説明

グルコピラノシル置換(エチニル−ベンジル)‐ベンゼン誘導体及びその中間体の製造方法

本発明は、一般式(I)の化合物の製造方法に関するもので、式中、R、R及びR基は請求項1に定義されたとおりであり、また、前記製造方法の中間体に関するものである。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式Iで表されるグルコピラノシル置換(エチニル-ベンジル)−ベンゼン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、置換基R、R及びRは本願明細書後記で定義するとおりである。)さらに、本発明は、本発明による方法の中間体及び出発物質の製造方法に関する。また、本発明はその中間体及び出発物質に関するものである。
【背景技術】
【0004】
国際特許出願WO2005/092877には、下記一般式で表されるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体が記載されている。
【0005】
【化2】

【0006】
(式中、基R〜R及びR7a、R7b、R7cは同出願に定義されているとおりである。)このような化合物はナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLTに、とりわけSGLT2に対して有用な阻害効果を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、式Iで表されるグルコピラノシル置換ベンジル−ベンゼン誘導体の新規な製造方法を見出すことで、とりわけ、高収率で、鏡像異性体又はジアステレオ異性体の見地から高い純度で生成物を得ることができる製造方法であり、かつ、技術的な支出を抑え、高い空時収量で前記生成物を商業規模で生産可能にする製造方法を見出すことである。
本発明の別の目的は前記製造方法における出発物質の製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、本発明よる製造方法における新規な中間体及び出発物質に関する。
本発明の他の目的については、当業者であれば前述及び後述の記載から直接的に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、下記一般式Iの化合物の製造方法であって、
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、
は、
水素、或いは、
C1-4-アルキル、C3-7-シクロアルキル、テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニルを表し、これらは1〜4個の置換基L2で置換されていてもよく、或いは、
アリール基又は5員もしくは6員の単環式ヘテロアリール基又は8員、9員もしくは10員の二環式ヘテロアリール基を表し、前記ヘテロアリール基は窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、かつ、前記ヘテロアリール基は、前記単環式又は二環式芳香族環系の一部として1個又は2個のカルボニル基を有していてもよく、さらには
前記ヘテロアリール環の窒素原子が酸化され、対応するN−酸化物を形成していてもよく、さらには、
前記アリール基及びヘテロアリール基の1個以上のメチン基が、互いに独立して置換基L1で置換されていてもよく、さらには、
前記ヘテロアリール基における1個以上のイミノ基が、互いに独立して置換基Rで置換されていてもよく、
は塩素又はメチルを表し、
は水素を表し、
は互いに独立してC1-3-アルキルから選択され、
L1は互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキル、C1-4-アルコキシ及びニトロから選択され、
L2は互いに独立して、フッ素、塩素、ヒドロキシ、ヒドロキシル-C1-4-アルキル、C1-4-アルコキシ、トリフルオロメトキシ、C1-4-アルコキシ-C1-4-アルキル、シアノ、C1-4-アルキル、トリフルオロメチル、アミノ、C1-4-アルキル-カルボニルアミノ、C1-3-アルキル-アミノ及びジ(C1-3-アルキル)-アミノから選択され、
上述の基の定義に記載のアリール基とは、フェニル基又はナフチル基を意味し、好ましくはフェニル基を意味し、L1でモノ置換又はポリ置換されていてもよい)
下記一般式IIで表される化合物において:
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、
及びRは前述の定義のとおりであり、
は互いに独立して水素、C3-18-アルケニル、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、(C3-18-アルケニル)カルボニル、(C3-18-アルケニル)オキシカルボニル、ジ-(C1-18-アルキル)アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリール-(C1-3-アルキル)-カルボニル、アリール-C1-3-アルキル、C1-6-アルコキシメチル、アリール-C1-3-アルコキシ、C1-4-アルキルチオエチル、アリールチオエチル、C1-4-アルキルスルホニルエチル、アリールスルホニルエチル、RaRbRcSi-、-CRaRbORcを表し、2つの隣接するR基が互いに結合して橋架け基SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成してもよく、また、前記において各アルキルが、フッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、Rが少なくとも1個は水素ではないことを条件とし、
Ra、Rb、Rcは互いに独立して、C1-4-アルキル、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、前記アルキルがハロゲンでモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
L1及びL2は前述の定義のとおりであり、
上述の基の定義におけるアリール基とは、フェニル基又はナフチル基を意味し、好ましくはフェニル基を意味し、L1でモノ置換又はポリ置換されていてもよい)、水素ではない保護基Rを開裂する、とりわけ加水分解することを特徴とする製造方法に関する。
本発明の第二の態様は、下記一般式II'で表される化合物の製造方法であって、
【0013】
【化5】

【0014】
(式中、
は、
水素、或いは
C1-4-アルキル、C3-7-シクロアルキル、テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニルを表し、これらは1〜4個の置換基L2で置換されていてもよく、或いは、
アリール基又は5員もしくは6員の単環式ヘテロアリール基又は8員、9員もしくは10員の二環式ヘテロアリール基を表し、該ヘテロアリール基は窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、かつ、前記ヘテロアリール基は、単環式又は二環式芳香族環系の一部として1個又は2個のカルボニル基を有していてもよく、さらには
前記ヘテロアリール環の窒素原子が酸化され、対応するN−酸化物を形成していてもよく、さらには、
前記アリール基及びヘテロアリール基の1個以上のメチン基が、互いに独立して置換基L1で置換されていてもよく、さらには、
前記ヘテロアリール基における1個以上のイミノ基が、互いに独立して置換基Rで置換されていてもよく、
は塩素又はメチルを表し、
は水素を表し、
【0015】
は互いに独立して水素、C3-18-アルケニル、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、(C3-18-アルケニル)カルボニル、(C3-18-アルケニル)オキシカルボニル、ジ-(C1-18-アルキル)アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリール-(C1-3-アルキル)-カルボニル、アリール-C1-3-アルキル、C1-6-アルコキシメチル、アリール-C1-3-アルコキシ、C1-4-アルキルチオエチル、アリールチオエチル、C1-4-アルキルスルホニルエチル、アリールスルホニルエチル、RaRbRcSi、CRaRbORcを表し、2つの隣接するR基が互いに結合して橋架け基SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成してもよく、また、前記において各アルキルが、フッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、
は、水素、パラ-R-フェニル-、C1-6-アルキルオキシ、アリールオキシ、-ORを表し、
は、-C≡C-R、塩素、臭素、ヨウ素、-OSO2R、-CHO、-SiAlk3、-O-C1-6-アルキル、-OR、-C≡C-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(アリール)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-Si(ビフェニル)(C1-4-アルキル)2、又は、-C≡C-C(OH)(C1-4-アルキル)2を表し、
Rは、C1-4-アルキル、C3-4-アルケニル、C1-4-アルコキシ、CF3、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、該アリール基はL1でモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
【0016】
a、Rb、Rcはそれぞれ独立してC1-4-アルキル、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、該アルキル基はハロゲンでモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
は互いに独立してC1-3-アルキルから選択され、
L1は互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキル、C1-4-アルコキシ及びニトロから選択され、
L2は互いに独立して、フッ素、塩素、ヒドロキシ、ヒドロキシル-C1-4-アルキル、C1-4-アルコキシ、トリフルオロメトキシ、C1-4-アルコキシ-C1-4-アルキル、シアノ、C1-4-アルキル、トリフルオロメチル、アミノ、C1-4-アルキル-カルボニルアミノ、C1-3-アルキル-アミノ及びジ(C1-3-アルキル)-アミノから選択され、
上述の基の定義に記載のアリール基は、フェニル基又はナフチル基を意味し、好ましくはフェニル基を意味し、L1でモノ置換又はポリ置換されていてもよい)の製造方法に関するもので、下記一般式III'の化合物を還元剤と反応させることを特徴とする製造方法に関する。
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、R、R及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりであり、
R’は水素、C1-6-アルキル、(C1-4-アルキル)カルボニル、(C1-4-アルキル)オキシカルボニル、アリールカルボニル、アリール-(C1-3-アルキル)-カルボニルを表し、「アリール」という用語は前述の定義とする)
本発明の第三の態様は、下記一般式III'で表される化合物の製造方法であって、
【0019】
【化7】

【0020】
(式中、
、R’及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりであり、
は、水素、パラ-R-フェニル-、C1-6-アルキルオキシ、アリールオキシ、-ORを表し、
は、-C≡C-R、塩素、臭素、ヨウ素、-OSO2R、-CHO、-SiAlk3、-O-C1-6-アルキル、-OR、-C≡C-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(アリール)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-Si(ビフェニル)(C1-4-アルキル)2、又は、-C≡C-C(OH)(C1-4-アルキル)2を表し、
Rは、C1-4-アルキル、C3-4-アルケニル、C1-4-アルコキシ、CF3、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、該アリール基はL1でモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
前記R、アリール及びL1は本願明細書前記の定義のとおりである)
下記式VIで表される有機金属化合物又はそのトランスメタル化により得た誘導体:
【0021】
【化8】

【0022】
(式中、R及びRは本願明細書前記の定義のとおりであり、MはLi又はMgHalを示し、Halは塩素、臭素又はヨウ素を表す)であって、式VIで表される化合物は下記一般式Vのハロゲン−ベンジルベンゼン化合物の炭素−ハロゲン結合におけるハロゲン−金属交換を行うか、又は金属の挿入により得ることができ、さらに引き続きトランスメタル化を行ってもよく、
【0023】
【化9】

【0024】
(式中、R及びRは本願明細書前記の定義のとおりであり、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)
この式VIの化合物を下記一般式IVのグルコノラクトンに添加し、
【0025】
【化10】

【0026】
(式中、Rは本願明細書前記の定義のとおりである)
得られた付加物を、酸の存在下、水又はアルコールR'-OH(R’はC1-6-アルキルを表す)と反応させ、R’が水素である場合の水との反応で得た生成物は、さらに引き続きアシル化剤との反応で式III'の生成物(式中、R’は(C1-4-アルキル)カルボニル、(C1-4-アルキル)オキシカルボニル、アリールカルボニル又はアリール-(C1-3-アルキル)-カルボニルを表し、「アリール」という用語は前記定義のとおりとする)に変換してもよいことを特徴とする式III'の化合物の製造方法に関する。
本発明の第四の態様は、下記一般式Xで表される化合物の製造方法であって、
【0027】
【化11】

【0028】
(式中、R、R及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりである)
式VIIで表される保護D−グルカールのメタル化を行い、
【0029】
【化12】

【0030】
(式中、Rは本願明細書前記の定義のとおりである)、式VIIIで表されるメタル化D−グルカールを得て、
【0031】
【化13】

【0032】
(式中、Rは本願明細書前記の定義のとおりであり、Mはリチウム又はマグネシウム部位を表す)、さらにトランスメタル化を行ってもよく、式VIIIのメタル化D−グルカール(式中、Mはマグネシウム部位、亜鉛部位、インジウム部位、ホウ素部位、錫部位、珪素部位又はクロム部位を表す)を得て、
式VIIIで表される前記メタル化又はトランスメタル化D−グルカールを、遷移金属触媒の存在下、式Vのアグリコンと反応させて
【0033】
【化14】

【0034】
(式中、R及びRは本願明細書前記の定義のとおりであり、Xは交換可能な基を表す)式IXのグルカール誘導体を得て、
【0035】
【化15】

【0036】
(式中、R、R及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりである)、
式IXのグルカール誘導体のグルカール部位の二重結合に形式的には水を付加することにより、詳細には二重結合のヒドロホウ素化を行った後に炭素−ホウ素結合の酸化開裂を行うこと、或いは、二重結合のエポキシ化又はジヒドロキシル化を行った後に得られたアノマー炭素−酸素結合の還元を行うことにより、式IXのグルカール誘導体を式Xの生成物に変換することを特徴とする、式Xの化合物の製造方法に関するものである。
本発明の第五の態様は、下記式Xで表される化合物の製造方法であって、
【0037】
【化16】

【0038】
(式中、R、R及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりである)
式VIIで表される保護D−グルカールをエポキシ化して
【0039】
【化17】

【0040】
(式中、Rは本願明細書前記の定義のとおりである)、式XIで表される対応のグルカールオキシドを得て、
【0041】
【化18】

【0042】
(式中、Rは本願明細書前記の定義のとおりである)
式XIのグルカールオキシドを式VIのアグリコンと反応させて
【0043】
【化19】

【0044】
(式中、R及びRは本願明細書前記の定義のとおりであり、Mはリチウム部位、マグネシウム部位、亜鉛部位、インジウム部位、アルミニウム部位又はホウ素部位を表す)、式Xの生成物を得ることを特徴とする、式Xの化合物の製造方法に関する。
本発明の第六の態様は、下記一般式II'で表される化合物の製造方法であって、
【0045】
【化20】

【0046】
(式中、R、R及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりである)
式XIIのグルコース誘導体:
【0047】
【化21】

【0048】
(式中、Rは本願明細書前記の定義のとおりであり、LGはフッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキルカルボニルオキシ、C1-3-アルキルオキシカルボニルオキシ、C1-3-アルキルオキシ又はトリクロロアセトイミダートを示す)を、式VIのメタル化アグリコン:
【0049】
【化22】

【0050】
(式中、Rは本願明細書前記の定義のとおりであり、Rは本願明細書前記の定義のとおりであり、Mはリチウム部位、マグネシウム部位、亜鉛部位、インジウム部位又はホウ素部位を表す)と反応させて、式II'の生成物を得ることを特徴とする、式II'の化合物の製造方法に関する。
本発明の第七の態様は、下記一般式XXVI'で表される化合物の製造方法であって、
【0051】
【化23】

【0052】
(式中、R及びRは本願明細書前記の定義のとおりであり、
13は、-CHO、-C≡C-R、OH、C1-6-アルキルオキシ、-Si(C1-6-アルキル)3、-C≡C-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(アリール)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-Si(ビフェニル)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-C(OH)(C1-4-アルキル)2、ヨウ素、臭素、塩素又はC1-6-アルキルスルホニルオキシを示し、該Rは前記記載のとおりである)
式Xの化合物において
【0053】
【化24】

【0054】
(R及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりであり、
は水素、OH、C1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを示す)又は
式II'の化合物において
【0055】
【化25】

【0056】
(R、R及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりである)
基をZ基に変換してもよく、式XXXIXの化合物を得て、
【0057】
【化26】

【0058】
(R及び各Rは本願明細書前記の定義のとおりであり、
は塩素、臭素、ヨウ素、C1-6-アルキルオキシ、アリールオキシ、C1-6-アルキルカルボニルオキシ、C1-6-アルキルオキシカルボニルオキシ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、-OPO(O-C1-6-アルキル)2又はアリールオキシを示す)
該式XXXIXの化合物を、式XXIIIで表されるメタル化ベンゼンと反応させて式XXVI'の化合物を得る、式XXVI'の化合物の製造方法に関する。
【0059】
【化27】

【0060】
(式中、R13は本願明細書前記の定義のとおりであり、
はリチウム部位、ホウ素部位、マグネシウム部位、珪素部位、錫部位、セリウム部位、インジウム部位、亜鉛部位又はクロム部位を示す。)
本発明の更なる態様は新規な化合物、とりわけ新規な抽出物(educts)及び中間体、なかでも、本発明による製造方法で記載の式II、II'、IX及びXで表される化合物に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
特に記載のない限り、基、残基及び置換基、とりわけR、R、R、R、L1、L2、RNは本願明細書前記及び後述の定義のとおりである。
例えば、Alk、L1、L2、R又はRのような残基、置換基又は基が化合物中に何度が出てきた場合、それらは同じ定義又は異なる定義を有することがある。
本願明細書前述及び後述の本発明による方法及び化合物において、基及び置換基については下記の定義が好ましい。
は好ましくは水素、あるいは、
C1-4-アルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロピラニルを表し、これらは1〜4個の置換基L2で置換されていてもよく、あるいは、
置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよい5員又は6員の単環式ヘテロアリール基を示す。
【0062】
さらに好ましくは、Rは水素、あるいは、
C1-4-アルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニルを表し、これらは1個又は2個の置換基L2で置換されていてもよい。
好適な置換基L2は、ヒドロキシ、ヒドロキシル-C1-4-アルキル、C1-4-アルキル、C1-4-アルコキシ及びC1-4-アルコキシ-C1-4-アルキルから互いに独立して選択される。L2の好適な定義の例は、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、メチル、メトキシメチル、メトキシ及びエトキシである。
は好ましくは塩素又はメチルを表す。
基の特に好ましい定義は、水素、メトキシカルボニル、メチルカルボニル又はエチルカルボニルである。
a、Rb、Rcは、好ましくは、互いに独立してメチル、エチル、n-プロピルもしくはi-プロピル、ターシャリーブチル又はフェニルを表す。
R’は好ましくは水素、メチル又はエチルを表す。
以下、本発明による方法を詳細に説明する。記載されている試薬、触媒、溶媒及び温度等の反応条件は、それぞれの変換を行う際に基本的に適用可能な好適な範囲及び例を意味し、反応条件を記載の選択に限定することを意図するものではない。加えて、反応パラメータは通常互いに独立して与えられる。当該分野の当業者であれば、いずれのパラメータの組合せが特に有用であるかは標準的な実験からわかっていることであり、決定することができる。
【0063】
下記スキームにおいて、
Alkは、C1-4-アルキル、
Arは、本願明細書前述のようなアリールを示し、フェニルが好ましく、
Rは、C1-4-アルキル、C3-4-アルケニル、C1-4-アルコキシ、CF3、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを示し、アリール基がL1でモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
は本願明細書前述の定義のとおりであり、
は本願明細書前述の定義のとおりであり、
は本願明細書前述の定義のとおりであり、
は本願明細書前述の定義のとおりであり、
は、水素、パラ-R-フェニル-、C1-6-アルキルオキシ、アリールオキシ、-ORを示し、
は-C≡C-R、塩素、臭素、ヨウ素、-OSO2R、-CHO、-SiAlk3、-O-C1-6-アルキル、-OR、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2、-C≡C-C(OH)Alk2を示し、
Xは塩素、臭素、ヨウ素又はOSO2Rを示し、
Yは、
【0064】
【化28】

