説明

グローブバルブ

【課題】シートの変形を防いで高精度に流体を制御でき、耐久性に優れ、コンパクトで簡単な構造によって確実にシートを保持できるグローブバルブを提供すること。
【解決手段】弁座12を備えた弁箱11と、弁座12に接離するシート24を装着したシートホルダ15と、このシートホルダ15を弁座12方向に往復動自在に設けた弁棒22を有するグローブバルブであって、シートホルダ15に環状のかしめ部19を形成し、このかしめ部19をシートリング26を介して内径側からかしめて、かしめ荷重がシートリング26を押さえる方向に加わることによりシートホルダ15にシート24を保持させたグローブバルブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体が弁棒によって、弁座に垂直な方向に作動するグローブバルブに関し、特に、弁座面に弁体を押し付けて流体の流れに抗して閉止する構造を有するシート保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のグローブバルブとして、例えば、圧力制御によって弁体を操作して流量調節を行うようにしたY形のグローブバルブがある。このY形弁は、高・低温流体や蒸気等の各種の流体を、圧力損失を防ぎつつ、高精度に流量・圧力・温度などを制御できるようにしたものであり、高コストパフォーマンス、高耐久性、メンテナンス容易、軽量・コンパクト性、クイックレスポンス、ウォーターハンマーフリーなどの各種の利点を有しているため、あらゆる箇所において幅広く用いられている。
【0003】
Y形弁は、一般的に、垂直する弁体に対してPTFE等やゴム等のシートを装着し、このシートを弁座に着座して流路を開閉するようにした構造が少なくない。このシートには、弁体が流路を交差するように移動するという構造の特性上、弁体の動作及び停止中にも流体圧力が加わっている。
例えば、弁閉状態においては、シートは弁座に着座した状態になっているが、このとき、シートには、外周側の流体に接している部位に加えて、このシートを装着している弁体との隙間にも流体圧力が加わっている。しかし、この場合には、シートが弁体と弁座の間に挟着された状態になっているため、流体圧力によってシートが流路側に飛び出したり、大きく変形したりするおそれは少ない。
【0004】
一方、弁閉状態から弁開状態に動作するとき、閉止されていた流体圧力は、シートと弁座との接触から開放されるために、急激に減圧する。しかし、シートと弁体との隙間に入り込んだ流体圧力は、急激に開放されないため、シートを流路側へ押し出そうとする方向に働く。これにより、シートが流路側に飛び出したり、変形する恐れがある。シートがこのように変形するとバルブのシール性が低下し、流体漏れが発生しやすくなり、配管系に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
上記のように、この種の構造のバルブのシートには常時流体圧力が加わり、シートの劣化が避けられない状況になっている。このため、通常、このタイプのバルブのシートは、その耐久性に関わらず定期的に交換が必要になっている。
このため、このバルブは、シートを着脱可能な構造に設けている。バルブのシート着脱構造としては、例えば、弁体の装着溝にシートとこのシートを押さえるシート押さえを装着した状態で、シート押さえの上からナットを螺着してシートを固定できるようにしたものが多い。例えば、特許文献1の従来技術に、このタイプのバルブが記載されている。
【0006】
一方、特許文献2の弁は、弁体の下面のミゾの内部の折り曲げ反対側に段差を設け、ミゾ内に弁座(シート)を装着した状態で折り曲げ側の側壁をカシメ治具によって折り曲げて、弁座を弁体に装着するようにしたものである。
【0007】
【特許文献1】特開2003−148634号公報
【特許文献2】特開昭61−59070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のバルブは、ナットの螺着によりシートを固定するようにしているため、ナットを螺着するためのねじ加工を弁体側に施す必要がある。また、ナットやねじ部を必要とするためコストアップにも繋がっていた。このナットが緩んだ場合には、シートの装着状態が緩んでシートが流路側に変形するおそれがあり、確実にシールできなくなることがあった。更に、ナットが脱落した場合には、このナットがバルブの流路内に残って内部を傷つけたりして、配管全体に悪影響を与える危険性があった。
