ケージ型メソポーラスシリカ(SNC−2)、その製造方法およびそれを用いた吸着剤
【課題】 吸着剤に適したメソポーラスシリカ、その製造方法およびそれを用いた吸着剤を提供すること。
【解決手段】 ケージ型メソポーラスシリカは、空間群がIa3dであり、比表面積が4.3×102m2/g〜7.0×102m2/gの範囲であり、比孔容量が8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/gの範囲であり、孔径が6.8nm〜15nmの範囲であることを特徴とする。
【解決手段】 ケージ型メソポーラスシリカは、空間群がIa3dであり、比表面積が4.3×102m2/g〜7.0×102m2/gの範囲であり、比孔容量が8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/gの範囲であり、孔径が6.8nm〜15nmの範囲であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラスシリカ、その製造方法およびそれを用いた吸着剤に関し、より詳細には、大きな孔径を有するメソポーラスシリカ、その製造方法およびそれを用いた吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポーラスガラス、セルロース、キトサン、シリカゲル、ポリスチレンコロイド粒子、ヒドロゲル、ポーラスシリカ等は、酵素固定用支持体または吸着剤として利用されている。中でもポーラスシリカは、高い比表面積および大きな孔径を有するため、吸着剤として注目されている。
【0003】
例えば、メソポーラスシリカ(MCM−41)へ酵素を固定化した報告がある(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1によれば、メソポーラスシリカのメソポアおよび酵素の大きさ、メソポーラスシリカおよび/または酵素の表面積、孔径分布、孔容量、粒径、イオン強度、等電位点および表面特性を含む多くのファクタが、酵素のメソポーラスシリカへの固定および固定後の酵素の活性状態に影響を与えることが見出された。さらに、非特許文献1によれば、三次元細孔構造のメソポーラス分子は、一次元細孔構造のメソポーラス分子に比べて吸着能が高いことが分かっている。しかしながら、非特許文献1のMCM−41は一次元細孔構造を有しており、三次元細孔構造を有し、より酵素の吸着能の高い材料の開発が望まれている。
【非特許文献1】Diazら, J. Mol. Catal. B:Enzym. 1996, 2, 115
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、吸着剤に適したメソポーラスシリカ、その製造方法およびそれを用いた吸着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明1)発明1のケージ型メソポーラスシリカは、空間群はIa3dであり、比表面積は4.3×102m2/g〜7.0×102m2/gの範囲であり、比孔容量は8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/gの範囲であり、孔径は6nm〜15nmの範囲であることを特徴とする。
(発明2)発明2のケージ型メソポーラスシリカを製造する方法は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する工程と、前記混合する工程によって得られた混合物を加熱して、テトラエトキシシランを高分子化する工程と、前記高分子化する工程によって得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる工程と、前記ケイ化させる工程によって得られたケイ化物を加熱して、残留する前記界面活性剤P123を除去する工程とからなることを特徴とする。
(発明3)発明2に記載の方法において、前記酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択されることを特徴とする。
(発明4)発明2に記載の方法において、前記高分子化する工程は、35℃で24時間攪拌しながら行うことを特徴とする。
(発明5)発明2に記載の方法において、前記ケイ化させる工程は、1.0×102℃〜2.5×102℃の温度範囲で1/2〜2時間、マイクロ波を照射することを特徴とする。
(発明6)発明2に記載の方法において、前記除去する工程は、前記ケイ化物をフィルタリングし、乾燥させた後に、5.4×102℃で24時間加熱することを特徴とする。
(発明7)発明2に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×102〜2.22×102:19.5×103〜27.5×103:1.83×102〜2.75×102:1.0×102〜2.4×102のモル比を満たすように混合することを特徴とする。
(発明8)発明6に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×102:19.5×103:1.83×102:1.00×102のモル比を満たすように混合することを特徴とする。
(発明9)発明1に記載のケージ型メソポーラスシリカを用いたことを特徴とする吸着剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明のケージ型メソポーラスシリカは、空間群がIa3dであり、比表面積は、4.3×102m2/g〜7.0×102m2/gの範囲であり、比孔容量は、8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/gの範囲であり、孔径は、6nm〜15nmの範囲であることを特徴とする。特に、大きな孔径を有するため、酵素等の巨大分子の吸着に好適である。さらに、本発明によるケージ型メソポーラスシリカは、空間群がIa3dであり三次元細孔構造を有する。このため、従来よりも大きな吸着能を発揮できる。
【0007】
本発明の方法は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する工程と、得られた混合物を加熱して、テトラエトキシシランを高分子化する工程と、得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる工程と、得られたケイ化物を加熱して、残留する界面活性剤P123を除去する工程とからなることを特徴とする。マイクロ波を照射することによって、長時間を要する水熱条件を不要となるので、短時間で所望のケージ径および孔径を有するメソポーラスシリカを得ることができる。このことは、製造プロセスの短縮化、および、コストの低下を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して本発明を詳述する。
【0009】
図1は、本発明によるケージ型メソポーラスシリカの模式図を示す。
【0010】
ケージ型メソポーラスシリカ(SNC−2)100は、ケージ120とチャネル130とを有する。すなわち、ケージ120とチャネル130とを埋めるようにシリカ110が存在する。本発明によるケージ型メソポーラスシリカ100は、次の特徴を有する。
空間群:Ia3d
比表面積:4.3×102m2/g〜7.0×102m2/g
比孔容量:8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/g
孔径:6nm〜15nm
【0011】
本明細書において、孔径とは、図1のd1およびd2で示される径を指す。特に、本発明によるケージ型メソポーラスシリカ100の孔径は、従来知られているメソポーラスシリカよりも大きい。
【0012】
本発明によるケージ型メソポーラスシリカ100の比表面積、比孔容量および孔径は、製造条件によって、上記の範囲で適宜制御可能である。
【0013】
次に、上述のケージ型メソポーラスシリカの製造方法を説明する。
【0014】
図2は、本発明によるケージ型メソポーラスシリカの製造工程を示すフローチャートである。
【0015】
ステップS210:界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する。界面活性剤P123は、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とからなり、EO20−PO70−EO20の構造を有するブロックコポリマーであり、テンプレートとして機能し得る。混合モル比は、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×102〜2.22×102:19.5×103〜27.5×103:1.83×102〜2.75×102:1.0×102〜2.4×102のである。この範囲であれば、所望のメソポーラスシリカを得ることができる。より好ましい混合モル比は、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×102:19.5×103:1.83×102:1.00×102であり、このモル比であれば確実にメソポーラスシリカを得ることができる。酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択される。
【0016】
ステップS220:混合物を加熱してテトラエトキシシランを高分子化する。加熱は、35℃で24時間、攪拌しながら行われる。これによりテトラエトキシシランが確実に高分子化される。好ましくは、ステップS210およびステップS220において、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸とを35℃3〜4時間混合した後に、テトラエトキシシランを混合し、さらに24時間混合する。界面活性剤P127に希酸(水と酸との混合物)を溶解させ、次いで、テトラエトキシシランを添加することによって、テンプレートへテトラエトキシシランを十分に充填させることができる。