【0065】
又は、X、OAlk、SiAlk3を示し、
L1は本願明細書前述の定義のとおりである。
スキーム1は、本発明の第一の態様による化合物IIから化合物Iへの変換を示し、化合物IIに存在する水素ではない保護基Rを取り除くことによる変換であり、R、R、R及びRは本願明細書前述の定義のとおりである。
スキーム1:保護基の除去による式IのC−グルコシドの合成
【0066】
【化29】

【0067】
基の好ましい定義は、水素、(C16-アルキル)カルボニル、(C1-6-アルキル)オキシカルボニル、(C3-6-アルケニル)オキシカルボニル、アリールカルボニル、アリール-メチル、C1-6-アルコキシメチル、RaRbRcSi、CRaRbORcであり、2つの隣接するR基が互いに結合して橋架け基SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成してもよく、また、それぞれのアルキル基はフッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi及びC1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよい。
アシル保護基Rはいずれも、例えば、水中で又は水と1種以上の有機溶媒との混合物中、例えば、水中、イソプロパノール/水、酢酸/水、テトラヒドロフラン/水又はジオキサン/水中で、トリフルオロ酢酸、塩酸又は硫酸等の酸の存在下、或いは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属塩基の存在下で加水分解により開裂させることができる。この反応は温度-30〜120℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは10〜100℃の範囲で行うとよい。
アセタール又はケタール保護基Rはいずれも、例えば、水、イソプロパノール、酢酸、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合物等の溶媒中、トリフルオロ酢酸、塩酸又は硫酸等の酸の存在下、或いは、非プロトン環境下、例えば、ヨードトリメチルシラン又はブロモトリメチルシランの存在下、加水分解により開裂させることができる。この反応は温度30〜120℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは10〜100℃の範囲で行うとよい。
【0068】
トリメチルシリル基Rは、例えば、水、水性溶媒混合物又はメタノールもしくはエタノール等の低級アルコール中、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム又はナトリウムメトキシド等の塩基存在下で開裂を行うことができる。水性溶媒又はアルコール性溶媒においては、例えば、塩酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸又は酢酸等の酸も好適である。例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジクロロメタン等の有機溶媒中で開裂を行うには、フッ化物試薬、とりわけテトラアルキルアンモニウムフルオリド又はアルカリ金属フッ化物、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド又はフッ化セシウムの使用も好適である。
シリル保護基の場合、特にメチルよりも大きな置換基を有するシリル保護基、例えば、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、メチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル、ジイソプロピルシリル又はトリイソプロピルシリル等は、塩酸、硫酸、アルキルスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の酸を使って、特に不活性有機溶媒、水又はそれらの混合物中、具体的にはメタノールもしくはエタノール等のアルコール、水、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル又はそれらの混合物中で除去することができる。この反応は温度-80〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは0〜60℃の範囲で行うことが好ましい。フッ化水素、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化ピリジニウム、フッ化カリウム又はフッ化セシウム等のフッ化物試薬も、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル又はジオキサン等の好適な有機溶媒中で使用することができる。テトラヒドロフラン、ジオキサン、アルコール類、水又はこれらの混合物中で、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用するなどの塩基性の条件も同様に適用することができる。
【0069】
アリールメチル基又はアリールメトキシカルボニル基Rは、水素化分解により有利に開裂される。例えば、パラジウム/木炭のような触媒の存在下、メタノール、エタノール、酢酸エチル又は氷酢酸等の好適な不活性有機溶媒中で水素を用いて行うが、塩酸等の酸の存在下で行ってもよい。この反応は温度0〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは20〜60℃の範囲で行うことが好ましい。通常、水素ガス圧力は1〜7barが好適であり、さらに好ましい範囲は3〜5barである。また、例えば、2,4-ジメトキシベンジル基のような電子豊富なアリールメチル基も、アニソールのようなアリールメチルカチオンの掃去剤の存在下でトリフルオロ酢酸中で開裂することができる。
t−ブチル基又はt−ブチルオキシカルボニル基Rは、トリフルオロ酢酸又は塩酸のような酸で処理することにより好適な開裂を行うことができる。この反応は、好ましくは、塩化メチレン、ジオキサン、メタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル又はこれらの混合物等の不活性有機溶媒中で行う。
スキーム2aは、本発明の第二の態様による式II'の化合物を得るための合成経路を示す。式II'で表されるグルコース誘導体は、分離可能な中間体III'(本発明の第三の態様に従って製造することができる。スキーム2b参照)を介して得られる。
スキーム2a:C−グルコシドの合成 アプローチ1
【0070】
【化30】

【0071】
基の好ましい定義は、水素、O-C1-6-アルキル、O-アリール、パラ-R-フェニル及びORで、アリール及びRは本願明細書前記の定義のとおりである。
は、好ましくは-C≡C-R、塩素、-OSO2R、-SiAlk3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を示し、R、R、Ar、Alk及びRは本願明細書前記の定義のとおりである。
好適な実施形態では、Rが、O-C1-6-アルキル、O-アリール及びパラ-R-フェニル-を表し、アリールは本願明細書前記の定義のとおりであり、Rが好ましくは-C≡C-R、-SiMe3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、R、Ar及びAlkは本願明細書前記の定義のとおりである。
別の実施形態で好適なものがあるが、それによると、Rは水素、O-C1-6-アルキル、O-アリール、C1-4-アルキルカルボニルオキシ、C1-4-アルキルオキシカルボニルオキシ又はパラ-R-フェニル-を示し、アリールは本願明細書前記の定義のとおりであり、Rが好ましくは-OSO2R、-SiAlk3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2又は-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、Ar及びAlkは本願明細書前記の定義のとおりであり、RはC1-4-アルキル、CF3、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、アリール基はL1でモノ置換又はポリ置換されていてもよい。
【0072】
スキーム2aにおける置換基Rの好ましい定義は、(C1-6-アルキル)-カルボニル(該アルキル基がC1-4-アルコキシで置換されていてもよい)、(C1-6-アルキル)-オキシカルボニル、(C3-6-アルケニル)オキシカルボニル、ジ-(C1-6-アルキル)アミノカルボニル、アリールカルボニル、RaRbRcSi-、-CRaRbORc、ベンジル、置換ベンジルを示し、特には、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、C1-4-アルコキシメチル、4-メトキシベンジル及びベンジルが好ましく、該Ra、Rb、Rcは前記記載の定義のとおりであり、好ましくはC1-3-アルキルを示す。2個の隣接する置換基Rが結合して橋架け基SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成する場合、各アルキル基は、フッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよい。とりわけ、2個の隣接する置換基Rが結合する場合、この2個の置換基がベンジリデンアセタール、4-メトキシベンジリデンアセタール、ジイソプロピルシリリデンアセタール、イソプロピルケタールの一部となるか、或いは、ブタンの2位及び3位を介して隣接するピラノースの酸素原子と結合する2,3-ジメトキシ-ブチレンと共にジオキサンを構成することが好ましい。
R’基は好ましくは水素、C1-4-アルキル、C1-4-アルキルカルボニル又はC1-4-アルキルオキシカルボニルを表し、特に好ましくは水素、メチル又はエチルを表す。
【0073】
スキーム2aに示す合成変換は、化合物III'におけるアノマー炭素‐酸素結合の還元による、式II'で表されるグルコース誘導体の形成を示す。還元は、ルイス酸の存在下又はルイス酸は使わずに、還元剤を使用して行うことができる。好適な還元剤としては、例えば、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリイソプロピルシランもしくはジフェニルシラン等のシラン類、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、ボラン錯体、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム又はヨウ化サマリウム等が挙げられる。還元剤によっては、ルイス酸を添加せずに還元を行うことができる。好適なルイス酸とは、例えば、塩酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又は酢酸のようなブレーンステッド酸、あるいは、例えば、三フッ化ホウ素エーテラート、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、四塩化チタン、四塩化錫、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、ヨウ化亜鉛等のルイス酸が挙げられる。使用される還元剤及びルイス酸によっては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、水又はこれらの混合物等の溶媒中で反応を行うことができる。この反応は温度-80〜120℃で行うことが好ましく、より好ましくは-30〜80℃の範囲で行うことが好ましい。特に好適な試薬の組合せの1つは、例えば、トリエチルシランと三フッ化ホウ素エーテラートで構成され、この組合せは、温度-60〜60℃でアセトニトリル、ジクロロメタン又はその混合物中で容易に使用される。前記還元剤に加えて、意図する還元を目的に水素を使用することができる。この変換は、例えば、パラジウム担持木炭、酸化パラジウム、酸化プラチナ、ラネーニッケル等の遷移金属触媒の存在下、例えば、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水又は酢酸等の溶媒中で遂行することができる。この反応は温度-40〜100℃で行うことが好ましい。水素ガス圧力の好適な範囲は、約1〜10Torrである。
本発明の第二の態様の1つ目の好適な変形例では、R基が下位式:
【0074】
【化31】

【0075】
(式中、Rは本願明細書で定義したとおりである)で表される基を示す。式II'のグルコース誘導体は化合物IIに対応するが、これは、以下のスキームにより中間体IIIに対応する中間体III'から得られる。
【0076】
【化32】

【0077】
式IIのグルコース誘導体から出発して、式Iの生成物を得るために保護基Rが開裂される。保護基を開裂するための好適な方法はこの分野の当業者には既知であり、スキーム1で記載されている。
本発明の第二の態様の2つ目の変形例は、R基がパラ-R-フェニル-を示し、該Rが-C≡C-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(アリール)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-Si(ビフェニル)(C1-4-アルキル)2又は-C≡C-C(OH)(C1-4-アルキル)2を示す。得られた式II'のグルコース誘導体を、例えば、三重結合末端の保護基を取り除くことにより変形させ、Rが水素を示す式IIの生成物を得る。Rが前述の定義であるが水素ではない式IIの生成物は、当該分野の当業者には公知である方法で得ることができるが、とりわけスキーム13で記載の方法により得ることができる。
本発明の第二の態様の3つ目の変形例は、R基がパラ-R-フェニル-を示し、該Rが塩素、臭素、ヨウ素、-SiAlk3又は-OSO2Rを示し、該RがC1-4-アルキル、CF3又はアリールを表し、該アリール基はL1によりモノ置換又はポリ置換されていてもよい。得られた式II'のグルコース誘導体は、当該分野の当業者には公知の方法で、とりわけスキーム13に記載の方法で、例えば末端フェニル基にアルキン残基を結合させることにより式IIの生成物に変換する。
本発明の第二の態様の4つ目の変形例は、R基がC1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを示し、該アリールは本願明細書で定義したとおりである。得られた式II'のグルコース誘導体は、当該分野の当業者には公知の方法で、とりわけスキーム6、12及び15に記載の方法で、例えば、Rを塩素、臭素及びヨウ素のような脱離基に変換させ、得られた化合物にパラ-置換フェニル基を外から結合させることにより式IIの生成物に変換させることができる。
【0078】
この変形例による保護基Rの好ましい定義は、(C1-6-アルキル)-カルボニル(該アルキル基がC1-4-アルコキシで置換されている)、(C1-6-アルキル)-オキシカルボニル、(C3-6-アルケニル)カルボニル、(C3-6-アルケニル)オキシカルボニル、ジ-(C1-6-アルキル)アミノカルボニル、アリールカルボニル、RaRbRcSi-又は-CRaRbORcからなる群から選択されるか、あるいは、2個の隣接するR基が互いに結合しあって橋架け基SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成することができ、前記において各アルキル基はフッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよい。
本発明の第二の態様の5つめの変形例は、R基が水素又は-ORを示し、該Rは本願明細書で定義したとおりである。好ましくは、Rは水素、C1-4-アルキルカルボニルオキシ又はC1-4-アルコキシカルボニルオキシを示し、さらに好ましくは水素を示す。得られた式II'のグルコース誘導体は、当該分野の当業者には公知の方法で、とりわけスキーム6、12及び15に記載の方法で、例えば、対応の臭素化誘導体(R=Br)を介してRを末端のパラ-置換フェニル基に置き換えることによって、式IIの生成物に変換させることができる。
スキーム2bは、式III'の中間体を得るための合成経路を示すもので、式III'の中間体は、本発明の第三の態様によるグルコノラクトンIVに式VIのメタル化アグリコンを添加することで得られる。
スキーム2b:C−グルコシドの合成 アプローチ1
【0079】
【化33】

