ケーブル搬送装置
【課題】斜張橋を構築時に、張架される前のケーブルが巻き取られたドラムを架設中の橋桁上の所定位置まで効率よく移動させる。
【解決手段】
既に一部が構築された橋桁8上で該橋桁の軸線とほぼ直角方向に2本の横梁1を支持し、先端部を該橋桁の側縁より片持ち状に張り出す。これらの横梁の橋桁の側縁より張り出した部分の上に、橋桁の下方にあるドラムを2本の横梁間で橋桁の上面より高い位置まで吊り上げる吊り上げ装置2を設ける。横梁上には第1の軌道5を敷設し、吊り上げ装置で吊り上げられたドラムの下まで移動してドラムを積載し、横梁上で移動する走行台車3を設ける。走行台車は、横梁上を走行するための第1の車輪と、橋桁の軸線方向に敷設された第2の軌道上を走行するための第2の車輪と、この走行台車を橋桁上で支持し、第1の軌道から第2の軌道上に走行台車を受け換えるための複数のジャッキを有する。
【解決手段】
既に一部が構築された橋桁8上で該橋桁の軸線とほぼ直角方向に2本の横梁1を支持し、先端部を該橋桁の側縁より片持ち状に張り出す。これらの横梁の橋桁の側縁より張り出した部分の上に、橋桁の下方にあるドラムを2本の横梁間で橋桁の上面より高い位置まで吊り上げる吊り上げ装置2を設ける。横梁上には第1の軌道5を敷設し、吊り上げ装置で吊り上げられたドラムの下まで移動してドラムを積載し、横梁上で移動する走行台車3を設ける。走行台車は、横梁上を走行するための第1の車輪と、橋桁の軸線方向に敷設された第2の軌道上を走行するための第2の車輪と、この走行台車を橋桁上で支持し、第1の軌道から第2の軌道上に走行台車を受け換えるための複数のジャッキを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜張橋の桁を架設するときに、斜吊材として用いられるケーブルが巻き取られたドラムを架設中の橋桁上に搬入し、所定の位置に移動させるケーブル搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
斜張橋は、塔から斜めに張架された斜吊材(ケーブル)によって橋桁を吊支持する構造の橋梁であり、橋桁としてはコンクリート桁、鋼桁又はトラスを用いるもの等がある。このような斜張橋で用いられる斜吊材は、一般に鋼線又は鋼より線を束ねたものであり、その外周面には防錆のための措置が必要となる。このため、鋼より線等を保護管で覆い、この保護管内にモルタル又は油脂等を充填したり、あるいは工場で合成樹脂による被覆層が設けられたケーブルを用いる等によって耐久性に優れた斜吊材としている。
【0003】
上記のような斜吊材を塔と橋桁との間に張架する法として、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示される技術では、図7に示すように、塔101に設けられたサドル部103の左右両側に保護管104a,104bをそれぞれ吊支持する。この保護管104aの下端から仮設ワイヤー105を挿入し、保護管104aの上端からサドル部103の鋼管材へ導き、もう一方の保護管104bの上端から挿入して下端から引き出す。この仮設ワイヤー105の一端をドラム106に巻き回されているケーブルに接続し、保護管104及びサドル部103に挿通された仮設ワイヤー105の他端を、ウインチ107等を用いて牽引する。これにより仮設ワイヤー105に所定の引張力を導入するとともにケーブルをドラムから引き出し、保護管104及びサドル部103の鋼管材に挿通する。そして、橋桁102の所定の位置にケーブルの端部を定着し、所定の引張力を導入する。
【0004】
一方、図8に示すように、塔の両側で分割されたケーブルをそれぞれ別途に張架することもできる。この場合も、同様に保護管114を塔111と橋桁112との間に吊り支持し、仮設ワイヤー115を保護管及び塔の定着用孔113に挿通して、ケーブルを引き込む。そして、所定の引張力を導入して塔と橋桁とにそれぞれ端部を定着する。
【0005】
このような斜張橋の構築、特に橋桁がコンクリートで形成される斜張橋の構築は、橋脚を構築した後に塔101,111のコンクリートを順次打ち足して立ち上げていくとともに、橋桁102,112を両側へ所定の長さずつ順次張り出すように形成することにより行うことが多い。そして、この橋桁102,112が所定の長さまで伸長されるごとに、ケーブルが巻き取られたドラム106を所定の位置まで搬送し、塔101,111との間に順次斜吊材を張架している。
【0006】
上記のケーブルが巻き取られたドラム106は、工場等で準備され施工現場まで運搬される。そして、橋桁102,112の上の所定位置まで搬送して据え置かれる。このとき、既に形成された橋桁の上を搬送しなければならない場合が多く、橋桁上で上記ドラム106を移動するために、図9に示すような門型クレーン120を用いることができる。この門型クレーン120は、既に構築された橋桁121上にレール122を敷設し、このレール上を走行するものであり、ケーブルが巻き回されたドラムを吊り支持して橋桁上を移動し、ドラムを搬送するものである。
【特許文献1】特開2000−054321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような技術には次のような問題点がある。
上述のように門型クレーン120を用いてドラムを橋桁上に吊り上げ、そのまま橋桁上を搬送しようとすると、図10に示すように門型クレーン120の主梁120aはドラム124を橋桁121上に吊り上げるために橋桁121の側縁より外側に張り出している必要がある。つまり、構築された橋桁の下まで輸送されたドラム124を橋桁上から吊り上げるともに橋桁上へ移動させるために、巻き揚げ装置123は門型クレーンの主梁120aに沿って橋桁上から橋桁の側縁より外側まで移動が可能としなければならない。このように門型クレーンの主梁120aを橋桁121の側縁より張り出したものとすると、図11に示すように斜吊材126の一部が張架されたときに門型クレーンの主梁120aの張り出し部が斜吊材126と干渉して門型クレーン120の移動が制限されてしまう。主梁の張り出し部120aを可動又は取り外しが可能として斜吊材126との干渉を回避することも考えられるが、門型クレーンの構造及び操作が複雑となり、効率のよい作業が難しくなる。
【0008】
