説明

グロメット装着装置

【課題】グロメットの種類や装着方向の向きに左右されずに、グロメットの装着作業が容易に行えるグロメット装着装置を提供する。
【解決手段】グロメットに挿通される拡開爪30がそれぞれ装着された拡開アーム28A,28B,35A,35Bと、各拡開爪30が互いに集合する集合姿勢と互いに離隔する拡開姿勢とに各拡開アーム28A,28B,35A,35Bを姿勢変更操作するための拡開機構と、拡開機構を駆動するモータ19とを備える。装置本体12が縦軸心回りに回動操作自在に支持され、該装置本体12に備えられた各拡開アーム28A,28B,35A,35Bは、一側面側に大径用拡開爪30aがそれぞれ装着されると共に他側面側に小径用拡開爪30bがそれぞれ装着され、各拡開爪30a,30bの接近離隔操作は途中停止制御自在とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、単一のワイヤーハーネスに対して、異種サイズのグロメットを装着するのに適したグロメット装着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスを、例えば自動車のキャビンとエンジンルーム間あるいはキャビンとトランクルーム間の隔壁の孔に通して配線するときには、グロメットと称される鍔付きのゴムブーツを予めワイヤーハーネスに取り付けておき、そのグロメットを隔壁の孔に取付けてワイヤーハーネスの支持とワイヤーハーネス外周の隙間の封止をそのグロメットで行う方法が採用されている。
【0003】
この種のグロメットは、コネクタが取り付けられたワイヤーハーネスに装着するため、ワイヤーハーネスを挿通する際に孔を大きく拡げる必要があり、そのためのグロメット装着装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このグロメット装着装置によれば、複数本の拡開爪を1箇所に集合させた状態で、各拡開爪の外側にグロメットを套嵌し、その後、各拡開爪を互いに離隔する広がった拡開姿勢とする。ここに、グロメットはその内側の孔にワイヤーハーネスが挿通可能な状態に引き伸ばされた状態となる。
【0005】
そして、この状態で、グロメットの孔にワイヤーハーネスを挿通し、その後、ワイヤーハーネスを一対の拡開爪間より外方に引っ張った状態で、各拡開爪間を互いに接近させていく。この際、各拡開爪間にワイヤーハーネスの電線を挟み込まないように引っ張り続ける必要がある。
【0006】
その後、各拡開爪が初期位置の集合姿勢に戻ったところで、各拡開爪からワイヤーハーネスと共にグロメットを引き抜いて取り外せば、グロメットが装着されたワイヤーハーネスが得られる構造とされていた。
【0007】
【特許文献1】特開平5−342928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年のワイヤーハーネスにおいては、配線構造の複雑化等により、単一のワイヤーハーネスであっても多数のグロメットを装着するニーズが増加しており、幹線や枝線によって、グロメットの種類や装着方向も異なる場合がある。例えば、図8に示されるように、組立図板1上に配置されたワイヤーハーネス2に、大径の孔を有するグロメット3や小径の孔を有するグロメット4を、異なる方向に装着する場合においては、特許文献1に開示のような拡開爪が単一種類の装置では対応しきれず、組立図板1からワイヤーハーネス2を一度、取り外して、対応するグロメット装着装置で装着する必要があった。
【0009】
また、近年のワイヤーハーネス2は大型化してきており、重量も重く、作業者が数人で取り外して運搬する必要があり、面倒で困難な作業となっていた。
【0010】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、グロメットの種類や装着方向の向きに左右されずに、グロメットの装着作業が容易に行えるグロメット装着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのグロメット装着装置の技術的手段は、グロメットの孔に挿通される3本以上の拡開爪がそれぞれ装着された対応する3本以上の拡開アームと、各拡開爪が互いに集合する集合姿勢と互いに離隔する拡開姿勢とに各拡開アームを姿勢変更操作するための拡開機構と、拡開機構を駆動する駆動手段とを備えたグロメット装着装置において、グロメット装着装置における装置本体が縦軸心回りに回動操作自在に支持され、該装置本体に備えられた前記各拡開アームは、一側面側に大径孔グロメット用の前記拡開爪がそれぞれ装着されると共に、他側面側に小径孔グロメット用の前記拡開爪がそれぞれ装着され、前記拡開機構による前記各拡開爪の接近離隔操作は途中停止制御自在とされている点にある。
