説明

グレーチング跳ね上がり防止金具

【課題】グレーチングの嵩上げパイプと隣接設置されるコンクリート蓋とを有効利用しつつ、グレーチングに簡単に取付けて側溝の上面開口部に設置でき、グレーチングの跳ね上がりを確実に防止し得るグレーチング跳ね上がり防止金具を提供する。
【解決手段】グレーチングの左右の嵩上げパイプに嵌挿可能な取付部と、該取付部の軸方向の一方の端部に延設された蓋係合体を有する係合部と、を備え、取付部をグレーチングの嵩上げパイプに嵌挿させた状態で当該グレーチングが側溝の段差上に設置されると共に、係合部の蓋係合体をグレーチングに隣接状態で側溝の段差上に設置されるコンクリート蓋の端部下面に係合させたことを特徴とする。前記取付部は、グレーチングの左右の嵩上げパイプの互いに異なる前後端部に嵌挿されることにより、平面視方形状のグレーチングの対角線位置に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に併設された側溝の上面開口部に設置されるグレーチングが、走行車両によって跳ね上げられるのを防止するためのグレーチング跳ね上がり防止金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グレーチングの跳ね上がりを防止するものとして、例えば特許文献1に開示の跳ね上がり防止具が提案されている。この跳ね上がり防止具(跳ね上がり防止金具)は、固定板部を有する固定体及び先端にフック状の係止部を有する移動体を備えた固定金具と、下端が固定金具の係止部に係止され上端がグレーチングに係止される係止体とで構成されている。そして、固定体の固定板部を2本の固定ボルトで側溝の内壁に固定し、この固定板部とグレーチングとを係止体で係止させることにより、グレーチングの側溝の上面開口部からの跳ね上がりが防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−48588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような跳ね上がり防止金具にあっては、固定金具の固定板部を側溝の内壁に複数本のボルトにより固定するため、側溝にネジ孔を有するアンカー等を打ち込む作業等が必要となり、跳ね上がり防止金具の取付けに時間が掛かったりネジ込み作業自体が面倒となり易い。また、跳ね上がり防止金具が固定金具と係止体の別部材からなる2つの部材で構成されているため、部材の管理や取付け時の両部材の位置決め作業等が面倒になり易く、結果として、跳ね上がり防止金具を既存の側溝に簡単に取付けることが難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、グレーチングの嵩上げパイプと隣接設置されるコンクリート蓋とを有効利用しつつ、グレーチングに簡単に取付けて側溝の上面開口部に設置でき、グレーチングの跳ね上がりを確実に防止し得るグレーチング跳ね上がり防止金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、側溝の上面開口部の段差上に設置されるグレーチングの左右の嵩上げパイプに嵌挿可能な取付部と、前記取付部の軸方向の一方の端部に該取付部と略同軸方向外側に延設された蓋係合体を有する係合部と、を備え、前記取付部を前記グレーチングの嵩上げパイプに嵌挿させた状態で当該グレーチングが前記側溝の段差上に設置されると共に、前記係合部の蓋係合体を前記グレーチングに隣接状態で側溝の段差上に設置されるコンクリート蓋の端部下面に係合させたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記取付部が、前記グレーチングの左右の嵩上げパイプの互いに異なる前後端部に嵌挿されることにより、平面視方形状のグレーチングの対角線位置に取付けられることを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、前記係合部が、前記取付部の一方の端部に該取付部の軸方向と直交する方向に延設された板体を有し、該板体の先端部下面に棒状もしくは板状の長尺状に形成された前記蓋係合体の基端部が固着されると共に、該蓋係合体の先端部の高さ位置が前記側溝の段差より下方の溝内に位置し得る如く設定されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、前記係合部が、前記取付部の一方の端部に固着された第1の板体と、該第1の板体に第1の回動軸により水平面内において回動可能に連結された第2の板体とを有し、前記第2の板体の先端部に前記蓋係合体が第2の回動軸により水平面内で回動可能で上下方向に移動可能に配設されていることを特徴とする。