【0080】
基の好ましい定義は、水素、O-C1-6-アルキル、O-アリール、パラ-R-フェニル及びORであり、該アリール及びRは本願明細書で定義したとおりである。好ましくは、Rは、-C≡C-R基、塩素、-OSO2R、-SiAlk3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、該R、R、Ar、Alk及びRは本願明細書で定義したとおりである。
好適な実施形態によると、RはO-C1-6-アルキル、O-アリール及びパラ-R-フェニル-を示し、該アリールは本願明細書で定義したとおりであり、Rが好ましくは-C≡C-R、-SiMe3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、該R、Ar及びAlkは本願明細書で定義したとおりである。
別の実施形態もまた好適であり、これによると、Rは水素、O-C1-6-アルキル、O-アリール、C1-4-アルキルカルボニルオキシ、C1-4-アルキルオキシカルボニルオキシ又はパラ-R-フェニル-を示し、該アリールは本願明細書で定義したとおりであり、Rは好ましくは-OSO2R、-SiAlk3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2又は-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を示し、該Ar及びAlkは本願明細書で定義したとおりであり、RはC1-4-アルキル、CF3、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、該アリールはL1でモノ置換又はポリ置換されていてもよい。
スキーム2における置換基Rの好ましい定義は、ベンジル、置換ベンジル、トリアルキルシリル、C1-4-アルコキシメチルで、特に好ましくは、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、C1-4-アルコキシメチル、4-メトキシベンジル及びベンジルである。2個の隣接する置換基Rが互いに結合している場合、これらの2個の置換基がベンジリデンアセタール、4-メトキシベンジリデンアセタール、ジイソプロピルシリリデンアセタール、イソプロピルケタールの一部となるか、或いは、ブタンの2位及び3位を介して隣接するピラノースの酸素原子と結合する2,3-ジメトキシ-ブチレンと共にジオキサンを構成することが好ましい。R’基は、好ましくは水素、C1-4-アルキル、C1-4-アルキルカルボニル又はC1-4-アルキルオキシカルボニルを示し、特に好ましくは水素、メチル又はエチルを示す。
【0081】
臭素化又はヨウ素化ベンゼン誘導体V(式中Xは臭素又はヨウ素を表す)から誘導されるグリニャール試薬VI(MはMgBr、Mglを示す)又はリチオ化した試薬VI(MはLiを示す)は、いわゆるハロゲン‐金属交換反応又は炭素‐ハロゲン結合への金属の挿入のいずれかにより調製することができる。対応のリチウム化合物VIを合成するためのハロゲン‐金属交換は、例えば、n-、sec-もしくはtert-ブチルリチウムのような有機リチウム化合物を用いて行うことができる。また、同様なマグネシウム化合物も、臭化イソプロピルマグネシウム、塩化イソプロピルマグネシウム、臭化セカンダリーブチルマグネシウム、塩化セカンダリーブチルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、セカンダリーブチルマグネシウム等の好適なグリニャール試薬を用い、塩化リチウムのような追加の塩又はメタル化を促進することができるジオキサンのような補助溶媒の存在下、あるいはそれらは使用せずに、ハロゲン‐金属交換により生成することができる(例えば、Angew. Chem. 2004, 116, 3396-3399及びAngew. Chem. 2005, 117, 165-169、ならびに、本願明細書に引用の参考文献参照)。Bu3MgLiのようなマグネシウムのアート錯体の使用も可能である(Tetrahedron Lett. 2001, 42, 4841-4844及びAngew. Chem. 2000, 112, 2594-2596、ならびに、本願明細書に引用の参考文献参照)。ハロゲン-金属交換反応は、好ましくは-100〜40℃で、特に好ましくは-80〜10℃で、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン及びヘキサンのような不活性溶媒又はその混合物中で行う。こうして得られたマグネシウム又はリチウム誘導体化合物は、例えば、三塩化セリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化インジウム、臭化インジウム等の金属塩を用いてさらにトランスメタル化してもよく、添加に適した別の有機金属化合物(VI)を形成してもよい。或いは、有機金属化合物VIは、含ハロゲン芳香族化合物V(Xは塩素、臭素、ヨウ素を示す)の炭素‐ハロゲン結合に金属を挿入することによっても調製することができる。この変換にはリチウム又はマグネシウムが金属元素として好適である。挿入は、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物等の不活性有機溶媒中で行うことができる。この反応は、好ましくは-80〜100℃で、特に好ましくは-70〜40℃で行うとよい。自然に反応が起こらない場合は、例えば、1,2-ジブロモエタン、ヨウ素、トリメチルシリルクロリド、酢酸、塩酸による処理及び/又は音波処理等、金属を事前に活性化させておくことが必要な場合もある。グルコノラクトン又はその誘導体(IV)に有機金属化合物VIを添加する際は、好ましくは-100〜40℃で、特に好ましくは-80〜0℃で、不活性溶媒又はその混合物中で行い、式III'の化合物を得ることが好ましい。前述の反応はすべて大気中で行うことができるが、アルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下で行う方が好ましい。また、メタル化及び/又はカップリング反応は、変換率の高いマイクロリアクター及び/又はマイクロミキサーで、例えば、WO2004/076470に記載の方法と同様に行うとよい。メタル化されたフェニル基VIを適宜保護したグルコノラクトンIVに添加するための好適な溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、トルエン、塩化メチレン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N-メチルピロリドン及びその混合物が挙げられる。この添加反応は更なるアジュバントを使わずに行ってもよいし、反応が鈍いカップリングパートナーの場合は、例えば、BF3*OEt2又はMe3SiCl等の促進剤の存在下で行ってもよい(M. Schlosser, Organometallics in Synthesis, John Wiley & Sons, チチェスター/ニューヨーク/ブリスベン/トロント/シンガポール、1994 参照)。グルコノラクトンIVに有機金属化合物VI又はその誘導体を添加して、R’基を導入する。R’が水素又はC1-4-アルキルに相当する場合、酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸又は塩酸等の酸の存在下で、反応液をメタノールもしくはエタノール等のアルコール(R’−OH)又は水で処理する。メタノール又はエタノールのようなアルコール(R’-OH)の存在下、酸性条件のもとで化合物を反応させれば、水素化合物III'(R’が水素を示す)の調製後、R’と結合させることができる。III'のアノマー水酸基は、ヨウ化メチル、硫酸ジメチル、ヨウ化エチル、硫酸ジエチル、塩化アセチル又は無水酢酸等の好適な求電子剤により、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の塩基の存在下でアルキル化又はアシル化を実施することもできる。また、例えば水素化ナトリウム等を有する求電子剤を添加する前に、水酸基を脱プロトン化することもできる。
【0082】
スキーム3のアプローチ2はC−グルコシドの合成を説明するもので、本発明の第四の態様による保護D−グルカールVIIのメタル化から始まる。こうしてメタル化されたD−グルカールVIIIはトランスメタル化してもよい。メタル化又はトランスメタル化した式VIIIのD−グルカールは、遷移金属触媒の存在下でアグリコンVと結合させ、式IXで表されるグルカール誘導体を得る。このグルカール誘導体に、形式としてはグルカール部位の二重結合に水を加えることで、とりわけ、二重結合のヒドロホウ素化とその後の炭素‐ホウ素結合の開裂、或いは、二重結合のエポキシ化又はジヒドロキシル化とその後のアノマー炭素‐酸素結合の還元により、式Xで表される生成物に変換される。
スキーム3:C−グルコシドの合成 アプローチ2
【0083】
【化34】

【0084】
の好ましい定義は、水素、O-C1-6-アルキル、O-アリール、パラ-R-フェニル及びORであり、該アリール及びRは本願明細書で定義したとおりである。好ましくは、Rは、-C≡C-R、塩素、-SiAlk3、-CHO、-C≡C-C(OH)Alk2、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、該R、R、Ar、Alk及びRは本願明細書で定義したとおりである。さらに好ましくは、Rは、水素、O-C1-6-アルキル、O-アリール、OH、パラ-R-フェニルを表し、該アリールは本願明細書で定義したとおりであり、Rは、好ましくは-C≡C-R、-CHO、塩素、-SiMe3、-C≡C-C(OH)Alk2、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、該R、Ar及びAlkは本願明細書で定義したとおりである。
好適な反応条件については、当該分野の当業者には公知であり、例えば、Synlett 2004,1235-1238頁; Org. Lett. 2003, 5, 405-2408頁等の文献、ならびに同様の方法のために本願明細書に引用されている参考文献から適応させることができる。
保護D-グルカールVIIをメタル化して、D-グルカール誘導体VIII(式中、Mはリチウム部位、マグネシウム部位、亜鉛部位、インジウム部位、ホウ素部位、錫部位、珪素部位又はクロム部位を示し、特に、リチウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化インジウム、ボロン酸、ボロン酸エステルを示す)を得る。グルカールVIIのC-1でのメタル化は、強塩基による脱プロトン化で行うことができる。グルカールの脱プロトン化を可能にする強塩基としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム又はtert-ブチルリチウム等のリチウム塩基が挙げられる。こうして得られたC-1リチオ化グルカール(M=Li)は、異なる求電子性金属源でトランスメタル化して、対応のC-1メタル化グルカール誘導体としてもよい。その後の反応、即ち、アグリコン部位とのカップリングに好適な金属種は、例えば、リチウム、マグネシウム、亜鉛、インジウム、ホウ素、錫、珪素及びクロムから誘導される。リチウムから記載の金属の1種へグルカール化合物をトランスメタル化するには、導入したい金属種に対応する塩化物、臭化物及びヨウ化物等のハロゲン化物、トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホネート類、ならびにメトキシド、エトキシド、プロポキシド及びイソプロポキシド等のアルコキシド類を用いて行うことができる。トランスメタル化される金属の空いている側(vacant sides)の数によっては、例えばトリグルカールインジウム又はジグルカール亜鉛におけるように、グルカール残基を1個より多く有していてもよい。対応のモノグルカール置換金属誘導体も同様に使用できる。強塩基、とりわけリチウム塩基によるグルカールのメタル化は、テトラヒドロフラン、エーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ヘキサン及びトルエン等のような不活性溶媒中で行うことが好ましい。好適な温度は-80〜50℃の範囲である。求電子性金属種によっては、トランスメタル化も同じ溶媒中で同じ温度範囲で行うことができる。トランスメタル化に使用可能な求電子性金属種のなかでは、以下が最も適切である。トリアルキルクロロスタナン、テトラクロロスタナン、トリアルキルクロロシラン、トリアルコキシクロロシリルクロリド又はブロミド、三塩化ホウ素、ホウ酸トリアルキル、ジアルキルクロロボラン、三塩化インジウム、塩化亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化マグネシウム又は臭化マグネシウム。これらは、使用できる金属求電子剤を上記のものに制限することを意味するのではなく、使用できる求電子剤を例示することを意図している。
【0085】
こうして得られた式VIIIのメタル化グルカール誘導体を、アグリコンV(式中、X基は置換可能な基を示し、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメタンスルホネート、トシラート、ベンゼンスルホネート及びメシラート等のスルホネート、クロロスルホネート、スルホン酸又はその塩、ヒドロキシカルボニル又はその塩、ニトリルならびにジアゾニウム塩からなる群から選択される置換可能な基を示す)とカップリングさせればよい。カップリング反応は、例えば、パラジウム、銅、鉄及びニッケルの塩、錯体又は変性体等の遷移金属触媒の存在下で行うことが好ましい。錯体の場合、遷移金属を反応混合物に添加する現場で、あるいは、添加に先立って形成することができる。遷移金属の錯体における配位子は、例えば、トリアリールホスフィン、アリールジアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィン、亜リン酸塩、1,3-ジ置換ジヒドロイミダゾリウムカルベン、1,3-ジ置換イミダゾリウムカルベン及びアルカン類が挙げられる。この反応は不活性有機溶媒又はその混合物中で行うことが好ましい。好適な溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、アセトン、酢酸エチル、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。カップリング反応は-80〜180℃で行うことが好ましく、さらに好ましくは-20〜120℃で行うとよい。
スキーム3の最終合成工程は、形式的には、化合物IXのグルカール部位における二重結合に水を付加.することである。これは、例えば、ヒドロホウ素化によって実行すればよく、この場合、結果として2-ホウ素-2-デオキシ(desoxy)グルコース誘導体を形成することになる。この2-ホウ素-2-デオキシグルコース誘導体は、炭素-ホウ素結合を酸化させることにより対応のグルコース化合物に変換することができる。ヒドロホウ素化に用いる好適なボラン類とは、例えば、ボラン又はそのエーテル付加物、チオエーテル付加物、アミン付加物、アルキルボラン又はヘキシルボラン、テキシルボラン、ジエチルボラン及び9-BBN等のジアルキルボラン、ピナコールボラン、カテコールボラン、ハロボラン又はジクロロボラン等のジハロボランである。ヒドロホウ素化は、例えば、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、エーテル、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン中で行うことができる。好適な温度範囲は-50〜150℃、さらには-20〜50℃が好ましい。炭素-ホウ素結合の酸化開裂は、過酸化水素、t-ブチル過酸化水素(tert-butyl hydrogen peroxide)、過ホウ酸ナトリウム、トリアルキルアミンN-オキシド等の酸化剤を使って行うことができる。酸化剤によっては、水酸化ナトリウムのような塩基の存在下で反応を行うことが有利である。この反応は、不活性有機溶媒又はその混合物中で行うことが好ましい。好適な溶媒は、テトラヒドロフラン、水、アルコール類、ジオキサン、ジメトキシエタン、シクロヘキサン、ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン及びこれらの混合物から選択される。好適な温度範囲は-30〜150℃、さらには0〜110℃が好ましい。
【0086】
化合物IXにおけるグルカール部位の二重結合に水を添加するすることを目的としたヒドロホウ素化の替わりの方法は、二重結合のエポキシ化又はジヒドロキシル化と、それにより得られたアノマー炭素-酸素結合の還元とを組み合わせた方法である。エポキシ化のための好適な酸化剤としては、例えば、ジメチルジオキシラン、トリフルオロジメチルジオキシラン、3-クロロペルオキシ安息香酸、過酸化水素及び酸素で、遷移金属触媒の存在下で用いる。別の好適な酸化剤はペルオキソモノ硫酸、ペルオキソニ硫酸及びその塩で、少なくとも1個のケトンの存在下、とりわけ、式:2 KHSO5 × KHSO4 × K2SO4で表される三重塩(triple salt)を、これは例えば、OXONE(登録商標)(E.I. du Pont de Nemours社の商標)及びCAROAT(登録商標)(Degussa, Peroxid-Chemie社の商標、Dr.-Gustav-Adolph-Str. 3, D-82049 プラッハ、ドイツ)という商品名で市販されているが、ケトン、好ましくはアセトンと組合せたものの存在下で用いる。ジヒドロキシル化は、例えば、四酸化オスミウムや四酸化ニカリウムオスミウム(dipotassium osmium tetroxide)を用いて、好ましくは、例えば、ヘキサシアノ鉄酸カリウム、過酸化水素及びN-メチルモルホリンN-オキシド等の共酸化剤の存在下で実施することができる。エポキシ化によりオキシランを加水分解することによってもジヒドロキシル化生成物を得ることができる。酸化は不活性有機溶媒又はその混合物、例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、水、アルコール類及びその混合物で行うことができる。好適な温度範囲は-80〜100℃、より好ましくは-50〜50℃である。オキシラン又はジヒドロキシル化生成物のアノマー炭素-酸素結合の還元は、例えば、トリエチルシラン等のトリアルキルシラン、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素化合物、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等の水素化アルミニウムといった還元剤を用いて行うことができる。還元剤によっては、例えば三フッ素化ホウ素エーテラート、塩化亜鉛、トリメチルシリルクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ジアルキル、ハロゲン化アルミニウム、トリフルオロメタンスルホン酸銅等のルイス酸、塩酸、酢酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、トリフルオロ酢酸等のブレーンステッド酸の存在が必要であるか、或いは、少なくとも有利である。好適な溶媒としては、ジクロロメタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エーテル、ヘキサンが挙げられる。好ましい温度範囲は-80〜120℃である。パラジウム担持炭素、ラネーニッケル、水酸化パラジウム等の遷移金属系触媒と一緒に水素を使うこともできる。
【0087】
スキーム3の前述及び後述の反応において、保護基Rは、塩基条件又は強塩基条件における安定性を考えて選択されることが好ましいが、とりわけ、Rは互いに独立して-SiRaRbRcを示し、2個の隣接するR基が互いに結合して橋架け基SiRaRbを形成してもよく(前記Ra、Rb、Rcは本願明細書で定義したとおりである)、好ましくはイソプロピルを表す。
式Xの生成物は、ピラノース環の2位の水酸基と、さらに任意であるが1個以上の別の水酸基の保護を行ってもよく、Rが本願明細書の定義のとおりであり、とりわけ水素ではない式II'の化合物が得られる。この追加の保護工程は、式X又は式II'の化合物をさらに変換に供する前に行うことが好ましく、特にRが以下ではない場合である。
【0088】
【化35】

【0089】
式X又はII'の生成物のRが下位式:
【0090】
【化36】

【0091】
(式中、Rが本願明細書で定義のとおりである)
で表される基を示す場合、引き続き、水素ではない保護基Rを開裂により、特に加水分解して、式Iの生成物に変換するとよい。本願明細書に記載の方法で、特にスキーム1のところで説明した方法を用いることが有利である。
反応スキーム4は本発明の第五の態様による合成経路を示している。式VIIの保護D-グルカールをエポキシ化して、式XIで表される対応のグルカールオキシドが得られる。これが式VIのメタル化アグリコンとカップリングして式Xの生成物が得られる。
スキーム4:C−グルコシドの合成 アプローチ3
【0092】
【化37】

【0093】
基は、好ましくは、水素、O-C1-6-アルキル、O-アリール、パラ-R-フェニル及びORを示し、該アリール及びRは本願明細書で定義したとおりである。好ましくは、Rは、-C≡C-R、塩素、-SiAlk3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、該R、R、Ar、Alk及びRは本願明細書で定義したとおりである。さらに好ましくは、Rは、O-C1-6-アルキル、O-アリール及びパラ-R-フェニル-を表し、該アリールは本願明細書で定義したとおりであり、Rは、好ましくは-C≡C-R、塩素、-SiMe3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、該R、Ar及びAlkは本願明細書で定義したとおりである。
スキーム4は、グルカールVIIから出発したC−グルコシドの別の合成方法を示す。好適な反応条件については当該分野の当業者には公知であり、例えば、Synlett 2003,870〜872頁; Tetrahedron 2002, 58, 1997〜2009頁等の文献、ならびに同様の方法のために本願明細書に引用されている参考文献から適応させることができる。適切な酸化剤でエポキシ化することにより、グルカールVIIは対応のグルカールオキシドXIに変換される。この変換のための好適な反応条件については、スキーム3で示したグルカールIXの同様な変換で既に記載済みである。そこに記載の酸化剤のなかで、別途生成しておいたジメチルジオキシランやトリフルオロジメチルジオキシラン又はこれらを現場で作成したものが好ましい。該酸化剤は、例えば、ペルオキソモノ硫酸、ペルオキソニ硫酸及びその塩を用いて、少なくとも1個のケトンの存在下、とりわけ、式:2 KHSO5 × KHSO4 × K2SO4で表される三重塩(triple salt)で、例えば、OXONE(登録商標)(E.I. du Pont de Nemours社の商標)及びCAROAT(登録商標)(Degussa, Peroxid-Chemie社の商標、Dr.-Gustav-Adolph-Str. 3, D-82049 プラッハ、ドイツ)という商品名で市販されている三重塩を、ケトン、好ましくはアセトン又はトリフルオロアセトンと一緒に用いて得ることができる。この反応は、温度-80〜0℃の範囲で、不活性有機溶媒又はその混合物中で行うことが好ましい。好適な溶媒としては、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン及びこれらの混合物から選択される。前述及び後述の反応において、保護基Rは互いに独立して、C1-4-アルキルカルボニル、C1-4-アルキルオキシカルボニル、アリールメチル、C1-6-アルコキシメチル及びRaRbRcSi-からなる群から選択されることが好ましく、該アリール、Ra、Rb、Rcは本願明細書で定義したとおりである。2個の隣接するR基が互いに結合して橋架け基を形成する場合は、橋架け基がSiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbからなることが好ましい(前記Ra、Rb、Rcは本願明細書で定義したとおりである)。
【0094】
次の反応である、式VIのメタル化アグリコン(Mがリチウム、マグネシウム、亜鉛、インジウム、アルミニウム又はホウ素部位を表す)によるエポキシドの開環により、所望のC−グルコシドが得られる。この変換のためには、Mの好ましい定義として、リチウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化インジウム、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ジアルキルアルミニウム、B(OAlk)2又はB(OH)2が挙げられる。化合物VIのリチウム又はマグネシウム誘導体の合成についてはスキーム2で詳述しているが、これらの化合物を、スキーム3で示したのと同じ金属誘導体にリチオ化グルカールをトランスメタル化したのと同じようにして、別の金属種のいずれかにトランスメタル化してもよい。エポキシドの開環反応はアジュバントを用いなくても起きることもあり、また、例えばシアン化銅のような遷移金属塩もしくは錯体又はハロゲン化物の存在下で、あるいは、例えば三フッ化ホウ素エーテラート又はトリメチルシリルクロリドもしくはトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のようなルイス酸の存在下で反応が起こることもある。好適な不活性溶媒としては、たとえば、アセトン、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、トルエン、ヘキサン及びこれらの混合物が挙げられる。好適な温度範囲は-80〜60℃である。
式Xの生成物は、ピラノース環2位の水酸基と、さらに任意であるが1個以上の別の水酸基の保護を行ってもよく、Rが本願明細書の定義のとおりであり、とりわけ水素ではない式II'の化合物が得られる。この追加の保護工程は、式X又は式II'の化合物をさらに変換に供する前に行うことが好ましく、特にRが以下ではない場合である。
【0095】
【化38】

