説明

ケーブル脱落防止具

【課題】フック部に支持したケーブルの結束作業等が不要になり、ケーブル支持前と支持後とを問わず、既に吊りボルトに固定されているケーブル支持具であってもケーブルの脱落を防止することができるケーブル脱落防止具を提供する。
【解決手段】吊りボルトPの側面に固定する連結体20と、ケーブルQを支持する支持体10とで構成されたケーブル支持具を構成する。このケーブル支持具に装着するケーブル脱落防止具であって、連結体20を両側から挟着して該連結体20に着脱自在に固定する固定部1を設ける。該固定部1から支持体10の開口上部を閉塞する閉塞部2を設ける。該閉塞部2の先端に下方へ弾性揺動する弾性突片2Aを設ける。該弾性突片2Aの上から略水平状態のケーブルQを支持体10の内部に配線せしめるように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルトに固定するフック型のケーブル支持具に装着するように設けたケーブル脱落防止具に係り、ケーブル支持前と支持後とを問わず、既存のケーブル支持具でも装着することができるケーブル脱落防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
吊りボルトにケーブルを支持する際に、特許文献1に示される如き固定具に、弾性帯状のクリップを利用したケーブル支持具が使用されている。このケーブル支持具は、吊りボルトに連結するクリップ状の固定具と、ケーブルを支持する略鉤形状に屈曲されたフック部を一体にしたケーブル支持具である。そして、このフック部に支持したケーブルがフック部から脱落しないようにするため、このフック部にケーブルをナイロンバンド等で結束していた。
【0003】
一方、ナイロンバンド等の結束作業を必要としないフック部の構造が特許文献2のケーブル支持具に記載されている。このフック部は、フック部の開口部を閉塞する弾性の閉塞片を設けたもので、この閉塞片からフック部内部にケーブルを強制的に押し込んだ後は、閉塞片がフック部の開口部を閉塞するので、フック部とケーブルとをナイロンバンド等で結束する作業が不要になるものである。
【特許文献1】実開昭48−59513号公報
【特許文献2】特開2002−340234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリップ状の固定具を利用した従来の支持具では、フック部に支持したケーブルの脱落を防止するために、フック部とケーブルとをナイロンバンド等で結束する作業が必要であった。そのため、例えば結束作業が困難となる高所の場合では危険を伴う作業になっていた。
【0005】
一方、特許文献2に記載のケーブル支持具は、ケーブル支持具のフック部に閉塞片を設けているので、このケーブル支持具を使用する場合にのみケーブルの脱落を防止することは可能でも、他のケーブル支持具で支持しているケーブルの脱落を防止することはできないものである。すなわち、既に吊りボルトに固定され、ケーブルを支持している状態のケーブル支持具を特許文献2の閉塞片で閉塞することは不可能であった。
【0006】
また、現状では、クリップ状の固定具を利用した従来のケーブル支持具が極めて多く使用されており、今後もこの種のケーブル支持具の需要は多いと予想されている。したがって、従来のこの種のケーブル支持具に変更を加えずに、この種のケーブル支持具の配線性能を高めることができるような配線具が望まれていた。
【0007】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、吊りボルトに固定されたクリップ状の固定具に略鉤形状のフック部を設けたケーブル支持具において、フック部に支持したケーブルのナイロンバンド等結束作業等が不要になり、しかも、ケーブル支持前と支持後とを問わず、既に吊りボルトに固定されているケーブル支持具であってもケーブルの脱落を防止することができるケーブル脱落防止具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、吊りボルトPの側面に固定する連結体20と、ケーブルQを支持する支持体10とで構成されたケーブル支持具に装着するケーブル脱落防止具であって、連結体20を両側から挟み付けて該連結体20に着脱自在に固定する固定部1と、該固定部1から延長され支持体10の開口上部を閉塞する閉塞部2とからなり、該閉塞部2の先端に下方へ弾性揺動する弾性突片2Aを設け、該弾性突片2Aの上から略水平状態のケーブルQを支持体10の内部に配線せしめるように設けたことにある。
