説明

ケーブル巻取り装置

【課題】 ケーブルを巻取った状態のままで、その巻取り長さを調節することができるケーブル巻取り装置を提供する。
【解決手段】 ケーブル36を外周に巻付けて巻取るケーブルガイド34、又は内周に螺旋状に這わせて巻取るケーブルガイドのいずれかを備え、ケーブルガイド34は、ケーブル36を巻取るときの巻取り軸線方向における一の部分40と他の部分38のそれぞれに対応する、その外周又は内周の1周当たりのケーブル36の巻取り長さを互いに異ならせる巻取り長さ可変機構42,44,46を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブル等のようなケーブルを配線する際に、このケーブルを巻取ると共に、この巻取り長さを調節することができるケーブル巻取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば光ケーブルは、その端部を接続先の配線盤等に実際にコネクタで接続する際には、その機能を十分に発揮させるためにその端面を特別の工具で研磨する必要がある。この研磨の作業は、光ケーブルの接続先の配線盤等からある程度離れた場所で行なわれるため、光ケーブルはそのための余分の長さを有している必要がある。以後の説明において、このような光ケーブルの余分の長さを余長ということとする。
【0003】
このような光ケーブルの余長は、配線盤等にコネクタ接続した後においてそれを巻取ることなく放置した場合は、例えば光ケーブルに工具等を引掛けて破損させる原因となったり、また、この光ケーブルの周囲で行なう他の配線作業等の邪魔になったりすることがあった。
【0004】
このため従来においては、図2に示すように、光ケーブルの余長を巻取るためのケーブル巻取り装置2があった(例えば、特許文献1参照)。このケーブル巻取り装置2はドラム状のケーブルガイド4を備えており、このケーブルガイド4の外周に光ケーブル(不図示)を巻付けるようになっている。
【0005】
ケーブルガイド4は、固定巻枠6と移動巻枠8を有している。図2の(b)に示すように、光ケーブルを巻付けるための固定巻枠6と移動巻枠8のそれぞれの巻付け面6a,8aは、その断面形状が互いに対称である略半円の円弧状に形成されている。また、この固定巻枠6と移動巻枠8のそれぞれには、図2の(a)に示すように、巻付け面6a,8aから幅方向外側に光ケーブルがはみ出さないようにするための鍔6b,8bが設けられている。
【0006】
また、移動巻枠8は、レール10の長さ方向に沿って移動することにより、固定巻枠6に対して近づけたり遠ざけたりすることができるようになっており、子ネジ12とナット14を締め付けることにより任意の位置で固定することができるようになっている。
【0007】
光ケーブルの余長は、この固定巻枠6と移動巻枠8を一緒に囲んで、固定巻枠6と移動巻枠8のそれぞれの巻付け面6a,8aに接するように巻付けられる。したがって、ケーブルガイド4は、その移動巻枠8の位置をレール10の長さ方向に沿って移動することにより、このケーブルガイド4の外周に巻取る光ケーブルの1周当たりの巻付け長さを調節することができるようになっていた。
【特許文献1】特開平4−221906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1を示す図2に示すようなケーブル巻取り装置2では、そのケーブルガイド4に光ケーブルを数回巻付けると、この光ケーブルの摩擦力によりケーブルガイドの移動巻枠8を固定巻枠6から遠ざける向きに移動させることができなくなってしまう。また、光ケーブルを巻付けた状態で移動巻枠8を固定巻枠6に近付ける向きに移動させると、ケーブルガイド4に巻き付けた光ケーブルが緩んで解けてしまう。
【0009】
このため、前記ケーブル巻取り装置2は、そのケーブルガイド4に光ケーブルを巻き付けた状態のままでは、この光ケーブルの巻取り長さを調節することができないので、移動巻枠8の位置の調節や、光ケーブルをケーブルガイド4に巻き付けたり解いたりする作業を交互に繰り返し行なう必要があり、その操作が著しく煩わしいという問題があった。
【0010】
また、例えば電線ケーブルのような、光ケーブル以外の他のケーブルの余長を巻取るためのケーブル巻取り装置においても、前記特許文献1のケーブル巻取り装置2と同様に、巻取り長さの調節が煩わしいという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、ケーブルを巻取った状態のままで、その巻取り長さを調節することができるケーブル巻取り装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のケーブル巻取り装置は、
ケーブルを外周に巻付けて巻取るケーブルガイド、又は内周に螺旋状に這わせて巻取るケーブルガイドのいずれかを備え、
前記ケーブルガイドは、ケーブルを巻取るときの巻取り軸線方向における一の部分と他の部分のそれぞれに対応する、その外周又は内周の1周当たりのケーブルの巻取り長さを互いに異ならせる巻取り長さ可変機構を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明によるケーブル巻取り装置は、前記ケーブルガイドは、前記他の部分に対応する1周当たりのケーブルの巻取り長さが一定であって、前記一の部分に対応する1周当たりのケーブルの巻取り長さが前記巻取り長さ可変機構により変化するように構成することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明によるケーブル巻取り装置は、前記一の部分は、前記ケーブルガイドの前記巻取り軸線方向の端部に設けることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明によるケーブル巻取り装置は、前記巻取り長さ可変機構は、前記一の部分が前