説明

ケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料及びその製造方法

高い延伸性を有するアルミニウム合金材料及びその製造方法である。この高い延伸性を有するアルミニウム合金材料は,重量パーセントで,0.30〜1.20%の鉄と,0.03〜0.10%のケイ素と,0.01〜0.30%の希土類元素,すなわち,セリウム及びランタンと,残存部分にアルミニウム及び不可避的不純物とを含有する。アルミニウム合金は,これらの材料から,溶融鋳造処理及び半焼鈍処理によって製造される。これにより製造されたアルミニウム合金導体は,高い延伸性を有し,使用の際に良好な安全性及び安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,非鉄金属材料の分野に関し,特にケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在,多くのワイヤ及びケーブルは,導体として銅を採用している。しかし,銅資源は希少であり,銅材料が高価格で,銅ケーブルの設置費が高いなどの理由から,ワイヤ及びケーブルの開発は制限されている。アルミニウム資源は豊富であり,アルミニウム材料が低価格であるという事実により,ワイヤ及びケーブルの導体として,銅の代わりにアルミニウムが使用される傾向にある。
【0003】
発明の開示
技術的課題
しかし,銅の代わりに従来のECアルミニウムを導体として使用すると,ワイヤ及びケーブルの延伸性,可撓性及び耐クリープ性が弱くなり,使用の際の安全性及び安定性が十分ではない。したがって,銅の代わりに従来のECアルミニウムを導体として使用すると,ワイヤ及びケーブルの開発のための要件を満たすことができなくなる。
【0004】
発明の概要
本発明の目的は,ケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料を提供することである。導体としての本発明のアルミニウム合金材料によって,ワイヤ及びケーブルは高い延伸性を有し,安全かつ安定的に使用することができる。
【0005】
上記目的を達成するために,本発明は以下の技術的解決手段を採用する。すなわち,ケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料は以下の成分を含む:
Fe:0.30〜1.20wt%,Si:0.03〜0.10wt%,希土類元素(すなわちCe及びLa):0.01〜0.30wt%,及びその他Al及び不可避的不純物。
【0006】
本発明の別の目的は,以下の工程を含む,高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の製造方法を提供することである。
1)溶融鋳造
最初に92〜98重量部(pbw)のSi及びFeと,0.73〜5.26pwbのAl―Fe合金とを含有するAl合金を添加し,710〜750℃に加熱して融解する;次に720〜760℃に加熱し,1〜3pbwの希土類―Al合金及び0.17〜0.67pbwのB−Al合金を添加し,前記希土類―Al合金は,Alと希土類元素(Ce及びLa)との合金であり;次に,0.04〜0.06pbwの精製剤を添加して8〜20分間精製し;次に,前記温度で20〜40分間保持し,その後,鋳造する。
2)半焼鈍(semi-annealing)処理
鋳造によって得たアルミニウム合金を280〜380℃で4〜10時間保持し,その後,取り出して周囲温度まで自然に冷却する。
【0007】
前記アルミニウム合金材料は,不可避的不純物元素を更に含み,該アルミニウム合金材料内の不可避的不純物元素の総含有量は,0.3wt%未満である。
【0008】
また,アルミニウム合金材料の導電性に対する不純物元素の影響を低下させるため,不純物内のCaの含有量は0.02wt%未満であり,他の不純物元素の含有量は0.01wt%未満である。
【0009】
本発明で提供されるケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料は,以下の利点を有する新型のAl−Fe合金材料である。
1)本発明において,Feの含有量は0.30〜1.20%の範囲に制御され,そのため,アルミニウム合金の強度を増加させることが可能となり,アルミニウム合金の耐クリープ性及び熱安定性も向上させることが可能である。従来のECアルミニウム材料と比較した場合,耐クリープ性は300%向上する。また,Feはアルミニウム合金の靱性を向上させることができ,圧縮ねじり加工(compression and twisting process)におけるアルミニウム合金材料の圧縮係数は0.93以上と高くなり得て,これは従来のECアルミニウム材料では達成できない。ECアルミニウム材料で製造された導体と比較して,同じ外径のアルミニウム合金で製造された圧縮導体は,断面積が大きく,導電性及び安定性が高く,生産コストが低い。
