説明

グローブ用リーク検査装置

【課題】グローブ等の袋体の微細小孔を発見するために、前記袋体内への加圧時に発生するゴム製グローブの伸縮に伴う袋体被膜の温度変化を押さえることにより、リーク検査前の袋内の検査圧力の安定化を短時間とする。
【解決手段】グローブGを支持するグローブポート密閉栓3に設けたグローブ内圧力測定口23は圧力センサー20と、グローブ内空気温度センサー24はグローブ内空気温度計測器21と、表面用温度センサー25は表面温度計測器22と、それぞれ接続され、前記圧力センサー20とグローブ内空気温度計測器21と表面温度計測器22とは、シーケンサー26を介して給気用ガスライン6及び減圧用ガスライン14に設けた高速加圧電磁弁8,低速加圧電磁弁10,高速減圧電磁弁16,低速減圧電磁弁18を制御すべく接続されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グローブ或は包装用袋等の袋体用の、短時間で微量な漏洩を判定することが可能な袋体用リーク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線同位元素を操作する環境や感染性の高い病原体等を操作する場合には、作業者を保護する為、又は無菌製剤を生産する場合など無菌(無塵)環境を維持する目的で、それらの試料を設置環境と隔離する必要があり、グローブボックスやアイソレーター(以後、隔離装置と称す。)が使用される。その隔離装置は設置される環境と物理的に完全隔離されている必要があり、各種のリーク検査にて漏れがないことを検証する場合が多い。
作業者は、装置内部にある試料を柔軟性のある、各種ゴム製のグローブ(長手袋)を使い外側から操作するが、前述の完全な隔離の為には、無論このグローブにも漏洩があってはならない。しかし、ゴム製のグローブは消耗品であり、その使用頻度により破損(漏洩)が生じ易い。
【0003】
また、産業上の原材料その他製品を袋詰めにする場合、袋体に微細な小孔が存在すると袋詰後、内容物が袋外に浸出し或は袋体外部から細菌等が袋内に侵入する恐れがある。
これより使用中のグローブには初期破損段階の微量の漏れを検知する為に、専用のリーク検査装置を用い定期的なリーク検査が実施される場合がある。また、包装用袋体にあっては使用前に微細孔の有無を検知することが行われている。その微量の漏れを検査する原理には各種の方法があるが、グローブに所定の検査圧力を負荷し、安定後の圧力降下量により、リーク(漏れ)の有無判定や漏洩量を計算する方法が多い(特許文献1,2)。
【0004】
この検査方法にて所定の圧力を加えると、柔軟性の高いゴム製のグローブは膨張し、皮膜が伸びる作用により温度上昇する。その後、グローブ皮膜の温度は周囲の環境温度へ平衡するため冷却され、グローブ内の圧力が低下する。所定の検査圧力へ安定させる為に、その圧力の低下分を補う追加のなじみ加圧を行うが、検査圧力に対し1分間で±1Pa程度の変化幅に安定させる為には、おおよそ20分〜30分の時間を必要とした。
【0005】
また、所定の検査圧力へ安定後にリーク検査へ移行するが、このリーク検査中も周囲環境の微量な温度変化によりグローブ内の圧力は変化する。大抵のリーク検査装置は、周囲環境(グローブ近傍)の温度、もしくはグローブ内の気体の温度を計測し、その温度変化量にて減圧量など圧力変化の補正を行っている。しかし、周囲環境の温度変化に対し、グローブ皮膜が断熱材となり、グローブ内全体の気体温度の変化量は緩慢となるため、グローブ内の圧力変化が短時間では追従しない。一方、グローブ内の気体はほとんど滞留しており、その温度変化は設置環境の温度変化に対し大変遅く、同様に短時間で微量な圧力の補正計算を行うことが出来なかった。
ゴム膨張時の皮膜の温度上昇と収縮時の温度降下を利用し、加圧中におけるグローブ皮膜の温度を環境温度とほぼ同等にすることで、短時間で所定の検査圧力に安定させる袋体用リーク検査装置を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−47119号公報
【特許文献2】特開2001−108568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、グローブ等の袋体の微細小孔を発見するために、前記袋体内への加圧時に発生するゴム製グローブの伸縮に伴う袋体被膜の温度変化を押さえることにより、リーク検査前の袋内の検査圧力の安定化を短時間とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明グローブ用リーク検査装置は、グローブGを密閉状態に支持するグローブポート密閉栓3に圧力空気加圧減圧口13,グローブ内圧力測定口23,グローブ内空気温度センサー24,表面用温度センサー25を設け、圧力空気加圧減圧口13はボンベ4と給気用ガスライン6で結ばれ、給気用ガスライン6には高速流量調整弁7を有する高速加圧電磁弁8と低速流量調整弁9を有する低速加圧電磁弁10とを配し、前記加圧電磁弁8,10と圧力空気加圧減圧口13との間に位置する加圧用ガスライン6から分岐した減圧用ガスライン14には、高速流量調整弁15を有する高速減圧電磁弁16と低速流量調整弁17を有する低速減圧電磁弁18とを配し、減圧用ガスライン14の端末は本体2の外部に排気孔を開放し、前記グローブ内圧力測定口23は圧力センサー20と、グローブ内空気温度センサー24はグローブ内空気温度計測器21と、表面用温度センサー25は表面温度計測器22と、それぞれ接続され、前記圧力センサー20とグローブ内空気温度計測器21と表面温度計測器22とは、シーケンサー26を介して高速加圧電磁弁8,低速加圧電磁弁10,高速減圧電磁弁16,低速減圧電磁弁18を制御すべく接続されてなる。
