説明

グリース組成物、グリース封入軸受、およびプロペラシャフト用自在継手

【課題】水素脆性による転がり軸受等の転走面での剥離を効果的に防止でき、かつ、高温高速耐久性に優れ、長時間使用可能なグリース組成物、および該グリース組成物を封入してなるグリース封入軸受、ならびに該グリース組成物を封入してなるプロペラシャフト用自在継手を提供する。
【解決手段】グリース封入軸受1は、内輪2および外輪3と、複数の転動体4とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物7を封止するためのシール部材6を内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bに設けてなり、該グリース組成物7は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、上記添加剤は、植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つを含有し、該化合物の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリース組成物、グリース封入軸受、およびプロペラシャフト用自在継手に関する。グリース封入軸受は、特にオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受や、モータ用の転がり軸受に関し、プロペラシャフト用自在継手は、特に自動車のプロペラシャフトに用いられるプロペラシャフト用等速ジョイントや、プロペラシャフト用カルダンジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車における電装部品や補機、産業機械におけるモータ等は、年々小型化や高性能、高出力が求められており、使用条件が厳しくなってきている。これらには、転がり軸受が使用されており、その潤滑には主としてグリースが用いられている。ところが、高温下での高速回転等使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じ、問題になっている。
【0003】
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、グリース組成物の分解などによって発生する水素が原因の水素脆性による剥離と考えられている。このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法が知られている(特許文献1参照)。またグリース組成物にビスマスジチオカーバメートを添加する方法が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
近年、ACモータ、DCモータなどの汎用モータでは、モータの小型化が進み、該モータの回転子を支持する軸受がより高速、高面圧下で運転される傾向にある。そのため、潤滑性を付与するために潤滑組成物が封入される。この潤滑組成物は、基油および増ちょう剤と、必要に応じて添加剤とを混練して得られ、基油としては鉱油やエステル油、シリコーン油、エーテル油等の合成潤滑油が、また増ちょう剤としてはリチウム石けん等の金属石けんやウレア化合物が一般的に使用されている。また、添加剤としては、必要に応じて酸化防止剤、さび止め剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤などの各種添加剤が配合される。酸化防止剤としては、アルキルジチオりん酸亜鉛などの有機亜鉛化合物や、アルキル化ジフェニルアミンなどのアミン系化合物などを単独で、または、複数種類を組み合わせて用いている。
【0005】
家電や産業機器などに使用されるモータ軸受は、高温高速回転で使用され、静音性、高温高速耐久性に優れていることが要求されている。従来、高温耐久性に優れ、冷時異音を抑え、高温高荷重下での剥離性に優れたグリースなどの潤滑組成物として、合成炭化水素油とエステル油とからなる基油にウレア系増ちょう剤等を配合した潤滑組成物が知られている(特許文献3および特許文献4参照)。また、高温高速回転条件における焼き付き寿命が長い潤滑組成物として、基油にエステル油を含み、脂肪族ジウレア化合物を必須とした増ちょう剤を 3〜30 重量%含むグリース組成物が知られている(特許文献5参照)。
【0006】
一方、FW車や4WD車に使用されるプロペラシャフトは、トランスミッション側とディファレンシャルギヤ側とを連結するシャフトであり、そして途中に自在継手が適宜設けられている。この自在継手の潤滑剤としては、従来ホイールベアリング用グリースや汎用グリース(マルチパーパスグリース)が多く用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−210394号公報
【特許文献2】特開2005−42102号公報
【特許文献3】特開平9−208982号公報
【特許文献4】特開平11−270566号公報
【特許文献5】特開2001−107073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、自動車における電装部品や補機、産業機械におけるモータ等では、高温下で、高速運転−急減速運転−急加速運転−急停止が頻繁に行なわれる等ますます転がり軸受の使用条件が過酷化され、特許文献1の不動態化剤や特許文献2のビスマスジチオカーバメートを添加する方法では剥離現象を防ぐ対策として不十分になってきている。
【0009】
また、特許文献3〜特許文献5のような潤滑(グリース)組成物を使用する場合や、これらに従来の酸化防止剤を組み合わせて添加する場合でも、近年の家電や産業機器などの高温高速回転で使用される軸受に封入した際に、高温高速耐久性について性能を満足させることができない場合がある。
【0010】
また、密封、高温、高速、高トルク、高角度などのプロペラシャフト用自在継手が使用される苛酷な環境下においては、上記のホイールベアリング用グリースや汎用グリース(マルチパーパスグリース)では必ずしも性能を満足させ得るとはいえない。このため、該過酷な環境下でも優れた性能を発揮するプロペラシャフトの自在継手用グリースの開発が望まれている。