また、請求項5に記載の発明は、前記蓋係合体が、第2の回動軸に嵌装されたバネにより上下動可能に配設されると共に、該第2の回動軸を専用治具で上方から操作することにより水平面内で回動可能に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、跳ね上がり防止金具の取付部を嵩上げパイプに嵌挿した取付け状態で、グレーチングを側溝の段差上に設置すると共に、該防止金具の係合部の蓋係合体をグレーチングに隣接設置されるコンクリート蓋の端部下方に位置させて係合した状態で、コンクリート蓋が側溝の段差上に設置されるため、グレーチングの嵩上げパイプとコンクリート蓋を有効利用しつつ、跳ね上がり防止金具を既存の側溝であっても、その上面開口部の段差上に設置されるグレーチングに簡単に取付けることができると共に、該跳ね上がり防止金具の蓋係合体とコンクリート蓋の重量による係合でグレーチングの跳ね上がりを確実に防止することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、取付部が平面視方形状のグレーチングの対角線位置に取付けられるため、跳ね上がり防止金具の使用個数を必要最低限の2個とすることができて、取付け作業コストや部材コストを低減させて、跳ね上がり防止金具を安価に形成することができる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、係合部が取付部の端部に固着されて先端部が側溝の段差より内側に位置する板体と、該板体の先端部下面に固着されて側溝の段差より下方の溝内に位置する長尺状の蓋係合体とを有するため、取付部をグレーチングの嵩上げパイプに嵌挿固定するだけで、蓋係合体をコンクリート蓋の端部下方に確実に位置させることができて、跳ね上がり防止金具のグレーチングへの取付け作業を一層簡単に行うことができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、係合部が互いに回動可能な第1の板体及び第2の板体を有し、第2の板体の先端部に蓋係合体が回動可能で上下方向に移動可能に配設されているため、蓋係合体の位置をグレーチングの形態に応じて回動させてコンクリート蓋に確実に係合できて、跳ね上がり防止金具を各種形態のグレーチングに簡単に取付けることができる。
【0013】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、蓋係合体が第2の回動軸に嵌装されたバネで上下動可能に配設されて専用治具の押圧操作で回動したり上下動するため、第2の回動軸の位置をグレーチングの桟間に位置させて、その表面側から専用治具の操作で蓋係合体の回動操作を行うことができ、各種形態のグレーチングに一層容易に対応することができると共に、専用治具の使用によりグレーチングの安易な取り外しを抑制してグレーチングの盗難防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係わるグレーチング跳ね上がり防止金具の一実施形態を示す斜視図
【図2】同その横断面図
【図3】同正面図
【図4】同跳ね上がり防止金具のグレーチングへの取付け状態を示す斜視図
【図5】同その正面図
【図6】同その要部の縦断面図
【図7】本発明に係わるグレーチング跳ね上がり防止金具の他の実施形態を示す斜視図
【図8】同その一部破断した平面図
【図9】同正面図
【図10】同要部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は、本発明に係わる跳ね上がり防止金具の一実施形態を示している。図1〜図3に示すように、跳ね上がり防止金具1(防止金具1という)は、例えば50〜100mm程度の所定長さL1を有する角筒状の取付部2と、この取付部2の軸方向の一方の端部2aに溶接固定された係合部3を有している。前記取付部2は、例えば鉄製の角パイプからなり、その外形形状が、後述するグレーチング10の嵩上げパイプ11の内形形状と略同一か若干小さく設定されて、嵩上げパイプ11内に嵌挿可能に形成されている。