従って、このバルブは、ナットの緩みを防止する対策が必要になり、この緩み防止手段を設けた場合、シート着脱構造が複雑になるという問題があった。また、弁開状態ではナット部分が流路に位置するために流体抵抗となって、圧力損失が増大するという問題もあった。
【0009】
一方、特許文献2の弁は、弁体にシートを装着した状態で、この弁体の外径側を内径側に向けてかしめる構造であるため、弁体の外径をシートよりも大きく形成する必要がある。このとき、シートが弁本体側の弁座よりも大きい外径にならなければならないため、弁体の外径をより大きくする必要がある。しかも、シートは、弁体と共にかしめによって縮径するため、このことを考慮してシートリングと弁体を更に拡径して設けておく必要があった。その結果、この弁は、弁体全体が大型化し、コンパクトな設計ができないという問題があった。
【0010】
本発明は、従来の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、シートの変形を防いで高精度に流体を制御でき、耐久性に優れ、コンパクトで簡単な構造によって確実にシートを保持できるグローブバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、弁座を備えた弁箱と、弁座に接離するシートを装着したシートホルダと、このシートホルダを弁座方向に往復動自在に設けた弁棒を有するグローブバルブであって、シートホルダに環状のかしめ部を形成し、このかしめ部をシートリングを介して内径側からかしめて、かしめ荷重がシートリングを押さえる方向に加わることによりシートホルダにシートを保持させたグローブバルブである。
【0012】
請求項2に係る発明は、シートリングの内側にかしめ面を形成し、このかしめ面を略45°に形成したグローブバルブである。
【0013】
請求項3に係る発明は、シートホルダのかしめ部を外周テーパ面を有するかしめ治具によって内側よりかしめて拡径したグローブバルブである。
【0014】
請求項4に係る発明は、シートホルダの下端側に位置決め部を形成し、この位置決め部にかしめ治具に設けた位置決め用突部を装入して位置決めしたグローブバルブである。
【0015】
請求項5に係る発明は、シートホルダに形成した環状の装着部にシートを装着し、このシートの奥側面にリップ部を形成したグローブバルブである。
【0016】
請求項6に係る発明は、シートの下面の外周側に、突状のシート部を形成したグローブバルブである。
【0017】
請求項7に係る発明は、シートホルダをスプリングピンを介して弁棒に着脱自在に設けたグローブバルブである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によると、弁体の内径側から拡径してシートを保持することで、シートの変形や流体圧力によるシートの飛び出しを防いで圧力損失を発生させることなく高精度に流体を制御でき、コンパクトで簡単な構造によって確実にシートを保持することができるグローブバルブである。
【0019】
請求項2に係る発明によると、シートホルダをかしめたときに、シートリングを、シートをシートホルダに装着する方向に均一に押圧することができ、しかも、かしめ部が割れることなく確実且つ強固にシートを装着することができるグローブバルブである。また、部品点数が増えたり、複雑な加工を施す必要がなく、低コストで製作することができるグローブバルブである。
【0020】
請求項3に係る発明によると、シートを確実にシートホルダに固定することができ、取付け後には、シートの抜け止め機能を発揮しつつ、このシートの変形や脱落を防いで高いシール性を維持できるグローブバルブである。また、大量生産も容易なグローブバルブである。
【0021】
請求項4に係る発明によると、かしめ治具を押し込むだけでシートホルダのかしめ部を所定の形状にかしめることができ、容易にかしめ作業を行うことができるグローブバルブである。
【0022】
請求項5に係る発明によると、シートホルダをかしめたときにシートをこのシートホルダの所定に位置に確実に装着でき、しかも、シール面圧を高めることができるため、シートとシートホルダの間に流体が浸入するのを防ぐことができるグローブバルブである。