一方、ケーブルが巻き回されたドラムを橋桁上に移動させるために別途クレーンを準備することも考えられるが、門型クレーンの他にクレーンを備えることは仮設費用が嵩むことになるとともに、斜吊材126の一部を塔125と橋桁121との間に張架した後では、この斜吊材がクレーンの動作の障害となって、効率の良い作業を行うことが難しくなることもある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、張架される前のケーブルが巻き取られたドラムを架設中の橋桁上の所定位置まで効率よく移動させるためのケーブル搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 搭上部から斜め下方に張架されたケーブルによって橋桁を吊り支持する橋の架設時に用いられ、張架される前のケーブルが巻き取られたドラムを桁上の所定の位置に移動させるケーブル搬送装置であって、 既に一部が構築された前記橋桁上で該橋桁の軸線とほぼ直角方向に支持され、先端部が該橋桁の側縁より片持ち状に張り出した2本の横梁と、 前記横梁の前記橋桁の側縁より張り出した部分の上に設けられ、該橋桁の下方にある前記ドラムを前記2本の横梁間で前記橋桁の上面より高い位置まで吊り上げる吊り上げ装置と、 前記横梁上を走行し、前記吊り上げ装置で吊り上げられた前記ドラムの下側まで移動して載置された前記ドラムを前記横梁上で移動させる走行台車と、 前記橋桁上で該橋桁の軸線方向に設置され、前記走行台車が走行する軌道と、を有し、 前記走行台車は、前記横梁上を走行するための第1の車輪と、前記軌道上を走行するための第2の車輪と、前記横梁上に前記第1の車輪を介して支持された状態から前記軌道上に前記第2の車輪を介して支持された状態に移行するための切り換え手段とを有するケーブル搬送装置を提供する。
【0011】
このようなケーブル搬送装置では、張架される前のケーブルが巻き回されたドラムを橋桁の下方から橋桁上に、簡単な装置で吊り上げることができるとともに、走行台車の上に載置することができる。そして、走行台車は橋桁上を走行して所定の位置まで容易にドラムを搬送することができる。したがって、橋桁と塔との間に一部のケーブルが張架された後でも、その後に張架するケーブルを巻き回したドラムを、既に張架されたケーブルに阻害されることなく搬送することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
なお、本発明が適用される、「搭上部から斜め下方に張架されたケーブルによって橋桁を吊り支持する橋」は一般に斜張橋と称される形式の橋に代表されるものであるが、塔の高さを低く抑え、橋桁の剛性を大きくして斜め方向のケーブルの傾斜角を小さくした「エクストラドーズド橋」と称される形式等を含むものである。また、これらの形式の変形又は応用等で斜め方向のケーブルを用いて橋桁を支持する橋の架設にも適用することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のケーブル搬送装置において、 前記切り換え手段は、前記走行台車を前記橋桁上に支持して該走行台車の支持位置を上昇及び下降させることができる複数のジャッキを有し、 前記横梁は前記軌道上にまで及ぶものであり、該軌道上の部分が着脱可能となっているものとする。
【0013】
このようなケーブル搬送装置では、走行台車が備える複数のジャッキによって上記走行台車を、ドラムを載置した状態のまま橋桁上に支持することができる。そして、横梁の軌道上にまで及ぶ部分を撤去した後にジャッキを操作し、走行台車の第2の車輪を軌道上に載せることができ、横梁上から軌道に走行台車を容易に受け換えることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のケーブル搬送装置において、 前記第2の車輪の軸受けは、前記走行台車に鉛直軸回りの回転が可能に取り付けられ、 該走行台車は、前記ジャッキで支持された状態で前記第2の車輪を鉛直軸周りに旋回し、異なる方向の軌道に乗せ換えて走行できるものできるものとする。
【0015】
このようなケーブル搬送装置では、橋桁上を走行するための第2の車輪が鉛直軸回りに回転可能となっているので、走行台車をジャッキで一端支持し、第2の軌道と交差する他の軌道上に載せ換えることができる。これにより軌道上を走行した後に、他の方向に敷設された軌道にドラムを載置したままの走行台車を乗せ換え、所定の位置まで容易に移動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本願発明に係るケーブル搬送装置では、張架される前の斜材ケーブルが巻き取られているドラムを簡単な装置で橋桁上へ吊り上げ、走行台車上に載置することができる。そして、走行台車は軌道上を走行して所定の位置まで移動することができ、既に張架されている斜吊材に阻害されることなく、ケーブルが巻き取られたドラムを効率よく搬送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係るケーブル搬送装置の概略を示す正面図であり、図2は、図1に示すケーブル搬送装置の概略側面図である。また、図3は同じケーブル搬送装置の概略平面図であり、ケーブル搬送装置による斜吊材の移動経路を示す図である。
このケーブル搬送装置は、斜張橋の架設時において、図2に示すように既に張架された斜吊材9が障害とならないように張架する前の斜吊材が巻き取られたドラム4を、橋桁8上の所定の位置に移動するために用いられるものである。本実施の形態では、塔の近くで架設中の橋桁8の下方までトラック等に載置して搬入されたドラム4を橋桁8の側縁より外側で吊り上げ、橋桁上を所定の位置つまり斜吊材が橋桁に定着される位置付近まで搬送するために用いられるものである。
【0018】
このケーブル搬送装置は、橋脚上から所定の長さの施工ブロック毎の張り出し架設された橋桁8の上に設置されており、この橋桁8の軸線に対してほぼ直角方向に支持されて先端部が該橋桁8の側縁より片持ち状に張り出した二つの横梁1と、この横梁1の張り出し部1aの上に支持され、架設前の斜吊材が巻き取られているドラム4を上記横梁1の上方に吊り上げる吊り上げ装置2と、上記吊り上げ装置2により吊り上げられたドラム4が載荷されて所定の位置まで移動する走行台車3とで主要部が構成されている。
【0019】
さらに、上記ケーブル搬送装置は、走行台車3を所定の位置まで移動させるための走行経路に、上記横梁1に支持され、走行台車3を横梁1に沿って走行させるための第1の軌道5と、上記橋桁8上に支持され、第1の軌道5上に載置されている走行台車3を受け換えて所定の位置まで走行させるための第2の軌道6と、この第2の軌道6上にある走行台車3を受け換えて所定の位置まで走行させるための第3の軌道7とを有している。
【0020】