記巻取り軸線方向と直角方向に可動部と固定部に分割され、この可動部が固定部に対して相対移動可能に構成されることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明によるケーブル巻取り装置は、前記ケーブルガイドは、前記一の部分の外周又は内周に前記ケーブルが係合する係合溝が形成されることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明によるケーブル巻取り装置は、前記ケーブルガイドは、前記外周又は前記内周が略円弧状に形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明のケーブル巻取り装置によれば、ケーブルを巻取った状態のままで、その巻取り長さを調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るケーブル巻取り装置の実施の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るケーブル巻取り装置30について説明するために参照する図である。
【0020】
本実施の形態に係るケーブル巻取り装置30は、円板形状の基板32、及びこの基板32上に固定される略ドラム状のケーブルガイド34を備えている。そして、このケーブル巻取り装置30は、光ケーブル36をケーブルガイド34の外周に巻付けて巻取るようになっている。
【0021】
ケーブルガイド34は、図1の(a)に示すように、光ケーブル36を巻取るときにおける、その巻取り軸線A方向の基板側部分38で、この基板側部分38の外周に巻取ることができる光ケーブル36の長さが一定になっている。また、ケーブルガイド34は、その巻取り軸線A方向において、基板側部分38に対し基板32とは反対側で互いに隣り合う先端側部分40に、その外周に巻取る光ケーブル36の長さを変更することができる巻取り長さ可変機構を有するように構成されている。
【0022】
すなわち、ケーブルガイド34の先端側部分40は、その巻取り軸線A方向とは直角の方向に互いに相対移動可能な、それぞれが半円状の可動部42と固定部44に分割されており、可動部42を固定部44に対して近づけたり遠ざけたりする方向(図1(a)中、矢印Bの方向)に移動させることができるような構造になっている。また、先端側部分40の固定部44は、基板側部分38と一体的になっている。
【0023】
可動部42は支持梁46に一体的に支持されており、この支持梁46は、その可動部42と反対側の先端長さ部分が、固定部44の内部に形成された不図示の収納部内に出入自在に挿し込まれて支持されるようになっている。
【0024】
支持梁46には、その長さ方向に沿って鋸歯形状部48が形成されており、この鋸歯形状部48に、固定部44内の不図示の収納部の内部空間に突出する、不図示の係止爪が引っ掛かるようになっていることにより、支持梁46は、固定部44内の不図示の収納部から任意の長さだけ引出した状態を維持することができるようになっている。
【0025】
このようなケーブルガイド34の先端側部分40の、可動部42、固定部44、支持梁46、鋸歯形状部48及び上記不図示の係止爪は、その外周に巻取る光ケーブル36の長さを変更することができる巻取り長さ可変機構を構成している。
【0026】
また、可動部42と固定部44には、その円弧状に形成されたそれぞれの外周面に沿って係合溝42a,44aが形成されていて、光ケーブル36をこの係合溝42a,44a内に係合させて巻付けることができるようになっている。
【0027】
ケーブル巻取り装置30は、そのケーブルガイド34に光ケーブル36の余長を巻付ける際には、基板側部分38側からその外周に巻付け始めて、最後の略一周分を先端側部分40の外周の係合溝42a,44aに係合させながら巻付けることにより、可動部42の位置を調節することができるようになっている。
【0028】
このような本実施の形態に係るケーブル巻取り装置30によれば、ケーブルガイド34の先端側部分40が巻取り長さ可変機構を有するようになっているので、ケーブルガイド34に光ケーブル36を巻取った状態のままで、その巻取り長さを調節することができる。
【0029】
すなわち、ケーブルガイド34の基板側部分38と先端側部分40の外周に巻付けられた光ケーブル36が緩んでいるときは、固定部44に対して遠ざかるように可動部42を支持梁46の長さ方向に移動させて、先端側部分40の外周部における1周当たりのケーブルの巻取り長さを増大させることにより、ケーブルガイド34の外周の一番上の、先端側部分40の外周に巻付けられた1周分(1回り分)の光ケーブル36のみを伸ばして張力を付与させて、ケーブルガイド34の外周に巻付けられたすべての光ケーブル36の緩みを除くことができる。
【0030】
また、光ケーブル36に余長が発生しない場合には、可動部42を固定部44に対して近づけるように移動させることにより、巻取り長さ可変機構を含めたケーブルガイド34をコンパクトにすることができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、ケーブルガイド34の先端側部分40だけに、可動部42が移動するような巻取り長さ可変機構を備えるようになっていたが、基板側部分38にも同様の巻取り長さ可変機構を有するようにして、基板側部分38と先端側部分40のそれぞれに対応する1周当たりの巻取り長さを互いに異ならせるようになっていてもよい。
【0032】
また、本実施の形態では、光ケーブル36をケーブルガイド34の外周に巻付けることにより、この光ケーブル36の余長を巻き取るようにしたケーブル巻取り装置30について説明したが、このような本実施の形態とは異なる他の実施の形態として、図示しないが、ケーブル巻取り装置は、軸線(巻取り軸線)方向に直角の断面が略円形の空洞を有するように形成されたケーブルガイドを備えて、光ケーブルの余長を、このケーブルガイドの空洞の内周面に螺旋状に這わせて巻取るようになっていてもよい。
