説明

ケーブル固定具

【課題】一対の挟持部材を容易かつスムーズに嵌合させてケーブルを強固に保持することができるケーブル固定具を提供することを目的とする。
【解決手段】2本のケーブルを平行に保持する一対の挟持部材1,1を備え、各挟持部材1,1はケーブルを保持するための2個の凹部2,2を有し、かつ、各挟持部材1,1に、凹部2,2を対称に分割して配置する中間分割対称面に沿って、固定ボルトを挿入するボルト挿入孔4と、係止雄部5と、係止雌部6と、を配設し、係止雄部5と係止雌部6を相互に係脱自在に係合させて一対の挟持部材1,1にて2本のケーブルを挟持状に保持するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信ケーブルを鉄塔の支柱等に固定するために、例えば、一対の挟持部材にてケーブルを挟持し、それら挟持部材を鉄塔の支柱から水平に伸びる固定ボルトにナットにて締付固定していた。具体的には、図15に示すように、一対の挟持部材 100a, 100bは、それぞれ2本のケーブル10,10を平行に保持するための凹部101 ,101 と、中央に貫設された固定ボルトBを挿入するボルト挿入孔102 と、ボルト挿入孔102 へ固定ボルトBを横から嵌め込むためのスリット103 と、を具備し、さらに、挟持部材 100a, 100bの両端縁には、支持片部104 ,104 と、対向して配置される相手側の支持片部104 ,104 と係合可能な係合片部105 ,105 と、が配設されていた(例えば、特許文献1参照)。
これら挟持部材の取り付け方は、図15に於て、まず、固定ボルトBを一方の挟持部材 100aのスリット103 を通過させてボルト挿入孔102 に挿入して、凹部101 にケーブル10を設置する。次に、ボルトBが他方の挟持部材 100bのスリット103 を通って他方のボルト挿入孔102 内に挿入されるように、両挟持部材 100a, 100bを互いに摺り合わせながらスライドさせ、それぞれの支持片部104 と係合片部105 とを係合する。そして、図16に示すように、ボルトBの両側からナットNを螺合させて締結して、取り付けを行っていた。
【特許文献1】特許第3380210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のケーブル固定具は、係合箇所が挟持部材の両端縁の二箇所にあるため、確実に係合させるには、両手を使ってその両端を同時に嵌め込む必要があり、このことは、高所で行うケーブル固定作業の能率を低下させる原因となっていた。
また、挟持部材の両端縁で係合されるため、係合状態で向かい合う半円形の凹部にて形成される円形のケーブル挿入孔の大きさ(径寸法)は固定されており、ケーブルに径寸法誤差があった場合、特に、径寸法が所定寸法より大きい場合に、対応して保持することができない欠点があった。
【0004】
そこで、本発明は、一対の挟持部材を容易かつスムーズに嵌合させてケーブルを強固に保持することができるケーブル固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るケーブル固定具は、2本のケーブルを平行に保持する一対の挟持部材を備え、各挟持部材は上記ケーブルを保持するための2個の凹部を有し、かつ、各挟持部材に、上記凹部を対称に分割して配置する中間分割対称面に沿って、固定ボルトを挿入するボルト挿入孔と、係止雄部と、係止雌部と、を配設し、上記係止雄部と上記係止雌部を相互に係脱自在に係合させて一対の挟持部材にて2本の上記ケーブルを挟持状に保持するように構成した。
【0006】
また、各挟持部材に上記ボルト挿入孔から上記中間分割対称面に沿って上記固定ボルトを横から嵌め込むボルト嵌め込み用スリットを開設し、かつ、上記スリットを形成する両内壁面に上記係止雌部を配設し、さらに、各挟持部材は、上記係止雄部を膨出状に有する突起部材を具備し、該突起部材を上記スリット内に挿嵌すると共に上記係止雄部と上記係止雌部を相互に係脱自在に係合させて一対の挟持部材にて2本の上記ケーブルを挟持状に保持するように構成したものである。
【0007】
また、上記スリットに上記係止雄部が摺動可能なガイド部を設けた。
また、上記ガイド部が上記ボルト挿入孔の中心線と平行に配設されている。
また、上記突起部材の先端に一対の弾性突片を有し、該弾性突片に上記係止雄部を配設した。
