説明

ケーシング充填装置の充填部部品

【課題】ソーセージ製造装置において、食肉材料充填ノズルとノズル軸受け体との接合面に設置されるOリングの破損による食品不純物の混入と、それによる食品材料の漏洩の問題を同時に解決する。
【解決手段】充填ノズル軸受に設けられた、貫通孔内部に形成する2つのOリング溝の内径を、ノズル入口側とノズル出口側で異なる大きさとする。ノズル出口側のOリング溝は、Oリングの内径が、充填ノズルにおいて充填口が形成された円筒構造部の外径と等しくなるよう形成される。ノズル入り口側のOリング溝は、先のノズル出口側のOリング溝よりもその内径を大きく形成することで破損を回避する。食品材料充填時には前記2つのOリングに外接する形状の充填ノズルを用いることで、食品材料の漏洩を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソーセージ製造装置等において内容物充填に用いられる不純物混入を防止した充填ノズル及びその周辺器具に関する。
【背景技術】
【0002】
旧来充填量の調整を人手に頼らざるを得なかった食肉等食品のケーシングへの充填処理を、自動機械を用いて行う装置が特許文献1において提案されている。また特許文献2においては、公知のソーセージ製造装置の欠点を改善して機械による自動的に充填を行うための方法及び装置が提案されており、該装置は充填物を供給するための加圧手段(1)と、天然腸ケーシングまたは人工ケーシングが装着され前記加圧手段から送り出された充填物を間欠的に受け入れ先端から吐出する充填ノズル(2)と、該充填ノズルの先端が挿通される阻止部材(3)と、該阻止部材から出た充填物が充填されたケーシングを搬送するための搬送装置(4)を備えた自動化した製造機械の基本構成が開示されている。
また特許文献3及び特許文献4には、径が不均一な天然ケーシングを使用しながらも、長さや充填径、充填重量が略一定な天然腸ソーセージを高効率に製造するための改善がなされた食肉充填処理装置の提案もなされている。
【0003】
前記特許文献2等に開示されているソーセージ製造装置の一態様を図2にて説明する。図2(a)はソーセージ製造装置を上方から見た構成図であり、図2(b)は側方から見た構成図である。図2において計量ポンプ21はペースト状の食肉充填物を加圧吐出させる加圧手段であり、ここから吐出された前記充填物はノズルブロック13に収容される。計量ポンプ21から吐出された充填物をケーシング材22に充填する働きを成す充填ノズル31には開口部31Eが形成されている。この開口部31Eは充填ノズル31を充填位置へ移動した際ノズルブロック13内に配置され、前記充填物を充填ノズル31に形成された移送孔11G中に導き入れるために設けられている。図2は基本的には充填ノズルの開口部31Eがノズルブロック13内にある配置から取り出されている非充填時の状態を示している。充填ノズル31は、シリンダ23のロッド23Aに接続され、シリンダ23によってノズルブロック13内を往復動され、これにより充填ノズル31の開口部31Eを充填位置と非充填位置に往復動される。一方、シリンダ24のロッド24Aに連結したロッド24Bは、ケーシング材22の取り付け端を充填ノズル31から吐出され充填物が前記ケーシングに充填される所定位置に配置させる働きをする。また充填ノズル31を支持するノズル回転駆動部25は、必要に応じて充填ノズル31を回転運動させる。さらに充填ノズル31の前方位置には、キャビネット20に立設された充填されたケーシングにくびれの捻りを付与する捻り駆動部26が設けられており、その先には搬送装置27が設けられている。搬送装置27は多数の挟持板からなる旋回機構を対向して設置した構造に構成されており、充填されたケーシング材22をその長手方向に牽引しつつ次の工程へ移送させる働きをする。充填されたケーシング材22は、搬送装置の挟持板の旋回運動により一定長さに区切られ、同時に捻り駆動部26によって回転が加えられることで、適宜捻り形状が形成される。
【0004】
