説明

ケーブル固定具及びケーブル固定構造

【課題】本発明は、ケーブルを碍子に固定する作業の際や固定した状態においてケーブルを損傷させてしまうことを好適に防止でき、且つ、作業性を良好にすることができ、しかも、場所の制約を受けずに様々な場所で用いることのできるケーブル固定具、及び、該ケーブル固定具を用いたケーブル固定構造を提供することを課題とする。
【解決手段】ケーブルCを碍子10に固定するためのケーブル固定具1であって、伸縮自在且つ変形自在な素材を用いて形成されるとともに、前記碍子10に掛け回される無端状の環状部2を有し、前記ケーブルCに巻かれる状態で該ケーブルCを固定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを碍子に固定するためのケーブル固定具、及び、該ケーブル固定具を用いてケーブルを碍子に固定するケーブル固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電線等のケーブルは、例えば腕金等の上に設置された碍子に保持された状態で架設され、碍子には、ケーブル固定具としての巻付バインドを用いて固定されている。
【0003】
この巻付バインドは、ケーブルの長手方向に沿って巻き付けられる螺旋状の巻付部と碍子に取り付けられる半円弧状の取付部とを備え、ケーブルに対して着脱すべく巻きを解いたり巻き直したりできるよう変形可能な一方、故意に力を加えない限り容易に変形しない程度の剛性を有するものであり、具体的には、金属製の線状体を用いて形成されている。また、ケーブルを安定して碍子に保持させることができるように、巻付部はケーブルの外周を少なくとも数回周回する長さを有する。
【0004】
ところで、近年、電気工事においては、ケーブルを通電させた状態で間接活線工具を使用して作業を行う間接活線作業が主流となっている。そして、ケーブルに対して巻付バインドを着脱する作業も、巻付グリップトングやバインド打ち器と呼ばれる間接活線工具を使用して行われている。この作業は、取り付けの場合には、まず、巻付バインドの前記取付部を碍子に取り付けた上で、巻付グリップトングやバインド打ち器で巻付バインドの先端部を引っ掛け、ケーブルの上側や下側から交互に押したり引いたりしながら、巻付バインドの前記巻付部をケーブルの周りで数度回してケーブルに巻き付けるものである。同様に、取り外しの場合には、巻付グリップトングやバインド打ち器で巻付バインドの先端部を引っ掛け、前記巻付部を逆方向に数度回してケーブルから巻き解いた後、巻付バインドを碍子から取り外すものである。
【0005】
【特許文献1】特開2007−221918号公報
【特許文献2】特開2006−228560号公報
【特許文献3】特開2003−281954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、巻付バインドは、上述のようにある程度の剛性を有する金属製の線状体であるため、巻き付けの程度や温度変化等の環境によってはケーブルに食い込んでしまい、ケーブルや巻付バインドを損傷させてしまうおそれがある。
【0007】
また、間接活線作業においては、巻き付け又は巻き解きを上述のように間接的に行う必要があるため、作業性が悪い上に、その作業性の悪さゆえに間接活線工具によってケーブルや巻付バインドを損傷してしまうおそれもある。
【0008】
しかも、ケーブルが碍子に保持される箇所の近傍には、他の器具が密集して配置されており、巻付バインドを巻き付けるだけの長さを確保することができない場合もある。例えば、腕金の両側に延びるように架線が配置され、この架線を繋ぐために前記腕金を跨ぐように縁線が設けられる場合には、この縁線の部分を碍子に保持されることとなるが、縁線はケーブルの切断及び再接続や引下線への分岐を行うために用いられることも多い部分であり、直線スリーブや分岐スリーブ及びこれらのカバーが碍子の近傍に位置していると、巻き付けのための長さを確保することができない(一般に、巻付バインドの近傍には、5cm以上の間隔が必要とされる)。
【0009】