上記横梁1は鋼からなり、橋桁8の軸線方向に上記ドラム4が通過できる間隔をおいて2組が該橋桁8の軸線とほぼ直角方向に配置されている。そして、この横梁1は、台座11を介して橋桁8上に支持され、一方の端部が該橋桁8の側縁より張り出している。また、この横梁1の後方部は、アンカー12によって橋桁8に結合されている。これにより上記張り出し部1aに荷重が作用したときの上揚力に抵抗するものとなっている。また、他端付近の所定長の範囲は、取外しが可能な受け換え部1bとなっており、この部分において第1の軌道から第2の軌道に走行台車3を受け換えることができるものとしている。
【0021】
2つの横梁1は、連結部材13によって結合されて間隔を一定に維持するとともに、横梁1の横方向への転倒を防止するように拘束している。また、図3に示すように水平面内においてこれらの横梁の軸線に対して斜め方向に斜材14を設け、二つの横梁が軸線方向に相対的に移動するのを拘束するものとしている。
これらの横梁1の上には、張り出し部1aから受け換え部1bにわたって第1の軌道5を構成するレールがそれぞれ敷設され、走行台車3が張り出し部1aから受け換え部1bまで走行可能となっている。
【0022】
上記横梁1の張り出し部1aの上には、張架する前の斜吊材が巻き取られているドラム4を吊り上げるための吊り上げ装置2が支持されている。この吊り上げ装置により橋桁8より下方にあるドラム4を吊り上げ、2つの横梁1の間を通過させて横梁1の上面よりさらに上方にドラム4を引き揚げることができるものとなっている。
【0023】
上記アンカー12には鋼棒が用いられており、一端が橋桁8を構成するコンクリート中に埋め込まれ、端部に係止されたナット及び鋼プレートとによって橋桁8から抜け出さないように強固に固定されている。そして、他端にはナットによって横梁1に係止されて、横梁1の後方がが張り出し部1aの荷重によって上方に跳ね上げられないように拘束している。
【0024】
上記受け換え部1bは、横梁1の後方部を延長するように部材を継ぎ足すことによって形成されており、この部分は張り出し部1a及びアンカーが設けられた部分より部材の断面が小さくなっている。そして、この部分は橋桁8上に敷設された第2の軌道6の上方に及び、継ぎ足された部材が着脱が可能となっている。
【0025】
上記吊り上げ装置2は、上記横梁の張出部1aに支持された門型の架台21と、この架台21の上に据え付けられた巻き揚げ機22とを備えている。架台21は横梁の張り出し部1aの上に立設された複数の支柱21aと、これらの頂部に架け渡された横部材21bとで主要部が構成されており、横部材21bに巻き揚げ機22が支持されている。巻き揚げ機22は、張り出し部1bの下方に搬入されたドラム4にフックを係止し、滑車を用いてワイヤをウインチで巻き上げることによってドラム4を吊り上げ、2つの横梁1の間でこれらの横梁1より高い位置まで上昇させることができるものである。
【0026】
図4は、架設前の斜吊材が巻き取られたドラム4を積載して走行する走行台車の概略側面図である。そして、図5は、同じ走行台車の概略正面図であり、図6は、同じ走行車両の概略平面図である。
この走行台車3は、上記横梁1上の第1の軌道5を走行するための第1の車輪31と、橋桁8上に敷設された第2の軌道6を走行するための第2の車輪32と、第1の車輪又は第2の車輪のいずれによっても支持することができる枠体33と、橋桁上に下端面を当接して上記枠体33を橋桁8上に支持し、この枠体33の支持位置を上昇又は下降させる複数のジャッキ34と、上記枠体33に支持されてドラム4が載置される荷台35とで主要部が構成されている。
【0027】
上記第1の車輪31は、第2の車輪32よりも枠体33の上部に取り付けられており、横梁1上に敷設されている第1の軌道5上を走行するときには、第2の車輪32を第2の軌道6の上面より高い位置に支持するものとなっている。この第1の車輪31は、図5に示すように第1の軌道5の2本のレールに対してそれぞれ4輪で枠体33を支持するものとなっている。
【0028】
上記第2の車輪32は、枠体33を支持して第2の軌道6上を走行できる位置に取り付けられるとともに、鉛直軸周りに旋回が可能となっている。つまりジャッキ34によって枠体33を橋桁8上で支持した状態で車輪の回転軸の方向を変更し、第2の軌道6と異なる方向に敷設された第3の軌道7上に受け換えることができるものとなっている。そして、それぞれの軌道の方向に調整した状態で、鉛直軸周りの旋回が生じないようにロックする機構を備えている。
【0029】
上記ジャッキ34は、枠体33の平面方向のおける4隅付近にそれぞれ設けられ、上部が枠体33に結合されている。そして、ジャッキの下面を橋桁8に当接し、ロッドを伸長して枠体33を上昇させて安定した状態で支持することができるものである。
【0030】
上記荷台35は枠体33上に設けられており、水平な支持軸周りに回転が可能な4つのローラ36が平行に支持されている。ドラム4はこれらのローラ上に安定した状態で載置することができるとともに、4つのローラ36が回転することによってドラム4を周方向に回転して巻き取られている斜吊材を引き出すことができるものである。
【0031】
上記第1の軌道5は、横梁1に支持され、該横梁1の軸線方向に張り出し部1bから後方の受け換え部1bまで走行台車3が走行可能となるように設けられている。また、受け換え部で1bは、横梁1とともに取り外し又は装着が可能なものとなっている。
【0032】
上記第2の軌道6は、上記橋桁8に支持され、該橋桁8の軸線方向に敷設されている。そして、上記横梁1の受け換え部1bの直下を通過しており、受け換え部1bの着脱が可能となった部材を取りはずすことによって走行台車3がこの位置から第2の軌道6上に置き換えられて、この第2の軌道6上を走行することができるものとなっている。
【0033】
上記第3の軌道7は、上記橋桁8に支持され、該橋桁8の軸線とほぼ直角に設置されており、第2の軌道6とほぼ同じ高さに敷設されて交差している。この交差部は、第2の軌道上を走行する走行台車3がこの第2の軌道6に沿って進入及び退行することができるものとなっており、第3の軌道7上に受け換えられた走行台車3も、第3の軌道上を走行してこの交差部に進入又は退行することができるものとなっている。
この第3の軌道7は、走行台車3を橋桁8の側縁付近まで移動させるために敷設されている。斜張橋の斜吊材9を橋桁8の両側部に定着するときには、斜吊材が巻き取られたドラム4を架設中の橋桁8の側縁付近に据え置き、このドラム4から斜吊材を引き出すことによって、塔との間に斜吊材を張架する作業及び橋桁の側部に斜吊材の端部を定着する作業が容易となる。
【0034】
次に、上記ケーブル搬送装置による斜吊材の搬送工程について説明する。
