ケーブルラック及びトンネル壁面へのケーブルラックの施工方法
【課題】 ケーブルラックとしての充分な強度と優れた耐食性を確保しながら、部品点数及び取付け工程数の削減と軽量化によってケーブル布設工事の能率化と工事費の低廉化を図る。
【解決手段】 ケーブル架設対象箇所に対してケーブル架設方向に沿って固定可能な取付け本体1と、該取付け本体1の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部2と、各載架アーム部2の下面とこれに対応する取付け本体1の下面側部位とに亘る補強部3とが繊維強化プラスチックで一体形成されている。
【解決手段】 ケーブル架設対象箇所に対してケーブル架設方向に沿って固定可能な取付け本体1と、該取付け本体1の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部2と、各載架アーム部2の下面とこれに対応する取付け本体1の下面側部位とに亘る補強部3とが繊維強化プラスチックで一体形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路トンネルの壁面等のケーブル架設対象箇所に送配電ケーブル等のケーブルを布設する場合に用いられるケーブルラック及びそれをトンネル壁面に施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブルラックでは、図10、図11に示すように、断面L字状の金属製の支持部材10を略への字状に屈曲形成して、ケーブル架設対象箇所に対してアンカーボルト7・ナット8等で固定される取付け部10Aと、左右一対の親桁11Aの下側縁に屈曲形成された折曲げ片11aに亘って複数本の子桁11Bを取付けてある金属製のケーブルラック本体11を水平姿勢で載置支持可能な載置部10Bを構成するとともに、前記支持部材10の載置部10Bとケーブルラック本体11の両親桁11Aとをし字状のボルト12とナット13で締付け固定し、更に、ケーブル架設方向で隣接するケーブルラック本体11の両親桁11Aの端部同士を、それらに外装される金属製の連結板14を介してボルト15・ナット16で固定連結してある。
【0003】
特に、道路トンネル内では、自動車排気ガス中の窒素酸化物や凍結防止剤散布による塩化物等が存在する厳しい環境下にあるため、前記支持部材10とケーブルラック本体11及び連結板14の各々を、アルミ亜鉛合金メッキされた表面処理鋼板を用いて製作するとともに、前記支持部材10とケーブルラック本体11との連結個所やケーブルラック本体11と連結板14との連結個所、或いはケーブルラック本体11の親桁11Aと子桁11Bとの連結個所等の耐食性が低下している個所に高耐食性塗料を施している。
【0004】
【特許文献1】特開2002−325331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のケーブルラックでは、金属製の複数本の支持部材10と金属製のケーブルラック本体11とが必要で、且つケーブルラック本体11自体が左右一対の親桁11Aとそれらに亘って架設される複数本の子桁11Bとから構成されているため、ケーブルラック全体が重量化するばかりでなく、ケーブルラックの布設工事に多くの手間を有する。
【0006】
特に、道路トンネル内では、自動車排気ガス中の窒素酸化物や凍結防止剤散布による塩化物等が存在する厳しい環境下にあるため、前記支持部材10とケーブルラック本体11及び連結板14の各々を、アルミ亜鉛合金メッキされた表面処理鋼板を用いて製作するとともに、耐食性が低下している個所に高耐食性塗料を施す必要があるため、ケーブル布設工事費の高騰化を招来し易い。加えて、道路トンネル内に施工されたケーブルラックは、現状では10年から少なくとも20年以内に交換しており、点検を含めるとライフサイクルコストがけして良いとはいえない。
【0007】
また、従来では、ケーブル架設方向で隣接するケーブルラック本体11の両親桁11Aの端部同士を、それらに外装される金属製の連結板14を介してボルト15・ナット16で固定連結しているため、部品点数の増加によって組付け工程数の増加と重量化を招来し、布設工事費の高騰化が助長されるばかりでなく、前記アンカーボルト7・ナット8等の緩み等に起因する支持部材10の脱落が隣接する支持部材10に大きな影響を及ぼす不都合がある。
【0008】
さらに、従来では、トンネル壁面に支持部材10を取付ける場合、景観上前記支持部材10の載置部10Bを水平又は略水平にした状態で取付ける方法が採用されているが、各トンネルは、トンネル線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なる為、前記支持部材10については、施工対象のトンネル形状に合わせた角度設計や製作が必要であり、その設計や製作に時間を要するため、緊急時には敏速な対応ができなかった。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その第1の課題は、ケーブルラックとしての充分な強度と優れた耐食性を確保しながら、部品点数及び取付け工程数の削減と軽量化によってケーブル布設工事の能率化と工事費の低廉化を図ることができ、しかも、ライフサイクルコストの低廉化にも寄与することのできるケーブルラックを提供する点にあり、また、第2の課題は、上述の効果を達成しつつ、ケーブルラックの連鎖的な脱落を防止することのできるケーブルラックの施工方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、ケーブル架設対象箇所に対してケーブル架設方向に沿って固定可能な取付け本体と、該取付け本体の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部と、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部とが繊維強化プラスチックで一体形成されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、ケーブルをケーブル架設方向に沿って載架支持する複数の載架アーム部を、トンネル壁面等のケーブル架設対象箇所に固定可能な取付け本体に一体形成することにより、部品点数の削減とケーブル架設対象箇所に対するケーブルラックの取付け工程数を大幅に削減することができるとともに、従来のケーブルラックのような連結部での緩みに起因する脱落を抑制することができる。