【0017】
ステップS230:ステップS220で得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる。マイクロ波の照射は、1.0×102℃〜2.5×102℃の温度範囲で1/2〜2時間の間行われる。マイクロ波を用いることによって、均一な加熱が可能になるので、長時間を要する水熱法と比較して、反応時間を極めて短くすることができる。このようにして得られた反応物は、沈殿し、目視にて確認できる。沈殿物をフィルタリングし、乾燥させる。加熱温度が高ほど、得られるケージ型メソポーラスシリカの孔容量、孔径が大きくなる。
【0018】
ステップS240:ステップS230で得られたケイ化物を加熱して、残留する界面活性剤P123を除去する。加熱は、5.4×102℃で24時間行えば、十分である。
【0019】
以上、このようにして、高温マイクロ波法によってケージ型メソポーラスシリカシリカを得ることができる。このようなケージ型メソポーラスシリカは、空間群Ia3dを有する三次元細孔構造であり、吸着質がメソポーラスシリカ内へ容易にアクセスできることから、吸着剤として好適である。
【0020】
また、本発明の方法によれば、上述したように高温マイクロ波法を採用する。高温マイクロ波法により、反応時間が大幅に短縮されるので、製造コストの削減が可能となり、有利である。
【0021】
次に、具体的な実施例を用いて本発明の方法を説明するが、本発明を実施例に限定するものではないことを理解されたい。なお、実施例で用いた界面活性剤P123およびn−ブタノールは、Aldrichから入手した。
【実施例1】
【0022】
界面活性剤P123(4g)を蒸留水(144g)および35wt%塩酸(7.9g)に溶解させ、35℃で攪拌した。次いで、n−ブタノール(4.0g)を加え、35℃でさらに1時間攪拌した。攪拌後、テトラエトキシシラン(TEOS)(8.6g)を加えた(図2のステップS210)。得られた溶液は均一な透明な溶液であった。なお、混合モル比は、P123:n−ブタノール:H2O:HCl:TEOS=0.017:1.31:195:1.83:1.00であった。
【0023】
得られた混合物を35℃で24時間攪拌し、テトラエトキシシランを高分子化した(図2のステップS220)。続いて、高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させた(図2のステップS230)。加熱温度およびマイクロ波照射時間は、それぞれ、100℃および2時間であった。白い沈殿物(ケイ化物)を目視にて確認した。ケイ化物をフィルタリングし、100℃大気中で乾燥させ、540℃で24時間仮焼した(図2のステップS240)。このようにしてメソポーラスシリカ(SNC−2(100)と称する)を合成した。
【0024】
SNC−2(100)の粉末X線回折測定を、CuKα(λ=0.15406nm)放射を用いたRigaku回折器によって行った。動作条件は、2θステップサイズ0.01°、ステップ時間10秒、測定範囲2θ:0.8°〜10°、加速電圧40kV、電流40mAであった。結果を図3に示し詳述する。
【0025】
SNC−2(100)の窒素吸脱着等温線は、−196℃にてQuantachrome Autosorb 1容量吸着分析を用いて測定した。吸着測定前に、試料を250℃で3時間デガスした。結果を図4に示し詳述する。次いで、図4からBET比表面積および比孔容量を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0026】
図4の窒素吸脱着等温線から、Barret−Hoyner−Halenda法および非局所密度汎関数理論(NDFT)を用いて、SNC−2(100)吸着側細孔分布を求めた。結果を図5に示し、詳述する。
【実施例2】
【0027】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が130℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−21(130)と称する。SNC−2(130)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【実施例3】
【0028】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が150℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(150)と称する。SNC−2(150)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【実施例4】
【0029】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が180℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(180)と称する。SNC−2(180)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【実施例5】
【0030】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が200℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(200)と称する。SNC−2(200)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【0031】
次に、SNC−2(200)の吸着剤としての効果を調べた。なお、吸着質として、ICN biomedicalsl Inc.,から入手した鶏卵白リゾチーム(カタログNo. 100831)を用いた。0.25g/L〜5g/LのLz濃度範囲を有する各種標準リゾチーム溶液(Lz溶液)を10mM、25mM、50mMおよび100mMの緩衝溶液(pH6.5リン酸カルシウム緩衝剤、pH9.6およびpH11炭酸ナトリウム緩衝剤、pH12リン酸ナトリウム緩衝剤)に異なる量のリゾチーム(以降では、リゾチームまたはリゾチーム分子を単にLzと呼ぶ)を溶解させて調製した。各Lz溶液(4g)にSNC−2(200)(20mg)を懸濁させた。得られた混合物を攪拌器にて平衡状態になるまで(典型的には96時間)回転速度160RPM、20℃で連続的に振とうさせた。
【0032】
吸着されたLz量は、281.5nmにおけるUV吸収により、吸着剤を添加する前に存在していたLz量から吸着後の上澄み液に存在するLz量を差し引くことによって算出した。なお、校正実験を測定前に個々の溶液について別個に行った。分析に先立って遠心分離を用いて、UV−可視分析において障害物を懸濁散乱粒子から除去した。pH11、25mMの緩衝溶液における各Lz溶液中のLzのSNC−2(200)への吸着量を調べた。結果を図8および表2に示す。
【実施例6】
【0033】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が220℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(220)と称する。SNC−2(220)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【0034】
高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いてSNC−1(220)の表面および断面を観察した。結果を図6および図7に示し詳述する。
【0035】
実施例5と同様に、0.25g/L〜5g/LのLz濃度範囲を有する各種標準リゾチーム溶液(Lz溶液)を10mM、25mM、50mMおよび100mMの緩衝溶液(pH6.5リン酸カルシウム緩衝剤、pH9.6およびpH11炭酸ナトリウム緩衝剤、pH12リン酸ナトリウム緩衝剤)に異なる量のリゾチームを溶解させて調製した。
【0036】
吸着量のpH依存性を調べるため、各pH(6.5、9.6、11および12)の25mMの緩衝溶液におけるSNC−2(220)へのLzの吸着量を調べた。結果を図8、図9および表2に示す。
【0037】
次に、吸着量のイオン強度およびpH依存性を調べ、LzとSNC−2(220)の表面との間の界面相互作用の静電効果を求めた。具体的には、各pH(6.5、11および12)について、Lz濃度5g/Lの緩衝溶液濃度を変化させた場合のSNC−2(220)へのLzの吸着量を調べた。結果を図10に示す。
【0038】
SNC−2(220)へ吸着したLzの構造安定性を、Nicolet Nexusを用いたフーリエ変換赤外分光法により測定した。測定は室温で行い、pH11におけるLz濃度2g/Lおよび5g/LのLz溶液をSNC−2(220)に吸着させた試料を用いた。また、SNC−2(220)へ吸着したLzの構造安定性を、X線回折法を用いて測定した。それぞれの結果を図11および図12に示す。Lz吸着前後の窒素吸脱着等温線を測定し、SNC−2(220)の吸着剤としての特性を評価した。なお、吸着測定前に、Lz吸着後のSNC−2(220)を80℃で12時間デガスした。結果を図13に示し、後述する。
【実施例7】
【0039】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が250℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(250)と称する。SNC−2(250)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【0040】
