説明

グロメット

【課題】 本発明の目的は、車体パネル等のパネルに設けられたグロメット取り付け穴への挿入力が小さくて済む装着作業性に優れたグロメットを提供することにある。
【解決手段】 本発明のグロメットは、一端に小径筒部11を他端に大径筒部13を有し、かつ小径筒部11と大径筒部13との間に連続して大径筒部側13が大径になっている拡径筒部12とを有するグロメット10において、拡径筒部12の表面にはこの拡径筒部12の軸にほぼその中心を有するらせん状の溝20が設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメットに関し、より詳細にはワイヤーハーネスに組み付けて、車体パネル等に設けられているグロメット取り付け穴に低挿入力で挿入、装着できるグロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば車体パネルとドアパネル間等に配索されるワイヤーハーネスには、予めグロメットを装着しておき、これを車体パネル等のパネルのグロメット取り付け穴に装着し、取り付け穴を通るワイヤーハーネスを保護したり、防水性を確保したりしている。
この種のグロメットとして従来から、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【0003】
図2は、特許文献1に開示されているもので、グロメットを車体パネル等のパネルに設けられているグロメット取り付け穴に装着した状態を示す断面図である。
これは図2が示すように、二点鎖線で示す車体パネル等のパネル1に設けられたグロメット取り付け穴2に、小径筒部11側から矢印が示す方向にグロメット10を挿入し、かつ押し込んで小径筒部11の後部に連続する拡径筒部12と該拡径筒部12の後部に続く大径筒部13との間に設けられている嵌合溝14に、前述したパネル1のグロメット取り付け穴2の内縁が嵌り込むように装着するものである。
ここで符号15はワイヤーハーネスを示している。また符号16はこのワイヤーハーネス15を保持するために小径筒部11の内面に設けられた突起状の保持部を示している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−32855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこの種のグロメット10の場合、拡径筒部12の後端と大径筒部13との間でパネル1を挟持することでグロメット10をパネル1に固定する関係上、より安定して挟持するために嵌合溝14をある程度深く形成する必要がある。その結果必然的にグロメット10の拡径筒部12の後端部の外径、すなわち大径筒部13に近い方の端部の外径をグロメット取り付け穴2の内径よりもかなり大きくせざるを得ない。
【0006】
このように拡径筒部12の後端部の外径がグロメット取り付け穴2の内径よりもかなり大きく形成されているグロメット10を、パネル1のグロメット取り付け穴2に向けて矢印方向に挿入していくと、必然的にグロメット取り付け穴2の内径と拡径筒部12の外径が等しい位置で、拡径筒部12の外面がグロメット取り付け穴2の内縁に引っ掛かり、以降かなり大きな力で押し込まないとグロメット取り付け穴2に対して拡径筒部12の後部をくぐり抜けさせることができない。
このように特許文献1に記載のグロメットの場合、グロメットをパネルに設けられているグロメット取り付け穴に挿入して装着する際、大きな挿入力が必要であって、装着作業性が悪い、という問題がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、車体パネル等のパネルに設けられたグロメット取り付け穴への挿入力が小さくて済む装着作業性に優れたグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく本発明の請求項1記載のグロメットは、一端に小径筒部を他端に大径筒部を有し、かつ前記小径筒部と前記大径筒部との間に前記大径筒部側が大径になっている拡径筒部とを有するグロメットにおいて、前記拡径筒部の表面にはこの拡径筒部の軸にその中心を有するらせん状の溝が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
このようにしてなる請求項1記載のグロメットによれば、拡径筒部の表面にらせん状の溝が設けられている分、グロメット取り付け穴の内縁と拡径筒部表面との接触面積が減り、より低挿入力での挿入が可能となる。
【0010】
また本発明の請求項2記載のグロメットは、請求項1記載のグロメットにおいて、前記拡径筒部のらせん状の溝の肉厚が溝以外の部分の肉厚よりも薄くなっていることを特徴とするものである。
このようにしてなる請求項2記載のグロメットによれば、拡径筒部のらせん状の溝の肉厚が溝以外の部分のそれよりも薄くなっているため、グロメット取り付け穴にグロメットの拡径筒部を押し込んでいった際に、拡径筒部がより変形し易くなって、グロメット取り付け穴を潜り込み易くなる。すなわちグロメット取り付け穴に対してより低挿入力での挿入が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、車体パネル等のパネルに設けられたグロメット取り付け穴への挿入力が小さくて済む装着作業性に優れたグロメットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図を用いて本発明のグロメットを詳細に説明する。