【0016】
前記係合部3は、正面部と側面部を有して平面視L字形状に折り曲げ形成された板体4と、垂直部と水平部を有して正面視L字形状に折り曲げ形成された板体5と、所定長さの丸棒状の蓋係合体6を有している。そして、板体4の正面部が取付部2の一方の端部2aの端面に溶接固定され、この板体4の側面部に板体5の垂直部が溶接固定されている。また、係合部3の先端部となる板体5の水平部の裏面(下面)には、蓋係合体6の基端部6aが溶接固定されており、これにより蓋係合体6の先端部6bが取付部2と略同軸方向で外側(図1の右側)に所定寸法L2延設(突出)された状態となっている。
【0017】
また、前記板体4は、正面部の長さを取付部2の左右幅より大きく設定することで、その側面部と取付部2の側面部との間に所定の間隙7が形成されており、これにより、図4及び図5に示すように、取付部2がグレーチング10の嵩上げパイプ11に嵌挿された際に、側面部に固定される板体5が後述する側溝12の溝12a上に位置するように設定されている。また、板体5は、その水平部の高さ位置が、板体4の正面部や側面部の下端(取付部2の底面)より所定寸法下方に位置して、水平部に固定される蓋係合体6が側溝12の溝12a上部で後述する段差12bより下方に位置するように設定されている。
【0018】
なお、前記板体4の正面部は、取付部2の外形より大きく形成されており、取付部2がグレーチング10の嵩上げパイプ11に嵌挿された際のストッパとして機能するようになっている。また、板体4の正面部で取付部2に対応する位置には、例えば防止金具1の軽量化を図ったり、取付部2内のメッキをし易くするための開口8が必要に応じて設けられている。そして、係合部3の板体4と板体5及び蓋係合体6と取付部2は互いに溶接固定されて一つの部材となり、その表面にドフ漬けによりグレーチング10と同様の溶融亜鉛メッキが施されている。
【0019】
次の、このように構成された防止金具1の取付け方法(使用方法)の一例について説明する。先ず、前記防止金具1が取付けられるグレーチング10は、図4に示すように、平面視長方形状もしくは正方形状の方形状に溶接固定された外周板10aと、この外周板10a間に一定間隔で溶接固定された複数の縦桟10bと、この縦桟10b間に一定間隔で溶接固定された多数の横桟10cとで平面視格子状に形成されている。また、グレーチング10の左右幅方向の両側下面には、全長に亘って角パイプからなる嵩上げパイプ11が溶接固定されている。
【0020】
一方、このような嵩上げパイプ11を有するグレーチング10が設置される側溝12は、図4及び図5に示すように、底壁部と両側壁部を有して正面視U字形状の溝12aを有し、この溝12aの上面開口部である両側壁の上部には、側溝12の長手方向の全長に亘って段差12bがそれぞれ形成されている。そして、例えば既存の側溝12の段差12b上に、前記係止金具1が取付けられたグレーチング10が次のようにして設置される。
【0021】
すなわち、既存の側溝12に設置されているグレーチング10と、このグレーチング10の長手方向(前後方向)の両端部に隣接設置されている一対のコンクリート蓋13を側溝12から取り外し、グレーチング10の2本の嵩上げパイプ11の異なる前後端部に、2個の防止金具1の取付部2をそれぞれ嵌挿させて取付ける。これにより、図6に示すように、防止金具1の取付部2が嵩上げパイプ11の端部に嵌挿され、係合部3の板体4の正面部が嵩上げパイプ11の端部の端面に当接した状態となる。また、係合部3の板体5の水平部が嵩上げパイプ11の下面(段差12b)より下方に位置し、かつ係合部3の蓋係合体6の先端部6bがグレーチング10の外方でコンクリート蓋13が設置されていた溝12a内に所定寸法突出した状態となっている。
【0022】