【0011】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、水素脆性による転がり軸受等の転走面での剥離を効果的に防止でき、かつ、高温高速耐久性に優れ、長時間使用可能なグリース組成物、および該グリース組成物を封入してなるグリース封入軸受、ならびに該グリース組成物を封入してなるプロペラシャフト用自在継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のグリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であって、上記添加剤は、(1)植物由来のポリフェノール化合物、および、(2)植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物、から選ばれた少なくとも一つの化合物を含有し、該化合物の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とする。また、上記植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物は、1分子内に複数の水酸基を有することを特徴とする。
【0013】
上記植物由来のポリフェノール化合物は、タンニンであることを特徴とする。また、上記植物由来のポリフェノール化合物は、没食子酸またはその誘導体であることを特徴とする。特に、上記没食子酸の誘導体は、没食子酸エチルであることを特徴とする。また、上記植物由来のポリフェノール化合物は、エラグ酸またはその誘導体であることを特徴とする。
【0014】
上記植物由来のポリフェノール化合物は、クロロゲン酸またはその誘導体であることを特徴とする。また、上記植物由来のポリフェノール化合物は、コーヒー酸またはその誘導体であることを特徴とする。上記植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物は、キナ酸またはその誘導体であることを特徴とする。
【0015】
上記植物由来のポリフェノール化合物は、クルクミンまたはその誘導体であることを特徴とする。
【0016】
上記植物由来のポリフェノール化合物は、ケルセチンまたはその誘導体であることを特徴とする。
【0017】
上記化合物の配合割合は、ベースグリース 100 重量部に対して 0.1〜5 重量部であることを特徴とする。
【0018】
上記基油は、アルキルジフェニルエーテル油、エステル油およびポリ-α-オレフィン(以下、PAOと記す)油から選ばれた少なくとも一つの油であることを特徴とする。また、上記基油は、鉱油であることを特徴とする。また、上記基油の 40℃における動粘度が 10〜100 mm2/sec であることを特徴とする。
【0019】
上記増ちょう剤は、ウレア系化合物であることを特徴とする。また、上記増ちょう剤は、金属石けんであることを特徴とする。
【0020】
本発明のグリース封入軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物を封止するためのシール部材を上記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けてなるグリース封入軸受であって、上記グリース組成物を封入することを特徴とする。また、上記グリース封入軸受は、深溝玉軸受であることを特徴とする。
【0021】
上記グリース封入軸受は、産業機械または電装機器のモータに用いられ、モータの回転子を支持する転がり軸受であることを特徴とする。また、上記グリース封入軸受は、自動車電装・補機に用いられる転がり軸受であることを特徴とする。
【0022】
本発明のプロペラシャフト用自在継手は、トランスミッションからの回転トルクをプロペラシャフトに伝達するプロペラシャフト用自在継手であって、該自在継手は上記グリース組成物を封入してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースに(1)植物由来のポリフェノール化合物、および(2)植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物、から選ばれた少なくとも一つの化合物を含有する添加剤が配合されているので、このグリース組成物を軸受に封入することで、自動車や産業機械に使用される軸受で見られる水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができる。また、従来の酸化防止剤などを配合したグリース組成物よりも耐酸化劣化性を向上させることができ、高温高速下での軸受の長寿命化が図れる。
【0024】
本発明のグリース封入軸受は、上記グリース組成物を封入しているので、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止でき、耐酸化劣化性に優れ、軸受寿命に優れる。このため、自動車電装・補機、家電、産業機器などの軸受として利用できる。特に、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受、換気扇用モータ、燃料電池用ブロアモータ、クリーナモータ、ファンモータ、サーボモータ、ステッピングモータなどの産業機械用モータ、自動車のスタータモータ、電動パワーステアリングモータ、ステアリング調整用チルトモータ、ワイパーモータ、パワーウィンドウモータなどの電装機器用モータ、などの高温や高速回転で使用されるモータ用の軸受として好適に使用できる。
【0025】
本発明のプロペラシャフト用自在継手は、上記グリース組成物を封入しているので、高温、高速遠心力を受ける密封された環境下において、焼き付きにくく、高温高速耐久性に優れ、長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のグリース封入軸受の一実施例を示す深溝玉軸受の断面図である。