【0023】
請求項6に係る発明によると、シートホルダへのシートの取付け構造に影響を受けることなくシートと弁座を密接シールさせることができ、シートの装着部位が流路側に突設した場合でも優れたシール性を発揮できるグローブバルブである。
【0024】
請求項7に係る発明によると、スプリングピンを挿脱するだけで簡単にシートホルダを弁棒から着脱することができ、シートをシートホルダごと簡単に交換することができるグローブバルブである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明におけるグローブバルブの好ましい一実施形態及びその作用を図面に基づいて詳細に説明する。図1のように、バルブ本体1は、一次側流路10aと二次側流路10bからなる流路10の間に弁座12を備えた弁箱11と、弁座12に接離して流路10を開閉するシート24を装着したシートホルダ15と、このシートホルダ15を弁座12方向に往復動自在に設けた弁棒22を有している。なお、本実施形態においては、一次側流路10aと二次側流路10bを図のように設けているが、この流路10a、10bは、逆であってもよい。
【0026】
弁箱11は、略Y形状を呈しており、上部に開口部13、左右両側部に継手部11a、11bを設けている。継手部11a、11bはめねじであり、このめねじ11a、11bには図示しない管を接続可能に設けている。開口部13には、メネジ部13aを形成しており、このメネジ部13aに略筒状に設けたボンネット23のオネジ部23aを螺着することでこのボンネット23と弁箱11を一体化できるようにしている。ボンネット23の上方には、自動操作用のアクチュエータ30を設けており、このアクチュエータ30を介して弁棒22を操作可能に設けている。本実施形態においては、アクチュエータによってバルブ本体1を自動操作するようにしているが、このバルブ本体1は手動によって操作するようにしてもよい。
【0027】
弁箱11の内部には、一次側流路10aと二次側流路10bを隔てる隔壁14を形成しており、この隔壁14の中央に開口14aを設けている。この開口14aの一次側に前記弁座12を設けており、この弁座12にシート24がシールしたときに閉状態にできるようにしている。
本実施形態においては、グローブバルブとして、Y形状の弁箱11を有するY形弁の場合を説明するが、このグローブバルブはY形弁に限ることはなく、シートに常時流体圧力が加わる各種のグローブバルブや、或は、止め弁などを対象とすることができる。
【0028】
図2において、シートホルダ15は略円柱状に形成し、このシートホルダ15は、弁棒22の先端側に取付けられている。シートホルダ15の下面側には環状によって凹状に形成した装着部16を設けており、この装着部16にシート24を装着可能に設けている。
シート24は、例えば、PTFE等の樹脂によって形成し、装着部16に嵌め込み可能な形状に設けている。このシート24は、シートホルダ15装着側である奥側面の内径側、外径側にリップ部25、25を設け、この各リップ部25、25をシートホルダ15に当接させて装着することでシートホルダ15とのシール面圧を高くして、シート24の背面側に流体が浸入するのを防いでいる。
また、シート24下面の外周側には、突状のシート部24aを形成し、このシート部24aを弁座12に当接させてシールするようにしている。
【0029】
シートホルダ15には、突状部15aの内周側に穿孔穴からなる位置決め部17を形成し、この位置決め部17に続いてテーパ状の傾斜当接面18を内周面側に設け、この傾斜当接面18から、より傾斜角度を小さくした環状テーパ面19aを繋げるように設けて環状のかしめ部19を設けている。また、傾斜当接面18と環状テーパ面19aの外側には、シートリング26を装着可能に突状部15aの径より縮径した段部15bを設けている。
【0030】
図3に示すように、かしめ部19は、変形前においてその先端側を長く尖らせた形状としているが、このかしめ部19は、変形後には、後述のシートリング26のかしめ面27に当接し、このかしめ面27から下方側に突出しないような長さに設けている。
【0031】