【0012】
しかも、複数の載架アーム部と取付け本体とを一体化するにあたっては、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部を入れた状態で繊維強化プラスチックにより一体形成してあるので、ケーブル荷重を支持可能な充分な強度を確保しながら、ケーブルラックの軽量化を図ることができ、特に、塩化物に対する耐食性を大幅に向上することができる。
【0013】
従って、ケーブルラックとしての充分な強度と優れた耐食性を確保しながら、部品点数及び取付け工程数の削減と軽量化によってケーブル布設工事の能率化と工事費の低廉化を図ることができ、しかも、ライフサイクルコストの低廉化にも寄与するこができる。
【0014】
本発明による第2の特徴構成は、前記載架アーム部の載架面が、それの長手方向の中間位置が最下位となる弧状面に形成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、例えば、トンネル壁面にケーブルラックを取付ける際、トンネル線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なることによって載架アーム部の載架面の取付け角度が変化しても、該載架アーム部の載架面は弧状面に形成されているため、載架面の取付け角度の変化が目立ち難く、景観上に与える悪影響を効果的に抑制することができる。
【0016】
それ故に、各トンネルの線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なる条件下においても、従来のような施工対象のトンネル形状に合わせた角度設計や製作が不要となり、製作コストの低廉化と緊急時における敏速な対応が可能になった。
【0017】
本発明による第3の特徴構成は、前記載架アーム部の載架面における前記補強部の連設部位の複数箇所及びこれに対応する前記補強部の複数個所には、ケーブルを載架面に緊縛する索状体を挿通ための上下方向の第1貫通孔と水平方向の第2貫通孔とが連通形成されている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、前記載架アーム部の載架面に載架支持されたケーブルを、該載架面に形成された上下方向の第1貫通孔及び補強部に形成された水平方向の第1貫通孔を通して挿通された索状体で緊縛することができる。しかも、前記第1貫通孔は、載架面における前記補強部の連設部位の複数箇所に形成してあるから、前記載架アーム部の強度低下を抑制することができる。
【0019】
本発明による第4の特徴構成は、前記補強部の下端縁がそれの長手方向の中間位置が最下位となる弧状縁に形成されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、前記載架アーム部の載架面を弧状面に形成し、且つ前記補強部の下端縁を弧状縁に形成することによって、トンネル線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なることによって載架アーム部の取付け角度が変化しても、載架面の取付け角度の変化が極めて目立ち難くなり、景観上に当てえる悪影響をより効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明による第5の特徴構成は、前記載架アーム部の載架面の両側位置には、該載架面に載架されたケーブルの脱落移動を接当阻止する移動規制部が形成され、一方の移動規制部は、前記載架アーム部の先端部及び前記補強部の先端部を上方に屈曲形成することにより構成されているとともに、他方の移動規制部は、取付け本体と載架アーム部との境界相当位置に突設された突起から構成されている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、ケーブル布設工事の途中において、前記載架アーム部の載架面に載架支持されたケーブルに外力が作用して、該ケーブルが載架アーム部の載架面に沿って摺動しても、該ケーブルの脱落を前記移動規制部で防止することができる。
しかも、一方の移動規制部においては、前記載架アーム部及び補強部の各先端部を上方に屈曲形成して、載架アーム部の屈曲先端部を補強部の屈曲先端部で補強し、他方の移動規制部においては、機械的強度の大きな取付け本体と載架アーム部の基部との境界相当位置に移動規制用の突起を突設することにより、前記両移動規制部を夫々頑丈に構成している。
【0023】
本発明による第6の特徴構成は、トンネル壁面に対して固定可能な取付け本体と、該取付け本体の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部と、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部とが繊維強化プラスチックで一体形成されているケーブルラックの複数個を、前記トンネル壁面のケーブル架設箇所に沿って互いに非連結状態で固定してあるトンネル壁面へのケーブルラックの施工方法にある。
上記特徴構成によれば、ケーブルをケーブル架設方向に沿って載架支持する複数の載架アーム部を、トンネル壁面に固定可能な取付け本体に一体形成することにより、部品点数の削減とトンネル壁面に対するケーブルラックの取付け工程数を大幅に削減することができるとともに、従来のケーブルラックのような各連結部での緩みに起因する脱落を抑制することができる。
【0024】