吊り上げ装置2の下方に張架する前の斜吊材が巻き取られたドラム4をトラック等によって搬入し、該吊り上げ装置2のフックにワイヤ及び吊り上げ枠等を介してドラム4を係止する。このとき、走行台車3は、横梁1上で張り出し部1bより後退した位置に待機させている。上記ドラム4を巻き揚げ機22によって巻き揚げることで、上記ドラム4は2つの横梁1の間で横梁より上方に吊り上げられる。
【0035】
そして、上記ドラム4の下方に、横梁上に待機させておいた走行台車3を移動させ、上記巻き揚げ機22を巻き戻してドラム4を走行台車3の荷台上にローラー36を介して載置する。上記ドラム4を載置する方向は、巻き取られている斜吊材を引き出して橋桁8と塔との間に張架し易い方向に予め決定されている。ドラム4が載置された走行台車3は、第1の軌道5上を走行し、橋桁8上の受け換え部1bまで移動する。
【0036】
上記ドラム4を積載した走行台車3は、受け換え部1bつまり第2の軌道6の上方で停止され、ジャッキ33を下方に伸長して走行台車3を橋桁8の上面で支持する。これによって、第1の軌道5及び横梁1には、走行台車3の重量が作用しない状態とされる。そして、横梁の受け換え部1bを取りはずし、ジャッキ33の操作によって走行台車3を下降させる。これにより第2の車輪32を第2の軌道6上に載置することができる。
【0037】
第2の軌道6上に載置された走行台車3は、第2の車輪32によって第2の軌道6上を橋桁8の軸線方向に走行し、片持ち状に架設中の橋桁8の先端付近まで搬送される。横梁1が設けられた位置から橋桁8の先端付近までには、既に塔と橋桁8との間に斜吊材9が張架されているが、ドラム4を載荷した走行台車3が橋桁8上の第2の軌道6を走行することにより、既に張架された斜吊材9等に阻害されることなく、ドラム4を橋桁8の先端付近まで迅速に効率よく搬送することができる。
【0038】
第3の軌道7は、片持ち状に張り出した架設中の橋桁8の先端付近に設けられており、第2の軌道6がこの第3の軌道7と交差する位置の直上で走行台車3が停止される。そして、ジャッキ33により走行台車3を支持して第2の軌道6より上方に持ち上げられる。この状態で第2の車輪32の支持軸が、鉛直軸の回転によって水平方向に旋回し、第3の軌道7の方向に調整される。そして、ジャッキ33の操作によって走行台車3が下降され、第3の軌道7上の走行が可能に載置される。これにより、走行台車3は第2の車輪32によって第3の軌道7上を走行し、橋桁8の側縁近くの所定の位置に移動する。
このように、片持ち状に張り出した橋桁8の先端付近までドラム4が搬送されることにより、この位置で斜吊材をドラム4から引き出し、効率よく塔と橋桁8との間に張架することが可能となる。
【0039】
なお、本発明におけるケーブル搬送装置では、最終的に走行台車が第3の軌道7を移動して所定の位置までドラム4を搬送しているが、第2の軌道6によって所定の位置に到達可能であるときには第3の軌道7を設ける必要はない。一方、第4の軌道、第5の軌道と走行台車3の到達地点に合わせてさらに軌道を設置してもよい。また、上記走行台車3の移動経路であるそれぞれの軌道は、ドラム4を積載した走行台車3が、既設の斜吊材9やその他の設備と接触せず、所定の位置まで円滑に移動可能な経路となるように設置されているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願発明に係るケーブル搬送装置の概略正面図である。
【図2】図1に示すケーブル搬送装置の概略側面図である。
【図3】図1に示すケーブル搬送装置の概略平面図であり、ケーブル搬送装置による斜吊材の移動経路を示す図である。
【図4】図1に示すケーブル搬送装置で用いられる走行台車の概略側面図である。
【図5】図4に示す走行台車の概略正面図である。
【図6】図4に示す走行台車の概略平面図である。
【図7】斜張橋の架設時において斜吊材を張架する方法の一例を示す概略図である。
【図8】斜張橋の架設時において斜吊材を張架する方法の他の例を示す概略図である。
【図9】張架する前の斜吊材を架設中の橋桁上で搬送することができる門型クレーンを示す概略図である。
【図10】図10に示す門型クレーンで張架する前の斜吊材を橋桁上に吊り上げる状態を示す概略図である。
【図11】架設中の斜張橋における既に張架された斜吊材を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1:横梁、 1a:張り出し部、 1b:受け換え部、 2:吊り上げ装置、 3:走行台車、 4:ドラム、 5:第1の軌道、 6:第2の軌道、 7:第3の軌道、 8:橋桁、 9:既に張架された斜吊材、
11:台座、 12:アンカー、 13:連結材、 14:斜材、
21:架台、 21a:支柱、 21b横部材、 22:巻き揚げ機、
31:第1の車輪、 32:第2の車輪、 33:枠体、 34:ジャッキ、 35:荷台、 36:ローラー、
101,111:塔、 102,112:橋桁、 103:サドル部、 104,114:保護管、 105,115:仮設ワイヤー、 106:ドラム、 107:ウインチ、 113:定着用孔、
120:門型クレーン、 121:橋桁、 122:レール、 123:巻き揚げ機、 124:ドラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜張橋の桁を架設するときに、斜吊材として用いられるケーブルが巻き取られたドラムを架設中の橋桁上に搬入し、所定の位置に移動させるケーブル搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
斜張橋は、塔から斜めに張架された斜吊材(ケーブル)によって橋桁を吊支持する構造の橋梁であり、橋桁としてはコンクリート桁、鋼桁又はトラスを用いるもの等がある。このような斜張橋で用いられる斜吊材は、一般に鋼線又は鋼より線を束ねたものであり、その外周面には防錆のための措置が必要となる。このため、鋼より線等を保護管で覆い、この保護管内にモルタル又は油脂等を充填したり、あるいは工場で合成樹脂による被覆層が設けられたケーブルを用いる等によって耐久性に優れた斜吊材としている。
【0003】