【0096】
式X又はII'の生成物のR基が下位式:
【0097】
【化39】

【0098】
(式中、Rが本願明細書で定義のとおりである)
で表される基を示す場合、引き続き、水素ではない保護基Rを開裂により、特に加水分解により、式Iの生成物に変換するとよい。本願明細書に記載の方法で、特にスキーム1のところで説明した方法を用いることが有利である。
反応スキーム5は本発明の第六の態様による合成経路を示している。式XIIのグルコース誘導体を式VIのメタル化アグリコンと反応させて、式II'の生成物が得られる。
スキーム5:C−グルコシドの合成 アプローチ4
【0099】
【化40】

【0100】
基の好ましい定義は、水素、O-C1-6-アルキル、O-アリール、パラ-R-フェニル及びORであり、該アリール及びRは本願明細書で定義したとおりである。好ましくは、Rは、-C≡C-R、塩素、-OSO2R、-SiAlk3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、該R、R、Ar、Alk及びRは本願明細書で定義したとおりである。さらに好ましくは、Rは、O-C1-6-アルキル、O-アリール及びパラ-R-フェニル-を表し、該アリールは本願明細書で定義したとおりであり、Rは好ましくは-C≡C-R、-SiMe3、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2を表し、該R、Ar及びAlkは本願明細書で定義したとおりである。
アノマー炭素に脱離基(LG)となりうる基を担持するグルコース誘導体XIIを、メタル化アリールアグリコンとのカップリングの出発物質として利用することもできる。好適な反応条件については当該分野の当業者には公知であり、例えば、J. Carbohydr. Chem. 1994, 13, 303-321頁等の文献、ならびに同様の方法のために本願明細書に引用されている参考文献から適応させることができる。好適な脱離基LGとしては、ハロゲン化物、アルコキシド、カルボキシレートのようなアシル基、及びカーボネートで、とりわけ、フッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキルカルボニルオキシ、C1-3-アルキルオキシカルボニルオキシ又はC1-3-アルキルオキシであり、例えば、塩素、臭素、メトキシド、エトキシド、アセテート及びメチルカーボネート又はトリクロロアセトイミダートを挙げることができる。アリール部分に結合する金属Mの好適な例としては、リチウム、例えばハロゲン化マグネシウムのマグネシウム、ハロゲン化亜鉛の亜鉛、ニハロゲン化インジウムのインジウム、ボロン酸又はボロン酸エステルのホウ素である。これらのメタル化アリール化合物を対応するハロゲン化芳香族化合物(aromats)から調製することについてはスキーム4で記載済みである。置換反応は、使用する金属種やグルコシル供与体によっては、例えば三フッ化ホウ素エーテラート、トリメチルシリルクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等の追加のルイス酸の存在下で行うことも、あるいは、それらを使わずに行うこともできる。この反応は不活性有機溶媒又はその混合物中で行うことが好ましい。好適な溶媒は、メタル化アグリコン、グルコシル供与体及び必要なアジュバントを考慮して選ぶことが好ましい。下記溶媒が有利である。テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、エーテル、N-メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン及びこれらの混合物。通常、カップリング反応は-80〜120℃、好ましくは-60〜60℃で行う。前述及び後述の反応において、保護基Rは互いに独立して、C1-4-アルキルカルボニル、C1-4-アルキルオキシカルボニル、C1-4-アルキルオキシメチル、アリールメチル及びRaRbRcSiからなる群から選択されることが好ましく、該アリール、Ra、Rb、Rcは本願明細書で定義したとおりである。2個の隣接するR基が互いに結合して橋架け基を形成する場合は、橋架け基がSiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbからなることが好ましい(前記Ra、Rb、Rcは本願明細書で定義したとおりである)。
式II'の生成物のR基が下位式:
【0101】
【化41】

【0102】
(式中、Rが本願明細書で定義のとおりである)
で表される基を示す場合、引き続き、水素ではない保護基Rを開裂することにより、とりわけ加水分解することにより、式Iの生成物に変換するとよい。本願明細書に記載の方法で、特にスキーム1のところで説明した方法を用いることが有利である。
本発明の第七の態様によると、式II'の生成物のR基が下位式:
【0103】
【化42】

【0104】
で表される基を示さない場合は、式XXVI'の化合物に変換される(スキーム6)。さらに任意であるが、式XXVI'の化合物を式IIの化合物に変換し、これを式Iの生成物に変換することができる。
スキーム6
【0105】
【化43】

【0106】
スキーム6の合成では、好ましくは、R基はそれぞれ独立して水素、(C1-8-アルキル)カルボニル(C1-4-アルコキシで置換されていてもよい)、(C1-8-アルキル)オキシカルボニル、(C3-8-アルケニル)カルボニル、(C3-8-アルケニル)オキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールメチル、C1-6-アルコキシメチル、RaRbRcSi、CRaRbORcを表す。2個の隣接するR基が互いに結合して橋架け基を形成する場合は、橋架け基がSiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbからなることが好ましい(前記Ra、Rb、Rcは本願明細書で定義したとおりであり、各アルキル基はフッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi及びC1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよい)。
基は、好ましくは水素、OR、C1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを表し、より好ましくはC1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを表す。
第1の反応工程で、化合物II'のR基が任意であるがZ基に変換され、式XXXIXの化合物が得られる。Z基は、塩素、臭素、ヨウ素、C1-6-アルキルカルボニルオキシ、C1-6-アルキルオキシカルボニルオキシ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ又は-OPO(O-C1-6-アルキル)2を表す。Z基の好ましい定義は、塩素、臭素及びヨウ素であり、とりわけ臭素である。式II'の化合物は、反応スキーム2a、3、4及び5で記載の方法によって得ることができる。あるいは、式Xの化合物を出発物質として使用することもできる。式Xの化合物は、反応スキーム3及び4で記載の方法により得られる。R基がORを表す場合、Rが(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、(C3-18-アルケニル)オキシカルボニル、アリールカルボニル、アリール-(C1-3-アルキル)-カルボニルを示すのであれば上記のような変換は必要ない。この場合、スキーム6の式XXVI'の化合物を得る第2の反応工程を、基本的に式II'の化合物で行えばよい。
【0107】
第1の反応工程によりR基をZ基に変換するが、Z基は好ましくは塩素、臭素又はヨウ素原子、さらに好ましくは臭素原子である。フェニル環に塩素を担持(置換基Rとして)する化合物にのみ適用できるが、Rが水素である状態から出発して、ラジカル置換反応により臭素原子を導入することができる。N-ブロモスクシンイミド又は臭素を、例えばアゾビスイソブチロニトリル又は過酸化ジベンゾイル等のラジカル開始剤と一緒にして、例えばテトラクロロメタン、クロロホルム、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素化合物中、温度0〜120℃で行うことが、この変換のための好適な反応条件といえる。より好ましくは、ベンジル位のアルコキシ基又はアリールオキシ基Rを塩化物、臭化物又はヨウ化物に置換する。この場合、Rは脱離基を表すが、これは、例えば、三塩化ホウ素、四塩化錫、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、五塩化燐、塩化ヨウ素、塩酸、三臭化ホウ素、トリメチルシリルブロミド、臭化水素酸、ヨウ化ナトリウムと、三フッ化ホウ素エーテラート又は塩化アルミニウム又はトリフルオロメタンスルホン酸又はトリクロロメチルシラン又は三臭化ホウ素との組合せ、トリメチルシリルヨージド、或いは、ヨウ化水素酸を、対応するハロゲン化物と作用させることで置換可能である。好適な溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジオキサン、エーテル、アセトニトリル、水、アルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド又は酢酸が挙げられる。好適な生成物XXXIXとは対応する臭化物(Z=臭素)で、これは、温度0〜100℃で酢酸中、臭化水素酸の作用のもと、対応のベンジルアリール又はアルキルエーテルII'(Rはアルキルオキシ又はアリールオキシを示す)から好ましくは調製される。
【0108】
第2の合成工程では、式XXXIXの化合物(または式II'又はXのどちらか)を式XXIIIで表されるメタル化ベンゼン(式中、R13は-CHO、-C≡C-R、-C≡C-C(OH)Alk2、-C≡C-SiAlk3、-C≡C-SiArAlk2、-C≡C-Si(ビフェニル)Alk2、-Si(C1-6-アルキル)3、ヨウ素、臭素、塩素、トリフルオロメチルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシを表し、
がリチウム、ホウ素、マグネシウム、珪素、錫、セリウム、インジウム、亜鉛又はクロム部位を示す)と反応させる。R13の好ましい定義は、-CHO、-C≡C-R、-C≡C-C(OH)Me2、-C≡C-SiMe3、-C≡C-SiiPr2、-C≡C-SiArMe2、-C≡C-Si(ビフェニル)Me2、-SiMe3、臭素、塩素、トリフルオロメチルスルホニルオキシである。Mの好ましい定義は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛及びハロゲン化インジウムである。式XIIIのメタル化ベンゼンの合成は当業者には公知であり、有利な合成方法については反応スキーム10で記載する。ピラノシドXXXIXと求核分子XXIIIとのカップリング反応及び好ましい反応条件については、スキーム11で説明する。結果として得られる式XXVI'の生成物は、R13がR-C≡C-を示す場合は、式IIの化合物に相応する。R13がそれ以外の定義を有する場合は、式XXVI'の化合物を式IIの化合物に変換することが好ましい。このような変換は当業者には公知であり、例えば反応スキーム13で記載する。当業者には公知の方法で式IIの保護化合物の脱保護を行い、式Iの生成物を得る。水素ではない保護基Rの開裂は、とりわけスキーム1で記載したような方法で行う。
アグリコン部位の合成、とりわけ式V及びVIで表されるアグリコンの合成、又は、アグリコンへ糖部位が結合した後の官能化は、有機化学における標準的な変換により、あるいは、少なくとも有機合成における専門家向けの文献から公知の方法により行うとよい(特に、J. March, Advanced Organic Reactions, Reactions, Mechanisms, and Structure 4版、John Wiley & Sons, チチェスター/ニューヨーク/ブリスベン/トロント/シンガポール、1992ならびに本願明細書に引用の文献を参照)。下記に記載の合成方法は、一例として明示するものである。
スキーム7は、ベンゾフェノン誘導体XIIIから出発するアグリコン部分XVIの合成を示すもので、XIIIは安息香酸誘導体及びフェニルアルキルエーテル又はメタル化フェニルアルキルエーテルから調製することができる(スキーム8及び11参照)。
スキーム7:アグリコン部分の合成 アプローチ1
【0109】
【化44】

【0110】
第1の工程は化合物XIIIのエーテル部位の開裂であり、中性、酸性及び塩基性条件のもとで行うことができる。この変換のための酸性試薬で好適な例は、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、トリメチルシリルヨージド、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、臭化水素酸、塩酸、塩化セリウム、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメチルスルホン酸が挙げられ、これらは、ヨウ化ナトリウム等の金属ハロゲン化物、水、アルキルチオール類、チオアニソール、硫化ジアルキル等の求核分子と共に使用することができ、これら求核分子は離脱するアルキル基の掃去剤として作用することができる。使用する酸によっては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム又は1,2-ジクロロエタン等のようなハロゲン化炭化水素化合物、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、酢酸及びそれらの組合せからなる群から選択される溶媒が好ましい。溶媒を添加せずに反応させることもできる。この反応は通常-90〜150℃、好ましくは-50〜50℃で行うとよい。中性又は塩基性条件下、硫酸ナトリウム、エタンチオール酸ナトリウム、ナトリウムトリメチルシリルチオラート、カリウムチオフェノラート等の金属チオラート、シアン化ナトリウム、ヨウ化リチウム等を用いて、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-オキソヘキサヒドロピリミジン、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、コリジン、キノリンなどの溶媒中、温度0〜250℃、好ましくは50〜180℃で開裂を行うことができる。スキーム7の第2の合成工程では、ベンゾフェノンXIVを還元してフェノールXVを得る。この変換のための好適な還元剤としては、例えば、Et3SiHやトリイソプロピルシラン等のシラン、NaBH4等のホウ化水素、LiAlH4等の水素化アルミニウムで、例えば、BF3*OEt2、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフルオロ酢酸、塩酸、塩化アルミニウム、InCl3等のようなルイス酸の存在下で用いる。この反応は、ジクロロメタンや1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素化合物、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、アセトニトリルならびにこれらの混合物などの不活性有機溶媒中で、温度-30〜150℃、好ましくは20〜100℃で行うことが好ましい。例えばPd担持木炭等のような遷移金属系触媒の存在下で水素を用いて還元することは、可能な合成方法の1つであるが、Rが塩素を表す場合は、この残基が水素化分解条件のもとでは影響を受けやすいことからあまり好適とはいえない。ウォルフ‐キシュナー還元又はその変形例も可能である。即ち、ヒドラジン又は1,2-ビス(t-ブチルジメチルシリル)ヒドラジン等のヒドラジン誘導体を用いて、ケトンXIVをヒドラゾンに変換する。ヒドラゾンは強塩基反応条件下及び加熱により分解して、ジフェニルメタンXVと窒素に遊離する。この反応は1つの反応容器で行ってもよいし、ヒドラゾン又はその誘導体を単離して別々の2つの反応工程で行ってもよい。好適な塩基としては、例えばKOH、NaOH又はKOtBuが挙げられ、エチレングリコール、トルエン、DMSO、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール又はt-ブタノール等のような溶媒の中で用いることができる。また、溶媒を使用しない反応も可能である。本反応は、温度20〜250℃、好ましくは80〜200℃で行う。ウォルフ‐キシュナー還元の塩基性条件に替わるものとして、酸性条件下で起きるクレメンゼン還元があり、ここで使用することができる。スキーム7は、化合物XVのフェノール性酸素をスルホニル化することで終了する。この変換は塩基性条件下で行うことが好ましい。フェノラートを生成する好適な塩基としては、例えば、I又はII族の金属塩、とりわけ炭酸塩、水酸化物、メトキシド、エトキシド又はターシャリーブトキシドなどのアルコラート、水素化ナトリウム等の金属水素化物が挙げられる。例えば、トリアルキルアミン又はピリジン等の有機塩基類も好ましい塩基である。この反応は、例えば、テトラヒドロフラン、エーテル、ヘキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トルエン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶媒及びこれらの混合物中で選択的に行われる。好適なスルホニル求電子剤は、塩化物や臭化物のようなハロゲン化物及び無水物などから誘導される。この反応は通常-60〜100℃、好ましくは-30〜50℃で行う。反応工程の順番はスキーム7に示すものに限定されず、組み直すこともできる。
スキーム8は、公知の塩化ベンゾイルXVII及びベンゼン誘導体XVIIIから出発するアグリコン部分XXの合成を説明するものである。
スキーム8:アグリコン部分の合成 アプローチ2
【0111】
【化45】