【0012】
また、前記装置本体を、少なくとも水平面内で移動操作自在に支持する支持体を備えている構造としてもよい。
【0013】
さらに、前記拡開機構は、前記駆動手段によって正逆回動操作されるカム体と、該カム体の正転回動により押動されて支軸回りに開回動操作される第1の前記拡開アームと、前記カム体の逆転回動により第1の拡開アームを支軸回りに閉回動操作するための戻しバネと、前記第1の拡開アームの開回動操作および閉回動操作に連動して支軸回りに開回動操作および閉回動操作される第2の前記拡開アームとを備えている構造としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグロメット装着装置によれば、グロメット装着装置における装置本体が縦軸心回りに回動操作自在に支持され、該装置本体に備えられた各拡開アームは、一側面側に大径孔グロメット用の拡開爪がそれぞれ装着されると共に、他側面側に小径孔グロメット用の拡開爪がそれぞれ装着され、拡開機構による各拡開爪の接近離隔操作は途中停止制御自在とされた構造とされており、拡開アームの両面に異種サイズの拡開爪が存在するため、内径の小さなグロメットから内径の大きなグロメットまで装着することが可能であり、また各拡開爪による拡開量も調整でき、さらには装置本体を縦軸心回りに回動操作することにより、拡開爪を所望の向きに調整できるため、従来のようにワイヤーハーネスを組立図板上より取り外して運搬移動する必要がなく、ワイヤーハーネスに対するグロメットの種類や装着方向の向きに左右されずに、グロメットの装着作業が容易に行える利点がある。
【0015】
また、装置本体を、少なくとも水平面内で移動操作自在に支持する支持体を備えている構造とすれば、ワイヤーハーネスにおけるグロメットの装着位置近傍まで装置本体を容易に移動でき、この点からもグロメットの装着作業がより容易となる。
【0016】
さらに、拡開機構は、駆動手段によって正逆回動操作されるカム体と、該カム体の正転回動により押動されて支軸回りに開回動操作される第1の拡開アームと、カム体の逆転回動により第1の拡開アームを支軸回りに閉回動操作するための戻しバネと、第1の拡開アームの開回動操作および閉回動操作に連動して支軸回りに開回動操作および閉回動操作される第2の拡開アームとを備えている構造とすれば、各拡開爪が拡開操作される際には、駆動手段の駆動力によって拡開され、各拡開爪が接近操作される際には、戻しバネの弾発付勢力によって戻される方式であり、グロメットの装着作業等において各拡開爪間に指等を挟んだ場合であっても、戻しバネの付勢力に起因する挟持力であり、安全性に優れる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1ないし図3はグロメット装着装置10の概略図を示しており、基部フレーム11a、支柱フレーム11b、梁フレーム11c等により枠組み構成された支持体としての支持フレーム台11と、梁フレーム11cの先端部に設けられた支持部11dに装着された装置本体12とを備えた構造とされている。
【0018】
支持フレーム台11における基部フレーム11aの下面側には、キャスター13が適宜数、設けられ、支持フレーム台11を水平面内で移動操作自在とされている。また、基部フレーム11aの適宜位置には、支持フレーム台11を所望位置で停止状態とするためのハンマーロック等からなるストッパー14が適宜数、設けられている。
【0019】
前記装置本体12は、図4ないし図6に示されるように、互いに所定間隔を有して平行配置された対の支持板17を有するハウジング体18を備え、一方の支持板17の外側面側には、駆動手段としてのモータ19や減速機20が装着されている。
【0020】
減速機20から延設される駆動軸21は、両支持板17に軸受を介して軸支され、駆動軸21の他端突出部には、タイミングプーリ22が固定されている。また、両支持板17間に位置する駆動軸21には、所望形状のカム面23a,23bを外周に有する板状の一対のカム体23A,23Bがそれぞれ一体回動自在に取り付け固定されている。この際、両カム体23A,23Bは、駆動軸21の軸心回りに互いに所定角度だけ位相をずらした状態で固定されており、各カム面23a,23bは、駆動軸21の正転方向の回動に際して、その回動中心から漸次遠ざかる面として構成されている。
