説明

ケーブルラックの継ぎ構造

【課題】ボルト挿通孔を拡開して十分な電気的導通を図るケーブルラックの継ぎ構造において、溶融亜鉛めっき仕上げ等のボルトとナットを緊締する際に生じる共回りを確実に防止し、しかも、ボルト挿通孔の形状が通常のボルト挿通孔として直感的に認識される形状とすることで、説明活動等に費やす労力を軽減することが可能なケーブルラックの継ぎ構造を提供する。
【解決手段】ボルト挿通孔9を、前記継ぎボルト5における角根部6の先端部のみが挿入可能な円形状に形成する。該角根部6の複数の角部6Aが係止する窪み部9Aをボルト挿通孔9の内周面に凹設する。該角根部6の角部6Aが係止した部分からボルト挿通孔9を拡開するように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルラック相互の電気的導通を確保するケーブルラックの継ぎ構造に係り、たとえば溶融亜鉛めっきが施されたボルトとナットを緊締する際に生じる共回りを防止するケーブルラックの継ぎ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線用に用いられる金属製のケーブルラックは種々の形状、構造のものが提案されている。その多くは、敷設現場の環境変化に対処できるように、耐候性、防錆性、耐塩性、耐湿性、耐薬品性当を考慮してたとえばメラミン焼付塗装や防錆力の優れたエポキシ樹脂系塗装など特殊な表面処理が施されている。ところが、これらの特殊な表面処理膜は導電性がないので、これらの表面処理を施したケーブルラックを接続して敷設すると、これらのケーブルラック相互間に導電性がない状態になる。すると、ケーブルラックに載置して配線支持するケーブルに漏洩電流が生じた場合に、導電性がないケーブルラックでは、この漏洩電流を回避することができない不都合が生じる。
【0003】
この種の不都合を解消するために、従来では、ケーブルラック相互をアースボンドで接続する構造(特許文献1)や、ボルトやナットの座面に突起(特許文献2)や鋸歯状の凹凸(特許文献3)を設け、これらの突起や凹凸でケーブルラックの塗装を強制的に剥離して使用する構成などが提案されている。
【0004】
特許文献1では、ケーブルラック接続作業に多くの手間を要し、特許文献2や特許文献3では、突起や鋸歯状の凹凸に剥離した塗膜が重なると、それ以上の剥離が困難になるなどの問題点が残されていた。当出願人は、かかる問題点を解決するために特許文献4を発明し、現在では多くのケーブルラックの連結工事に採用されている。
【0005】
この特許文献4は、電気的導通を確実にするために、導電性の継ぎボルトに、ケーブルラックのボルト挿通孔に強制嵌入してボルト挿通孔を拡開する角根部を設け、この継ぎボルトにねじ止めされる導電性のナットに、圧接する表面処理膜を周囲に押しやるスクリュー形状の破断突部を形成し、これらの継ぎボルトとナットとによる締結手段にて、ケーブルラック相互を導電状態とする方法が記載されている。
【0006】
ところが、特許文献4にも課題が残されていた。それは、連結作業時における継ぎボルトとナットとの共回り現象である。この現象は、たとえば溶融亜鉛めっきを施したボルトとナットのように、ボルトの雄ねじ部とナットの雌ねじ部との摩擦抵抗が大きい場合では、ナットを回転させたときにボルトに発生する軸方向(引張力)より回転力が勝る場合がある。その結果として、ボルトの角根部分が貫通孔に強制嵌入するより先にナットと共に回転することになり、この結果共回り現象が発生し、十分な緊締力や導通効果が得られなくなるものである。
【0007】
このような共回り現象は、工事全体における発生頻度は少ないものの、一旦発生するとケーブルラックの連結作業の作業能率を著しく低下させる不都合がある。すなわち、この共回り現象が生じた場合、作業員は、一方の手で継ぎボルトの頭部を貫通孔に強く押し当てても孔に回転を止める手段がないことから、プライヤ等の工具を使用して頭部をはさみ他方の手でナットを回転させる必要が生じる。また、このような両手を使用する作業は、高所での作業条件として極めて危険な状況になる不都合も生じていた。
【0008】
そこで、継ぎボルトの共回りを防止するために、継ぎボルトの角根部分を角孔に嵌合するように挿入して回転を固定してみたところ、この角根部分での切り込みが阻止され、ボルト挿通孔を拡開することができなくなってしまうことが判明した。すなわち、継ぎボルトの角根部分に嵌合する角孔で継ぎボルトを固定すると、角根部分の周囲全体が角孔に密着するため、角根部分の角部による切り開きができず、その結果、ボルト挿通孔を拡開することができなくなるものであった。