【図2】本発明のモータ用のグリース封入軸受の一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明のオルタネータ用のグリース封入軸受の一実施例を示す断面図である。
【図4】本発明のプロペラシャフト用自在継手の一実施例を示すプロペラシャフト用等速ジョイントの一部切欠き断面図である。
【図5】本発明のプロペラシャフト用自在継手の他の実施例としてプロペラシャフト用カルダンジョイントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
転がり軸受について、(1)植物由来のポリフェノール化合物、および(2)植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物、から選ばれた少なくとも一つの化合物を含有するグリース組成物を封入し、急加減速試験および高温耐久性試験を行なったところ軸受寿命を延長できることがわかった。これは、上記化合物が、(A)極性基の作用により軸受転走面の金属表面に容易に付着し、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面において該物質が反応し、酸化被膜を軸受転走面に形成することで、グリース組成物の分解による水素の発生が抑制され、軸受転走面における水素脆性に起因する特異な剥離を防止できること、(B)上記化合物がグリース組成物の酸化防止剤として働き酸化劣化が抑制できること、によるためであると考えられる。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0028】
本発明において使用できるポリフェノール化合物は、芳香族炭化水素環の水素原子を水酸基(ヒドロキシ基)で置換した、1分子内に複数の水酸基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であり、植物由来のものである。
【0029】
また、上記植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物は、該ポリフェノール化合物の加水分解などで生成する芳香族または脂環族ヒドロキシ化合物などである。ポリフェノール化合物と同様の作用効果を得るため、該分解化合物においても、1分子内に複数の水酸基を有することが好ましい。
【0030】
本発明において使用できる植物由来のポリフェノール化合物またはその分解化合物としては、例えば、タンニン、没食子酸、エラグ酸、クロロゲン酸、コーヒー酸、キナ酸、クルクミン、ケルセチン、ピロガロール、テアフラビン、アントシアニン、ルチン、リグナン、カテキン等が挙げられる。また、植物由来のセサミン、イソフラボン、クマリンなどから得られるポリフェノール化合物も使用できる。以上のようなポリフェノール化合物またはその分解化合物は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
これらの中で、より長期間、酸化劣化を抑制できることから、タンニン、没食子酸またはその誘導体、エラグ酸またはその誘導体、クロロゲン酸またはその誘導体、コーヒー酸またはその誘導体、キナ酸またはその誘導体、クルクミンまたはその誘導体、ケルセチンまたはその誘導体を用いることが好ましい。
【0032】
本発明に用いるタンニンは、分子内に多くのフェノール性水酸基を含み、酸性有機物質として分子量が比較的大きなポリフェノール化合物である。該タンニンは、カシの皮、フシ(没食)、柿などに存在する収斂性の植物成分であり、化学構造の相違により、加水分解性タンニンと縮合型タンニンとに大別される。
【0033】
加水分解性タンニンは、酸、アルカリ、酵素で多価フェノール酸と、多価アルコールとに加水分解される。得られる多価フェノール酸としては、主に没食子酸およびその二量体(遊離状態では脱水環化して4環性のエラグ酸となる)の二つのタイプがある。また、得られる多価アルコールとして、ピロガロールなどがある。縮合型タンニンは複数分子のカテキンが炭素−炭素結合で縮合したものである。本発明においては、没食子酸、エラグ酸、ピロガロールなどの分解物を得られる加水分解性タンニンを用いることが好ましい。
【0034】
本発明に用いる没食子酸およびエラグ酸は、上記のように加水分解性タンニンを加水分解して得られる多価フェノール酸(ポリフェノール化合物)である。没食子酸は下記式(1)に、エラグ酸は下記式(2)に、それぞれ示す構造を有する。
【化1】

【化2】

【0035】
本発明に用いる没食子酸の誘導体としては、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸ペンチル、没食子酸ヘキシル、没食子酸ヘプチル、没食子酸オクチル等の没食子酸エステルや没食子酸ビスマス等の没食子酸塩が挙げられる。これらの中で潤滑油への溶解性に優れることから、没食子酸エチルを用いることがさらに好ましい。また、エラグ酸についても、同様の誘導体を用いることができる。
【0036】
本発明に用いるクロロゲン酸は、コーヒー豆などに含まれるポリフェノール化合物であり、下記式(3)に示す構造を有する。
【化3】

【0037】
本発明に用いるコーヒー酸は、クロロゲン酸の加水分解物であり、芳香族炭化水素環の水素原子を水酸基で置換した分子内に3個の水酸基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であり、下記式(4)に示す構造を有する。
【化4】

【0038】
本発明に用いるキナ酸は、クロロゲン酸の加水分解物であり、脂環族炭化水素環の水素原子を水酸基で置換した分子内に5個の水酸基を有する脂環族ヒドロキシ化合物であり、下記式(5)に示す構造を有する。
【化5】

【0039】
本発明に用いるクルクミンは、ウコンなどに含まれるポリフェノール化合物であり、下記式(6)に示す構造を有する。
【化6】

【0040】
本発明に用いるケルセチンは、柑橘類などに含まれるポリフェノール化合物であり、下記式(7)に示す構造を有する。
【化7】

【0041】