図3〜5は前記特許文献2に記載の製造装置などの従来技術における充填ノズル周辺の器具構成について説明するものである。先ず、図3を用いて説明する。図3において31は充填ノズル、32はノズル軸受け、13はノズルブロック、14はノズル軸受け固定治具の具体形状をそれぞれ示した。図2は製造装置の非充填時における充填ノズル31及びノズルブロック13を示す。充填ノズル31は計量ポンプからノズルブロック13乃至ノズル軸受け32を経由して充填物を充填ノズル31に形成された移送孔31Gの内部に充填するノズル開口部31Eを有し、その外形はそれぞれの中心軸が共通である小径円筒部31D、中径円筒部31C及び台座円筒部31Aから形成されている。先端31Fは充填ノズルにおける前記移送孔31G中の充填物をケーシングに充填する端点である。ノズル軸受け32も外径の異なる2つの同心軸円筒が連結した形状であるが、前記円筒内部に形成されている貫通孔32Bは、内径が一様であり、充填ノズル31が挿入・保持される孔である。前記円筒には中心軸に対して垂直方向に設けられた貫通孔32Aは、計量ポンプによりノズルブロック13を経てノズル開口部31Eに充填物を送り出す搬送路として機能する。ノズルブロック13は、前段に配置される計量ポンプにて加圧された充填物を、ノズル軸受け32を介して充填ノズル31内部に形成された移送孔31Gへ送り出すための機能部であって、内部は基本的に中空であり、ノズル軸受け32を装着するための装着孔13Bが、ノズル軸受32に充填ノズル31が挿入できるように設けられている。
なお、図3ではノズル軸受け32の均一径の貫通孔32Bの形状を破線で示しているが、後述する貫通孔内側に形成されているOリング(オウリング)のような緩衝部材を装着する溝(図4の44A,Bに相当)の図示は省略されている。
ノズル軸受け固定治具14は、ノズル軸受け32をノズルブロック13に装填した状態で固定するために、ノズルブロック13の上部に設けられた13Aの孔に挿入して使用する。図3において15A乃至15Cの破線矢印は、それぞれの器具が充填時に取る対応配置と組み立ての順序を示す。この配置は、まず15Aの方向にノズル軸受け32をノズルブロック13に挿入し、次に15Bの矢印に沿ってノズル軸受け固定治具14をノズルブロック13に挿入し、内部のノズル軸受け32に設けられた切り欠け部32Dに噛み合わせることで両者を固定する。その後、ノズルブロック13に取り付けられたノズル軸受け32の貫通孔32Bに充填ノズル31を挿入した状態で、図2に示す製造装置に取り付けて使用する。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−73508
【特許文献2】特開平08−103206
【特許文献3】WO99/53770(特願2000−544196)
【特許文献4】特開2004−152
【0006】
次にノズル軸受け32の断面構造について図4を用いて説明する。図4(a)に示す点42Aから42Bの線分および中心線を含む切断面で切断したノズル軸受32の断面のx方向の断面図を図4(b)に示す。図4(b)中の43Aは円筒32壁の切断面であり、43Bは貫通孔32B(図3)に相当する構造部を示す。図4(a)に示す点42Cから42Dの線分および中心線を含む切断面で切断したノズル軸受け32の断面のy方向の断面図を図4(c)に示す。前記の通り、ノズル軸受け32は中心軸41に沿って径が一様の貫通孔を有し、同貫通孔の両端付近にはシーリング用の円環状Oリングのような緩衝部材を設置するOリング溝44A及び44Bが設けられている。図5(a)、および(b)は充填ノズル31がノズル軸受32に挿入された充填時の両者の相対配置関係を示す。
すなわち、図5(a)および図5(b)は充填ノズルがその往復動における充填位置まで前進し、ノズル開口部31Eから加圧された充填物を充填ノズル31に形成された移送孔31G(図3)に受け入れ可能になった状態を示している。この態様では、充填ノズル31の台座円筒部31Aと中径円筒部31Cの外径差から生じる段差部が、ノズル軸受け32の端面と接触することで双方の位置関係が固定される。図5(a)および図5(b)にて示される通り、ノズル軸受32の貫通孔32Bに充填位置まで挿入された充填ノズル31は、その中径円筒部31Cの外径が貫通孔32Bの内径に対して僅かに小さく作られており、結果として生じる器具間の隙間に円環状Oリング51Aと51Bが挟み込まれるという構造を成す。ここでOリング51A及び51Bは、充填ノズルの移動を円滑化し、器具同士の接触に伴う接触面の欠損・磨耗を防止する効果を有し、かつノズル軸受け32の第2の貫通孔32Aから充填ノズル開口部31Eに対して形成される食肉等の加圧充填スペースの気密性を高め、充填ノズルとノズル軸受けの隙間からの充填物漏洩を防止する。なお、充填ノズルが図5(a)及び図5(b)に示す位置にあって装置稼動時、すなわち充填ノズルがその先端からケーシング材に対して食肉等を充填している状態にあっては、充填ノズル31がその円筒軸を中心として回転する態様も取り得ることから、図中の充填ノズル開口部31Eとノズル軸受けの貫通孔32Aの方向関係は本図に限定されるものではない。