しかも、複数の載架アーム部と取付け本体とを一体化するにあたっては、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部を入れた状態で繊維強化プラスチックにより一体形成してあるので、ケーブル荷重を支持可能な充分な強度を確保しながら、ケーブルラックの軽量化を図ることができ、特に、塩化物に対する耐食性を大幅に向上することができる。
【0025】
さらに、前記トンネル壁面のケーブル架設箇所に沿って複数個のケーブルラックを固定するにあたっては、各ケーブルラックを互いに非連結状態で固定するが故に、従来のように、ケーブルラック本体の両親桁の端部同士を、それらに外装される金属製の連結板を介してボルト・ナッで固定連結する場合に比して、組付け工程数の削減と軽量化とによって布設工事費の低廉化を促進することができるとともに、前記ボルト・ナットの緩み等に起因するケーブルラックの脱落が隣接するケーブルラックに大きな影響を及ぼすことを回避することができる。
【0026】
従って、ケーブルラックとしての充分な強度と優れた耐食性を確保しながら、部品点数及び取付け工程数の削減と軽量化によってケーブル布設工事の能率化と工事費の低廉化を図ることができるとともに、ライフサイクルコストの低廉化にも寄与するこができ、しかも、布設工事費の低廉化を促進しながらケーブルラックの連鎖的な脱落を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
図1〜図7は、道路トンネルの内壁Wにおけるケーブル架設対象箇所に送配電ケーブル等のケーブルCを布設する場合に用いられるケーブルラックAを示し、ケーブル架設対象箇所に対してケーブル架設方向に沿って固定可能な取付け本体1と、該取付け本体1の複数個所(当該実施形態では8個所)から突設されるケーブル用の板状の載架アーム部2と、各載架アーム部2の下面とこれに対応する取付け本体1の下面側部位とに亘る板状の補強部3とが繊維強化プラスチックの一例であるガラス繊維強化プラスチックで一体形成されている。
【0028】
前記取付け本体1は、トンネル壁面Wのケーブル架設対象箇所に当て付けられる傾斜姿勢の取付け板部1Aと、該取付け板部1Aの上端からトンネル中心側の下方側に向って傾斜姿勢で延設される、換言すれば、前記載架アーム部2の弧状載架面2aに略連続する傾斜姿勢で延設される上側板部1Bと、該上側板部1Bの先端から取付け板部1Aの下端よりも下方に突出する状態で延設される垂直板部1Cとから構成されている。
【0029】
前記取付け本体1の取付け板部1Aにおける前記複数の補強部3で区画された部位のうち、ケーブル架設方向の両外側に位置する区画部位とそれから一つ飛ばし置きに位置する両中間区画部位の各々に、アンカーボルト7・ナット8でケーブルラックAの取付け本体1をケーブル架設対象箇所に締付け固定するためのボルト挿通用の取付け孔1aが形成されている。
【0030】
前記載架アーム部2の載架面2aの両側位置には、該載架面2aに載架されたケーブルCの脱落移動を接当阻止する移動規制部4,5が形成されているとともに、前記載架アーム部2の載架面2aが、それの長手方向の略中央の中間位置が最下位となる凹状の弧状面に形成され、前記補強部3の下端縁3aも、それの長手方向における取付け本体1側に少し偏倚した中間位置が最下位となる弧状縁に形成されている。
【0031】
そして、前記載架アーム部2の載架面2aを弧状面に形成し、且つ前記補強部3の下端縁3aを弧状縁に形成することによって、トンネル線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なることによって載架アーム部2の取付け角度が変化しても、弧状載架面2aを含む載架アーム部2の取付け角度の変化が極めて目立ち難くなり、景観上に当てえる悪影響をより効果的に抑制することができる。
それ故に、各トンネルの線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なる条件下においても、施工対象のトンネル形状に合わせた取付け本体1の角度設計等が不要となり、製作コストの低廉化と緊急時における敏速な対応が可能になった。
【0032】
前記載架アーム部2の載架面2aにおける前記補強部3の連設部位の長手方向複数箇所(当該実施形態では5箇所)及びこれに対応する前記補強部3の上辺側の複数個所(当該実施形態では5箇所)には、ケーブルCを載架面2aに緊縛する索状体(バンドや樹脂製紐等)6を挿通ための上下方向の第1貫通孔2bと水平方向の第2貫通孔3bとが連通形成されている。
【0033】
そして、前記載架アーム部2の弧状載架面2aに載架支持されたケーブルCを、該弧状載架面2aに形成された上下方向の第1貫通孔2b及び補強部3に形成された水平方向の第1貫通孔3bを通して挿通された索状体6で緊縛することができる。しかも、前記第1貫通孔2bは、弧状載架面2aにおける前記補強部3の連設部位の複数箇所で、且つ前記補強部3の板厚に相当する幅で形成してあるから、前記載架アーム部2の強度低下を抑制することができる。
【0034】
前記一方の移動規制部4は、前記載架アーム部2の先端部2A及び前記補強部3の先端部3Aを上方に急傾斜屈曲形成することにより構成されているとともに、前記他方の移動規制部5は、前記取付け本体1と載架アーム部2との境界相当位置、換言すれば、取付け本体1の上側板部1Bと垂直板部1Cと載架アーム部2との交差個所に前記移動規制部4に相対向する状態で突設された突起から構成され、この突起5は、載架アーム部2の弧状載架面2aと同じ幅に構成されている。
【0035】
そして、一方の移動規制部4においては、前記載架アーム部2及び補強部3の各先端部2A,3Aを上方に屈曲形成して、前記載架アーム部2の屈曲先端部2Aを補強部3の屈曲先端部3Aで補強し、他方の移動規制部5においては、機械的強度の大きな取付け本体1の上側板部1B及び垂直板部1Cと前記載架アーム部2の基部との境界相当位置に移動規制用の突起を突設することにより、前記両移動規制部4,5を夫々頑丈に構成することができる。
【0036】
