説明

ケラチン繊維の損傷評価方法

カチオン性アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を使用して、ケラチン繊維の損傷を評価するための方法、並びに前記カチオン性蛍光化合物を使用して、異なるケラチン繊維の損傷を比較するための方法。これらの方法は、ケラチン繊維の損傷の程度を、定量的及び/又は定性的に評価するために有用であり、また、異なる由来の繊維、異なる繊維の部分、並びに/又は異なる化粧品処置、化学的処置、及び/若しくは機械的処置によって処置された繊維の損傷を比較するためにも有用である。前記方法は、組成物及び/又はトリートメントの、他に対する優位性についての広告内容を裏付けるためにも有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様では、本発明は、カチオン性アンモニウム基を含み、カルボキシル及び/又はスルホニル基を含まないカチオン性蛍光化合物を使用する、ケラチン繊維の損傷評価方法に関する。第2の態様では、本発明は、前記カチオン性蛍光化合物を使用する、異なるケラチン繊維の損傷を比較する方法に関する。これらの方法は、ケラチン繊維の損傷の程度を、定量的及び/又は定性的に評価するために有用であり、また、異なる由来の繊維、異なる繊維の部分、並びに/又は異なる化粧品処置、化学的処置、及び/若しくは機械的処置によって処置された繊維の損傷を比較するためにも有用である。前記方法は、組成物及び/又は処置の、他に対する優位性についての広告内容を裏付けるために有用である。
【背景技術】
【0002】
ケラチン繊維、具体的には、ヒトの毛髪繊維は、経時的に損傷し得る。損傷は、繊維の外層(すなわち、キューティクル)及び/又は内層(すなわち、皮質及び髄質)に関与してもよい。キューティクルは、重なり合う細胞(スケール)からなり、それらは近位端(基端部)にて接続されていて、毛髪繊維の遠位端(先端部)に向かって尖っている表面損傷がない場合、キューティクルは、通常滑らかな無傷のスケール端部とスケール表面を含む。対照的に、毛髪繊維が損傷される場合、スケール端部が損傷されている。損傷、特にキューティクルへの損傷は、化学的及び機械的な破壊、及び弾性及び引張変形、ベンディング及び繊維硬さ、並びにねじり及び繊維剛性を含む、挙動及び化粧品の挙動に及ぼす衝撃に対して毛髪をより脆弱にする。
【0003】
損傷は、空気の汚染、日光への曝露、水プール、及び/又は雨を含めた、環境要因によって引き起こされる場合がある。損傷はまた、グルーミング(化粧品)処置、化学的処置、及び/又は機械的処置を、繊維に適用することによっても引き起こされる場合がある。グルーミング処置、特にシャンプーは、毛髪を洗うために一般的に用いられている。しかし、シャンプーは、異なる方法で毛髪を損傷する可能性がある。それらは、磨耗及び/又は侵食によって毛髪を損傷し得、並びに毛髪から構造脂質及び蛋白質性物質をゆっくりと溶解又は除去することによっても損傷し得る。化学的処置は、通常、毛髪の構造を改変することを伴い、毛髪繊維に深刻な損傷を付与し得る。これは、例えば毛髪の減少(パーマネントウェーブ過程)、毛髪の漂白並びに/又は酸化染料及び/若しくは永久染毛剤を用いる染毛が挙げられる。機械的処置、特にブラッシング、コーミング、タオル乾燥及びブロー乾燥は、磨耗及び/又は侵食によって毛髪を損傷し得る。
【0004】
損傷は、適切な処置を適用することによって、予防され得及び/又は少なくとも部分的に修復され得る。特に、コンディショニング組成物は、損傷を予防及び/又は修復するために一般的に使用されている。それらは、長鎖脂肪アルコール及び/又は他の脂質化合物と組み合わせたカチオン性界面活性剤を含んでもよい。それらはまた、シリコーン系化合物を含んでもよい。
【0005】
毛髪に生じた損傷の程度を評価することは、ケラチン繊維に対しての、様々な環境要因の影響、並びに化粧品(グルーミング)処置、化学的処置、及び機械的処置の影響を理解する目的において、興味深い。そのような評価はまた、毛髪の損傷の予防及び/又は修復に使用される処置の有効性を立証する目的においても、興味深い。種々の解析方法を使用する、毛髪の損傷を評価するためのいくつかの試みが、これまでに報告されている。しかしながら、そのような方法は、複雑で高価な技術的装置を通常必要とし、及び/又は信頼性あるデータを提供しない。特に、いくつかの蛍光化合物を使用する方法が既に報告されている。しかしながら、例えば、健康な毛髪(すなわち未損傷)と損傷した毛髪とを比較する場合、両毛髪間から取得されたデータは、著しくは異ならないように見える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ケラチン繊維、具体的には、ヒトの毛髪繊維の損傷を評価する方法を提供する必要性が存在する。具体的には、化粧品処置、化学的処置、及び/又は機械的処置を使用して処置されたケラチン繊維の損傷を評価する方法を提供する必要性が存在する。更には、異なるケラチン繊維の損傷、例えば、処置されていない繊維の損傷と、処置された繊維、又は異なる処置によって処置された繊維の損傷とを、評価及び比較する方法を提供する必要性も存在する。化粧品用組成物(具体的には、コンディショニング組成物)に関しては、このような組成物の、毛髪繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する有効性を評価する方法を提供する必要性が存在する。毛髪繊維の損傷の予防及び/又は処置に関する、2種以上の化粧品用組成物、具体的にはコンディショニング組成物の、有効性を比較する方法を提供する必要性も存在する。