また、上記両係止雄部の上記ガイド部との摺接面を先端に向かって互いに接近するテーパ面とした。
また、上記ボルト挿入孔の内周面に該ボルト挿入孔の中心線と平行な複数本の突条部を周方向に等ピッチに配設した。
【0008】
また、上記一対の挟持部材が上記ケーブルを挟持した状態で互いに背き合って配置される表て面に於ける上記ボルト挿入孔の開口端縁に沿って、多数の凹凸部が上記ボルト挿入孔の中心線を中心に放射状に配設されて成る位置固定部を設けた。
また、一対の挟持部材を連繋するための可撓性線材を通す孔部を設けた。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係るケーブル固定具によれば、一対の挟持部材を容易かつスムーズに嵌合させてケーブルを強固に保持することができる。
係止雄部と係止雌部とが中間分割対称面に沿って配設されているので、一対の挟持部材のそれぞれ中間部に於て、互いに接近させる小さい力を加えるだけで簡単に嵌め合わすことができる。即ち、図15と図16に示す従来のケーブル固定具のように、挟持部材の両端部に於て、互いに接近させる力を両手を使って同時に与えて嵌め合わす必要はなく、本発明は、係止雄部と係止雌部とを挟持部材の中間部に(中間分割対称面に沿って)一列に配設することによって、片手で(例えば、親指と、人指し指又は中指とで、挟んで)中間部に互いに接近する力を与えるだけでスムーズに嵌め合わせることができる。このことにより、ケーブル固定作業の作業能率を向上させることができる。
また、ボルト挿入孔と係止雄部と係止雌部とを、中間分割対称面に沿って配設したので、挟持部材をコンパクトに形成することができる。つまり、従来から設けられているボルト挿入孔の配設位置の付近に係止雄部と係止雌部とを配置したので、図15と図16に示す従来のケーブル固定具のように、両端部に支持片部104 と係合片部105 とを設ける必要がなくなる。
また、中間分割対称面に沿って設けられた係止雄部と係止雌部とを相互に係脱自在に係合させるので(挟持部材の両端では係合されていないので)、嵌合した状態で両挟持部材の当接する両端部が互いに僅かに離間することができ、向かい合う凹部の間隔を広げることができる。このことにより、保持するケーブルが所定径寸法より大きい場合であっても凹部に嵌め込むことができ、ケーブルの寸法誤差に対応して確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
本発明のケーブル固定具は、図示省略の移動体通信基地局等に高周波同軸ケーブルを多条一括保持するための固定具であり、例えば、図10に示すように、一対の挟持部材1a,1bで2本のケーブル10,10を保持し、その挟持部材1a,1bを、移動体通信基地局の鉄塔等に設けられた固定ボルトBにナットNにて締結して、ケーブル10,10を取付・固定するものである。
【0011】
各挟持部材1a,1bは硬質プラスチック製であり、同一形状に成形されている。図1で説明すると、一方の挟持部材1aを、その長手方向に伸びる図示省略の軸心に対し180 °回転させれば、他方の挟持部材1bの配置となる。そこで、各挟持部材1a,1bを便宜上一つの挟持部材1として合わせて説明する。
【0012】
図1に於て、挟持部材1は、2本のケーブル10,10を平行に保持するための2個の凹部2,2を有している。言い換えれば、一対の挟持部材1a,1bがケーブル10,10を挟持した状態で互いに向かい合って配置される合わせ面22に凹部2,2を有している。
また、挟持部材1には、2個の凹部2,2を対称に分割して配置する(図示省略の)中間分割対称面に沿って、固定ボルトBを挿入するボルト挿入孔4と、係止雄部5と、係止雌部6と、が配設されている。そして、係止雄部5と係止雌部6とを相互に係脱自在係合させて一対の挟持部材1a,1bにて2本のケーブル10,10を挟持状に保持するように構成されている。
なお、挟持部材1は、この中間分割対称面に対し180 °対称形に形成されている。
【0013】
さらに、挟持部材1に、固定ボルトBを(ボルト軸心と直交方向に相対的に移動させて)横から嵌め込むボルト嵌め込み用スリット7が、ボルト挿入孔4から上記中間分割対称面に沿って開設されている。また、挟持部材1は、スリット7内へ挿嵌可能な突起部材9を具備し、各挟持部材1a,1bは、スリット7と対応するスリット7に挿嵌可能な突起部材9にて、互いに嵌合可能に構成されている。