【0007】
図5(c)はケーシング材の着脱等の目的で充填ノズル31を往復動軌道上で後退させ非充填位置へ移動させた際の、ノズル軸受け32に対する相対配置の関係を示す。前記の通りOリング51A及び51Bは、充填ノズル31をノズル軸受け32の貫通孔32B内で円滑に移動させる効果を有するが、前記移動の異常などの時に充填ノズル31の台座側に位置するOリング51Aは充填ノズル開口部31Eによって破損して、製造食品に対して不純物を混入させる危険性がある。詳しく説明すると、非充填位置に移動途中の充填ノズル31とノズル軸受32との相対関係を図5(c)に示す。この状態において、装置に振動やそれに伴う充填ノズルの軸ぶれ等が発生した場合、前記要因によって充填ノズル開口部31Eの切り欠け状に形成された開口面がOリング51Aに接触すると、一般にゴムやプラスチック等の軟素材で作られたOリング51Aの一部が欠損し、欠損部分が充填ノズル内の充填物に混入して食品不純物となる恐れがある。Oリングの一部欠損により混入した不純物は小型・微量であることとその材質故に、X線解析等を用いた一般的な不純物検出方法では発見が難しく、従って製造者は当該部位のOリングに欠損がないか定期検査を実施する必要があり、欠損が発見された際には、前回の定期検査以降に製造した全ての製品に対して作業者が目視チェックを行うか或いは一括して廃棄せざるを得ず、製造コスト及び材料コストに著しいロスを引き起こす要因となっていた。暫定対策として一部製造者は、ノズル台座側のOリング51Aを敢えて用いずに製造を行っているが、Oリング設置の本来効果である装置間の磨耗抑制や充填物漏洩の抑止効果に相応の妥協が必要となり、抜本的な解決には至っていない。すなわち、これまでに使用されていた、ノズルブロック31、これに配設されている充填ノズル31および前記充填ノズルを保持するノズル軸受32の構成においては、充填ノズル31を充填位置から非充填位置に移動する際リング溝44Bに取り付けられた円環状緩衝リング(図5の51Aに相当)に充填ノズル開口部31Eが異常に接触することにより前記緩衝リングの屑が発生し充填物に入り込む可能性を防ぐことができないと言う問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、前記問題点を改善した充填部周辺の部材および前記部材を備えたソーセージ製造装置提供することである。すなわち、製造装置の充填部周辺を構成する部材の充填ノズルとその周辺器具との相対移動時における接触面における欠損・磨耗を防止し、充填ノズルとノズルブロックの隙間からの充填物漏洩を抑制し、且つ製造食品への不純物混入の恐れをなくしたストレート型ソーセージ製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、(1)ケーシング充填装置において充填物充填ノズル(11)を内部貫通孔(12B)で摺動・回転自在に保持する充填ノズル軸受体(12)であって、前記貫通孔内側に設けられた円環状緩衝リング(R1)設置用の第1のリング溝(64A)は前記第1のリング溝に設置される第1の円環状緩衝リングの内径が充填ノズルの充填物流入口(11E)が設けられた部位の円筒形構造部の外径と等しくなるよう形成されており、前記第1のリング溝に対して相対的に前記内部貫通孔の充填ノズル挿入口側に設けられた第2のリング溝(64B)は前記第2のリング溝に設置される第2の円環状緩衝リング(R2)の内径が前記充填ノズルの前記円筒形構造部の外径よりも大きいことを特徴とする充填ノズル軸受体である。
【0010】
本発明の第2は、(2)ケーシング充填装置のケーシング(22)に充填物を充填するための移送孔が形成された充填ノズル(11)であって、充填ノズル移送孔内部に充填物を受け入れるための充填物流入口(11E)を有し、当該充填物流入口が形成された第1の円筒形構造部の外径は前記第1の発明(1)に記載の充填ノズル軸受体の第1の円環状緩衝リング(R1)の内径と等しく、第1の円筒形構造部に対して充填ノズルの充填物充填先端側とは逆側に設けられた第2の円筒形構造部の外径は請求項1に記載の第2の円環状緩衝リング(R2)の内径と等しく形成されていることを特徴とする充填ノズルである。