上記のような斜吊材を塔と橋桁との間に張架する法として、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示される技術では、図7に示すように、塔101に設けられたサドル部103の左右両側に保護管104a,104bをそれぞれ吊支持する。この保護管104aの下端から仮設ワイヤー105を挿入し、保護管104aの上端からサドル部103の鋼管材へ導き、もう一方の保護管104bの上端から挿入して下端から引き出す。この仮設ワイヤー105の一端をドラム106に巻き回されているケーブルに接続し、保護管104及びサドル部103に挿通された仮設ワイヤー105の他端を、ウインチ107等を用いて牽引する。これにより仮設ワイヤー105に所定の引張力を導入するとともにケーブルをドラムから引き出し、保護管104及びサドル部103の鋼管材に挿通する。そして、橋桁102の所定の位置にケーブルの端部を定着し、所定の引張力を導入する。
【0004】
一方、図8に示すように、塔の両側で分割されたケーブルをそれぞれ別途に張架することもできる。この場合も、同様に保護管114を塔111と橋桁112との間に吊り支持し、仮設ワイヤー115を保護管及び塔の定着用孔113に挿通して、ケーブルを引き込む。そして、所定の引張力を導入して塔と橋桁とにそれぞれ端部を定着する。
【0005】
このような斜張橋の構築、特に橋桁がコンクリートで形成される斜張橋の構築は、橋脚を構築した後に塔101,111のコンクリートを順次打ち足して立ち上げていくとともに、橋桁102,112を両側へ所定の長さずつ順次張り出すように形成することにより行うことが多い。そして、この橋桁102,112が所定の長さまで伸長されるごとに、ケーブルが巻き取られたドラム106を所定の位置まで搬送し、塔101,111との間に順次斜吊材を張架している。
【0006】
上記のケーブルが巻き取られたドラム106は、工場等で準備され施工現場まで運搬される。そして、橋桁102,112の上の所定位置まで搬送して据え置かれる。このとき、既に形成された橋桁の上を搬送しなければならない場合が多く、橋桁上で上記ドラム106を移動するために、図9に示すような門型クレーン120を用いることができる。この門型クレーン120は、既に構築された橋桁121上にレール122を敷設し、このレール上を走行するものであり、ケーブルが巻き回されたドラムを吊り支持して橋桁上を移動し、ドラムを搬送するものである。
【特許文献1】特開2000−054321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような技術には次のような問題点がある。
上述のように門型クレーン120を用いてドラムを橋桁上に吊り上げ、そのまま橋桁上を搬送しようとすると、図10に示すように門型クレーン120の主梁120aはドラム124を橋桁121上に吊り上げるために橋桁121の側縁より外側に張り出している必要がある。つまり、構築された橋桁の下まで輸送されたドラム124を橋桁上から吊り上げるともに橋桁上へ移動させるために、巻き揚げ装置123は門型クレーンの主梁120aに沿って橋桁上から橋桁の側縁より外側まで移動が可能としなければならない。このように門型クレーンの主梁120aを橋桁121の側縁より張り出したものとすると、図11に示すように斜吊材126の一部が張架されたときに門型クレーンの主梁120aの張り出し部が斜吊材126と干渉して門型クレーン120の移動が制限されてしまう。主梁の張り出し部120aを可動又は取り外しが可能として斜吊材126との干渉を回避することも考えられるが、門型クレーンの構造及び操作が複雑となり、効率のよい作業が難しくなる。
【0008】
一方、ケーブルが巻き回されたドラムを橋桁上に移動させるために別途クレーンを準備することも考えられるが、門型クレーンの他にクレーンを備えることは仮設費用が嵩むことになるとともに、斜吊材126の一部を塔125と橋桁121との間に張架した後では、この斜吊材がクレーンの動作の障害となって、効率の良い作業を行うことが難しくなることもある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、張架される前のケーブルが巻き取られたドラムを架設中の橋桁上の所定位置まで効率よく移動させるためのケーブル搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 搭上部から斜め下方に張架されたケーブルによって橋桁を吊り支持する橋の架設時に用いられ、張架される前のケーブルが巻き取られたドラムを桁上の所定の位置に移動させるケーブル搬送装置であって、 既に一部が構築された前記橋桁上で該橋桁の軸線とほぼ直角方向に支持され、先端部が該橋桁の側縁より片持ち状に張り出した2本の横梁と、 前記横梁の前記橋桁の側縁より張り出した部分の上に設けられ、該橋桁の下方にある前記ドラムを前記2本の横梁間で前記橋桁の上面より高い位置まで吊り上げる吊り上げ装置と、 前記横梁上を走行し、前記吊り上げ装置で吊り上げられた前記ドラムの下側まで移動して載置された前記ドラムを前記横梁上で移動させる走行台車と、 前記橋桁上で該橋桁の軸線方向に設置され、前記走行台車が走行する軌道と、を有し、 前記走行台車は、前記横梁上を走行するための第1の車輪と、前記軌道上を走行するための第2の車輪と、前記横梁上に前記第1の車輪を介して支持された状態から前記軌道上に前記第2の車輪を介して支持された状態に移行するための切り換え手段とを有するケーブル搬送装置を提供する。
【0011】
このようなケーブル搬送装置では、張架される前のケーブルが巻き回されたドラムを橋桁の下方から橋桁上に、簡単な装置で吊り上げることができるとともに、走行台車の上に載置することができる。そして、走行台車は橋桁上を走行して所定の位置まで容易にドラムを搬送することができる。したがって、橋桁と塔との間に一部のケーブルが張架された後でも、その後に張架するケーブルを巻き回したドラムを、既に張架されたケーブルに阻害されることなく搬送することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
なお、本発明が適用される、「搭上部から斜め下方に張架されたケーブルによって橋桁を吊り支持する橋」は一般に斜張橋と称される形式の橋に代表されるものであるが、塔の高さを低く抑え、橋桁の剛性を大きくして斜め方向のケーブルの傾斜角を小さくした「エクストラドーズド橋」と称される形式等を含むものである。また、これらの形式の変形又は応用等で斜め方向のケーブルを用いて橋桁を支持する橋の架設にも適用することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のケーブル搬送装置において、 前記切り換え手段は、前記走行台車を前記橋桁上に支持して該走行台車の支持位置を上昇及び下降させることができる複数のジャッキを有し、 前記横梁は前記軌道上にまで及ぶものであり、該軌道上の部分が着脱可能となっているものとする。