また、スリット7を形成する両内壁面3,3には係止雌部6,6が配設され、突起部材9は(係止雌部6,6と係合可能な)係止雄部5,5を膨出状に有している。
また、ボルト挿入孔4の中心線Xは挟持部材1の中央に配設され、この中心線Xは中間分割対称面に含まれる。
なお、上記中間分割対称面に沿って配設することには、上記一対の係止雄部5,5と係止雌部6,6のように、中間分割対称面から少し外れた近傍に配設される場合も含まれる。
【0014】
図5は、挟持部材1を中間分割対称面で切った断面図であり、図5に於て、左から順に、スリット7(係止雌部6)、ボルト挿入孔4、突起部材9(係止雄部5)と配設されている。
【0015】
挟持部材1の構成について具体的に説明すると、挟持部材1は、上記凹部2,2を有する半円筒状のケーブル保持部8,8と、各ケーブル保持部8,8を一体状に連結する中間連結部21と、を有している。中間連結部21にはボルト挿入孔4とスリット7とが配設され、スリット7はケーブル保持部8の半円形の開口部が形成される挟持部材1の両端面のうちの一端面へ開設されている。この挟持部材1の一端面に開設されたスリット7の開口部を、以下、嵌込み開口部25という。
【0016】
また、挟持部材1の合わせ面22は、中間に配設される平坦面状の対向面23と、両端に配設される細長平坦面状の当接面24,24と、を有し、対向面23と当接面24,24との間には上記凹部2,2が配設されている。凹部2は横断面半円弧状に形成され、ケーブル10の横断面略半分を保持する。さらに、凹部2の内周面には、多数本の突条部26が凹部2の中心線Y方向に等ピッチに設けられている(図3参照)。
【0017】
スリット7の両内壁面3,3には、それぞれ2つのガイド部11,11が設けられている。一方のガイド部11a(11)は、スリット7の合わせ面22(対向面23)側の開口端部から表て面15側へ向かってボルト挿入孔4の中心線Xと平行に(対向面23と直交して)配設され、他方のガイド部11b(11)は、スリット7の嵌込み開口部25の端部からボルト挿入孔4側へ向かって対向面23と平行に配設されている。以下、ガイド部11aを第1ガイド部11aとし、ガイド部11bを第2ガイド部11bという。
【0018】
そして、第1ガイド部11aは、合わせ面22側から第2ガイド部11bの一部に渡るように形成され、第1ガイド部11aの第2ガイド部11bと接する端部から(合わせ面22と反対側の)表て面15側へ係合溝部29が形成されている。
なお、係止雄部5と係合する係止雌部6は、係合溝部29と、第2ガイド部11bと、を有している。
【0019】
また、対向面23から突起部材9が直交状に(ボルト挿入孔4の中心線Xと平行に)突出し、突起部材9の先端には、挟持部材1a,1bを互いに嵌合させた状態で(図11参照)、スリット7の内壁面3,3に接近離間するように揺動する一対の弾性突片12,12を有している。
弾性突片12,12に、第1ガイド部11aに摺動可能な係止雄部5,5を配設し、挟持部材1a,1bを互いに嵌合させた状態で、係止雄部5,5は、スリット7の内壁面3,3側へ膨出する大凸部27,27と、大凸部27,27よりさらに内壁面3,3側へ膨出する小凸部28,28と、を有している。
なお、係止雄部5,5は第2ガイド部11b,11bにも摺動可能となっており、この場合、後述する挟持部材1,1の嵌め合わせ方によって、係止雄部5,5は、第1ガイド部11aと第2ガイド部11bに対し選択的に摺動可能に構成されている。
また、係止雄部5は、弾性突片12の中間部に付設され、言い換えれば、係止雄部5は弾性突片12の先端部には付設されておらず、弾性突片12の先端部に摘まみ部34を形成している。
【0020】
図9に示す要部作用説明図を参照して、第1ガイド部11a,11aと、第1ガイド部11a,11aに摺動可能な係止雄部5,5の構成についてさらに説明する。
両第1ガイド部11a,11aは、上方(合わせ面22側から表て面15側)に向かって互いに接近するテーパ面を有している。また、その第1ガイド部11a,11aと摺接する係止雄部5,5の(左右側外方の)摺接面19,19も、上方(先端)に向かって互いに接近するテーパ面に形成されている。
なお、係止雄部5の摺接面19、又は、第1ガイド部11aのどちらか一方をテーパ面としてもよい。
【0021】