2)本発明において,Siの含有量は0.03〜0.10%の範囲に制御され,そのため,アルミニウム合金の強度に対するSiの増強効果が確保される。
3)本発明において,希土類元素は,Siの含有量を減少させることが可能であり,そのため,アルミニウム合金の導電性へのFe及び,特にSiの影響を非常に低レベルまで低下させる;更に,希土類元素の添加により,アルミニウム合金材料の結晶構造を向上させ,それにより,アルミニウム合金材料の処理特性が向上し,アルミニウム合金材料の処理には好適となる。
4)本発明において,希土類元素は,主にCe及びLaであり,これらは3)に記載の性能を充分に獲得することができる。
5)本発明において,元素Bは,Ti,V,Mn,Crなどの不純物元素と反応して化合物を形成することができるが,これらは堆積し,その後,取り除くことができる。したがって,アルミニウム合金の導電性への不純物元素(例えば,Ti,V,Mn,Crなど)の影響も低下させることが可能となり,アルミニウム合金の導電性を向上させることができる。
6)本発明によるアルミニウム合金を製造する場合には,半焼鈍処理によって合金材料が導電化される。したがって,引張ねじり加工(drawing and twisting process)中の導体の構造に対する応力の悪影響を低下させることができる。そのため,導電性は61%IACS(従来のECアルミニウムで製造された導体の導電性の基準は,61%IACSである。)まで,或いはそれ以上になり得る;更に,焼鈍処理は,アルミニウム合金材料の延伸性及び可撓性を大いに向上させることができる。本発明で提供されるアルミニウム合金材料で製造されたケーブルは,銅ケーブルと比較して30%高い延伸性と,25%高い可撓性を有し,曲げ半径は外径の7倍と小さい。一方,銅ケーブルの曲げ半径は外径の15倍である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例1
I.溶融鋳造処理
1.材料の配合
5100kgのアルミニウムインゴット(0.07%のSi及び0.13%のFeを含有),40.4kgのAl−Fe合金(22%のFeを含有),5.6kgの希土類合金(10%希土類元素を含有),8.8kgのB−Al合金(3.5%のBを含有),及び2.3kgの精製剤(23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaCl)
2.供給方法
材料の供給中に,成分をできる限り均等に分配するために,溶銑炉内に,アルミニウムインゴットと共に,Al−Fe合金をバッチごとに均等に供給する。
3.熱保存処理
液状アルミニウム合金を均熱炉に流し入れる場合,該均熱炉の温度は710〜750℃に制御する;希土類−Al合金及びB−Al合金を液状アルミニウム合金に添加する場合,均熱炉の温度を720〜760℃に上昇させるが,該温度は760℃を越えない。ここで,温度の上昇は希土類−Al合金及びB−Al合金の融解に好適であり,それにより,希土類元素及び元素Bの処理効果を向上させることが可能となる。
4.希土類処理及びホウ化処理
4.1.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する30分前に,3分の1の希土類−Al合金を添加する。
4.2.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する5分前に,残りの3分の2の希土類−Al合金及びB−A合金を添加する。
希土類−Al合金及びB−Al合金を異なる時間帯に添加することで,希土類元素及び元素Bが全面的に機能することが可能となり,効果を高めることができる。
4.3.希土類−Al合金及びB−Al合金の供給位置が,均熱炉内で均等に分布することが可能となる。
5.精製(スラグ除去,ガス除去,攪拌及び除滓)
5.1.均熱炉全体で液状アルミニウム合金の成分を均質にするために,該液状アルミニウム合金を,均熱炉の隅部の位置にあるものも含めて5分間攪拌する。
5.2.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する場合,液状アルミニウム合金の底部内で吹込みノズルを動かしながら,2.3kgの精製剤(23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaCl)の粉末を,高純度窒素ガスで液状アルミニウム合金の底部に3〜5分間吹き込み,ガスによって,含有スラグを該液状アルミニウム合金の表面に沿って均一に上昇させる。浮遊している酸化アルミニウムスラグを炉から完全に除去することで,精製剤がもたらした新たな不純物を,可能な限り減少させることができる。