【0009】
第2の手段の前記連結体20は、前記吊りボルトP側面に固定する屈曲された弾性帯体21で設けられ、該弾性帯体21の長手側面の上下で対を成す切り欠き状のボルト係止口22を有し、前記支持体10は、連結体20の長手中央部分に連結された連結部11と、該連結部11から略フック形状に湾曲した腕部12を有するもので、連結体20の長手中央部分の左右側縁を前記固定部1で挟着するように設けている。
【0010】
第3の手段の前記固定部1は、前記連結体20の左右の側縁を両側から挟着する挟着部1Aと、該挟着部1Aの内側に設けられ連結体20の左右側縁に嵌合する嵌合溝1Bとを備え、強制的に開いた挟着部1Aで連結体20を挟着するように設けたものである。
【0011】
第4の手段の前記閉塞部2は、前記挟着部1Aから延長された略杆体状を成す閉塞腕2Bと、該閉塞腕2Bの先端から延長された薄肉状の前記弾性突片2Aと、閉塞腕2Bの上面長手方向に沿って設けられ閉塞腕2Bが上方に屈曲するのを防止する屈曲防止突条2Cとからなり、弾性突片2Aの先端部が前記支持体10の内側近傍に沿って下方に向くように弾性突片2Aを屈曲したことを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によると、連結体20の側面を両側から挟着して該連結体20に着脱自在に固定する固定部1と、該固定部1から支持体10の開口上部を閉塞する閉塞部2とからなり、該閉塞部2の先端に上下揺動自在な弾性突片2Aを設け、該弾性突片2Aの上から略水平状態のケーブルQを支持体10の内部に配線せしめるように設けているから、支持したケーブルのナイロンバンド結束作業等が不要になった。しかも、連結体20の側面を両側から挟着して該連結体20に着脱自在に固定する固定部1を設けているので、既に吊りボルトに固定されているケーブル支持具にも装着することができる。
【0013】
請求項2、3の固定部1により、連結体20の長手中央部分の左右の側縁を両側から挟着する挟着部1Aと、該挟着部1Aの内側に設けられ連結体20の左右の側縁を嵌合する嵌合溝1Bとを備え、挟着部1Aの弾性力にて連結体20に固定部1を着脱自在に固定する固定部1により、屈曲された弾性帯体21で設けられた連結体20への装着が容易且つ確実に行うことができる。
【0014】
しかも、連結体20の長手中央部分に連結された連結部11と、該連結部11から略フック形状に湾曲した腕部12を有する支持体10の開口上部を閉塞部2によって閉塞できるから、支持体10の腕部12に支持したケーブルQの脱落を確実に防止する。この結果、支持体10にケーブルQを支持している状態でも閉塞部2を装着することができる。
【0015】
更に、請求項4に記載の閉塞部2により、先端部を下方に向けて屈曲した弾性突片2A部分からケーブルQの挿入支持が容易に行えるので、たとえ、高所での配線作業でも安全、且つ簡単に行うことができる。しかも、弾性突片2Aと閉塞腕2Bと屈曲防止突条2Cとで閉塞部2を構成しているので、この閉塞部2を介してケーブルQを支持体10に配線支持する作業が容易になり、支持体10に支持したケーブルQは、この閉塞部2によって支持体10からの脱落を確実に防止することができる。
【0016】
