説明

ケーブル支持金具

【課題】天井の懐の低い箇所にも使用することが可能で、安価に提供できるケーブル支持金具を提供する。
【解決手段】インサートPにネジ止めするボルト部1を全ネジボルトで設ける。複数のケーブルCを同時に支持する支持腕2を直線的な棒状の金属材にて形成する。支持腕2の長手中央部にボルト部1の下端が溶接されて逆T字状を成すように構成する。支持腕2とボルト部1の下部とに装着する合成樹脂製のカバー体3を形成する。カバー体3に、ボルト部1を貫通せしめると共に該ボルト部1の下部を被覆する筒状部3Cを設ける。カバー体3に、支持腕2の上側面に沿って被覆するカバー部3Bを設ける。カバー部3Bの先端に、係止したケーブルCの落下を防止する係止突起3Aを立設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にケーブル量の多い箇所に使用するケーブル支持金具に係り、天井の懐の低い箇所でも使用可能なケーブル支持金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンション等の配線工事において、居室内の廊下部などケーブル量の多い箇所では、L字状に形成された支持金具が使用されている。このL字状の支持金具は、廊下部など天井の懐の低い箇所に使用することができ、しかもケーブルが束にならずに配線できる利点がある。すなわち、ケーブルが束になると放熱を妨げる状況となり、過熱し事故につながるおそれがあるが、L字状の支持金具にケーブルを広げて支持することで、過熱するおそれは解消されるものである。しかも最近は、オール電化住宅と称し、調理、給湯、空調(冷暖房)などのシステムを全て電気で行う住宅が多くなっている傾向から、支持金具に支持するケーブル量や支持金具自体の使用量も増加している。
【0003】
このような支持金具を使用する場合、スラブに打込まれたインサートPに支持金具のネジ部をねじ込み、このネジ部から水平に延長された腕部にケーブルを支持する作業になる。そのため、L字状の支持金具を近接して増設しようとすると、この水平に延長された腕部が互いに干渉しぶつかり合うなど、支持金具を増設する際に不都合が生じるケースがあった。しかも、支持金具を増設するには、増設分のインサートをスラブに別途設置することになるので、増設作業が更に増大することになる。そこで、一箇所の支持位置に、できるだけ多数のケーブルを支持することが可能な支持金具が求められている。
【0004】
特許文献1は、当出願人が先に提案したケーブル間隔保持具である。このケーブル間隔保持具は、L字金具の腕部とネジ部との間に挟着して使用するもので、L字金具の腕部に複数本のケーブルを合理的に支持するように構成されたものである。このケーブル間隔保持具は、多数のケーブルを整列した状態で支持することができる。
【0005】
一方、特許文献2に記載されている配線の受け具には、逆T字型の支持金具が提案されている。この逆T字型の支持金具は、L字状の支持金具に比べてより多くのケーブルを支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2909889号公報
【特許文献2】特開2004−236499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の支持金具によると、多数のケーブルを整列した状態で支持することは可能であるが、特許文献2に記載の支持金具のように、多数のケーブルを支持することは困難である。
【0008】
一方、特許文献2に記載されている逆T字型の受具は、L字状の支持金具に比べて多数のケーブルを支持することが可能になる。ところが、逆T字型の受具を従来のL字状支持金具と同様に金属材で製造しようとすると、絶縁加工が困難になるなど、製造コストが極めて高くなる不都合が生じる。
【0009】
すなわち、従来のL字状の支持金具には、支持したケーブルの落下を防止するために、腕部の端部を上方へ向けて折り曲げ加工している。しかも、金属製の支持金具は、ケーブルが直接接触しないように、絶縁を目的として塩化ビニル製のチューブが被覆されている。ところが、この被覆チューブは、端部が折り曲がった支持金具を被覆チューブの中に通すことで装着するので、従来のL字状の支持金具では、この装着作業が困難な作業になっており、製造コストが掛かるものであった。また、被覆コーティングを施す方法もあるが、支持金具をコーティング層に浸漬させ、焼付けを施すため工程が多く、製造コストが掛かってしまう。
【0010】
このようにL字状の支持金具でも困難な装着作業を、特許文献2に記載されている逆T字型の金属製の受具に施す場合は、ケーブルに接するネジ部とその両側の腕部とに、それぞれ被覆チューブを装着する必要がある。この際、ネジ部の下端部を覆う被覆チューブと腕部の両側を覆う被覆チューブを用いても、腕部のネジ部を溶接した中央部分までは被覆することができず、腕部中央の金属が剥き出した状態になってしまう。そこで、この剥き出た中央部分に改めて絶縁を施す必要が生じる。このため、被覆作業が更に困難にならざるを得ず、製造コストもより増大することになる。
【0011】