最終的には、毛髪繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する、組成物の有効性についての(又は、比較組成物に対するこの組成物の優位性についての)広告内容を裏付ける方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケラチン繊維の損傷を評価するための方法に関し、本方法は、特定のカチオン性蛍光化合物で繊維の少なくとも1つのサンプルを標識付けする工程と、標識付けされた繊維の蛍光を評価す工程と、を含む。本発明はまた、ケラチン繊維の損傷を評価し比較するための方法に関し、特に繊維の少なくとも2つの異なるサンプルを提供する工程と、それらを特定のカチオン性化合物で標識付する工程と、標識付された繊維の蛍光を評価し、次いで比較する工程と、を含む。これらの方法は、環境曝露への露出後及び化粧品を使用しての処置後、化学的又及び/又は機械的処置後、の繊維の損傷の程度を評価し比較する工程を可能にする。これらの方法はまた、毛髪への損傷を予防及び/又は修復するための組成物の効能も評価することを可能にする。更には、これら方法は、毛髪への損傷の予防及び/又は修復のための組成物の効能を評価し比較する工程を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の態様では、本発明は、ケラチン繊維の損傷を評価するための方法に関し、本方法は、
−ケラチン繊維の少なくとも1つのサンプルを提供する工程と、
−第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を提供する工程と、
−前記繊維のサンプルを、前記カチオン性蛍光化合物で標識付する工程と、
−適切な励起波長を提供する発生源を使用して、標識付された繊維の蛍光を評価する工程と、を含む。
【0009】
驚くべきことに、発明者らは、ケラチン繊維表面の損傷が、蛍光顕微鏡を使用することによって並びに使用される蛍光化合物を注意深く選択することによって、定性的かつ定量的の双方にわたって評価され得ることを見出した。ただし、発明者らは、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物が、適切な励起波長を放射する装置と組み合わされて用いられた場合、繊維の蛍光を評価するために有用なデータを取得し、並びにそのような蛍光が損傷の特定の程度と相関することを見出した。同様に、これら特定なカチオン性蛍光化合物は、データの取得が、処置された繊維の蛍光を未処置の繊維、又は2つの異なる処置で処置された繊維の蛍光に対して比較することを可能にする。理論によって拘束されるものではないが、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物が、未損傷の繊維に対して損傷した繊維により顕著に相互作用し、そのような相互作用が繊維の損傷の程度を増加させると信じられている。特に、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、これらカチオン性蛍光化合物は、特に静電気による引力によって、損傷したスケール端部及び表面に特異的に相互作用する(損傷した繊維で典型的)と信じられている。これとは対照的に、それらは滑らかな未損傷のスケール端部及びスケール表面にはるかに少なく相互作用するか、全く相互作用しない場合もある(健康又は未損傷の繊維で典型的)。
【0010】
本発明による、この方法は、少なくとも1つのケラチン繊維のサンプルを提供する工程(いわゆる、「提供工程」)を含む。前記サンプルは、1本の繊維、2本又は数本の繊維を含んでもよい。前記サンプルが少なくとも2本の繊維を含む場合、前記繊維は、その一端にて、あるいは両端にて、互いに束ねられてもよい。通常、前記サンプルは、同一の由来(例えば、同一人物、及び身体の同一領域)の繊維、並びに/又は同一の部分(例えば、毛髪繊維の、根元端部又は先端端部)の繊維を含み、並びに/又は同一の化粧品処置、化学的処置、及び/若しくは機械的処置が施されている。
【0011】
繊維は、カチオン性蛍光化合物と接触されるのに十分な長さ、並びにそれらの蛍光が評価されるために十分な長さであり得る。繊維は、好ましくは、1cm〜10cmの長さ、より好ましくは、1cm〜5cmの長さ、更により好ましくは、2cm〜5cmの長さを有する。
【0012】
繊維は、哺乳類の毛から、好ましくはヒトの毛髪から、より好ましくはヒト女性の毛髪から、選択することができる。ヒトの毛髪の由来は、白人、アフリカ人、アジア人、又は任意の他の由来であってもよい。
【0013】
毛髪繊維は、身体の任意の部位から、例えば、脚、腕、胴体、顔面又は頭皮から得ることができる。毛髪繊維は、頭皮から得ることが好ましい。
【0014】
方法は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を提供する工程(いわゆる「提供工程」)を更に含む。本化合物は、負に荷電されたケラチン繊維と相互作用することが可能である。本化合物はまた、カチオン性蛍光プローブと呼ばれてもよい。特に、前記相互作用は、カチオン性蛍光化合物の正荷電された第四級アンモニウム基とケラチン繊維の負荷電された基との間の静電気による引力によって、発生してもよい。驚くべきことに、発明者らは、カチオン性蛍光化合物と毛髪繊維との間の相互作用(並びに、したがって、蛍光強度)が、損傷の程度に関連性がある、ケラチン繊維の全体の負電荷に密接に関係していることを見出した。したがって、これらの特定なカチオン性蛍光化合物の使用は、蛍光強度とケラチン繊維の損傷の程度との間の明確な相関を立証することを可能にする。これとは対比的に、発明者らは、少なくとも1つのカルボキシル基及び/又はスルホニル基を含むカチオン性蛍光化合物を使用した場合、特に、未損傷の毛髪繊維に対して働いた場合、蛍光強度の大きな変動が得られることも見出した。このような化合物は、例えばエタンアミニウム、N−[9−(2−カルボキシフェニル)−6−(ジエチルアミノ)−3H−キサンチン−3−イルイデン]−N−エチル−、塩化物である。このような変動が、蛍光強度と損傷度との間の相関性を表示することは困難である。