ボルト挿入孔4の内周面13には、ボルト挿入孔4の中心線Xと平行な複数本の突条部14が設けられている。この場合、3本の突条部14が内周面13の周方向に等ピッチに配設され(図2又は図3参照)、真ん中に配設される突条部14は上記中間分割対称面に沿って設けられている。
また、スリット7の両内壁面3,3のボルト挿入孔4との連結部には、ボルト挿入孔4の中心線Xと平行な突条体30,30が配設されている。この突条体30,30は、挿入孔4に挿入された固定ボルトBが挿入孔4からスリット7側へ離脱するのを防止する抜止め部材である。即ち、2つの突条体30,30の間隔寸法は、固定ボルトBの径寸法より僅かに小さくなるように設定されている。
【0022】
一対の挟持部材1,1がケーブル10,10を挟持した状態で、互いに背き合って配置される(合わせ面22と反対側の)表て面15に於けるボルト挿入孔4の開口端縁には、ナットが(平ワッシャやスプリングワッシャ等を介して)当接するためのC字状の平面座31が形成されている。さらに、平面座31の外周縁に沿って、多数の凹凸部がボルト挿入孔4の中心線Xを中心に放射状に配設されて成る位置固定部16が設けられている。
【0023】
両ケーブル保持部8,8の上記当接面24,24が配設された自由端には、小突片32,32が設けられ、小突片32にはワイヤー等の可撓性線材18(図10又は図13参照)を通す孔部17が貫設されている。
【0024】
また、図4に於て、両端の当接面24,24は、中間の対向面23に対し、寸法Aだけ下方へ突出している。つまり、図11に示すように、挟持部材1a,1bを互いに嵌合させた状態で、それぞれの対向面23の間には隙間Zが形成される。さらに、一対の挟持部材1a,1bを両側からナットN,Nにて締結した場合に、挟持部材1a,1bが弾性変形して隙間Zが狭くなり(図示省略の)ケーブル10を強固に保持するようになっている。
また、図1に戻って、挟持部材1の表て面15に補強用リブ33が設けられ、補強用リブ33は、挟持部材1の周縁と、両ケーブル保持部8,8の中央に中心線Yと平行に、配設されている。
【0025】
上述した本発明のケーブル固定具の使用方法(作用)について説明する。
図6に於て、板状の鋼材から成る取付基材(ラダー)20の付近に2本のケーブル10,10を平行に配設する。そして、固定ボルトBと、複数個のナットN・平ワッシャW・スプリングワッシャSを用意し、固定ボルトBの基端を取付基材20に貫設された孔部35に挿入し、固定ボルトBの基端をナットN等にて締結して取付基材20に固着する。また、固定ボルトBは2本のケーブル10,10の間を通るように配設する。さらに、固定ボルトBの先端には、ナットN・スプリングワッシャS・平ワッシャWを取り付けておく。
【0026】
次に、図7に於て、1個の挟持部材1aを用意し、その凹部2,2をケーブル10,10側へ向け、かつ、スリット7の嵌込み開口部25を固定ボルトB側(下方)へ向けて配置する。そして、挟持部材1aを固定ボルトB側へ(ケーブル10の軸心方向に)スライドして移動させ、固定ボルトBがスリット7を通過してボルト挿入孔4内へ挿入されるように、挟持部材1aを押し込む。
【0027】
図8に於て、別の挟持部材1bを用意し、固定ボルトBが別の挟持部材1bのスリット7を通過してボルト挿入孔4内へ挿入されるようにして取り付け、最初に固定ボルトBに嵌め込んだ挟持部材1aに対し、別の挟持部材1bを、表裏逆向きに、かつ、上下180 °反転させて配置する。
そして、別の挟持部材1bを、固定ボルトB(挿入孔4の中心線X)に沿ってケーブル10,10の方へ移動させる。この時、各挟持部材1a,1bの突起部材9の係止雄部5,5が、それぞれ対向する相手側のスリット7内の第1ガイド部11aに沿って摺動し、そして、係止雄部5,5は相手側の係止雌部6,6と係合する。
また、両方の挟持部材1a,1bを固定ボルトBに沿って互いに接近するように移動させて、係止雄部5,5と係止雌部6,6とを係合してもよい。
【0028】
図9に於て、スリット7に突起部材9が挿入後、係止雄部5と係止雌部6が係合する作用について詳しく説明する。なお、係止雄部5と係止雌部6の係合作用は、各挟持部材1a,1b相互に同様の作用であるので、便宜的に一方の作用について説明する。
図9の(a)に示すように、一方の挟持部材1aの合わせ面22側のスリット7の開口部から、他方の挟持部材1bの突起部材9を挿入する。