植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物の配合割合は、ベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部である。さらに、好ましくは 0.1〜5 重量部である。上記化合物の配合割合が 0.05 重量部未満であると、水素脆性による転がり軸受等の転走面での剥離を効果的に防止できない。また、グリースの酸化劣化を効果的に防止できない。上記化合物の配合割合が 10 重量部をこえても剥離防止効果および潤滑剤の酸化劣化を防止する効果がそれ以上に向上しにくい。
【0042】
本発明に使用できる基油としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高度精製鉱油、流動パラフィン油、ポリブテン油、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、PAO油、アルキルナフタレン油、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂、ポリオールエステル油、りん酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油等のエステル油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等を使用できる。これらを単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
PAO油は、通常、α-オレフィンまたは異性化されたα-オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α-オレフィンの具体例としては、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラドコセン等を挙げることができ、通常はこれらの混合物が使用される。
【0044】
本発明のグリース組成物の基油としては、上記基油の中で耐熱性と潤滑性に優れることから、アルキルジフェニルエーテル油、エステル油およびPAO油から選ばれた少なくとも一つの油を用いることが好ましい。アルキルジフェニルエーテル油およびエステル油は、PAO油と併用することがより好ましい。
【0045】
また、上記基油の 40℃における動粘度が 10〜100 mm2/sec であることが好ましい。より好ましくは、10〜70 mm2/secである。動粘度が、10 mm2/sec 未満である場合には、短時間で基油が劣化し、生成した劣化物が基油全体の劣化を促進するため、軸受等の耐久性を低下させ短寿命となる。また、100 mm2/sec をこえると回転トルクの増加による軸受等の温度上昇が大きくなり、特に高速回転下では温度上昇が大きく、上記ポリフェノール化合物等を配合してもグリースの酸化劣化を十分に防止できなくなるおそれがある。
【0046】
本発明のグリース組成物の増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の金属石けん、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。これらの中で、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
【0047】
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
【0048】
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0049】
基油にウレア系化合物等の増ちょう剤を配合して、上記ポリフェノール化合物等を配合するためのベースグリースが得られる。ウレア系化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
【0050】
ベースグリース 100 重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40 重量部、好ましくは 3〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
【0051】
また、植物由来のポリフェノール化合物とともに、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、ポリアルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、りん系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合せて添加できる。
【0052】
本発明のグリース組成物は、水素脆性による特異な剥離の発生の抑制、および、高温高速下におけるグリースの耐酸化劣化性の向上により、グリース封入軸受の寿命を向上させることができる。このため、玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受等の封入グリースとして使用できる。
【0053】
本発明のグリース組成物が封入されている軸受について図1により説明する。図1は本発明のグリース封入軸受の一実施例を示す深溝玉軸受の断面図である。グリース封入軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5が設けられている。また、外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。このグリース組成物7は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに、上述の植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つを含有する添加剤が配合されている。
【0054】