そして、本発明の第3は、(3)少なくとも前記第1の発明(1)の充填ノズル軸受を有するソーセージ製造装置、好ましくは、前記第2発明の充填ノズルと組み合わせたソーセージ製造装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の適用により、従来技術では難しかったノズル軸受け内部のOリングのような緩衝部材の破損による不純物混入の問題と、ノズル軸受け周辺での充填物漏洩による材料ロスの問題を同時に回避可能であり、ソーセージ等の食品製造効率と製造コストを向上させることができる。本発明によれば、充填ノズル及びノズル軸受け内部孔に形状工夫を施すことで、ノズル軸受け内部に設置したOリングが充填ノズルの動作により破損する可能性が払拭されるとともに、充填ノズルとノズル軸受けが接合する際には、従来技術通り両器具間がOリングを介して隙間無く近接状態となるため、器具同士の接触に伴う接触面の欠損・磨耗を抑制しながら、かつ食肉充填時の充填物漏洩を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について適宜図を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の第1の実施例を説明するにあたり、まず発明の技術の充填ノズル周辺の器具構成を図1を用いて説明する。図1において11は充填ノズル、12はノズル軸受け、13はノズルブロック、14はノズル軸受け固定治具を示す。前記図2〜図5の従来技術の説明において参照した図3で付与したと同符合を付したものは互いに同様の機能・形状を有するものであり、異なる符合を付したものは本発明による改善技術が盛り込まれた構成器具を構成する要素である。図1において充填ノズル11は互いに中心軸を共有する小径円筒部11D、中径円筒部11C、大径円筒部11B及び台座円筒部11Aが連続した形状を有し、ノズル軸受12に形成された貫通孔12Aを経て移送される食肉等の充填物の充填口となるノズル開口部11Eは中径円筒部11Cに形成されている。前述した従来技術との主たる差異である大径円筒部11Bは、隣接する中径円筒部に比較して若干外径が大きく、双方の外径差により生じる段差面11Fは、充填ノズル11の中心軸に対して垂直方向の段差形状を有する。またノズル軸受け12は、外形形状としては図3に示す従来型のノズル軸受け32と同じであるが、貫通孔12Bは内部形状が中心軸が同一の異なる内径を有する貫通孔構造を有する点で従来とは異なっている。図1中の15A乃至15Cは各構成要素の組立て方法(挿入方向)および製造装置の稼動時の働きは前述した従来技術と同様である。なお図1においても図3と同様、ノズル軸受け12の貫通孔12Bの内部形状を破線で示し、後述するOリング溝は図示されていない。
次にノズル軸受け12の断面構造を図6を用いて説明する。図6(a)に示す図中の端点62A及び62Bの線分とノズル軸受12の長手方向の中心軸61を含む断面で切断したx方向の断面図が図6(b)である。図6(b)において63Aはノズル軸受け12の小内径部および大内径部壁の切断面、63Bはノズル軸受け12の小内径部および大内径部の貫通孔の構造部を示す。図6(c)も同様に、図6(a)に示す図中の端点62C及び62Dの線分とノズル軸受12の長手方向の中心軸61を含む断面で切断したy方向の断面図である。以降の説明において、ノズル軸受けに充填ノズルを一杯に挿入した場合の充填ノズルの先端寄りの部分をノズル軸受け12の先端側、逆に充填ノズルの台座寄りの部分を台座側という。従って、貫通孔12Bの内径は先端側よりも台座側のほうが若干大きくなるよう形成されている。この内径差により生じる貫通孔段差65はノズル軸受け12の貫通孔12Aと12Bの交差部を境として台座側寄りに存在する。また、貫通孔12Bの両端面付近には従来技術と同様にOリング設置の為のOリング溝64Aおよび64Bが設けられているが、両者は貫通孔内径が異なる先端側と台座側に設けられているので、それぞれのOリングの円環径はそれぞれのリング溝対応している。
【0014】
