説明

ケーブル構造

【課題】簡単な構成で、柔軟性の高いケーブル構造を提供する。
【解決手段】ケーブル構造1は、互いに離隔して設けられた第一および第二導電線10,20と、前記第一および第二導電線10,20を覆い前記第一および第二導電線間で互いに対向する第一および第二絶縁層120,1120と、前記第一および第二絶縁層120,1120の外側に設けられて第一および第二導電線10,20ならびに前記第一および第二絶縁層120,1120を覆う、前記第一および第二絶縁層120,1120に密着する第一および第二導電膜130、1130とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブル構造に関し、より特定的には、互いに離隔して設けらた導電線を有するケーブル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル構造は、たとえば特開平6−84411号公報(特許文献1)、実開平5−73817号公報(特許文献2)、特開平11−176253号公報(特許文献3)および実開昭61−18518号公報(特許文献4)、特開2002−367442号公報(特許文献5)および特開2006−127977号公報(特許文献6)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−84411号公報
【特許文献2】実開平5−73817号公報
【特許文献3】特開平11−176253号公報
【特許文献4】実開昭61−18518号公報
【特許文献5】特開2002−367442号公報
【特許文献6】特開2006−127977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、フラットケーブルが開示されている。
特許文献2では、複数の導電線を、間隔を空けて並べるとともに、これらの導電線を樹脂の薄膜でサンドイッチして接着固定したフラットケーブルが開示されている。
【0005】
特許文献3では、複数の信号配線を間隔を空けて設けるとともに、絶縁体およびシールドで覆うことが開示されている。
【0006】
特許文献4では、シールド電線が開示されている。
特許文献5では、フラットケーブルおよびその製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献6では、フラットケーブルの固定構造が開示されている。
従来の技術では、簡易な構造で、かつ柔軟性が高いケーブル構造が開示されていないという問題があった。
【0008】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、構造が簡単で、かつ柔軟性の高いケーブル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従ったケーブル構造は、互いに離隔して設けられた第一および第二導電線と、第一および第二導電線を覆い第一および第二導電線間で互いに対向する第一および第二絶縁層と、第一および第二絶縁層の外側に設けられて第一および第二導電線ならびに第一および第二絶縁膜を覆う、第一および第二絶縁膜に密着する第一および第二導電膜とを備える。
【0010】
このように構成されたケーブル構造では、第一および第二導電膜を、第一および第二絶縁膜ならびに第一および第二導電膜で覆うだけであるため簡易な構造となる。さらに、第一および第二導電線間で第一および第二絶縁膜が対向するためこの部分でケーブル構造を折り曲げることができ、柔軟性の高いケーブル構造を提供することができる。
【0011】
好ましくは、前記第一および第二導電膜は網目構造である。
好ましくは、前記第一および第二導電膜のいずれかが接続部により車体に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0012】
この発明に従えば、構造が簡単で、かつ柔軟性が高いケーブル構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態に従った、三相交流モータ用のケーブル構造の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態に従った、折りたたまれた状態のケーブル構造の断面図である。
【図3】図1および図2で示すケーブル構造を用いた接続構造を説明するための断面図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿った、ケーブル構造が保持された部分の断面図である。
【図5】図4中のV−V線に沿った、ケーブル構造の先端がかしめられた状態の断面図である。
【図6】この発明の実施の形態に従ったケーブル構造の捻られた状態を示す斜視図である。
【図7】この発明に従ったケーブル構造がケースとカバーとの隙間に配置された状態を説明するための断面図である。
【図8】この発明に従ったケーブル構造のクランプの構成を説明するための図である。
【図9】この発明に従ったケーブル構造と、ケーブル構造を車体に接続するためのピンとの平面図である。
【図10】図9中のX−X線に沿った、ケーブル構造と車体との係合部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に従った、三相交流モータ用のケーブル構造の断面図である。図1を参照して、ケーブル構造1は、第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30を有する。第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30の各々は銅線110を編んで撚線として構造とされている。なお、各々の銅線110の断面はほぼ円形状である。
【0016】
