかし、一方通常の濃度で散布した場合、一般には散布後植物表面に害徴が表れるのが他の除草剤に比べて遅いという短所がある。この短所を改良すべく初期害徴を表す除草剤(たとえば:グルホシネート、ビアラホス)を混合することがあるが再生が発生し易くなり、グリホサートの特長である根まで枯らすことによって得られる長期的防除効果が犠牲になる傾向がみられる。
【0004】
本発明の除草剤配合物はグリホサートの特長を犠牲にすることなく初期害微を早く表すよう工夫された配合物である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
散布方法従来の散布方法では、大量の稀釈液を担いで散布せねばならないので、高齢化が進む農業従事者にとっては過酷な労働を強いられている。
除草効果グリホサート塩を有効成分とする除草剤、たとえばラウンドアップは根まで枯らし雑草を根絶するという優れた特長があるが、害微が表れるのが遅いため散布者に不安を与えることがある。初期害微が早く表れ、しかも長期的防除効果の優れている除草剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の構成本発明配合物はグリホサートアンモニウム塩を有効成分として含み、その他の助剤として界面活性剤、防カビ剤、防バクテリア剤、および硫安や塩安などを含む水溶液除草剤配合物であり、上記の課題を解決する目的で開発されたものであり容易に散布でき、優れた初期害微と長期的防除効果を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
グリホサートアンモニウム塩を有効成分とする配合物が、グリホサートの他の塩を有効成分とする配合物よりも著しい初期害徴を示し、しかも優れた長期的防除効果を示す結果は表1に示されている。
【0008】
本発明のグリホサートアンモニウム塩(NH4-glyphosate)を有効成分とする配合物は、表1に示すように散布後1日目で害徴を示すが他の塩を有効成分とする配合物は散布後7日目になってやっと害徴を表す。初期害徴は草種によって異なるが葉面上の白い斑点、あるいは褐色に変色することによって容易に観察される。
【0009】
グリホサートアンモニウム塩を有効成分とする液は他の塩を有効成分とする液に比べて(グリホサート濃度が濃厚な液の場合、表2では16%)はるかに散布し易いことは表2に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の具体的構成グリホサート塩を有効成分とする除草剤(ラウンドアップ、ポラリス)は雑草を根から枯殺させるために再生がなく、雑草の地上部のみを枯らす他の除草剤に比べて、長期防除効果においてはるかに優れていることがよく知られている。しかし、散布後害微が表れるのが他の除草剤に比べて遅いという短所がある。
【0011】
それはグリホサートが葉面から根まで移行する時間が必要であることによる。初期害徴を早めるために初期害微の早い他の除草剤(例:パラコート、グリホシネート、ビアラホス)を混合することがあるがグリホサートが根まで到達する前に雑草の細胞と生理機構が破壊されたり、抑制されたりするため、グリホサートの効果が低下し再生が表れるという問題があった。
【0012】
一方、従来のグリホサートを主成分とする除草剤でも濃い散布液を散布したり、標準散布量の数倍量(2〜10倍)散布すると長期防除効果を犠牲にすることなく初期害微を早くすることが一般に知られている。非常に濃度が濃い場合には(例えば10倍稀釈液)葉面の散布液の接触面に変色が見られることがある。ただし初期害微を得るために濃い散布液を散布することは、散布者にとって経済的に大きな負担となる。
【0013】
本発明は、濃い除草剤の散布液を少量散布することにより経済的負担をかけることなく、そして長期防除効果を犠牲にすることなく初期害徴を出さしめることであり、また従来グリホサート系除草剤では防除が困難であった草種(たとえばスギナ、ツユクサ、セイタカアワダチソウ)に対しても防除効果を高めようとするものである。
【0014】
本発明の除草剤配合物は、グリホサートアンモニウム塩を有効成分とする。グリホサートアンモニウム塩は濃い溶液で雑草に散布した場合、グリホサートの他の塩に比べて顕著に初期害徴を示す(表1参照)。
【0015】
【表1】

【0016】
またアンモニウム塩を含む水溶液は、他の塩を含む水溶液に比べて粘度が低く(表2参照)濃厚液の散布に適している。他の塩の水溶液は粘度が高過ぎて容易に散布できない。
【0017】
【表2】