【発明の効果】
【0009】
本グローブ用リーク検査装置の加圧運転機能により、グローブのリーク検査時の検査圧力への加圧時に発生する、ゴム製グローブに特有の伸縮に伴うグローブ皮膜の温度変化を抑えることができ、リーク検査前のグローブ内の検査圧力の安定化を短時間とすることが可能となった。また、グローブのリーク検査中の周囲の温度変化に対する圧力補正計算に必要な、温度センサーをグローブの内表面に取り付けることにより、その温度変化に対する圧力補正計算を瞬時に行うことを可能とし、短時間で破損の可能性のあるグローブの微量な漏れを判定することの出来るグローブ用リーク検査装置を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の袋体用のリーク検査装置の概略構成を示す説明図。
【図2】プログラム動作をした場合のグローブ内の圧力変化を示す。
【図3】検査圧力到達後の圧力の安定時間を比較して示す。
【図4】グローブのリーク検査中に周囲温度を変化させ、その時の圧力変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明袋体用リーク検査装置の実施ための形態につき図面と共に次に説明する。袋体用リーク検査装置1は、本体2とグローブポート密閉栓3とよりなる。本体2には外部に備えられたボンベ4からの圧縮気体を受け入れることを可能にして圧力空気接続口5に続く給気用ガスライン6を有している。前記ボンベ4には、グローブ加圧用の圧力気体として水分をほとんど含まない窒素ガス、若しくは、水分が除去されたコンプレッサー等による圧縮空気が入れられている。
【0012】
前記、圧力空気接続口5から本体2内に延びる給気用ガスライン6に、流量調整弁7を有する高速加圧電磁弁8と流量調整弁9を有する低速加圧電磁弁10とをパラレルに設ける。給気用ガスライン6にはレギュレーター11,ヘパフィルター12が設けられ、本体2外に延在する給気用ガスライン6の延長部分6aの先端は、グローブポート密閉栓3の圧力空気加圧減圧口13に接続されている。
【0013】
給気用ガスライン6は本体2内において減圧用ガスライン14を分岐しており、減圧用ガスライン14には、流量調整弁15を有する高速減圧電磁弁16と、流量調整弁17を有する低速減圧電磁弁18とをパラレルに設け、流量調整弁15,17を通過後、一本に纏めた排気用ガスライン14にはヘパフィルター19を設けている。
【0014】
また、本体2内には圧力センサー20,グローブ内空気温度計測器21,表面側温度計測器22を設けている。そして、圧力センサー20はグローブサポート密閉栓3に設けられたグローブ内圧力測定口23と、グローブ内空気温度測定器21はグローブサポート密閉栓3に設けられたグローブ内空気温度測定センサー24と、表面側温度測定器22は、グローブサポート密閉栓3に設けられた表面用温度センサー25と接続されている。
【0015】
前記圧力センサー20,グローブ内空気温度計測器21,表面側温度測定器22は、シーケンサー26を介して高速加圧電磁弁8,低速加圧電磁弁10,高速減圧電磁弁16,低速減圧電磁弁18に接続されている。27はタッチパネルである。
【0016】
次に本発明の作用につき説明する。
本発明グローブ用リーク検査装置1は、圧力空気によるグローブGの加圧時に、予め流量調整弁7にて高速で加圧するよう流量調整された高速加圧電磁弁8と、流量調整弁9で低速で加圧するよう流量調整された低速加圧電磁弁10を介して、ボンベ4内の圧力空気を圧力空気加圧減圧口13を経てグローブGに供給でき、減圧時も同様に予め流量調整弁15にて高速で減圧するよう流量調整された高速減圧電磁弁16と、流量調整弁17で低速で加圧するよう流量調整された低速加圧電磁弁18を介して減圧動作を行っている。
【0017】
これらの各電磁弁8,10,16,18の動作は、圧力センサー20がグローブG内の圧力を計測し、グローブG内の圧力が予め設定された圧力に達した時に、シーケンサー(PCL)26にてプログラム制御され、加圧や減圧、或いは高速や低速に切り替わる。このプログラム動作をした場合のグローブG内の圧力変化を図2に示す。
【0018】
グローブGは一旦、検査圧力以上となる約3000Paに高速で加圧され、15秒経過後に高速で約2200Paへ減圧される。その15秒後に低速で約2500Paへ加圧され、15秒後に高速で約2000Paに減圧される。更にその20秒後には低速で約2200Paに加圧され、その20秒後に検査圧力の2050Paで停止する。もう一方のグラフは、高速で負荷圧力の2050Paに加圧し電磁弁を停止したものである。