【0015】
カチオン性蛍光化合物は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まず、アクリデン、アゾ、ジアリールメタン、ユーロジン、オキサゾン、チアゾール、トリアリールメタン、サフラニン、又はそれらの混合物の部類に属する、カチオン性蛍光化合物のグループから選択されてもよい。
【0016】
特に、カチオン性蛍光化合物は、色指数(これ以降「C.I.」と呼ぶ)番号46005、41000、50040、51180、49005、42000、42040、42500、42510、42520、42555、42563、42585、42600、44045、44085、50240、又はそれらの混合物の化合物のグループから選択されてもよい。前記化合物は、46005(アクリジンオレンジ、ベーシックオレンジ14、C17203Cl)、41000(アウラミンO、ベーシックイエロー2、C17223)、50040(ニュートラルレッド、ベーシックレッド5、C15174Cl)、51180(ナイルブルー、ベーシックブルー12、C201822)、49005(Thioflavine T、ベーシックイエロー1、C17192SCl)、42000(マラカイトグリーン、ベーシックグリーン4、C23252Cl)、42040(ブリリアントグリーン、ベーシックグリーン1、C273424S)、42500(パラロサニリン、ベーシックレッド9、C19183Cl)、42510(ロサニリン、ベーシックバイオレット14、C20203Cl)、42520(ニューフクシン、ベーシックバイオレット2、C22243Cl)、42555(クリスタルバイオレット、ベーシックバイオレット3、C25303Cl)、42563(ビクトリアブルー、ベーシックブルー8、C34343Cl)、42585(メチルグリーン、ベーシックグリーン20、C26333Cl2)、42600(エチルバイオレット、ベーシックバイオレット4、C31423Cl)、44045(ビクトリアブルー、ベーシックブルー26、C33323Cl)、44085(ナイトブルー、ベーシックブルー15、C38423Cl)、50240(サフラニン、ベーシックレッド2、C20194Cl(ジメチル)及びC21214Cl(トリメチル))のように、それらの一般名、C.I.名、及び/又は経験式によって更に定義されてもよい。カチオン性蛍光化合物は、本化合物が少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まず、負に荷電したケラチン繊維と相互作用する限りにおいて、任意の別個の化合物であってもよい。
【0017】
カチオン性蛍光化合物は、ヨウ化メチルなどのような任意な適切なアルキル化剤を用いて、第一級、第二級及び/又は第三級アンモニウム基を含む、カチオン性蛍光化合物を四級化することによって得られてもよい。例えば、カチオン性蛍光化合物は、21000(ビスマルクブラウン、ベーシックブラウン1、C18208Cl2)、52015(メチレンブルー、ベーシックブルー9、C16183SCl)、52020(メチレングリーン、ベーシックグリーン5、C161742SCl)、52020(トルイジンブルー、ベーシックブルー17、C15163SCl)のC.I.番号(一般名、C.I.名及び/又は経験式)の化合物のグループから選択された化合物から入手し得る。
【0018】
カチオン性蛍光化合物は、チアゾールの部類に属する化合物のグループから選択されるのが好ましい。好適な実施形態では、カチオン性蛍光化合物は、式I:
【0019】
【化1】

【0020】
のチアゾール化合物である。式Iの前記チアゾール化合物は、一般的に知られていて、以降Thioflavine Tと呼ぶ。Thioflavine Tは、318.9の分子量を有し、400nm〜440nmの励起波長にて450nm〜600nmの放射波長の蛍光を放射する。特に、Thioflavine Tは、500nm〜560nmの励起波長で緑色蛍光を放射する。式Iの前記チアゾール化合物の市販されている発生源は、例えばSigmaからのThioflavine Tである。Thioflavine Tを提供することは、発明者らによって見出されたように、本化合物とケラチン繊維との間の相互作用が、ケラチン繊維が損傷しているか否かによって、並びに損傷の程度によって著しく異なることが特に有益である。したがって、Thioflavine Tは、異なる由来の、異なる部分からの及び/又は異なる処置を施された、ケラチン繊維間の損傷の程度を比較するために特に好適である。
【0021】
カチオン性蛍光化合物は、任意の適切な形状、例えば、粉末、液体又は固体形状で提供されてもよい。カチオン性蛍光化合物は、溶液の形で提供されるのが好ましく、水溶液で提供されることがより好ましい。溶液は、組成物の総重量で1ppm〜3000ppmの、好ましくは100ppm〜1000ppmの、より好ましくは400ppm〜600ppmの、前記化合物を含む。溶液は、好適な水性担体、好ましくは水を含んでもよい。
【0022】
方法は、繊維のサンプルをカチオン性蛍光化合物で標識付する工程(いわゆる「標識付工程」)を更に含む。標識付工程は、カチオン性蛍光化合物が繊維と相互作用するために、適切な方法によって、並びに十分な所定の期間の時間で、サンプルをカチオン性蛍光化合物と接触するように配置することによって実行され得る。本工程を実行後、繊維を以降「標識付繊維」と称することができる。
【0023】