次に充填ノズル11の断面構造について図7を用いて説明する。図7(a)における端点71C及び71D、71Eと充填ノズルの長手方向の中心軸71Fを含む切断面で切断した記号y方向の断面図が図7(b)であり、図7(b)において72Aは充填ノズル11壁の切断面であり、72Bは充填ノズル11の移送孔71Gの構造部を示す。図7(c)は、図7(a)における端点71A及び71Bと中心軸71Fを含む切断面で切断した記号x方向の断面図である。両者の断面図に示す通り、筒状に形成された充填ノズル11は、充填ノズル開口部11Eから移送孔71Gに流入した食肉等の充填物がノズル先端側71Fに効率的に流れるように、充填ノズル開口部から台座側には内部的な仕切りが設けられる。なお、充填ノズル11の内部構造は図7に示した構造に限定されず、従来のケーシング充填製品製造装置に使用されているものを含めて自由に設計可能である。
【0015】
次に本発明による充填ノズル11をノズル軸受け12に挿入した場合の双方の位置関係について図8を用いて説明する。図8(a)および図8(b)は充填ノズルがその往復動の充填時位置まで前進し、ノズル開口部11Eから加圧された充填物を受け入れ可能な状態にある場合を示している。この際、充填ノズル11の段差面11Fは、ノズル軸受け12の貫通孔12B内部に設けられた貫通孔段差65と接触することで双方の位置関係が固定される。図8(a)および図8(b)にて示す通り、ノズル軸受け12の貫通孔12Bに当該位置まで挿入された充填ノズル11は、その中径円筒部11C及び大径円筒部11Bの外径が、貫通孔12Bのそれぞれ先端側内径及び台座側内径に対して僅かに小さく作られており、結果として生じる器具間の隙間にOリング81Aと81Bが挟み込まれるという構造となる。なお、充填ノズルが図8(a)及び図8(b)に示す位置にあって装置稼動時、すなわち充填ノズルがその先端に取り付けられたケーシング材に対して食肉等を充填している状態にあっては、充填ノズル11がその円筒軸を中心として回転する態様も取り得ることから、図中の充填ノズル開口部11Eとノズル軸受けの貫通孔12Aの相対配置は本図に限定されるものではない。
また図8(c)はケーシング材の着脱等の目的で充填ノズル11を往復動軌道上で非充填時の配置に後退させた際の、ノズル軸受け12に対する位置関係を示す。先に説明した従来構成においては、移動中の充填ノズルとノズル軸受けが図8(c)に示す位置関係となった際、充填ノズル開口部の開口面がOリングに近いためにOリングを破損させる恐れがあったが、本発明による充填ノズル11とノズル軸受け12の形状によれば同様の問題は完全に回避される。即ち、ノズル軸受け12の内部貫通孔12Bの内径が二段階構成となっており、台座側貫通孔の内径が従来構成よりも大きく作られているため、Oリング81Aと充填ノズル開口部11Eとの距離が充分に確保され、互いの接触による破損或いは欠損を生じる恐れがない。
【0016】
ここでOリングを用いることの本来の目的を再度鑑みれば、Oリングの目的はノズル軸受けに対する充填ノズルの移動を円滑化し、器具同士の接触に伴う接触面の欠損・磨耗を抑制しながら、かつノズルブロックから充填ノズル開口部に対して形成される食肉等の加圧充填スペースの気密性を高め、充填ノズルとノズルブロックの隙間からの充填物漏洩を防止することであった。本発明のノズル軸受け12の構造にあっては、内部貫通孔12Bの台座側内径が先端側内径に比較して大きく設けられているため、仮に従来形状の充填ノズル31を用いたとすれば、ノズル軸受け12の内部貫通孔12Bの台座側内表面と充填ノズル31の間に相応の隙間を生じ、双方が図8(a)の位置関係にあって加圧した食肉等を充填しようとすれば、上記の隙間から充填物が漏洩して材料ロスを引き起こすことになる。一方で本発明の充填ノズル11を使用すれば、ノズル軸受け12の貫通孔12B内部に設けられた貫通孔段差65に段差面11Fが接合し、二段階で設けられた貫通孔12Bの内表面の双方に近接し得るよう、中径円筒部と大径円筒部のそれぞれの外径が設定されていることによって、食肉等を充填する場合でも上記のような充填物漏洩の懸念が不要である。
また本実施例によるノズル軸受け12の内部貫通孔12Bの形状は、食肉等を充填しない場合にも別の効果を有する。充填ノズルが移動状態にあり食肉等の充填を行わない場合、一般にノズルブロック後方に設けられた計量ポンプは充填物に対する加圧を一旦停止するものの、ノズルブロック内部に閉じ込められた充填物にはある程度の圧力がかかったままの状態となるため、充填ノズルが移動状態にあってもノズルボックス内の機密性を維持することが望ましい。本実施例によるノズル軸受け12は従来形状に比べて貫通孔12Bの内径が一部広く作られているものの、図8中の12C部分、すなわち貫通孔12A近傍の貫通孔12Bの内径は従来形状と同様であり、充填ノズルの外表面に近接したままとなるため充填物の漏洩が抑制される。