第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30として、細い銅線110を編み込む、いわゆる撚線の構成を示しているが、これに限られるものではなく、第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30が撚線でなく単一の銅線110で構成されていてもよい。
【0017】
また、第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30の断面は、図1で示すように円形状である必要はなく、角形状、すなわち平角線材であってもよい。
【0018】
なお、この例では第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30の3つの導電線が示されているが、導電線は少なくとも2つ以上あればよい。
【0019】
互いに離隔した第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30を覆うように第一絶縁膜120および第二絶縁膜1120が設けられている。第一絶縁膜120および第二絶縁膜1120は第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30をサンドイッチして挟み込むような形状とされている。すなわち、第一絶縁膜120、第二絶縁膜1120は共に第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30と接触し、かつ第一導電線10と第二導電線20間、ならびに第二導電線20および第三導電線30間で互いに相対向して接触する。
【0020】
第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30を覆うように、第一絶縁膜120の外周側に第一導電膜130が設けられる。第一導電膜130と対向するように、第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30を覆うように第二導電膜1130が設けられる。
【0021】
第一導電膜130および第二導電膜1130は、共に第一絶縁膜120および第二絶縁膜1120の外側に設けられる。
【0022】
第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30を覆うように、最外周に第三絶縁膜140が設けられる。第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30を覆うように第四絶縁膜1140が設けられる。第一絶縁膜120、第一導電膜130および第三絶縁膜140がラミネートフィルムを構成している。また、第二絶縁膜1120、第二導電膜1130および第四絶縁膜1140がラミネートフィルムを構成している。これらのラミネートフィルムが、第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30をサンドイッチしている。
【0023】
図2は、この発明の実施の形態に従った、折りたたまれた状態のケーブル構造の断面図である。図2を参照して、ケーブル構造1において、第一導電線10、第二導電線20間の強度が小さいため、第一導電線10および第二導電線20間を曲げることができる。同様に、第二導電線20と第三導電線30間の強度も小さいため、第二導電線20および第三導電線30間を曲げることができる。これにより、図2で示すように、第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30を互いに近接させるようにケーブル構造1を変形することも可能である。
【0024】
図3は、図1および図2で示すケーブル構造を用いた接続構造を説明するための断面図である。図3を参照して、ケーブル構造1は、ケース230と、金属シェル210との間に配置されている。金属シェル210とケース230との間に成形パッキン250が設けられる。成形パッキン250を貫通するようにケーブル構造1が位置決めされている。
【0025】
ケーブル構造1の先端部はかしめ部270でかしめられている。かしめ部270は樹脂ボデー260で保持されている。樹脂ボデー260はケース230上に位置決めされている。
【0026】
かしめ部270と接続される端子部としての端子280の先端に孔が設けられ、この孔内にボルト300が嵌め合わせられている。ボルト300には別の端子部としての端子330が設けられている。端子330は、かしめ部310に接続されている。かしめ部310はケーブル320と接続されている。
【0027】
固定部材290に端子280および端子330が配置されている。固定部材290はケース230と接続されている。ケース230と金属シェル210との間には面シール220および樹脂ボデー260が配置されている。
【0028】
図4は、図3中のIV−IV線に沿った、ケーブル構造が保持された部分の断面図である。図4を参照して、ケース230上に金属シェル210が覆い被さっている。金属シェル210には凹部が設けられ、この凹部に面シール220が配置されている。
【0029】
金属シェル210内は成形パッキン250で満たされている。成形パッキン250はケーブル構造1を挟み込んでいる。ケーブル構造1は金属シェル210内で成形パッキン250により固定されている。成形パッキン250は上下で分割された構造とされており、1対の成形パッキン250によりケーブル構造1を挟み込んでいる。
【0030】
図5は、図4中のV−V線に沿った、ケーブル構造の先端がかしめられた状態の断面図である。図5を参照して、ケーブル構造1の先端部では、ラミネートフィルムが取除かれ、銅線110と接触するようにかしめ部270が第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30を構成する銅線110を挟み込んでいる。そしてかしめ部270は樹脂ボデー260の凹部に嵌め合わせられており、樹脂ボデー260でかしめ部270がクランプされている。第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30は、それぞれU相の導電層、V相の導電層およびW相の導電層に対応している。