【0021】
また、駆動軸21の上方に位置した両支持板17間における一方の支持板17に、エンコーダ24が装着されており、このエンコーダ24の回転軸24aは、この支持板17の他面側より突出して配置され、回転軸24aのその突出端部にもタイミングプーリ25が固定されている。
【0022】
そして、両タイミングプーリ22,25間にわたってタイミングベルト26が巻き掛けられ、駆動軸21の回転位置をエンコーダ24で検出することにより、駆動軸21の回転位置、即ち各カム体23A,23Bの回動位置を検出制御可能な構成とされている。
【0023】
即ち、モータ19の正逆駆動により減速機20を介して駆動軸21が正逆回動操作され、その駆動軸21の回転位置をエンコーダ24で検出し、モータ19を正逆駆動、停止制御することにより、各カム体23A、23Bの回動位置を制御可能とされている。
【0024】
また、各カム体23A,23Bの下方位置において、両支持板17間にわたり互いに水平方向に離隔して一対の支軸27A,27Bが装着され、これら両支軸27A,27Bに、それぞれ第1の拡開アーム28A,28Bの長さ方向中間部が軸支されている。
【0025】
各第1の拡開アーム28A,28Bの上端部には、互いに異なる側面側に、それぞれ従動ローラ29A,29Bが転動自在に装着されている。また、各第1の拡開アーム28A,28Bの下部は、ハウジング体18より下方に突出され、その下端部にはそれぞれ拡開爪30が着脱自在に装着されている。
【0026】
さらに、各第1の拡開アーム28A,28Bの中間部における外側部には、張出部28a,28bがそれぞれ設けられ、各張出部28a,28bに突設されたバネ支持ピン31a,31bと、その上方に位置して各支持板17に突設されたバネ支持ピン32a,32bとの相互間にわたって、それぞれコイルバネ等からなる戻しバネ33a,33bが張設されている。
【0027】
そして、これら戻しバネ33a,33bによる弾発付勢力により、各第1の拡開アーム28A,28Bの上端部に装着された各従動ローラ29A,29Bが、対応する各カム体23A,23Bのカム面23a,23bに転動自在に弾接された構造とされている。そして、図4に示される初期姿勢においては、各第1の拡開アーム28A,28Bの下端部に装着された各拡開爪30が互いに接近して集合した集合姿勢とされている。
【0028】
また、図4や図6に示されるように、両支持板17の下端部間において、互いに水平方向に離隔して一対の支軸34A,34Bが装着され、これら両支軸34A,34Bに、くの字状に形成された第2の拡開アーム35A,35Bの屈曲部分がそれぞれ軸支されている。
【0029】
各第2の拡開アーム35A,35Bの上端部には、第1の拡開アーム28A,28Bと同様、互いに異なる側面に、それぞれ従動ローラ36A,36Bが転動自在に装着されており、各従動ローラ36A,36Bは、第1の拡開アーム28A,28Bの各張出部28a,28bに形成された連動凹部28c,28dに転動自在に嵌合されている。また、各第2の拡開アーム35A,35Bの下部は、ハウジング体18より下方に突出され、その下端部にはそれぞれ拡開爪30が着脱自在に装着されている。
【0030】
そして、各第1の拡開アーム28A,28Bが支軸27A,27B回りに回動操作されると、各連動凹部28c,28dの移動に伴って各従動ローラ36A,36Bが押動され、ここに、各第2の拡開アーム35A,35Bは、支軸34A,34B回りに連動して回動操作される構造とされている。また、図4に示される第1の拡開アーム28A,28Bの初期姿勢においては、各第2の拡開アーム35A,35Bの下端部に装着された各拡開爪30も、各第1の拡開アーム28A,28Bに装着された各拡開爪30に互いに接近した姿勢とされ、ここに、4本の拡開爪30が互いに接近して集合した集合姿勢とされている。
【0031】
この状態で、モータ19の正転駆動により、減速機20を介して駆動軸21が正転駆動されると、各カム体23A,23Bも正転駆動される。そして、各カム体23A,23Bのカム面23a,23bは、正転駆動に伴って回転中心から漸次遠ざかる構造とされており、この各カム体23A,23Bの正転駆動により、各カム面23a,23bに当接する各従動ローラ29A,29Bが押動されて、各第1の拡開アーム28A,28Bが支軸27A,27B回りに漸次、開回動操作されていく。