以上説明した通り、本発明による新規技術を用いることで従来技術では難しかったノズル軸受け内部に取り付けられたOリングの破損による不純物混入の問題と、ノズル軸受け周辺での充填物漏洩による材料ロスの問題を、簡易な形状工夫により同時に回避可能である。
なお本実施例は発明の内容を説明するために好適な一態様を示したものであり、発明の権利範疇を限定するものではない。充填ノズルの形状として本実施例では小径円筒部を有するとしているが、別の形態として小径円筒部に相当する部分を有せず、中径円筒部の形状がノズル短点まで連続している形状であっても構わない。また食肉等の充填状態における充填ノズルとノズル軸受け間の位置固定方法を、双方間の一部接触によるものとしているが、接触位置は本実施例に限定されるものではなく、また接触を前提としない別の方法も選択可能である。本件発明の主眼は、ソーセージ製造装置において一般的に使用される充填ノズル及びノズル軸受け器具の形状工夫によって従来課題を解決しようとするものであり、発明の本質を損なわない範疇で任意の設計変更、技術応用が可能である。
【実施例2】
【0017】
次に本発明の第2の実施例を説明する。図9は本発明の別の態様によるノズル軸受92の構造を示したものである。図9(a)中の端点92A及び92Bと、ノズル軸受92の長手方向の中心軸91を含む切断面で切断した記号x方向の断面図を図9(b)に示した。図9(b)において93Aはノズル軸受92壁の切断面であり、93Bはノズル軸受92の貫通孔の構造部を示す。図9(c)は、図9(a)における端点92C及び92D、92Eと中心軸91を含む切断面で切断した記号y方向の断面図である。ノズル軸受け92の長手方向に形成された貫通孔96Bは、貫通孔96Aとの交差部を境として両側の内径が異なり、台座側内径は先端側内径に比較して若干大きく形成されている。実施例1とは異なり、連続する貫通孔の途中から内径が変化しているわけではないため貫通孔の途中に段差は生じない。貫通孔96Bの両端面付近には実施例1と同様にOリング設置の為のOリング溝が設けられており、貫通孔の内径差に応じて設置を想定するOリングの円環径が異なっている。
【0018】
ここでは、実施例1における充填ノズル11を実施例2のノズル軸受け92に挿入した場合の双方の位置関係について図10を用いて説明する。図10(a)および図10(b)は充填ノズルがその往復動における充填時位置まで前進し、ノズル開口部11Eから加圧された充填物を受け入れ可能な状態にある場合を示している。充填ノズル11の台座円筒部11Aと大径円筒部11Bの外径差から生じる段差部が、ノズル軸受け32の端面と接触することで双方の位置関係が固定される。充填ノズル11の中径円筒部11Cの外径は貫通孔96Bの先端側内径に対して僅かに小さく作られており、また大径円筒部11Bの外径は、貫通孔96Bの台座側内径に対して僅かに小さく作られており、器具間の隙間にはそれぞれOリング101Aと101Bが挟み込まれるという構造を成す。
また図10Cはケーシング材の着脱等の目的で充填ノズル11を非充填時の往復軌道上で後退させた際の、ノズル軸受け92に対する位置関係を示す。先の実施例1と同様、貫通孔96Bの台座側内径が従来構成よりも大きく設けられているため、Oリング101Aと充填ノズル開口部11Eとの距離が充分に確保され、互いの接触による破損或いは欠損を生じる恐れがない。また充填ノズルの大径円筒部が貫通孔96Bの台座側内表面に近接するよう調整されているために、食肉等を充填する場合でも充填物漏洩が起きることがない。
しかしながら本実施例によるノズル軸受け92は、貫通孔96Bの台座側内径が貫通孔96Aに達するまで一様であるが故に、実施例1における第3の効果、すなわち食肉等の加圧を停止し充填ノズルを往復軌道上で移動させている場合でも充填物の漏洩を抑制するという効果は期待できないものの、ノズル軸受け92の加工、製造は実施例1に比べて容易であり、装置コストをより低減することが可能である。