次に、上述の如く構成されたガラス繊維強化プラスチック製のケーブルラックAを道路トンネルの内壁Wにおけるケーブル架設対象箇所に取付ける施工方法について簡単に説明する。
図8、図9に示すように、前記ケーブルラックAの取付け本体1の取付け板部1Aにおける前記複数の補強部3で区画された部位のうち、ケーブル架設方向の両外側に位置する区画部位とそれから一つ飛ばし置きに位置する両中間区画部位の各々に形成したボルト挿通用の取付け孔1aを介して、アンカーボルト7・ナット8でケーブルラックAの取付け本体1をケーブル架設対象箇所に締付け固定する。
【0037】
このケーブルラックAに隣接する他のケーブルラックAは、隣接端に位置する載架アーム部2の隣接間隔P2を各ケーブルラックAにおける載架アーム部2の取付け間隔(取付けピッチ)P1と同一に設定した状態で上述と同じ要領でアンカーボルト7・ナット8にてケーブルラックAの取付け本体1をケーブル架設対象箇所に締付け固定する。
【0038】
そして、各ケーブルラックAを互いに非連結状態で固定するが故に、従来のように、ケーブルラック本体の両親桁の端部同士を、それらに外装される金属製の連結板を介してボルト・ナッで固定連結する場合に比して、組付け工程数の削減と軽量化とによって布設工事費の低廉化を促進することができるとともに、前記ボルト・ナットの緩み等に起因するケーブルラックAの脱落が隣接するケーブルラックAに大きな影響を及ぼすことを回避することができる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、前記取付け本体1とケーブル用の板状の載架アーム部2、及び、各載架アーム部2の下面とこれに対応する取付け本体1の下面側部位とに亘る板状の補強部3とを一体成形する繊維強化プラスチックとしてガラス繊維強化プラスチックを用いたが、ボロン繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチック等を用いてもよい。
繊維強化プラスチックのマトリックス(母材)としては不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂がある。
【0040】
(2)上述の第1実施形態では、ケーブル架設対象箇所の一例として道路トンネルの壁面Wを例に挙げて説明したが、鉄道トンネル、河川トンネル等の壁面であってもよく、更に、トンネル以外の構築物であってもよい。
【0041】
(3)前記取付け本体1と載架アーム部2及び補強部3の各形状は、ケーブルラックとしての充分な強度を維持できる範囲で適宜変更可能である。
【0042】
(4)上述の第1実施形態では、前記載架アーム部2の載架面2aの両側位置に、該載架面2aに載架されたケーブルCの脱落移動を接当阻止する移動規制部4,5を形成したが、前記載架アーム部2の載架面2aの先端側位置にのみ前記移動規制部4を形成してもよい。
【0043】
(5)上述の第1実施形態では、前記載架アーム部2の載架面2aを、それの長手方向の略中央の中間位置が最下位となる凹状の円弧状面に形成したが、この載架面2aを凹状の多角面又はV字面に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のケーブルラックの第1実施形態を示す全体の斜視図
【図2】全体の一部切欠き拡大正面図
【図3】全体の一部切欠き拡大平面図
【図4】全体の一部切欠き拡大底面図
【図5】拡大側面図
【図6】要部の拡大平面図
【図7】図6のVII-VII線断面図
【図8】本発明のケーブルラックの施工方法を示す全体の斜視図
【図9】施工方法を示す断面側面図
【図10】従来のケーブルラック及び施工方法を示す全体の斜視図
【図11】従来のケーブルラック及び施工方法を示す全体の断面側面図
【符号の説明】
【0045】
A ケーブルラック
C ケーブル
W トンネル壁面
1 取付け本体
2 載架アーム部
2A 先端部
2a 載架面
2b 第1貫通孔
3 補強部
3A 先端部
3a 下端縁
3b 第2貫通孔
4 移動規制部
5 移動規制部
6 索状体
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路トンネルの壁面等のケーブル架設対象箇所に送配電ケーブル等のケーブルを布設する場合に用いられるケーブルラック及びそれをトンネル壁面に施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブルラックでは、図10、図11に示すように、断面L字状の金属製の支持部材10を略への字状に屈曲形成して、ケーブル架設対象箇所に対してアンカーボルト7・ナット8等で固定される取付け部10Aと、左右一対の親桁11Aの下側縁に屈曲形成された折曲げ片11aに亘って複数本の子桁11Bを取付けてある金属製のケーブルラック本体11を水平姿勢で載置支持可能な載置部10Bを構成するとともに、前記支持部材10の載置部10Bとケーブルラック本体11の両親桁11Aとをし字状のボルト12とナット13で締付け固定し、更に、ケーブル架設方向で隣接するケーブルラック本体11の両親桁11Aの端部同士を、それらに外装される金属製の連結板14を介してボルト15・ナット16で固定連結してある。
【0003】
特に、道路トンネル内では、自動車排気ガス中の窒素酸化物や凍結防止剤散布による塩化物等が存在する厳しい環境下にあるため、前記支持部材10とケーブルラック本体11及び連結板14の各々を、アルミ亜鉛合金メッキされた表面処理鋼板を用いて製作するとともに、前記支持部材10とケーブルラック本体11との連結個所やケーブルラック本体11と連結板14との連結個所、或いはケーブルラック本体11の親桁11Aと子桁11Bとの連結個所等の耐食性が低下している個所に高耐食性塗料を施している。
【0004】