【0031】
すなわち、この例では、ケーブル構造1は端子のかしめ部270は樹脂ボデー260でクランプして保持される。ステータの動力線側の端子330は3相分設けられ、樹脂モールドによりその3相分が一体化されている。端子330の一部がボルトなどによりケース230に固定されていてもよい。ケーブル構造1側の端子280と端子330はボルト300によって接合される。金属シェル210はケース230との間にゴム製の成形パッキン250を介在させてケーブル構造1をサンドイッチする。これによりシール性を発揮する。金属シェル210はケース230にボルト等で固定される。
【0032】
ケーブル構造1が単独でエンジンまたはトランスアクスルケースに締結されるときに図3の構造では第一導電膜130および第二導電膜1130を接地することができるため金属シェル210と第一導電膜130および第二導電膜1130を電気的に接続する必要がなく、締結部品が不要となる。さらに、第一導電膜130および第二導電膜1130が編込線で構成される場合、編込線の端を金属シェル210内に位置させることでシールド性能を発揮することができる。
【0033】
また、金属シェル210の端部が成形パッキン250で押さえられるため共振が減衰する。その結果電磁気の放射が抑えられる。
【0034】
図6は、この発明の実施の形態に従ったケーブル構造の捻られた状態を示す斜視図である。図6を参照して、この発明に従ったケーブル構造1は、第一導電線10、第二導電線20および第三導電線30をラミネートフィルムでサンドイッチした構造となるため、ケーブルの保護およびシールドのための外径の増加量が最小となる。また、扁平断面のため曲げおよび捻りの自由度が高い。その結果、図6で示すように、捻った場合であっても、接触不良、断線等を起こす可能性が少なくなる。
【0035】
図7は、この発明に従ったケーブル構造がケースとカバーとの隙間に配置された状態を説明するための断面図である。図7を参照して、ケース520とカバー510との間の狭い隙間にこの発明に従ったケーブル構造1を配置することができる。このような隙間は、トランスアクスルおよびエンジンの表面に設けられる隙間である。
【0036】
図8は、この発明に従ったケーブル構造のクランプの構成を説明するための図である。図8を参照して、この発明に従ったケーブル構造1を折畳んでクランプ530で収納することができる。このクランプ530は、たとえばコルゲート状のチューブを採用することができる。
【0037】
図9は、この発明に従ったケーブル構造と、ケーブル構造を車体に接続するためのピンとの平面図である。図10は、図9中のX−X線に沿った、ケーブル構造と車体との係合部分の断面図である。図9および図10で示すように、このケーブル構造1は、導電性のピンにより導電体に接触させることで、シールド面の接地が得られる。具体的には、ケーブル構造1の端部に接続部としての導電性ピン2を差込む。この導電性ピン2は導電体550へ達する。このとき、導電性ピン2が、第一導電膜130と導電体550とを接触させる。これにより、中の金属である第一導電膜130が接地電位とされる。このような構成は粘着性テープを採用することなく実現することができる。さらに、第一導電膜130から外気への距離が短く、また、第一導電膜130と導電体550との接触面積が大きい。さらにラミネートフィルムが放熱板となるため、放熱性がよく、線形を小さくすることができる。
【0038】
また、図8で示すように固定が容易であり、さらに多くの点において固定でき、振動による傾きを抑制することができる。
【0039】
すなわち、実施の形態に従ったケーブル構造1は、互いに離隔して設けられた第一導電線10および第二導電線20と、第一導電線10および第二導電線20を覆い、第一導電線10および第二導電線20間で互いに対向する第一絶縁膜120および第二絶縁膜1120と、第一絶縁膜120および第二絶縁膜1120ならびに第一導電線10および第二導電線20を覆い、第一絶縁膜120および第二絶縁膜1120に密着する第一導電膜130および第二導電膜1130とを備える。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、回転電機を搭載する車両の分野で用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ケーブル構造、2 導電性ピン、10 第一導電線、20 第二導電線、30 第三導電線、110 銅線、120 第一絶縁膜、130 第一導電膜、140 第三絶縁膜、210 金属シェル、220 面シール、230 ケース、250 成形パッキン、260 樹脂ボデー、270 かしめ部、280 端子、290 固定部材、300 ボルト、310 かしめ部、320 ケーブル、510 カバー、520 ケース、530 クランプ、550 導電体、1120 第二絶縁膜、1130 第二導電膜、1140 第四絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して設けられた第一および第二導電線と、
前記第一および第二導電線を覆い前記第一および第二導電線間で互いに対向する第一および第二絶縁層と、
前記第一および第二絶縁層の外側に設けられて第一および第二導電線ならびに前記第一および第二絶縁膜を覆う、前記第一および第二絶縁膜に密着する第一および第二導電膜とを備える、ケーブル構造。
【請求項2】
前記第一および第二導電膜は網目構造である、請求項1に記載のケーブル構造。
【請求項3】
前記第一および第二導電膜のいずれかが接続部により車体に電気的に接続される、請求項2に記載のケーブル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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