6.現場で採取した試料の迅速な分析と保持及び熱保存
液状アルミニウム合金のFeの含有量がスラグの除去後の要件を満たす場合,液状アルミニウム合金を20〜40分間保持する。
7.連続鋳造及び圧延処理の制御
7.1.温度制御
7.1.1.鋳造用取鍋の温度:720〜730℃
7.1.2.圧延機へ供給される条片の温度:450〜490℃
7.1.3.アルミニウムロッドの最終圧延温度:約300℃
7.2.連続鋳造機内の冷却水の制御
鋳造ホイールの外部の水量に対する鋳造ホイールの内部の水量:3:2;
2次冷却水の量は,鋳造された条片の温度にあわせて調節する。
7.3.鋳造機の電圧:60〜90V
7.4.圧延機を通過する電流:200〜280A;圧延機の速度:7.5〜8.5m/分
【0011】
II.半焼鈍処理
アルミニウム合金材料から製造されたアルミニウム合金ロッドを,焼鈍炉内で10時間,280〜300℃で保持し,その後,該ロッドを取り出して,周囲温度まで自然に冷却する。
【0012】
このような方法で得たアルミニウム合金材料は,重量パーセントで測定した以下の成分を含有する:
Fe:0.3%,Si:0.03%,Ce:0.008%,La:0.002%,B:0.005%,Ca:0.015%,Cu:0.002%,Mg:0.005%,Zn:0.002%,Ti:0.002%,V:0.005%,Mn:0.002%,Cr:0.001%,Al:残存部分。
【0013】
元素Bは,Ti,V,Mn,Crなどの不純物元素と反応し,化合物を形成するが,これらは堆積し,その後,取り除くことができるため,製造したアルミニウム合金材料内の元素Bの含有量は,実際に添加した量よりも低くなる。アルミニウム合金材料内の不純物の総含有量は0.3%未満であると認められるが,0.02%未満であるCaの含有量を除いて,他の不純物元素の含有量は0.01%未満である。
【0014】
本実施例における高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の性能試験データは,以下の通りである。
【0015】
張力強度及び延伸性をASTM B577に記載の方法によりテストした;
導電性をASTM B193に記載の方法によりテストした;
可撓性をGB 12706.1に記載の「曲げ試験後の部分放電試験」の方法によりテストした;
クリープ特性を「ワイヤ及びケーブル」マニュアルに記載のクリープ試験方法によりテストした。
【0016】
本実施例における高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の性能データは,
張力強度:106MPa;
延伸性:28%;
導電性:63.0%IACS;
6回の曲げ半径試験後の部分放電試験:合格;
耐クリープ性:ECアルミニウムより310%高い値
であった。
【0017】
実施例2
I.溶融鋳造処理
1.材料の配合
5110kgのアルミニウムインゴット(0.10%のSi及び0.13%のFeを含有),258kgのAl−Fe合金(23.2%のFeを含有),166.5kgの希土類合金(9.8%の希土類元素を含有),10kgのB−Al合金(3.3%のBを含有),及び2.3kgの精製剤(23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaCl)
2.供給方法
材料の供給中に,成分をできる限り均等に分配するために,溶銑炉内に,アルミニウムインゴットと共に,Al−Fe合金をバッチごとに均等に供給する。
3.熱保存処理
液状アルミニウム合金を均熱炉に流し入れる場合,該均熱炉の温度は710〜750℃に制御する;希土類−Al合金及びB−Al合金を液状アルミニウム合金に添加する場合,均熱炉の温度を720〜760℃に上昇させるが,該温度は760℃を越えない。ここで,温度の上昇は希土類−Al合金及びB−Al合金の融解に好適であり,それにより,希土類元素及び元素Bの処理効果を向上させることが可能となる。
4.希土類処理及びホウ化処理
4.1.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する30分前に,3分の1の希土類−Al合金を添加する。
4.2.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する5分前に,残りの3分の2の希土類−Al合金及びB−A合金を添加する。
希土類−Al合金及びB−Al合金を異なる時間帯に添加することで,希土類元素及び元素Bが全面的に機能することが可能となり,効果を高めることができる。
4.3.希土類−Al合金及びB−Al合金の供給位置が,均熱炉内で均等に分布することが可能となる。