【特許文献1】特開2002−325331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のケーブルラックでは、金属製の複数本の支持部材10と金属製のケーブルラック本体11とが必要で、且つケーブルラック本体11自体が左右一対の親桁11Aとそれらに亘って架設される複数本の子桁11Bとから構成されているため、ケーブルラック全体が重量化するばかりでなく、ケーブルラックの布設工事に多くの手間を有する。
【0006】
特に、道路トンネル内では、自動車排気ガス中の窒素酸化物や凍結防止剤散布による塩化物等が存在する厳しい環境下にあるため、前記支持部材10とケーブルラック本体11及び連結板14の各々を、アルミ亜鉛合金メッキされた表面処理鋼板を用いて製作するとともに、耐食性が低下している個所に高耐食性塗料を施す必要があるため、ケーブル布設工事費の高騰化を招来し易い。加えて、道路トンネル内に施工されたケーブルラックは、現状では10年から少なくとも20年以内に交換しており、点検を含めるとライフサイクルコストがけして良いとはいえない。
【0007】
また、従来では、ケーブル架設方向で隣接するケーブルラック本体11の両親桁11Aの端部同士を、それらに外装される金属製の連結板14を介してボルト15・ナット16で固定連結しているため、部品点数の増加によって組付け工程数の増加と重量化を招来し、布設工事費の高騰化が助長されるばかりでなく、前記アンカーボルト7・ナット8等の緩み等に起因する支持部材10の脱落が隣接する支持部材10に大きな影響を及ぼす不都合がある。
【0008】
さらに、従来では、トンネル壁面に支持部材10を取付ける場合、景観上前記支持部材10の載置部10Bを水平又は略水平にした状態で取付ける方法が採用されているが、各トンネルは、トンネル線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なる為、前記支持部材10については、施工対象のトンネル形状に合わせた角度設計や製作が必要であり、その設計や製作に時間を要するため、緊急時には敏速な対応ができなかった。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その第1の課題は、ケーブルラックとしての充分な強度と優れた耐食性を確保しながら、部品点数及び取付け工程数の削減と軽量化によってケーブル布設工事の能率化と工事費の低廉化を図ることができ、しかも、ライフサイクルコストの低廉化にも寄与することのできるケーブルラックを提供する点にあり、また、第2の課題は、上述の効果を達成しつつ、ケーブルラックの連鎖的な脱落を防止することのできるケーブルラックの施工方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、ケーブル架設対象箇所に対してケーブル架設方向に沿って固定可能な取付け本体と、該取付け本体の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部と、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部とが繊維強化プラスチックで一体形成されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、ケーブルをケーブル架設方向に沿って載架支持する複数の載架アーム部を、トンネル壁面等のケーブル架設対象箇所に固定可能な取付け本体に一体形成することにより、部品点数の削減とケーブル架設対象箇所に対するケーブルラックの取付け工程数を大幅に削減することができるとともに、従来のケーブルラックのような連結部での緩みに起因する脱落を抑制することができる。
【0012】
しかも、複数の載架アーム部と取付け本体とを一体化するにあたっては、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部を入れた状態で繊維強化プラスチックにより一体形成してあるので、ケーブル荷重を支持可能な充分な強度を確保しながら、ケーブルラックの軽量化を図ることができ、特に、塩化物に対する耐食性を大幅に向上することができる。
【0013】
従って、ケーブルラックとしての充分な強度と優れた耐食性を確保しながら、部品点数及び取付け工程数の削減と軽量化によってケーブル布設工事の能率化と工事費の低廉化を図ることができ、しかも、ライフサイクルコストの低廉化にも寄与するこができる。
【0014】
本発明による第2の特徴構成は、前記載架アーム部の載架面が、それの長手方向の中間位置が最下位となる弧状面に形成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、例えば、トンネル壁面にケーブルラックを取付ける際、トンネル線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なることによって載架アーム部の載架面の取付け角度が変化しても、該載架アーム部の載架面は弧状面に形成されているため、載架面の取付け角度の変化が目立ち難く、景観上に与える悪影響を効果的に抑制することができる。
【0016】
それ故に、各トンネルの線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なる条件下においても、従来のような施工対象のトンネル形状に合わせた角度設計や製作が不要となり、製作コストの低廉化と緊急時における敏速な対応が可能になった。
【0017】
本発明による第3の特徴構成は、前記載架アーム部の載架面における前記補強部の連設部位の複数箇所及びこれに対応する前記補強部の複数個所には、ケーブルを載架面に緊縛する索状体を挿通ための上下方向の第1貫通孔と水平方向の第2貫通孔とが連通形成されている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、前記載架アーム部の載架面に載架支持されたケーブルを、該載架面に形成された上下方向の第1貫通孔及び補強部に形成された水平方向の第1貫通孔を通して挿通された索状体で緊縛することができる。しかも、前記第1貫通孔は、載架面における前記補強部の連設部位の複数箇所に形成してあるから、前記載架アーム部の強度低下を抑制することができる。