【0112】
ベンゾフェノンXIXの調製である第1工程は、フリーデル‐クラフツ反応又はフリーデル‐クラフツ型のアシル化に特徴付けられるが、これは有機合成において公知であり広く使用されている方法である。基本的に、塩化ベンゾイルXVIIを、例えば安息香酸、ベンゾイル無水物、エステル類又はベンゾニトリルといった安息香酸誘導体に置換すればよい。この典型的な反応では基質の範囲が広く、例えば、AlCl3、FeCl3、ヨウ素、鉄、ZnCl2、硫酸又はトリフルオロメタンスルホン酸等の触媒を触媒量又は理論量で存在させて行うことが一般的である。この反応は、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンのような塩素化炭化水素化合物、ヘキサン等の炭化水素化合物中で、温度は-30〜140℃、好ましくは30〜100℃の範囲で選択的に行われる。しかしながら、他の溶媒や溶媒混合物での反応、また、溶媒を使用しない反応、あるいは電子レンジでの反応も可能である。スキーム8の第2の反応工程は、本願明細書前記のスキーム9の最終反応と同様である。
スキーム9は、ベンジル求電子剤XXIを用いたベンゼン誘導体XVIIIのフリーデル‐クラフツ型アルキル化による、アグリコン部分の別の合成方法を示す。
スキーム9:アグリコン部分の合成 アプローチ3
【0113】
【化46】

【0114】
好適な反応条件については当該分野の当業者には公知であり、例えば、Angew. Chem. 2005, 117, 242〜246頁、及び、Syn. Commun. 2004, 34, 3161〜3165頁等の文献、ならびに本願明細書に引用の参考文献から適応させることができる。この反応は通常触媒の存在下で行う。とりわけ、塩化スカンジウム、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化アルミニウム又は三フッ化ホウ素等のルイス酸、硫酸、塩酸又はフッ化水素などのブレーンステッド酸、硫酸セリウム又は塩化イッテルビウム等のランタニド塩、アクチニド塩、遷移金属塩又は錯体、例えば、IrCl3*nH2O、RhCl3*nH2O、H2[PtCl6]*6H2O、又は、H2[PdCl6]*6H2Oの存在下で行われる。大方の場合、触媒は、準化学量論的な量又は触媒量で十分であるが、理論量又は過剰量で使用することができる。この反応は、ベンジル求電子体に対して芳香族化合物XVIIIを過剰にして、溶媒を使用せずに通常行われるが、ハロゲン化炭化水素化合物又は炭化水素化合物等の不活性溶媒を使用することもできる。通常、反応は0〜200℃、好ましくは20〜140℃で行う。
スキーム10に示すアプローチでは、化合物XXIIのメタル化から出発する。スキーム2に記載のメタル化アグリコンVIで使用した方法と同様にして、塩素化、臭素化又はヨウ素化芳香族化合物XXIIからリチウム置換又はマグネシウム置換芳香族化合物XXIIIを調製することができる。
スキーム10:アグリコン部分の合成 アプローチ4
【0115】
【化47】

【0116】
例えば、ボロン酸、ボロン酸エステル又はジアルキルアリールボラン等の対応するホウ素置換化合物は、メタル化フェニル基XXIIIと適切なホウ素求電子体、例えばボロン酸エステル、ハロボロン酸エステル(haloboronic acid ester)、アルキルボロン酸エステル、ジアルキルボロン酸エステル、トリハロボラン及びこれらの誘導体と反応させて得ることができる。また、ボロニル化(boronylated)芳香族化合物XXIIIも、対応の塩素化前駆体、臭素化前駆体、ヨウ素化前駆体、擬ハロゲン化前駆体(例えば、トリフルオロメタンスルホン化及びトシル化前駆体)と、例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン及びビス(ネオペンチル‐グリコラト)ジボロン等のジボロン化合物又は例えばピナコールボランのようなボランとから、遷移金属触媒反応によって調製することができる(例えば、Tetrahedron Lett. 2003, 4895〜4898頁及び本願明細書に引用の文献参照)。遷移金属、例えばパラジウムは元素、塩又は錯体として用いられるが、一般的なパラジウム源としては、例えば、パラジウム担持木炭、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、パラジウムジベンジリデンアセトンが挙げられるが、これらはこのまま用いるか、あるいは、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリトリルホスフィン等のホスフィン類、亜リン酸塩、又は、1,3-ジアリールもしくはジアルキルイミダゾリウムハロゲン化物又は擬ハロゲン化物又はジヒドロイミダゾリウム塩などのイミダゾリウム塩類といった配位子と共に使用される。遷移金属と配位子とによる錯体は、現場で、あるいは、別の工程で調製してもよい。反応は、例えば、トリエチルアミン、酢酸カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン又はエチルジイソプロピルアミン等の塩基の存在下、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメシルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジオキサン、トルエン等の溶媒及びそれらの混合物中で、温度0〜180℃、好ましくは60〜140℃で行うことが好ましい。リチウム置換又はマグネシウム置換フェニル化合物XXIIIは、ベンズアルデヒドXXIVと自然に反応してジアリールメタノールXXVとなる。この反応は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、ジオキサン、ヘキサン等の炭化水素化合物といった溶媒及びその混合物中で、温度-100〜20℃、好ましくは-80〜0℃の範囲で行うことができる。ロジウム触媒反応により、アリールボロン酸XXIIIをベンズアルデヒド誘導体XXIVに添加させて、それぞれジアリールメタノールXXVを得ることができる(例えば、Adv. Synth. Catal. 2001, 343〜350頁及び本願に引用の文献参照)。スキーム10の最終工程はジアリールメタノールXXVをジアリールメタンXXVIに還元する工程である。この変換のための好適な還元剤としては、例えば、NaBH4、LiAlH4、iBu2AlH、Et3SiH、iPr3SiH又はPh2SiClHを挙げることができる。通常、この反応は、例えばBF3*OEt2、トリフルオロ酢酸、塩酸、InCl3又はAlCl3等のルイス酸の存在下で、ジクロロメタンもしくは1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素化合物、トルエン、ヘキサン等の炭化水素化合物、アセトニトリル等の溶媒又はこれらの混合物中、温度-80〜150℃、好ましくは-20〜100℃で行われる。例えばPd担持木炭等の遷移金属系触媒の存在下、水素を用いた還元も可能である。
スキーム11に示す合成は、メタル化ベンゼン誘導体XXIIIを安息香酸又は安息香酸誘導体XXVII(例えば、安息香酸エステル、無水安息香酸、ワインレブアミドのようなベンズアミド、ベンゾニトリルもしくは塩化ベンゾイル等)に添加することから始まり、ベンゾフェノンXXVIIIを得る。
スキーム11:アグリコン部分の合成 アプローチ5
【0117】
【化48】

【0118】
主に、リチウム又はマグネシウムで誘導体化したベンゼンXXIIIを、ベンズアミド、安息香酸エステル、塩化ベンゾイル、無水安息香酸及びベンゾニトリルに添加し、所望のベンゾフェノンXXVIIIを得るが、通常、リチオ化ベンゼンのみが安息香酸と反応して化合物を生成する。
後者の反応は、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、ヘキサン及びこれらの混合物中、-80〜100℃、好ましくは-30〜40℃で行うことができる。ベンゾニトリル及び対応のワインレブアミドのようなベンズアミド、又はそれに近い誘導体は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、エーテル及びそれらの混合物中、-90〜50℃、好ましくは-80〜20℃の範囲で選択的に反応させる。ベンゾイル塩化物又は無水物及び安息香酸エステルは、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、ジオキサン、ヘキサン等の炭化水素化合物又はそれらの混合物等の不活性溶媒中、低温で、好ましくは-80〜0℃で通常用いられる。ベンゾイル塩化物又はベンゾイル無水物又は安息香酸エステルに有機金属化合物が二重付加(double addition)し、対応のアルコールが生成されることを防ぐため、例えば、トリメチルシリルクロリド等のトラッピング試薬の存在下で添加を行うことが好ましい。上記の場合の二重添加を防ぐための別の選択肢は、反応性がより低い求核分子XXIIIにトランスメタル化することである。好適な金属としては、例えば、亜鉛、セリウム、クロム又はインジウムで、これらは塩化物、臭化物、ヨウ化物又はトリフルオロメタンスルホネート等の擬ハロゲン化塩として導入され、リチウム又はマグネシウム化合物をトランスメタル化し、対応の反応性がより低く、選択性のより高い金属化合物XXIIIが得られる。トランスメタル化は、最初の有機金属化合物を生成した溶媒中(上記参照)で-90〜0℃で選択的に行われる。トランスメタル化は記載の金属やスキーム10で既に説明したホウ素誘導体化合物に限られるものではなく、スタナン(水素化錫)やシラン(水素化珪素)なども提供することができる。トランスメタル化した化合物の中には、対応するベンゾイル求電子体と、なかでも塩化ベンゾイルや無水ベンゾイルと自然に反応するものもあるが、遷移金属触媒を添加しても有利である。特にアリールボロン酸とそのエステル、ジアルキルアリールボラン、アリールトリフルオロボレート、スタナン、シラン、インジウム、クロム及び亜鉛の誘導体化合物XXIIIの場合は、例えば、パラジウム、銅、鉄、ニッケル等の遷移金属(これらは元素として、又は、アセテート、塩化物、臭化物、ヨウ化物、アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホネート及びシアン化物として使用できる)を、例えば、亜リン酸塩、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリトリルホスフィン等のホスフィン類、1,3-置換イミダゾリウム又はジヒドロイミダゾリウム化合物等の配位子と一緒に仲介させることにより、塩化ベンジル誘導体XXVIIとカップリングして、ジアリールケトンXXVIIIとなる。
【0119】
活性遷移金属種は、カップリングパートナーを添加する前に調製してもよいが、現場でカップリング反応のパートナーの存在下で調製することもできる。好適な溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、エーテル、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン又はこれらの混合物で、これらは好ましくは-50〜150℃で、とりわけ好ましくは0〜120℃で使用される。ケトンをジアリールメタンに還元する次の変換については、すでに記載済みであるが、それを同様にここでも適用することができる。
スキーム12によると、前述のようにして合成できるメタル化アリール基XXIIIを、ベンジル塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルホネート、ホスホネート、カーボネート又はカルボキシレートといったベンジル求電体XXIXと反応させて、ジアリールメタンXXVIを得ることができる。
スキーム12:アグリコン部分の合成 アプローチ6
【0120】
【化49】

【0121】
リチウム又はマグネシウム誘導体化フェニル化合物XXIIIは、好ましくは(しかし必ずしも必要ではない)、例えば、銅、鉄、ニッケル又はパラジウム等の遷移金属の存在下で反応させる(例えば、Org. Lett. 2001, 3, 2871〜2874頁及びTetrahedron Lett. 2004, 8225〜8228頁及び本願明細書に引用の参考文献を参照)。使用可能な溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、ヘキサン、エーテル又はこれらの混合物である。反応温度の範囲は-90〜20℃、好ましくは-80〜-20℃である。遷移金属は元素として、例えば木炭に担持させて使用することができる。或いは、アセテート、アセチルアセトネート、シアン化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、トリフルオロメタンスルホネート等の塩として、又は、例えば、ジベンジリデンアセトン、亜リン酸塩、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン及びトリトリルホスフィン等のホスフィン類との錯体として、1,3-ジ置換イミダゾリウム又はジヒドロイミダゾリウム化合物等から誘導されるカルベンとの錯体として使用することができる。活性遷移金属種は、現場で反応パートナーの存在下で調製することも、或いは、カップリングパートナーを添加する前に調製してもよい。例えば、ホウ素、錫、珪素、亜鉛、インジウム又はクロム残基を有するアリール金属化合物XXIIIは、遷移金属触媒と一緒に使用することが好ましい。このような種類の金属化合物の好適な例としては、ボロン酸、ボロン酸エステル、ジアルキルボラン、トリフルオロボラート、トリアルキルスタナン、トリクロロスタナン、トリアルコキシシラン、ジハロインジウム置換化合物又はハロ亜鉛置換化合物が挙げられる。金属置換化合物XXIIIは、前述のごとく、対応のリチウム又はマグネシウム誘導体化化合物からトランスメタル化により合成することができる。或いは、亜鉛、クロム及びインジウムの場合も、対応のアリール塩化物、臭化物又はヨウ化物から、元素金属の挿入により直接合成される。ベンジル求電体とのカップリング反応は、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、トルエン、エーテル、ジオキサン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ヘキサン、水、例えばエタノール、イソプロパノール等のアルコール類又はこれらの混合物中、反応温度-30〜180℃、好ましくは0〜150℃で行うことができる。金属によっては、例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、リチウムt-ブトキシド、燐酸カリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化タリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基及び/又は他の添加剤、例えば、塩化リチウム、炭酸塩又は酸化物等の銀塩、臭化テトラブチルアンモニウム、及び、臭化ナトリウムが有利な場合があり、必須である場合もある(例えば、M. Schlosser, Organometallics in Synthesis, John Wiley & Sons, チチェスター/ニューヨーク/ブリスベン/トロント/シンガポール、1994及び本願明細書に引用の参考文献を参照)。特に好適な組合せによると、臭化ベンジル又はヨウ化ベンジルXXIXと、ボロン酸XXIIIと、触媒の塩化パラジウムで、水/アセトン混合物中0〜80℃で用いる。
下記のスキームは、アグリコン部分へアルキン残基を結合させるための好適な方法を概説したものである。
スキーム13は、遷移金属触媒下で、末端アルキンと適宜活性化したフェニル基をカップリングすることにより、アルキン残基を末端フェニル基へ結合することを説明する。
スキーム13:アルキン残基の結合 アプローチ1
【0122】
【化50】

【0123】
【化51】

【0124】
好適な反応条件については当該分野の当業者には公知であり、例えば、Chem. Rev. 2003, 103, 1979〜2017頁等の文献、ならびに本願明細書に引用の参考文献から適応させることができる。フェニル基に付いている脱離基Zの好適な例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、トリフルオロメタンスルホネート、メシレート、トシレート及びベンゼンスルホネート等のスルホネートが挙げられる。末端アルキンにくわえて、マグネシウム、亜鉛、銅、ホウ素、アルミニウム、珪素、インジウム及び錫から誘導される金属アセチリド類も使用することができる。1個のアセチレンを加えた後に残っている金属の空いている側が、例えば、ハロゲン化物、トリフルオロメタンスルホネート等のスルホネート、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ又は別のアセチレン分子でうめられてもよい。金属によっては、カップリングパートナーの存在下でアセチリドを調製できる場合もあるが、カップリング条件下に供する前にアセチリドを形成しなければならない場合もある。カップリングを行うのに好適な遷移金属はパラジウムであり、パラジウムは元素として例えば炭素に担持させたり、微細分散したパラジウムとして使用できる。或いは、例えば、ハロゲン化物等の塩、トリフルオロメタンスルホネート等のスルホネート、酢酸塩等のアシラートとして使用することもできる。あるいは、ホスフィン類、亜リン酸塩、アルケン、ジベンジリデンアセトン、アリール又はアルキルニトリル、1,3-ジアルキル(もしくはジアリール)イミジアゾリウムカルベン、1,3-ジアルキル(もしくはジアリール)ジヒドロイミダゾリウムカルベンとの錯体として、あるいは、パラジウムを後者2種の分類の配位子と組合わせて使用できる。使用されるアセチリドによっては、例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸銀、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の塩基、ナトリウムメトキシド等のアルコキシド、水酸化タリウム、酸化銀といった添加剤、例えば、フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化物源、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化リチウム又は塩化リチウム等の塩添加剤が有利となる場合がある。補助触媒としては、例えば、塩化銅、臭化銅又はヨウ化銅等の銅の塩、あるいは銀の塩を使用することができる。好適な溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ヘキサン又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒を添加せずに反応を行うことも可能である。この反応は好ましくは-30〜180℃、より好ましくは0〜130℃で行う。また、末端アルキンとのカップリング反応を利用して、保護基を有するアルキン単位を三重結合の反対の端に結合させることもできる。保護基を取り除いた後、同様な反応条件下で別のアリール基を反対の端に結合させることができる。アルキンが、カップリング反応に使用できる別の官能基、例えばトリメチルシリル等を有している場合は、両方のカップリング反応を同一の反応容器中で反応条件を変えて順次行うことができる。
また、対応のアルデヒドXXXIVを出発物質として、1炭素延長(one carbon elongation)により末端フェニル基に末端アルキンを形成することもできる(スキーム14)。
スキーム14:アルキン残基の結合 アプローチ2
【0125】
【化52】