【0032】
この各第1の拡開アーム28A,28Bの開回動操作に伴って、各第2の拡開アーム35A,35Bに装着された従動ローラ36A,36Bは、連動凹部28c,28dによって押動され、この押動により各第2の拡開アーム35A,35Bが支軸34A,34B回りに漸次、開回動操作されていく。そして、図6に示されるように、各拡開爪30が互いに離隔した拡開姿勢が得られる構造とされている。ここに、各カム体23A,23B、各従動ローラ29A,29B、各連動凹部28c,28d、各従動ローラ36A,36B等により拡開機構が構成されている。
【0033】
そして、最大の拡開姿勢となった状態で、適宜配置されたセンサの検出により、もしくはエンコーダ24の検出により、モータ19が停止される。
【0034】
この拡開姿勢で、モータ19を逆転駆動すると、各カム体23A,23Bが逆転駆動される。この際、各第1の拡開アーム28A,28Bは戻しバネ33a,33bにより閉回動方向に弾発付勢力されているため、各カム体23A,23Bのカム面23a,23bに対して各従動ローラ29A,29Bが弾接した状態に引き戻されて閉回動操作される。この各第1の拡開アーム28A,28Bの閉回動に伴い、各第2の拡開アーム35A,35Bも連動して閉回動操作される。そして、各カム体23A,23Bが初期位置に戻されると、図4に示されるように、各第1の拡開アーム28A,28Bや各第2の拡開アーム35A,35Bも初期位置に戻され、各拡開爪30が互いに集合した集合姿勢が得られる構造とされている。
【0035】
また、図5に示されるように、各第1の拡開アーム28A,28Bや各第2の拡開アーム35A,35Bの下端部には、両側面にそれぞれ拡開爪30がネジ締結等を利用して着脱自在に装着可能な構造とされている。そして、本実施形態においては、一側面側に大径の孔を有するグロメット4に適した太径の大径用拡開爪30aがそれぞれ装着され、他側面側に小径の孔を有するグロメット3に適した細径の小径用拡開爪30bがそれぞれ装着された構造とされている。
【0036】
図4の仮想線で示されるように、両支持板17の両側部および上部には、それぞれカバー板37が、ネジ締結等により着脱自在に装着されており、上部のカバー板37上には、取付ブラケット38を介して円柱状の支持軸39が上方突出状に固定されている。
【0037】
そして、この支持軸39が、支持フレーム台11の支持部11dに下側から上下方向に嵌通状として抜止状に支持された構造とされている。また、支持部11dの上部には、支持軸39に対してネジ構造やカム構造等により解除自在に締め付けるための締付けレバー40が備えられており、締付けレバー40の回動操作による締付けにより、支持軸39は支持部11dに対して上下方向の軸心回りに回動不能に固定され、締付けレバー40の回動操作による締付け解除により、支持軸39は支持部11dに対して上下方向の軸心回りに少なくとも360度以上回動操作可能とされている。ここに、装置本体12は支持フレーム台11に、縦軸心回りに回動操作自在に支持された構造とされている。
【0038】
また、支持フレーム台11の下部には、グロメット装着装置10のモータ19を駆動制御するための制御部41が搭載されており、エンコーダ24で検出された信号に基づき、モータ19を駆動制御することにより、図7に示されるように、グロメット3,4の孔径に応じて各拡開爪30を互いに最も離隔する拡開姿勢から互いに最も近接した集合する集合姿勢との範囲で、拡開量を所望に調整可能に構成されている。
【0039】
本実施形態は以上のように構成されており、例えば、図8に示されるように、組立図板1上に配置されたワイヤーハーネス2に、大径の孔を有するグロメット3や小径の孔を有するグロメット4を、異なる方向に装着する場合においては、グロメット装着装置10における装置本体12の下方位置に対応して、組立図板1が配置される。
【0040】
この状態で、例えば、図9における右上の大径の孔を有するグロメット4を装着するために、支持フレーム台11を移動操作して、装置本体12をグロメット4の近くに移動させる。次に、グロメット4の種類および装着方向に対応する大径用拡開爪30aを所望の向きにセットする。この際、大径用拡開爪30aの向きが装着方向と異なっている場合には、縦軸心回りに装置本体12のハウジング体18を回動操作すればよい。
【0041】