5.精製(スラグ除去,ガス除去,攪拌及び除滓)
5.1.均熱炉全体で液状アルミニウム合金の成分を均質にするために,該液状アルミニウム合金を,均熱炉の隅部の位置にあるものも含めて5分間攪拌する。
5.2.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する場合,液状アルミニウム合金の底部内で吹込みノズルを動かしながら,2.3kgの精製剤(23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaCl)の粉末を,高純度窒素ガスで液状アルミニウム合金の底部に3〜5分間吹き込み,ガスによって,含有スラグを該液状アルミニウム合金の表面に沿って均一に上昇させる。浮遊している酸化アルミニウムスラグを炉から完全に除去することで,精製剤がもたらした新たな不純物を,可能な限り減少させることができる。
6.現場で採取した試料の迅速な分析と保持及び熱保存
液状アルミニウム合金のFeの含有量がスラグの除去後の要件を満たす場合,液状アルミニウム合金を20〜40分間保持する。
7.連続鋳造及び圧延処理の制御
7.1.温度制御
7.1.1.鋳造用取鍋の温度:720〜730℃
7.1.2.圧延機へ供給される条片の温度:450〜490℃
7.1.3.アルミニウムロッドの最終圧延温度:約300℃
7.2.連続鋳造機内の冷却水の制御
鋳造ホイールの外部の水量に対する鋳造ホイールの内部の水量:3:2;
2次冷却水の量は,鋳造された条片の温度にあわせて調節する。
7.3.鋳造機の電圧:60〜90V
7.4.圧延機を通過する電流:200〜280A;圧延機の速度:7.5〜8.5m/分
【0018】
II.半焼鈍処理
アルミニウム合金材料から製造されたアルミニウム合金ロッドを,焼鈍炉内で4時間,360〜380℃で保持し,その後,該ロッドを取り出して,周囲温度まで自然に冷却する。
【0019】
このような方法で得たアルミニウム合金材料は,重量パーセントで測定した以下の成分を含有する:
Fe:1.2%,Si:0.08%,Ce:0.019%,La:0.10%,B:0.004%,Ca:0.01%,Cu:0.002%,Mg:0.004%,Zn:0.003%,Ti:0.002%,V:0.002%,Mn:0.005%,Cr:0.002%,Al:残存部分。
【0020】
元素Bは,Ti,V,Mn,Crなどの不純物元素と反応し,化合物を形成するが,これらは堆積し,その後,取り除くことができるため,製造したアルミニウム合金材料内の元素Bの含有量は,実際に添加した量よりも低くなる。アルミニウム合金材料内の不純物の総含有量は0.3%未満であると認められるが,0.02%未満であるCaの含有量を除いて,他の不純物元素の含有量は0.01%未満である。
【0021】
本実施例における高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の性能試験データは,以下の通りである。
【0022】
張力強度及び延伸性をASTM B577に記載の方法によりテストした;
導電性をASTM B193に記載の方法によりテストした;
可撓性をGB 12706.1に記載の「曲げ試験後の部分放電試験」の方法によりテストした;
クリープ特性を「ワイヤ及びケーブル」マニュアルに記載のクリープ試験方法によりテストした。
【0023】
本実施例における高導電性,高い延伸性,高可撓性及び高耐クリープ性を有するアルミニウム合金材料の性能データは,
張力強度:92MPa;
延伸性:36%;
導電性:61.0%IACS;
7回の曲げ半径試験後の部分放電試験:合格;
耐クリープ性:ECアルミニウムより330%高い値
であった。
【0024】
実施例3
I.溶融鋳造処理
1.材料の配合
5125kgのアルミニウムインゴット(0.12%のSi及び0.12%のFeを含有),107kgのAl−Fe合金(21.9%のFeを含有),118kgの希土類合金(10.1%の希土類元素を含有),14.8kgのB−Al合金(3.0%のBを含有),及び2.8kgの精製剤(23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaCl)
2.供給方法
材料の供給中に,成分をできる限り均等に分配するために,溶銑炉内に,アルミニウムインゴットと共に,Al−Fe合金をバッチごとに均等に供給する。
3.熱保存処理
液状アルミニウム合金を均熱炉に流し入れる場合,該均熱炉の温度は710〜750℃に制御する;希土類−Al合金及びB−Al合金を液状アルミニウム合金に添加する場合,均熱炉の温度を720〜760℃に上昇させるが,該温度は760℃を越えない。ここで,温度の上昇は希土類−Al合金及びB−Al合金の融解に好適であり,それにより,希土類元素及び元素Bの処理効果を向上させることが可能となる。