実施例5と同様に、0.25g/L〜5g/Lの濃度範囲を有する各種標準リゾチーム溶液(Lz溶液)を10mM、25mM、50mMおよび100mMの緩衝溶液(pH6.5リン酸カルシウム緩衝剤、pH9.6およびpH11炭酸ナトリウム緩衝剤、pH12リン酸ナトリウム緩衝剤)に異なる量のリゾチームを溶解させて調製した。実施例5と同様に、pH11におけるSNC−2(250)へのLzの吸着量を調べた。結果を図8および表2に示し、後述する。
【0041】
図3は、実施例1〜実施例7のSNC−2のXRDパターンを示す図である。
【0042】
SNC−2(100)、SNC−2(130)、SNC−2(150)、SNC−2(180)、SNC−2(200)、SNC−2(220)およびSNC−2(250)のXRDパターンは、いずれも、(211)の鋭いピーク(2θ:0.85°〜1.0)と、(220)および(321)のピークとを示した。より詳細には、(211)、(220)および(321)以外に(400)、(420)、(332)のピークも検出された。これらすべてのピークは、結晶構造Ia3d(立方晶系)に典型的なピークであることを確認した。このことから、マイクロ波処理によってIa3d結晶構造を有するメソポーラスシリカが形成されたことが示された。また、マイクロ波処理温度が増加するにつれて、(211)ピークは低角へとシフトした。これは、マイクロ波処理温度の増加に伴い孔径が増大することを示す。したがって、マイクロ波処理温度を変化させることによって、比表面積、比孔容量および孔径を制御できることを示唆する。
【0043】
図4は、実施例1〜実施例7のSNC−2の窒素吸脱着等温線を示す図である。
【0044】
SNC−2(100)、SNC−2(130)、SNC−2(150)、SNC−2(180)、SNC−2(200)、SNC−2(220)、および、SNC−2(250)の窒素吸脱着等温線は、いずれも、IUPACのIV型であることが分かった。このことから得られたSNC−2(100)、SNC−2(130)、SNC−2(150)、SNC−2(180)、SNC−2(200)、SNC−2(220)、および、SNC−2(250)は、いずれも、メソポアを有する多孔体であることが示された。
【0045】
図に示される相対圧力p/p00.7〜0.8におけるヒステリシスは、窒素の毛細管凝縮現象によるものである。マイクロ波処理温度が増加するにつれて、毛細管凝縮現象は相対圧力の高圧側にシフトした。このことは、マイクロ処理温度の増加にともなって、孔径が大きくなることを示唆する。ただし、SNC−2(250)の毛細管凝縮現象は、SNC−2(220)のそれと比較して、低圧力側にシフトした。これは、マイクロ波処理温度が250℃を以上ではテンプレート(界面活性剤P123)の構造が壊れるためである。このことから、より大きな孔径を有するメソポーラスシリカを得るには、マイクロ波処理温度は220℃が最適であることが分かる。
【0046】
表1に示されるように、比孔容量は、マイクロ波処理温度の増加にしたがって増大する傾向を示した。具体的には、比孔容量は、0.791cm3/gから1.45cm3/gまで増加した。このように、マイクロ波処理温度を変更することによって、所望の比孔容量を有するメソポーラスシリカを得ることができる。一方、比表面積は、マイクロ波処理温度の顕著な依存性を示さなかった。しかしながら、比表面積は、430m2/gから695m2/gまでと変化することが分かった。
【0047】
図5は、実施例1〜7のSNC−2の吸着側細孔分布を示す図である。
【0048】
SNC−2(100)、SNC−2(130)、SNC−2(150)、SNC−2(180)、SNC−2(200)、SNC−2(220)およびSNC−2(250)は、いずれも、均一な孔径分布を示した。孔径は、6nm〜15nmの範囲を有することを確認した。
【0049】
表1は、実施例1〜7のSNC−2の比表面積および比孔容量を示す。
【表1】
【0050】
図6は、実施例6のSNC−2(220)のHRTEM像を示す図である。
【0051】
図7は、実施例6のSNC−2(220)の断面のHRTEM像を示す図である。
【0052】
図6および図7は、SNC−2(220)が、極めて規則的に配列した構造、および、均一なサイズの孔を有することを有することを明確に示す。このことからも、SNC−2(220)が、Ia3d空間群を有する三次元ケージ型メソポーラス材料であることが示唆される。
【0053】
図8は、pH11、25mM緩衝溶液における実施例5〜7のSNC−2へのLz吸着等温線を示す図である。
【0054】
各等温線は、いずれも、Lzと吸着剤(SNC−2(200)、SNC−2(220)およびSNC−2(250))の表面との間の密接な関係を示唆する鋭い立ち上がりを示す。いずれの等温線も、水平に達するタイプL(Langmuir)等温線に相当する。図中、実線は、Langmuirモデルを採用した、実験データのフィッティングを示す。単分子層吸着量は、式(1)のLangmuir方程式を用いて算出される。
ns=Knmc/(1+Kc)・・・(1)
ここで、KはLangmuir定数であり、cはLz濃度であり、nmは単分子層吸着量であり、nsは吸着剤(SNC−2)に吸着されたLz量である。
【0055】
図8は、Lz吸着量が、最終的な溶液濃度が増大するにつれて増大することを示す。これは、Lzが、種々の特異な配向でメソポーラスシリカに吸着しているためである。Lzバルク濃度が低い場合、幅の広い楕円状のLzは、吸着剤(SNC−2)表面に対して垂直となるside−on型配向で吸着され得る。一方、Lzバルク濃度が高い場合、Lzは、Lzの静電反発力を低減するように、長手軸に沿ってLzが互いに近接して位置するend−on型配向で吸着され得る。その結果、Lz吸着量がより多くなる。
【0056】
図8によれば、単分子層吸着量は、孔径および孔容量の増大するSNC−2(200)<SNC−2(250)<SNC−2(220)の順で増加する。以上の結果を表2に示す。
【0057】
表2は、実施例5〜7のSNC−2の単分子層吸着量を示す。表2には、参考のため、SNC−2以外の吸着剤の単分子層吸着量を併せて示す。
【表2】
【0058】
本発明によるメソポーラスシリカ(SNC−2)は、従来の吸着剤と比較して、類似の、または、より大きな単分子層吸着量を有することが分かる。他の吸着剤と比較して、本発明によるメソポーラスシリカが高い単分子層吸着量を有するのは、大きな孔径および孔容量に加えて、三次元構造を有する点にある。以上から、本発明によるメソポーラスシリカ(SNC−2)が吸着剤として利用可能であることを確認した。
【0059】
図9は、実施例6のSNC−2(220)へのLz吸着量のpH依存性を示す図である。
【0060】
いずれの等温線も吸着剤の表面とLzとの間の相関関係を示している。pH11において、等温線は、他のpH値よりもより高い相関関係を示す(図3の挿入図を参照)。具体的には、pH11の緩衝溶液において最も高いLz吸着量を示した。これは、Lzの等電位点(pI)が約11であるため、等電位点以下のpHでLzが正に帯電し、等電位点以上のpHでLzが負に帯電するためである。メソポーラス材料のうちシリカ表面の等電位点は約2であり、吸着剤の表面はpH2以上にて負に帯電されている。
【0061】
図9より、単分子層吸着量(nm)は、溶液のpHに依存して大きく変化することが分かる。Lzの最大吸着量は、pH11における60.60μm/gである。このことは、Lzの等電位点(pI)近傍(すなわち11)において、より単分子層吸収量が高くなることを示唆する。これは、Lz溶液のpHが等電位点近傍にある場合、Lzの正味の電荷量が低く、Lz分子間のクーロン反発力が最小となるためである。したがって、Lz分子の細密充填が可能であり、単分子層吸着量が増大する。
【0062】
図9はまた、Lz溶液のpHが11以外(すなわち、Lzの当電位点近傍以外)では、Lzの吸着量が減少することを示す。これは、Lzが等電位点pI以下のpHでは正に帯電され、等電位点pI以上のpHでは負に帯電されるためである。より詳細には、溶液pHを11から6.5まで減少させると、Lzの正味の正の電荷量が増加し始め、Lz間で水平方向の反発が生じる。Lz溶液のpHが11から12へと増加すると、Lzは負に帯電し、Lz間の静電反発力を増加させる。さらに、負に帯電したLzおよび負に帯電したメソポーラスシリカ(SNC−2)の表面は、pH11以上のpH12において吸着量を低減させる強い反発力を生成する。
【0063】
図10は、実施例6のSNC−2(220)のLz吸着量のpHおよびイオン強度依存性を示す図である。
【0064】
図10から、SNC−2(220)へのLzの吸着量は、pHおよびそのイオン強度に依存していることが分かる。一般に、異なるpH(例えば、6.5、11および12)を有する異なる緩衝濃度(例えば、10、25、50および100mM)におけるLzの吸着量の変化は、緩衝溶液における硫酸イオンまたは炭酸イオンによって生成される表面電荷の遮蔽効果に基づく。
【0065】
SNC−2(220)に吸着するLz量は、pH12では、10mMから50mMへとイオン強度が増加するにともなってゆるやかに増加する。イオン強度が低いと、硫酸イオンが優先的に水和し、pH12で部分的に正に帯電したLzと、負に帯電したSNC−2(220)の表面との間に静電引力をもたらす場合がある。一方、イオン強度が高いと(例えば、50mM〜100mM)、SNC−2(220)に吸着するLz量は、イオン強度が低い場合と比較して劇的に減少する。これは、負の硫酸イオンおよび負に帯電したSNC−2(220)の表面がLzを囲み、静電反発力を生じるためである。
【0066】
pH11では、イオン強度が10mMから25mMへと増加するにつれて、Lzの単分子層吸着量は増加する。これは、炭酸イオンが優先的に水和するので、Lzの溶解度が減少し、Lzが細密充填するようになるためである。詳細には、Lzの電荷はpH11(Lzの等電位点は約11)では0であり、LzはSNC−2(220)の表面により吸着するためである。一方、25mMから100mMへとイオン強度が増加するにつれて、Lzの単分子層吸着量は減少する。これは、負の炭酸イオンによって囲まれたLzと、負に帯電したSNC−2(220)の表面との間に静電反発力が生じるためである。