この状態で、対応するグロメット4を集合姿勢とされている各大径用拡開爪30aに套嵌し、この状態で、例えば、モータ19の正転駆動スイッチを押し操作すれば、押し操作している間、モータ19は正転駆動され、減速機20、駆動軸21を介して各カム体23A,23Bが正転回動される。そして、このカム体23A,23Bの正転回動により、各第1の拡開アーム28A,28Bおよび各第2の拡開アーム35A,35Bが漸次、開回動操作されていく。
【0042】
そして、各大径用拡開爪30aの拡開量が所望に達した場合に、正転駆動スイッチの押し操作を解除すれば、モータ19の回転が停止する。そして、この拡開姿勢で停止したグロメット4の孔内に、対応するワイヤーハーネス2の端部を持ち上げて所望の位置まで挿通し、その後、逆転駆動スイッチを押し操作すれば、今度は押し操作している間、モータ19は逆転駆動され、各カム体23A,23Bが逆転回動される。
【0043】
そして、このカム体23A,23Bの逆転回動により、各第1の拡開アーム28A,28Bおよび各第2の拡開アーム35A,35Bが漸次、閉回動操作されていく。そして、各大径用拡開爪30aの拡開量が、グロメット4を大径用拡開爪30aから引き抜くのに好適な所望の引き抜き拡開量に戻った状態で、一旦、逆転駆動スイッチによる押し操作を解除すれば、モータ19の回転が停止して、各大径用拡開爪30aが互いに引き抜き拡開量を有して離隔した拡開姿勢で停止する。
【0044】
この状態で、各大径用拡開爪30aからグロメット4を引き抜けば、ワイヤーハーネス2を構成する各線材を各大径用拡開爪30a間に挟み込むこと無く、容易に引き抜くことができる。そして、グロメット4の引き抜き後、逆転駆動スイッチの押し操作により、各大径用拡開爪30aを初期の集合姿勢に戻す。
【0045】
次に、図10に示されるように、右下の小径の孔を有するグロメット3を装着するために、上記同様にして装置本体12をグロメット3の近くに移動させる。そして、グロメット3の種類および装着方向に対応する小径用拡開爪30bを所望の向きにセットする。この際、小径用拡開爪30bの向きが装着方向と異なっている場合には、縦軸心回りに装置本体12のハウジング体18を回動操作すればよい。
【0046】
この状態で、対応するグロメット3を集合姿勢とされている各小径用拡開爪30bに套嵌し、この状態で、正転駆動スイッチを押し操作し、モータ19を正転駆動させると、上記同様にして各第1の拡開アーム28A,28Bおよび各第2の拡開アーム35A,35Bが漸次、開回動操作されていく。
【0047】
そして、各小径用拡開爪30bの拡開量が所望に達した場合に、正転駆動スイッチの押し操作を解除して、モータ19を停止させる。そして、この拡開姿勢で停止したグロメット3の孔内に、対応するワイヤーハーネス2の端部を持ち上げて所望の位置まで挿通し、その後、逆転駆動スイッチを押し操作し、モータ19を逆転駆動させると、上記同様にして各第1の拡開アーム28A,28Bおよび各第2の拡開アーム35A,35Bが漸次、閉回動操作されていく。
【0048】
そして、各小径用拡開爪30bの拡開量が、グロメット3を小径用拡開爪30bから引き抜くのに好適な所望の引き抜き拡開量に戻った状態で、一旦、逆転駆動スイッチによる押し操作を解除して、モータ19を停止させ、この拡開姿勢の状態で、各小径用拡開爪30bからグロメット3を引き抜けば、ワイヤーハーネス2を構成する各線材を各小径用拡開爪30b間に挟み込むこと無く、容易に引き抜くことができる。そして、グロメット3の引き抜き後、逆転駆動スイッチの押し操作により、各小径用拡開爪30bを初期の集合姿勢に戻す。
【0049】
次に、図11に示されるように、左上の大径の孔を有するグロメット4を装着するために、上記同様にして装置本体12をグロメット4の近くに移動させる。そして、グロメット4の種類および装着方向に対応する大径用拡開爪30aを所望の向きにセットする。この際、大径用拡開爪30aの向きが装着方向と異なっている場合には、縦軸心回りに装置本体12のハウジング体18を回動操作すればよい。
【0050】
この状態で、対応するグロメット4を集合姿勢とされている各大径用拡開爪30aに套嵌し、この状態で、正転駆動スイッチを押し操作し、モータ19を正転駆動させると、上記同様にして各第1の拡開アーム28A,28Bおよび各第2の拡開アーム35A,35Bが漸次、開回動操作されていく。
【0051】