このように本発明によると、吊りボルトに側面から固定するクリップ状の固定具とケーブルを支持するフック部とを備えたケーブル支持具において、支持したケーブルの結束作業等が不要になり、しかも、ケーブル支持前と支持後とを問わず、既に吊りボルトに固定されているケーブル支持具にも装着してケーブルの脱落を防止することができるなどといった有益な種々の効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明ケーブル脱落防止具の最良の形態は、連結体20の側面を両側から挟着して該連結体20に着脱自在に固定する固定部1と、該固定部1から支持体10の開口上部を閉塞する閉塞部2とを設ける。連結体20の左右の側縁を両側から挟みつける挟着部1Aと、該挟着部1Aの内側に設けられ連結体20の左右の側縁を嵌合する嵌合溝1Bとを備えた固定部1を設け、挟着部1Aの弾性力にて連結体20に固定部1を着脱自在に固定する。挟着部1Aから延長された略杆体状を成す閉塞腕2Bと、該閉塞腕2Bの先端から延長された薄肉状の前記弾性突片2Aとからなる閉塞部2を設ける。該弾性突片2Aの先端部を下方に向けて屈曲し、該弾性突片2Aの上から略水平状態のケーブルQを支持体10の内部に配線せしめるように設けることで、当初の目的を達成するものである。
【実施例】
【0018】
以下、本発明脱落防止具の一実施例を説明する。本発明ケーブル脱落防止具は、特に、吊りボルトPの側面に固定するケーブル支持具100の開口部に装着するものである。すなわち、本発明脱落防止具の装着対象となるケーブル支持具100は、吊りボルトPの側面に固定する連結体20と、ケーブルQを支持する支持体10とから構成されている(図1参照)。
【0019】
本発明脱落防止具の装着対象となる連結体20は、吊りボルトP側面に固定する屈曲された弾性帯体21で設けられ、該弾性帯体21の長手側面の上下で対を成す切り欠き状のボルト係止口22を有している(図1参照)。一方、支持体10は、連結体20の長手中央部分に連結された連結部11と、該連結部11からフック形状に湾曲した腕部12とを有するものである。本発明脱落防止具は、このようなケーブル支持具100に装着するもので、本発明の基本構成は、固定部1と閉塞部2とで構成されている(図3参照)。
【0020】
固定部1は、連結体20の側面を両側から挟み付けて該連結体20に着脱自在に固定する部材であり、この固定部1は、挟着部1Aと嵌合溝1Bとを備えている。挟着部1Aは、連結体20の長手中央部分の左右の側縁を両側から挟着するもので、この挟着部1Aの内側に、連結体20の左右側縁に嵌合する嵌合溝1Bを設けている。そして、挟着部1Aを強制的に開いたときの挟着部1Aの弾性力にて連結体20を挟み付け、固定部1を着脱自在に固定するものである。
【0021】
図示の固定部1は、固定時に挟着部1Aを開き易くするため、一方の挟着部1Aにおいて基端部からの開き角度を直角に近い角度にすると共に、他方の挟着部1Aは、基端部からの開き角度を更に広げて鈍角状に形成している(図4参照)。そして、開き角度が少ない挟着部1Aがわの嵌合溝1Bを連結体20の一方の側縁に嵌合し、この状態で固定部1を回転させる(図6参照)。そうすると、鈍角状に形成した挟着部1Aが他方の側縁に接触しながら拡開され、更に回転させると残る嵌合溝1Bがこの側縁に嵌合するものである(図7参照)。
【0022】
一方、閉塞部2は、固定部1から延長され、支持体10の開口上部を閉塞する部材であり、この閉塞部2は、弾性突片2Aと閉塞腕2Bと屈曲防止突条2Cとを有している。閉塞腕2Bは、固定部1から延長された略杆体状を成し、この閉塞腕2Bの上面長手方向に沿って屈曲防止突条2Cを設けることで、閉塞腕2Bが上方に屈曲するのを防止している。また、弾性突片2Aは、閉塞腕2Bの先端を延長して薄肉状に設けた部分で、この弾性突片2Aの上から略水平状態のケーブルQを支持体10の内部に配線せしめるように設けている(図8参照)。
【0023】
図示の弾性突片2Aは、先端部が支持体10の内側近傍に沿って下方に向くように屈曲したものである。このように弾性突片2Aを形成することで、弾性突片2Aは下方への屈曲が自在になる代わりに、上方への屈曲は、腕部12との接触で阻止されるものになる(図8参照)。この結果、ケーブルQ配線時には、弾性突片2Aの上から支持体10内にケーブルQを押し込む作業が容易になり、支持体10内にケーブルQを配線した後は、閉塞腕2Bと弾性突片2Aとによって支持体10の開口上部が閉塞されるので、ケーブルQの脱落が防止されるものである。
【0024】