本発明のグリース封入軸受の他の実施例としてモータに用いられるグリース封入軸受を図2により説明する。図2は本発明のモータ用のグリース封入軸受を示すモータの断面図である。モータは、ジャケット9の内周壁に配置されたモータ用マグネットからなる固定子10と、回転軸11に固着された巻線12を巻回した回転子13と、回転軸11に固定された整流子14と、ジャケット9に支持されたエンドフレーム17に配置されたブラシホルダ15と、このブラシホルダ15内に収容されたブラシ16と、を備えている。上記回転軸11は、グリース封入軸受1と、該軸受1のための支持構造とにより、ジャケット9に回転自在に支持されている。グリース封入軸受1が本発明のグリース封入軸受である。
【0055】
本発明のグリース封入軸受の他の実施例として自動車電装・補機であるオルタネータに用いられるグリース封入軸受を図3により説明する。図3はオルタネータの構造の断面図である。オルタネータは、静止部材であるハウジングを形成する一対のフレーム18、19に、ロータ20を装着されたロータ回転軸21が、一対のグリース封入軸受1、1で回転自在に支持されている。ロータ20にはロータコイル22が取り付けられ、ロータ20の外周に配置されたステータ23には、120 °の位相で 3 巻のステータコイル24が取り付けられている。ロータ回転軸21は、その先端に取り付けられたプーリ25にベルト(図示省略)で伝達される回転トルクで回転駆動されている。プーリ25は片持ち状態でロータ回転軸21に取り付けられており、ロータ回転軸21の高速回転に伴って振動も発生するため、特にプーリ25側を支持するグリース封入軸受1は、苛酷な負荷を受ける。グリース封入軸受1が本発明のグリース封入軸受である。
【0056】
本発明のプロペラシャフト用自在継手の一例を図面に基づいて説明する。図4はプロペラシャフト用ダブルオフセット型等速ジョイントの一部切欠き断面図を示す。図4に示すように、プロペラシャフト用等速ジョイント26は、内輪27、外輪28、ケージ29と6個の鋼球30とで構成され、内輪27および外輪28は、鋼球を収納する軸線に平行なトラックを有する。またケージ29は、鋼球30の動きをコントロールする役目を果たしているが、鋼球30を転がりやすくするため、図4に示すように内径面に円筒部分が設けられている。また、外輪28の外周とシャフト31の外周とをブーツ32で覆い、外輪28と、内輪27と、鋼球30と、ケージ29と、シャフト31と、ブーツ32とに囲まれた空間に上述の本発明のグリース組成物33が封入されている。
【0057】
本発明のプロペラシャフト用自在継手の他の例を図面に基づいて説明する。図5はプロペラシャフト用カルダンジョイントを示す。図5(a)は平面図、図5(b)は正面図である。図5に示すように、プロペラシャフト用カルダンジョイント34は、トランスミッション側に連結されて回転する第1ヨーク35と、第1ヨーク35の回転トルクをプロペラシャフト38に伝達する第2ヨーク37と、これら第1ヨーク35の二股の端部35a、35aに設けられた貫通孔と、第2ヨーク37の二股の端部37a、37aに設けられた貫通孔とに十字型にクロスして連結し、第1ヨーク35から第2ヨーク37へ回転トルクを伝達する十字型継手部材36とを備える。十字型継手部材36は、十字型にクロスする短軸36a、36bを有し、短軸36aの先端部は、第2ヨークの端部37a、37aの貫通孔に挿入され、図示しないニードルベアリングを介して回転自在に支持され、第2ヨークのキャップ37bを介して係合ナット37cにより第2ヨークの端部37a、37aに連結固定される。同様に短軸36bの先端部は、第1ヨークの端部35a、35aの貫通孔に挿入され、図示しないニードルベアリングを介して回転自在に支持され、第1ヨークのキャップ35bを介して係合ナット35cにより第1ヨークの端部35a、35aに連結固定される。十字型継手部材の短軸36a、36bの先端部を回転自在に支持するニードルベアリングに上述の本発明のグリース組成物が封入されている。
【0058】
本発明のグリース組成物を、上記プロペラシャフト用自在継手に用いる場合は、安価でかつ油膜形成性に優れることが必要であることから、基油にタービン油等の鉱油を、増ちょう剤にリチウム石けん等の金属石けんを用いることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下に示す各実施例および各比較例において、基油として用いたPAO油は 40℃における動粘度 30 mm2/sec の新日鉄化学社製の商品名シンフルード601を、アルキルジフェニルエーテル油は 40℃における動粘度 97 mm2/sec の松村石油社製の商品名モレスコハイルーブLB100を、エステル油は 40℃における動粘度 72 mm2/sec の新日鉄化学社製の商品名ハトコールH2362(ポリオールエステル油)を、それぞれ用いた。また、各ポリフェノール化合物は、東京化成社製試薬を用いた。
【0060】
実施例1〜実施例10
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(日本ポリウレタン工業社製商品名のミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。これに、植物由来のポリフェノール化合物等および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加えて、さらに 100℃〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。得られたグリース組成物の急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
【0061】
<急加減速試験>
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受に上記グリース組成物を封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 1960 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に 0.1 A の電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、試験は、500 時間で打ち切った。