カチオン性蛍光化合物が溶液の形状で提供される場合、サンプルは、前記サンプルを溶液中に浸漬させることによって、カチオン性蛍光化合物と接触させるよう配置される。
【0024】
カチオン性蛍光化合物が繊維と相互作用するために十分な時間を有することを確実にするために、繊維は、1秒〜10分間、より好適には1秒〜1分間、蛍光化合物と接触するよう配置されるのが好ましい。
【0025】
該方法は、適切な励起波長を提供する発生源を使用して、標識付繊維の蛍光を評価する工程(いわゆる「評価工程」)を更に含む。励起波長は、使用されるカチオン性蛍光化合物に依存するであろう。ただし、それぞれのカチオン性蛍光化合物は、特定な吸収スペクトルを有する。励起状態における化合物を得るために(化合物が特定的な波長にて光を放射するために、以降「放射波長」と称する)、発生源は適切な励起波長を提供するべきである。特定的な波長を提供する任意の市販の発生源が使用されてもよい。
【0026】
Thioflavine Tは、励起状態にある場合、つまり450nm〜600nm(特に緑色蛍光に関しては500nm〜560nm)の「蛍光性」放射波長で、440nmにて最大吸収を有する。Thioflavine Tを励起させるために、400nm〜440nmの励起波長が提供されるべきである。
【0027】
標識付繊維の蛍光を評価する工程は、カチオン性蛍光化合物によって放射された波長(すなわち蛍光)を検出するために好適な、必要な場合は表示及び/又は記録するために適した任意の装置を使用して実行されてもよい。検出は、蛍光顕微鏡を使用して実行されてもよい。市販の蛍光顕微鏡は、例えば、Nikonから入手可能なEclipse 80i又はPartecから入手可能なCyscopeである。蛍光の評価は、好適なソフトウェアを使用して補助されてもよい。観測のための市販のソフトウェアは、例えば、Mitani Corporationから入手可能なDynamicEye REAL及びMitani Corporationから入手可能なLuminaVisionである。画像解析のための市販のソフトウェアは、例えばMitani Corporationから入手可能なLuminaVisionである。
【0028】
サンプルの蛍光は、双眼鏡を通しての観測などのような直接的目視検査によって、又は写真解析などのような間接的目視検査のいずれかの目視検査によって定性的に評価されてもよい。サンプルの蛍光は、データ解析によって定量的に評価されてもよい。
【0029】
方法はまた、繊維のサンプルを処置する工程(いわゆる「処置工程」)を含んでもよい。この処置工程は、好ましくは、提供工程の後、並びに標識付け工程の前に実行される。処置工程は、任意の好適な化粧品用組成物、化学的処置、及び/又は機械的処置を使用して、繊維のサンプルを処置することにより、実行することができる。
【0030】
本工程は、化粧品用組成物を、ケラチン繊維に対して適用することにより、実行することができる。シャンプー、コンディショニング組成物、ヘアーリンスオフトリートメント、ヘアーリーブオントリートメント、スタイリング組成物などのような当業者に既知のいずれかの好適な化粧品用組成物が使用され得る。例えば、商標名Pantene(登録商標)及びHead & Shoulders(登録商標)の、いずれの市販のシャンプー、コンディショナー、ヘアリンスオフトリートメント、及びヘアリーブオントリートメントも使用することができる。
【0031】
1つのみの組成物が繊維に適用されてもよい。別の方法としては、2つ又はいくつかの組成物を、同時に又は順次に、適用してもよい。更には、各組成物の適用の前、及び/又は適用の後に、繊維を更に、湿潤させ、すすぎ洗いし、及び/又は乾燥させてもよい。1つの実施形態では、この処置工程は、シャンプーで繊維を処置(洗浄)し、次いで洗浄した繊維を水ですすぎ洗いし、次いで繊維を乾燥させることを含む。別の実施形態では、処置工程は、シャンプーで繊維を処置(洗浄)し、次いで洗浄した繊維を水ですすぎ洗いし、次いでコンディショニング組成物で繊維を処置し、次いで処置した繊維を水ですすぎ洗いし、次に、繊維を乾燥させることを含む。別の実施形態では、処置工程は、シャンプーで繊維を処置(洗浄)し、次いで洗浄した繊維を水ですすぎ洗いし、次いでコンディショニング組成物で繊維を処置し、次いで処置した繊維を水ですすぎ洗いし、次いでヘアリンスオフトリートメントで繊維を少なくとも1回処置し、次いで処置した繊維を水ですすぎ洗いし、次いで繊維を乾燥させることを含む。
【0032】
択一的に又は相補的に、本工程は、化学的処置を使用して繊維のサンプルを化学的に処置することによって実行されてもよい。パーマネントウェーブ処置、ブリーチ処置、及び/又は色染め処置などの、当該技術分野において既知の、いずれの好適な化学的処置も使用することができる。
【0033】
択一的に又は相補的に、本工程は、繊維を機械的に処置することによって実行されてもよい。ブラッシング、コーミング、タオル摩擦、及び/又はブロー乾燥などの、当該技術分野において既知の、いずれの好適な機械的処置も使用することができる。
【0034】
方法はまた、過剰のカチオン性蛍光化合物をすすぎ洗いする工程を含んでもよい(いわゆる「すすぎ洗い工程」)。すすぎ洗い工程は、標識付工程後並びに評価工程前に実行されてもよい。過剰のカチオン性蛍光化合物、すなわち繊維と相互作用しない化合物(いわゆる「遊離化合物」)を除去するための繊維のすすぎ洗い工程は、遊離化合物の存在によって衝撃を受ける繊維の蛍光の評価を回避するために有益である。繊維は、水を使用してすすぎ洗いされてもよい。特に、本工程は、過剰のカチオン性蛍光化合物を除去するために十分な所定の期間時間で、水溶液中で繊維のサンプルを浸漬することによって実行され得る。水溶液は水が好ましく、脱イオン水がより好ましい。その期間時間は、好ましくは1秒〜10分、更に好ましくは1秒〜1分である。