【0009】
このような課題を解消するために、当出願人は特許文献5を提案している。すなわち、溶融亜鉛めっき等を施したボルトとナットにおいてもボルト挿通孔を拡開して十分な電気的導通を図ることが可能なケーブルラックの継ぎ構造に関する発明である。
【特許文献1】実公昭55‐43700号公報
【特許文献2】実開昭54‐48399号公報
【特許文献3】実開昭56‐51414号公報
【特許文献4】特公平4‐4808号公報
【特許文献5】特開2007‐295657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この特許文献5によると、ボルト挿通孔の形状を変形して円形ではないボルト挿通孔を形成することで、角根の角部による切り開き作用を高めようとしたものである。ところが、ケーブルラックの側面に開穿されたボルト挿通孔は、略花びら形状や略星型形状、略角孔状などの形状を成すことから、本来のボルト挿通孔として認識され難く、接続工事の混乱を招くおそれがあった。
【0011】
すなわち、角根ボルトが共回りするのは、特に、溶融亜鉛めっき仕上げ等のボルト、ナットのように、摩擦抵抗が大きい特定のものに限られる。そのため、一般的な表面仕上げのボルト、ナットでは、特許文献4の如く従来の円形のボルト挿通孔が使用される。したがって、溶融亜鉛めっき仕上げ等のボルト、ナットを使用しない作業者は、特許文献5のような略花びら形状や略星型形状等の形状は、どのような意味があるのか認識され難いものになっていた。そのため、疑問を持つ作業者にその都度説明したり、あるいは形状の意味を周知徹底するための広報活動を行ったりする必要も生じる。ところが、溶融亜鉛めっき仕上げ等のボルト、ナットを使用する頻度は、通常のボルト、ナットの使用頻度に比べて極めて少ないことから、このような周知広報活動等に費やす労力は極めて非効率的なものになる。
【0012】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、ボルト挿通孔を拡開して十分な電気的導通を図るケーブルラックの継ぎ構造において、溶融亜鉛めっき仕上げ等のボルトとナットを緊締する際に生じる共回りを確実に防止し、しかも、ボルト挿通孔の形状が通常のボルト挿通孔と同一と認識される形状とすることで、周知広報活動等に費やす労力等を軽減することが可能なケーブルラックの継ぎ構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、非導電性の表面処理膜3が施されたケーブルラック1の親桁2接続端部相互に、非導電性の表面処理膜3が施された継ぎ金物4を重合し、これらケーブルラック1と継ぎ金物4とを導電性の継ぎボルト5と固定ナット7とで接続する際に、先端に向かってすぼむテーパー状の角根部6を継ぎボルト5に設け、親桁2に開穿したボルト挿通孔9に継ぎボルト5を強制嵌入してこのボルト挿通孔9を拡開することで、ケーブルラック1の表面処理膜3を破断すると共に、セレイト8付きのフランジナットで構成された固定ナット7を継ぎボルト5に締付けることで、セレイト8が圧着する継ぎ金物4の表面処理膜3を周囲に押しやる締結手段により、ケーブルラック1相互を導電状態とするケーブルラックの継ぎ構造において、
前記ボルト挿通孔9を、前記継ぎボルト5における角根部6の先端部のみが挿入可能な円形状に形成すると共に、該角根部6の複数の角部6A先端が係止する窪み部9Aをボルト挿通孔9の内周面に凹設し、該角根部6の角部6Aが係止した部分からボルト挿通孔9を拡開するように設けたことにある。
【0014】
第2の手段において、前記ボルト挿通孔9に親桁2内側から挿通する継ぎボルト5と前記継ぎ金物4から継ぎボルト5に締付ける固定ナット7は、ねじ部を含んだ表面全体に溶融亜鉛めっき10等の摩擦抵抗の大きい表面処理が施されている。
【0015】
第3の手段は、前記継ぎボルト5の角根部6が断面四角形状を成すとき、前記窪み部9Aは、前記ボルト挿通孔9内周面において角根部6の隣接する一対の角部6Aが係止する位置に凹設されたものである。
【0016】
第4の手段は、前記継ぎボルト5の角根部6が断面四角形状を成すとき、前記窪み部9Aは、前記ボルト挿通孔9内周面において角根部6の三箇所の角部6Aが係止する位置に凹設されたものである。
【0017】
第5の手段は、前記継ぎボルト5の角根部6が断面四角形状を成すとき、前記窪み部9Aは、前記ボルト挿通孔9内周面において該ボルト挿通孔9の中心から45゜毎回転させた位置で4箇所に凹設されたものである。