2個の防止金具1をグレーチング10の対角線位置に取付けたら、このグレーチング10を、取り外した側溝12の段差12b上に載置して設置し、このグレーチング10の両端部の側溝12の段差12b上に、図6に示すように、取り外したコンクリート蓋13を設置する。このとき、コンクリート蓋13は、取り外し前と同じ位置に設置され、グレーチング10との間に段差の発生がなくなると共に、コンクリート蓋13のグレーチング10側の端部13a下面が、溝12a内に突出している防止金具1の蓋係合体6と僅かな隙間(例えば1〜7mm程度)を有するかもしくは接触して係合した状態となる。
【0023】
このコンクリート蓋13の設置をグレーチング10の両端部で行うことにより、グレーチング10の対角線の両端部に取付けた各防止金具1の蓋係合体6が、隣接する各コンクリート蓋13の端部13aにそれぞれ係合し、グレーチング11上を車両が走行してグレーチング11が跳ね上がろうとしても、コンクリータ蓋13の重量が防止金具1の蓋係合体6に作用する状態(係合状態)となって、グレーチング10の上方への移動、すなわち跳ね上がりが防止される。
【0024】
つまり、グレーチング10の嵩上げパイプ11の対角線位置に2個の防止金具1の各取付部2をそれぞれ嵌挿させて取り付け、このグレーチング10を側溝12の段差12b上に設置すると共に、グレーチング10の両端部にコンクリート蓋13を設置するだけで、各防止金具1の蓋係合体6がコンクリート蓋13の端部13aにそれぞれ自動的に係合した状態となって、グレーチング10の跳ね上がりが防止されることになる。
【0025】
なお、グレーチング10とコンクリート蓋13の設置状態において、例えば側溝12の清掃や保守を行うために、グレーチング10を側溝12から取り外す場合は、グレーチング10に隣接するコンクリート蓋13を側溝12の段差12b上から取り外すだけで、防止金具1とコンクリート蓋13の係合状態が自動的に解除され、グレーチング10の取り外しが可能になる。
【0026】
ところで、以上の取付け方法は、既存の側溝12に限らず、新設の側溝12にも適用することができる。また、以上の例では、既存のグレーチング10と隣接するコンクリート蓋13を側溝12の上面開口部から取り外した状態で防止金具1を取付けたが、例えば適宜の工具や重機等を使用して、隣接するグレーチング10とコンクリート蓋13の端部13aを側溝12上に所定高さそれぞれ持ち上げた状態で行うこともできる。さらに、グレーチング10が側溝12の端部に設けられる場合には、1個の防止金具1のみを取付けるようにしても良いし、2個の防止金具1を使用して、側溝12の端面に図示しない1個の係合孔等を穿設し、この係合孔に2個目の防止金具1の蓋係合体6の先端部6bを挿入して係合させるようにすれば良い。
【0027】
また、以上の例では、2個の防止金具1を併設された2本の嵩上げパイプ11の前端部と後端部にグレーチング10の斜め対角線状に取付けたが、例えば図2に二点鎖線で示すように、取付部2に対して係合部3の蓋係合体6を逆位置に設けた防止金具1aを準備し、この係止金具1aと前記係止金具1とを使用して、各嵩上げパイプ11の両端部に合計4個の防止金具1、1aを取付けるようにしても良い。
【0028】
このように、前記防止金具1によれば、長さL1の取付部2を嵩上げパイプ11に嵌挿した状態でグレーチング10を側溝12の段差12b上に設置すると共に、蓋係合体6をグレーチング10に隣接設置されるコンクリート蓋13の端部13a下方に位置した状態で側溝12の段差12b上に設置するため、グレーチング10の嵩上げパイプ11とコンクリート蓋13とを有効利用しつつ、防止金具1を既存の側溝12であっても、その上面開口部の段差12b上に設置されるグレーチング10に簡単に取付けることができる。
【0029】
特に、従来のように、側溝12への加工やネジによる取付け部分がなくなることから、防止金具1のグレーチング10への取付け作業を含め、グレーチング10やコンクリート蓋13の設置作業等を極めて簡単かつ効率的に行うことができて、既存の側溝12への適用を安価に行うことが可能になる。
【0030】
また、係合部3が、取付部2の端部2aに固着されて先端部が側溝12の段差12bより内側に位置する板体4、5と、この板体4、5の先端部下面に固着されて側溝12の段差12bより下方の溝12a内に位置する長尺状の蓋係合体6を有するため、取付部2をグレーチング10の嵩上げパイプ11に嵌挿して取付けるだけで、蓋係合体6をコンクリート蓋13の端部13a下方に確実に位置させることができて、防止金具1の取付け作業を一層簡単に行うことができる。