【0019】
本発明による第4の特徴構成は、前記補強部の下端縁がそれの長手方向の中間位置が最下位となる弧状縁に形成されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、前記載架アーム部の載架面を弧状面に形成し、且つ前記補強部の下端縁を弧状縁に形成することによって、トンネル線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なることによって載架アーム部の取付け角度が変化しても、載架面の取付け角度の変化が極めて目立ち難くなり、景観上に当てえる悪影響をより効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明による第5の特徴構成は、前記載架アーム部の載架面の両側位置には、該載架面に載架されたケーブルの脱落移動を接当阻止する移動規制部が形成され、一方の移動規制部は、前記載架アーム部の先端部及び前記補強部の先端部を上方に屈曲形成することにより構成されているとともに、他方の移動規制部は、取付け本体と載架アーム部との境界相当位置に突設された突起から構成されている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、ケーブル布設工事の途中において、前記載架アーム部の載架面に載架支持されたケーブルに外力が作用して、該ケーブルが載架アーム部の載架面に沿って摺動しても、該ケーブルの脱落を前記移動規制部で防止することができる。
しかも、一方の移動規制部においては、前記載架アーム部及び補強部の各先端部を上方に屈曲形成して、載架アーム部の屈曲先端部を補強部の屈曲先端部で補強し、他方の移動規制部においては、機械的強度の大きな取付け本体と載架アーム部の基部との境界相当位置に移動規制用の突起を突設することにより、前記両移動規制部を夫々頑丈に構成している。
【0023】
本発明による第6の特徴構成は、トンネル壁面に対して固定可能な取付け本体と、該取付け本体の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部と、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部とが繊維強化プラスチックで一体形成されているケーブルラックの複数個を、前記トンネル壁面のケーブル架設箇所に沿って互いに非連結状態で固定してあるトンネル壁面へのケーブルラックの施工方法にある。
上記特徴構成によれば、ケーブルをケーブル架設方向に沿って載架支持する複数の載架アーム部を、トンネル壁面に固定可能な取付け本体に一体形成することにより、部品点数の削減とトンネル壁面に対するケーブルラックの取付け工程数を大幅に削減することができるとともに、従来のケーブルラックのような各連結部での緩みに起因する脱落を抑制することができる。
【0024】
しかも、複数の載架アーム部と取付け本体とを一体化するにあたっては、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部を入れた状態で繊維強化プラスチックにより一体形成してあるので、ケーブル荷重を支持可能な充分な強度を確保しながら、ケーブルラックの軽量化を図ることができ、特に、塩化物に対する耐食性を大幅に向上することができる。
【0025】
さらに、前記トンネル壁面のケーブル架設箇所に沿って複数個のケーブルラックを固定するにあたっては、各ケーブルラックを互いに非連結状態で固定するが故に、従来のように、ケーブルラック本体の両親桁の端部同士を、それらに外装される金属製の連結板を介してボルト・ナッで固定連結する場合に比して、組付け工程数の削減と軽量化とによって布設工事費の低廉化を促進することができるとともに、前記ボルト・ナットの緩み等に起因するケーブルラックの脱落が隣接するケーブルラックに大きな影響を及ぼすことを回避することができる。
【0026】
従って、ケーブルラックとしての充分な強度と優れた耐食性を確保しながら、部品点数及び取付け工程数の削減と軽量化によってケーブル布設工事の能率化と工事費の低廉化を図ることができるとともに、ライフサイクルコストの低廉化にも寄与するこができ、しかも、布設工事費の低廉化を促進しながらケーブルラックの連鎖的な脱落を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
図1〜図7は、道路トンネルの内壁Wにおけるケーブル架設対象箇所に送配電ケーブル等のケーブルCを布設する場合に用いられるケーブルラックAを示し、ケーブル架設対象箇所に対してケーブル架設方向に沿って固定可能な取付け本体1と、該取付け本体1の複数個所(当該実施形態では8個所)から突設されるケーブル用の板状の載架アーム部2と、各載架アーム部2の下面とこれに対応する取付け本体1の下面側部位とに亘る板状の補強部3とが繊維強化プラスチックの一例であるガラス繊維強化プラスチックで一体形成されている。
【0028】
前記取付け本体1は、トンネル壁面Wのケーブル架設対象箇所に当て付けられる傾斜姿勢の取付け板部1Aと、該取付け板部1Aの上端からトンネル中心側の下方側に向って傾斜姿勢で延設される、換言すれば、前記載架アーム部2の弧状載架面2aに略連続する傾斜姿勢で延設される上側板部1Bと、該上側板部1Bの先端から取付け板部1Aの下端よりも下方に突出する状態で延設される垂直板部1Cとから構成されている。
【0029】
前記取付け本体1の取付け板部1Aにおける前記複数の補強部3で区画された部位のうち、ケーブル架設方向の両外側に位置する区画部位とそれから一つ飛ばし置きに位置する両中間区画部位の各々に、アンカーボルト7・ナット8でケーブルラックAの取付け本体1をケーブル架設対象箇所に締付け固定するためのボルト挿通用の取付け孔1aが形成されている。
【0030】