【0062】
比較例1〜比較例3
実施例1に準じる方法で、表1に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調製し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示すように、実施例1〜実施例10の急加減速試験は全て 400 時間以上を示した。これはグリース組成物の添加剤として配合された植物由来のポリフェノール化合物の作用により、軸受転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止できたことによると考えられる。これに対して、酸化防止剤(ヒンダードフェノール)のみを添加剤として配合した比較例1では、実施例1〜実施例10と比較して、剥離発生寿命が大幅に短かい結果となった。
【0065】
実施例11〜実施例17
表2に示した基油の半量に、MDIを表2に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表2のとおりである。MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。これに、植物由来のポリフェノール化合物等を表2に示す配合割合で加えて、さらに 100℃〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。得られたグリース組成物について、高温耐久性試験1を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表2に併記する。
【0066】
<高温耐久性試験1>
転がり軸受(軸受寸法:内径 20 mm、外径 47 mm、幅 14 mm)にグリース組成物を 0.7 g 封入し、軸受外輪外径部温度 150℃、ラジアル荷重 67 N 、アキシアル荷重 67 N の下で 10000 rpm の回転数で回転させ、焼き付きに至るまでの時間(高温高速寿命(150℃)、h)を測定した。
【0067】
比較例4および比較例5
実施例11に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例11と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に併記する。
【0068】
実施例18
表2に示した配合割合にて鉱油に12−ヒドロキシステアリン酸リチウムを投入し、撹拌しながら加熱溶解した。その後冷却し、これに、植物由来のポリフェノール化合物等を表2に示す配合割合で加えて、さらに 100℃〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。得られたグリース組成物について、高温耐久性試験2を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表2に併記する。
【0069】
<高温耐久性試験2>
転がり軸受(軸受寸法:内径 20 mm、外径 47 mm、幅 14 mm)にグリース組成物を 0.7 g 封入し、軸受外輪外径部温度 120℃、ラジアル荷重 67 N 、アキシアル荷重 67 N の下で 10000 rpm の回転数で回転させ、焼き付きに至るまでの時間(高温高速寿命(120℃)、h)を測定した。
【0070】
比較例6
実施例18に用いたベースグリースに、表2に示す添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物について実施例18と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に併記する。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示すように、実施例11〜実施例17は、高温耐久性試験1において寿命が全て 1400 時間以上の優れた高温耐久性を示した。これは、グリース組成物の添加剤として配合された植物由来のポリフェノール化合物が、グリース組成物の酸化劣化を抑制できたことによると考えられる。一方、比較例4では、実施例11〜実施例17と同じ基油を用い2種類の酸化防止剤を併用したが、実施例11〜実施例17と比較して寿命が大幅に短い結果となった。また、鉱油/Li石けんのベースグリースを用いる場合でも、植物由来のポリフェノール化合物を添加した実施例18は、他の酸化防止剤を添加した比較例6よりも高温耐久性試験2において 1.5 倍以上の高温耐久性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のグリース組成物は、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止でき、耐酸化劣化性に優れ、このグリース組成物を封入する軸受は高温高速下において長寿命であるので、自動車電装・補機、家電、産業機器などの転がり軸受として、特に、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受、換気扇用モータ、燃料電池用ブロアモータ、クリーナモータ、ファンモータ、サーボモータ、ステッピングモータなどの産業機械用モータ、自動車のスタータモータ、電動パワーステアリングモータ、ステアリング調整用チルトモータ、ワイパーモータ、パワーウィンドウモータなどの電装機器用モータなどのモータ用軸受として好適に使用できる。また、このグリース組成物を封入する自在継手は自動車のプロペラシャフトに用いられるプロペラシャフト用自在継手として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 グリース封入軸受(深溝玉軸受)
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8a 両端開口部
8b 両端開口部
9 ジャケット
10 固定子
11 回転軸
12 巻線
13 回転子
14 整流子