【0067】
さらに、図10によれば、pH6.5では、Lzの単分子層吸着量は、イオン強度の増加にともなって増加する。これは、硫酸イオンの水和が優先的に生じ、その結果、Lzの溶解度が減少し、正に帯電したLzと負に帯電したSNC−2(220)の表面との間に静電引力が生じるためである。
【0068】
図11は、Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着させた後のLzのFT−IRスペクトルを示す図である。
【0069】
本発明によるSNC−2に吸着された後のLzの構造安定性を、フーリエ変換赤外分光法を用いて調べた。図には、純粋なLz、および、pH11においてLzの吸着量がそれぞれ27.57μmol/L(Lz濃度2g/Lを用いた場合)および60.60μmol/L(Lz濃度5g/Lを用いた場合)であるSNC−2(220)のFT−IRスペクトルが示される。
【0070】
純粋なLzのFT−IRスペクトルに示される典型的なアミドバンドI(1666cm−1、C=O伸縮モード)およびアミドバンドII(1542cm−1、N−H曲げ伸縮モード)を用いてたんぱく質(本実施例ではLz)の構造を調べた。Lzが吸着されたSNC−2(220)のFT−IRスペクトルは、いずれも、純粋なLzのFT−IRスペクトルと同様に、アミドバンドIおよびアミドバンドIIに基づくピークを示した。このことから、SNC−2(220)に吸着後もLzは、吸着前のLzと同様の構造を示し、構造安定性が確認された。
【0071】
図12は、Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着させた後のSNC−2(220)のXRDパターンを示す図である。
【0072】
本発明によるSNC−2へLzを吸着させた後のSNC−2の構造安定性を、X線回折を用いて調べた。図12には、吸着前のSNC−2(220)のXRDパターンと、Lz濃度2g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−(220)のXRDパターンと、Lz濃度5g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−2(220)のXRDパターンとが示される。
【0073】
Lz吸着後のSNC−2(220)のXRDパターンは、Lz吸着前のそれと同じであり、立方晶Ia3d相を有していることを示唆する。より具体的には、吸着後のSNC−2(220)のXRDパターンは、いずれも、回折面(211)、(220)、(400)、(420)および(332)のSNC−2(220)の典型的なピークを示した。なお、SNC−2(220)への吸着量が多いほど、ピーク強度が低い。これは、Lzの吸着によって構造の秩序性が低下したのではなく、シリカ壁と孔部との間の密度と、シリカ壁とLzとの間の密度とのコントラストが大きいためである。以上より、本発明によるSNC−2は、吸着質(本実施例ではLz)をSNC−2の有するメソポアに、SNC−2の構造完全性に影響与えることなく、吸着することが分かった。
【0074】
図13は、Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着させた後のSNC−2(220)の窒素吸脱着等温線を示す図である。
【0075】
本発明によるSNC−2へのLz吸着後のSNC−2の構造安定性を、窒素吸脱着測定を用いて調べた。図13には、吸着前のSNC−2(220)の窒素吸脱着等温線と、2g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−(220)の窒素吸脱着等温線と、5g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−2(220)の窒素吸脱着等温線とが示される。
【0076】
図13から、SNC−2(220)に吸着される窒素量は、Lz吸着量が多いSNC−2(220)ほど減少することが示される。すなわち、Lz濃度2g/LのLz溶液を吸着させたSNC−2(220)よりも、Lz濃度5g/LのLz溶液を吸着させたSNC−2(220)の方が、窒素吸着量は小さい。
【0077】
また、図13は、Lz吸着量が増加するにつれて、SNC−2(220)の比孔容量は、1.45から0.47まで減少することを示す。例えば、Lz濃度5g/LのLz溶液を用いた場合、SNC−2(220)のメソポアに吸着された実際のLzはわずか0.77cm3/gであることが分かった。これは、SNC−2(220)の全孔容量の46.90%に相当する。
【0078】
一方、窒素吸脱着測定によれば、Lz濃度5g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−2(220)の比孔容量は、吸着前のSNC−2(220)の比孔容量から67.59%低減することを示した。さらに、理論計算から得られる吸着されたLzが占有する孔容量と、窒素吸着測定による孔容量との差は、14.49%であった。この孔容量における差は、Lz(3.0×4.5)が窒素吸着を妨げるようにSNC−2(220)の孔に吸着するためと考えられる。このことからも、本発明によるSNC−2は、吸着質(本実施例ではLz)をSNC−2の有するメソポアに、SNC−2の構造完全性に影響与えることなく、吸着することが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、高温マイクロ法によって、Ia3dの結晶構造を有するメソポーラスシリカが製造される。これにより、従来よりも製造コストを下げることができるだけでなく、従来よりも大きな孔径を有するメソポーラスシリカが得られる。このようなメソポーラスシリカは、吸着力を向上させることができるとともに、大きな物質の吸着を可能にするので、吸着剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明によるケージ型メソポーラスシリカの模式図
【図2】本発明によるケージ型メソポーラスシリカの製造工程を示すフローチャー ト
【図3】実施例1〜実施例7のSNC−2のXRDパターンを示す図
【図4】実施例1〜実施例7のSNC−2の窒素吸脱着等温線を示す図
【図5】実施例1〜7のSNC−2の吸着側細孔分布を示す図
【図6】実施例6のSNC−2(220)のHRTEM像を示す図
【図7】実施例6のSNC−2(220)の断面のHRTEM像を示す図
【図8】pH11、25mM緩衝溶液における実施例5〜7のSNC−2へのLz 吸着等温線を示す図
【図9】実施例6のSNC−2(220)へのLz吸着量のpH依存性を示す図
【図10】実施例6のSNC−2(220)のLz吸着量のpHおよびイオン強度 依存性を示す図
【図11】Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着さ せた後のLzのFT−IRスペクトルを示す図
【図12】Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着さ せた後のSNC−2(220)のXRDパターンを示す図
【図13】Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着さ せた後のSNC−2(220)の窒素吸脱着等温線を示す図
【符号の説明】
【0081】
100 ケージ型メソポーラスシリカ(SNC−2)
110 シリカ
120 ケージ
130 チャネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラスシリカ、その製造方法およびそれを用いた吸着剤に関し、より詳細には、大きな孔径を有するメソポーラスシリカ、その製造方法およびそれを用いた吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポーラスガラス、セルロース、キトサン、シリカゲル、ポリスチレンコロイド粒子、ヒドロゲル、ポーラスシリカ等は、酵素固定用支持体または吸着剤として利用されている。中でもポーラスシリカは、高い比表面積および大きな孔径を有するため、吸着剤として注目されている。
【0003】
例えば、メソポーラスシリカ(MCM−41)へ酵素を固定化した報告がある(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1によれば、メソポーラスシリカのメソポアおよび酵素の大きさ、メソポーラスシリカおよび/または酵素の表面積、孔径分布、孔容量、粒径、イオン強度、等電位点および表面特性を含む多くのファクタが、酵素のメソポーラスシリカへの固定および固定後の酵素の活性状態に影響を与えることが見出された。さらに、非特許文献1によれば、三次元細孔構造のメソポーラス分子は、一次元細孔構造のメソポーラス分子に比べて吸着能が高いことが分かっている。しかしながら、非特許文献1のMCM−41は一次元細孔構造を有しており、三次元細孔構造を有し、より酵素の吸着能の高い材料の開発が望まれている。
【非特許文献1】Diazら, J. Mol. Catal. B:Enzym. 1996, 2, 115
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、吸着剤に適したメソポーラスシリカ、その製造方法およびそれを用いた吸着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明1)発明1のケージ型メソポーラスシリカは、空間群はIa3dであり、比表面積は4.3×102m2/g〜7.0×102m2/gの範囲であり、比孔容量は8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/gの範囲であり、孔径は6nm〜15nmの範囲であることを特徴とする。