前記載架アーム部2の載架面2aの両側位置には、該載架面2aに載架されたケーブルCの脱落移動を接当阻止する移動規制部4,5が形成されているとともに、前記載架アーム部2の載架面2aが、それの長手方向の略中央の中間位置が最下位となる凹状の弧状面に形成され、前記補強部3の下端縁3aも、それの長手方向における取付け本体1側に少し偏倚した中間位置が最下位となる弧状縁に形成されている。
【0031】
そして、前記載架アーム部2の載架面2aを弧状面に形成し、且つ前記補強部3の下端縁3aを弧状縁に形成することによって、トンネル線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なることによって載架アーム部2の取付け角度が変化しても、弧状載架面2aを含む載架アーム部2の取付け角度の変化が極めて目立ち難くなり、景観上に当てえる悪影響をより効果的に抑制することができる。
それ故に、各トンネルの線形や道路勾配、ラック取付け高さ等が異なる条件下においても、施工対象のトンネル形状に合わせた取付け本体1の角度設計等が不要となり、製作コストの低廉化と緊急時における敏速な対応が可能になった。
【0032】
前記載架アーム部2の載架面2aにおける前記補強部3の連設部位の長手方向複数箇所(当該実施形態では5箇所)及びこれに対応する前記補強部3の上辺側の複数個所(当該実施形態では5箇所)には、ケーブルCを載架面2aに緊縛する索状体(バンドや樹脂製紐等)6を挿通ための上下方向の第1貫通孔2bと水平方向の第2貫通孔3bとが連通形成されている。
【0033】
そして、前記載架アーム部2の弧状載架面2aに載架支持されたケーブルCを、該弧状載架面2aに形成された上下方向の第1貫通孔2b及び補強部3に形成された水平方向の第1貫通孔3bを通して挿通された索状体6で緊縛することができる。しかも、前記第1貫通孔2bは、弧状載架面2aにおける前記補強部3の連設部位の複数箇所で、且つ前記補強部3の板厚に相当する幅で形成してあるから、前記載架アーム部2の強度低下を抑制することができる。
【0034】
前記一方の移動規制部4は、前記載架アーム部2の先端部2A及び前記補強部3の先端部3Aを上方に急傾斜屈曲形成することにより構成されているとともに、前記他方の移動規制部5は、前記取付け本体1と載架アーム部2との境界相当位置、換言すれば、取付け本体1の上側板部1Bと垂直板部1Cと載架アーム部2との交差個所に前記移動規制部4に相対向する状態で突設された突起から構成され、この突起5は、載架アーム部2の弧状載架面2aと同じ幅に構成されている。
【0035】
そして、一方の移動規制部4においては、前記載架アーム部2及び補強部3の各先端部2A,3Aを上方に屈曲形成して、前記載架アーム部2の屈曲先端部2Aを補強部3の屈曲先端部3Aで補強し、他方の移動規制部5においては、機械的強度の大きな取付け本体1の上側板部1B及び垂直板部1Cと前記載架アーム部2の基部との境界相当位置に移動規制用の突起を突設することにより、前記両移動規制部4,5を夫々頑丈に構成することができる。
【0036】
次に、上述の如く構成されたガラス繊維強化プラスチック製のケーブルラックAを道路トンネルの内壁Wにおけるケーブル架設対象箇所に取付ける施工方法について簡単に説明する。
図8、図9に示すように、前記ケーブルラックAの取付け本体1の取付け板部1Aにおける前記複数の補強部3で区画された部位のうち、ケーブル架設方向の両外側に位置する区画部位とそれから一つ飛ばし置きに位置する両中間区画部位の各々に形成したボルト挿通用の取付け孔1aを介して、アンカーボルト7・ナット8でケーブルラックAの取付け本体1をケーブル架設対象箇所に締付け固定する。
【0037】
このケーブルラックAに隣接する他のケーブルラックAは、隣接端に位置する載架アーム部2の隣接間隔P2を各ケーブルラックAにおける載架アーム部2の取付け間隔(取付けピッチ)P1と同一に設定した状態で上述と同じ要領でアンカーボルト7・ナット8にてケーブルラックAの取付け本体1をケーブル架設対象箇所に締付け固定する。
【0038】
そして、各ケーブルラックAを互いに非連結状態で固定するが故に、従来のように、ケーブルラック本体の両親桁の端部同士を、それらに外装される金属製の連結板を介してボルト・ナッで固定連結する場合に比して、組付け工程数の削減と軽量化とによって布設工事費の低廉化を促進することができるとともに、前記ボルト・ナットの緩み等に起因するケーブルラックAの脱落が隣接するケーブルラックAに大きな影響を及ぼすことを回避することができる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、前記取付け本体1とケーブル用の板状の載架アーム部2、及び、各載架アーム部2の下面とこれに対応する取付け本体1の下面側部位とに亘る板状の補強部3とを一体成形する繊維強化プラスチックとしてガラス繊維強化プラスチックを用いたが、ボロン繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチック等を用いてもよい。
繊維強化プラスチックのマトリックス(母材)としては不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂がある。
【0040】
(2)上述の第1実施形態では、ケーブル架設対象箇所の一例として道路トンネルの壁面Wを例に挙げて説明したが、鉄道トンネル、河川トンネル等の壁面であってもよく、更に、トンネル以外の構築物であってもよい。
【0041】
(3)前記取付け本体1と載架アーム部2及び補強部3の各形状は、ケーブルラックとしての充分な強度を維持できる範囲で適宜変更可能である。
【0042】
(4)上述の第1実施形態では、前記載架アーム部2の載架面2aの両側位置に、該載架面2aに載架されたケーブルCの脱落移動を接当阻止する移動規制部4,5を形成したが、前記載架アーム部2の載架面2aの先端側位置にのみ前記移動規制部4を形成してもよい。
【0043】