突起部材9の先端の弾性突片12,12がスリット7内に進入し、そして、弾性突片12,12に配設された係止雄部5,5がスリット7の第1ガイド部11a,11aに接触する。
【0029】
さらに、突起部材9をスリット7内へ挿入すると、図9の(b)に示すように、係止雄部5,5が第1ガイド部11a,11aに沿って摺動進行し、弾性突片12,12は先端が互いに接近するように弾性変形する。
【0030】
そして、図9の(c)に示すように、係止雄部5,5が第1ガイド部11a,11aより内方(上方)へ進むと、第1ガイド部11a,11aを通過し終えた部位でスリット7の幅が拡がっているので、弾性突片12,12は互いに離れる方向へ弾発付勢し、係止雄部5,5の小凸部28,28がスリット7内の係合溝部29,29に係合する。この状態で、一対の挟持部材1a,1bは、ケーブル10,10を挟持状に保持した状態───仮固定状態───となる(図10参照)。つまり、互いに係合する小凸部28と係合溝部29にて、挟持部材1a,1bのケーブル軸心方向(凹部2の中心線Y方向)の離脱(離間)を防止し、係止雄部5と第2ガイド部11bにて、挟持部材1a,1bの固定ボルト軸心方向(ボルト挿入孔4の中心線X方向)の離脱(離間)を防止している。
【0031】
図10に示す仮固定状態に於て、固定ボルトBの先端のナットNを締め付ける方向に回転させ、挟持部材1a,1bをナットNにて取付基材20に締結して固定した状態───締結固定状態───とする。
【0032】
また、図示省略するが、予め一対の挟持部材1a,1bを取り付けた固定ボルトBを、取付基材20に固着してから、両挟持部材1a,1bの間にケーブル10,10を配設し、その後、挟持部材1a,1bを(固定ボルトBに沿って相互に接近させて)嵌合させ、ケーブル10,10を保持してもよい。
【0033】
図11と図12は、ケーブル10を図示省略した、本発明のケーブル固定具の上記締結固定状態を示し、このように、一対の挟持部材1a,1bは両側のナットN,Nにて挟まれ締結されている。また、図11に示すように、各挟持部材1a,1bは、それぞれ両端縁に配設された当接面24,24にて接触し、それぞれの対向面23,23の間には隙間Zが設けられている。また、締結固定状態で、さらにナットN,Nにて充分締め付けると隙間Zは小さくなり、締付度合いによっては対向面23,23は互いに当接し隙間Zはなくなる。
【0034】
また、一対の挟持部材1a,1bを、固定ボルトB(ボルト挿入孔4の中心線X方向)に沿って互いに接近させて嵌合する方法以外に、図13に示すように、ケーブル10(凹部2の中心線Y方向)に沿って接近させて嵌合することも可能である。
【0035】
具体的には、まず、一方の挟持部材1aの凹部2,2を、ケーブル10,10の外周面に沿わせて(上方から)固定ボルトBへ近づけ、固定ボルトBがスリット7を通過してボルト挿入孔4内へ挿入されるように、挟持部材1aを押し込む。
次に、他方の挟持部材1bを、一方の挟持部材1aに対し、表裏逆向きに、かつ、上下180 °反転させて配置し、一方の挟持部材1aと反対側(下方)から固定ボルトBへ近づける。
この時、他方の挟持部材1bの凹部2,2を、ケーブル10,10の外周面に沿わせて固定ボルトB側へ移動させる。そして、各挟持部材1a,1bの当接面24,24を摺り合わせつつ、それぞれの突起部材9を、対応する相手側のスリット7へ挿入する。そして、突起部材9の係止雄部5,5が第2ガイド部11b,11bに摺動し、係止雄部5,5の小凸部28,28がスリット7内の係合溝部29,29と係合して、挟持部材1a,1bを嵌合させ仮固定状態とすることができる(図10参照)。
【0036】
また、上記仮固定状態の両挟持部材1a,1bを分離する場合は、スリット7の表て面15の開口部から工具を差し込んで、弾性突片12,12の先端部の摘まみ部34,34を互いに接近するように弾性変形させ、挟持部材1a,1bを固定ボルトBの軸心方向に離間して外せばよい。
また、図13にて説明した嵌合手順を逆順に行って、挟持部材1a,1bをケーブル10,10に沿って(凹部2の中心線Y方向に)離間して外すこともできる。
【0037】
また、図10又は図13に示すように、各挟持部材1a,1bの(左右)両端縁に有する孔部17にワイヤー等の可撓性線材18を挿入して連繋しておき、その状態で固定ボルトBへの取付作業をしてもよい。
【0038】