かしめ部19は、かしめ治具28によってかしめ加工を施すことにより内径側から拡径させるように変形することができ、このかしめ部19を、シートリング26を介して内径側からかしめて、かしめ荷重がシートリング26を押さえる方向に加わることにより、シートホルダ15にシート24を保持させるようにしている。
シートリング26の内側にはかしめ面27を形成しており、このかしめ面27は、略45°の角度に形成している。
【0032】
この場合、図2のような着座状態において、最も流体の圧力が加わる方向であるフローアンダー(シートホルダ15の下方側より圧力が加わる)側において、シート24の内径側がシートリング26で固定されていることにより、シート24背面側への流体の浸入を防止できる構造となっている。
【0033】
シートリング26は、外径側をシート24の内径よりも大径になるように形成し、また、図において上面側を段部15bに当接させるように装着している。これにより、かしめ部19をかしめた後において、図2に示すようにシートリング26は段部15bとかしめ部19に挟まれた状態になりつつ、このシートリング26によってシート24をシートホルダ15装着方向に押さえつけて、シート24の変形や脱落を防止しつつ装着できるようにしている。
【0034】
シート24をシートホルダ15に取付ける際には、図3に示すように、先ず、シートホルダ15の装着部16にシート24を嵌め込み、この上から、かしめ面27を下側に向けた状態でシートリング26を装着して、シート24を挟み込んだ状態にする。
続いて、図4のように、シートホルダ15の位置決め部17にかしめ治具28に設けた突状の位置決め用突部28bを装入して、シートホルダ15に対してかしめ治具28を位置決めした状態にしつつこのかしめ治具28を押し込むことにより、かしめ部19をかしめ治具28によって内側からかしめて拡径させるように変形させる。
【0035】
かしめ治具28を押し込んだ時には、このかしめ治具28の外周テーパ面28aによって環状テーパ面19aが拡径する方向に変形を開始する。かしめ治具28を更に押し込むと、シートリング26に設けた略45°のかしめ面27にかしめ治具28の外周テーパ面28aが当接するまでかしめ部19が変形する。これにより、環状テーパ面19aは、外周テーパ面28aと同じ角度にまで変形する。このとき、外周テーパ面28とかしめ面27の作用によって、かしめ部19はシート24を押さえる方向にシートリング26を押圧しながらかしめ加工を行うことができる。
【0036】
また、かしめ面27の角度は、かしめ部19をかしめた時にシート24をシートホルダ15の装着部16の上面16aに押し付け、シートの飛び出しを防止する垂直方向の力と、シート24を装着部16の外径側の側面16bに押し付け、弁座との位置決めを容易にする水平方向の力を効率的に利用することができる略45°としている。なお、本実施形態ではかしめ面27の角度を略45°としているが、よりシートの飛び出しを防止することを重視する状況にあっては、かしめ面27の角度を弁座12に対してより鋭角とすることで、垂直方向の力が増しシール力が向上する。一方、かしめ部19の破損を重視する状況にあっては、かしめ面27の角度を弁座12に対してより鈍角とすることで、かしめ部への荷重が軽減し、かしめ部19の破損を防止することができる。
【0037】
このように本発明のグローブバルブは、かしめ部19をシートリング26を介して内径側からかしめて、シートリング26を押さえる方向にかしめ荷重を加えてシート24を装着できるようにしているので、ナットを用いることなくシート24を取付けでき、部品点数を抑えて低コストで設けることができる。また、流体抵抗を小さくすることができる。
【0038】
また、かしめ部19をかしめ加工してシート24を固定するようにしているため、ナットを使用した場合のように緩んだりすることがなく、シート24が流路10側に変形したり、脱落するのを防ぐことができる。これにより高シール性を維持でき、また、ナットを使用しないため、ナットの脱落により流路10内部を傷つけたりして配管全体に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0039】