【0035】
本発明の方法はまた、前記評価を利用して広告内容を裏付ける工程(いわゆる、「広告工程」)も含み得る。ただし、本発明は、ケラチン繊維の損傷度を蛍光強度と相関させることが可能である。1つの処置(例えば、コンディショニング組成物)を広告する場合、本発明の方法を使用して得られたデータ及び/又は写真は、前記処置が繊維損傷を予防及び/又は修復するという広告内容の、裏付け及び/又は立証のために使用することができる。
【0036】
第2の態様では、本発明は、
−ケラチン繊維の2つの異なるサンプルを提供する工程と、
−少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を提供する工程と、
−前記繊維のサンプルを、前記カチオン性蛍光化合物で標識付する工程と、
−適切な励起波長を提供する発生源を使用して、それぞれの繊維のサンプルの蛍光を評価する工程と、
−サンプル間の蛍光を比較する工程と、
を含む方法に関する。
【0037】
該方法は、少なくとも2つ、好ましくは2〜4つ、より好ましくは2つのケラチン繊維の異なるサンプルを提供する工程を含む。本明細書で使用するとき、「異なるサンプル」は、繊維の由来、繊維の部分及び/又は繊維に適用された処置によって、互いに異なっているサンプルを指す。
【0038】
1つの実施形態では、サンプルは異なるヒトから得られてもよい。あるいは、サンプルは、同一人物からではあるが、身体の異なる部分から得られてもよい。
【0039】
別の実施形態では、一方のサンプルは、繊維の先端部分を含み得、他方のサンプルは、同一繊維の根元部分を含み得る。同一繊維の、異なる部分を提供して比較すること、具体的には、先端と根元とを提供して比較することにより、繊維の成長につれての、経時的な損傷の程度の差異を評価することが可能になる。
【0040】
別の実施形態では、一方のサンプルは未処理繊維を含み得、他方のサンプルは、化粧品用組成物で処置された繊維を含み得る。他方のサンプルは、シャンプー、及び/又はコンディショニング組成物、及び/又はヘアリンスオフトリートメント、及び/又はリーブオントリートメント、及び/又は任意の他の好適な化粧品用組成物で処置することができる。処置された繊維と未処置の繊維との比較は、シャンプーなどの組成物の、毛髪に対する損傷効果を評価するために、また対照的に、繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する、コンディショニング組成物などの組成物の利益を評価するために、有益である。
【0041】
別の実施形態では、サンプルは、異なる化粧品用組成物で処置することができる。例えば、網羅的なものではないが、(1)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、他方のサンプルを別のシャンプーで処置することができる。(2)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置することができ、他方のサンプルを同じシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができる。(3)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができ、他方のサンプルを同じシャンプーで処置し、次いで別のコンディショナーで処置することができる。(4)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができ、他方のサンプルを同じシャンプーで処置し、次いで同じコンディショナーで処置し、次いでリンスオフトリートメントで処置することができる。(5)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができ、他方のサンプルを同じシャンプーで処置し、次いで同じコンディショナーで処置し、次いでリーブオントリートメントで処置することができる。(6)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができ、他方のサンプルを別のシャンプーで処置し、次いで同じコンディショナーで処置することができる。(7)一方のサンプルを1つのシャンプーで1回処置し、他方のサンプルを同じシャンプーで2回又は数回処置することができる。(8)一方のサンプルを1つのコンディショナーで1回処置し、他方のサンプルを同じコンディショナーで2回又は数回処置することができる。異なる処置がなされた繊維を比較することは、異なるシャンプーの損傷効果の比較のために有益であり((1)を参照)、コンディショナーの、シャンプー処置に対する緩和効果の評価のために有益であり((2)を参照)、繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する、コンディショニング組成物の利益の比較のために有益であり((3)を参照)、リンスオフトリートメントの、シャンプー処置に対する緩和効果の評価のために有益であり((4)を参照)、リーブオントリートメントの、シャンプー処置に対する緩和効果の評価のために有益であり((5)を参照)、1つのコンディショナーの、異なるシャンプー処置に対する緩和効果の比較のために有益であり((6)を参照)、繊維に対する反復処置の効果の比較のために有益である((7)及び(8)を参照)。
【0042】
別の実施形態では、一方のサンプルは、未処置の繊維を含み得、他方のサンプルは、化学的に処置されている繊維を含む。別の方法としては、サンプルは、異なる化学的処置で処置された繊維を含み得る。
【0043】