【0126】
この反応は、アルデヒドXXXIVのオレフィン化反応と、それに続く、中間体として形成されたビニルカルベン又はカルベノイドのいわゆるFritsch-Buttenberg-Wiechel転位とを組合わせたものである。この反応は1種の試薬のみで行ってもよいし、あるいは、変換全体を2つの別々の工程で行う2種の試薬を用いて行ってもよい。1種の試薬による方法を実行するには、例えば、ジアルキルジアゾメチルホスホネートやトリメチルシリルジアゾメタン等のジアゾ化された試薬のアニオンを現場で生成させて使用する。後者の試薬のアニオンは、例えば、リチウムジイソプロピルアミド、ブチルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムt-ブトキシド等の強塩基を用いて、例えば、テトラヒドロフラン、エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ヘキサン又はそれらの混合物といった不活性溶媒中、0℃より低い温度で通常は生成される。こうして得られたアニオンを、温度-80〜120℃、好ましくは-60〜60℃でアルデヒドと反応させて所望のアルキンを得る。ジアルキル-1-ジアゾ-2-オキソプロピルホスホネートがジアルキルジアゾメチルホスホネートのアニオン用前駆体として適当であり、この前駆体は、例えば炭酸カリウムもしくは炭酸セシウム等の塩基、例えばナトリウムイソプロポキシドもしくはナトリウムメトキシド等のアルコキシドの存在下、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、水、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン又はこれらの混合物等の溶媒中で、アルキン化する反応種に変化する。前駆体のジアルキル-1-ジアゾ-2-オキソプロピルホスホネート自体は、ジアルキル-2-オキソプロピルホスホネートと、例えばp-トルエンスルホニルアザイドのようなジアゾ化試薬とを一緒に用いることによりその場で生成することができる。反応試薬又はその中間前駆体のジアルキル-1-ジアゾ-2-オキソプロピルホスホネートが、アジュバントの存在下、前記溶媒中、-30〜120℃で結合させ、同一の反応容器内にアルキン生成物を得る。ここで適用することができる2種の試薬の組合せによる方法のなかでは、Corey-Fuchs反応と、デュポン社の研究員が開発したプロセス(J. Org. Chem. 2000, 65, 1889〜1891頁及び本願明細書に引用の参考文献参照)がとりわけ言及する価値がある。
下記スキーム15は、所望の化合物を得るための特に好ましい方法を示す。
スキーム15:目的の分子への好適な合成経路
【0127】
【化53】

【0128】
上記の反応スキームにおいて、それぞれの基の好ましい定義は以下のとおりである。
及びRは本願明細書前記定義のとおりである。
は好ましくは、水素、(C1-8-アルキル)カルボニル(C1-4-アルコキシで置換されていてもよい)、(C1-8-アルキル)オキシカルボニル、(C3-6-アルケニル)カルボニル、アリールカルボニル、C1-6-アルコキシメチル、RaRbRcSi-、-CRaRbORcを示す。2個の隣接するR基が互いに結合しあって橋架け基を形成する場合、SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbからなり、RaRbRcは本願明細書前記の定義のとおりであり、各アルキル基はフッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi-、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよい。
は好ましくは、水素、ヒドロキシ、C1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを表し、より好ましくはC1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを表す。
合成シーケンスは、残基Rと臭素又はヨウ素原子と-CH2-R6とを有し、脱離可能な基Rが水素、C1-4-アルコキシ又はアリールオキシを示す、アグリコン部分XXXVのメタル化から出発する。メタル化アグリコンを保護グルコノラクトンIVに添加するのは、前述のとおり、とりわけスキーム2で説明したように行うとよい。メタノール又はエタノールのようなアルコール中、酢酸、塩酸、硫酸又はメタンスルホン酸等の酸で付加物をクエンチング(quenching)して、対応のアルコキシ付加物XXXVIIを得ることができる。C−グルコシド(XXXVIII)を得るために次に行う還元は、前述の使用可能な方法のなかの1つを使って、とりわけスキーム2に関する方法を使って行う。トリエチルシランのようなシランを三フッ化ホウ素エーテラートのようなルイス酸と一緒に使用することにより、この種の還元は可能になる。
【0129】
次の工程は、R基をZ基(塩素、臭素又はヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子)に変換する。フェニル環に塩素を担持(置換基Rとして)する化合物にのみ適用できるが、Rが水素である状態から出発して、ラジカル置換反応により臭素原子を導入することができる。N-ブロモスクシンイミド又は臭素を、例えばアゾビスイソブチロニトリル又は過酸化ジベンゾイル等のラジカル開始剤と一緒にして、例えばテトラクロロメタン、クロロホルム、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素化合物中、温度0〜120℃で行うことが、この変換のための好適な反応条件である。より好ましくは、ベンジル位のアルコキシ基又はアリールオキシ基Rを塩化物、臭化物又はヨウ化物に置換する。この場合、例えば、三塩化ホウ素、四塩化錫、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、五塩化燐、塩化ヨウ素、塩酸、三臭化ホウ素、トリメチルシリルブロミド、臭化水素酸、ヨウ化ナトリウムと、三フッ化ホウ素エーテラート又は塩化アルミニウム又はトリフルオロメタンスルホン酸又はトリクロロメチルシラン又は三臭化ホウ素との組合せ、トリメチルシリルヨージド、或いは、ヨウ化水素酸を、対応するハロゲン化物と一緒に作用させることで置換可能な脱離基をRは示す。好適な溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジオキサン、エーテル、アセトニトリル、水、アルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド又は酢酸が含まれる。好適な生成物XXXIXとは、温度0〜100℃で酢酸中、臭化水素酸の作用のもと、対応のベンジルアリール又はアルキルエーテルXXXVIII(Rはアルキルオキシ又はアリールオキシを示す)から好ましくは調製される、臭化物(Z=臭素)である。
ハロゲン化物XXXIXとボロン酸XLとの次のカップリングは、既に記載済みの鈴木反応であって、なかでもスキーム11を基準とした反応である。この変換のための特に好ましい反応条件は、塩化パラジウム、臭化パラジウム又は酢酸パラジウム等のパラジウム源を触媒前駆体とし、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又はリン酸カリウムを塩基とし、ジオキサン、水、アセトン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、キシレン又はトルエンを溶媒とする。ホスフィン配位子や、前もって作成したパラジウムと配位子との錯体を添加することが有利な場合もある。この反応は0〜130℃で行うことが好ましい。IIにおける保護基を取り除き最終生成物Iを得るための条件については既に記載済みで、なかでもスキーム1にを基準とする。
【0130】
以下の記載は本願明細書前記及び後記のすべての反応及び合成経路に概ねあてはまる。
エチニル、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ又はイミノ基のような存在するいずれの反応基も従来の保護基により反応中は保護することができ、反応後は保護基を再び開裂する。
例えばヒドロキシ基の保護基としては、トリメチルシリル基、アセチル基、トリチル基、ベンジル基又はテトラヒドロピラニル基が挙げられる。
アミノ、アルキルアミノ又はイミノ基の保護基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンジル基、メトキシベンジル基又は2,4-ジメトキシベンジル基が挙げられる。
末端アルキンの保護基は、例えば、トリメチルシリル、ビフェニルジメチルシリル又はトリイソプロピルシリル等のシリル基及び2-ヒドロキシ-イソプロピル基である。
さらに、得られた化合物及び中間体は、本願明細書で記載したように、それぞれの鏡像異性体及び/又はジアステレオ異性体に分離することができる。例えば、シス/トランス混合物を、シス及びトランス異性体に分離したり、少なくとも1個の光学活性炭素原子を有する化合物を鏡像異性体に分離することができる。
そこで、例えば、シス/トランス混合物はクロマトグラフィーによりシス及びトランス異性体に分離することができ、ラセミ体として得られた化合物や中間体は、それ自体が公知の方法(Allinger N. L.及びEliel E. L. "Topics in Stereochemistry", 第6巻、Wiley Interscience, 1971参照)で光学的対掌体に分離することができる。少なくとも2個の不斉炭素原子を有する化合物又は中間体は、それぞれの物理化学的相違に基づいてそれ自体公知である方法により、例えば、クロマトグラフィー及び/又は分別晶出によりジアステレオ異性体に分割することができ、これらの化合物がラセミ体で得られた場合は、引き続き、前述のように鏡像異性体に分割することができる。
【0131】
鏡像異性体は、キラル相のカラム分離又は光学活性溶媒からの再結晶で分離することが好ましい。或いは、鏡像異性体は、ラセミ化合物と一緒に塩又はエステルもしくはアミド等の誘導体を形成する光学活性物質、なかでも酸や活性誘導体又はアルコールを使って反応させ、得られた塩又は誘導体のジアステレオマー混合物を例えば溶解性の差をもとに分離し、好適な薬剤の作用で純粋なジアステレオマー塩又は誘導体から遊離対掌体を放出させればよい。通常使用される光学的に活性な酸は、例えば、酒石酸又はジベンゾイル酒石酸のD体及びL体、ジ-o-トリル酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、カンファースルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸又はキナ酸が挙げられる。光学活性アルコールとしては、例えば、(+)-又は(-)-メントール、アミドの光学活性アシル基は、例えば、(+)-又は(-)-メンチルオキシカルボニルが挙げられる。
さらに、本発明の化合物及び中間体はその塩に変換してもよい。とくに、製薬用途では、無機酸又は有機酸と一緒に医薬的に許容できる塩に変換するとよい。この目的のために使用できる酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、燐酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸又はマレイン酸が挙げられる。
また、本発明の化合物は以下の実施例に記載の方法を用いて有利に得られるが、実施例記載の方法は、本目的のため、当業者が文献から得た公知方法、なかでも例えばWO98/31697、WO01/27128、WO02/083066、WO03/099836、WO2004/063209及びWO2005/092877に記載の方法と組み合わせることができる。
【0132】
本発明の化合物を説明するため本願明細書前記及び後記で使用している用語のいくつかをより詳細に定義しておく。
ハロゲンという用語はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択される原子を示し、特にはフッ素、塩素及び臭素を示す。
C1-n-アルキル(nは1〜18)という用語は、炭素原子を1〜n個有する分岐又は分岐していない、飽和炭化水素基を示す。このような基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、iso-ヘキシル等が挙げられる。特に記載がない場合は、アルキルという用語は好ましくはC1-6-アルキル基を表し、さらに好ましくはC1-4-アルキル基を表し、特に好ましくはC1-3-アルキル基を表す。
C2-n-アルキニル(nは3〜6)という用語は、炭素原子を2〜n個とC≡C三重結合とを有する、分岐又は分岐していない炭化水素基を示す。このような基の例としては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル等が挙げられる。特に記載がない場合は、アルキニル基が1位の炭素原子を介して分子の残余に結合している。そのため、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル等の用語は、1-プロピン-1-イル、2-プロピン-1-イル、1-ブチン-1-イル等に対応している。このことはC2-n-アルケニル基にも同様にあてはまる。
【0133】
C1-n-アルコキシという用語はC1-n-アルキル-O基を示し、C1-n-アルキルは前記定義のとおりである。このような基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、iso-ペントキシ、neo-ペントキシ、tert-ペントキシ、n-ヘキソキシ、iso-ヘキソキシ等が挙げられる。
C1-n-アルキルカルボニルという用語はC1-n-アルキル-C(=O)基を示し、C1-n-アルキルは前記定義のとおりである。このような基の例としては、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、iso-プロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、iso-ブチルカルボニル、sec-ブチルカルボニル、tert-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、iso-ペンチルカルボニル、neo-ペンチルカルボニル、tert-ペンチルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル、iso-ヘキシルカルボニル等が挙げられる。
C3-n-シクロアルキルという用語は、3〜n個の炭素原子を有する飽和モノ-、バイ-、トリ-又はスピロ炭素環式基を表す。このような基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロドデシル、バイシクロ[3.2.1.]オクチル、スピロ[4.5]デシル、ノルピニル、ノルボニル、ノルカリル、アダマンチル等が挙げられる。好ましくは、C3-7-シクロアルキルという用語は飽和単環式基を表す。
C5-n-シクロアルケニルという用語は、前記定義のとおりであるC5-n-シクロアルキル基がさらに少なくとも1個の不飽和C=C二重結合を有するものである。
【0134】
C3-n-シクロアルキルカルボニルは、C3-n-シクロアルキル-C(=O)基を示し、C3-n-シクロアルキルは前記定義のとおりである。
トリ-(C1-4-アルキル)シリルという用語は、同じ又は異なる2個もしくは3個のアルキル基を有するシリル基である。
ジ-(C1-3-アルキル)アミノという用語は、同じ又は異なる2個のアルキル基を有するアミノ基である。
アリールという用語は、好ましくはナフチル又はフェニルを表し、より好ましくはフェニルを示す。
前記及び本願明細書後記で使用の構造式における命名について、例えばフェニル環等の環式基の置換基の結合は環式基の中央に向かって示されているが、特に記載のない限り、該置換基は環式基の水素原子を有するいずれの位置にも結合できることを表す。
前記及び以下の本文において、ヒドロキシル基の水素原子は、いずれも構造式中に明示していない。下記実施例は本発明を説明することを意図するもので、本発明を限定するものではない。圧力が単位「Torr」で示されている場合、対応の値は、1torr = 133.322Paを用いてSI系に換算することができる。
【0135】
本発明の式Iの化合物がSGLT活性の抑制能があることを考慮すると、SGLT活性、特にSGLT-2活性を阻害することで影響を受けるすべての異常又は疾病の治療及び/又は予防治療用の医薬組成物を調製するのに適している。そこで、式Iの化合物は、特に糖尿病のような代謝障害又は異常という疾病の予防又は治療のための医薬組成物を調製するのに特に好適である。
下記合成例は、式Iの化合物及びその中間体の製造方法を説明するためのものである。これは、可能な方法を一例として説明したものにすぎないとみなすべきであり、この内容に本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0136】
実験的手順:
実施例I
【0137】
【化54】

【0138】
(5-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-(4-メトキシ-フェニル)-メタノン
38.3mlの塩化オキサリルと0.8mlのジメチルホルムアミドとを、100gの5-ブロモ-2-クロロ-安息香酸を含む500mLのジクロロメタンに添加する。反応混合物を14時間攪拌した後、濾過を行い、ロータリーエバポレータで揮発成分をすべて分離させる。残渣を150mlのジクロロメタンに溶解させ、得られた溶液を-5℃に冷却する。46.5gのアニソールを加える。さらに、温度が5℃を超えないようにしながら51.5gの三塩化アルミニウムを少しずつ添加する。溶液を1〜5℃でさらに1時間攪拌した後、砕いた氷の上に注ぐ。有機相を分離させ、水性相をジクロロメタンで3回抽出する。有機相を併せて1M塩酸で洗い、1M水酸化ナトリウム溶液で2回洗い、塩水で洗う。有機相を乾燥させ、溶媒を真空下で除去する。残渣をエタノールで再結晶させる。
収量:86.3g(理論量の64%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 325/327/329 (Br+Cl) [M+H]+
下記化合物は実施例Iと同様にして得られる。
(1) (5-ブロモ-2-メチル-フェニル)-(4-メトキシ-フェニル)-メタノン
【0139】
【化55】

【0140】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 305/307 (Br) [M+H]+
実施例II
【0141】
【化56】

【0142】
4-ブロモ-2-ブロモメチル-1-クロロ-ベンゼン
4.0gのN-ブロモスクシンイミドを、5.0gの4-ブロモ-1-クロロ-2-ヒドロキシメチル-ベンゼン及び5.9gのトリフェニルホスフィンを含む50mLのテトラヒドロフラン溶液(5℃に冷却)にゆっくり添加する。周囲温度で1時間攪拌した後、析出物を濾取し、溶媒を真空下で取り除く。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 50:1)で精製する。
収量:4.9g(理論量の76%)
質量スペクトル (EI): m/z = 282/284/286/288 (2Br+Cl) [M]+
実施例III
【0143】
【化57】

【0144】
4-ブロモ-2-クロロメチル-1-クロロ-ベンゼン
40.0gの4-ブロモ-1-クロロ-2-ヒドロキシメチル-ベンゼン及び60mLの塩化チオニルを含む150mLのジクロロメタン溶液を、45〜50℃で5時間攪拌する。その後、溶媒分と過剰な試薬とを真空下で除去する。
収量:43.2g(理論量の100%)
質量スペクトル (EI): m/z = 238/240/242/244 (Br+2Cl2) [M]+
実施例IV
【0145】
【化58】

【0146】
4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-メトキシ-ベンジル)-ベンゼン
86.2gの(5-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-(4-メトキシ-フェニル)-メタノンと101.5mLのトリエチルシランとを含む、ジクロロメタン75mL及びアセトニトリル150mLの溶液を、10℃に冷却する。温度が20℃を超えないように50.8mLの三フッ化ホウ素エーテラートを添加する。溶液を周囲温度で14時間攪拌し、さらに9mLのトリエチルシランと4.4mLの三フッ化ホウ素エーテラートとを加える。溶液を45〜50℃でさらに3時間攪拌した後、周囲温度に冷却する。28gの水酸化カリウムを70mLの水に溶解させた溶液を添加し、得られた混合物を2時間攪拌する。その後、有機相を分離させ、水性相をジイソプロピルエーテルで3回抽出する。有機相を併せて、2M水酸化カリウム溶液で2回、塩水で1回洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒分を取り除き、残渣をエタノールで洗い、60℃で乾燥させる。
収量:50.0g(理論量の61%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 310/312/314 (Br+Cl) [M+H]+
下記化合物は実施例IVと同様にして得られる。
(1) (5-ブロモ-2-メチル-フェニル)-(4-メトキシ-フェニル)-メタン
【0147】
【化59】