また、シートホルダ15の内径側から拡径してシート24を固定する構造であるため、シートホルダを外径側から内径側へかしめる従来構造の場合に比べてシートが弁座よりも外側に張り出すことがなく、また、シートホルダ15の外径を肉厚にする必要がない。これにより、流量を減らすことなく、シートホルダ15を小径に形成することができ、延いては、バルブ本体10をコンパクト化することができる。また、弁開時において、シートホルダ15が流路18側へ大きく突出することを防止できるため、流体抵抗は小さくなり、圧力損失を抑えることができる。さらに、流体圧力がシート24とシートホルダ15の隙間に入り込むことを防止できるので、流体圧力によるシート24の変形や飛び出しを防止し、高シール性を維持することができる。
【0040】
しかも、バルブ本体1は、シートホルダ15にシート24、シートリング26をセットした状態でかしめ治具28を押し込むだけの作業によって、シートホルダ15とシートリング26を容易にかしめることができる。このかしめ治具28は、簡単な形状であるため容易に加工でき、このかしめ治具28を1種類形成するだけで複数回のかしめ加工が可能となる。このため、ナットによる固定の場合のように、全てのシートホルダに対してナット螺着用のめねじを設ける必要がなく、加工工数やコストを大幅に抑えることができる。
また、シートリング26をシート24の下側に配置していることにより、シート24に均一に圧力を加えることができ、シート24の変形を防いで高シール性を維持することができる。
【0041】
次に、シートホルダ15の弁棒22への装着を説明する。本実施形態においては、図2のように、弁棒22に対してスプリングピン21でシートホルダ15を固着している。シートホルダ15の上面側には、弁棒を挿入可能な挿入孔20を形成しており、また、スプリングピン21を装着可能な装着孔29を形成している。装着孔29は、スプリングピン21が通常時において、その拡径方向への弾発力によって最大に拡径した状態よりもやや大径に設けている。
【0042】
一方、弁棒22のスプリングピン21の装着側には、貫通孔22aを設け、この貫通孔22aは、スプリングピン21の通常時の径よりもやや小径に設けている。これにより、スプリングピン21を貫通孔22aに挿入したときには、このスプリングピン21が拡径方向に弾発して抜出しが防止される。シートホルダ15は、挿入孔20に弁棒22を挿入した状態で、装着孔29から貫通孔22aを介してスプリングピン21を装入することで取付けられる。スプリングピン21の取付け後には、装着孔29に対してこのスプリングピン21が遊嵌した状態となる。
【0043】
弁棒22の先端側には突部22bを設けている。弁棒22を下降させてシートホルダ15を閉状態にしたときには、スプリングピン21が上記のようにシートホルダ15の装着孔29に遊嵌していることにより、この弁棒22がシートホルダ15に対して押し下がった状態となり、突部22bが挿入孔20の底面20a側まで達してこの底面20aに当接する。このとき、スプリングピン21を装着孔29に接することのないようにしているため、弁棒22からシートホルダ15に対して不要な荷重が加わることはない。
【0044】
一方、弁棒22を上昇させてシートホルダ15を開状態にしたときには、図7のように弁棒22がシートホルダ15に対して押し上がり、スプリングピン21が装着孔29に当接した状態でシートホルダ15を押し上げ、弁棒22の上部に装着されたピストン36がキャップ32のピストン受け部32aまで達する。このとき、スプリングピン21は装着孔29に遊嵌しているため、スプリングピン21に不要な荷重が加わることはない。また、シートホルダ15がボンネット23の底面23bに衝突しないようにしているため、シートホルダ15に対する衝撃はなく、この衝撃に伴いスプリングピン21が破損することがない。
【0045】
ここで、ナットを用いて弁体にシートを固定する構造の場合、弁体とシートが分離可能な構造であるため、シート交換時には、ナットを緩めるだけで、弁体からシートを外してこのシートのみを交換することができる。
【0046】
一方、本実施形態のような取付け構造によってシート24をシートホルダ15に取付ける場合、このシートホルダ15をかしめてシート24を一体化したものであるためシート24のみの交換は難しくなっている。しかし、上記のようにスプリングピン21を用いてシートホルダ15と弁棒22を固定するようにしているため、シートホルダ15全体を交換することができる。これにより、ナット固定の場合のようなシートの飛び出しを防ぎつつ、シートの耐用期間を十分に使用でき、シート交換の回数をナット固定の場合よりも少なくすることができる。よって、交換等のメンテナンスの回数を少なくすることができ、交換にかかる費用も抑えられる。