4.希土類処理及びホウ化処理
4.1.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する30分前に,3分の1の希土類−Al合金を添加する。
4.2.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する5分前に,残りの3分の2の希土類−Al合金及びB−A合金を添加する。
4.3.希土類−Al合金及びB−Al合金の供給位置が,均熱炉内で均等に分布することが可能となる。
5.精製(スラグ除去,ガス除去,攪拌及び除滓)
5.1.均熱炉全体で液状アルミニウム合金の成分を均質にするために,該液状アルミニウム合金を,均熱炉の隅部の位置にあるものも含めて5分間攪拌する。
5.2.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する場合,液状アルミニウム合金の底部内で吹込みノズルを動かしながら,2.8kgの精製剤(23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaCl)の粉末を,高純度窒素ガスで液状アルミニウム合金の底部に3〜5分間吹き込み,ガスによって,含有スラグを該液状アルミニウム合金の表面に沿って均一に上昇させる。浮遊している酸化アルミニウムスラグを炉から完全に除去することで,精製剤がもたらした新たな不純物を,可能な限り減少させることができる。
6.現場で採取した試料の迅速な分析と保持及び熱保存
液状アルミニウム合金のFeの含有量がスラグの除去後の要件を満たす場合,液状アルミニウム合金を20〜40分間保持する。
7.連続鋳造及び圧延処理の制御
7.1.温度制御
7.1.1.鋳造用取鍋の温度:720〜730℃
7.1.2.圧延機へ供給される条片の温度:450〜490℃
7.1.3.アルミニウムロッドの最終圧延温度:約300℃
7.2.連続鋳造機内の冷却水の制御
鋳造ホイールの外部の水量に対する鋳造ホイールの内部の水量:3:2;
2次冷却水の量は,鋳造された条片の温度にあわせて調節する。
7.3.鋳造機の電圧:60〜90V
7.4.圧延機を通過する電流:200〜280A;圧延機の速度:7.5〜8.5m/分
【0025】
II.半焼鈍処理
アルミニウム合金材料から製造されたアルミニウム合金ロッドを,焼鈍炉内で8時間,300〜320℃で保持し,その後,該ロッドを取り出して,周囲温度まで自然に冷却する。
【0026】
このような方法で得たアルミニウム合金材料は,重量パーセントで測定した以下の成分を含有する:
Fe:0.55%,Si:0.10%,Ce:0.15%,La:0.06%,B:0.007%,Ca:0.013%,Cu:0.003%,Mg:0.004%,Zn:0.004%,Ti:0.002%,V:0.004%,Mn:0.003%,Cr:0.002%,Al:残存部分。
【0027】
元素Bは,Ti,V,Mn,Crなどの不純物元素と反応し,化合物を形成するが,これらは堆積し,その後,取り除くことができるため,製造したアルミニウム合金材料内の元素Bの含有量は,実際に添加した量よりも低くなる。アルミニウム合金材料内の不純物の総含有量は0.3%未満であると認められるが,0.02%未満であるCaの含有量を除いて,他の不純物元素の含有量は0.01%未満である。
【0028】
本実施例における高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の性能試験データは,以下の通りである。
【0029】
張力強度及び延伸性をASTM B577に記載の方法によりテストした;
導電性をASTM B193に記載の方法によりテストした;
可撓性をGB 12706.1に記載の「曲げ試験後の部分放電試験」の方法によりテストした;
クリープ特性を「ワイヤ及びケーブル」マニュアルに記載のクリープ試験方法によりテストした。
【0030】
本実施例における高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の性能データは,
張力強度:106MPa;
延伸性:30.2%;
導電性:62.6%IACS;
6回の曲げ半径試験後の部分放電試験:合格;
耐クリープ性:ECアルミニウムより330%高い値
であった。
【0031】
実施例4
I.溶融鋳造処理
1.材料の配合
5005kgのアルミニウムインゴット(0.08%のSi及び0.13%のFeを含有),182kgのAl−Fe合金(21%のFeを含有),90.5kgの希土類合金(9.8%の希土類元素を含有),30kgのB−Al合金(3.5%のBを含有),及び2.0kgの精製剤(23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaCl)