図14に示すのは、一対の挟持部材1a,1b(1c,1d)(1e,1f)を1セットとして3セットG1 ,G2 ,G3 を固定ボルトBに取り付けた状態(締結固定状態)を示し、各セットG1 ,G2 ,G3 の間には、平ワッシャやスプリングワッシャ等は介在していない。つまり、隣接する挟持部材1bと1c及び1dと1eは、それぞれの表て面15に設けられた位置固定部16が噛み合って固定されている。
なお、挟持部材1a,1bの取付セット数は3セットに限定されず、2セット又は3セット以上であってもよい。
【0039】
以上のように、本発明のケーブル固定具は、2本のケーブル10,10を平行に保持する一対の挟持部材1,1を備え、各挟持部材1,1はケーブル10,10を保持するための2個の凹部2,2を有し、かつ、各挟持部材1,1に、凹部2,2を対称に分割して配置する中間分割対称面に沿って、固定ボルトBを挿入するボルト挿入孔4と、係止雄部5と、係止雌部6と、を配設し、係止雄部5と係止雌部6を相互に係脱自在に係合させて一対の挟持部材1,1にて2本のケーブル10,10を挟持状に保持するように構成したので、一対の挟持部材1,1を容易かつスムーズに嵌合させてケーブル10,10を強固に保持することができる。
係止雄部5と係止雌部6とが中間分割対称面に沿って配設されているので、挟持部材1,1のそれぞれ中間部に於て互いに接近させる小さい力を加えるだけで簡単に嵌め合わすことができる。即ち、図15と図16に示す従来のケーブル固定具のように、挟持部材の両端部に於て、互いに接近させる力を両手を使って同時に与えて嵌め合わす必要はなく、本発明は、係止雄部5と係止雌部6とを挟持部材1の中間部に(中間分割対称面に沿って)一列に配設することによって、片手で(例えば、親指と、人指し指又は中指とで、挟んで)中間部に互いに接近する力を与えるだけでスムーズに嵌め合わせることができる。このことにより、ケーブル固定作業の作業能率を向上させることができる。
また、ボルト挿入孔4と係止雄部5と係止雌部6とを、中間分割対称面に沿って配設したので、挟持部材1をコンパクトに形成することができる。つまり、従来から設けられているボルト挿入孔4の配設位置の付近に係止雄部5と係止雌部6とを配置したので、図15と図16に示す従来のケーブル固定具のように、両端部に支持片部104 と係合片部105 とを設ける必要がなくなる。
また、中間分割対称面に沿って設けられた係止雄部5と係止雌部6とを相互に係脱自在に係合させるので(挟持部材1,1の両端では係合されていないので)、嵌合した状態で両挟持部材1,1の当接する両端部が互いに僅かに離間することができ、向かい合う凹部2,2の間隔を広げることができる。このことにより、保持するケーブル10,10が所定径寸法より大きい場合であっても凹部2に嵌め込むことができ、ケーブル10の寸法誤差に対応して確実に保持することができる。
【0040】
また、各挟持部材1,1にボルト挿入孔4から中間分割対称面に沿って固定ボルトBを横から嵌め込むボルト嵌め込み用スリット7を開設し、かつ、スリット7を形成する両内壁面3,3に係止雌部6,6を配設し、さらに、各挟持部材1,1は、係止雄部5,5を膨出状に有する突起部材9を具備し、突起部材9をスリット7内に挿嵌すると共に係止雄部5,5と係止雌部6,6を相互に係脱自在に係合させて一対の挟持部材1,1にて2本のケーブル10,10を挟持状に保持するように構成したので、固定ボルトBを嵌め込むためのスリット7が、突起部材9を挿嵌して係止雄部5と係止雌部6とを係合させる係止部材の役割を兼ねることができ、挟持部材1をコンパクトに形成することができる。
【0041】
また、スリット7に係止雄部5,5が摺動可能なガイド部11,11を設けたので、スリット7内へ突起部材9をスムーズに挿入させて、係止雄部5と係止雌部6とを係合させることができる。
【0042】
また、ガイド部11,11がボルト挿入孔4の中心線Xと平行に配設されているので、挟持部材1,1を固定ボルトB(ボルト挿入孔4の中心線X)に沿って接近させて、嵌合することができる。例えば、図8に示すように、固定ボルトBに取り付けられた一方の挟持部材1に対し、他方の挟持部材1を固定ボルトBに沿って一方の挟持部材1(及びケーブル10,10)に接近させ押し込んで嵌め合わすことができる。このことにより、挟持部材1,1を容易に嵌合させることができ、特に、ケーブル10が所定径寸法より大きい場合であっても、楽に挟持部材1,1を嵌め合わすことができる。