(5)上述の第1実施形態では、前記載架アーム部2の載架面2aを、それの長手方向の略中央の中間位置が最下位となる凹状の円弧状面に形成したが、この載架面2aを凹状の多角面又はV字面に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のケーブルラックの第1実施形態を示す全体の斜視図
【図2】全体の一部切欠き拡大正面図
【図3】全体の一部切欠き拡大平面図
【図4】全体の一部切欠き拡大底面図
【図5】拡大側面図
【図6】要部の拡大平面図
【図7】図6のVII-VII線断面図
【図8】本発明のケーブルラックの施工方法を示す全体の斜視図
【図9】施工方法を示す断面側面図
【図10】従来のケーブルラック及び施工方法を示す全体の斜視図
【図11】従来のケーブルラック及び施工方法を示す全体の断面側面図
【符号の説明】
【0045】
A ケーブルラック
C ケーブル
W トンネル壁面
1 取付け本体
2 載架アーム部
2A 先端部
2a 載架面
2b 第1貫通孔
3 補強部
3A 先端部
3a 下端縁
3b 第2貫通孔
4 移動規制部
5 移動規制部
6 索状体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル架設対象箇所に対してケーブル架設方向に沿って固定可能な取付け本体と、該取付け本体の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部と、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部とが繊維強化プラスチックで一体形成されているケーブルラック。
【請求項2】
前記載架アーム部の載架面が、それの長手方向の中間位置が最下位となる弧状面に形成されている請求項1記載のケーブルラック。
【請求項3】
前記載架アーム部の載架面における前記補強部の連設部位の複数箇所及びこれに対応する前記補強部の複数個所には、ケーブルを載架面に緊縛する索状体を挿通ための上下方向の第1貫通孔と水平方向の第2貫通孔とが連通形成されている請求項1又は2記載のケーブルラック。
【請求項4】
前記補強部の下端縁がそれの長手方向の中間位置が最下位となる弧状縁に形成されている請求項2記載のケーブルラック。
【請求項5】
前記載架アーム部の載架面の両側位置には、該載架面に載架されたケーブルの脱落移動を接当阻止する移動規制部が形成され、一方の移動規制部は、前記載架アーム部の先端部及び前記補強部の先端部を上方に屈曲形成することにより構成されているとともに、他方の移動規制部は、取付け本体と載架アーム部との境界相当位置に突設された突起から構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブルラック。
【請求項6】
トンネル壁面に対して固定可能な取付け本体と、該取付け本体の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部と、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部とが繊維強化プラスチックで一体形成されているケーブルラックの複数個を、前記トンネル壁面のケーブル架設箇所に沿って互いに非連結状態で固定してあるトンネル壁面へのケーブルラックの施工方法。
【請求項1】
ケーブル架設対象箇所に対してケーブル架設方向に沿って固定可能な取付け本体と、該取付け本体の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部と、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部とが繊維強化プラスチックで一体形成されているケーブルラック。
【請求項2】
前記載架アーム部の載架面が、それの長手方向の中間位置が最下位となる弧状面に形成されている請求項1記載のケーブルラック。
【請求項3】
前記載架アーム部の載架面における前記補強部の連設部位の複数箇所及びこれに対応する前記補強部の複数個所には、ケーブルを載架面に緊縛する索状体を挿通ための上下方向の第1貫通孔と水平方向の第2貫通孔とが連通形成されている請求項1又は2記載のケーブルラック。
【請求項4】
前記補強部の下端縁がそれの長手方向の中間位置が最下位となる弧状縁に形成されている請求項2記載のケーブルラック。
【請求項5】
前記載架アーム部の載架面の両側位置には、該載架面に載架されたケーブルの脱落移動を接当阻止する移動規制部が形成され、一方の移動規制部は、前記載架アーム部の先端部及び前記補強部の先端部を上方に屈曲形成することにより構成されているとともに、他方の移動規制部は、取付け本体と載架アーム部との境界相当位置に突設された突起から構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブルラック。
【請求項6】
トンネル壁面に対して固定可能な取付け本体と、該取付け本体の複数個所から突設されるケーブル用の載架アーム部と、各載架アーム部の下面とこれに対応する取付け本体の下面側部位とに亘る補強部とが繊維強化プラスチックで一体形成されているケーブルラックの複数個を、前記トンネル壁面のケーブル架設箇所に沿って互いに非連結状態で固定してあるトンネル壁面へのケーブルラックの施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−254023(P2009−254023A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95189(P2008−95189)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)
【出願人】(501111142)株式会社タチバナ (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)
【出願人】(501111142)株式会社タチバナ (5)
【Fターム(参考)】
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