15 ブラシホルダ
16 ブラシ
17 エンドフレーム
18 フレーム
19 フレーム
20 ロータ
21 ロータ回転軸
22 ロータコイル
23 ステータ
24 ステータコイル
25 プーリ
26 プロペラシャフト用等速ジョイント
27 内輪
28 外輪
29 ケージ
30 鋼球
31 シャフト
32 ブーツ
33 グリース組成物
34 プロペラシャフト用カルダンジョイント
35 第1ヨーク
36 十字型継手部材
37 第2ヨーク
38 プロペラシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であって、
前記添加剤は、植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物を含有し、該化合物の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とするグリース組成物。
【請求項2】
前記植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物は、1分子内に複数の水酸基を有することを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項3】
前記植物由来のポリフェノール化合物は、タンニンであることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記植物由来のポリフェノール化合物は、没食子酸またはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項5】
前記没食子酸の誘導体は、没食子酸エチルであることを特徴とする請求項4記載のグリース組成物。
【請求項6】
前記植物由来のポリフェノール化合物は、エラグ酸またはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項7】
前記植物由来のポリフェノール化合物は、クロロゲン酸またはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項8】
前記植物由来のポリフェノール化合物は、コーヒー酸またはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項9】
前記植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物は、キナ酸またはその誘導体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のグリース組成物。
【請求項10】
前記植物由来のポリフェノール化合物は、クルクミンまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項11】
前記植物由来のポリフェノール化合物は、ケルセチンまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項12】
前記化合物の配合割合は、ベースグリース 100 重量部に対して 0.1〜5 重量部であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項記載のグリース組成物。
【請求項13】
前記基油は、アルキルジフェニルエーテル油、エステル油およびポリ-α-オレフィン油から選ばれた少なくとも一つの油であることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項記載のグリース組成物。
【請求項14】
前記基油は、鉱油であることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項記載のグリース組成物。
【請求項15】
前記基油は、40℃における動粘度が 10〜100 mm2/sec であることを特徴とする請求項13または請求項14記載のグリース組成物。
【請求項16】
前記増ちょう剤は、ウレア系化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか一項記載のグリース組成物。
【請求項17】
前記増ちょう剤は、金属石けんであることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか一項記載のグリース組成物。
【請求項18】
内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物を封止するためのシール部材を前記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けてなるグリース封入軸受であって、
前記グリース組成物は、請求項1ないし請求項17のいずれか一項記載のグリース組成物であることを特徴とするグリース封入軸受。
【請求項19】
前記グリース封入軸受は、深溝玉軸受であることを特徴とする請求項18記載のグリース封入軸受。
【請求項20】
前記グリース封入軸受は、産業機械または電装機器のモータに用いられる転がり軸受であることを特徴とする請求項18または請求項19記載のグリース封入軸受。
【請求項21】
前記グリース封入軸受は、自動車電装・補機に用いられる転がり軸受であることを特徴とする請求項18または請求項19記載のグリース封入軸受。
【請求項22】
トランスミッションからの回転トルクをプロペラシャフトに伝達するプロペラシャフト用自在継手であって、
該自在継手は請求項1ないし請求項17のいずれか一項記載のグリース組成物を封入してなることを特徴とするプロペラシャフト用自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−222560(P2010−222560A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270651(P2009−270651)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】