そして、各大径用拡開爪30aの拡開量が所望に達した場合に、正転駆動スイッチの押し操作を解除して、モータ19を停止させる。そして、この拡開姿勢で停止したグロメット4の孔内に、対応するワイヤーハーネス2の端部を持ち上げて所望の位置まで挿通し、その後、逆転駆動スイッチを押し操作し、モータ19を逆転駆動させると、上記同様にして各第1の拡開アーム28A,28Bおよび各第2の拡開アーム35A,35Bが漸次、閉回動操作されていく。
【0052】
そして、各大径用拡開爪30aの拡開量が、グロメット4を大径用拡開爪30aから引き抜くのに好適な所望の引き抜き拡開量に戻った状態で、一旦、逆転駆動スイッチによる押し操作を解除して、モータ19を停止させ、この拡開姿勢の状態で、各大径用拡開爪30aからグロメット4を引き抜けば、ワイヤーハーネス2を構成する各線材を各大径用拡開爪30a間に挟み込むこと無く、容易に引き抜くことができる。そして、グロメット4の引き抜き後、逆転駆動スイッチの押し操作により、各大径用拡開爪30aを初期の集合姿勢に戻す。
【0053】
次に、図12に示されるように、左下の小径の孔を有するグロメット3を装着するために、上記同様にして装置本体12をグロメット3の近くに移動させる。そして、グロメット3の種類および装着方向に対応する小径用拡開爪30bを所望の向きにセットする。この際、小径用拡開爪30bの向きが装着方向と異なっている場合には、縦軸心回りに装置本体12のハウジング体18を回動操作すればよい。
【0054】
この状態で、対応するグロメット3を集合姿勢とされている各小径用拡開爪30bに套嵌し、この状態で、正転駆動スイッチを押し操作し、モータ19を正転駆動させると、上記同様にして各第1の拡開アーム28A,28Bおよび各第2の拡開アーム35A,35Bが漸次、開回動操作されていく。
【0055】
そして、各小径用拡開爪30bの拡開量が所望に達した場合に、正転駆動スイッチの押し操作を解除して、モータ19を停止させる。そして、この拡開姿勢で停止したグロメット3の孔内に、対応するワイヤーハーネス2の端部を持ち上げて所望の位置まで挿通し、その後、逆転駆動スイッチを押し操作し、モータ19を逆転駆動させると、上記同様にして各第1の拡開アーム28A,28Bおよび各第2の拡開アーム35A,35Bが漸次、閉回動操作されていく。
【0056】
そして、各小径用拡開爪30bの拡開量が、グロメット3を小径用拡開爪30bから引き抜くのに好適な所望の引き抜き拡開量に戻った状態で、一旦、逆転駆動スイッチによる押し操作を解除して、モータ19を停止させ、この拡開姿勢の状態で、各小径用拡開爪30bからグロメット3を引き抜けば、ワイヤーハーネス2を構成する各線材を各小径用拡開爪30b間に挟み込むこと無く、容易に引き抜くことができる。そして、グロメット3の引き抜き後、逆転駆動スイッチの押し操作により、各小径用拡開爪30bを初期の集合姿勢に戻す。
【0057】
以上のようにして、1台のグロメット装着装置10により、ワイヤーハーネス2に対し、異なるサイズのグロメット3,4を、それらの装着方向の向きに左右されずに装着することができる。
【0058】
即ち、各拡開アーム28A,28B,35A,35Bの両面に異種サイズの大径用拡開爪30aおよび小径用拡開爪30bが存在するため、内径の小さなグロメット3から内径の大きなグロメット4まで対応して装着することが可能であり、また各拡開アーム28A,28B,35A,35Bの開閉操作に際して、モータ19の正逆駆動・停止操作自在とされているため、各大径用拡開爪30aや各小径用拡開爪30bの接近離隔操作に際して、途中停止制御自在であり、ここに、各大径用拡開爪30aや各小径用拡開爪30bによる拡開量の調整を容易に行うことができる。
【0059】
さらに、装置本体12が縦軸心回りに回動操作自在とされているため、装置本体12を縦軸心回りに回動操作することによって、各拡開爪30a,30bの方向性を自在に変更でき、を所望の向きに容易に調整できる。
【0060】
従って、従来のようにワイヤーハーネス2を組立図板1上より取り外して運搬移動する必要がなく、ワイヤーハーネス2に対するグロメット3,4の種類や装着方向の向きに左右されずに、グロメット3,4の装着作業を1台のグロメット装着装置10により容易に行うことができる。
【0061】
また、装置本体12を支持する支持フレーム台11は、キャスター13により移動操作自在とされているため、ワイヤーハーネス2におけるグロメット3,4の装着位置近傍まで装置本体12を容易に移動でき、この点からもグロメット3,4の装着作業がより容易となる。
【0062】