そこで、本発明は、ケーブルを碍子に固定する作業の際や固定した状態においてケーブルを損傷させてしまうことを好適に防止でき、且つ、作業性を良好にすることができ、しかも、場所の制約を受けずに様々な場所で用いることのできるケーブル固定具、及び、該ケーブル固定具を用いたケーブル固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るケーブル固定具は、ケーブルを碍子に固定するためのケーブル固定具であって、伸縮自在且つ変形自在な素材を用いて形成されるとともに、前記碍子に掛け回される無端状の環状部を有し、前記ケーブルに巻かれる状態で該ケーブルを固定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るケーブル固定構造は、ケーブル固定具を用いてケーブルを碍子に固定するケーブル固定構造であって、前記ケーブル固定具は、伸縮自在且つ変形自在な素材を用いて形成されるとともに、前記碍子に掛け回される無端状の環状部を有し、ケーブル固定具が前記ケーブルに巻かれる状態で該ケーブルが固定されることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、ケーブル固定具が伸縮自在且つ変形自在な素材を用いて形成されるため、ケーブルが容易に動かないように強固に固定しても、ケーブル固定具がケーブルに不必要に食い込むことがない。また、ケーブルの固定の際にはケーブルの形状に応じて変形するため、様々な大きさ(径)のケーブルに対応することができる。さらに、ケーブル固定具は、環状部を碍子に掛け回すことで碍子に取り付けることができるため、作業の際にケーブル固定具自体が容易に脱落することがなく、ケーブルを碍子に保持させたり碍子から外したりする作業を良好に行うことができる。しかも、ケーブル固定具とケーブルとを固定するのに従来のケーブル固定具のような長さが必要ないため、碍子の近傍に他の部材が存在していて十分なスペースを確保できないような場合でも、設置場所の制約を受けにくく、好適に使用することができる。
【0013】
また、前記ケーブル固定具は、ケーブルを固定する際に用いられる作業用工具に係止される被係止部をさらに備える構成が好ましい。
【0014】
このようにすれば、ケーブル固定具自体を碍子に対して着脱する作業や、ケーブル固定具をケーブルに巻く作業を行う際には、前記係止部を作業用工具で係止すればよく、作業性が向上するとともに、ケーブルを碍子に固定するのに直接機能する部分をなるべく損傷しないようにすることができる。
【0015】
また、前記ケーブル固定構造では、前記ケーブル固定具は、前記環状部の一部が前記碍子に掛け回され、他部がケーブルに巻かれる構成が好ましい。
【0016】
また、前記ケーブル固定構造では、前記ケーブル固定具は、前記環状部が前記碍子に二重に掛け回され、前記碍子に二重に掛け回されることでできる環状部と碍子との間の空間に前記ケーブルが保持される構成が好ましい。
【0017】
このようにすれば、ケーブル固定具でケーブルを碍子に固定するに際し、まず、環状部を碍子に掛け回した上で、ケーブルを碍子との間に挟むように環状部の余った部分をさらに碍子に掛け回すことでケーブルが固定されるため、作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、ケーブルを碍子に固定する作業の際や固定した状態においてケーブルを損傷させてしまうことを好適に防止でき、且つ、作業性を良好にすることができ、しかも、場所の制約を受けずに様々な場所で用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第一実施形態>
以下に、本発明の第一実施形態に係るケーブル固定具1及びケーブル固定構造について、図面に基づいて説明していくが、それに先立って、ケーブルCを保持する碍子10について説明する。
【0020】
碍子10は、例えば電柱間に架け渡される配電線等のケーブルCを支持する絶縁性の部材であり、図1に示すように、例えば電柱に取り付けられた腕金Aの上に設置される。かかる碍子10は、腕金Aに固定されるべく下方に向って突出するピン11を有することから、ピン碍子と呼ばれることもある。ケーブルCを保持する保持部12が上部の外周に設けられ、該保持部12は、隣接する部分(上下の部分)よりも小径に形成される。即ち、該保持部12は、径方向内方に凹むように形成されており、ケーブルCを収容する態様で保持するものである。
【0021】
次に、本実施形態に係るケーブル固定具1について説明する。該ケーブル固定具1は、ケーブルCを碍子10に固定するためのケーブル固定具1であって、伸縮自在且つ変形自在な素材を用いて形成されるとともに、前記碍子10に掛け回される無端状の環状部2を有し、前記ケーブルCに巻かれる(若しくは、宛がわれる)状態で該ケーブルCを固定する。
【0022】
前記環状部2は、図2に示すように、円環形状を有し、また、内側の大きさは、前記碍子10の保持部12における太さよりも大きく構成される。具体的には、前記環状部2は、楕円形状を有する。また、前記環状部2の内側の大きさは、前記碍子10の保持部12における断面積の2倍程度に設定される。
【0023】