【0033】
ここで、光ケーブルが空洞の内周面に螺旋状に這うように巻取られるようにするには、例えば、この空洞の略円形の断面がその大きさとして、光ケーブルがその巻取られたときの撓み反力により内周面に張付くことができる程度の曲率を有するように形成されていればよい。
【0034】
また、この空洞の内周面に螺旋状の係合溝を形成し、この係合溝に沿って光ケーブルが巻取られるようになっていてもよい。また、この空洞の内周面に間隔を有するように螺旋状に複数のフックを設けて、光ケーブルがこの複数のフックに順に引っ掛けられながら巻取られるようになっていてもよい。
【0035】
そして、このような他の実施の形態に係るケーブル巻取り装置では、上述した本実施の形態と同様に、そのケーブルガイドが、その巻取り軸線方向の一定長さ部分において巻取り長さ可変機構を備えるようにする。
【0036】
すなわち、ケーブルガイドの空洞を形成する周囲の肉厚部が、この巻取り軸線方向の一定長さ部分において可動部と固定部に分割され、可動部が固定部に近付いたり遠ざかったりすることにより、空洞の内周に巻取る光ケーブルの長さを調節できるようにする。
【0037】
このような他の実施の形態に係るケーブル巻取り装置によっても、上述した本発明の一実施の形態と同様に、ケーブルガイドに光ケーブルを巻取った状態のままで、その巻取り長さを調節できるようにすることができる。
【0038】
また、前記本発明の一実施の形態、及びこの実施の形態と異なる他の実施の形態では、光ケーブルの余長を巻取るためのケーブル巻取り装置に対して本発明を適用した場合について説明したが、光ケーブル以外の他の種類のケーブルを巻取るためのケーブル余長処理装置に対しても、本発明を適用することができることはいうまでもない。
【0039】
また、上述した実施形態では、ケーブルガイドの外周又は内周に係合溝や係合フックなどを設ける構成について説明したが、必ずしもこれら係合溝などを配設する必要はない。
【0040】
また、上述した実施形態では、ケーブルガイドの外周(又は内周)が略円弧状となるように形成された構成について説明したが、略円弧状でなくともケーブルを巻取り可能な形状であればよい。
【0041】
また、本発明のケーブル巻取り装置は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、巻取り軸線方向において巻取り長さを異ならせる巻取り長さ可変機構を有するケーブルガイドを備え、上記実施形態と同様の作用効果を奏するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係るケーブル巻取り装置30を示す図であって、図1(a)はその側面図、図1(b)はその平面図である。
【図2】従来のケーブル巻取り装置2を示す図であって、図2(a)はその側面図、図2(b)は図2(a)におけるケーブル巻取り装置2のA−A線矢視の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
2 ケーブル巻取り装置
4 ケーブルガイド
6 固定巻枠
6a 巻付け面
6b 鍔
8 移動巻枠
8a 巻付け面
8b 鍔
10 レール
12 小ネジ
14 ナット
30 ケーブル巻取り装置
32 基板
34 ケーブルガイド
36 光ケーブル
38 基板側部分
40 端部側部分
42 可動部
42a 係合溝
44 固定部
44a 係合溝
46 支持梁
48 鋸歯形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを外周に巻付けて巻取るケーブルガイド、又は内周に螺旋状に這わせて巻取るケーブルガイドのいずれかを備え、
前記ケーブルガイドは、ケーブルを巻取るときの巻取り軸線方向における一の部分と他の部分のそれぞれに対応する、その外周又は内周の1周当たりのケーブルの巻取り長さを互いに異ならせる巻取り長さ可変機構を有する
ことを特徴とするケーブル巻取り装置。
【請求項2】
前記ケーブルガイドは、前記他の部分に対応する1周当たりのケーブルの巻取り長さが一定であって、前記一の部分に対応する1周当たりのケーブルの巻取り長さが前記巻取り長さ可変機構により変化する
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル巻取り装置。
【請求項3】
前記一の部分は、前記ケーブルガイドの前記巻取り軸線方向の端部に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のケーブル巻取り装置。
【請求項4】
前記巻取り長さ可変機構は、前記一の部分が前記巻取り軸線方向と直角方向に可動部と固定部に分割され、この可動部が固定部に対して相対移動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のケーブル巻取り装置。
【請求項5】
前記ケーブルガイドは、前記一の部分の外周又は内周に前記ケーブルが係合する係合溝が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のケーブル巻取り装置。
【請求項6】
前記ケーブルガイドは、前記外周又は前記内周が略円弧状に形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のケーブル巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−327724(P2006−327724A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150954(P2005−150954)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】