【0047】
シート24を交換する場合には、シートホルダ15と弁棒22を固定しているスプリングピン21を抜くことにより、簡単にシートホルダ15を弁棒22から外すことができ、シート24をシートホルダ15ごと簡単に交換することができる。
【0048】
次に、本実施形態におけるアクチュエータを説明する。Y型グローブバルブ用のアクチュエータ30は、バルブ本体1と直接接続するために、図1のような縦型構造が一般的になっている。このような縦型のアクチュエータ30の場合には、横型のアクチュエータのキャップを両端側に設けた構造とは異なり、上部側のみにキャップ32を設けた構造になっている。また、キャップ32のハウジング31との当接部分を屈曲して形成しているため、キャップ32の位置決めがし易くなっており、ハウジング31とキャップ32に対してボルト38の締め付けが容易になっている。
【0049】
ハウジング31には、外周側下部付近に図示しない電磁弁等を取付けるための取付座34を一体に形成している。この取付座34には、空気の出し入れを行うための空気口35、35が設けられている。本例において、取付座34は、空気口35、35間の寸法が比較的短いNAMUR規格のマウントに対応した寸法に設けている。
【0050】
このように、アクチュエータ30は、取付座34をNAMURマウント方式によって形成しているため、電磁弁を空気口35に直接取付けることができ、ニップルやアダプタなどの別の部品を用いることなく電磁弁と空気口35を接続できる。これにより、従来のニップルを用いた電磁弁と空気口の接続構造が有していた、わずらわしい配管作業を行う必要なく取付けを行うことができ、取付け規格(NAMUR規格)に対応した取付座34によって、互換性を発揮させながら容易に取付けることができる。しかも、取付座34に対してダイレクトに電磁弁を取付けることができるため、ニップル等を用いた接続に比較して、電磁弁に過大な負荷が加わった場合により強い強度を発揮することができる。
【0051】
ここで、アクチュエータの構造等をより詳しく述べる。
ハウジング31内には、ピストン36が往復動可能に取付けられ、このピストン36は、空気圧によって上下に作動し、ばね37を伸縮させながら弁棒22を上下に移動して弁の開閉を可能にしている。空気圧式のアクチュエータの場合、通常は、NOとNCタイプの使用が考えられるが、このNO、NCタイプの切替えは、ピストン36の上下を反転させて取付けることで容易に行うことができる。このように、本発明のグローブバルブは、NO、NCタイプ共に併用することができるが、本実施形態においては、NCタイプのアクチュエータを用いている。
【0052】
ここで、NCタイプのアクチュエータとは、通常時にはばね37の弾発力により弁閉状態にし、空気口35より空気を供給したときに、弁開状態にできるようにしたものである。一方、図8の他の実施形態に示すようなNOタイプのアクチュエータは、通常時にはばね37の弾発力で弁開状態にし、空気口35より空気を供給したときに、図のように弁閉状態にできるようにしたものである。図8において、上記実施形態と同一箇所は同一符号によって表し、その説明を省略する。
なお、NCタイプの場合には、ばね37が伸びた状態で弁閉としているために、NOタイプの場合よりもばね37の力を必要とし、このため、ばねの本数を増やしたり、より太いばねを使用するようにするのがよい。
【0053】
ポート38、38は、空気口35、35とハウジング31内部を連結するように形成され、このポート38を介してハウジング31内部に空気の供給・排気を行っている。このポート38は、通常、ハウジング31に対してドリル加工によって形成するようにしている。ポート38の形成時には、できるだけ加工部分を短くする方が良く、そのため、図のように、一方側の空気口35に対しては、この空気口35に対して直線的にポート38を形成し、他方側の空気口35に対しては、ポート38を垂直に形成して各ポート38、38の長さが最短になるように形成している。また、ポート38は、空気漏れを防止するために、アクチュエータ30内部のピストン36の動作範囲外に設けている。