また、前記環状部2は、伸縮自在且つ変形自在な素材によって構成される。かかる素材としては、ゴム製のものが採用されるが、より好ましくは、振動の減衰性に優れたいわゆる高減衰ゴムが採用される。高減衰ゴムとしては、例えば、SRIハイブリッド株式会社製の建築物用の制振材に用いられる材料を用いることが好ましい。この高減衰ゴムは、低い周波数の振動から高い周波数の振動までの幅広い周波数領域において安定した減衰性能を発揮することができる。また、環状部の素材としては、屋外で風雨に曝されることから耐候性に優れたものが好ましく、前記SRIハイブリッド株式会社製の建築物用の制振材に用いられる材料は、その点からも好ましいものである。また、この高減衰ゴムは、幅広い温度領域で安定した減衰性能を発揮することができる。
【0024】
次に、かかるケーブル固定具1を用いてケーブルCを碍子10に固定する方法について説明する。まず、図2(A)に示すように、碍子10の上方からケーブル固定具1を引っ掛ける態様で掛け回す。このとき、ケーブル固定具1の環状部2が碍子10の保持部12に引っ掛かるようにする。その結果、図2(B)に示すように、ケーブル固定具1は下方に垂れ下がる状態となる。次に、前記碍子10の周溝状の保持部12のうち空いている部分(即ち、前記ケーブル固定具1が引っ掛けられていない部分)に対して碍子10の側方からケーブルCを保持させる(図2(A)参照))。そして、ケーブル固定具1のうち下方に垂れ下がっている部分をケーブルCに巻く(若しくは、宛がう)ようにして、環状部2を碍子10の保持部12に引っ掛ける。なお、これらの作業は、巻付グリップトングやバインド打ち器と呼ばれる間接活線工具を使用して行うことができる。
【0025】
このようにして完成されるケーブル固定構造では、図1に示すように、ケーブル固定具1が前記ケーブルCに巻かれる(若しくは、巻き回される)状態で該ケーブルCが固定される。ケーブル固定具1は、ケーブルCを碍子10との間に挟み込んで引き伸ばされた状態となっており、ケーブル固定具1が収縮しようとすることによって、環状部2がケーブルCを碍子10に圧接させるように付勢する。
【0026】
また、ケーブル固定構造においては、前記ケーブル固定具1は、前記環状部2の一部が前記碍子10に掛け回され、他部がケーブルCに巻かれる状態となっている。即ち、ケーブル固定構造においては、前記ケーブル固定具1は、前記環状部2が前記碍子10に二重に掛け回され、前記碍子10に二重に掛け回されることでできる環状部2と碍子10との間の空間に前記ケーブルCが保持される。
【0027】
また、ケーブル固定構造においては、前記ケーブル固定具1は、曲げる前の状態では環状部2の対向する二つの部位2a,2b(便宜上、これを「対向部位2a,2b」とする)が碍子10の保持部12において互いに上下方向に重なり合い、これら二つの対向部位2a,2bに挟まれる二つの中間部位2c,2dがそれぞれケーブルCの長手方向に並んで該ケーブルCに宛がわれる形態となる。
【0028】
以上のように、本実施形態に係るケーブル固定具1及びケーブル固定構造によれば、ケーブルCを碍子10に固定する作業の際や固定した状態においてケーブルCを損傷させてしまうことを好適に防止でき、且つ、作業性を良好にすることができ、しかも、場所の制約を受けずに様々な場所で用いることができる。
【0029】
即ち、ケーブル固定具1が伸縮自在且つ変形自在な素材を用いて形成されるため、ケーブルCが容易に動かないように強固に固定しても、ケーブル固定具1がケーブルCに不必要に食い込むことがない。また、ケーブルCの固定の際にはケーブルCの形状に応じて変形するため、様々な大きさ(径)のケーブルCに対応することができる。さらに、ケーブル固定具1は、環状部2を碍子10に掛け回すことで碍子10に取り付けることができるため、作業の際にケーブル固定具1自体が容易に脱落することがなく、ケーブルCを碍子10に保持させたり碍子10から外したりする作業を良好に行うことができる。しかも、ケーブル固定具1とケーブルCとを固定するのに従来のケーブル固定具1のような長さが必要ないため、碍子10の近傍に(高圧カバー等の)他の部材が存在していて十分なスペースを確保できないような場合でも、設置場所の制約を受けにくく、好適に使用することができる。
【0030】
しかも、ケーブル固定具1(即ち、前記環状部2)には、振動の減衰性に優れた高減衰ゴムが採用されるため、ケーブルCを安定な状態で架設することができる。具体的に説明すると、屋外に架設されたケーブルCは風を受けることなどにより振動や揺れが発生することがあるが、上述のようなケーブル固定具1が振動を吸収することで、ケーブルCの振動や揺れを抑制することができる。
【0031】