別の実施形態では、一方のサンプルは、未処置の繊維を含み得、他方のサンプルは、機械的に処置されている繊維を含む。別の方法としては、サンプルは、異なる機械的処置で処置された繊維を含み得る。
【0044】
提供(カチオン性蛍光化合物)工程、任意の/択一的処置工程、標識付工程、任意の洗い流し工程、評価工程、及び任意の広告工程は、本発明の第1の態様と共にこれまでに定義されている。
【0045】
該方法はまた、サンプルの蛍光を比較する工程(いわゆる「比較工程」)を含む。サンプルの蛍光は、双眼鏡を通しての観測などのような直接的目視検査によって、又は写真解析などのような間接的目視検査のいずれかの目視検査によって定性的に比較されてもよい。サンプルの蛍光はまた、データ解析によって定量的に比較されてもよい。比較工程は、例えば、繊維上への1つの処置の効果を比較するために(処置なしに対して)、少なくとも2つの異なる処置の損傷効果を比較するために、繊維の損傷を予防及び/又は修復するための少なくとも2つの異なる処置の効能を比較するために有益である。
【0046】
本発明の方法はまた、前記評価を利用して広告内容を裏付ける工程(いわゆる、「広告工程」)も含み得る。2つの異なるサンプル間の比較の結果に基づいた広告工程を行なうことは、例えば、繊維の損傷の予防及び/若しくは修復に関する処置の有効性の広告のために、並びに/又は損傷の予防及び/又は修復に関する、1つの処置の、別の処置に対する優位性の広告のために、有益である。1つの処置(例えば、コンディショニング組成物)を別の処置と比較して広告する場合、本発明の方法を使用して得られたデータ及び/又は写真は、繊維の損傷の予防及び/又は修復に関して、前記処置が他の処置と比べて優れた効能を提供するという広告内容の、裏付け及び/又は立証のために使用することができる。
【0047】
特定の実施形態では、本発明はケラチン繊維の損傷を評価するための方法に関し、方法は、
−ケラチン繊維の少なくとも1つのサンプルを提供する工程と、
−前記サンプルを化粧品、化学的及び/又は機械的処置で処置する工程と、
−少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を提供する工程と、
−過剰なカチオン性蛍光化合物をすすぎ洗いする工程と、
−前記処置したサンプルを前記カチオン性蛍光化合物で標識付する工程と、
−適切な励起波長を提供する発生源を使用して、標識付処置したサンプルの蛍光を評価する工程と、
−必要に応じて、繊維の損傷を予防及び/又は修復するための処置の効能及び/又は性能についての広告内容を裏付けるために、前記評価を使用する工程と、
を含む。
【0048】
別の特定の実施形態では、本発明は、異なるケラチン繊維の損傷を評価し比較するための方法に関し、この方法は、
−ケラチン繊維の2つの異なるサンプルを提供する工程と、
−サンプルの1つを化粧品、化学的及び/又は機械的処置で処置する工程と、
−少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を提供する工程と、
−過剰のカチオン性蛍光化合物をすすぎ洗いする工程と、
−未処置サンプルと処置サンプルを、前記カチオン性蛍光化合物で標識付する工程と、
−適切な励起波長を提供する発生源を使用して、標識付した、未処置サンプル(対照)及び標識付した処理サンプルの蛍光を評価する工程と、
−両サンプルの蛍光を比較する工程と、
−必要に応じて、繊維の損傷を予防及び/又は修復するために、対照に対する処置の効能及び/又は性能についての広告内容を裏付けるために、前記評価及び比較を使用する工程と、
を含む。
【0049】
別の特定の実施形態では、本発明は、異なるケラチン繊維の損傷を評価し比較するための方法に関し、方法は
−ケラチン繊維の2つの異なるサンプルを提供する工程と、
−異なる化粧品、化学的及び/又は機械的処置で、両サンプルを処置する工程と、
−少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を提供する工程と、
−過剰のカチオン性蛍光化合物をすすぎ洗いする工程と、
−処置された両サンプルを、前記カチオン性蛍光化合物で標識付する工程と、
−適切な励起波長を提供する発生源を使用して、標識付され、処置されたサンプルの双方の蛍光を評価する工程と、
−両サンプルの蛍光を比較する工程と、
−必要に応じて、繊維の損傷を予防及び/又は修復するための第2の処置に対する第1の処置の優位性についての広告内容を裏付けるために、前記評価及び比較を用いる工程と、
を含む。
【実施例】
【0050】
材料
毛髪繊維:25cmの長さのアジア系女性の毛髪繊維
カチオン性蛍光化合物:Sigmaから入手のThioflavin T
顕微鏡:Nikonから入手のEclipse 80i
ソフトウェア:Mitani Corporationから入手のDynamicEye REAL及びLuminaVision
クレンジングシャンプー:硫酸アンモニウムAE3(51.2%)、ラウリル硫酸アンモニウム(36.4%)、コカミドDEA(2.3%)、アンモニウムキシレンスルホネート(3.5%)、EDTA(0.1%)、防腐剤(<1%)、残部の(100%とする)水、を含む、pH=5〜7の組成物。
シャンプー:ラウレス硫酸アンモニウム(8.5%)、ラウリル硫酸アンモニウム:(1.7%)、コカミドプロピルベタイン(1.7%)ラウロアンホ酢酸ナトリウム(1.7%)、ジステアリン酸グリコール(1.5%)、コカミドMEA(0.8%)、脂肪アルコール(0.6%)、ジメチコン(0.6%)、ポリクオタニウム−10(0.4%)、水素化ポリデセン(0.2%)、プロビタミン(<0.1%)、アミノ酸(<0.1%)、防腐剤(0.4%)、プロビタミン(<0.1%)、残部の(100%とする)水、を含む、pH=5〜7の組成物。
