説明

グレイコードカウンタおよび表示装置

【課題】遅延フリップフロップの個数を少なくして、消費電流を低減したグレイコードカウンタを提供する。
【解決手段】グレイコードカウンタは、グレイコードの各ビットQ3,Q2,Q1,Q0を保持する4つのDFF11,12,13,14、参照ビットQbを作成するための参照ビット作成回路30、(Qb,Q0,Q1)をデコードするデコード回路を備えている。4つのDFF11,12,13,14はリセット信号RESETでリセットされ、基準クロックCLKに同期してデータを保持し、かつ遅延する。つまり、DFF11,12,13,14は、基準クロックCLKの立ち上がりに同期して、データ入力端子Dからあるデータを取り込んで保持し、次の基準クロックCLKの立ち上がりに同期してそのデータをデータ出力端子Qから出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックをカウントし、そのカウント値に応じたグレイコードを生成するグレイコードカウンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クロックをカウントし、そのカウント値に応じてグレイコードを出力するグレイコードカウンタが知られている。グレイコードは、1つのビットの値のみが「0」から「1」に、又は「1」から「0」に変化するコードである。グレイコードカウンタは、カウントの動作速度が速く、しかも、カウントエラーを低減することができる。
【0003】
図5は、4ビットのグレイコードカウンタのアルゴリズムを示す図である。Q[3],Q[2],Q[1],Q[0]はグレイコードであり、Q[00]は、グレイコード作成用のために追加されたビットである。グレイコードは1クロック毎に1つのビットのみが変化する。Q[1]が「0」から「1」、又は「1」から「0」に変化する場合、1クロック前の状態(即ち、Q[1]が変化する直前の状態)において、Q[00]=0、Q[0]=1である。また、Q[2]が「0」から「1」、又は「1」から「0」に変化する場合、1クロック前の状態において、Q[00]=0、Q[0]=0、Q[1]=1である。また、Q[3]が「0」から「1」、又は「1」から「0」に変化する場合、1クロック前の状態において、Q[00]=0、Q[0]=0、Q[1]=0である。従って、Q[1],Q[0],Q[00]をデコードすることにより、グレイコードの生成が可能である。
【0004】
図6は、図5のアルゴリズムに基づいて作成されたグレイコードカウンタの回路図である。Q[00]を作成するために、順序回路である遅延フリップフロップ(以下、DFFという)101が設けられる。DFF101は基準クロックCLKに同期して動作し、その出力はインバータ102を介して入力に帰還されている。従って、DFF101の出力であるQ[00]は基準クロックCLKを1/2分周したクロックになる。
【0005】
また、Q[0]を作成するためには、排他的論理和回路112により、Q[0]とQ[00]との排他的論理和をとり、その出力をDFF111で保持する。また、Q[1]を作成するためには、AND回路123でQ[00]の反転値とQ[0]の論理積をとり、排他的論理和回路122により、AND回路123の出力とQ[1]の排他的論理和をとり、その出力をDFF121で保持する。また、Q[2]を作成するためには、AND回路133でQ[00]の反転値とQ[0]の反転値とQ[1]の論理積をとり、排他的論理和回路132により、AND回路133の出力とQ[2]の排他的論理和をとり、その出力をDFF131で保持する。また、Q[3]を作成するためには、AND回路143でQ[00]の反転値とQ[0]の反転値とQ[1]の反転値の論理積をとり、排他的論理和回路142により、AND回路143の出力とQ[3]の排他的論理和をとり、その出力をDFF141で保持する。
【0006】
上述した回路によれば、単純で高速なグレイコードカウンタを構成することができる。なお、この種のグレイコードカウンタについては、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−111482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のグレイコードカウンタにおいては、Q[00]に対応して余分なDFF101を設ける必要があり、そのDFF101の動作周波数が高いために、消費電流が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、クロックをカウントし、そのカウント値に応じたグレイコードを生成するグレイコードカウンタであって、グレイコードの第1ビット(最下位ビット)の1クロック前の値である参照ビットを作成する参照ビット作成回路と、参照ビット及びグレイコードをデコードして、1クロック後のグレイコードを作成するデコーダ回路と、グレイコードの各ビットに対応して設けられ、参照ビット作成回路及びデコーダ回路の出力をクロックに同期して保持し、かつ遅延する複数の順序回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグレイコードカウンタによれば、余分な順序回路を設ける必要がなくなり、消費電流を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態によるグレイコードカウンタについて図面を参照しながら説明する。図1は、4ビットのグレイコードカウンタのアルゴリズムを示す図である。Q3,Q2,Q1,Q0はグレイコードであり、Q1に対して、1クロック前の値である参照ビットQbが設けられている。Q0は第1ビット(最下位ビット)、Q1は第2ビット,Q2は第3ビット、Q3は第4ビットに対応している。
【0011】