【0018】
第6の手段は、前記継ぎボルト5の角根部6の断面が四角形状以上の多角形状を成すとき、前記窪み部9Aの数は、角根部6の角部6Aの数が偶数の場合に全角部6Aの半数以上に設定され、角根部6の角部6Aの数が奇数の場合に全角部6Aより1個少ない数の半数以上に設定されていることを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1において、前記ボルト挿通孔9を、前記継ぎボルト5における角根部6の先端部のみが挿入可能な円形状に形成すると共に、該角根部6の複数の角部6Aが係止する窪み部9Aをボルト挿通孔9の内周面に凹設し、該角根部6の角部6Aが係止した部分からボルト挿通孔9を拡開するように設けたことで、溶融亜鉛めっき仕上げ等のボルトとナットを緊締する際に生じる共回りを確実に防止することができる。しかも、窪み部9Aは、円形状のボルト挿通孔9に、角部6Aの先端が係止する僅かな凹みとして形成されるものであるから、ボルト挿通孔9の形状が通常のボルト挿通孔として直感的に認識される形状となり、周知広報活動等に費やす労力を軽減することが可能になった。
【0020】
請求項2に記載の如く、ねじ部を含んだ表面全体に溶融亜鉛めっき等が施された継ぎボルト5と固定ナット7とを使用する場合に生じる雄ねじと雌ねじとの摩擦抵抗が大きい場合でも、共回り現象を確実に防止するものである。
【0021】
請求項3乃至請求項6に記載の各形状により、ボルト挿通孔9の窪み部9Aに継ぎボルト5の角部6A先端が係止すると、該角部6Aが係止した窪み部9Aからボルト挿通孔9を拡開することが可能になった。したがって、ケーブルラックの継ぎ構造において、ボルト挿通孔9を拡開して確実な電気的導通を図ることができるものである。しかも、窪み部9Aは、円形状のボルト挿通孔9に、僅かな凹みとして数箇所形成されるものであるから、このボルト挿通孔9の形状が通常のボルト挿通孔として直感的に認識され易くなっている。したがって、溶融亜鉛めっき仕上げ等のボルト、ナットを使用しない作業者が特にボルト挿通孔9の説明を受けなくても本発明ボルト挿通孔9を、従来のボルト挿通孔Pと同様に使用することができる。この結果、作業者にその都度説明し、あるいは形状の意味を周知徹底する周知広報活動等の非効率的な労力は一切必要なくなった。
【0022】
このように、本発明によると、ボルト挿通孔を拡開して十分な電気的導通を図るケーブルラックの継ぎ構造において、溶融亜鉛めっき仕上げ等のボルトとナットを緊締する際に生じる共回りを確実に防止し、しかも、ボルト挿通孔の形状が通常のボルト挿通孔として直感的に認識される形状とすることで、周知広報活動等に費やす労力を軽減することが可能になるなどといった種々の効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明継ぎ構造の最良の形態は、ボルト挿通孔9を、前記継ぎボルト5における角根部6の先端部のみが挿入可能な円形状に形成する。該角根部6の複数の角部6Aが係止する窪み部9Aをボルト挿通孔9の内周面に凹設し、該角根部6の角部6Aが係止した部分からボルト挿通孔9を拡開するように設ける。継ぎボルト5の角根部6が断面四角形状を成すとき、前記窪み部9Aは、前記ボルト挿通孔9内周面において角根部6の隣接する一対の角部6Aが係止する位置に凹設することで当初の目的を達成するものである。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の一実施例を説明する。本発明継ぎ構造は、ケーブルラック1相互を導電状態で連結する継ぎ構造である。すなわち、非導電性の表面処理膜3が施されたケーブルラック1の親桁2接続端部に、非導電性の表面処理膜3が施された継ぎ金物4を重合し、これらケーブルラック1と継ぎ金物4とを導電性の継ぎボルト5と固定ナット7とで接続する構造である(図1参照)。
【0025】
継ぎボルト5の頭部下面がわには、先端に向かってすぼむテーパー状の角根部6が設けられている(図3参照)。図示の角根部6は、平面略正方形状を成し、四つの辺6Bと四個の角部6Aとを有するものである(図4参照)。この継ぎボルト5の表面全体には、溶融亜鉛めっき10等の摩擦抵抗の大きい表面処理が施されている。図示の継ぎボルト5は、ケーブルラック1の連結に用いられている角根丸頭M8×15を使用している。
【0026】