なお本実施例は発明実施の一態様を示したものであり、発明の権利範囲を限定するものではない。充填ノズルの形状として本実施例では小径円筒部を有するとしているが、別の形態として小径円筒部に相当する部分を有せず、中径円筒部の形状がノズル短点まで連続している形状であっても構わない。また食肉等の充填状態における充填ノズルとノズル軸受け間の位置固定方法を、双方間の一部接触によるものとしているが、接触位置は本実施例に限定されるものではなく、また接触を前提としない別の方法も選択可能である。その他、本件発明の本質を損なわない範疇で任意の設計変更が可能である。
【実施例3】
【0019】
次に本発明の第3の実施例を図11を参照して説明する。図11において(a)は本実施例によるノズル軸受けの構成を示しており、(b)は当該ノズル軸受けがノズルブロックに設置され、充填ノズルが挿入されている場合の相互の位置関係を示す。図11(a)に示す通り、本実施例によるノズル軸受けは分割された2つの構成要素121A及び121Bから成り、これら2つの構成要素は図11(b)に断面構造を示すノズルブロック125の内部にそれぞれ固定された状態で充填ノズル11を支持する働きを成す。なお図11(b)に示す構成要素121A及び121Bの断面構造は、図11(a)に破線で示す水平断方向切断面で切断した記号y方向の切断面を示している。また充填ノズル11は図1に示す実施例1の充填ノズルと同じものである。
【0020】
ここで本実施例によるノズル軸受けの詳細構造を説明する。ノズル軸受け構成要素121A及び121Bのそれぞれに設けられた貫通孔122A及び貫通孔B122は、挿入された充填ノズルをその内壁面にて抱持するために設けられたものである。貫通孔122Aの内部形状は、実施例1のノズル軸受け12の台座側内部形状と同様であって、貫通孔内径は途中に段差部を有する二段構造となっており、貫通孔の台座側入口近傍にOリング溝124Aを有する。またノズル軸受け構成要素121B側の貫通孔122Bについても、その内部形状は実施例1のノズル軸受け12の先端側内部形状と同様であって、貫通孔内径は一様であり、貫通孔の先端側入口近傍にOリング溝124Bを有する。これら2つのノズル軸受け構成要素はその外形構造と、切り欠け部123A及び123Bの働きにより、それぞれノズルブロック内部に固定される。この際、ノズル軸受け構成要素の切り欠け部には、図1の14と同様のノズル軸受け固定治具が噛み合わされることでそれぞれの位置が固定されるが、図11上では図示を省略している。ノズルブロックに固定された2つのノズル軸受け構成要素は、それぞれの貫通孔122Aおよび122Bの長手中心軸が等しくなり、双方が所望の距離分だけ離れるようにしてノズルブロックに固定される。
このようにして、ノズルブロックに設置されることで互いの位置関係が固定されたノズル軸受け構成要素121A及び121Bは、あたかも一体部品のように機能して、充填ノズル11の往復動を可能としながらノズルブロック内に形成される充填物加圧スペースの機密性を保ち、更に実施例1のノズル軸受け12と同等の効果をもたらす。ノズル軸受けに取り付けられる台座側Oリング124Aの内径は、充填ノズルの開口部11Eを有する中径円筒部11Cの外径よりも有意に大きく設定されるため、充填ノズルの往復動に伴い充填ノズルの開口部11Eが当該Oリングを欠損させる恐れがなく、従来問題であったOリング欠損による食品不純物発生の問題を回避できる。また充填ノズルがその往復動の最前位置まで前進し、ノズルブロックに対して図11(b)に示す位置関係となった際、ノズルブロック内部で加圧された食品充填物を、その開口部11Eから受け入れ可能となるが、この場合に充填ノズルの中径円筒部11C及び大径円筒部11Bの外表面が、Oリングを介してそれぞれ貫通孔122Aおよび122Bの内表面に接するため、充填ノズルとノズルブロックの隙間からの充填物漏洩を防止することができる。
【0021】
以上説明した通り、単体ではなく分割された複数部品から構成されるノズル軸受け体であっても、製造装置稼動時にノズルブロック内にて相対的な位置関係が固定され、かつ複数部品間に跨って形成される充填ノズル挿入用の貫通孔が、実施例1のノズル軸受け貫通孔12Bと同様の形状を成すものであれば、実施例1のノズル軸受け12と同じ発明効果を実現することが可能である。この点は、実施例2に示したノズル軸受け92に対しても同様である。