また、両方(一対)の挟持部材1,1のボルト挿入孔4に固定ボルトBを通して予め取り付けておき、その後、挟持部材1,1を固定ボルトBと一緒に高所へ運んでケーブル固定作業を行うことができる。
即ち、図15と図16に示す従来のケーブル固定具は、挟持部材1,1を固定ボルトBに沿ってスライドさせて嵌合させることができず、挟持部材1,1を両方とも予め固定ボルトBへ取り付けて準備しておくことができない。従って、従来のケーブル固定具は、少なくとも一方の挟持部材1を、固定ボルトBとは別個に所持して高所へ運搬しなければならず、その運搬中又は高所で作業中に挟持部材1が落下する虞があるが、本発明は、予め両方の挟持部材1,1を固定ボルトBに取り付けておき、その後嵌合できるので、挟持部材1を落下させる虞がない。そして、高所での作業を削減できるので、作業能率を向上させることができる。
【0043】
また、突起部材9の先端に一対の弾性突片12,12を有し、弾性突片12,12に係止雄部5,5を配設したので、挟持部材1,1を嵌合する際に、弾性突片12がスリット7の内壁面3,3に対応して弾性変形することにより突起部材9がスリット7内へスムーズに挿入できると共に、突起部材9の挿入後、弾性突片12が内壁面3,3側へ弾発付勢して係止雄部5と係止雌部6との係合を強固にすることができる。
【0044】
また、両係止雄部5,5のガイド部11,11との摺接面19,19を先端に向かって互いに接近するテーパ面としたので、突起部材9をスリット7内へスムーズに挿入させることができる。
【0045】
また、ボルト挿入孔4の内周面13にボルト挿入孔4の中心線Xと平行な複数本の突条部14を周方向に等ピッチに配設したので、固定ボルトBの軸心をボルト挿入孔4の中心線Xに一致させることができ、挟持部材1,1を相互に確実に嵌合させることができる。
即ち、挟持部材1の製造工程に於て、挟持部材1を金型から離脱させ易いように、ボルト挿入孔4の内周面13はテーパ状に形成されているが、複数本突条部14を(テーパ状でない)中心線Xと平行に配設しているので、固定ボルトBの軸心を挿入孔4の中心線Xに一致させて配置することができる。なお、突条部14はテーパ状に形成されていなくても、金型との接触面積は小さいので、挟持部材1の金型からの離脱を阻害することはない。
また、一対の挟持部材1,1を1セットとして、複数セットを固定ボルトBに取り付けた場合(図14参照)は、各セットの間に於て、位置固定部16,16同士を確実に噛み合わせることができ、安定して固定することができる。
なお、固定ボルトBをボルト挿入孔4内にスムーズに挿入でき、かつ、挿入後に挟持部材1が固定ボルトBを軸に回転するのを抑止することができる。
【0046】
また、一対の挟持部材1,1がケーブル10,10を挟持した状態で互いに背き合って配置される表て面15,15に於けるボルト挿入孔4の開口端縁に沿って、多数の凹凸部がボルト挿入孔4の中心線Xを中心に放射状に配設されて成る位置固定部16を設けたので、一対の挟持部材1,1を1セットとして、複数セットを固定ボルトBに取り付けた場合(図14参照)、各セットの間に於て、それぞれの挟持部材1,1の表て面15,15に設けられた位置固定部16,16が噛み合って安定して固定することができる。従って、位置固定部16にて、各セットが固定ボルトBを軸に僅かに回転することを防止することができ、ケーブル10,10を確実に保持することができる。
また、各セットの間に、平ワッシャやスプリングワッシャ、あるいは回転防止効果に優れたロックワッシャ等を介在させる必要がなく省略することができる。
【0047】
また、一対の挟持部材1,1を連繋するための可撓性線材18を通す孔部17を設けたので、各挟持部材1,1の孔部17,17に線材18を通して連繋すれば、一方の挟持部材1の固定ボルトBへの取付作業中に、他方の挟持部材1の落下を防止することができる。このように、他方の挟持部材1を別個に保持しておく必要がなく、かつ、他方の挟持部材1の落下を気にする必要もないので、挟持部材1,1を固定ボルトBへ取り付ける作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】平面図である。
【図3】底面図である。
【図4】正面図である。
【図5】断面側面図である。
【図6】本発明のケーブル固定具の取付説明図である。