(発明2)発明2のケージ型メソポーラスシリカを製造する方法は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する工程と、前記混合する工程によって得られた混合物を加熱して、テトラエトキシシランを高分子化する工程と、前記高分子化する工程によって得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる工程と、前記ケイ化させる工程によって得られたケイ化物を加熱して、残留する前記界面活性剤P123を除去する工程とからなることを特徴とする。
(発明3)発明2に記載の方法において、前記酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択されることを特徴とする。
(発明4)発明2に記載の方法において、前記高分子化する工程は、35℃で24時間攪拌しながら行うことを特徴とする。
(発明5)発明2に記載の方法において、前記ケイ化させる工程は、1.0×102℃〜2.5×102℃の温度範囲で1/2〜2時間、マイクロ波を照射することを特徴とする。
(発明6)発明2に記載の方法において、前記除去する工程は、前記ケイ化物をフィルタリングし、乾燥させた後に、5.4×102℃で24時間加熱することを特徴とする。
(発明7)発明2に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×102〜2.22×102:19.5×103〜27.5×103:1.83×102〜2.75×102:1.0×102〜2.4×102のモル比を満たすように混合することを特徴とする。
(発明8)発明6に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×102:19.5×103:1.83×102:1.00×102のモル比を満たすように混合することを特徴とする。
(発明9)発明1に記載のケージ型メソポーラスシリカを用いたことを特徴とする吸着剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明のケージ型メソポーラスシリカは、空間群がIa3dであり、比表面積は、4.3×102m2/g〜7.0×102m2/gの範囲であり、比孔容量は、8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/gの範囲であり、孔径は、6nm〜15nmの範囲であることを特徴とする。特に、大きな孔径を有するため、酵素等の巨大分子の吸着に好適である。さらに、本発明によるケージ型メソポーラスシリカは、空間群がIa3dであり三次元細孔構造を有する。このため、従来よりも大きな吸着能を発揮できる。
【0007】
本発明の方法は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する工程と、得られた混合物を加熱して、テトラエトキシシランを高分子化する工程と、得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる工程と、得られたケイ化物を加熱して、残留する界面活性剤P123を除去する工程とからなることを特徴とする。マイクロ波を照射することによって、長時間を要する水熱条件を不要となるので、短時間で所望のケージ径および孔径を有するメソポーラスシリカを得ることができる。このことは、製造プロセスの短縮化、および、コストの低下を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して本発明を詳述する。
【0009】
図1は、本発明によるケージ型メソポーラスシリカの模式図を示す。
【0010】
ケージ型メソポーラスシリカ(SNC−2)100は、ケージ120とチャネル130とを有する。すなわち、ケージ120とチャネル130とを埋めるようにシリカ110が存在する。本発明によるケージ型メソポーラスシリカ100は、次の特徴を有する。
空間群:Ia3d
比表面積:4.3×102m2/g〜7.0×102m2/g
比孔容量:8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/g
孔径:6nm〜15nm
【0011】
本明細書において、孔径とは、図1のd1およびd2で示される径を指す。特に、本発明によるケージ型メソポーラスシリカ100の孔径は、従来知られているメソポーラスシリカよりも大きい。
【0012】
本発明によるケージ型メソポーラスシリカ100の比表面積、比孔容量および孔径は、製造条件によって、上記の範囲で適宜制御可能である。
【0013】
次に、上述のケージ型メソポーラスシリカの製造方法を説明する。
【0014】
図2は、本発明によるケージ型メソポーラスシリカの製造工程を示すフローチャートである。
【0015】
ステップS210:界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する。界面活性剤P123は、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とからなり、EO20−PO70−EO20の構造を有するブロックコポリマーであり、テンプレートとして機能し得る。混合モル比は、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×102〜2.22×102:19.5×103〜27.5×103:1.83×102〜2.75×102:1.0×102〜2.4×102のである。この範囲であれば、所望のメソポーラスシリカを得ることができる。より好ましい混合モル比は、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×102:19.5×103:1.83×102:1.00×102であり、このモル比であれば確実にメソポーラスシリカを得ることができる。酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択される。
【0016】
ステップS220:混合物を加熱してテトラエトキシシランを高分子化する。加熱は、35℃で24時間、攪拌しながら行われる。これによりテトラエトキシシランが確実に高分子化される。好ましくは、ステップS210およびステップS220において、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸とを35℃3〜4時間混合した後に、テトラエトキシシランを混合し、さらに24時間混合する。界面活性剤P127に希酸(水と酸との混合物)を溶解させ、次いで、テトラエトキシシランを添加することによって、テンプレートへテトラエトキシシランを十分に充填させることができる。
【0017】
ステップS230:ステップS220で得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる。マイクロ波の照射は、1.0×102℃〜2.5×102℃の温度範囲で1/2〜2時間の間行われる。マイクロ波を用いることによって、均一な加熱が可能になるので、長時間を要する水熱法と比較して、反応時間を極めて短くすることができる。このようにして得られた反応物は、沈殿し、目視にて確認できる。沈殿物をフィルタリングし、乾燥させる。加熱温度が高ほど、得られるケージ型メソポーラスシリカの孔容量、孔径が大きくなる。
【0018】
ステップS240:ステップS230で得られたケイ化物を加熱して、残留する界面活性剤P123を除去する。加熱は、5.4×102℃で24時間行えば、十分である。
【0019】
以上、このようにして、高温マイクロ波法によってケージ型メソポーラスシリカシリカを得ることができる。このようなケージ型メソポーラスシリカは、空間群Ia3dを有する三次元細孔構造であり、吸着質がメソポーラスシリカ内へ容易にアクセスできることから、吸着剤として好適である。
【0020】
また、本発明の方法によれば、上述したように高温マイクロ波法を採用する。高温マイクロ波法により、反応時間が大幅に短縮されるので、製造コストの削減が可能となり、有利である。
【0021】
次に、具体的な実施例を用いて本発明の方法を説明するが、本発明を実施例に限定するものではないことを理解されたい。なお、実施例で用いた界面活性剤P123およびn−ブタノールは、Aldrichから入手した。
【実施例1】
【0022】
界面活性剤P123(4g)を蒸留水(144g)および35wt%塩酸(7.9g)に溶解させ、35℃で攪拌した。次いで、n−ブタノール(4.0g)を加え、35℃でさらに1時間攪拌した。攪拌後、テトラエトキシシラン(TEOS)(8.6g)を加えた(図2のステップS210)。得られた溶液は均一な透明な溶液であった。なお、混合モル比は、P123:n−ブタノール:H2O:HCl:TEOS=0.017:1.31:195:1.83:1.00であった。
【0023】
得られた混合物を35℃で24時間攪拌し、テトラエトキシシランを高分子化した(図2のステップS220)。続いて、高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させた(図2のステップS230)。加熱温度およびマイクロ波照射時間は、それぞれ、100℃および2時間であった。白い沈殿物(ケイ化物)を目視にて確認した。ケイ化物をフィルタリングし、100℃大気中で乾燥させ、540℃で24時間仮焼した(図2のステップS240)。このようにしてメソポーラスシリカ(SNC−2(100)と称する)を合成した。
【0024】
SNC−2(100)の粉末X線回折測定を、CuKα(λ=0.15406nm)放射を用いたRigaku回折器によって行った。動作条件は、2θステップサイズ0.01°、ステップ時間10秒、測定範囲2θ:0.8°〜10°、加速電圧40kV、電流40mAであった。結果を図3に示し詳述する。
【0025】