コンディショニング組成物:ベヘントリモニウムメトサルフェート/イソプロピルアルコール(2.3%)、脂肪族アルコール(5.2%)、末端アミノジメチコン(4.0%)、防腐剤(0.6%)、残部の(100%とする)水、を含む、pH=5〜7の組成物。
リンスオフトリートメント:塩化ベヘントリモニウム(2.8%)、末端アミノジメチコン(2.0%)、脂肪アルコール(6.5%)、ベンジルアルコール(0.4%)、EDTA(0.1%)、プロビタミン(<0.1%)、アミノ酸(<0.1%)、防腐剤(<0.1%)、残部の(100%とする)水、を含む、pH=5〜7の組成物。
【0051】
化合物の百分率は、組成物の総重量当たりの重量パーセントである。
【0052】
プロトコル
実行される方法に応じて、工程の一部、例えば処置工程は、省略される場合がある。
1.[提供工程]1本の毛髪繊維の根元部分(毛髪の根元から「3cm〜6cm」部分)のサンプル又は1本の毛髪の先端部分(毛髪の根元から「14cm〜20cm」部分)のサンプルのいずれか1つのサンプルが提供される。それぞれのサンプルがクレンジングシャンプー溶液(10%)で洗浄される。
2.[提供工程]500ppmのThioflavin T(Sigma)(以降は「Thioflavin T溶液」と称する)を含む水溶液が提供される。
3.[処置工程]以下に記載されたように、シャンプー、次いでコンディショニング組成物、次いでリンスオフトリートメントを適用することによって、サンプルが処置される。これらのサンプルは、以降は、「処置サンプル」と称される。
3.1それぞれのサンプルが、50%シャンプー溶液中に2秒間、完全に浸漬される。次いで、サンプルが取り出され、根元から先端部分の方向で10回擦られる。次いで、サンプルが脱イオン水で10秒間すすぎ洗いされる。
3.2それぞれのサンプルが、100%コンディショニング組成物中でに2秒間、完全に浸漬される。次いで、サンプルが取り出され、根元から先端部に向かって2回擦られる。次いで、サンプルが脱イオン水で1秒間すすぎ洗いされる。
3.3それぞれのサンプルが、100%リンスオフトリートメント中で2秒間、完全に浸漬される。次いで、サンプルが取り出され、根元から先端部に向かって2回擦られる。次に、サンプルが脱イオン水で1秒間すすぎ洗いされる。
3.4それぞれのサンプルが、一夜、周囲温度で乾燥される。
4.[標識付工程]それぞれの処置されたサンプルが、Thioflavin T溶液中に10秒間、完全に浸漬される。
5.[すすぎ洗い工程]次いで、過剰のカチオン性蛍光化合物(すなわち、遊離化合物)を除去するために、それぞれの処置され、標識付されたサンプルが、脱イオン水中で10秒間、撹拌しながら(振盪して)、完全に浸漬される。
6.[評価工程]それぞれの処置され、標識付されたサンプルが、両面接着テープでスライドガラス上に固定される。以下の表I中に詳説されたパラメータを用いて、反射モードにての蛍光画像及び正像を獲得することによって、蛍光の評価が実行される。視野内の全毛髪表面上の緑色蛍光強度及び蛍光データが報告/記録される。
【0053】
【表1】

【0054】
毛髪繊維の根元部分の損傷に対する毛髪の先端部分の損傷の評価及び比較
同一の繊維の2つのサンプル(すなわち、先端部分と根元部分)が提供される。サンプルが未処置のままにされる。省略される工程3を除いては、上述のプロトコルにしたがって、蛍光が評価される。
【0055】
【表2】

【0056】
表IIに提供されたデータによって示されるように、未処置の先端部分から放射された蛍光は、未処置の根元部分よりは著しく高い(ペアt検定@95%信頼水準による)。このことが、本発明による方法が、毛髪繊維の蛍光の強度(繊維に相互作用するカチオン性蛍光化合物を介しての)を損傷の程度と相関させるために好適であることを立証している。毛髪がより損傷すると、蛍光はより強くなる。
【0057】
毛髪繊維の未処置先端部分並びに異なる処置をされた毛髪の先端部分に対する処置された先端部分の損傷の評価及び比較
同一繊維の2つのサンプルの2つのグループが提供される。それぞれのグループは、処置された先端部分対未処置先端部分(対照1及び2)を含む。蛍光強度が、上記プロトコルにしたがって評価される。対照1及び2に関しては、工程3が省略される。処置された先端部分に関しては、以下の表II中に記載されたように、工程3が導入される。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
表IV中に提供されたデータで示されるように、処置された先端部分の蛍光強度は、未処置の先端部分のものよりも著しく低い(ペアt検定@95%信頼水準による)。このことは、処置された損傷繊維(毛髪先端部分)の損傷の程度が、未処置の損傷した繊維に対して著しく低減されることを示している。このことは、本発明による方法が、コンディショニング組成物及び/又はリンスオフトリートメントの、毛髪繊維への損傷を修復する、並びに伸張された部分によって毛髪繊維への損傷を予防する効能を評価するために好適であることを立証している。
【0061】
表IV中に提供されたデータによって示されるように、グループ2の処置された先端部分の蛍光強度は、グループ1の処置された先端部分の蛍光強度よりも著しく低い(ペアt検定@80%信頼水準による)。このことは、グループ2の処置(リンスオフトリートメントでの追加的処置を含む)が、グループ1の処置よりも損傷した繊維の損傷の程度をはるかに低減することを示している。このことは、本発明による方法が、毛髪繊維への損傷を修復する、並びに伸張された部分によって毛髪繊維への損傷を予防するための、2つの異なる処置の効能を評価し、比較するために好適であることを立証している。
【0062】