【図7】取付説明図である。
【図8】取付説明図である。
【図9】要部作用説明図である。
【図10】取付説明図である。
【図11】締結固定状態の正面図である。
【図12】側面図である。
【図13】取付説明図である。
【図14】締結固定状態の正面図である。
【図15】従来のケーブル固定具の取付説明図である。
【図16】取付説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 挟持部材
2 凹部
3 内壁面
4 ボルト挿入孔
5 係止雄部
6 係止雌部
7 スリット
9 突起部材
10 ケーブル
11 ガイド部
12 弾性突片
13 内周面
14 突条部
15 表て面
16 位置固定部
17 孔部
18 線材
19 摺接面
B 固定ボルト
X 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のケーブル(10)(10)を平行に保持する一対の挟持部材(1)(1)を備え、各挟持部材(1)(1)は上記ケーブル(10)(10)を保持するための2個の凹部(2)(2)を有し、かつ、各挟持部材(1)(1)に、上記凹部(2)(2)を対称に分割して配置する中間分割対称面に沿って、固定ボルト(B)を挿入するボルト挿入孔(4)と、係止雄部(5)と、係止雌部(6)と、を配設し、上記係止雄部(5)と上記係止雌部(6)を相互に係脱自在に係合させて一対の挟持部材(1)(1)にて2本の上記ケーブル(10)(10)を挟持状に保持するように構成したことを特徴とするケーブル固定具。
【請求項2】
各挟持部材(1)(1)に上記ボルト挿入孔(4)から上記中間分割対称面に沿って上記固定ボルト(B)を横から嵌め込むボルト嵌め込み用スリット(7)を開設し、かつ、上記スリット(7)を形成する両内壁面(3)(3)に上記係止雌部(6)(6)を配設し、さらに、各挟持部材(1)(1)は、上記係止雄部(5)(5)を膨出状に有する突起部材(9)を具備し、該突起部材(9)を上記スリット(7)内に挿嵌すると共に上記係止雄部(5)(5)と上記係止雌部(6)(6)を相互に係脱自在に係合させて一対の挟持部材(1)(1)にて2本の上記ケーブル(10)(10)を挟持状に保持するように構成した請求項1記載のケーブル固定具。
【請求項3】
上記スリット(7)に上記係止雄部(5)(5)が摺動可能なガイド部(11)(11)を設けた請求項2記載のケーブル固定具。
【請求項4】
上記ガイド部(11)(11)が上記ボルト挿入孔(4)の中心線(X)と平行に配設されている請求項3記載のケーブル固定具。
【請求項5】
上記突起部材(9)の先端に一対の弾性突片(12)(12)を有し、該弾性突片(12)(12)に上記係止雄部(5)(5)を配設した請求項4記載のケーブル固定具。
【請求項6】
上記両係止雄部(5)(5)の上記ガイド部(11)(11)との摺接面(19)(19)を先端に向かって互いに接近するテーパ面とした請求項5記載のケーブル固定具。
【請求項7】
上記ボルト挿入孔(4)の内周面(13)に該ボルト挿入孔(4)の中心線(X)と平行な複数本の突条部(14)を周方向に等ピッチに配設した請求項1,2,3,4,5又は6記載のケーブル固定具。
【請求項8】
上記一対の挟持部材(1)(1)が上記ケーブル(10)(10)を挟持した状態で互いに背き合って配置される表て面(15)(15)に於ける上記ボルト挿入孔(4)の開口端縁に沿って、多数の凹凸部が上記ボルト挿入孔(4)の中心線(X)を中心に放射状に配設されて成る位置固定部(16)を設けた請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のケーブル固定具。
【請求項9】
一対の挟持部材(1)(1)を連繋するための可撓性線材(18)を通す孔部(17)を設けた請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載のケーブル固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−174724(P2007−174724A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364453(P2005−364453)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】