SNC−2(100)の窒素吸脱着等温線は、−196℃にてQuantachrome Autosorb 1容量吸着分析を用いて測定した。吸着測定前に、試料を250℃で3時間デガスした。結果を図4に示し詳述する。次いで、図4からBET比表面積および比孔容量を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0026】
図4の窒素吸脱着等温線から、Barret−Hoyner−Halenda法および非局所密度汎関数理論(NDFT)を用いて、SNC−2(100)吸着側細孔分布を求めた。結果を図5に示し、詳述する。
【実施例2】
【0027】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が130℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−21(130)と称する。SNC−2(130)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【実施例3】
【0028】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が150℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(150)と称する。SNC−2(150)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【実施例4】
【0029】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が180℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(180)と称する。SNC−2(180)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【実施例5】
【0030】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が200℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(200)と称する。SNC−2(200)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【0031】
次に、SNC−2(200)の吸着剤としての効果を調べた。なお、吸着質として、ICN biomedicalsl Inc.,から入手した鶏卵白リゾチーム(カタログNo. 100831)を用いた。0.25g/L〜5g/LのLz濃度範囲を有する各種標準リゾチーム溶液(Lz溶液)を10mM、25mM、50mMおよび100mMの緩衝溶液(pH6.5リン酸カルシウム緩衝剤、pH9.6およびpH11炭酸ナトリウム緩衝剤、pH12リン酸ナトリウム緩衝剤)に異なる量のリゾチーム(以降では、リゾチームまたはリゾチーム分子を単にLzと呼ぶ)を溶解させて調製した。各Lz溶液(4g)にSNC−2(200)(20mg)を懸濁させた。得られた混合物を攪拌器にて平衡状態になるまで(典型的には96時間)回転速度160RPM、20℃で連続的に振とうさせた。
【0032】
吸着されたLz量は、281.5nmにおけるUV吸収により、吸着剤を添加する前に存在していたLz量から吸着後の上澄み液に存在するLz量を差し引くことによって算出した。なお、校正実験を測定前に個々の溶液について別個に行った。分析に先立って遠心分離を用いて、UV−可視分析において障害物を懸濁散乱粒子から除去した。pH11、25mMの緩衝溶液における各Lz溶液中のLzのSNC−2(200)への吸着量を調べた。結果を図8および表2に示す。
【実施例6】
【0033】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が220℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(220)と称する。SNC−2(220)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【0034】
高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いてSNC−1(220)の表面および断面を観察した。結果を図6および図7に示し詳述する。
【0035】
実施例5と同様に、0.25g/L〜5g/LのLz濃度範囲を有する各種標準リゾチーム溶液(Lz溶液)を10mM、25mM、50mMおよび100mMの緩衝溶液(pH6.5リン酸カルシウム緩衝剤、pH9.6およびpH11炭酸ナトリウム緩衝剤、pH12リン酸ナトリウム緩衝剤)に異なる量のリゾチームを溶解させて調製した。
【0036】
吸着量のpH依存性を調べるため、各pH(6.5、9.6、11および12)の25mMの緩衝溶液におけるSNC−2(220)へのLzの吸着量を調べた。結果を図8、図9および表2に示す。
【0037】
次に、吸着量のイオン強度およびpH依存性を調べ、LzとSNC−2(220)の表面との間の界面相互作用の静電効果を求めた。具体的には、各pH(6.5、11および12)について、Lz濃度5g/Lの緩衝溶液濃度を変化させた場合のSNC−2(220)へのLzの吸着量を調べた。結果を図10に示す。
【0038】
SNC−2(220)へ吸着したLzの構造安定性を、Nicolet Nexusを用いたフーリエ変換赤外分光法により測定した。測定は室温で行い、pH11におけるLz濃度2g/Lおよび5g/LのLz溶液をSNC−2(220)に吸着させた試料を用いた。また、SNC−2(220)へ吸着したLzの構造安定性を、X線回折法を用いて測定した。それぞれの結果を図11および図12に示す。Lz吸着前後の窒素吸脱着等温線を測定し、SNC−2(220)の吸着剤としての特性を評価した。なお、吸着測定前に、Lz吸着後のSNC−2(220)を80℃で12時間デガスした。結果を図13に示し、後述する。
【実施例7】
【0039】
実施例1において、マイクロ波照射時の温度が250℃である以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスシリカをSNC−2(250)と称する。SNC−2(250)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、窒素吸脱着等温線および吸着側細孔分布を測定するとともに、比表面積および比孔容量の算出をした。結果を図3〜図5および表1に示し詳述する。
【0040】
実施例5と同様に、0.25g/L〜5g/Lの濃度範囲を有する各種標準リゾチーム溶液(Lz溶液)を10mM、25mM、50mMおよび100mMの緩衝溶液(pH6.5リン酸カルシウム緩衝剤、pH9.6およびpH11炭酸ナトリウム緩衝剤、pH12リン酸ナトリウム緩衝剤)に異なる量のリゾチームを溶解させて調製した。実施例5と同様に、pH11におけるSNC−2(250)へのLzの吸着量を調べた。結果を図8および表2に示し、後述する。
【0041】
図3は、実施例1〜実施例7のSNC−2のXRDパターンを示す図である。
【0042】
SNC−2(100)、SNC−2(130)、SNC−2(150)、SNC−2(180)、SNC−2(200)、SNC−2(220)およびSNC−2(250)のXRDパターンは、いずれも、(211)の鋭いピーク(2θ:0.85°〜1.0)と、(220)および(321)のピークとを示した。より詳細には、(211)、(220)および(321)以外に(400)、(420)、(332)のピークも検出された。これらすべてのピークは、結晶構造Ia3d(立方晶系)に典型的なピークであることを確認した。このことから、マイクロ波処理によってIa3d結晶構造を有するメソポーラスシリカが形成されたことが示された。また、マイクロ波処理温度が増加するにつれて、(211)ピークは低角へとシフトした。これは、マイクロ波処理温度の増加に伴い孔径が増大することを示す。したがって、マイクロ波処理温度を変化させることによって、比表面積、比孔容量および孔径を制御できることを示唆する。
【0043】
図4は、実施例1〜実施例7のSNC−2の窒素吸脱着等温線を示す図である。
【0044】
SNC−2(100)、SNC−2(130)、SNC−2(150)、SNC−2(180)、SNC−2(200)、SNC−2(220)、および、SNC−2(250)の窒素吸脱着等温線は、いずれも、IUPACのIV型であることが分かった。このことから得られたSNC−2(100)、SNC−2(130)、SNC−2(150)、SNC−2(180)、SNC−2(200)、SNC−2(220)、および、SNC−2(250)は、いずれも、メソポアを有する多孔体であることが示された。
【0045】
図に示される相対圧力p/p00.7〜0.8におけるヒステリシスは、窒素の毛細管凝縮現象によるものである。マイクロ波処理温度が増加するにつれて、毛細管凝縮現象は相対圧力の高圧側にシフトした。このことは、マイクロ処理温度の増加にともなって、孔径が大きくなることを示唆する。ただし、SNC−2(250)の毛細管凝縮現象は、SNC−2(220)のそれと比較して、低圧力側にシフトした。これは、マイクロ波処理温度が250℃を以上ではテンプレート(界面活性剤P123)の構造が壊れるためである。このことから、より大きな孔径を有するメソポーラスシリカを得るには、マイクロ波処理温度は220℃が最適であることが分かる。
【0046】
表1に示されるように、比孔容量は、マイクロ波処理温度の増加にしたがって増大する傾向を示した。具体的には、比孔容量は、0.791cm3/gから1.45cm3/gまで増加した。このように、マイクロ波処理温度を変更することによって、所望の比孔容量を有するメソポーラスシリカを得ることができる。一方、比表面積は、マイクロ波処理温度の顕著な依存性を示さなかった。しかしながら、比表面積は、430m2/gから695m2/gまでと変化することが分かった。
【0047】