本発明脱落防止具の使用方法は、前記ケーブル支持具100に本発明脱落防止具を装着して使用するものである。このとき、ケーブルQが比較的細い場合は、本発明脱落防止具をケーブル支持具100に装着した後で、弾性突片2Aを下方へ揺動させてケーブルQを配線することができる(図8参照)。また、ケーブルQの径が太い場合には、ケーブル支持具100にケーブルQを配線した後で本発明脱落防止具を装着することも可能である(図9参照)。更に、ケーブル支持具100に本発明脱落防止具を装着し、この状態で吊りボルトPに連結体20を連結することができる(図1参照)。また、既に吊りボルトPに連結されているケーブル支持具100の連結体20に本発明脱落防止具を後付けにて装着することも可能である。
【0025】
尚、本発明は図示例に限定されるものではなく、固定部1や閉塞部2の各構成の寸法や形状等の設計変更、および材質の変更などは任意に行えるものであり、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の装着状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の使用状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施例を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施例を示す底面図である。
【図6】本発明の装着前の状態を示す平面図である。
【図7】本発明の装着後の状態を示す平面図である。
【図8】本発明の使用状態を示す側面図である。
【図9】本発明の使用状態を示す分解側面図である。
【符号の説明】
【0027】
P 吊りボルト
Q ケーブル
1 固定部
1A 挟着部
1B 嵌合溝
2 閉塞部
2A 弾性突片
2B 閉塞腕
2C 屈曲防止突条
10 支持体
11 連結部
12 腕部
20 連結体
21 弾性帯体
22 ボルト係止口
100 ケーブル支持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りボルトの側面に固定する連結体と、ケーブルを支持する支持体とで構成されたケーブル支持具に装着するケーブル脱落防止具であって、連結体を両側から挟み付けて該連結体に着脱自在に固定する固定部と、該固定部から延長され支持体の開口上部を閉塞する閉塞部とからなり、該閉塞部の先端に下方へ弾性揺動する弾性突片を設け、該弾性突片の上から略水平状態のケーブルを支持体の内部に配線せしめるように設けたことを特徴とするケーブル脱落防止具。
【請求項2】
前記連結体は、前記吊りボルト側面に固定する屈曲された弾性帯体で設けられ、該弾性帯体の長手側面の上下で対を成す切り欠き状のボルト係止口を形成したもので、一方、前記支持体は、連結体の長手中央部分に連結された連結部と、該連結部から略フック形状に湾曲した腕部を有するもので、連結体の長手中央部分の左右側縁を前記固定部で挟着するように設けた請求項1記載のケーブル脱落防止具。
【請求項3】
前記固定部は、前記連結体の左右の側縁を両側から挟着する挟着部と、該挟着部の内側に設けられ連結体の左右側縁に嵌合する嵌合溝とを備え、強制的に開いた挟着部で連結体を挟着するように設けた請求項1又は2記載のケーブル脱落防止具。
【請求項4】
前記閉塞部は、前記挟着部から延長された略杆体状を成す閉塞腕と、該閉塞腕の先端から延長された薄肉状の前記弾性突片と、閉塞腕の上面長手方向に沿って設けられ閉塞腕が上方に屈曲するのを防止する屈曲防止突条とからなり、弾性突片の先端部が前記支持体の内側近傍に沿って下方に向くように弾性突片を屈曲した請求項1乃至3いずれか記載のケーブル脱落防止具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−22068(P2009−22068A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180807(P2007−180807)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【Fターム(参考)】