また、固定ナット7は、セレイト8付きのフランジナットが使用される(図5(イ)、(ロ)参照)。固定ナット7の雌ねじ部を含んだ表面全体にも、溶融亜鉛めっき10等の摩擦抵抗の大きい表面処理が施されている。図示の固定ナット7は、ケーブルラック1の連結に用いられているセレイト付フランジナットM8を使用している。
【0027】
ケーブルラック1連結時において、継ぎボルト5を親桁2のボルト挿通孔9に内側から挿通し、親桁2の外側に配設した継ぎ金物4側からこの継ぎボルト5に固定ナット7を締付ける(図1参照)。すると、ボルト挿通孔9に挿通した継ぎボルト5の角根部6により、ボルト挿通孔9が強制的に拡開され、ボルト挿通孔9周囲の表面処理膜3が破断する。一方、固定ナット7のセレイト8が継ぎ金物4の表面処理膜3を周囲に押しやって剥離する(図2参照)。この状態でケーブルラック1相互を導電状態とするものである。
【0028】
本発明連結構造は、ボルト挿通孔9の形状を改良したものである。すなわち、このボルト挿通孔9の形状を、前記継ぎボルト5における角根部6の先端部のみが挿入可能な円形状に形成すると共に、該角根部6の複数の角部6Aが係止する窪み部9Aをボルト挿通孔9の内周面に凹設した形状とするものである(図6参照)。そして、該角根部6の角部6Aが係止した部分からボルト挿通孔9を拡開するように設けている。
【0029】
ボルト挿通孔9は、継ぎボルト5の角根部6の先端部のみが挿入可能な直径とする(図7参照)。そして、ボルト挿通孔9に挿入された角根部6の複数の角部6Aがボルト挿通孔9の窪み部9Aに係止する構造とする。実験によると、ボルト挿通孔9の窪み部9Aが一箇所の場合、角根部6の角部6Aの対角がボルト挿通孔9の内面に接してボルト挿通孔9の中心軸と継ぎボルト5の中心軸とが一致したまま窪み部9A方向に移動しないことが判明した(図11(イ)参照)。この結果、窪み部9Aに角部6Aが係止せず共周りを防止することができないものである。
【0030】
一方、ボルト挿通孔9に窪み部9Aを、角根部6の隣接する角部6Aが係止する位置に
2箇所形成することで、ボルト挿通孔9の内部で角根部6が移動して窪み部9Aに角部6Aが滑り込むことが判明した(図11(ロ)参照)。この結果、共周りを防止することが可能になるものである。
【0031】
また、ケーブルラック1の従来のボルト挿通孔Pの直径は10.5mmである(図10参照)。ところが、本発明では、ボルト挿通孔9の直径を10mmとし、角根部6の先端部のみが挿入できるように形成する。更に、このボルト挿通孔9に設けた窪み部9Aの先端部までの最大直径が10.5mmとなるように形成している。尚、同図における角窪み部9Aの位置関係は、ボルト挿通孔9の中心から90゜回転させた位置に設定している。図示の窪み部9Aは、直線が略直角に交わる角形状を成すように凹設されているものである。
【0032】
次に、本発明構造の別の実施例を説明する。継ぎボルト5の角根部6が断面四角形状を成すとき、前記窪み部9Aは、前記ボルト挿通孔9内周面において角根部6の三箇所の角部6Aが係止する位置に凹設したものとする(図8参照)。この場合、三箇所の窪み部9A全てに角部6Aが係止することになる。
【0033】
また別の実施例として、前記継ぎボルト5の角根部6が断面四角形状を成すとき、前記窪み部9Aは、前記ボルト挿通孔9内周面において該ボルト挿通孔9の中心から45゜毎回転させた位置で4箇所に凹設したものとする(図9参照)。この場合、4箇所の窪み部9Aに対して2個の角部6Aが係止するものである。
【0034】
この実験により、窪み部9Aの位置は、隣接する角部6Aが同時に係止する位置が好ましく、しかも、窪み部9Aの数は、角根部6の半数以上の角部6Aが係止する状態が好ましいことが分かった。そこで、継ぎボルト5の角根部6の断面が四角形状以上の多角形状を成すとき、前記窪み部9Aの位置と数は、次のとおりに設定することが望ましい。
【0035】
すなわち、角根部6の角部6Aの数が偶数の場合は、少なくとも隣接する一対の角部6Aが同時に係止する位置を含み、全角部6Aの半数以上が係止する数の窪み部9Aを形成する。例えば、継ぎボルト5の角根部6が六角形状の場合は、3個以上の窪み部9Aを形成するものである(図示せず)。
【0036】
一方、角根部6の角部6Aの数が奇数の場合は、少なくとも隣接する一対の角部6Aが同時に係止する位置を含み、全角部6Aより1個少ない数の半数以上の角部6Aが係止する数の窪み部9Aを形成するものである。例えば、継ぎボルト5の角根部6が七角形状の場合は、3個以上の窪み部9Aを形成するものである(図示せず)。
【0037】