【0031】
また、防止金具1の蓋係合体6がコンクリート蓋13の端部13aに下面から係合するだけで、グレーチング10の跳ね上がりが防止されるため、蓋係合体6と重量のあるコンクリート蓋13の端部13aとの係合で、グレーチング10の跳ね上がりを確実に防止することができる。特に、グレーチング10と隣接するコンクリート蓋13との係合でグレーチング10の跳ね上がりが防止される構造であることから、走行車両からグレーチング10とコンクリート蓋13に同時に跳ね上がり現象を生じさせる力が加わることがほとんどないことから、グレーチング10の跳ね上がりを一層確実に防止することができる。
【0032】
さらに、防止金具1がグレーチング10の2本の嵩上げパイプ11の対角線位置に取付られるため、防止金具1の個数を必要最低限の2個とすることができて、部材コストを低減させることができる。また、防止金具1が一つの部材で形成されているため、部材の管理や運搬が容易に行えると共に、ドブ付けによるメッキが容易となり、製造コスト等を低減させることができる。これらのことから、安価な防止金具1を得ることができて、既存の側溝12等に容易に対応することができる。
【0033】
図7〜図10は、本発明に係わる防止金具の他の実施形態を示している。以下、前記実施形態と同一部位には同一符号を付して説明する。この実施形態の防止金具15の特徴は、係合部3の蓋係合体6の操作をグレーチング10の表面上から可能にした点にある。すなわち、係合部3は、取付部2の端部2aに溶接固定された板体16と、この板体16の側面部に水平状態で溶接固定された板体17(第1の板体)と、この板体17の水平部に回動軸19(第1の回動軸)より回動可能に連結された板体18(第2の板体)と、この板体18の先端部に回動軸20(第2の回動軸)により回動可能に配設された角棒状の蓋係合体6とを有している。
【0034】
前記板体18は、板体17にその頭部が溶接固定された前記回動軸19としてのボルト19aの下端に、上下一対のナット19b、19cにより図7の矢印イの如く水平面内で回動可能に連結されている。また、この板体18の先端部には、所定高さで内部に軸孔を有する軸部材21の下端が溶接固定され、この軸部材21の軸孔に前記回動軸20としての例えば六角ボルト20aが上下方向に嵌挿されている。このとき、図10に示すように、六角ボルト20aの外周面にはコイルバネ22が嵌装されて、六角ボルト20aを常時所定距離上方に付勢した状態となっている。
【0035】
また、六角ボルト20aの下端は、板体18を貫通してその突出部には蓋係合体6の基端部6aに設けたネジ孔が螺合することにより、六角ボルト20aの下端と蓋係合体6の基端部6aが一体化されている。また、六角ボルト20aの頭部には、専用治具としての六角レンチ25が嵌挿可能な凹部23が設けられおり、この凹部23に六角レンチ25を上方から嵌挿して、図10の矢印ハの如く下方に押圧操作することにより、六角ボルト20aと蓋係合体6の二点鎖線で示す下方への移動動作や図7の矢印ロに示す水平面内での回動動作が可能となっている。なお、板体18の先端部の端面には、蓋係合体6の水平方向の回動を規制する下方に突出したストッパ24が溶接固定されている。なお、蓋係合体6の、取付部2の側面に対する間隙7の寸法や取付部2の底面に対する高さ寸法は、前記防止金具1と略同様に形成されている。
【0036】
そして、蓋係合体6は、六角ボルト20aが六角レンチ25で下方に押圧操作されることにより、コイルバネ22の付勢力に抗して下方に移動して、蓋係合体6とストッパ24との係合状態が解除されて、例えば蓋係合体6が板体18の後方側に格納された状態に設定できるようになっている。この蓋係合体6が格納された状態とは、蓋係合体6が外側に突出しないことから、後述するように、防止金具15を保管したり設置現場に運搬する場合や、グレーチング10を側溝12から取り外す場合等に使用される状態である。
【0037】