また、このようにすれば、ケーブル固定具1でケーブルCを碍子10に固定するに際し、まず、環状部2を碍子10に掛け回した上で、ケーブルCを碍子10との間に挟むように環状部2の余った部分をさらに碍子10に掛け回すことでケーブルCが固定されるため、作業を容易に行うことができる。また、ケーブル固定具1は、円環形状という単純な形状を有するため、容易且つ安価に製造することができる。
【0032】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図3を用いて説明する。ただし、第一実施形態と共通する構成については同一の符号を付すなどして説明を省略する。
【0033】
第二実施形態に係るケーブル固定具1は、ケーブルCを固定する際に用いられる作業用工具に係止される被係止部3をさらに備える。該被係止部3は、“やっとこ”などと呼ばれる把持工具によって把持される態様で係止されるように構成される。また、前記被係止部3は、前記環状部2と繋がった状態で形成される。具体的には、前記被係止部3は、把持工具によって安定して把持(若しくは挟持)することができるように、平坦な形状を有する。そして、前記被係止部3は、前記環状部2に対して可動に設けられる。具体的には、前記被係止部3には内側に前記環状部2を挿通させる挿通部3aが形成されており、該挿通部3aは、環状部2の太さよりも大きく形成される。
【0034】
上記構成からなるケーブル固定具1を用いてケーブルCを碍子10に固定する方法は、基本的に第一実施形態と共通するが、環状部2を碍子10に引っ掛ける際や碍子10から取り外す際には、被係止部3を把持工具によって把持しつつ作業を行うことができる。
【0035】
本実施形態に係るケーブル固定具1によれば、ケーブル固定具1自体を碍子10に対して着脱する作業や、ケーブル固定具1をケーブルCに巻くを行う際には、前記被係止部3を作業用工具で係止すればよく、作業性が向上するとともに、ケーブルCを碍子10に固定するのに直接機能する部分(即ち、環状部2)をなるべく損傷しないようにすることができる。
【0036】
しかも、前記被係止部3が前記環状部2に対して可動に設けられるため、環状部2の姿勢や取付状態を調整することなく、前記被係止部3のみを動かして係止しやすい位置や姿勢とすることができる点で、作業を行いやすいという利点を有する。
【0037】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図4を用いて説明する。ただし、上記各実施形態と共通する構成については同一の符号を付すなどして説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係るケーブル固定具1は、被係止部3が環状部2に一体化して形成されるものである。本実施形態に係るケーブル固定具1によれば、前記環状部2が被係止部3に一体化されているため、不測に環状部2が動いてしまうことなく一定の姿勢を維持することができる点で、作業を行いやすいという利点を有する。
【0039】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について、図5を用いて説明する。ただし、上記各実施形態と共通する構成については同一の符号を付すなどして説明を省略する。
【0040】
本実施形態に係るケーブル固定具1は、被係止部3が巻付グリップトングやバインド打ち器等の掛止工具によって掛止される態様で係止されるように構成される。また、前記被係止部3は、前記環状部2に繋がった状態で形成される。具体的には、前記被係止部3は、前記環状部2に対して可動に設けられる。より具体的には、前記被係止部3は、円環形状を有し、前記環状部2とは、互いの内側を通るように鎖状に繋がった状態で設けられる。なお、前記被係止部3は、掛止工具によって掛止される態様で係止する以外にも、上述のような把持工具によって把持される態様で係止することも可能である。
【0041】
<第五実施形態>
次に、本発明の第五実施形態について、図6を用いて説明する。ただし、上記各実施形態と共通する構成については同一の符号を付すなどして説明を省略する。本実施形態に係るケーブル固定具1は、被係止部3が環状部2に一体化して形成されるものである。
【0042】
<第六実施形態>
次に、本発明の第六実施形態について、図7を用いて説明する。ただし、上記各実施形態と共通する構成については同一の符号を付すなどして説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係るケーブル固定具1は、ケーブルCを碍子10に固定した際にケーブルCと広い範囲で接触するための拡大接触部4を備え、該拡大接触部4は、環状部2よりも幅広に形成される。また、拡大接触部4は、前記環状部2の周上に二箇所設けられる。具体的には、拡大接触部4は、円環状を有する環状部2の中心を挟んで対称な位置に配置され、ケーブルCを碍子10に固定した際には、それぞれケーブルCの長手方向に並ぶ位置で該ケーブルCと接触することとなる。なお、拡大接触部4は、上述した環状部2の中間部位2c,2dに位置するように設けられる。