なお本実施の説明は、発明実施の一態様を示したものであり、発明の権利範疇を限定するものではない。充填ノズルの形状、ノズル軸受け構成部品の外形、ノズル軸受けの固定方法、ノズルブロックの形状等、本発明の本質を損なわない範疇で任意の技術応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、天然あるいは人工ケーシング材に、食肉原料あるいは軟形状食品材料を充填してソーセージ等の食品を製造するためのケーシング充填装置に適応した場合、品質の良いソーセージ等を安定して製造できるケーシング充填装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1における充填ノズルとノズル軸受けの概観図
【図2】従来技術におけるソーセージ製造装置概観図
【図3】従来技術における充填ノズルとノズル軸受けの概観図
【図4】従来技術におけるノズル軸受けの斜視図及び断面図
【図5】従来技術における充填ノズルとノズル軸受けの接合関係説明図
【図6】実施例1におけるノズル軸受けの斜視図及び断面図
【図7】実施例1における充填ノズルの斜視図及び断面図
【図8】実施例1における充填ノズルとノズル軸受けの接合関係説明図
【図9】実施例2におけるノズル軸受けの斜視図及び断面図
【図10】実施例2における充填ノズルとノズル軸受けの接合関係説明図
【図11】実施例3におけるノズル軸受けの構成図および接合関係説明図
【符号の説明】
【0024】
11 発明技術による充填ノズル
11E 発明技術による充填ノズルの開口部
11G 発明技術による充填ノズルの移送孔
12 発明技術によるノズル軸受け
12A 発明技術によるノズル軸受けの長手垂直方向貫通孔
12B 発明技術によるノズル軸受けの長手水平方向貫通孔
13 ノズルブロック
21 計量ポンプ
22 ケーシング材
31 従来技術による充填ノズル
31E 従来技術による充填ノズルの開口部
31G 従来技術による充填ノズルの移送孔
32 従来技術によるノズル軸受け
32A 従来技術によるノズル軸受けの長手垂直方向貫通孔
32B 従来技術によるノズル軸受けの長手水平方向貫通孔
92 発明技術の実施例2によるノズル軸受け
92A 発明技術の実施例2によるノズル軸受けの長手垂直方向貫通孔
92B 発明技術の実施例2によるノズル軸受けの長手水平方向貫通孔
121A 発明技術の実施例3によるノズル軸受けの構成要素
121B 発明技術の実施例3によるノズル軸受けの構成要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング充填装置において充填物充填ノズル(11)を内部貫通孔(12B)で摺動・回転自在に保持する充填ノズル軸受体(12)であって、前記貫通孔内側に設けられた円環状緩衝リング(R1)設置用の第1のリング溝(64A)は前記第1のリング溝に設置される第1の円環状緩衝リングの内径が充填ノズルの充填物流入口(11E)が設けられた部位の円筒形構造部の外径と等しくなるよう形成されており、前記第1のリング溝に対して相対的に前記内部貫通孔の充填ノズル挿入口側に設けられた第2のリング溝(64B)は前記第2のリング溝に設置される第2の円環状緩衝リング(R2)の内径が前記充填ノズルの前記円筒形構造部の外径よりも大きいことを特徴とする充填ノズル軸受体。
【請求項2】
ケーシング充填装置のケーシング(22)に充填物を充填するための移送孔が形成された充填ノズル(11)であって、充填ノズル移送孔内部に充填物を受け入れるための充填物流入口(11E)を有し、当該充填物流入口が形成された第1の円筒形構造部の外径は請求項1に記載の充填ノズル軸受体の第1の円環状緩衝リング(R1)の内径と等しく、第1の円筒形構造部に対して充填ノズルの充填物充填先端側とは逆側に設けられた第2の円筒形構造部の外径は請求項1に記載の第2の円環状緩衝リング(R2)の内径と等しく形成されていることを特徴とする充填ノズル。
【請求項3】
少なくとも請求項1に記載の充填ノズル軸受け体を有するケーシング充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−101746(P2006−101746A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291589(P2004−291589)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(504371815)有限会社NAUS (1)
【Fターム(参考)】