図5は、実施例1〜7のSNC−2の吸着側細孔分布を示す図である。
【0048】
SNC−2(100)、SNC−2(130)、SNC−2(150)、SNC−2(180)、SNC−2(200)、SNC−2(220)およびSNC−2(250)は、いずれも、均一な孔径分布を示した。孔径は、6nm〜15nmの範囲を有することを確認した。
【0049】
表1は、実施例1〜7のSNC−2の比表面積および比孔容量を示す。
【表1】
【0050】
図6は、実施例6のSNC−2(220)のHRTEM像を示す図である。
【0051】
図7は、実施例6のSNC−2(220)の断面のHRTEM像を示す図である。
【0052】
図6および図7は、SNC−2(220)が、極めて規則的に配列した構造、および、均一なサイズの孔を有することを有することを明確に示す。このことからも、SNC−2(220)が、Ia3d空間群を有する三次元ケージ型メソポーラス材料であることが示唆される。
【0053】
図8は、pH11、25mM緩衝溶液における実施例5〜7のSNC−2へのLz吸着等温線を示す図である。
【0054】
各等温線は、いずれも、Lzと吸着剤(SNC−2(200)、SNC−2(220)およびSNC−2(250))の表面との間の密接な関係を示唆する鋭い立ち上がりを示す。いずれの等温線も、水平に達するタイプL(Langmuir)等温線に相当する。図中、実線は、Langmuirモデルを採用した、実験データのフィッティングを示す。単分子層吸着量は、式(1)のLangmuir方程式を用いて算出される。
ns=Knmc/(1+Kc)・・・(1)
ここで、KはLangmuir定数であり、cはLz濃度であり、nmは単分子層吸着量であり、nsは吸着剤(SNC−2)に吸着されたLz量である。
【0055】
図8は、Lz吸着量が、最終的な溶液濃度が増大するにつれて増大することを示す。これは、Lzが、種々の特異な配向でメソポーラスシリカに吸着しているためである。Lzバルク濃度が低い場合、幅の広い楕円状のLzは、吸着剤(SNC−2)表面に対して垂直となるside−on型配向で吸着され得る。一方、Lzバルク濃度が高い場合、Lzは、Lzの静電反発力を低減するように、長手軸に沿ってLzが互いに近接して位置するend−on型配向で吸着され得る。その結果、Lz吸着量がより多くなる。
【0056】
図8によれば、単分子層吸着量は、孔径および孔容量の増大するSNC−2(200)<SNC−2(250)<SNC−2(220)の順で増加する。以上の結果を表2に示す。
【0057】
表2は、実施例5〜7のSNC−2の単分子層吸着量を示す。表2には、参考のため、SNC−2以外の吸着剤の単分子層吸着量を併せて示す。
【表2】
【0058】
本発明によるメソポーラスシリカ(SNC−2)は、従来の吸着剤と比較して、類似の、または、より大きな単分子層吸着量を有することが分かる。他の吸着剤と比較して、本発明によるメソポーラスシリカが高い単分子層吸着量を有するのは、大きな孔径および孔容量に加えて、三次元構造を有する点にある。以上から、本発明によるメソポーラスシリカ(SNC−2)が吸着剤として利用可能であることを確認した。
【0059】
図9は、実施例6のSNC−2(220)へのLz吸着量のpH依存性を示す図である。
【0060】
いずれの等温線も吸着剤の表面とLzとの間の相関関係を示している。pH11において、等温線は、他のpH値よりもより高い相関関係を示す(図3の挿入図を参照)。具体的には、pH11の緩衝溶液において最も高いLz吸着量を示した。これは、Lzの等電位点(pI)が約11であるため、等電位点以下のpHでLzが正に帯電し、等電位点以上のpHでLzが負に帯電するためである。メソポーラス材料のうちシリカ表面の等電位点は約2であり、吸着剤の表面はpH2以上にて負に帯電されている。
【0061】
図9より、単分子層吸着量(nm)は、溶液のpHに依存して大きく変化することが分かる。Lzの最大吸着量は、pH11における60.60μm/gである。このことは、Lzの等電位点(pI)近傍(すなわち11)において、より単分子層吸収量が高くなることを示唆する。これは、Lz溶液のpHが等電位点近傍にある場合、Lzの正味の電荷量が低く、Lz分子間のクーロン反発力が最小となるためである。したがって、Lz分子の細密充填が可能であり、単分子層吸着量が増大する。
【0062】
図9はまた、Lz溶液のpHが11以外(すなわち、Lzの当電位点近傍以外)では、Lzの吸着量が減少することを示す。これは、Lzが等電位点pI以下のpHでは正に帯電され、等電位点pI以上のpHでは負に帯電されるためである。より詳細には、溶液pHを11から6.5まで減少させると、Lzの正味の正の電荷量が増加し始め、Lz間で水平方向の反発が生じる。Lz溶液のpHが11から12へと増加すると、Lzは負に帯電し、Lz間の静電反発力を増加させる。さらに、負に帯電したLzおよび負に帯電したメソポーラスシリカ(SNC−2)の表面は、pH11以上のpH12において吸着量を低減させる強い反発力を生成する。
【0063】
図10は、実施例6のSNC−2(220)のLz吸着量のpHおよびイオン強度依存性を示す図である。
【0064】
図10から、SNC−2(220)へのLzの吸着量は、pHおよびそのイオン強度に依存していることが分かる。一般に、異なるpH(例えば、6.5、11および12)を有する異なる緩衝濃度(例えば、10、25、50および100mM)におけるLzの吸着量の変化は、緩衝溶液における硫酸イオンまたは炭酸イオンによって生成される表面電荷の遮蔽効果に基づく。
【0065】
SNC−2(220)に吸着するLz量は、pH12では、10mMから50mMへとイオン強度が増加するにともなってゆるやかに増加する。イオン強度が低いと、硫酸イオンが優先的に水和し、pH12で部分的に正に帯電したLzと、負に帯電したSNC−2(220)の表面との間に静電引力をもたらす場合がある。一方、イオン強度が高いと(例えば、50mM〜100mM)、SNC−2(220)に吸着するLz量は、イオン強度が低い場合と比較して劇的に減少する。これは、負の硫酸イオンおよび負に帯電したSNC−2(220)の表面がLzを囲み、静電反発力を生じるためである。
【0066】
pH11では、イオン強度が10mMから25mMへと増加するにつれて、Lzの単分子層吸着量は増加する。これは、炭酸イオンが優先的に水和するので、Lzの溶解度が減少し、Lzが細密充填するようになるためである。詳細には、Lzの電荷はpH11(Lzの等電位点は約11)では0であり、LzはSNC−2(220)の表面により吸着するためである。一方、25mMから100mMへとイオン強度が増加するにつれて、Lzの単分子層吸着量は減少する。これは、負の炭酸イオンによって囲まれたLzと、負に帯電したSNC−2(220)の表面との間に静電反発力が生じるためである。
【0067】
さらに、図10によれば、pH6.5では、Lzの単分子層吸着量は、イオン強度の増加にともなって増加する。これは、硫酸イオンの水和が優先的に生じ、その結果、Lzの溶解度が減少し、正に帯電したLzと負に帯電したSNC−2(220)の表面との間に静電引力が生じるためである。
【0068】
図11は、Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着させた後のLzのFT−IRスペクトルを示す図である。
【0069】
本発明によるSNC−2に吸着された後のLzの構造安定性を、フーリエ変換赤外分光法を用いて調べた。図には、純粋なLz、および、pH11においてLzの吸着量がそれぞれ27.57μmol/L(Lz濃度2g/Lを用いた場合)および60.60μmol/L(Lz濃度5g/Lを用いた場合)であるSNC−2(220)のFT−IRスペクトルが示される。
【0070】
純粋なLzのFT−IRスペクトルに示される典型的なアミドバンドI(1666cm−1、C=O伸縮モード)およびアミドバンドII(1542cm−1、N−H曲げ伸縮モード)を用いてたんぱく質(本実施例ではLz)の構造を調べた。Lzが吸着されたSNC−2(220)のFT−IRスペクトルは、いずれも、純粋なLzのFT−IRスペクトルと同様に、アミドバンドIおよびアミドバンドIIに基づくピークを示した。このことから、SNC−2(220)に吸着後もLzは、吸着前のLzと同様の構造を示し、構造安定性が確認された。
【0071】
図12は、Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着させた後のSNC−2(220)のXRDパターンを示す図である。
【0072】
本発明によるSNC−2へLzを吸着させた後のSNC−2の構造安定性を、X線回折を用いて調べた。図12には、吸着前のSNC−2(220)のXRDパターンと、Lz濃度2g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−(220)のXRDパターンと、Lz濃度5g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−2(220)のXRDパターンとが示される。
【0073】
Lz吸着後のSNC−2(220)のXRDパターンは、Lz吸着前のそれと同じであり、立方晶Ia3d相を有していることを示唆する。より具体的には、吸着後のSNC−2(220)のXRDパターンは、いずれも、回折面(211)、(220)、(400)、(420)および(332)のSNC−2(220)の典型的なピークを示した。なお、SNC−2(220)への吸着量が多いほど、ピーク強度が低い。これは、Lzの吸着によって構造の秩序性が低下したのではなく、シリカ壁と孔部との間の密度と、シリカ壁とLzとの間の密度とのコントラストが大きいためである。以上より、本発明によるSNC−2は、吸着質(本実施例ではLz)をSNC−2の有するメソポアに、SNC−2の構造完全性に影響与えることなく、吸着することが分かった。
【0074】