特許文献2によると、逆T字型の受具に絶縁を施すために、合成樹脂材の中に金属材を組み合わせた構造を採用している。ところが、この受具をインサートPに連結する場合、まず、インサートPに吊りボルトを連結し、次に、この吊りボルトに合成樹脂製の受具を連結する作業になる。そのため、この逆T字型の受具は、従来のL字状の支持金具のように、廊下部など天井の懐の低い箇所に使用することはできない。しかも、吊りボルトを連結した上で、更に合成樹脂製の受具を吊りボルトに連結する作業が必要になるので、連結作業が二度手間となり、金属製のL字状の支持金具に比べると安全性の課題も残る。
【0012】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、ケーブル量が多く天井の懐の低い箇所等に使用することができ、しかも、安全な使用が可能な金属製の支持金具を極めて安価に製造できるケーブル支持金具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、インサートPにネジ止め自在なボルト部1と、複数のケーブルCを同時に支持する支持腕2とで構成された支持金具において、該支持腕2に装着する合成樹脂製のカバー体3を形成し、該カバー体3を介した支持腕2上にケーブルCを支持するように構成し、該カバー体3の支持腕2の先端部の位置に、係止したケーブルCの落下を防止する係止突起3Aを立設したことにある。
【0014】
第2の手段は、前記支持金具において、前記支持腕2は直線状を成した棒状の金属材にて形成され、前記ボルト部1は全ネジボルトで形成され、支持腕2の長手中央部にボルト部1の下端が溶接されて逆T字状の支持金具を成すように構成されている。
【0015】
第3の手段において、前記カバー体3は、前記ボルト部1を貫通せしめると共に該ボルト部1の下部を被覆する筒状部3Cと、前記支持腕2の上側面に沿って被覆するカバー部3Bとで構成され、該カバー部3Bの先端に前記係止突起3Aを形成する。
【0016】
第4の手段の前記カバー部3Bは、前記支持腕2の上面を被覆する断面逆U字形状を成し、該カバー部3Bの下端に、前記支持腕2を両側から挟着せしめる固定部3Dを形成し、該固定部3Dをカバー部3Bの長手方向に沿って複数形成したことを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によると、支持腕2に装着する合成樹脂製のカバー体3を形成し、該カバー体3を介した支持腕2上にケーブルCを支持するように構成し、該カバー体3の支持腕2の先端部の位置に、係止したケーブルCの落下を防止する係止突起3Aを立設したことにより、カバー体3によって支持金具の絶縁を極めて簡単に行えるものである。この結果、金属製の支持金具に被覆チューブ及び被覆コーティングを装着するといった従来の困難な作業は必要なくなり、安全な使用が可能な金属製の支持金具を極めて安価に製造できるようになった。
【0018】
請求項2の如く、支持腕2は直線状を成した棒状の金属材にて形成され、ボルト部1は全ネジボルトで形成され、支持腕2の長手中央部にボルト部1の下端が溶接されて逆T字状の支持金具を成すように構成されているので、天井の懐の低い箇所にも使用することが可能で、一箇所でも多数のケーブルCを同時に係止することができる。しかも、支持腕2は直線状を成した棒状の金属材にて形成されているから、従来のように、端部に施す折り曲げ加工の必要はない。この結果、逆T字状の支持金具の製造も容易になり、更に安価な提供が可能になる。
【0019】
請求項3のように、カバー体3は、前記ボルト部1を貫通せしめると共に該ボルト部1の下部を被覆する筒状部3Cと、前記支持腕2の上側面に沿って被覆するカバー部3Bとで構成され、該カバー部3Bの先端に前記係止突起3Aを形成しているから、カバー体3の装着が極めて容易で、しかも、逆T字状のボルト部1や支持腕2と組み合わせることで、金属製の支持金具と同じ支持強度を有し安全な使用が可能になる。
【0020】
請求項4のごとく、カバー部3Bの下端に、前記支持腕2を両側から挟着せしめる固定部3Dを形成し、該固定部3Dをカバー部3Bの長手方向に沿って複数形成したことにより、カバー体3の安定性を高め、使用時におけるカバー体3のずれ等を防止できるので、より安全な使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の固定部を示す側断面図である。
【図4】本発明の使用状態を示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す正面図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す正面図である。
【図7】本発明の他の実施例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によると、金属製の支持金具と同等の支持強度を有し安全な使用が可能になり、しかも、天井の懐の低い箇所にも使用することが可能で、安価に提供できるなどといった当初の目的を達成した。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明の基本構成は、ボルト部1、支持腕2、カバー体3にて構成されている(図1参照)。
【0024】