一方、この蓋係合体6が格納状態の防止金具15を現場でグレーチング10に取り付ける場合は、六角ボルト20aの頭部を六角レンチ25で下方に押圧して、蓋係合体6とストッパ22の係合状態を解除しつつ蓋係合体6を前方側に回動させた状態とする。このとき、図8に示すように、六角ボルト20a(軸部材21)がグレーチング10の桟10b、10c間に位置するように、板体18を回動軸19を中心にして回動させると共に、蓋係合体6がコンクリート蓋13が設置される位置に突出した状態に設定する。
【0038】
そして、前記防止金具1と同様に取付部2を嵩上げパイプ11に嵌挿することで、防止金具15が取付けられたグレーチング10を側溝12の段差12b上に載置して設置し、このグレーチング10の両端部で側溝12の段差12b上に、コンクリート蓋13をそれぞれ載置して設置する。コンクリート蓋13を設置したら、グレーチング10の桟10b、10c間に六角ボルト20aが位置し、蓋係合体6がコンクリート蓋13に係合していることを確認する。これにより、防止金具15が取付けられたグレーチング10とコンクリート蓋13の設置作業が完了する。この設置状態において、グレーチング10の両端部に取付けられた防止金具15の蓋係合体6が、隣接するコンクート蓋13の端部13aに下面からそれぞれ係合しており、前記防止金具1と同様にグレーチング10の跳ね上がりが防止されることになる。
【0039】
なお、グレーチング10とコンクリート蓋13の設置状態において、例えば側溝12の清掃や保守を行うために、グレーチング10を側溝12から取り外す場合は、先ず、防止金具15の六角ボルト20aの凹部23に、グレーチング10の桟10、10c間の開口を利用して六角レンチ25をグレーチング10の表面側から嵌挿して、六角ボルト20aを下方に押圧操作しつつ、グレーチング10側に回動操作する。これにより、六角ボルト20aと一体となって蓋係合体6がグレーチング10側にストッパ24を回避した状態で回動し、コンクリート蓋13の端部13a下面から離脱した状態となる。この状態で、防止金具15とコンクリート蓋13の係合状態が解除され、グレーチング10を側溝12から取り外すことができる。
【0040】
ところで、この防止金具15の場合、板体18が板体17に対して回動軸19により回動可能となっていることから、例えば図8の二点鎖線aで示すように、グレーチング10の桟10b、10c間の寸法が大きい場合に、板体18を矢印ニの如く回動軸19を中心にして回動させて、グレーチング10の形態(桟10b、10c間の大きさ等)に応じて六角ボルト20aの位置を調整して、六角ボルト20aをグレーチング10の取り外し等の作業がし易い桟10b、10c間に確実に位置させることができる。なお、この例における回動軸19及び回動軸20の構成は、ボルト19aや六角ボルト20aの使用に限らず、他の適宜の回動軸を使用することができる。
【0041】
この実施形態の防止金具15においても、蓋係合体6とコンクンリート蓋13の係合作用により、基本的に前記実施形態の防止金具1と同様の作用効果を得ることができる他に、次のような作用効果が得られる。すなわち、蓋係合体6が板体17及び板体18に対して回動可能に配設されているため、防止金具15の保管時や運搬時に蓋係合体6が外側に突出しないように設定できて、防止金具の15の保管作業や運搬作業を容易かつ安全に行うことができる。また、六角ボルト20aの位置をグレーチング10の桟10b、10c間に確実に位置させることができるため、六角ボルト20aの押圧操作や回動操作をグレーチング10の表面側から行うことができて、各種形態のグレーチング10に的確に対応することができる。
【0042】
また、六角ボルト20aの頭部に専用の六角レンチ25しか嵌挿できない凹部23が設けられているため、六角レンチ25がないと蓋係合体6を回動操作してコンクリート蓋13との係合状態を解除することが困難で、グレーチング10の盗難を確実に防止することができる。特に、板体18にストッパ24が設けられて、設置後の蓋係合体6の回動範囲が規制されていることから、蓋係合体6とコンクリート蓋13との係合状態の安易な解除を困難とし、グレーチング10の盗難防止効果を一層高めることができる。
【0043】
なお、前記各実施形態においては、防止金具1、15の取付部2を断面方形状の角パイプ状としたが、例えば断面コ字状や断面三角形状等に形成して、嵩上げパイプ11内に所定長さ嵌挿可能としても良い。また、前記各実施形態においては、防止金具1、15をグレーチング10とは別体として、グレーチング10に後付けする構成としたが、本発明は、例えばグレーチング10の嵩上げパイプ11に予め防止金具1、15を固定した構成を排除するものではない。