【0019】
この検査圧力到達後の圧力の安定時間の比較結果を分かり易く、圧力の単位を拡大したものを図3に示す。(この比較測定は、±0.5℃に制御された恒温室で行っている。)
本発明の場合、約3分30秒後に2050Paの検査圧力となり各電磁弁が停止し、その1分後には2085Paでほぼ完全に安定している(注:多少の圧力変動は、恒温室内の温度変動に依る)。
一方、加圧後に2050Paの負荷圧力で電磁弁を停止した場合は、その後20分以上も圧力は降下し、約1818Paでようやく安定する結果となった。よって、従来は20〜30分の圧力安定確認を必要としたが、本発明の場合は、5分以内に微量なグローブのリーク検査に移行できる。
また、グローブのリーク検査中の周囲の温度変化に対する圧力補正に、本グローブ用リーク検査装置1は、温度変化に対する圧力補正を短時間で行えるように、図1に示す如く、グローブ内表面に校正された表面用温度センサー25を貼り付け、グローブ表面温度を直接計測し、圧力変化量の補正計算をしている。
【0020】
実際のグローブのリーク検査中に周囲温度(恒温室の温度を23℃から15℃に低下させた場合)を変化させ、その時の圧力変化を調査した結果を図4に示す。
前述の如く、グローブの外側となるグローブ近傍温度を測定した場合、周囲の温度変化に追従性が良いが、あ部に示す如く、恒温室の温度変化が停止した後のグローブ内の圧力変化が追従しきれず完全な比例的相関が得られない。一方、グローブの内側となるグローブ内温度は、い部で示す如く、恒温室の温度変化に対しグローブの皮膜が断熱材となり緩慢となる。また、恒温室の温度変化が停止すると、う部に示す如く圧力の変化が遅くなり温度のみが低下し比例的相関が得られていない。本発明のグローブの表面温度を測定した場合は、恒温室、つまり周囲の温度変化に対し、ほぼ完全な比例的相関が得られ、温度変化に対する圧力補正計算が瞬時に行える為に、短時間でグローブのリーク検査(漏れ量の判定)が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
前記した本発明の実施例として、主としてゴム製のグローブにおける微細孔の存在の検知について開示しているが、特にグローブに限定することなく袋状をなし内部に加圧気体を吹き込み、所定時間加圧状態を保てるものであれば、本発明を利用することが出来る。
【符号の説明】
【0022】
1 袋体用リーク検査装置
2 本体
3 密閉栓
4 ボンベ
5 圧力空気接続口
6 給気用ガスライン
6a 延長部分
7,9 流量調整弁
8 高速加圧電磁弁
10 低速加圧電磁弁
11 レギュレーター
12 ヘパフィルター
13 圧力空気加圧減圧口
14 排気用ガスライン
15,17 流量調整弁
16 高速減圧電磁弁
18 低速減圧電磁弁
20 圧力センサー
21 グローブ内空気温度計測器
22 表面側温度計測器
23 グローブ内圧力測定口
24 グローブ内空気温度測定センサー
25 表面用温度センサー
26 シーケンサー
27 タッチパネル
G グローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グローブGを密閉状態に支持するグローブポート密閉栓3に圧力空気加圧減圧口13,グローブ内圧力測定口23,グローブ内空気温度センサー24,表面用温度センサー25を設け、圧力空気加圧減圧口13はボンベ4と給気用ガスライン6で結ばれ、給気用ガスライン6には高速流量調整弁7を有する高速加圧電磁弁8と低速流量調整弁9を有する低速加圧電磁弁10とを配し、前記加圧電磁弁8,10と圧力空気加圧減圧口13との間に位置する加圧用ガスライン6から分岐した減圧用ガスライン14には、高速流量調整弁15を有する高速減圧電磁弁16と低速流量調整弁17を有する低速減圧電磁弁18とを配し、減圧用ガスライン14の端末は本体2の外部に排気孔を開放し、前記グローブ内圧力測定口23は圧力センサー20と、グローブ内空気温度センサー24はグローブ内空気温度計測器21と、表面用温度センサー25は表面温度計測器22と、それぞれ接続され、前記圧力センサー20とグローブ内空気温度計測器21と表面温度計測器22とは、シーケンサー26を介して高速加圧電磁弁8,低速加圧電磁弁10,高速減圧電磁弁16,低速減圧電磁弁18を制御すべく接続されてなるグローブ用リーク検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−191157(P2011−191157A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56983(P2010−56983)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(591066465)日本エアーテック株式会社 (27)
【Fターム(参考)】