【0148】
質量スペクトル (EI+): m/z = 290/292 (Br) [M]+
実施例V
【0149】
【化60】

【0150】
4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェノール
14.8gの4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-メトキシ-ベンジル)-ベンゼンを含む150mLのジクロロメタン溶液を、氷浴で冷却する。その後、三臭化ホウ素の1Mジクロロメタン溶液50mLを添加し、溶液を周囲温度で2時間攪拌する。溶液を再度氷浴で冷却し、飽和炭酸カリウム溶液を滴下する。周囲温度において混合物を1M塩酸でpH値が約1になるよう調整し、有機相を分離させ、水性相を酢酸エチルで3回抽出する。有機相を併せて硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒分を完全に除去する。
収量:13.9g(理論量の98%)
質量スペクトル (ESI-): m/z = 295/297/299 (Br+Cl) [M-H]-
下記化合物は実施例Vと同様にして得られる。
(1) 4-(5-ブロモ-2-メチル-ベンジル)-フェノール
【0151】
【化61】

【0152】
質量スペクトル (ESI-): m/z = 275/277 (Br+Cl) [M-H]-
実施例VI
【0153】
【化62】

【0154】
[4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェノキシ]-t-ブチル-ジメチル-シラン
13.9gの4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェノールを含む140mLのジクロロメタン溶液を氷浴で冷却する。その後、7.54gのt-ブチルジメチルシリルクロリドを含む20mLのジクロロメタンを添加し、続いて9.8mLのトリエチルアミン及び0.5gの4-ジメチルアミノピリジンを加える。溶液を周囲温度で16時間攪拌し、100mLのジクロロメタンで希釈する。有機相を1M塩酸で2回、炭酸水素ナトリウム水溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥せさせる。溶媒分を除去した後、残渣をシリカゲルで濾過する(シクロヘキサン/酢酸エチル 100:1)。
収量:16.8g(理論量の87%)
質量スペクトル (EI): m/z = 410/412/414 (Br+Cl) [M]+
下記化合物は実施例VIと同様にして得られる。
(1) [4-(5-ブロモ-2-メチル-ベンジル)-フェノキシ]-t-ブチル-ジメチル-シラン
【0155】
【化63】

【0156】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 391/393 (Br) [M+H]+
実施例VII
【0157】
【化64】

【0158】
4-ブロモ-1-クロロ-2-フェノキシメチル-ベンゼン
7.1gのフェノールと11.1gの炭酸カリウムとを含む100mLのエタノールに、19.5gの4-ブロモ-2-ブロモメチル-1-クロロ-ベンゼンを添加する。混合物を周囲温度で一晩攪拌する。エタノールを蒸発させ、残渣に水を加える。得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、抽出物を併せて硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒分を除去する。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 70:30)で精製する。
収量:16.8g(理論量の82%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 296/298/300 (Br+Cl) [M]+
実施例VIII
【0159】
【化65】

【0160】
1-ブロモ-4-トリイソプロピルシリルエチニル-ベンゼン
アルゴン気流下、15.0gの1-ブロモ-4-ヨード-ベンゼンを含む150mLの無水テトラヒドロフラン溶液(酸素を含まない)に、11.6mLのトリイソプロピルシリルアセチレンと14.4mLのトリエチルアミンを添加し、引き続き、0.2gのヨウ化銅と0.73gのビス-(トリフェニルホスフィン)-パラジウムジクロリドを添加する。溶液を周囲温度で16時間攪拌した後、セライトで濾過し、溶媒分を蒸発させる。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン)にかける。
収量:17.4g(理論量の100%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 336/338 (Br) [M]+
下記化合物は実施例VIIIと同様にして得られる。
(1) 4-(トリイソプロピルシリル-エチニル)フェニルボロン酸
4-ヨード-フェニルボロン酸を出発物質として使用する。
【0161】
【化66】

【0162】
質量スペクトル (ESI-): m/z = 347 [M+HCOO]-
(2) 4-(トリメチルシリル-エチニル)フェニルボロン酸
4-ヨード-フェニルボロン酸を出発物質として使用する。
【0163】
【化67】

【0164】
質量スペクトル (ESI-): m/z = 263 [M+HCOO]-
実施例IX
【0165】
【化68】

【0166】
(4-ヨード-フェニルエチニル)-トリイソプロピル-シラン
アルゴン気流下、18.0gのヨウ化ナトリウム(無水)と0.6gのヨウ化銅と0.8gのN,N'-ジメチル-シクロヘキサン-1,2-ジアミンとを、20.0gの(4-ブロモ-フェニルエチニル)-トリイソプロピル-シランを含む100mLのジオキサン溶液に添加する。この溶液を24時間攪拌しながら還流し、その後、周囲温度に冷却する。1%アンモニア溶液(100mL)を加え、混合物を酢酸エチルで抽出する。硫酸ナトリウムで乾燥を行った後、溶媒分を除去し残渣をシリカゲル(シクロヘキサン)で精製する。
収量:21.0g(理論量の92%)
質量スペクトル (EI): m/z = 384 [M]+
実施例X
【0167】
【化69】

【0168】
[4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェニルエチニル]-トリイソプロピル-シラン
アルゴン気流下、塩化イソプロピルマグネシウムの2Mテトラヒドロフラン溶液0.66mLを、0.50gの(4-ヨード-フェニルエチニル)-トリイソプロピル-シランを含む2.2mLの無水テトラヒドロフラン溶液(-25℃に冷却)に滴下する。溶液を-25℃で30分間攪拌し、CuCN*2 LiClの1Mテトラヒドロフラン溶液0.26mL(CuCNとLiClとを1:2の割合で溶解させて調製)と混合する。その直後に、0.35gの4-ブロモ-2-ブロモメチル-1-クロロ-ベンゼンを添加し、反応混合物を冷却槽中で-5℃まであたためる。-5℃で6時間攪拌した後、溶液を周囲温度まであたため、一晩攪拌する。その後、飽和塩化アンモニウム溶液と25%アンモニア溶液の混合物(9:1)を添加し、得られた混合物を水に加える。有機相を分離させ、水性相を酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒分を除去する。残渣をシリカゲルで精製する(シクロヘキサン)。
収量:0.28g(理論量の50%)
質量スペクトル (EI): m/z = 461/463/465 (Br+Cl) [M+H]+
下記化合物は実施例Xと同様にして得られる。
(1) [4-(5-ブロモ-2-メチル-ベンジル)-フェニルエチニル]-トリイソプロピル-シラン
【0169】
【化70】

【0170】
実施例XI
【0171】
【化71】

【0172】
2,3,4,6-テトラキス-O-(トリメチルシリル)-D-グルコピラノン
20gのD-グルコノ-1,5-ラクトンと98.5mLのN-メチルモルホリンとを含む200mLのテトラヒドロフラン溶液を、-5℃に冷却する。その後、温度が5℃を超えないように85mlのトリメチルシリルクロリドを滴下する。その後、溶液を周囲温度で1時間、35℃で5時間、再度周囲温度で14時間攪拌する。300mLのトルエンを添加して、溶液を氷浴で冷却し、温度が10℃を超えないように500mLの水を加える。有機相を分離させ、リン酸二水素ナトリウム水溶液、水、塩水で洗浄する。溶媒分を真空下で除去し、残渣をトルエンとの共沸で乾燥させる。
収量:52.5g(約90%の純度)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 467 [M+H]+
実施例XII
【0173】
【化72】

【0174】
1-クロロ-4-(1-メトキシ-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(フェノキシメチル)-ベンゼン
14.40gの4-ブロモ-1-クロロ-2-フェノキシメチル-ベンゼンを含む120mLの無水テトラヒドロフラン溶液を、アルゴン気流下、-78℃に冷却する。n-ブチルリチウムの1.7Mヘキサン溶液33.5mLを、前記冷却した溶液にゆっくりと滴下する。得られた溶液を-78℃で45分間攪拌し、純度約90%の2,3,4,6-テトラキス-O-(トリメチルシリル)-D-グルコピラノンを25.10g含む80mLのテトラヒドロフラン溶液(-78℃)を分注用注射針で加える。得られた溶液を-78℃で1時間攪拌した後、150 mLの酢酸1%水溶液を加える。室温まであたためた後、得られた反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機抽出物を併せて塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒分を除去した後、残渣を90mLのメタノールに溶解し、1mLのメタンスルホン酸で処理する。溶液を室温で一晩攪拌し、トリエチルアミンで中和させる。溶媒を減圧下で除去し、残渣を250mLの酢酸エチルに溶解させる。この有機溶液を水、塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒分の除去を行った後、粗生成物を精製せずに還元を行う。
収量:17.20g(粗生成物)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 433/435 (Cl) [M+Na]+
下記化合物は実施例XIIと同様にして得られる。
(1) 1-クロロ-4-(1-メトキシ-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(4-トリイソプロピルシリルエチニル-ベンジル)-ベンゼン
【0175】
【化73】

【0176】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 592/594 (Cl) [M+NH4]+
実施例XIII
【0177】
【化74】

【0178】
1-クロロ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル(acteyl)-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(フェノキシメチル)-ベンゼン
17.20gの1-クロロ-4-(1-メトキシ-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(フェノキシメチル)-ベンゼンと13.6mLのトリエチルシランとを含む、ジクロロメタン120mL及びアセトニトリル360mLの溶液を-10℃に冷却する。さらに、溶液の温度を0℃未満に保ちながら、8.4mLの三フッ化ホウ素エーテラートを滴下する。得られた溶液を氷浴で0.5時間攪拌した後、室温まであたためる。炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、得られた混合物を0.5時間攪拌する。有機層を分離させ水性層を酢酸エチルで抽出する。有機層を併せて塩水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を除去し、残渣を200mLのジクロロメタンに投入する。溶液を氷浴で冷却して、36mLのピリジンと40mLの無水酢酸と0.5gの4-ジメチルアミノピリジンとを添加する。溶液を周囲温度で1時間攪拌し、100mLのジクロロメタンで希釈する。有機溶液を1M塩酸で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒分を除去した後、残渣をエタノールから再結晶させ、白色結晶の生成物を得る。
収量:7.30g(理論量の32%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 566/568 (Cl) [M+NH4]+
下記化合物は実施例XIIIと同様にして得られる。
(1) 1-クロロ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(4-トリイソプロピルシリルエチニル-ベンジル)-ベンゼン
【0179】
【化75】

【0180】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 730/732 (Cl) [M+NH4]+
(2) 1-クロロ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(4-トリイソプロピルシリルエチニル-ベンジル)-ベンゼン
【0181】
【化76】

【0182】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 630/632 (Cl) [M+NH4]+
還元後、化合物を上記方法により無水酢酸のかわりにクロロギ酸メチルで処理した。
実施例XIV
【0183】
【化77】

【0184】
1-クロロ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル(acteyl)-D-グルコピラノス-1-イル)-2-ブロモメチル-ベンゼン
6.04gの1-クロロ-4-(1-メトキシ-D-グルコピラノス-1-イル)-2-フェニルオキシメチル-ベンゼンを含む200mLの酢酸溶液に、33%臭化水素酸の酢酸溶液200mLを添加する。溶液を周囲温度で2時間攪拌した後、氷浴で冷却する。反応混合物を冷却した飽和炭酸カリウム水溶液で中和させ、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を併せて硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒分を真空下で除去する。残渣を酢酸エチル/シクロヘキサン(1:3)に投入し、析出物を濾過により分離して50℃で乾燥させ、純粋な生成物を得る。
収量:4.50g(理論量の76%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 552/554/556 (Br+Cl) [M+NH4]+
下記化合物は実施例XIVと同様にして得られる。
(1) 1-クロロ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-D-グルコピラノス-1-イル)-2-ブロモメチル-ベンゼン
【0185】
【化78】

【0186】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 800/802/804 (Br+Cl) [M+NH4]+
実施例XV
【0187】
【化79】

【0188】
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(4-エチニル-ベンジル)-ベンゼン
3.25gの1-クロロ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノス-1-イル)-2-ブロモメチル-ベンゼンと、1.46gの4-トリメチルシリルエチニル-フェニルボロン酸と、2.10gの炭酸カリウムとを含むアセトン45mL及び水15mLの溶液に、アルゴン気流下、32mgのニ塩化パラジウムを添加する。反応混合物を周囲温度で10時間攪拌した後、塩水で希釈する。得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、抽出物を併せて硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒分を真空下で除去する。残渣を40mLのメタノールに投入し、8mLの4M水酸化カリウム水溶液を添加する。溶液を周囲温度で1時間攪拌した後、1M塩酸で中和させる。メタノール分を留去し、残渣を塩水で希釈して酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を回収して硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒分を除去する。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 1:0から6:1へ勾配)にかける。
収量:1.37g(理論量の58%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 406/408 (Cl) [M+H]+
1-クロロ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-D-グルコピラノス-1-イル)-2-ブロモメチル-ベンゼンも、上記の反応に使用することができる。
下記化合物は実施例XVと同様にして得られる。
(1) [4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェニルエチニル]-トリイソプロピル-シラン
4-(トリイソプロピルシリル-エチニル)フェニルボロン酸と、5-ブロモ-2-クロロ-ベンジルブロミドがカップリングパートナーであり、前記反応条件に供する。
【0189】
【化80】

【0190】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 461/463/465 (Br+Cl) [M+H]+
(2) [4-(5-ブロモ-2-メチル-ベンジル)-フェニルエチニル]-トリイソプロピル-シラン
4-(トリイソプロピルシリル-エチニル)フェニルボロン酸と、5-ブロモ-2-メチル-ベンジルブロミド(公知化合物)がカップリングパートナーであり、前記反応条件に供する。
【0191】
【化81】

【0192】
実施例XVI
【0193】
【化82】

【0194】
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(4-エチニル-ベンジル)-ベンゼン
テトラブチルアンモニウムフルオリドの1Mテトラヒドロフラン溶液0.77mLを、0.55gの1-クロロ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(トリイソプロピルシリルエチニル-ベンジル)-ベンゼンを含むテトラヒドロフラン溶液2mLに添加する。溶液を周囲温度で1時間攪拌する。その後、4mLのメタノールと0.85mLの4M水酸化カリウム溶液とを添加し、得られた溶液を周囲温度でさらに1時間攪拌する。溶液を1M塩酸で中和させ、メタノール分を留去する。残渣を塩化ナトリウム水溶液と混合し、酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を併せて硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒分を除去する。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 19:1から2:1へ勾配)にかける。
収量:0.15g(理論量の50%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 406/408 (Cl) [M+NH4]+
以下の化合物は実施例XVIと同様にして得られる。
(1) 4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-3-(4-エチニル-ベンジル)-4-メチル-ベンゼン
【0195】
【化83】

【0196】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 386 [M+NH4]+
実施例XVII
【0197】
【化84】

【0198】
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-(ピリミジン-5-イル-エチニル)-ベンジル]-ベンゼン
37mgのヨウ化銅と、67mgのビス-(トリフェニルホスフィン)-パラジウムジクロリドと、0.46mLのトリエチルアミンとを、0.35gの1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(4-エチニル-ベンジル)-ベンゼンと0.2gの5-ブロモ-ピリミジンとを含むジメチルホルムアミド溶液1mL(酸素を含まない)に添加する。アルゴン雰囲気下、溶液を60℃で16時間攪拌する。反応混合物をセライトで濾過し溶媒分を留去する。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 1:0から9:1へ勾配)にかける。
収量:120mg(理論量の29%)
質量スペクトル (ESI+): m/z = 467/469 (Cl) [M+H]+
下記化合物は実施例XVIIと同様にして得られる。
(1) 4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-3-[4-(ピリミジン-5-イル-エチニル)-ベンジル]-4-メチル-ベンゼン
【0199】
【化85】

【0200】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 447 [M+H]+
(2) 1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)-エチニル-ベンジル]-ベンゼン
【0201】
【化86】

【0202】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 496/498 (Cl) [M+H]+
(3) 1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-(ピラジン-2-イル-エチニル)-ベンジル]-ベンゼン
【0203】
【化87】

【0204】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 467/469 (Cl) [M+H]+
(4) 1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-(1 メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-エチニル-ベンジル]-ベンゼン
【0205】
【化88】

【0206】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 469/471 (Cl) [M+H]+
(5) 1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-(1H-ピラゾール-4-イル-エチニル)-ベンジル]-ベンゼン
【0207】
【化89】

【0208】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 455/457 (Cl) [M+H]+
(6) 1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-(フェニル-エチニル)-ベンジル]-ベンゼン
【0209】
【化90】

【0210】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 482/484 (Cl) [M+NH4]+
(7) 1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-(1-メチルピリジン-2-オン-5-イル)-エチニル-ベンジル]-ベンゼン
【0211】
【化91】