Q1が「0」から「1」、又は「1」から「0」に変化する場合、1クロック前の状態(即ち、Q1が変化する直前の状態)において、Qb=1、Q0=1である。また、Q2が「0」から「1」、又は「1」から「0」に変化する場合、1クロック前の状態において、Qb=0、Q0=0、Q1=1である。また、Q3が「0」から「1」、又は「1」から「0」に変化する場合、1クロック前の状態において、Qb=0、Q0=0、Q1=0である。従って、(Qb,Q0,Q1)をデコードすることにより、グレイコードの生成が可能である。
【0012】
ここで、参照ビットQbを作成するには、グレイコードからバイナリコードへの変換を行う。グレイコードとバイナリコードとの対比を図2に示す。これから、バイナリコードの第2ビットA1の反転値が参照ビットQbに相当していることがわかる。参照ビットQbを論理演算で作成するには、グレイコードの第3ビットQ2と第4ビットQ3との排他的論理和をとり、更にその排他的論理和の出力と第2ビットQ1との排他的論理和をとり、更に排他的論理和の出力を反転すればよい。
【0013】
図3は、図1のアルゴリズムに基づいて作成されたグレイコードカウンタの回路図である。このグレイコードカウンタは、グレイコードの各ビットQ3,Q2,Q1,Q0を保持する4つのDFF11,12,13,14、参照ビットQbを作成するための参照ビット作成回路30、(Qb,Q0,Q1)をデコードするデコード回路を備えている。4つのDFF11,12,13,14はリセット端子Rに印加されるリセット信号RESETでリセットされ、クロック入力端子Cに印加される基準クロックCLKに同期してデータを保持し、かつ遅延する。つまり、DFF11,12,13,14は、基準クロックCLKの立ち上がりに同期して、データ入力端子Dからあるデータを取り込んで保持し、次の基準クロックCLKの立ち上がりに同期してそのデータをデータ出力端子Qから出力する。
【0014】
参照ビット作成回路30は、前述のアルゴリズムに従って、Q2とQ3の排他的論理和をとる第1の排他的論理和回路32とこの第1の排他的論理和回路32の出力とQ1の排他的論理和をとる第2の排他的論理和回路31とからなる変換回路と、第2の排他的論理和回路31の出力を反転するインバータ33から構成されている。また、デコーダ回路は、3つのAND回路42,43,44と3つのセレクタ回路22,23,24から構成されている。
【0015】
Q0を作成するためには、参照ビット作成回路30で作成されたQbをDFF11で保持する。Q1を作成するためには、AND回路42でQbとQ0の論理積をとり、その出力を選択信号としてセレクタ22に入力する。セレクタ22は選択信号が「1」のときはQ1の反転値Q1を選択し、選択信号が「0」のときはQ1を選択して、それをDFF12に入力して保持する。また、Q2を作成するためには、AND回路43でQbの反転値とQ0の反転値Q0とQ1の論理積をとり、その出力を選択信号としてセレクタ23に入力する。セレクタ23は選択信号が「1」のときはQ2の反転値Q2を選択し、選択信号が「0」のときはQ2を選択して、それをDFF13に入力して保持する。また、Q3を作成するためには、AND回路44でQbの反転値とQ0の反転値Q0とQ1の反転値の論理積をとり、その出力を選択信号としてセレクタ24に入力する。セレクタ24は選択信号が「1」のときはQ3の反転値Q3を選択し、選択信号が「0」のときはQ3を選択して、それをDFF14に入力して保持する。
【0016】
このように、本発明のグレイコードカウンタによれば、グレイコードのビット数と同じ個数の遅延フリップフロップを設ければよく、従来例に比して遅延フリップフロップの個数を1つ減らして、消費電流を低減することができる。
【0017】
従って、例えば、本発明のグレイコードカウンタを、携帯電話機やデジタルスチルカメラなどの携帯機器の液晶表示装置のタイミングコントローラに用いれば、電池の消費を抑えて、使用可能時間の延長に貢献することができる。図4は、本発明のグレイコードカウンタを液晶表示装置のタイミングコントローラに適用した例を示した概略構成図である。
【0018】
図4に示すように、液晶表示装置1のタイミングコントローラ2は、本発明のグレイコードカウンタ3と、このグレイコードカウンタ3の出力を基に垂直駆動スタート信号STVや水平駆動スタート信号STHを生成して垂直ドライバ1Vや水平ドライバ1Hに供給するデコーダ4を備えている。このようなグレイコードカウンタ3は、液晶表示装置1の表示パネル1P上において、低温ポリシリコン技術を用いて表示パネル1Pを構成するガラス基板上に回路集積を行うシステム・オン・グラス(SOG)技術により、表示パネル1Pの画素電極が形成されたガラス基板と同じガラス基板上に形成されてもよい。これにより、半導体部品点数の削減、組立の簡便化ができ、外部回路基板も縮小でき、全体として小型・軽量化を実現することができる。
【0019】
なお、上記回路において、AND回路42,43,44の出力が「1」のときに、対応するDFF12,13,14の出力を反転させる必要がある。そのために、従来例のように排他的論理和回路を用いることもできるが、本発明のようにセレクタ22,23,24を用いることで素子数を少なくすることができる。
【0020】
また、上記実施の形態では、4ビットのグレイコードカウンタの例を説明したが、本発明は、3ビット以上のグレイコードカウンタであれば、同様に適用することができる。例えば、3ビットのグレイコードカウンタの場合は、変換回路として、グレイコードの第2ビット(n−1ビット)と第3ビット(nビット)の排他的論理和を作成する第1の排他的論理和回路と、この第1の排他的論理和回路の出力を反転する反転回路(即ちインバータ)を備えることができる。また、5ビットのグレイコードカウンタの場合は、変換回路として、グレイコードの第4ビット(n−1ビット)と第5ビット(nビット)の排他的論理和を作成する第1の排他的論理和回路と、この第1の排他的論理和回路の出力とグレイコードの第3ビット(n−2ビット)の排他的論理和を作成する第2の排他的論理和回路と、この第2の排他的論理和回路の出力とグレイコードの第2ビット(n−3ビット)の排他的論理和を作成する第3の排他的論理和回路と、この第3の排他的論理和回路の出力を反転する反転回路(即ちインバータ)を備えることができる。