【0044】
本実施形態に係るケーブル固定具1によれば、拡大接触部4がケーブルCと広い範囲で接触することで、ケーブルCを碍子10に対してより強固に固定することができる。
【0045】
なお、本実施形態に係るケーブル固定具1の変形例としては、図8に示すようなものが考えられ、このケーブル固定具1は、ケーブルCがより広い範囲で接触するように、拡大接触部4に折り曲げ部位4aが形成される。かかるケーブル固定具1によれば、ケーブルCを碍子10に固定した際には、拡大接触部4が前記折り曲げ部位4aで折れ曲がり、ケーブルCの周方向に沿って広い範囲で接触することとなる。
【0046】
<第七実施形態>
次に、本発明の第七実施形態について、図9を用いて説明する。ただし、上記各実施形態と共通する構成については同一の符号を付すなどして説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係るケーブル固定具は、碍子10の保持部12に取り付けやすい構造とされており、具体的には、環状部2に保持部用取付部位2eが備えられている。該保持部用取付部位2eは、碍子10の保持部12の形状に対応する形状を有し、且つ、その形状に保形されている。より具体的には、前記保持部用取付部位2eは、碍子10の保持部12の形状に対応して円弧状に形成される。また、保持部用取付部位2eは、180度よりも大きい角度範囲に亘る円弧状を有する。この保持部用取付部位2eは、伸縮可能且つ変形可能であるが、環状部2のうちの他の部位に比べると、伸縮及び変形しにくく形成されている。なお、環状部2のうち保持部用取付部位2e以外の部位は、ケーブルの固定状態において曲げられた状態となっているため、説明の便宜上、その部位を曲げ変形部位2fと呼ぶこととする。該曲げ変形部位2fは、保持部用取付部位2eよりも大きく形成される。
【0048】
上記構成からなるケーブル固定具1を用いてケーブルCを碍子10に固定する方法は、基本的に第一実施形態と共通するが、ケーブル固定具1自体を碍子に取り付ける際には、まず、前記環状部2の保持部用取付部位2eを碍子10の保持部12に取り付ける。この場合、まず、曲げ変形部位2fから碍子10に掛け、環状部2を碍子10の側方に引っ張って碍子10が曲げ変形部位2fから保持部用取付部位2eに相対移動するようにすれば、ケーブル固定具1自体を碍子10に容易に取り付けることができる。
【0049】
なお、本発明に係るケーブル固定具及びケーブル固定構造は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、上記各実施形態では、ケーブル固定具1は前記環状部2を一つのみ備えるものであったが、これに限定されるものではなく、図10に示すように、環状部2を複数備えるものであってもよい。これら各環状部2,2は、それぞれ碍子10に装着されるものであり、ケーブルCは、各環状部2,2間の部分が宛がわれる態様となる。
【0051】
また、環状部2を複数備えるケーブル固定具1の変形例としては、図11に示すようなものが考えられる。このケーブル固定具1は、一対の環状部2,2が離間して設けられ、該一対の環状部2,2は、接続部5によって接続されている。該接続部5は、幅広に形成され、その結果、ケーブルCがより広い範囲で接触し、上述したような拡大接触部4としても機能する。
【0052】
また、ケーブル固定具1の固定時の形態は、第一実施形態において説明したものに限られず、種々のものが考えられる。例えば、図12に示す形態のように、前記ケーブル固定具1を曲げる前の状態では環状部2の対向する二つの対向部位2a,2bが碍子10の保持部12において互いに上下方向に重なり合い、これら二つの対向部位2a,2bに挟まれる二つの中間部位2c,2dがケーブルCの位置で交差しつつ該ケーブルCに宛がわれるものであってもよい。かかるケーブル固定構造は、まず、環状部2を碍子10に掛け回した後再度碍子10に掛け回す前に、環状部2を捻るようにすることで形成される。このケーブル固定構造は、例えばケーブル固定具1が長くて第一実施形態のような固定の仕方では余ってしまい、ケーブルCを強固に固定できない場合に有効である。
【0053】
さらに、ケーブル固定構造におけるケーブル固定具1の固定時の形態は、図13に示す形態のように、環状部2をケーブルCの外周に巻き、ケーブルCの外周を周回した環状部2の先端部分を該環状部2の内側を通して取り出してケーブルCを縛り、さらに、該取り出された環状部2の部分を碍子10の保持部12に掛け回すものであってもよい。なお、図12では、ケーブル固定具1の固定時の形態がよく分かるように、碍子を敢えて省略している。