図13は、Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着させた後のSNC−2(220)の窒素吸脱着等温線を示す図である。
【0075】
本発明によるSNC−2へのLz吸着後のSNC−2の構造安定性を、窒素吸脱着測定を用いて調べた。図13には、吸着前のSNC−2(220)の窒素吸脱着等温線と、2g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−(220)の窒素吸脱着等温線と、5g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−2(220)の窒素吸脱着等温線とが示される。
【0076】
図13から、SNC−2(220)に吸着される窒素量は、Lz吸着量が多いSNC−2(220)ほど減少することが示される。すなわち、Lz濃度2g/LのLz溶液を吸着させたSNC−2(220)よりも、Lz濃度5g/LのLz溶液を吸着させたSNC−2(220)の方が、窒素吸着量は小さい。
【0077】
また、図13は、Lz吸着量が増加するにつれて、SNC−2(220)の比孔容量は、1.45から0.47まで減少することを示す。例えば、Lz濃度5g/LのLz溶液を用いた場合、SNC−2(220)のメソポアに吸着された実際のLzはわずか0.77cm3/gであることが分かった。これは、SNC−2(220)の全孔容量の46.90%に相当する。
【0078】
一方、窒素吸脱着測定によれば、Lz濃度5g/LのLz溶液を用いてLzを吸着させたSNC−2(220)の比孔容量は、吸着前のSNC−2(220)の比孔容量から67.59%低減することを示した。さらに、理論計算から得られる吸着されたLzが占有する孔容量と、窒素吸着測定による孔容量との差は、14.49%であった。この孔容量における差は、Lz(3.0×4.5)が窒素吸着を妨げるようにSNC−2(220)の孔に吸着するためと考えられる。このことからも、本発明によるSNC−2は、吸着質(本実施例ではLz)をSNC−2の有するメソポアに、SNC−2の構造完全性に影響与えることなく、吸着することが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、高温マイクロ法によって、Ia3dの結晶構造を有するメソポーラスシリカが製造される。これにより、従来よりも製造コストを下げることができるだけでなく、従来よりも大きな孔径を有するメソポーラスシリカが得られる。このようなメソポーラスシリカは、吸着力を向上させることができるとともに、大きな物質の吸着を可能にするので、吸着剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明によるケージ型メソポーラスシリカの模式図
【図2】本発明によるケージ型メソポーラスシリカの製造工程を示すフローチャー ト
【図3】実施例1〜実施例7のSNC−2のXRDパターンを示す図
【図4】実施例1〜実施例7のSNC−2の窒素吸脱着等温線を示す図
【図5】実施例1〜7のSNC−2の吸着側細孔分布を示す図
【図6】実施例6のSNC−2(220)のHRTEM像を示す図
【図7】実施例6のSNC−2(220)の断面のHRTEM像を示す図
【図8】pH11、25mM緩衝溶液における実施例5〜7のSNC−2へのLz 吸着等温線を示す図
【図9】実施例6のSNC−2(220)へのLz吸着量のpH依存性を示す図
【図10】実施例6のSNC−2(220)のLz吸着量のpHおよびイオン強度 依存性を示す図
【図11】Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着さ せた後のLzのFT−IRスペクトルを示す図
【図12】Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着さ せた後のSNC−2(220)のXRDパターンを示す図
【図13】Lzを実施例6のSNC−2(220)に吸着させる前、および、吸着さ せた後のSNC−2(220)の窒素吸脱着等温線を示す図
【符号の説明】
【0081】
100 ケージ型メソポーラスシリカ(SNC−2)
110 シリカ
120 ケージ
130 チャネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージ型メソポーラスシリカであって、
前記ケージ型メソポーラスシリカの空間群は、Ia3dであり、
前記ケージ型メソポーラスシリカの比表面積は、4.3×102m2/g〜7.0×102m2/gの範囲であり、
前記ケージ型メソポーラスシリカの比孔容量は、8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/gの範囲であり、
前記ケージ型メソポーラシリカの孔径は、6nm〜15nmの範囲であることを特徴とする、ケージ型メソポーラスシリカ。
【請求項2】
ケージ型メソポーラスシリカを製造する方法であって、
界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する工程と、
前記混合する工程によって得られた混合物を加熱して、テトラエトキシシランを高分子化する工程と、
前記高分子化する工程によって得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる工程と、
前記ケイ化させる工程によって得られたケイ化物を加熱して、残留する前記界面活性剤P123を除去する工程と
からなることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記高分子化する工程は、35℃で24時間攪拌しながら行うことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記ケイ化させる工程は、1.0×102℃〜2.5×102℃の温度範囲で1/2〜2時間、マイクロ波を照射することを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、前記除去する工程は、前記ケイ化物をフィルタリングし、乾燥させた後に、5.4×102℃で24時間加熱することを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×102〜2.22×102:19.5×103〜27.5×103:1.83×102〜2.75×102:1.0×102〜2.4×102のモル比を満たすように混合することを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×102:19.5×103:1.83×102:1.00×102のモル比を満たすように混合することを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1に記載のケージ型メソポーラスシリカを用いたことを特徴とする吸着剤。
【請求項1】
ケージ型メソポーラスシリカであって、
前記ケージ型メソポーラスシリカの空間群は、Ia3dであり、
前記ケージ型メソポーラスシリカの比表面積は、4.3×102m2/g〜7.0×102m2/gの範囲であり、
前記ケージ型メソポーラスシリカの比孔容量は、8.0×10−1cm3/g〜15×10−1cm3/gの範囲であり、
前記ケージ型メソポーラシリカの孔径は、6nm〜15nmの範囲であることを特徴とする、ケージ型メソポーラスシリカ。
【請求項2】
ケージ型メソポーラスシリカを製造する方法であって、
界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する工程と、
前記混合する工程によって得られた混合物を加熱して、テトラエトキシシランを高分子化する工程と、
前記高分子化する工程によって得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる工程と、
前記ケイ化させる工程によって得られたケイ化物を加熱して、残留する前記界面活性剤P123を除去する工程と
からなることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記高分子化する工程は、35℃で24時間攪拌しながら行うことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記ケイ化させる工程は、1.0×102℃〜2.5×102℃の温度範囲で1/2〜2時間、マイクロ波を照射することを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、前記除去する工程は、前記ケイ化物をフィルタリングし、乾燥させた後に、5.4×102℃で24時間加熱することを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×102〜2.22×102:19.5×103〜27.5×103:1.83×102〜2.75×102:1.0×102〜2.4×102のモル比を満たすように混合することを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×102:19.5×103:1.83×102:1.00×102のモル比を満たすように混合することを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1に記載のケージ型メソポーラスシリカを用いたことを特徴とする吸着剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−173521(P2009−173521A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271929(P2008−271929)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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