本明細書に開示した寸法及び値は、記述された正確な数値に厳しく限定されるものと理解すべきでない。むしろ、特に言及しない限り、そのようなそれぞれの寸法は、記述された値と、その値の周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0063】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願書類を含め、本明細書において引用される全ての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、その全体を参考として本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。
【0064】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維の損傷を評価するための方法であって、
−ケラチン繊維の少なくとも1つのサンプルを提供する工程と、
−少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を提供する工程と、
−前記繊維のサンプルを、前記カチオン性蛍光化合物で標識付する工程と、
−適切な励起波長を提供する発生源を使用して、前記繊維の前記蛍光を評価する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
異なるケラチン繊維の損傷を評価し比較する方法であって、
−ケラチン繊維の少なくとも2つの異なるサンプルを提供する工程と、
−少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含み、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含まない、カチオン性蛍光化合物を提供する工程と、
−前記繊維のサンプルを、前記カチオン性蛍光化合物で標識付する工程と、
−適切な励起波長を提供する発生源を使用して、繊維のそれぞれのサンプルの前記蛍光を評価する工程と、
−前記サンプルの蛍光を比較する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維が、哺乳類の体毛、好ましくはヒトの毛、より好ましくは女性の毛から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カチオン性蛍光化合物が、アクリジン、アゾ、ジアリールメタン、ユーロジン、オキサゾン、チアゾール、トリアリールメタン、サフラニン、又はそれらの混合物の部類に属する化合物の群から選択され、好ましくはチアゾールの部類に属する化合物の群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カチオン性蛍光化合物が、式I:
【化1】

のチアゾール化合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カチオン性蛍光化合物が、前記組成物と水性担体の総重量で1ppm〜3000ppmの前記化合物を含む水溶液の形態で提供される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
蛍光顕微鏡を使用して、前記繊維の蛍光が評価される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
サンプルの前記蛍光が、目視による検査によって定性的に評価され、及び/又はサンプルの前記蛍光が、ソフトウェア実装装置を使用して定量的に評価される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
化粧品の、化学的及び/又は機械的処置を使用して、繊維の前記サンプルを処置する工程を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが、前記繊維の由来、前記繊維の部分及び/又は前記繊維に適用された処置によって互いに異なる、請求項2〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
一方のサンプルが、未処置の繊維を含み、他方のサンプルが、化粧品用組成物、化学的組成物、及び/又は機械的組成物で処置された繊維を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルが、異なる化粧品の、化学的及び/又は機械的処置で処置される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記化粧品の処置が、シャンプー、コンディショニング組成物、リンスオフトリートメント、リーブオントリートメント又はそれらの組み合わせの群から選択される、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記過剰なカチオン性蛍光化合物をすすぎ流す工程を更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記評価及び/又は比較を利用する工程を更に含み、対照に対する処置の効能及び/又は他の処置に対する1つの処置の優位性についての広告内容を裏付ける、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−512455(P2013−512455A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542123(P2012−542123)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/058260
【国際公開番号】WO2011/071713
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】