2.供給方法
材料の供給中に,成分をできる限り均等に分配するために,溶銑炉内に,アルミニウムインゴットと共に,Al−Fe合金をバッチごとに均等に供給する。
3.熱保存処理
液状アルミニウム合金を均熱炉に流し入れる場合,該均熱炉の温度は710〜750℃に制御する;希土類−Al合金及びB−Al合金を液状アルミニウム合金に添加する場合,均熱炉の温度を720〜760℃に上昇させるが,該温度は760℃を越えない。ここで,温度の上昇は希土類−Al合金及びB−Al合金の融解に好適であり,それにより,希土類元素及び元素Bの処理効果を向上させることが可能となる。
4.希土類処理及びホウ化処理
4.1.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する30分前に,3分の1の希土類−Al合金を添加する。
4.2.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する5分前に,残りの3分の2の希土類−Al合金及びB−A合金を添加する。
4.3.希土類−Al合金及びB−Al合金の供給位置が,均熱炉内で均等に分布することが可能となる。
5.精製(スラグ除去,ガス除去,攪拌及び除滓)
5.1.均熱炉全体で液状アルミニウム合金の成分を均質にするために,該液状アルミニウム合金を,均熱炉の隅部の位置にあるものも含めて5分間攪拌する。
5.2.均熱炉に液状アルミニウム合金を充填する場合,液状アルミニウム合金の底部内で吹込みノズルを動かしながら,2.0kgの精製剤(23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaCl)の粉末を,高純度窒素ガスで液状アルミニウム合金の底部に3〜5分間吹き込み,ガスによって,含有スラグを該液状アルミニウム合金の表面に沿って均一に上昇させる。浮遊している酸化アルミニウムスラグを炉から完全に除去することで,精製剤がもたらした新たな不純物を,可能な限り減少させることができる。
6.現場で採取した試料の迅速な分析と保持及び熱保存
液状アルミニウム合金のFeの含有量がスラグの除去後の要件を満たす場合,液状アルミニウム合金を20〜40分間保持する。
7.連続鋳造及び圧延処理の制御
7.1.温度制御
7.1.1.鋳造用取鍋の温度:720〜730℃
7.1.2.圧延機へ供給される条片の温度:450〜490℃
7.1.3 .アルミニウムロッドの最終圧延温度:約300℃
7.2.連続鋳造機内の冷却水の制御
鋳造ホイールの外部の水量に対する鋳造ホイールの内部の水量:3:2;
2次冷却水の量は,鋳造された条片の温度にあわせて調節する。
7.3.鋳造機の電圧:60〜90V
7.4.圧延機を通過する電流:200〜280A;圧延機の速度:7.5〜8.5m/分
【0032】
II.半焼鈍処理
アルミニウム合金材料から製造されたアルミニウム合金ロッドを,焼鈍炉内で6時間,340〜360℃で保持し,その後,該ロッドを取り出して,周囲温度まで自然に冷却する。
【0033】
このような方法で得たアルミニウム合金材料は,重量パーセントで測定した以下の成分を含有する:
Fe:0.80%,Si:0.04%,Ce:0.10%,La:0.06%,B:0.008%,Ca:0.011%,Cu:0.005%,Mg:0.004%,Zn:0.006%,Ti:0.003%,V:0.003%,Mn:0.005%,Cr:0.002%,Al:残存部分。
【0034】
元素Bは,Ti,V,Mn,Crなどの不純物元素と反応し,化合物を形成するが,これらは堆積し,その後,取り除くことができるため,製造したアルミニウム合金材料内の元素Bの含有量は,実際に添加した量よりも低くなる。アルミニウム合金材料内の不純物の総含有量は0.3%未満であると認められるが,0.02%未満であるCaの含有量を除いて,他の不純物元素の含有量は0.01%未満である。
【0035】
本実施例における高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の性能試験データは,以下の通りである。
【0036】
張力強度及び延伸性をASTM B577に記載の方法によりテストした;
導電性をASTM B193に記載の方法によりテストした;
可撓性をGB 12706.1に記載の「曲げ試験後の部分放電試験」の方法によりテストした;
クリープ特性を「ワイヤ及びケーブル」マニュアルに記載のクリープ試験方法によりテストした。
【0037】
本実施例における高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の性能データは,