図1は本発明のグロメットの一実施例を示す側面図である。ここで図1においては、図2と同じ部分には同一の番号を付してある。
【0013】
図1が示すように本発明のグロメット10も、図2に示す従来のもの同様に一端に小径筒部11、他端に大径筒部13を有し、これら小径筒部11と大径筒部13との間に大径筒部13側が大径になるように形成されている拡径筒部12を有していて、その特徴とするところは、拡径筒部12の表面に、拡径筒部12の軸、すなわちグロメット10の中心軸上にほぼその中心が存在するようならせん状の溝20が形成されている点にある。
尚、拡径筒部12の軸方向にわたって全面的にらせん状の溝20を形成してもよいが、らせん状の溝20は少なくとも拡径筒部12の外径が、パネル1に設けられているグロメット取り付け穴2の内径よりも若干小さい部分からはじまって、グロメット取り付け穴2の内径よりも大きい部分の表面に形成されていればよい。換言すると、グロメット取り付け穴2の内径よりもその外径が小さい拡径筒部12の表面には、あえてらせん状の溝20を形成する必要はない。
【0014】
このように拡径筒部12の表面にらせん状の溝20を設けておくと、図1が示すようにこのグロメット10を、例えばパネル1のグロメット取り付け穴2に右側から小径筒部11を先端にして挿入し、拡径筒部12の外径とグロメット取り付け穴2の内径がほぼ一致する位置(1Aの位置)、で両者間に接触が起こっても、その際、グロメット10の拡径筒部12の周方向全面がグロメット取り付け穴2の内縁全周と接触するのではなく、らせん状の溝20の部分では非接触状態もしくは比較的摩擦の少ない接触状態が実現される。同様にそれ以降拡径筒部12の外径がグロメット取り付け穴2の内径よりも大きい部分でも同じような状態が起こる。
【0015】
それ故、従来の拡径筒部12の外形形状が本発明のグロメット10と同じものであって、らせん状の溝20のないグロメット10と比較した場合、本発明のらせん状の溝20を有するグロメット10の方が、より小さな挿入力でパネル1のグロメット取り付け穴2にグロメット10を挿入することができ、拡径筒部12と大径筒部13との間に形成されているパネルが嵌る嵌合溝14、すなわち図1においてパネル1の一部がハッチングで示されている位置にパネル1を嵌着することができる。
【0016】
ところで、らせん状の溝20の肉厚を、拡径筒部12のらせん状の溝20以外の部分よりも薄くしておくと、このグロメット10をグロメット取り付け穴2に押し込んでいって、拡径筒部12の外面とグロメット取り付け穴2の内縁とが接触した場合、グロメット10の拡径筒部12がより変形し易くなって、グロメット取り付け穴2をより潜り抜け易くなる。すなわちより低挿入力でグロメット10の挿入が可能になる利点がある。
【0017】
またらせん状の溝20の幅を車体パネル等のパネル1の厚さよりも広くしておくと、拡径筒部12の外面とグロメット取り付け穴2の内縁との接触面積がより少なくなって、より小さな挿入力でグロメット10をグロメット取り付け穴2に挿入でき好ましい。
同時に、らせん状の溝20の幅がパネル1の厚さよりも広ければ、グロメット10をグロメット取り付け穴2に挿入する際、らせん状の溝20の内部にパネル1の内縁の一部が落ち込むため、他端側における拡径筒部12の外面とグロメット取り付け穴2の内縁との接触摩擦が小さくなり、この点からもグロメット10をグロメット取り付け穴2に対してより低挿入力で挿入ができ、一連の装着作業の作業性を向上させることができる。
【0018】
以上述べたように本発明によれば、車体パネル等のパネルに設けられたグロメット取り付け穴への挿入力が小さくて済む装着作業性に優れたグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のグロメット一実施例を示す側面図である。
【図2】従来のグロメットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 パネル
2 グロメット取り付け穴
10 グロメット
11 小径筒部
12 拡径筒部
13 大径筒部
14 嵌合溝
20 らせん状の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に小径筒部を他端に大径筒部を有し、かつ前記小径筒部と前記大径筒部との間に前記大径筒部側が大径になっている拡径筒部とを有するグロメットにおいて、前記拡径筒部の表面にはこの拡径筒部の軸にその中心を有するらせん状の溝が設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記拡径筒部のらせん状の溝の肉厚が溝以外の部分の肉厚よりも薄くなっていることを特徴とする請求項1記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−339083(P2006−339083A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164917(P2005−164917)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】