【0013】
このようなケーブル搬送装置では、走行台車が備える複数のジャッキによって上記走行台車を、ドラムを載置した状態のまま橋桁上に支持することができる。そして、横梁の軌道上にまで及ぶ部分を撤去した後にジャッキを操作し、走行台車の第2の車輪を軌道上に載せることができ、横梁上から軌道に走行台車を容易に受け換えることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のケーブル搬送装置において、 前記第2の車輪の軸受けは、前記走行台車に鉛直軸回りの回転が可能に取り付けられ、 該走行台車は、前記ジャッキで支持された状態で前記第2の車輪を鉛直軸周りに旋回し、異なる方向の軌道に乗せ換えて走行できるものできるものとする。
【0015】
このようなケーブル搬送装置では、橋桁上を走行するための第2の車輪が鉛直軸回りに回転可能となっているので、走行台車をジャッキで一端支持し、第2の軌道と交差する他の軌道上に載せ換えることができる。これにより軌道上を走行した後に、他の方向に敷設された軌道にドラムを載置したままの走行台車を乗せ換え、所定の位置まで容易に移動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本願発明に係るケーブル搬送装置では、張架される前の斜材ケーブルが巻き取られているドラムを簡単な装置で橋桁上へ吊り上げ、走行台車上に載置することができる。そして、走行台車は軌道上を走行して所定の位置まで移動することができ、既に張架されている斜吊材に阻害されることなく、ケーブルが巻き取られたドラムを効率よく搬送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係るケーブル搬送装置の概略を示す正面図であり、図2は、図1に示すケーブル搬送装置の概略側面図である。また、図3は同じケーブル搬送装置の概略平面図であり、ケーブル搬送装置による斜吊材の移動経路を示す図である。
このケーブル搬送装置は、斜張橋の架設時において、図2に示すように既に張架された斜吊材9が障害とならないように張架する前の斜吊材が巻き取られたドラム4を、橋桁8上の所定の位置に移動するために用いられるものである。本実施の形態では、塔の近くで架設中の橋桁8の下方までトラック等に載置して搬入されたドラム4を橋桁8の側縁より外側で吊り上げ、橋桁上を所定の位置つまり斜吊材が橋桁に定着される位置付近まで搬送するために用いられるものである。
【0018】
このケーブル搬送装置は、橋脚上から所定の長さの施工ブロック毎の張り出し架設された橋桁8の上に設置されており、この橋桁8の軸線に対してほぼ直角方向に支持されて先端部が該橋桁8の側縁より片持ち状に張り出した二つの横梁1と、この横梁1の張り出し部1aの上に支持され、架設前の斜吊材が巻き取られているドラム4を上記横梁1の上方に吊り上げる吊り上げ装置2と、上記吊り上げ装置2により吊り上げられたドラム4が載荷されて所定の位置まで移動する走行台車3とで主要部が構成されている。
【0019】
さらに、上記ケーブル搬送装置は、走行台車3を所定の位置まで移動させるための走行経路に、上記横梁1に支持され、走行台車3を横梁1に沿って走行させるための第1の軌道5と、上記橋桁8上に支持され、第1の軌道5上に載置されている走行台車3を受け換えて所定の位置まで走行させるための第2の軌道6と、この第2の軌道6上にある走行台車3を受け換えて所定の位置まで走行させるための第3の軌道7とを有している。
【0020】
上記横梁1は鋼からなり、橋桁8の軸線方向に上記ドラム4が通過できる間隔をおいて2組が該橋桁8の軸線とほぼ直角方向に配置されている。そして、この横梁1は、台座11を介して橋桁8上に支持され、一方の端部が該橋桁8の側縁より張り出している。また、この横梁1の後方部は、アンカー12によって橋桁8に結合されている。これにより上記張り出し部1aに荷重が作用したときの上揚力に抵抗するものとなっている。また、他端付近の所定長の範囲は、取外しが可能な受け換え部1bとなっており、この部分において第1の軌道から第2の軌道に走行台車3を受け換えることができるものとしている。
【0021】
2つの横梁1は、連結部材13によって結合されて間隔を一定に維持するとともに、横梁1の横方向への転倒を防止するように拘束している。また、図3に示すように水平面内においてこれらの横梁の軸線に対して斜め方向に斜材14を設け、二つの横梁が軸線方向に相対的に移動するのを拘束するものとしている。
これらの横梁1の上には、張り出し部1aから受け換え部1bにわたって第1の軌道5を構成するレールがそれぞれ敷設され、走行台車3が張り出し部1aから受け換え部1bまで走行可能となっている。
【0022】
上記横梁1の張り出し部1aの上には、張架する前の斜吊材が巻き取られているドラム4を吊り上げるための吊り上げ装置2が支持されている。この吊り上げ装置により橋桁8より下方にあるドラム4を吊り上げ、2つの横梁1の間を通過させて横梁1の上面よりさらに上方にドラム4を引き揚げることができるものとなっている。
【0023】
上記アンカー12には鋼棒が用いられており、一端が橋桁8を構成するコンクリート中に埋め込まれ、端部に係止されたナット及び鋼プレートとによって橋桁8から抜け出さないように強固に固定されている。そして、他端にはナットによって横梁1に係止されて、横梁1の後方がが張り出し部1aの荷重によって上方に跳ね上げられないように拘束している。
【0024】
上記受け換え部1bは、横梁1の後方部を延長するように部材を継ぎ足すことによって形成されており、この部分は張り出し部1a及びアンカーが設けられた部分より部材の断面が小さくなっている。そして、この部分は橋桁8上に敷設された第2の軌道6の上方に及び、継ぎ足された部材が着脱が可能となっている。
【0025】
上記吊り上げ装置2は、上記横梁の張出部1aに支持された門型の架台21と、この架台21の上に据え付けられた巻き揚げ機22とを備えている。架台21は横梁の張り出し部1aの上に立設された複数の支柱21aと、これらの頂部に架け渡された横部材21bとで主要部が構成されており、横部材21bに巻き揚げ機22が支持されている。巻き揚げ機22は、張り出し部1bの下方に搬入されたドラム4にフックを係止し、滑車を用いてワイヤをウインチで巻き上げることによってドラム4を吊り上げ、2つの横梁1の間でこれらの横梁1より高い位置まで上昇させることができるものである。
【0026】
図4は、架設前の斜吊材が巻き取られたドラム4を積載して走行する走行台車の概略側面図である。そして、図5は、同じ走行台車の概略正面図であり、図6は、同じ走行車両の概略平面図である。