張力強度:97MPa;
延伸性:35.2%;
導電性:62.0%IACS;
6回の曲げ半径試験後の部分放電試験:合格;
耐クリープ性:ECアルミニウムより330%高い値
であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量パーセントで測定した以下の成分;
0.30〜1.20%のFeと,
0.03〜0.10%のSiと,
0.01〜0.30%の希土類元素(すなわちCe及びLa)と,
残存部分にAl及び不可避的不純物と
を含むケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料。
【請求項2】
重量パーセントで測定された前記アルミニウム合金内の不純物の総含有量が0.3%未満である請求項1記載のケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料。
【請求項3】
重量パーセントで測定された,前記不純物内のCaの含有量が0.02%未満であり,前記不純物内の他の元素の含有量が0.01%未満である請求項2記載のケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料。
【請求項4】
重量パーセントで測定された,Ceの含有量が0.005〜0.20%であり,Laの含有量が0.001〜0.15%である請求項1記載のケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料。
【請求項5】
1)溶融鋳造
最初に92〜98重量部(pbw)のSi及びFeと,0.73〜5.26pwbのAl―Feとを含有するAl合金を添加し,710〜750℃に融解状態まで加熱し;次に720〜760℃に加熱し,1〜3pbwの希土類―Al合金及び0.17〜0.67pbwのB−Al合金を添加し,ここでは,前記希土類―Al合金はAlと希土類元素(Ce及びLa)との合金であり;次に,0.04〜0.06pbwの精製剤を添加し,8〜20分間精製し;次に前記温度で20〜40分間保持し,その後,鋳造する工程と,
2)半焼鈍処理
得られたアルミニウム合金を280〜380℃で4〜10時間保持し,その後,取り出して,周囲温度まで自然に冷却する工程と
を含む請求項1記載のケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の製造方法。
【請求項6】
SiとFeとを含有する前記アルミニウム合金内のSiの含有量は0.07〜0.12%であり,SiとFeとを含有する前記アルミニウム合金内のFeの含有量は0.12〜0.13%であり,前記Al−Fe合金内のFeの含有量は20〜24%であり,B−Al合金内のBの含有量は3〜4%であり,前記希土類−Al合金内のCe及びLaの含有量は9〜11%である請求項5記載のケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の製造方法。
【請求項7】
Al及び前記Al−Fe合金を融解して均熱炉に流し入れ,前記均熱炉に液状のアルミニウム合金を充填する30分前に前記希土類−Al合金の3分の1を添加し,前記均熱炉に前記液状のアルミニウム合金を充填する5分前にB−Al及び前記希土類−Al合金の残り3分の2を添加する請求項5記載のケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の製造方法。
【請求項8】
前記精製剤の粉末が23%のNaAl・F+47%のKCl+30%のNaClを含む請求項5記載のケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の製造方法。
【請求項9】
前記鋳造工程において,鋳造用取鍋の温度が720〜730℃であり,圧延機に供給された,鋳造された条片の温度が450〜490℃であり,最終圧延の温度が300℃である請求項5記載のケーブル用の高い延伸性を有するアルミニウム合金材料の製造方法。

【公表番号】特表2012−524837(P2012−524837A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506317(P2012−506317)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/CN2010/071654
【国際公開番号】WO2010/121517
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511212398)アンフイ ジョイセンシス ケーブル カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】