ボルト部1は、スラブに打込まれたインサートPにネジ止めする部材で(図4参照)、このボルト部1の下端部に支持腕2が連結されている(図1参照)。図示のボルト部1は全ネジボルトで形成されている。また、ボルト部1はこの他、ネジ止めする部分にのみネジ山を形成した棒状に設けることも可能である。
【0025】
支持腕2は、複数のケーブルCを同時に支持する部材で、ボルト部1の下端に設けられている(図1参照)。図示例では直線的な棒状の金属材にて形成されている。そして、支持腕2の長手中央部にボルト部1の下端が溶接されて逆T字状を成すように構成されている。したがって、支持腕2の先端部は支持腕2の他の部分と同じストレート状に形成されており、従来のL字状の支持金具のように、腕部の端部を上方へ向けた折り曲げ加工はない。このような直線的な支持腕2を使用することで、例えば、前述の如く、一部にネジ山を形成した棒状のボルト部1を屈曲してL字形状の支持腕2を形成することも可能である(図示せず)。
【0026】
カバー体3は、該支持腕2に装着する合成樹脂製の部材である(図1参照)。図示例では、支持腕2とボルト部1の下部とに装着するように構成し(図2参照)、このカバー体3を介した支持腕2上にケーブルCを支持する(図4参照)。このカバー体3は、更に、係止突起3A、カバー部3B、筒状部3C、固定部3Dにて構成されている(図1参照)。
【0027】
係止突起3Aは、カバー体3の支持腕2の先端部に位置する部分に立設されたもので、係止したケーブルCの落下を防止するように設けられている(図2参照)。このとき、係止突起3Aと平行なセパレーター3Eを形成し、後述するカバー部3B上に立設するように構成することで、例えば、種類や太さ別にケーブルCを支持することが可能になる(図5参照)。また、係止突起3Aと平行に多数の間隔保持具3Fを形成し、この間隔保持具3Fをカバー部3B上に立設すると、複数本のケーブルを整列した状態で支持することが可能になる(図6参照)。
【0028】
カバー部3Bは、支持腕2の上側面に沿って被覆する部分で、図示例では断面逆U字形状を成しており、支持腕2の上から被せるように設けている(図1参照)。更に、カバー部3Bの下面に固定部3Dを設けてあり、支持腕2に被せたカバー部3Bを支持腕2に確実に固定するものである。この固定部3Dは、カバー部3Bの下端に設けられており、支持腕2を両側から挟着せしめるように構成され(図3参照)、カバー部3Bの長手方向に沿って複数形成されている(図4参照)。
【0029】
筒状部3Cは、ボルト部1を貫通せしめると共に該ボルト部1の下部を被覆する筒状を成している(図2参照)。図示例では、筒状部3Cとカバー部3Bとを一体に成形したもので、筒状部3Cにボルト部1を通し、支持腕2にカバー部3Bを被せるだけの作業で、カバー体3の装着が完了する(図1参照)。また、筒状部3Cの上端部から係止突起3Aに至る蓋3Gを設けることで、支持腕2上のケーブルCの脱落をより確実に防止することが可能になる(図7参照)。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の実施例において、主に廊下部など天井の懐の低い箇所に使用するのに好適であるが、使用場所はこの例に限定されるものではなく、インサートPを使用している場所ならどのような場所でも使用可能である。また、ボルト部1は、スラブに打込まれたインサートPにネジ止めする他、ボルト部1の連結が可能な他の施設や装置に使用することもできる。
【符号の説明】
【0031】
C ケーブル
P インサート
1 ボルト部
2 支持腕
3 カバー体
3A 係止突起
3B カバー部
3C 筒状部
3D 固定部
3E セパレーター
3F 間隔保持具
3G 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートにネジ止め自在なボルト部と、複数のケーブルを同時に支持する支持腕とで構成された支持金具において、該支持腕に装着する合成樹脂製のカバー体を形成し、該カバー体を介した支持腕上にケーブルを支持するように構成し、該カバー体の支持腕の先端部の位置に、係止したケーブルの落下を防止する係止突起を立設したことを特徴とするケーブル支持金具。
【請求項2】
前記支持金具において、前記支持腕は直線状を成した棒状の金属材にて形成され、前記ボルト部は全ネジボルトで形成され、支持腕の長手中央部にボルト部の下端が溶接されて逆T字状の支持金具を成すように構成された請求項1記載のケーブル支持金具。
【請求項3】
前記カバー体は、前記ボルト部を貫通せしめると共に該ボルト部の下部を被覆する筒状部と、前記支持腕の上側面に沿って被覆するカバー部とで構成され、該カバー部の先端に前記係止突起を形成した請求項1記載のケーブル支持金具。
【請求項4】
前記カバー部は、前記支持腕の上面を被覆する断面逆U字形状を成し、該カバー部の下端に、前記支持腕を両側から挟着せしめる固定部を形成し、該固定部をカバー部の長手方向に沿って複数形成した請求項3記載のケーブル支持金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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