この走行台車3は、上記横梁1上の第1の軌道5を走行するための第1の車輪31と、橋桁8上に敷設された第2の軌道6を走行するための第2の車輪32と、第1の車輪又は第2の車輪のいずれによっても支持することができる枠体33と、橋桁上に下端面を当接して上記枠体33を橋桁8上に支持し、この枠体33の支持位置を上昇又は下降させる複数のジャッキ34と、上記枠体33に支持されてドラム4が載置される荷台35とで主要部が構成されている。
【0027】
上記第1の車輪31は、第2の車輪32よりも枠体33の上部に取り付けられており、横梁1上に敷設されている第1の軌道5上を走行するときには、第2の車輪32を第2の軌道6の上面より高い位置に支持するものとなっている。この第1の車輪31は、図5に示すように第1の軌道5の2本のレールに対してそれぞれ4輪で枠体33を支持するものとなっている。
【0028】
上記第2の車輪32は、枠体33を支持して第2の軌道6上を走行できる位置に取り付けられるとともに、鉛直軸周りに旋回が可能となっている。つまりジャッキ34によって枠体33を橋桁8上で支持した状態で車輪の回転軸の方向を変更し、第2の軌道6と異なる方向に敷設された第3の軌道7上に受け換えることができるものとなっている。そして、それぞれの軌道の方向に調整した状態で、鉛直軸周りの旋回が生じないようにロックする機構を備えている。
【0029】
上記ジャッキ34は、枠体33の平面方向のおける4隅付近にそれぞれ設けられ、上部が枠体33に結合されている。そして、ジャッキの下面を橋桁8に当接し、ロッドを伸長して枠体33を上昇させて安定した状態で支持することができるものである。
【0030】
上記荷台35は枠体33上に設けられており、水平な支持軸周りに回転が可能な4つのローラ36が平行に支持されている。ドラム4はこれらのローラ上に安定した状態で載置することができるとともに、4つのローラ36が回転することによってドラム4を周方向に回転して巻き取られている斜吊材を引き出すことができるものである。
【0031】
上記第1の軌道5は、横梁1に支持され、該横梁1の軸線方向に張り出し部1bから後方の受け換え部1bまで走行台車3が走行可能となるように設けられている。また、受け換え部で1bは、横梁1とともに取り外し又は装着が可能なものとなっている。
【0032】
上記第2の軌道6は、上記橋桁8に支持され、該橋桁8の軸線方向に敷設されている。そして、上記横梁1の受け換え部1bの直下を通過しており、受け換え部1bの着脱が可能となった部材を取りはずすことによって走行台車3がこの位置から第2の軌道6上に置き換えられて、この第2の軌道6上を走行することができるものとなっている。
【0033】
上記第3の軌道7は、上記橋桁8に支持され、該橋桁8の軸線とほぼ直角に設置されており、第2の軌道6とほぼ同じ高さに敷設されて交差している。この交差部は、第2の軌道上を走行する走行台車3がこの第2の軌道6に沿って進入及び退行することができるものとなっており、第3の軌道7上に受け換えられた走行台車3も、第3の軌道上を走行してこの交差部に進入又は退行することができるものとなっている。
この第3の軌道7は、走行台車3を橋桁8の側縁付近まで移動させるために敷設されている。斜張橋の斜吊材9を橋桁8の両側部に定着するときには、斜吊材が巻き取られたドラム4を架設中の橋桁8の側縁付近に据え置き、このドラム4から斜吊材を引き出すことによって、塔との間に斜吊材を張架する作業及び橋桁の側部に斜吊材の端部を定着する作業が容易となる。
【0034】
次に、上記ケーブル搬送装置による斜吊材の搬送工程について説明する。
吊り上げ装置2の下方に張架する前の斜吊材が巻き取られたドラム4をトラック等によって搬入し、該吊り上げ装置2のフックにワイヤ及び吊り上げ枠等を介してドラム4を係止する。このとき、走行台車3は、横梁1上で張り出し部1bより後退した位置に待機させている。上記ドラム4を巻き揚げ機22によって巻き揚げることで、上記ドラム4は2つの横梁1の間で横梁より上方に吊り上げられる。
【0035】
そして、上記ドラム4の下方に、横梁上に待機させておいた走行台車3を移動させ、上記巻き揚げ機22を巻き戻してドラム4を走行台車3の荷台上にローラー36を介して載置する。上記ドラム4を載置する方向は、巻き取られている斜吊材を引き出して橋桁8と塔との間に張架し易い方向に予め決定されている。ドラム4が載置された走行台車3は、第1の軌道5上を走行し、橋桁8上の受け換え部1bまで移動する。
【0036】
上記ドラム4を積載した走行台車3は、受け換え部1bつまり第2の軌道6の上方で停止され、ジャッキ33を下方に伸長して走行台車3を橋桁8の上面で支持する。これによって、第1の軌道5及び横梁1には、走行台車3の重量が作用しない状態とされる。そして、横梁の受け換え部1bを取りはずし、ジャッキ33の操作によって走行台車3を下降させる。これにより第2の車輪32を第2の軌道6上に載置することができる。
【0037】
第2の軌道6上に載置された走行台車3は、第2の車輪32によって第2の軌道6上を橋桁8の軸線方向に走行し、片持ち状に架設中の橋桁8の先端付近まで搬送される。横梁1が設けられた位置から橋桁8の先端付近までには、既に塔と橋桁8との間に斜吊材9が張架されているが、ドラム4を載荷した走行台車3が橋桁8上の第2の軌道6を走行することにより、既に張架された斜吊材9等に阻害されることなく、ドラム4を橋桁8の先端付近まで迅速に効率よく搬送することができる。
【0038】
第3の軌道7は、片持ち状に張り出した架設中の橋桁8の先端付近に設けられており、第2の軌道6がこの第3の軌道7と交差する位置の直上で走行台車3が停止される。そして、ジャッキ33により走行台車3を支持して第2の軌道6より上方に持ち上げられる。この状態で第2の車輪32の支持軸が、鉛直軸の回転によって水平方向に旋回し、第3の軌道7の方向に調整される。そして、ジャッキ33の操作によって走行台車3が下降され、第3の軌道7上の走行が可能に載置される。これにより、走行台車3は第2の車輪32によって第3の軌道7上を走行し、橋桁8の側縁近くの所定の位置に移動する。
このように、片持ち状に張り出した橋桁8の先端付近までドラム4が搬送されることにより、この位置で斜吊材をドラム4から引き出し、効率よく塔と橋桁8との間に張架することが可能となる。
【0039】