【0018】
以上のような技術上での利点に加え、グリホサートアンモニウム塩は従来から使用されている有効成分であるグリホサートイソプロピルアミン塩(ラウンドアップ)やグリホサートトリメシウム塩よりもはるかに安価である。
【0019】
本発明に使用される界面活性剤は、グリホサートアンモニウム塩と相溶性の良い界面活性剤に限られる。従来のラウンドアップに使用されている界面活性剤(エトキシ化タロウアミン)や非イオン性界面活性剤の多くは、グリホサートアンモニウム塩と相溶性がなく混合すると水溶液は白濁する。
【0020】
また本発明に使用される界面活性剤は、初期害徴を早く出さしめるため、葉面を化学的に傷つけ、グリホサートの浸透を早めるようなものが望ましい。
【0021】
上記の要求を満足する界面活性剤は、カチオン性四級アンモニウム系界面活性剤である。代表的なものを表3にしめす。
【0022】
【表3】


さらに、初期害徴を促進させるためにカチオン性界面活性剤以外の界面活性剤(たとえば非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(n:1〜20)アルキルエーテル類、ソルビタンモノラウレートポリグリコールエーテル類やアニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩類や無機塩(たとえば硫安や塩安など)を添加してもよい。
【0023】
これら界面活性剤や添加剤は、単独でも葉面に初期害徴を示すが、グリホサートアンモニウム塩と混合することによりさらに顕著な害徴を表す。また害徴を表す程度の順位は、グリホサートアンモニウム塩を混合すると変化する。それ程顕著に初期害徴を示さない界面活性剤(たとえば表4の界面活性剤A)でも、グリホサートアンモニウム塩を混合すると著しい害徴を表す。すなわち、界面活性剤とグリホサートアンモニウム塩は初期害徴に対して相乗効果を示す(表4参照)。
【0024】
【表4】

【0025】
初期害徴はほとんどの場合白い斑点(スポット)として葉面に表れるが、表面活性の高いシリコーン系界面活性剤(たとえばOSi Specilties,Inc.のSilwetL-77)を加えると(0.1〜1%)ヌレがよくなり斑点の面積が拡大され害徴が見やすくなることを見出した(表4参照)。
【0026】
初期害徴の表れる時間は、液の種類、濃度、草種、気候などによって大きく異なるが、散布後1〜4日内に表れ、従来の市販されているグリホサート系除草剤に比べて7〜10日程早い。従来のラウンドアップでは初期害徴が表れるまでに1〜2週間かかる。
【0027】
散布量は10アール当たり3〜5リットル程度であり、従来のグリホサート除草剤の散布液約100リットルに比べて20〜30分の1の水量で済む。
【0028】
散布機は従来のランドマスター用少量散布機を使用することもできるが通常の散布機のノズルだけを置換して使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリホサートアンモニウム塩からなる有効成分と、界面活性剤とを含み、前記グリホサートアンモニウム塩の濃度が16〜45%の水溶液である除草剤配合物。
【請求項2】
枯草性の高い界面活性剤を含む請求項1に記載の除草剤配合物。
【請求項3】
枯草性の高い界面活性剤がグリホサートアンモニウム塩に相容性を有する四級アミン系カチオン性界面活性剤である請求項2に記載の除草剤配合物。
【請求項4】
枯草性の高い界面活性剤を2〜40%含む請求項2に記載の除草剤配合物。
【請求項5】
無機塩を含む請求項1に記載の除草剤配合物。
【請求項6】
無機塩が硫安及び塩化アンモニウムである請求項5に記載の除草剤配合物。
【請求項7】
シリコーン系界面活性剤をさらに添加する請求項1に記載の除草剤配合物。
【請求項8】
請求項1に記載の除草剤配合物を散布する方法であって、その配合物を稀釈することなく散布する方法。

【公開番号】特開2008−138012(P2008−138012A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13355(P2008−13355)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【分割の表示】特願平8−340439の分割
【原出願日】平成8年12月6日(1996.12.6)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】