【0021】
また、上記実施の形態では、順序回路として、遅延フリップフロップを使用した例を説明したが、ラッチなどを用いて、遅延フリップフロップと同様の機能を有した順序回路を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態によるグレイコードカウンタのアルゴリズムを示す図である。
【図2】グレイコードとバイナリコードとの対比を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態によるグレイコードカウンタを示す回路図である。
【図4】本発明の実施形態によるグレイコードカウンタを液晶表示装置のタイミングコントローラに適用した例を示した概略構成図である。
【図5】従来例によるグレイコードカウンタのアルゴリズムを示す図である。
【図6】従来例によるグレイコードカウンタを示す回路図である。
【符号の説明】
【0023】
11,12,13,14 DFF
22,23,24 セレクタ回路
30 参照ビット作成回路
31,32 排他的論理和回路
33 インバータ
42,43,44 AND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロックをカウントし、そのカウント値に応じたグレイコードを生成するグレイコードカウンタであって、
グレイコードの第1ビット(最下位ビット)の1クロック前の値である参照ビットを作成する参照ビット作成回路と、
前記参照ビット及び前記グレイコードをデコードして、1クロック後のグレイコードを作成するデコーダ回路と、
前記グレイコードの各ビットに対応して設けられ、前記参照ビット作成回路及び前記デコーダ回路の出力を前記クロックに同期して保持し、かつ遅延する複数の順序回路と、を備えることを特徴とするグレイコードカウンタ。
【請求項2】
前記グレイコードカウンタは、n(n>=3)ビットのグレイコードを生成するグレイコードカウンタであって、前記nビットと同数のn個の順序回路を備えることを特徴とする請求項1に記載のグレイコードカウンタ。
【請求項3】
前記参照ビット作成回路は、前記グレイコードをバイナリコードに変換する変換回路を備え、そのバイナリコードの第2ビットの反転値を前記参照ビットとすることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載のグレイコードカウンタ。
【請求項4】
前記変換回路は、少なくとも、前記グレイコードの第n−1ビットと第nビットの排他的論理和を作成する第1の排他的論理和回路とを備えることを特徴とする請求項3に記載のグレイコードカウンタ。
【請求項5】
前記変換回路は、さらに、前記第1の排他的論理和回路の出力と前記グレイコードの第n−2ビットの排他的論理和を作成する第2の排他的論理和回路を備えることを特徴とする請求項4に記載のグレイコードカウンタ。
【請求項6】
前記デコーダ回路は、前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビットがいずれも「1」であるときに前記グレイコードの第2ビットの反転値を出力する第1の論理回路と、
前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビットがいずれも「0」であり、前記グレイコードの第2ビットが「1」のときに、前記グレイコードの第3ビットの反転値を出力する第2の論理回路と、
前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビット及び第2ビットがいずれも「0」のときに、前記グレイコードの第4ビットの反転値を出力する第3の論理回路と、を備え、
前記第1、第2及び第3の論理回路の出力を対応する前記順序回路に入力したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のグレイコードカウンタ。
【請求項7】
前記第1の論理回路は、前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビットがいずれも「1」であるときに、前記グレイコードの第2ビットの反転値を出力し、前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビットのいずれかが「0」であるときに、前記グレイコードの第2ビットをそのまま出力する第1のセレクタを備え、
前記第2の論理回路は、前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビットがいずれも「0」であり、前記グレイコードの第2ビットが「1」のときに、前記グレイコードの第3ビットの反転値を出力し、前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビットのいずれかが「1」であるか、又は前記グレイコードの第2ビットが「0」のときに、前記グレイコードの第3ビットをそのまま出力する第2のセレクタを備え、
前記第3の論理回路は、前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビット及び第2ビットがいずれも「0」のときに、前記グレイコードの第4ビットの反転値を出力し、前記参照ビット、前記グレイコードの第1ビット及び第2ビットのいずれかが「1」のときに、前記グレイコードの第4ビットをそのまま出力する第3のセレクタを備えることを特徴とする請求項6に記載のグレイコードカウンタ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のグレイコードカウンタを備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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