【0044】
さらに、前記各実施形態の取付部2の長さL1や、係合部3の構成、蓋係合体6の形状、設置される側溝12の形態等は、一例であって、例えば前記防止金具1において、板体4と板体5を1枚の板体構造としたり、蓋係合体6として、丸棒状や角棒状に限らず、所定幅と厚さの板形状とする等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、嵩上げパイプを有し側溝の上面開口部の段差上に着脱可能に設置される全てのグレーチングに利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、15・・・・・・・跳ね上がり防止金具
2・・・・・・・・・・取付部
2a・・・・・・・・・端部
3・・・・・・・・・・係合部
4、5・・・・・・・・板体
6・・・・・・・・・・蓋係合体
6a・・・・・・・・・基端部
6b・・・・・・・・・先端部
10・・・・・・・・・グレーチング
11・・・・・・・・・嵩上げパイプ
12・・・・・・・・・側溝
12a・・・・・・・・溝
12b・・・・・・・・段差
13・・・・・・・・・コンクリート蓋
13a・・・・・・・・端部
16、17、18・・・板体
19、20・・・・・・回動軸
19a・・・・・・・・ボルト
20a・・・・・・・・六角ボルト
22・・・・・・・・・コイルバネ
23・・・・・・・・・凹部
24・・・・・・・・・ストッパ
25・・・・・・・・・六角レンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝の上面開口部の段差上に設置されるグレーチングの左右の嵩上げパイプに嵌挿可能な取付部と、前記取付部の軸方向の一方の端部に該取付部と略同軸方向外側に延設された蓋係合体を有する係合部と、を備え、
前記取付部を前記グレーチングの嵩上げパイプに嵌挿させた状態で当該グレーチングが前記側溝の段差上に設置されると共に、前記係合部の蓋係合体を前記グレーチングに隣接状態で側溝の段差上に設置されるコンクリート蓋の端部下面に係合させたことを特徴とするグレーチング跳ね上がり防止金具。
【請求項2】
前記取付部は、前記グレーチングの左右の嵩上げパイプの互いに異なる前後端部に嵌挿されることにより、平面視方形状のグレーチングの対角線位置に取付けられることを特徴とする請求項1に記載のグレーチング跳ね上がり防止金具。
【請求項3】
前記係合部は、前記取付部の一方の端部に該取付部の軸方向と直交する方向に延設された板体を有し、該板体の先端部下面に棒状もしくは板状の長尺状に形成された前記蓋係合体の基端部が固着されると共に、該蓋係合体の先端部の高さ位置が前記側溝の段差より下方の溝内に位置し得る如く設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のグレーチング跳ね上がり防止金具。
【請求項4】
前記係合部は、前記取付部の一方の端部に固着された第1の板体と、該第1の板体に第1の回動軸により水平面内において回動可能に連結された第2の板体とを有し、前記第2の板体の先端部に前記蓋係合体が第2の回動軸により水平面内で回動可能で上下方向に移動可能に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のグレーチング跳ね上がり防止金具。
【請求項5】
前記蓋係合体は、第2の回動軸に嵌装されたバネにより上下動可能に配設されると共に、該第2の回動軸を専用治具で上方から操作することにより水平面内で回動可能に配設されていることを特徴とする請求項4に記載のグレーチング跳ね上がり防止金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−99237(P2011−99237A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254003(P2009−254003)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(508376443)
【Fターム(参考)】