【0212】
質量スペクトル (ESI+): m/z = 496/498 (Cl) [M+H]+

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iの化合物の製造方法であって、
【化1】

(式中、
1は、
水素、あるいは、
C1-4-アルキル、C3-7-シクロアルキル、テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニルを表し、これらは1〜4個の置換基L2で置換されていてもよく、あるいは、
アリール基又は5員もしくは6員の単環式ヘテロアリール基又は8員、9員もしくは10員の二環式ヘテロアリール基を表し、前記ヘテロアリール基は窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、かつ、前記ヘテロアリール基は、前記単環式又は二環式芳香族環系の一部として1個又は2個のカルボニル基を有していてもよく、さらには
前記ヘテロアリール環の窒素原子が酸化され、対応するN−酸化物を形成していてもよく、さらには、
前記アリール基及びヘテロアリール基の1個以上のメチン基が、互いに独立して置換基L1で置換されていてもよく、さらには、
前記ヘテロアリール基における1個以上のイミノ基が、互いに独立して置換基RNで置換されていてもよく、
2は塩素又はメチルを表し、
3は水素を表し、
Nは互いに独立してC1-3-アルキルから選択され、
L1は互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキル、C1-4-アルコキシ及びニトロから選択され、
L2は互いに独立して、フッ素、塩素、ヒドロキシ、ヒドロキシル-C1-4-アルキル、C1-4-アルコキシ、トリフルオロメトキシ、C1-4-アルコキシ-C1-4-アルキル、シアノ、C1-4-アルキル、トリフルオロメチル、アミノ、C1-4-アルキル-カルボニルアミノ、C1-3-アルキル-アミノ及びジ(C1-3-アルキル)-アミノから選択され、
上述の基の定義に記載した前記アリール基とは、フェニル基又はナフチル基を意味し、L1でモノ置換又はポリ置換されていてもよい)
一般式IIで表される化合物において、
【化2】

(式中、
1及びR2は前述の定義のとおりであり、
4は互いに独立して水素、C3-18-アルケニル、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、(C3-18-アルケニル)カルボニル、(C3-18-アルケニル)オキシカルボニル、ジ-(C1-18-アルキル)アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリール-(C1-3-アルキル)-カルボニル、アリール-C1-3-アルキル、C1-6-アルコキシメチル、アリール-C1-3-アルコキシ、C1-4-アルキルチオエチル、アリールチオエチル、C1-4-アルキルスルホニルエチル、アリールスルホニルエチル、RaRbRcSi-、-CRaRbORcを表し、2つの隣接するR4基が互いに結合して橋架け基SiRaRb、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成してもよく、また、前記において各アルキルが、フッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、R4が少なくとも1個は水素ではないことを条件とし、
Ra、Rb、Rcは互いに独立して、C1-4-アルキル、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、前記アルキルがハロゲンでモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
L1及びL2は前述の定義のとおりであり、
上述の基の定義に記載のアリール基は、フェニル基又はナフチル基を意味し、L1でモノ置換又はポリ置換されていてもよい)、水素ではない保護基R4を開裂することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
下記一般式II'で表される化合物の製造方法であって、
【化3】

(式中、
1は、
水素、或いは
C1-4-アルキル、C3-7-シクロアルキル、テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニルを表し、これらは1〜4個の置換基L2で置換されていてもよく、或いは、
アリール基又は5員もしくは6員の単環式ヘテロアリール基又は8員、9員もしくは10員の二環式ヘテロアリール基を表し、前記ヘテロアリール基は窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、かつ、前記ヘテロアリール基は、前記単環式又は二環式芳香族環系の一部として1個又は2個のカルボニル基を有していてもよく、さらには
前記ヘテロアリール環の窒素原子が酸化され、対応するN−酸化物を形成していてもよく、さらには、
前記アリール基及びヘテロアリール基の1個以上のメチン基が、互いに独立して置換基L1で置換されていてもよく、さらには、
前記ヘテロアリール基における1個以上のイミノ基が、互いに独立して置換基RNで置換されていてもよく、
2は塩素又はメチルを表し、
4は互いに独立して水素、C3-18-アルケニル、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、(C3-18-アルケニル)カルボニル、(C3-18-アルケニル)オキシカルボニル、ジ-(C1-18-アルキル)アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリール-(C1-3-アルキル)-カルボニル、アリール-C1-3-アルキル、C1-6-アルコキシメチル、アリール-C1-3-アルコキシ、C1-4-アルキルチオエチル、アリールチオエチル、C1-4-アルキルスルホニルエチル、アリールスルホニルエチル、RaRbRcSi、CRaRbORcを表し、2つの隣接するR4基が互いに結合して橋架け基SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成してもよく、また、前記において各アルキルが、フッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、
6は、水素、パラ-R7-フェニル-、C1-6-アルキルオキシ、アリールオキシ、-OR4を表し、
7は、-C≡C-R1、塩素、臭素、ヨウ素、-OSO2R、-CHO、-SiAlk3、-O-C1-6-アルキル、-OR4、-C≡C-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(アリール)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-Si(ビフェニル)(C1-4-アルキル)2、又は、-C≡C-C(OH)(C1-4-アルキル)2を表し、
Rは、C1-4-アルキル、C3-4-アルケニル、C1-4-アルコキシ、CF3、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、該アリール基はL1でモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
a、Rb、Rcはそれぞれ独立してC1-4-アルキル、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、前記アルキル基はハロゲンでモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
Nは互いに独立してC1-3-アルキルから選択され、
L1は互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキル、C1-4-アルコキシ及びニトロから選択され、
L2は互いに独立して、フッ素、塩素、ヒドロキシ、ヒドロキシル-C1-4-アルキル、C1-4-アルコキシ、トリフルオロメトキシ、C1-4-アルコキシ-C1-4-アルキル、シアノ、C1-4-アルキル、トリフルオロメチル、アミノ、C1-4-アルキル-カルボニルアミノ、C1-3-アルキル-アミノ及びジ(C1-3-アルキル)-アミノから選択され、
上述の基の定義に記載のアリール基はフェニル基又はナフチル基を意味し、L1でモノ置換又はポリ置換されていてもよい)
一般式III'の化合物:
【化4】

(式中、
2、R6及び各R4は前記の定義のとおりであり、
R’は水素、C1-6-アルキル、(C1-4-アルキル)カルボニル、(C1-4-アルキル)オキシカルボニル、アリールカルボニル、アリール-(C1-3-アルキル)-カルボニルを表し、前記アリールという用語は前述の定義とする)を還元剤と反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
下記一般式III'で表される化合物の製造方法であって、
【化5】

(式中、
2、R’及び各R4は請求項2の定義のとおりであり、
6は、水素、パラ-R7-フェニル-、C1-6-アルキルオキシ、アリールオキシ、-OR4を表し、
7は、-C≡C-R1、塩素、臭素、ヨウ素、-OSO2R、-CHO、-SiAlk3、-O-C1-6-アルキル、-OR4、-C≡C-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(アリール)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-Si(ビフェニル)(C1-4-アルキル)2、又は、-C≡C-C(OH)(C1-4-アルキル)2を表し、
Rは、C1-4-アルキル、C3-4-アルケニル、C1-4-アルコキシ、CF3、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、前記アリール基はL1でモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
前記R1、アリール及びL1は請求項2の定義のとおりである)
下記式VIで表される有機金属化合物又はそのトランスメタル化により得た誘導体:
【化6】

(式中、R2及びR6は前記の定義のとおりであり、MはLi又はMgHalを示し、Halは塩素、臭素又はヨウ素を表す)であって、前記式VIの化合物は下記一般式Vのハロゲン−ベンジルベンゼン化合物の炭素−ハロゲン結合におけるハロゲン−金属交換を行うか、又は金属の挿入により得ることができ、さらに引き続きトランスメタル化を行ってもよく、
【化7】

(式中、R2及びR6は前記の定義のとおりであり、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)、 前記式VIの化合物を下記一般式IVのグルコノラクトンに添加し、
【化8】

(式中、R4は前記の定義のとおりである)
得られた付加物を、酸の存在下、水又はアルコールR'-OH(R’はC1-6-アルキルを表す)と反応させ、R’が水素である場合の水との反応で得た生成物は、さらに引き続きアシル化剤との反応で式III'の生成物(式中、R’は(C1-4-アルキル)カルボニル、(C1-4-アルキル)オキシカルボニル、アリールカルボニル又はアリール-(C1-3-アルキル)-カルボニルを表し、「アリール」という用語は前記定義のとおりとする)に変換してもよいことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
前記式III'の化合物を還元剤と反応させて、式II'の化合物を得ること特徴とする、請求項3記載の方法。
【化9】

(式中、R2、R6及び各R4は前記の定義のとおりである)
【請求項5】
下記一般式Xで表される化合物の製造方法であって、
【化10】

(式中、R2及び各R4は請求項2の定義のとおりであり、R6は請求項3の定義のとおりである)
式VIIの保護D−グルカールのメタル化を行い、
【化11】

(式中、R4は前記の定義のとおりである)、式VIIIで表されるメタル化D−グルカールを得て、
【化12】

(式中、R4は前記の定義のとおりであり、Mはリチウム又はマグネシウム部位を表す)、さらにトランスメタル化を行ってもよく、式VIIIのメタル化D−グルカール(式中、Mはマグネシウム部位、亜鉛部位、インジウム部位、ホウ素部位、錫部位、珪素部位又はクロム部位を表す)を得て、
前記式VIIIのメタル化又はトランスメタル化D−グルカールを、遷移金属触媒の存在下、式Vのアグリコンと反応させて
【化13】

(式中、R2及びR6は前記の定義のとおりであり、Xは交換可能な基を表す)、式IXのグルカール誘導体を得て、
【化14】

(式中、R2、R6及び各R4は前記の定義のとおりである)
前記式IXのグルカール誘導体のグルカール部位の二重結合に水を添加することにより、詳細には前記二重結合のヒドロホウ素化を行った後に炭素−ホウ素結合の開裂を行うか、或いは、前記二重結合のエポキシ化又はジヒドロキシル化を行った後に得られたアノマー炭素−酸素結合の還元を行うことにより、前記式IXのグルカール誘導体を式Xの生成物に変換することを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
下記一般式Xで表される化合物の製造方法であって、
【化15】

(式中、R2及び各R4は請求項2の定義のとおりであり、R6は請求項3の定義のとおりである)
式VIIで表される保護D−グルカールをエポキシ化して
【化16】

(式中、R4は前記の定義のとおりである)、式XIで表される対応のグルカールオキシドを得て、
【化17】

(式中、R4は前記の定義のとおりである)
前記式XIのグルカールオキシドを式VIのアグリコンと反応させて
【化18】

(式中、R2及びR6は前記の定義のとおりであり、Mはリチウム部位、マグネシウム部位、亜鉛部位、インジウム部位、アルミニウム部位又はホウ素部位を表す)、式Xの生成物を得ることを特徴とする、製造方法。
【請求項7】
下記一般式II'で表される化合物の製造方法であって、
【化19】

(式中、R2及び各R4は請求項2の定義のとおりであり、R6は請求項3の定義のとおりである)
式XIIのグルコース誘導体:
【化20】

(式中、R4は前記の定義のとおりであり、LGはフッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキルカルボニルオキシ、C1-3-アルキルオキシカルボニルオキシ、C1-3-アルキルオキシ又はトリクロロアセトイミダートを示す)を、式VIのメタル化アグリコンと反応させ、
【化21】

(式中、R2は前記の定義のとおりであり、R6は請求項3の定義のとおりであり、Mはリチウム部位、マグネシウム部位、亜鉛部位、インジウム部位又はホウ素部位を表す)、式II'の生成物を得ることを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
前記式Xの生成物において、ピラノジル環の2位のヒドロキシル基が、水素ではないR4基で保護され、前記式II'の化合物を得ることを特徴とする、請求項5又は6記載の製造方法。
【化22】

(式中、R2、R6及び各R4は前記の定義のとおりである。)
【請求項9】
前記R6基が、下位式:
【化23】

(式中、R1は請求項1の定義のとおりである)を表される基を示す、請求項3、4、5、6、7又は8記載の製造方法。
【請求項10】
請求項5又は6により得られた前記式Xの生成物、或いは、請求項4、7又は8により得られた前記式II'の生成物において、水素ではない保護基R4を開裂して請求項1で定義した式Iの化合物を得ることを特徴とする、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記R6基が、水素、C1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを示し、前記アリールが請求項1で定義されたとおりである、請求項4、5、6、7又は8記載の製造方法。
【請求項12】
下記一般式XXVI'で表される化合物の製造方法であって、
【化24】

(式中、R2及びR4は請求項2の定義のとおりであり、
13は、-CHO、-C≡C-R1、OH、C1-6-アルキルオキシ、-Si(C1-6-アルキル)3、-C≡C-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(アリール)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-Si(ビフェニル)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-C(OH)(C1-4-アルキル)2、ヨウ素、臭素、塩素又はC1-6-アルキルスルホニルオキシを示し、R1は請求項1の定義のとおりである)
式Xの化合物において
【化25】

(R2及び各R4は前記の定義のとおりであり、
6は水素、OH、C1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを示す)又は
式II'の化合物において
【化26】

(R2、R6及び各R4は前記の定義のとおりである)、
6基をZ4基に変換してもよく、式XXXIXの化合物を得て、
【化27】

(R2及び各R4は前記の定義のとおりであり、
4は塩素、臭素、ヨウ素、C1-6-アルキルオキシ、アリールオキシ、C1-6-アルキルカルボニルオキシ、C1-6-アルキルオキシカルボニルオキシ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、-OPO(O-C1-6-アルキル)2又はアリールオキシを示す)
前記式XXXIXの化合物を式XXIIIで表されるメタル化ベンゼンと反応させて、式XXVI'の化合物を得ることを特徴とする製造方法。
【化28】

(式中、R13は前記の定義のとおりであり、
3はリチウム部位、ホウ素部位、マグネシウム部位、珪素部位、錫部位、セリウム部位、インジウム部位、亜鉛部位又はクロム部位を示す。)
【請求項13】
前記式XXVI'の化合物において、-C≡C-R1ではないR13基を、-C≡C-R1に変換する(式中、R1は請求項1で定義したとおりである)ことを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記R13基が-C≡C-R1を示すことを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項15】
前記XXVI'の生成物において、水素ではない保護基R4を開裂して、請求項1記載の式Iの化合物を得ることを特徴とする、請求項13又は14記載の製造方法。
【請求項16】
a)式Xの化合物を出発物質として使用する場合、前記化合物が請求項5又は6の製造方法により得られたか、或いは、
b)式II'の化合物を出発物質として使用する場合、前記化合物が請求項4、7又は8の製造方法により得られたことを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項17】
前記R4基の1個以上が、互いに独立して水素、(C1-6-アルキル)カルボニル、(C1-6-アルキル)オキシカルボニル、(C3-6-アルケニル)オキシカルボニル、アリールカルボニル、アリール-メチル、C1-6-アルコキシメチル、RaRbRcSi、CRaRbORcを表し、2つの隣接するR4基が互いに結合して橋架け基SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成してもよく、前記において各アルキルが、フッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、Ra、Rb、Rc及びアリールが請求項1の定義のとおりである、請求項1〜16のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項18】
前記R1基が水素、或いは
C1-4-アルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニルを表し、これらは1個又は2個の置換基L2で置換されていてもよいことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項19】
下記一般式II'又は一般式Xで表される化合物。
【化29】

【化30】

(式中、R2及び各R4は請求項2の定義のとおりであり、R6は請求項3の定義のとおりである。)
【請求項20】
6が、パラ-R7-フェニル-、C1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを表し、
7が、-OSO2R、-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(C1-4-アルキル)3、-C≡C-Si(アリール)(C1-4-アルキル)2、-C≡C-Si(ビフェニル)(C1-4-アルキル)2を表し、
Rが、C1-4-アルキル、CF3、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを表し、前記アリール基がL1でモノ置換又はポリ置換されていてもよく、
アリールが請求項1で定義したとおりである、請求項19記載の一般式II'又はXで表される化合物。
【請求項21】
6が、C1-6-アルキルオキシ又はアリールオキシを表し、
各R4が互いに独立して、アルキル基がC1-4-アルコキシで置換されている(C1-6-アルキル)-カルボニル、(C1-6-アルキル)-オキシカルボニル、(C3-6-アルケニル)カルボニル、(C3-6-アルケニル)オキシカルボニル、ジ-(C1-6-アルキル)アミノカルボニル、アリールカルボニル、RaRbRcSi-又は-CRaRbORcからなる群から選択されるか、あるいは、2個の隣接するR4基が互いに結合して橋架け基SiRaRb、C=O、CRaRb又はCRaORb-CRaORbを形成してもよく、前記の各アルキル基は、フッ素、塩素、C1-3-アルキル、RaRbRcSi、C1-4-アルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、
Ra、Rb、Rc及びアリールが請求項1で定義したとおりである、請求項19記載の一般式II'又はXで表される化合物。
【請求項22】
下記一般式IXで表される化合物。
【化31】

(式中、R2、R6及び各R4は請求項19、20又は21の定義のとおりである。)

【公表番号】特表2009−507898(P2009−507898A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530526(P2008−530526)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066347
【国際公開番号】WO2007/031548
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】