また、本発明構造によると、角根部6全体がボルト挿通孔9に嵌合するのではなく、角根部6の角部6Aのみが窪み部9Aに係止する構造であるから、全ての角部6Aが同時に係止するように窪み部9Aを形成することも可能である。
【0038】
尚、本発明は、図示例に限定されるものではなく、たとえば、ボルト挿通孔9の窪み部9Aの形状や継ぎボルト5の角根部6の形状など、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例を示す使用状態の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を示す使用状態の断面図である。
【図3】本発明の継ぎボルトを示す側面図である。
【図4】本発明の継ぎボルトを示す正面図である。
【図5】本発明の固定ナットを示し、(イ)は側面図、(ロ)は正面図である。
【図6】本発明のボルト挿通孔を拡開する状態を示す要部破断断面図である。
【図7】本発明の角根部とボルト挿通孔とを示す要部断面図である。
【図8】本発明のボルト挿通孔の他の実施例を示す平面図である。
【図9】本発明のボルト挿通孔の他の実施例を示す平面図である。
【図10】本発明のボルト挿通孔と従来のボルト挿通孔とを示す平面図である。
【図11】本発明の係止状態の実験を示したもので、(イ)は窪み部を1個形成した状態、(ハ)は窪み部を2個形成した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ケーブルラック
2 親桁
3 表面処理膜
4 継ぎ金物
5 継ぎボルト
6 角根部
6A 角部
7 固定ナット
8 セレイト
9 ボルト挿通孔
9A 窪み部
10 溶融亜鉛めっき
P 従来のボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の表面処理膜が施されたケーブルラックの親桁接続端部相互に、非導電性の表面処理膜が施された継ぎ金物を重合し、これらケーブルラックと継ぎ金物とを導電性の継ぎボルトと固定ナットとで接続する際に、先端に向かってすぼむテーパー状の角根部を継ぎボルトに設け、親桁に開穿したボルト挿通孔に継ぎボルトを強制嵌入してこのボルト挿通孔を拡開することで、ケーブルラックの表面処理膜を破断すると共に、セレイト付きのフランジナットで構成された固定ナットを継ぎボルトに締付けることで、セレイトが圧着する継ぎ金物の表面処理膜を周囲に押しやる締結手段により、ケーブルラック相互を導電状態とするケーブルラックの継ぎ構造において、
前記ボルト挿通孔を、前記継ぎボルトにおける角根部の先端部のみが挿入可能な円形状に形成すると共に、該角根部の複数の角部先端が係止する窪み部をボルト挿通孔の内周面に凹設し、該角根部の角部が係止した部分からボルト挿通孔を拡開するように設けたことを特徴とするケーブルラックの継ぎ構造。
【請求項2】
前記ボルト挿通孔に親桁内側から挿通する継ぎボルトと前記継ぎ金物から継ぎボルトに締付ける固定ナットは、ねじ部を含んだ表面全体に溶融亜鉛めっき等の摩擦抵抗の大きい表面処理が施された請求項1記載のケーブルラックの継ぎ構造。
【請求項3】
前記継ぎボルトの角根部が断面四角形状を成すとき、前記窪み部は、前記ボルト挿通孔内周面において角根部の隣接する一対の角部が係止する位置に凹設された請求項1又は2記載のケーブルラックの継ぎ構造。
【請求項4】
前記継ぎボルトの角根部が断面四角形状を成すとき、前記窪み部は、前記ボルト挿通孔内周面において角根部の三箇所の角部が係止する位置に凹設された請求項1又は2記載のケーブルラックの継ぎ構造。
【請求項5】
前記継ぎボルトの角根部が断面四角形状を成すとき、前記窪み部は、前記ボルト挿通孔内周面において該ボルト挿通孔の中心から45゜毎回転させた位置で4箇所に凹設された請求項1又は2記載のケーブルラックの継ぎ構造。
【請求項6】
前記継ぎボルトの角根部の断面が四角形状以上の多角形状を成すとき、前記窪み部の数は、角根部の角部の数が偶数の場合に全角部の半数以上に設定され、角根部の角部の数が奇数の場合に全角部より1個少ない数の半数以上に設定される請求項1又は2記載のケーブルラックの継ぎ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−51050(P2010−51050A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210553(P2008−210553)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【Fターム(参考)】