さらに、各第1の拡開アーム28A,28Bや各第2の拡開アーム35A,35Bの閉回動操作に際して、各拡開アーム28A,28B,35A,35Bは、戻しバネ33a,33bの弾発付勢力により戻される方式とされているため、グロメット3,4の装着作業等において各拡開爪30a,30b間に誤って指等を挟んだ場合であっても、戻しバネ33a,33bの付勢力に起因する挟持力であり、安全性に優れる利点がある。
【0063】
なお、上記実施形態におけるグロメット装着装置10においては、拡開爪30がそれぞれ4本の構造を示しているが、3本あるいは5本以上の拡開爪30を備える構造であってもよい。
【0064】
また、装置本体12を支持する支持フレーム台11を移動操作自在な構造を示しているが、装置本体12を縦軸心回りに回動操作自在に支持する支持部11dを、水平面内でスライド操作自在に支持する構造としてもよく、さらには、支持部11dを3次元的に移動操作自在に支持する構造としてもよい。
【0065】
さらに、装置本体12を手動で、縦軸心回りに回動操作自在な構造を示しているが、電動により回動操作する構造であってもよい。
【0066】
また、カム体23A,23Bの正逆駆動を利用して、各拡開爪30を集合姿勢と拡開姿勢とに姿勢変更操作する構造を示しているが、リンク機構を利用して各拡開爪30を姿勢変更する構造であってもよく、実施形態の構造に何ら限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係るグロメット装着装置の概略側面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】要部断面説明図である。
【図5】同側面図である。
【図6】同動作説明図である。
【図7】拡開爪の動作説明図である。
【図8】ワイヤーハーネスに対するグロメットの装着例説明図である。
【図9】グロメットの装着動作説明図である。
【図10】グロメットの装着動作説明図である。
【図11】グロメットの装着動作説明図である。
【図12】グロメットの装着動作説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1 組立図板
2 ワイヤーハーネス
3,4 グロメット
10 グロメット装着装置
11 支持フレーム台
12 装置本体
19 モータ
20 減速機
23A,23B カム体
24 エンコーダ
28A,28B 第1の拡開アーム
30 拡開爪
30a 大径用拡開爪
30b 小径用拡開爪
33a,33b 戻しバネ
35A,35B 第2の拡開アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グロメットの孔に挿通される3本以上の拡開爪がそれぞれ装着された対応する3本以上の拡開アームと、各拡開爪が互いに集合する集合姿勢と互いに離隔する拡開姿勢とに各拡開アームを姿勢変更操作するための拡開機構と、拡開機構を駆動する駆動手段とを備えたグロメット装着装置において、
グロメット装着装置における装置本体が縦軸心回りに回動操作自在に支持され、該装置本体に備えられた前記各拡開アームは、一側面側に大径孔グロメット用の前記拡開爪がそれぞれ装着されると共に、他側面側に小径孔グロメット用の前記拡開爪がそれぞれ装着され、前記拡開機構による前記各拡開爪の接近離隔操作は途中停止制御自在とされていることを特徴とするグロメット装着装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグロメット装着装置において、
前記装置本体を、少なくとも水平面内で移動操作自在に支持する支持体を備えていることを特徴とするグロメット装着装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のグロメット装着装置において、
前記拡開機構は、前記駆動手段によって正逆回動操作されるカム体と、該カム体の正転回動により押動されて支軸回りに開回動操作される第1の前記拡開アームと、前記カム体の逆転回動により第1の拡開アームを支軸回りに閉回動操作するための戻しバネと、前記第1の拡開アームの開回動操作および閉回動操作に連動して支軸回りに開回動操作および閉回動操作される第2の前記拡開アームとを備えていることを特徴とするグロメット装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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