【0054】
また、アクチュエータ30は、コンパクト化を図るため、ピストン36をハウジング31の上部ぎりぎりの位置まで移動可能に設けている。このとき、取付座34にNAMURマウントを採用していることにより空気口35、35間の寸法は狭くなってはいるが、取付座34をハウジング31の下部に設け、ポート38を上記のように形成していることによりコンパクト化が可能になっている。
【0055】
更に、アクチュエータ30をよりコンパクト化するために、上側のポート38のハウジング31内部への開口側は、キャップ32とハウジング31との合わせ部分を利用しており、キャップ32のハウジング31との当接部分を屈曲して形成していることにより、この屈曲部分の下側にキャップ32とをハウジング31内を結ぶ開口接続部40を設けている。この開口接続部40は、ポート38の一部を兼ね備えることで、ハウジング31のポート38を可能な限り短く形成でき、ハウジング31への加工性を向上させることもできる。
【0056】
空気口35には、管用めねじ39を設けているため、NAMUR規格以外の電磁弁も接続することができる。この場合、NAMURマウントの電磁弁を固定するために設けている図示しない固定めねじを、取付座34の複数箇所に設けることにより、容易に他の規格の電磁弁を固定することができ、取付座34の共用化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のグローブバルブの弁閉時の一実施形態を示した断面図である。
【図2】図1におけるA部拡大図である。
【図3】シートの装着過程を示した断面図である。
【図4】専用工具によるカシメ加工の工程を示した説明図である。
【図5】図4の専用工具を装入した状態を示した説明図である。
【図6】カシメ加工後の弁体へのシート取付け状態を示した断面図である。
【図7】本発明のグローブバルブの弁閉時の一実施形態を示した断面図である。
【図8】本発明のグローブバルブの他の実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 バルブ本体
11 弁箱
12 弁座
15 シートホルダ
16 装着部
17 位置決め部
19 かしめ部
21 スプリングピン
22 弁棒
24 シート
24a シート部
25 リップ部
26 シートリング
27 かしめ面
28 かしめ治具
28a 外周テーパ面
28b 位置決め用突部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を備えた弁箱と、前記弁座に接離するシートを装着したシートホルダと、このシートホルダを前記弁座方向に往復動自在に設けた弁棒を有するグローブバルブであって、前記シートホルダに環状のかしめ部を形成し、このかしめ部をシートリングを介して内径側からかしめて、かしめ荷重が前記シートリングを押さえる方向に加わることにより前記シートホルダにシートを保持させたことを特徴とするグローブバルブ。
【請求項2】
前記シートリングの内側にかしめ面を形成し、このかしめ面を略45°に形成した請求項1記載のグローブバルブ。
【請求項3】
前記シートホルダのかしめ部を外周テーパ面を有するかしめ治具によって内側よりかしめて拡径した請求項1又は2に記載のグローブバルブ。
【請求項4】
前記シートホルダの下端側に位置決め部を形成し、この位置決め部に前記かしめ治具に設けた位置決め用突部を装入して位置決めした請求項3に記載のグローブバルブ。
【請求項5】
前記シートホルダに形成した環状の装着部に前記シートを装着し、このシートの奥側面にリップ部を形成した請求項1乃至4の何れか1項に記載のグローブバルブ。
【請求項6】
前記シートの下面の外周側に、突状のシート部を形成した請求項1乃至5の何れか1項に記載のグローブバルブ。
【請求項7】
前記シートホルダをスプリングピンを介して前記弁棒に着脱自在に設けた請求項1乃至6の何れか1項に記載のグローブバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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