なお、本発明におけるケーブル搬送装置では、最終的に走行台車が第3の軌道7を移動して所定の位置までドラム4を搬送しているが、第2の軌道6によって所定の位置に到達可能であるときには第3の軌道7を設ける必要はない。一方、第4の軌道、第5の軌道と走行台車3の到達地点に合わせてさらに軌道を設置してもよい。また、上記走行台車3の移動経路であるそれぞれの軌道は、ドラム4を積載した走行台車3が、既設の斜吊材9やその他の設備と接触せず、所定の位置まで円滑に移動可能な経路となるように設置されているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願発明に係るケーブル搬送装置の概略正面図である。
【図2】図1に示すケーブル搬送装置の概略側面図である。
【図3】図1に示すケーブル搬送装置の概略平面図であり、ケーブル搬送装置による斜吊材の移動経路を示す図である。
【図4】図1に示すケーブル搬送装置で用いられる走行台車の概略側面図である。
【図5】図4に示す走行台車の概略正面図である。
【図6】図4に示す走行台車の概略平面図である。
【図7】斜張橋の架設時において斜吊材を張架する方法の一例を示す概略図である。
【図8】斜張橋の架設時において斜吊材を張架する方法の他の例を示す概略図である。
【図9】張架する前の斜吊材を架設中の橋桁上で搬送することができる門型クレーンを示す概略図である。
【図10】図10に示す門型クレーンで張架する前の斜吊材を橋桁上に吊り上げる状態を示す概略図である。
【図11】架設中の斜張橋における既に張架された斜吊材を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1:横梁、 1a:張り出し部、 1b:受け換え部、 2:吊り上げ装置、 3:走行台車、 4:ドラム、 5:第1の軌道、 6:第2の軌道、 7:第3の軌道、 8:橋桁、 9:既に張架された斜吊材、
11:台座、 12:アンカー、 13:連結材、 14:斜材、
21:架台、 21a:支柱、 21b横部材、 22:巻き揚げ機、
31:第1の車輪、 32:第2の車輪、 33:枠体、 34:ジャッキ、 35:荷台、 36:ローラー、
101,111:塔、 102,112:橋桁、 103:サドル部、 104,114:保護管、 105,115:仮設ワイヤー、 106:ドラム、 107:ウインチ、 113:定着用孔、
120:門型クレーン、 121:橋桁、 122:レール、 123:巻き揚げ機、 124:ドラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭上部から斜め下方に張架されたケーブルによって橋桁を吊り支持する橋の架設時に用いられ、張架される前のケーブルが巻き取られたドラムを桁上の所定の位置に移動させるケーブル搬送装置であって、
既に一部が構築された前記橋桁上で該橋桁の軸線とほぼ直角方向に支持され、先端部が該橋桁の側縁より片持ち状に張り出した2本の横梁と、
前記横梁の前記橋桁の側縁より張り出した部分の上に設けられ、該橋桁の下方にある前記ドラムを前記2本の横梁間で前記橋桁の上面より高い位置まで吊り上げる吊り上げ装置と、
前記横梁上を走行し、前記吊り上げ装置で吊り上げられた前記ドラムの下側まで移動して載置された前記ドラムを前記横梁上で移動させる走行台車と、
前記橋桁上で該橋桁の軸線方向に設置され、前記走行台車が走行する軌道と、を有し、
前記走行台車は、前記横梁上を走行するための第1の車輪と、前記軌道上を走行するための第2の車輪と、前記横梁上に前記第1の車輪を介して支持された状態から前記軌道上に前記第2の車輪を介して支持された状態に移行するための切り換え手段とを有することを特徴とするケーブル搬送装置。
【請求項2】
前記切り換え手段は、前記走行台車を前記橋桁上に支持して該走行台車の支持位置を上昇及び下降させることができる複数のジャッキを有し、
前記横梁は、前記軌道上に及ぶように設置されたものであり、該軌道上の部分が着脱可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル搬送装置。
【請求項3】
前記第2の車輪の軸受けは、前記走行台車に鉛直軸回りの回転が可能に取り付けられ、
該走行台車は、前記ジャッキで支持された状態で前記第2の車輪を鉛直軸周りに旋回し、異なる方向の軌道に乗せ換えて走行できるものであることを特徴とする請求項2に記載のケーブル搬送装置
【請求項1】
搭上部から斜め下方に張架されたケーブルによって橋桁を吊り支持する橋の架設時に用いられ、張架される前のケーブルが巻き取られたドラムを桁上の所定の位置に移動させるケーブル搬送装置であって、
既に一部が構築された前記橋桁上で該橋桁の軸線とほぼ直角方向に支持され、先端部が該橋桁の側縁より片持ち状に張り出した2本の横梁と、
前記横梁の前記橋桁の側縁より張り出した部分の上に設けられ、該橋桁の下方にある前記ドラムを前記2本の横梁間で前記橋桁の上面より高い位置まで吊り上げる吊り上げ装置と、
前記横梁上を走行し、前記吊り上げ装置で吊り上げられた前記ドラムの下側まで移動して載置された前記ドラムを前記横梁上で移動させる走行台車と、
前記橋桁上で該橋桁の軸線方向に設置され、前記走行台車が走行する軌道と、を有し、
前記走行台車は、前記横梁上を走行するための第1の車輪と、前記軌道上を走行するための第2の車輪と、前記横梁上に前記第1の車輪を介して支持された状態から前記軌道上に前記第2の車輪を介して支持された状態に移行するための切り換え手段とを有することを特徴とするケーブル搬送装置。
【請求項2】
前記切り換え手段は、前記走行台車を前記橋桁上に支持して該走行台車の支持位置を上昇及び下降させることができる複数のジャッキを有し、
前記横梁は、前記軌道上に及ぶように設置されたものであり、該軌道上の部分が着脱可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル搬送装置。
【請求項3】
前記第2の車輪の軸受けは、前記走行台車に鉛直軸回りの回転が可能に取り付けられ、
該走行台車は、前記ジャッキで支持された状態で前記第2の車輪を鉛直軸周りに旋回し、異なる方向の軌道に乗せ換えて走行できるものであることを特徴とする請求項2に記載のケーブル搬送装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−209625(P2009−209625A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55278(P2008−55278)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
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