【0054】
そして、ケーブル固定具1の固定時の形態は、図14に示す形態のように、前記対向部位2a,2bが碍子10の保持部12において互いに上下方向に重なり合い、これら二つの対向部位2a,2bに挟まれる二つの中間部位2c,2dがそれぞれケーブルの外周を一周するものであってもよい。なお、前記図14では、ケーブル固定具1の固定時の形態がよく分かるように、碍子を敢えて省略しているとともに、ケーブル固定具1の太さも省略して細線で示している。かかるケーブル固定構造は、まず、環状部2を碍子10に掛け回した後、ケーブルCの周りを一回転させてから、再度碍子10に掛け回すことで形成される。このケーブル固定構造も、上記と同様に、ケーブルCを強固に固定できない場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一実施形態に係るケーブル固定構造の斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係るケーブル固定具を用いてケーブルを碍子に固定する方法を示す斜視図であって、(A)は、ケーブル固定具を碍子に取り付ける前の状態を示し、(B)は、ケーブル固定具を碍子に取り付け且つケーブルを碍子に宛がった状態を示す。
【図3】本発明の第二実施形態に係るケーブル固定具の斜視図を示す。
【図4】本発明の第三実施形態に係るケーブル固定具の斜視図を示す。
【図5】本発明の第四実施形態に係るケーブル固定具の斜視図を示す。
【図6】本発明の第五実施形態に係るケーブル固定具の斜視図を示す。
【図7】本発明の第六実施形態に係るケーブル固定具の斜視図を示す。
【図8】同実施形態に係るケーブル固定具の変形例の斜視図を示す。
【図9】本発明の第七実施形態に係るケーブル固定具の平面図を示す。
【図10】本発明の他の実施形態に係るケーブル固定具の平面図を示す。
【図11】本発明の他の実施形態に係るケーブル固定具の変形例の平面図を示す。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係るケーブル固定構造の斜視図を示す。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係るケーブル固定構造におけるケーブル固定具の固定時の形態を概略的に説明する斜視図を示す。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係るケーブル固定構造におけるケーブル固定具の固定時の形態を概略的に説明する斜視図を示す。
【符号の説明】
【0056】
1…ケーブル固定具、2…環状部、2a,2b…対向部位、2c,2d…中間部位、2e…保持部用取付部位、2f…変形部位、3…被係止部、3a…挿通部、4…拡大接触部、4a…折り曲げ部位、5…接続部、10…碍子、11…ピン、12…保持部、A…腕金、C…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを碍子に固定するためのケーブル固定具であって、
伸縮自在且つ変形自在な素材を用いて形成されるとともに、
前記碍子に掛け回される無端状の環状部を有し、
前記ケーブルに巻かれる状態で該ケーブルを固定することを特徴とするケーブル固定具。
【請求項2】
ケーブルを固定する際に用いられる作業用工具に係止される被係止部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のケーブル固定具。
【請求項3】
ケーブル固定具を用いてケーブルを碍子に固定するケーブル固定構造であって、
前記ケーブル固定具は、伸縮自在且つ変形自在な素材を用いて形成されるとともに、前記碍子に掛け回される無端状の環状部を有し、
ケーブル固定具が前記ケーブルに巻かれる状態で該ケーブルが固定されることを特徴とするケーブル固定構造。
【請求項4】
前記ケーブル固定具は、前記環状部の一部が前記碍子に掛け回され、他部がケーブルに巻かれることを特徴とする請求項3に記載のケーブル固定構造。
【請求項5】
前記ケーブル固定具は、前記環状部が前記碍子に二重に掛け回され、
前記碍子に二重に掛け回されることでできる環状部と碍子との間の空間に前記ケーブルが保持されることを特徴とする請求項3又は4に記載のケーブル固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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